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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/08 20060101AFI20230419BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20230419BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20230419BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20230419BHJP
【FI】
F01N1/08 K
F01N1/00 D
B60K13/04 A
B60K6/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020011004
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116757
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-39452(JP,A)
【文献】特開2009-197629(JP,A)
【文献】実開平4-87312(JP,U)
【文献】特開2020-23258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00-13/00
B60K 13/04
B60K 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電池が床下に設けられる車両に搭載され、前記車両の左右方向に並ぶように前記車両用電池と前記車両のフレームとの間に配置される消音器であって、
アウターシェルと、
前記アウターシェルの内部を複数の部屋に区分けするセパレータと、
を備え、
前記セパレータは、前記車両の前後方向かつ上下方向に延びるように配置される、消音器。
【請求項2】
請求項1に記載の消音器であって、
前記アウターシェルは、前記セパレータを少なくとも第1の方向から覆う第1のシェルと、前記セパレータを前記第1の方向とは反対側の第2の方向から少なくとも覆うように前記第1のシェルと対向するように配置される第2のシェルと、を有する、消音器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消音器であって、
前記複数の部屋として、内燃機関から排気される排気ガスが通過する際に、高温となる高温室と、前記高温室よりも低温が維持される低温室と、を有し、
前記低温室は、前記車両用電池側に配置される、消音器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の消音器であって、
前記アウターシェルは、前記車両の上下方向に面する壁面の少なくとも一方に、前記アウターシェルの内側に凹む凹部及び前記アウターシェルの外側に突出する凸部の少なくとも一方を有する、消音器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の消音器であって、
前記セパレータは、湾曲している、消音器。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の消音器であって、
前記アウターシェルの内部に前記車両の左右方向に延びるように配置された補強部材を更に備える、消音器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の消音器であって、
当該消音器は、前記車両用電池と、前記フレームと、に固定される、消音器。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の消音器であって、
内燃機関から排気される排気ガスが、前記フレーム側寄りに配置されるインレットパイプから導入される、消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の走行用の電動モータに電力を供給する車両の床下に設けられる車両用電池と、車両の前後方向に延びるサイドメンバと、の間に隙間を有するように消音器が配置されることが開示されている。このように配置される消音器と、サイドメンバに設けられる衝撃吸収材と、によって、車両の左右方向の外側から物体が車両に衝突した際に生じる衝撃を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-39452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、隙間を有するように配置される消音器及び衝撃吸収材の2つの異なる部品で衝撃を吸収する構成では、その2つの部品の当たり方によって各部品の潰れ方が変わり得る。このため、当たり方によって、十分に衝撃を吸収することができない場合があり、衝撃を吸収する性能の向上が求められている。
【0005】
本開示の一局面は、高い衝撃吸収性能を備える消音器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両用電池が床下に設けられる車両に搭載され、車両の左右方向に並ぶように車両用電池と車両のフレームとの間に配置される消音器であって、アウターシェルと、セパレータと、を備える。セパレータは、アウターシェルの内部を複数の部屋に区分けする。また、セパレータは、車両の前後方向かつ上下方向に延びるように配置される。
【0007】
このような構成では、車両が、例えば車両の左右方向からの衝撃を受けた場合、セパレータが左右方向かつ上下方向に延びて前後方向に並ぶような構成と比較して、セパレータによる消音器の左右方向の強度が高くなりすぎず、セパレータによって車両の左右方向に並ぶように区分けされた複数の部屋が潰れる。これにより、消音器によって車両の左右方向からの衝撃を吸収することができる。このため、2つの異なる部品で車両への衝撃を吸収するような構成のように、その2つの部品の当たり方によって十分に衝撃を吸収することができないことが生じにくい。したがって、衝撃を吸収する性能を向上することができる。その結果、消音器周辺の隙間の有無に係わらず十分に衝撃を吸収できる。
【0008】
本開示の一態様では、アウターシェルは、第1のシェルと、第2のシェルと、を有してもよい。第1のシェルは、前記セパレータを少なくとも第1の方向から覆う。第2のシェルは、前記セパレータを第1の方向とは反対側の第2の方向から少なくとも覆うように第1のシェルと対向するように配置される。このような構成によれば、アウターシェルを構成する2つの異なる部品である第1のシェル及び第2のシェルを、例えば、プレス加工等によりそれぞれ容易に形成することができる。これにより、第1のシェル及び第2のシェルのそれぞれにアウターシェルの強度の調整をするための構成を設けやすくなる。その結果、消音器の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。
【0009】
本開示の一態様では、セパレータによって区分けされる複数の部屋として、高温室と、低温室と、を有してもよい。高温室は、内燃機関から排気される排気ガスが通過する際に、高温となる。低温室は、内燃機関から排気される排気ガスが通過する際に、高温室よりも低温が維持される。また、低温室は、車両用電池側に配置されてもよい。このような構成では、低温室が車両用電池の近傍に配置される。換言すると、高温室は車両用電池から離れて配置される。これにより、消音器を通過する排気ガスにより生じる熱が車両用電池へ伝達するのを低減することができる。したがって、車両用電池が高温になることに起因した故障などを抑制することができる。
【0010】
本開示の一態様では、アウターシェルは、車両の上下方向に面する壁面の少なくとも一方に、アウターシェルの内側に凹む凹部及びアウターシェルの外側に突出する凸部の少なくとも一方を有してもよい。このような構成によれば、アウターシェルの強度の調整を容易に実現することができる。その結果、消音器の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。
【0011】
本開示の一態様では、セパレータは、湾曲していてもよい。このような構成によれば、消音器の衝撃吸収のし易さの調整をセパレータによって容易に行うことができる。
本開示の一態様は、アウターシェルの内部に車両の左右方向に延びるように配置された補強部材を更に備えてもよい。このような構成によれば、消音器の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。すなわち、補強部材が車両の左右方向に延びるため、車両の左右方向からの衝撃に対して、アウターシェルの車両の上下方向に面する壁面が補強される。このため、アウターシェルの強度を向上する方向に、消音器の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。
【0012】
本開示の一態様では、当該消音器は、車両用電池と、フレームと、に固定されてもよい。車両では、例えばエンジンの振動と路面との接触により生じる振動とが生じる。上述したように消音器が固定されていると、消音器は、車両用電池及びフレームと同じように振動する。このため、消音器が車両用電池及びフレームと異なる振動をする場合とは異なり、消音器と、車両用電池又はフレームと、がぶつかりにくい。このことから、各部品間に隙間を設ける必要性が低い。また、消音器は複数の部屋を有することで、消音器における車両用電池側の温度が高くなりにくいため、車両用電池へ排気ガスの熱が伝わりにくいことから熱の影響の観点においても隙間を設ける必要性が低い。このため、大容量の車両用電池が設けられた場合でも、消音器を配置するスペースを十分に確保することができる。
【0013】
本開示の一態様は、内燃機関から排気される排気ガスが、フレーム側寄りに配置されるインレットパイプから導入されてもよい。このような構成によれば、高温の排気ガスを消音器に導入することで高温となるインレットパイプは、車両用電池から離れて配置される。これにより、排気ガスにより生じる熱が車両用電池へ伝達するのを低減することができる。したがって、車両用電池が高温になることに起因した故障などを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両用電池、消音器及び第1のサイドフレームの配置を模式的に示す平面図である。
図2図1のII-IIの模式的な断面図である。
図3】消音器の斜視図である。
図4】消音器の背面図である。
図5図3のV-V断面を模式的に示す図である。
図6図5の分解図である。
図7】消音器の内部の構造を示す斜視図である。
図8図7のVIII―VIII断面を模式的に示す斜視図である。
図9図3のIX―IX断面を模式的に示す図である。
図10】消音器の変形例を示す平面図である。
図11図10に示す消音器の内部構造を模式的に示す図である。
図12】湾曲するセパレータが車両用電池側に凸となるように配置される構成を示す図である。
図13】湾曲するセパレータが第1のサイドフレーム側に凸となるように配置される構成を示す図である。
図14】湾曲するセパレータが凸となる向きが異なるように配置される構成を示す図である。
図15】上方端部が湾曲するセパレータを示す図である。
図16】アウターシェルが凸部を有する構成を示す図である。
図17】アウターシェルが凹部及び凸部の両方を有する構成を示す図である。
図18】アウターシェル内に補強部材が配置される構成を示す図である。
図19】断熱室が密閉された部屋でない構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1-1.全体構成]
図1及び図2に示す消音器100は、例えばハイブリッド車両に搭載される。ハイブリッド車両は、図示しない動力源として、内燃機関であるエンジンと、電動モータと、を備える。本実施形態のハイブリッド車両には、電力モータに電力を供給する車両用電池200が車両の床下に設けられている。ここで、車両の床下とは、車両の床を構成するフロアパネル23の下側を示す。車両用電池200は、概略長方体状のケースに収容されている。車両用電池200が収容されるケースは、車両に配置された状態で、上面及び底面が車両の上下方向を向き、各側面がそれぞれ車両の前後方向及び左右方向を向くように設置されている。なお、以下の説明では、車両を基準に上下方向、前後方向及び左右方向を表現する。車両用電池200は、上方から見て車両の中央部付近に大きな搭載スペースを占めて配置される。車両用電池200は、車両のボディを構成する第1のサイドフレーム21と第2のサイドフレーム22との間に配置される。第1のサイドフレーム21及び第2のサイドフレーム22は、それぞれ車両の床下において右側方及び左側方に設けられ、前後方向に延びるサイドメンバである。
【0016】
消音器100は、内燃機関の排気ガス流路を構成する排気システム1に用いられる排気騒音を低減する装置である。消音器100は、当該消音器100内に形成される複数の部屋を排気ガスが通過することによって消音効果を発揮する。排気システム1は、内燃機関から排気される排気ガスを消音器100に導入するインレットパイプ11と、消音器100内を通過した排気ガスを排出するアウトレットパイプ12と、を備える。本実施形態では、インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12の中心軸は、消音器100の中心軸Aと一致するように消音器100にそれぞれ接続される。排気システム1は、上述した部材の他に、図示しない浄化装置等の部材も備える。上述したように、車両用電池200が車両の床下の中央部付近において大きな搭載スペースを占めて配置されているため、排気システム1は、車両用電池200を迂回して前後方向に延びるように配置されている。本実施形態では、消音器100は、車両用電池200の右側方にて、左右方向に並ぶように車両用電池200と第1のサイドフレーム21との間に配置される。すなわち、第1のサイドフレーム21、消音器100、車両用電池200の順に右側方から配置される。また、排気システム1は、上下方向において車両用電池200と略同程度の高さに配置されている。具体的には、消音器100は、車両用電池200が収容されるケースの右側面と対向するように配置されている。消音器100は、第1のサイドフレーム21及び車両用電池200にボルト等を用いて固定されている。固定方法は、これに限られず、消音器100を第1のサイドフレーム21に対し、直接又は別部材を介して間接的に固定してもよい。
【0017】
第2のサイドフレーム22と車両用電池200との間には、衝撃吸収材300が配置されている。衝撃吸収材300は、第2のサイドフレーム22及び車両用電池200のケースの少なくとも一方に固定されている。衝撃吸収材300は、車両への左右方向からの衝撃に対して左右方向に変形して衝撃を吸収できるものであれば、どのような部材であっても構わない。衝撃吸収材300は、例えば、前後方向に垂直な断面において多角形状の筒状のアルミ材でもよく、又は、硬質ポリウレタンフォームなどの発砲樹脂成形体であってもよい。なお、これらは衝撃吸収材300の一例であって、衝撃吸収材300はこれらの部材に限られない。
【0018】
なお、消音器100は、車両用電池200の左側方及び右側方の少なくとも一方に配置されてもよい。消音器100が車両用電池200の左側方に配置される場合は、第2のサイドフレーム22、消音器100、車両用電池200の順に左側方から配置される。消音器100が車両用電池200の左側方のみに配置される場合は、車両用電池200の右側方に上述した衝撃吸収材300が配置される。
【0019】
[1-2.消音器]
図3図9を用いて、消音器100の詳細な構成について説明する。消音器100は、外形が概略長方体状の機器である。
【0020】
消音器100は、アウターシェル110と、前方エンドプレート120と、後方エンドプレート130と、セパレータ140と、を備える。
アウターシェル110は、消音器100の外形を形成し、前方及び後方の端部が開口する筒状の部材である。アウターシェル110は、概略長方体状の形状である。図5及び図6に示すように、アウターシェル110は、アッパーシェル111と、アンダーシェル115と、を有する。アッパーシェル111は、セパレータ140を上方から覆う部材である。すなわち、アッパーシェル111は、消音器100の上面及び左右方向の側面の一部を形成する。アンダーシェル115は、セパレータ140を下方から覆う部材であり、アッパーシェル111と対向するように当該アッパーシェル111の下側に配置される。すなわち、アンダーシェル115は、消音器100の底面及び左右方向の側面の一部を形成する。消音器100は、車両に配置された状態で、上面及び底面が上下方向を向き、各側面がそれぞれ前後方向及び左右方向を向くように設置されている。
【0021】
図6に示すように、本実施形態では、アッパーシェル111及びアンダーシェル115は、金属、例えばステンレスの薄い板をプレス加工することにより断面形状がU字状に成形される。アッパーシェル111は、上面112と、上面112の左右方向の両側端部から当該上面112と直交するように延びる第1の側面113及び第2の側面114と、を有する。アンダーシェル115は、底面116と、底面116の左右方向の両側端部から当該底面116と直交するように延びる第1の側面117及び第2の側面118と、を有する。アッパーシェル111において、第1の側面113は第2の側面114よりも長く形成されている。アンダーシェル115において、第1の側面117は第2の側面118よりも長く形成されている。
【0022】
図5に示すように、アッパーシェル111の第1の側面113とアンダーシェル115の第2の側面118と、及び、アッパーシェル111の第2の側面114とアンダーシェル115の第1の側面117と、が対向するように、アッパーシェル111及びアンダーシェル115が左右方向に互いにずれて配置される。そして、アッパーシェル111及びアンダーシェル115が溶接等により接合されることで、筒状のアウターシェル110が形成される。具体的には、アッパーシェル111の第1の側面113とアンダーシェル115の第2の側面118との一部、及び、アッパーシェル111の第2の側面114とアンダーシェル115の第1の側面117との一部が重なるように接合される。
【0023】
本実施形態では、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116には、アウターシェル110の内側に凹む凹部150がそれぞれ設けられる。図3に示すように、凹部150は、前後方向に延びる溝、すなわちリブである。図5に示すように、凹部150は、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116のうち、セパレータ140が当接しない部分に形成される。本実施形態では、凹部150は、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116に、それぞれ4つ設けられる。
【0024】
図3及び図4に示すように、前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130は、アウターシェル110における車両の前後方向に面する前後の端部である前方及び後方の端部を閉塞するように設けられる四角錐状の蓋部材である。ここでいう閉塞とは、端部の開口面積を小さくする、又は、端部を閉じることを意味する。すなわち、前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130は、消音器100の前後方向の側面を形成する。前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130には、インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12がそれぞれ接続可能な貫通孔121,131が設けられている。図9に示すように、前方エンドプレート120にはインレットパイプ11が接続され、後方エンドプレート130にはアウトレットパイプ12が接続される。
なお、アウターシェル110は、前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130に対し別体として記載したが、アウターシェル110が前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130の少なくとも一方と一体となるように構成してもよい。
【0025】
図5図9に示すように、セパレータ140は、アウターシェル110の内部を複数の部屋に区分けする部材である。セパレータ140は主たる部分が前後方向及び上下方向に延び、前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130に対して直交するように配置される板状の部材である。また別の視点では、セパレータ140は、筒状のアウターシェル110の両端の開口を結ぶ方向、つまり一対のエンドプレート120,130の並ぶ方向に延びる部材である。図5及び図6に示すように、セパレータ140は、U字状に成形されており、直線状に延びる区画面141と、区画面141の上下方向の両側端部から直交するように延びる第1の当接面142及び第2の当接面143と、を有する。第1の当接面142はアッパーシェル111の上面112に当接し、第2の当接面143はアンダーシェル115の底面116に当接する。セパレータ140は、消音器100の中心軸Aに向かって第1の当接面142及び第2の当接面143が延びるように配置される。本実施形態では、セパレータ140は、6つ設けられ、互いに対向するように間隔を空けて左右方向に並んで配置される。図7図9に示すように、本実施形態では、消音器100の中心軸Aの近傍に配置される2つのセパレータ140には、排気ガスが通過する複数のパンチ孔が設けられている。本実施形態では、アウターシェル110の内部は、セパレータ140を6つ設けることによって、左右方向に並ぶ7つの部屋に区分けされる。
【0026】
本実施形態では、消音器100は、7つの部屋として、メインガス流路室101と、第1の拡張室102と、第2の拡張室103と、第1の共鳴室104と、第2の共鳴室105と、第1の断熱室106と、第2の断熱室107と、を有する。なお、第1の拡張室102と第2の拡張室103とを区別しない場合は、2つの拡張室102,103とも称する。また、第1の共鳴室104と第2の共鳴室105とを区別しない場合は、2つの共鳴室104,105とも称する。また、第1の断熱室106と第2の断熱室107とを区別しない場合は、2つの断熱室106,107とも称する。これら7つの部屋は、第2の断熱室107、第2の共鳴室105、第2の拡張室103、メインガス流路室101、第1の拡張室102、第1の共鳴室104及び第1の断熱室106の順に、消音器100の右側方から配置される。換言すると、消音器100において、メインガス流路室101が中央に配置され、当該メインガス流路室101を中心として外側に向かって左右対称に、2つの拡張室102,103、2つの共鳴室104,105、2つの断熱室106,107の順に配置される。
【0027】
図9に示すように、メインガス流路室101には、内燃機関から排気される排気ガスが流れる。そして、メインガス流路室101と2つの拡張室102,103とを区分けするセパレータ140に設けられた複数のパンチ孔を通って、メインガス流路室101から2つの拡張室102,103へ排気ガスが流れ込む。2つの共鳴室104,105には、図示しないが、メインガス流路室101及び2つの拡張室102,103の少なくとも1つと連通する孔が形成されている。消音器100では、2つの拡張室102,103及び2つの共鳴室104,105を排気ガスが通過することにより消音効果を得ることができる。2つの断熱室106,107は、例えばウール等の断熱材を内部に有している。なお、2つの断熱室106,107は、断熱材等を内部に有さない空気層であってもよい。
【0028】
以上のことから、排気ガスが通過する際に、メインガス流路室101及び2つの拡張室102,103は、高温の排気ガスが流入するため高温となる高温室に該当し、2つの共鳴室104,105及び2つの断熱室106,107は当該高温室よりも低温が維持される低温室に該当する。すなわち、車両用電池200側には、消音器100における低温室に該当する第1の共鳴室104及び第1の断熱室106が配置される。つまり、高温室に該当するメインガス流路室101及び第1の拡張室102は、車両用電池200から離れて配置される。
【0029】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、消音器100は、左右方向に並ぶように車両用電池200と第1のサイドフレーム21との間に配置される。そして、消音器100の内部、すなわちアウターシェル110の内部に、7つの部屋に区分けするための、前後方向かつ上下方向に延びるセパレータ140が、左右方向に並ぶように6つ設けられる。このため、車両が、例えば車両の左右方向からの衝撃を受けた場合、セパレータが左右方向かつ上下方向に延びて前後方向に並ぶような構成と比較して、セパレータ140による消音器100の左右方向の強度が高くなりすぎず、セパレータ140によって左右方向に並ぶように区分けされた7つの部屋が潰れる。これにより、消音器100によって左右方向からの衝撃を吸収することができる。このため、2つの異なる部品で車両への衝撃を吸収するような構成のように、その2つの部品の当たり方によって十分に衝撃を吸収することができないことが生じにくい。したがって、衝撃を吸収する性能を向上することができる。その結果、消音器100周辺の隙間の有無に係わらず十分に衝撃を吸収できる。また、その結果、消音器100以外の他の衝撃吸収材を設けなくても、消音器100によって十分に衝撃を吸収することができるため、部品点数を削減することができる。
【0030】
(2b)本実施形態では、アウターシェル110は、プレス加工により形成されたアッパーシェル111及びアンダーシェル115の2つの異なる部品を組み合わせることにより構成される。これにより、アッパーシェル111及びアンダーシェル115のそれぞれにアウターシェル110の強度の調整をするための構成、本実施形態では、凹部150を設けやすくなる。その結果、消音器100の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。
【0031】
(2c)本実施形態では、低温室に該当する第1の共鳴室104及び第1の断熱室106が車両用電池200の近傍に配置される。換言すると、高温室に該当するメインガス流路室101及び第1の拡張室102は車両用電池200から離れて配置される。これにより、消音器100を通過する排気ガスの消音効果を発揮しつつ、排気ガスにより生じる熱が車両用電池200へ伝達するのを低減する断熱効果を得ることができる。したがって、車両用電池200が高温になることに起因した故障などを抑制することができる。また、本実施形態では、第1のサイドフレーム21側にも第2の共鳴室105及び第2の断熱室107が配置される。つまり、高温室に該当するメインガス流路室101及び第2の拡張室103は第1のサイドフレーム21から離れて配置される。これにより、消音器100を通過する排気ガスにより生じる熱が第1のサイドフレーム21へ伝達するのも低減することができる。したがって、第1のサイドフレーム21が塗装されている場合に、熱に起因する塗装の劣化を抑制することができる。
【0032】
(2d)本実施形態では、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116に凹部150を有する。これにより、アウターシェル110の強度の調整を容易に実現することができる。例えば、凹部150を前後方向に延びるように設けた場合、車両への左右方向からの衝撃に対して消音器100の強度を弱くする、すなわちアウターシェル110を変形しやすくすることができる。また、例えば、凹部150を左右方向に延びるように設けた場合、車両への左右方向からの衝撃に対して消音器100の強度を強くする、すなわちアウターシェル110を変形を抑制することができる。その結果、消音器100の衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。
【0033】
(2e)本実施形態では、消音器100は、車両用電池200と、第1のサイドフレーム21と、に固定されている。車両では、例えばエンジンの振動と路面との接触により生じる振動とが生じる。上述したように消音器100が固定されていると、消音器100は、車両用電池200及び第1のサイドフレーム21と同じように振動する。このため、消音器が車両用電池200及び第1のサイドフレーム21と異なる振動をする場合とは異なり、消音器100と、車両用電池200又は第1のサイドフレーム21と、がぶつかりにくい。このことから、各部品間に隙間を設ける必要性が低い。また、本実施形態では、消音器100は断熱室106及び共鳴室104の低温室を有することで、消音器100における車両用電池200側の温度が高くなりにくいため、車両用電池200へ排気ガスの熱が伝わりにくいことから熱の影響の観点においても隙間を設ける必要性が低い。したがって、例えば二酸化炭素の削減、燃費向上などの環境対策に向けて大容量化した車両用電池200が設けられた場合でも、消音器100を配置するスペースを十分に確保することができる。また、限られたスペースを有効に利用することができるため、消音器100の大容量化も可能となる。
【0034】
なお、本実施形態では、アッパーシェル111が第1のシェルに相当し、アンダーシェル115が第2のシェルに相当し、メインガス流路室101及び2つの拡張室102,103が高温室に相当し、2つの共鳴室104,105及び2つの断熱室106,107が低温室に相当する。
【0035】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0036】
(3a)図10及び図11に示すように、インレットパイプ11は、消音器100aの中心軸Aを基準として、第1のサイドフレーム21側寄り、すなわち消音器100aの右側寄りに配置されていてもよい。このような場合に、前方エンドプレート120aに設けられたインレットパイプ11が接続される貫通孔121aは、消音器100aの中心軸Aを基準として、第1のサイドフレーム21側寄り、すなわち消音器100aの右側寄りに配置される。また、アウトレットパイプ12は、消音器100aの中心軸Aを基準として、車両用電池200側寄り、すなわち消音器100aの左側寄りに配置されていてもよい。このような場合に、後方エンドプレート130aに設けられたアウトレットパイプ12が接続される貫通孔131aは、消音器100aの中心軸Aを基準として、車両用電池200側寄り、すなわち消音器100aの左側寄りに配置される。このような構成によれば、高温の排気ガスが流れるインレットパイプ11が車両用電池200から離れて配置される。このため、排気ガスにより生じる熱が車両用電池200へ伝達するのを低減することができる。したがって、車両用電池200が高温になることに起因した故障などを抑制することができる。
【0037】
(3b)図12図15に示す消音器100b,100cのように、セパレータ140b,140cの区画面141b,141cが湾曲していてもよい。なお、消音器100b,100cは、上述した消音器100と同様にアッパーシェル111及びアンダーシェル115が凹部150を有してもよいし、有しなくてもよい。このため、図12図15では凹部150の図示は省略する。図12に示すように、消音器100bにおいて、例えば、セパレータ140bが車両用電池200側、すなわち消音器100bの左側に凸となるように湾曲している場合、左右方向における第1のサイドフレーム21側からの衝撃Fに対して消音器100bの強度を弱くすることができる。また、図13に示すように、消音器100bにおいて、例えば、セパレータ140bが第1のサイドフレーム21側、すなわち消音器100bの右側に凸となるように湾曲している場合、左右方向における第1のサイドフレーム21側からの衝撃Fに対して消音器100bの強度を強くすることができる。したがって、消音器100bの衝撃吸収のし易さの調整をセパレータ140bの形状によって容易に行うことができる。なお、図14に示すように、消音器100bにおいて、セパレータ140bの凸となる向きが異なるように配置されていてもよい。また、図12図14に示すように、セパレータ140bの区画面141bの上下方向の両側端部が湾曲する形状を例示したが、セパレータが湾曲する形状はこれに限定されるものではない。例えば、図15に示すように、消音器100cにおいて、セパレータ140cの区画面141cのうち上方側又は下方側の一部のみが湾曲する形状であってもよい。
【0038】
(3c)図16に示すように、アウターシェル110には、凹部150に変えて、アウターシェル110の外側に突出する凸部160が形成されてもよい。また、例えば、図17に示すように、凹部150又は凸部160は、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116のどちらか一方に設けられてもよく、凹部150及び凸部160が混在していてもよい。この例では、凹部150及び凸部160は、アッパーシェル111の上面112にのみ設けられている。また、凹部150及び凸部160が設けられる数は、アウターシェル110の調整したい強度、すなわち消音器の調整したい衝撃吸収のし易さに合わせて変更可能である。また、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116のどちらにも、凹部150及び凸部160が設けられなくてもよい。
【0039】
(3d)図18に示すように、アウターシェル110の内部に、消音器100dの強度を向上する補強部材170を備えてもよい。補強部材170は、左右方向に延びるようにアッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116の少なくとも一方に沿うように配置される板状部材である。この例では、補強部材170は、アッパーシェル111の上面112側に設けられている。また、補強部材170は、アウターシェル110の外部に設けられていてもよい。このような構成によれば、消音器100dの衝撃吸収のし易さの調整を容易に行うことができる。すなわち、補強部材170が左右方向に延びるため、車両の左右方向からの衝撃Fに対して、アッパーシェル111の上面112及びアンダーシェル115の底面116、つまりアウターシェル110の上下方向に面する壁面が補強される。このため、アウターシェル110の強度を向上する方向に、消音器100dの衝撃吸収のし易さを調整することができる。
【0040】
(3e)2つの断熱室106,107は、密閉された部屋でなくてもよい。図19に示すように、例えば、アウターシェル110の左右の壁面、つまりアッパーシェル111及びアンダーシェル115が第1の側面113,117及び第2の側面114,118を有しなくてもよい。図19において、消音器100eの断熱室106,107が密閉されていないことを分かりやすくするために、車両用電池200と、第1のサイドフレーム21と、の間に隙間を設けているが、隙間を有さずに車両用電池200及び第1のサイドフレーム21に固定されていてもよい。
【0041】
(3f)消音器100,100a,100b,100c,100dの強度を調節するための構成として、凹部150、凸部160、湾曲した形状のセパレータ140b,140c及び補強部材170を例示したが、消音器100,100a,100b,100c,100dの強度を調節する方法はこれに限定されるものではない。例えば、アウターシェル110及びセパレータ140の材質、板厚等を変えることによって強度を調整してもよい。
【0042】
(3g)アウターシェル110は、アッパーシェル111及びアンダーシェル115のように上下方向に分割される2つの部材により形成される構成に限定されるものではなく、例えば、左右方向に分割される2つの部材により形成される構成であってもよい。また、例えば、アウターシェルは、1つの部材で形成されてもよいし、3つ以上の部材により形成されてもよい。
【0043】
(3h)消音器100は、第1のサイドフレーム21及び車両用電池200にボルトによって固定される構成を例示したが、消音器が車両の床下に設置される方法はこれに限定されるものではない。消音器は、車両の床下部材からつり下げられる構成であってもよい。
【0044】
(3i)消音器100,100a,100b,100c,100d,100eに加えて、車両の左右方向からの衝撃を吸収可能な衝撃吸収材が更に設けられてもよい。
(3j)凹部150及び凸部160が前後方向に延びる構成を例示したが、凹部及び凸部は、左右方向に延びてもよい。
【0045】
(3k)上記実施形態では、セパレータ140を6つ用いることで、アウターシェル110の内部をメインガス流路室101、2つの拡張室102,103、2つの共鳴室104,105及び2つの断熱室106,107の7つの部屋に区分けする構成を例示した。しかし、セパレータ140の数、またそれにより区分けされる部屋の数はこれに限定されるものではない。例えば、セパレータ140を3つ用いることで、排気ガス流路室、拡張室、共鳴室、断熱室の4つの部屋に区分けされる構成であってもよい。また、断熱室を有しない構成であってもよい。
【0046】
(3l)上記実施形態では、アウターシェル110は、概略長方形状の筒状の構成を例示したが、アウターシェルの形状はこれに限定されるものではない。例えば、アウターシェルは断面が円径状又は楕円径状の筒状の構成であってもよい。
【0047】
(3m)上記実施形態では、インレットパイプ11及びアウトレットパイプ12がそれぞれ前方エンドプレート120及び後方エンドプレート130に接続される構成を例示したが、インレットパイプ及びアウトレットパイプの接続方法はこれに限定されるものではない。例えば、インレットパイプ及びアウトレットパイプは、消音器の側壁など、前方エンドプレート及び後方エンドプレート以外に接続されてもよい。
【0048】
(3n)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0049】
1…排気システム、11…インレットパイプ、12…アウトレットパイプ、21…第1のサイドフレーム、22…第2のサイドフレーム、100,100a,100b,100c,100d,100e…消音器、101…メインガス流路室、102,103…拡張室、104,105…共鳴室、106,107…断熱室、110…アウターシェル、111…アッパーシェル、112,116,141b,141c…底面、113,117…第1の側面、114,118…第2の側面、115…アンダーシェル、120,120a…前方エンドプレート、121,121a,131,131a…貫通孔、130,130a…後方エンドプレート、140,140b,140c…セパレータ、141…区画面、142…第1の当接面、143…第2の当接面、150…凹部、160…凸部、170…補強部材、200…車両用電池、300…衝撃吸収材、A…中心軸、F…衝撃。
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