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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】地盤の改良工法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/08 20060101AFI20230419BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230419BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20230419BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C09K17/08 P
C09K17/06 P
C09K17/10 P
E02D3/12 102
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020023003
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127392
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】島田 聡之
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-245555(JP,A)
【文献】特開昭58-138778(JP,A)
【文献】特開昭53-064911(JP,A)
【文献】特開昭61-243885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌に、水硬性粉体と、水と、下記の(A)成分とを混合する、地盤の改良工法であって、
水硬性粉体が、ポルトランドセメントであり、
水硬性粉体と水とを、水/水硬性粉体の質量比が、40質量%以上120質量%以下で混合し、且つ、
(A)成分を水硬性粉体に対して2.0質量%以上8.0質量%以下となるように混合する、地盤の改良工法。
(A)成分:下記(A1)成分又は(A2)成分
(A1)成分:20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるカルシウム塩化物塩
(A2)成分:(A21)アルカリ金属塩化物塩、及びアルカリ土類金属塩化物塩から選ばれる1種以上の化合物(以下、(A21)成分という)と、(A22)20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるアルミニウム塩(但し、(A21)成分を除く、以下、(A22)成分という)
【請求項2】
前記土壌が、地盤工学会基準JGS0211-2009で規定される方法によって測定される土懸濁液のpHが6以下である、請求項1に記載の地盤の改良工法。
【請求項3】
前記土壌と、水硬性粉体と、水と、(A1)成分を混合する、請求項1又は2に記載の地盤の改良工法。
【請求項4】
(A1)成分が塩化カルシウムである、請求項3に記載の地盤の改良工法。
【請求項5】
(A1)成分を、水硬性粉体に対して、2.0質量%以上8.0質量%以下で混合する、請求項3又は4に記載の地盤の改良工法。
【請求項6】
前記土壌と、水硬性粉体と、水と、(A2)成分を混合する、請求項1又は2に記載の地盤の改良工法。
【請求項7】
(A21)成分が、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び塩化カルシウムから選ばれる1種以上であり、(A22)成分が、乳酸アルミニウム、ミョウバン、及び硫酸アルミニウムから選ばれる1種以上である、請求項6に記載の地盤の改良工法。
【請求項8】
(A2)成分を、水硬性粉体に対して、2.0質量%以上8.0質量%以下で混合する、請求項6又は7に記載の地盤の改良工法。
【請求項9】
(A21)成分と(A22)成分の質量比(A21)/(A22)が0.1以上10以下である、請求項6~8の何れか1項に記載の地盤の改良工法。
【請求項10】
更に(B)無水石膏、二水石膏、半水石膏および硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(以下、(B)成分という)を混合する、請求項1~9の何れか1項に記載の地盤の改良工法。
【請求項11】
(B)成分を、水硬性粉体に対して、0.1質量%以上30質量%以下で混合する、請求項10に記載の地盤の改良工法。
【請求項12】
前記土壌が泥炭である、請求項1~11の何れか1項に記載の地盤の改良工法。
【請求項13】
強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌、水硬性粉体、水、及び下記の(A)成分を含有する地盤改良体であって、
水硬性粉体が、ポルトランドセメントであり、
水/水硬性粉体の質量比が、40質量%以上120質量%以下であって、
(A)成分を水硬性粉体に対して2.0質量%以上8.0質量%以下で含有する地盤改良体。
(A)成分:下記(A1)成分又は(A2)成分
(A1)成分:20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるカルシウム塩化物塩
(A2)成分:(A21)アルカリ金属塩化物塩、及びアルカリ土類金属塩化物塩から選ばれる1種以上の化合物(以下、(A21)成分という)と、(A22)20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるアルミニウム塩(但し、(A21)成分を除く、以下、(A22)成分という)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の改良工法、地盤改良用添加剤組成物、及び地盤改良体に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を建設する基礎を地盤改良する方法として、コンクリート製又は鋼管製の地盤改良コラムを地盤に打ち込む地盤改良工法や、地盤を掘削しながらセメントミルクなどのセメント系固化材を注入し、掘削土と前記セメントミルクとが混じり合って形成されるコラム状の地盤改良体を地盤中に直接形成する地盤改良工法が知られている。
【0003】
セメント系固化材を土と添加混合により地盤の改質を行う地盤改良では、混合する土壌の性質、地盤改良を行う工法の種類などを考慮して、適切な固化材、配合比、添加剤などを選定することが望まれる。特に混合する土壌が腐植酸等の有機物を多く含む酸性土の場合、有機物がセメント表面に吸着することでセメントの水和反応が阻害されるためにセメント固化材を用いても望ましい強度が得られず、地盤改良が困難な場合がある。
【0004】
特許文献1には、土壌にポルトランドセメントを配して該土壌を固化する土質改良工法において、土壌に散布されたポルトランドセメントに対し、塩化ナトリウム20~30重量部、塩化マグネシウム20~30重量部、塩化カリウム35~45重量部、塩化カルシウム5~15重量部及びクエン酸4~8重量部からなる無機塩類を主成分とする添加剤を水溶液の状態で、前記ポルトランドセメント100重量部に対し前記添加剤の固形分が0.1~1重量部の割合になるように添加して、土壌とともに攪拌混合して上部から加圧し該土壌を固化することを特徴とする土質改良工法が開示されている。
特許文献2には、工事対象地盤から掘削された現場発生土に、木質系チップ材、及びセメント並びに水1000重量部に対して、塩化カルシウム20~40重量部、塩化マグネシウム30~50重量部、塩化アルミニウム15~30重量部、塩化コバルト0.1~3重量部を含有する硬化剤水溶液を添加、混合した後、この混合物を掘削された工事対象地盤に補填することを特徴とする工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-229984号公報
【文献】特開2006-169065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フミン酸、フルボ酸、ヒューミン、ビチューメンなどの有機物を含む酸性土の土壌を用いた場合でもソイルセメントの圧縮強度を高めることができる、地盤の改良工法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌に、水硬性粉体と、水と、下記の(A)成分とを混合する、地盤の改良工法であって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下となるように混合する、地盤の改良工法に関する。
(A)成分:水中で、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンと、塩化物イオンとを放出する供給源となる1種以上の化合物(但し、水硬性粉体は除く)
【0008】
また本発明は、前記(A)成分を含有する、地盤改良用添加剤であって、前記地盤の土壌が強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌に用いられる地盤改良用添加剤組成物に関する。
【0009】
また本発明は、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌、水硬性粉体、水、及び前記(A)成分を含有する地盤改良体であって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下で含有する地盤改良体に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フミン酸、フルボ酸、ヒューミン、ビチューメンなどの有機物を含む酸性土の土壌を用いた場合でもソイルセメントの圧縮強度を高めることができる、地盤の改良工法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔地盤の改良工法〕
本発明の地盤の改良工法は、土壌が、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌であっても効果が発現する。
また本発明の地盤の改良工法は、土壌が、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌であり、地盤工学会基準JGS0211-2009で規定される方法によって測定される土懸濁液のpHが6以下である土壌であっても効果が発現する。
【0012】
本発明が効果を発現するメカニズムは定かではないが以下のように推定される。土壌に水硬性粉体に加えて、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンを供給すると、水硬性粉体の水和反応を促進させ、ソイルセメントの強度向上に寄与することが知られているが、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンを過剰に加えると異常水和(急激に水和が進行し、擬凝結する)を起こし強度低下を引き起こす。そのため、通常は、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンを多量に添加することは行われなかった。しかしながら、本発明では、フミン酸、フルボ酸、ヒューミン、ビチューメンなどの有機物を含む酸性土の土壌を対象としており、当該土壌に、水硬性粉体に加えて、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンを多量に供給すると、水硬性粉体の水和反応を阻害する有機物が多量供給したアルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンと錯体を形成し、そのことにより有機物がセメント表面に吸着しなくなり水和阻害を緩和させ、ソイルセメントの強度向上が可能であることを、本発明者は見出した。同時に塩化物イオンが存在することでその効果をより促進する効果があることも本発明者は見出した。
【0013】
土壌は、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、そして、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下であるものである。ここで、強熱減量法とは日本工学規格JISA1226:2009で規定される方法である。
また土壌に含まれる有機質としては、フミン酸、ヒューミン、ビチューメン、フルボ酸から選ばれる1種以上の有機物が挙げられる。
【0014】
土壌は、地盤工学会基準JGS0211-2009で規定される方法によって測定される土懸濁液のpHが好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは5以下の酸性土であってよい。
【0015】
本発明に用いられる水硬性粉体は、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント等が挙げられる(但し、後述する(B)成分を除く)。水硬性粉体は、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、好ましくはセメント、例えば、普通ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントである。また水硬性粉体は、セメント等に高炉スラグ、製鋼スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポゾラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、製鋼スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。水硬性粉体は、普通ポルトランドセメント、高炉スラグセメント、及び製鋼スラグセメントから選ばれる1種以上が好ましい。
【0016】
なお、本発明では、水硬性粉体の量は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量であるが、水硬性粉体が、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬
性粉体の量に算入する(但し、後述する(B)成分の量は除かれる)。
【0017】
本発明の(A)成分は、水中で、アルミニウムイオン及び/又はカルシウムイオンと、塩化物イオンとを放出する供給源となる1種以上の化合物である。但し(A)成分からは、水硬性粉体は除かれる。
アルミニウムイオンを放出する供給源となる化合物としては、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ミョウバン、及び硝酸アルミニウムから選ばれる1種以上が挙げられる。
カルシウムイオンを放出する供給源となる化合物としては、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、チオシアン酸カルシウムから選ばれる1種以上が挙げられる。
塩化物イオンを放出する供給源となる化合物としては、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウムから選ばれる1種以上が挙げられる。
【0018】
(A)成分は、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、下記(A1)成分又は(A2)成分であることが好ましい。
(A1)成分:20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるカルシウム塩化物塩もしくはアルミニウム塩化物塩から選ばれる1種以上の化合物
(A2)成分:(A21)アルカリ金属塩化物塩、及びアルカリ土類金属塩化物塩から選ばれる1種以上の化合物(以下、(A21)成分という)と、(A22)20℃における水への溶解度が20g/100ml以上であるアルミニウム塩(但し、(A21)成分を除く、以下、(A22)成分という)
【0019】
(A1)成分は、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、塩化カルシウム、塩化アルミニウムから選ばれる1種以上が挙げられる
【0020】
(A2)成分中、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A21)成分は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムから選ばれる1種以上が挙げられ、安全性の観点から、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カルシウムから選ばれる1種以上である。
(A2)成分中、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A22)成分は、乳酸アルミニウム、ミョウバン、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムから選ばれる1種以上が挙げられ、ソイルセメントの強度向上の観点から、好ましくはミョウバン、及び硫酸アルミニウムから選ばれる1種以上である。
【0021】
本発明の地盤の改良工法では、土壌に、水硬性粉体を、水硬性粉体/土壌の質量比が、ソイルセメントの混合性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.25以上、そして、ソイルセメントの施工性の観点から、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.45以下で混合する。
【0022】
本発明の地盤の改良工法では、ソイルセメントの施工性の観点から、水硬性粉体と水とを、水/水硬性粉体の質量比が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、そして、好ましくは150質量%以下、より好ましくは120質量%以下、より更に好ましくは100質量%以下で混合する。この質量比は、(水の量/水硬性粉体の量)×100で算出される。
【0023】
本発明の地盤の改良工法では、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A)成分を、水硬性粉体に対して、0.5質量%以上、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、そして、10質量%以下、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下で混合する。
【0024】
本発明の地盤の改良工法では、(A)成分として(A1)成分を用いる場合、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A1)成分を、水硬性粉体に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下で混合する。
【0025】
本発明の地盤の改良工法では、(A)成分として(A2)成分を用いる場合、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A2)成分((A21)成分と(A22)成分の合計)を、水硬性粉体に対して、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8.0質量%以下で混合する。
本発明の地盤の改良工法では、(A)成分として(A2)成分を用いる場合、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A21)成分を、水硬性粉体に対して、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下で、(A22)成分を、水硬性粉体に対して、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上、そして、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下で混合する。
本発明の地盤の改良工法では、(A)成分として(A2)成分を用いる場合、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、(A21)成分と(A22)成分を、(A21)成分と(A22)成分との質量比(A21)/(A22)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.0以下となるように混合する。
【0026】
本発明の地盤の改良工法では、更に(B)成分として、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、無水石膏、二水石膏、半水石膏および硫酸ナトリウムから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を混合することが好ましい。
本発明の地盤の改良工法では、(B)成分を用いる場合、ソイルセメントの初期強度向上の観点から、(B)成分を、水硬性粉体に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは5.0質量%以上、より更に好ましくは7.0質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下で混合する。
【0027】
本発明の地盤の改良工法では、更にソイルセメントの流動性向上の観点から、セメント分散剤を混合してもよい。セメント分散剤としては、ポリカルボン酸系分散剤、及びナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系分散剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
本発明の地盤の改良工法は、表層改良工法、深層改良工法、鋼管杭工法、シールド工法などの工法に適用できる。例えば、深層改良工法では、高圧噴射工法、TRD工法、SMW工法などに適用できる。
【0029】
本発明の地盤の改良工法では、土壌と、水硬性粉体、(A)成分と、任意に(B)成分と、水とを、下記(I)の方法で土壌と混合することが、地盤改良体の均一性の観点から好ましい。
<方法(I)>
水と、水硬性粉体と、(A)成分と、任意に(B)成分とを含有するスラリーであって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下含有するスラリーを、土壌と混合する方法。
【0030】
以下、方法(I)について説明する。
方法(I)では、土壌1mあたりのスラリーの混合量が酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、150kg以上800kg以下であることが好ましい。
また、方法(I)では、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、ソイルセメント中の水硬性粉体/土壌の質量比が0.01以上0.6以下であることが好ましい。
また、方法(I)では、スラリーの調製に用いる水は、真水、海水の何れも用いることが出来る。スラリーの水の少なくとも一部が海水であってもよい。
【0031】
水と水硬性粉体と(A)成分と任意に(B)成分とを混合してスラリーを調製する具体的な方法は、セメントミルクなどの水硬性組成物を調製する公知の方法に準じてよい。
【0032】
方法(I)では、施工性の観点から、スラリーにおける水/水硬性粉体の質量比は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、そして、好ましくは150質量%以下、より好ましくは120質量%以下、より更に好ましくは100質量%以下である。
【0033】
スラリーを地盤に注入する具体的な方法は、公知の地盤改良工法に準じてよい。
スラリーを地盤に注入する方法として、例えば、噴射撹拌工法(一相流方式、二相流方式、三相流方式)や機械撹拌工法(CDM工法など)、さらに地中連続壁工法(SMW工法、TRD工法など)などが挙げられる。さらに水硬性粉体に(A)成分と任意に(B)成分とをドライブレンドした系では、粉体混合方式のDJM(Dry Jet Mixing)工法やスタビライザなどを使用した浅層改良などにも使用できる。
【0034】
方法(I)では、混合性の観点から、土壌1mあたりのスラリーの混合量が、好ましくは150kg以上、より好ましくは200kg以上、更に好ましくは250kg以上、そして、ソイルセメントの施工性の観点から、好ましくは800kg以下、より好ましくは500kg以下、更に好ましくは400kg以下である。
【0035】
スラリーと土壌の混合物は、公知の地盤改良工法に準じて固化させる。
【0036】
本発明の地盤の改良工法である、方法(I)のより具体的な例として、下記の工程1~3を有する地盤の改良工法が挙げられる。
<工程1>
水と、水硬性粉体と、(A)成分と、任意に(B)成分とを混合してスラリーを調製する工程であって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下となるように混合してスラリーを調製する工程
<工程2>
工程1で得られたスラリーを地盤に注入してスラリーと土壌とを混合して混合物を得る工程であって、土壌1mあたりのスラリーの混合量が150kg以上800kg以下であり、混合物中の水硬性粉体/土壌の質量比が0.01以上0.6以下である工程
<工程3>
工程2で得られたスラリーと土壌の混合物を固化させる工程
【0037】
〔地盤改良用添加剤組成物〕
本発明の地盤改良用添加剤組成物は、(A)成分を含有する、地盤改良用添加剤組成物であって、前記地盤の土壌が強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌に用いられる地盤改良用添加剤組成物である。
本発明の地盤改良用添加剤組成物は、更に(B)成分を含有することができる。本発明の地盤改良用添加剤組成物は、(A)成分、及び(B)成分からなるものであってもよい。
【0038】
かかる地盤改良用添加剤組成物は、地盤改良のために土壌と混合される地盤改良材、例えばセメントミルクなどの水硬性組成物に用いられる添加剤組成物である。
本発明の地盤改良用添加剤組成物の使用量は、地盤改良材の種類、土壌(地盤)の種類などを考慮して設定できるが、本発明の地盤の改良工法や本発明の地盤改良体で述べた量となることが好ましい。本発明の地盤の改良工法で述べた事項は、適宜、本発明の地盤改良用添加剤組成物に適用することができる。
【0039】
〔地盤改良用スラリー〕
本発明の地盤改良用スラリーは、水と、水硬性粉体と、(A)成分とを含有する地盤改良用スラリーであって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下で含有し、前記地盤の土壌が強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌に用いられる地盤改良用スラリーである。当該スラリーは、水/水硬性粉体の質量比が好ましくは40質量%以上150質量%以下である。本発明の地盤改良用スラリーは、水と、水硬性粉体と、本発明の地盤改良用添加剤組成物とを混合してなる地盤改良用スラリーであってよい。本発明の地盤改良用スラリーは、本発明の地盤の改良工法に好ましく用いられる。また、本発明の地盤改良用スラリーは、更に(B)を含有することができる。本発明の地盤の改良工法、地盤改良用添加剤組成物で述べた事項は、適宜、本発明の地盤改良用スラリーに適用することができる。
【0040】
本発明の地盤改良用スラリーは、地盤改良のために土壌と混合される地盤改良用のスラリー、例えばセメントミルクなどの水硬性組成物である。
本発明の地盤改良用スラリーの使用量は、地盤改良用スラリーの組成、土壌(地盤)の種類などを考慮して設定できるが、本発明の地盤の改良工法や本発明の地盤改良体で述べた量となることが好ましい。
本発明の地盤改良用スラリーは、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、土壌1mあたり好ましくは150kg以上、より好ましくは200kg以上、更に好ましくは250kg以上、そして、好ましくは800kg以下、より好ましくは500kg以下、更に好ましくは400kg以下で土壌と混合して用いられる。また、本発明の地盤改良用スラリーは、該スラリー中の水硬性粉体と土壌とが、水硬性粉体/土壌の質量比が好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.25以上、そして、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.45以下で土壌と混合して用いられる。
【0041】
〔地盤改良体〕
本発明の地盤改良体は、強熱減量法によって求められる有機質分量が30%以上である土壌、水硬性粉体、水、及び(A)成分を含有する地盤改良体であって、(A)成分を水硬性粉体に対して0.5質量%以上10質量%以下で含有する地盤改良体である。この地盤改良体は、酸性土を含むソイルセメントの強度向上の観点から、好ましくは水硬性粉体/土壌の質量比が0.01以上0.6以下である。この地盤改良体は、前記土壌と、水と、水硬性粉体と、(A)成分とを含有するスラリーを硬化させてなる地盤改良体であってよい。
本発明の地盤改良体は、前記土壌と、本発明の地盤改良用スラリーとを混合してなる、地盤改良体であってよい。
【0042】
本発明の地盤の改良工法、地盤改良用添加剤組成物、地盤改良用スラリーで述べた事項は、本発明の地盤改良体に適宜適用することができる。本発明の地盤改良体は、更に(B)成分を含有することができる。
本発明の地盤改良体における、水硬性粉体、(A)成分、(B)成分、土壌などの具体例、好ましい態様や、各質量比などの量的な規定も、それぞれ、本発明の地盤の改良工法、地盤改良用添加剤組成物、地盤改良用スラリーと同じである。
【実施例
【0043】
<配合成分>
以下の実施例、比較例、参考例で用いた成分を以下に示す。
(A)成分
(A1)成分
・塩化カルシウム:富士フィルム和光純薬株式会社製、20℃における水への溶解度74.5g/100ml
・塩化アルミニウム:富士フィルム和光純薬株式会社製、20℃における水への溶解度45.8g/100ml
(A2)成分
(A21)成分
・塩化ナトリウム:富士フィルム和光純薬株式会社製
・塩化カルシウム:富士フィルム和光純薬株式会社製
(A22)成分
・硫酸アルミニウム:富士フィルム和光純薬株式会社製、20℃における水への溶解度87g/100ml
・乳酸アルミニウム:富士フィルム和光純薬株式会社製、20℃における水への溶解度30.8g/100ml
・ミョウバン:富士フィルム和光純薬株式会社製、20℃における水への溶解度40.9g/100ml
【0044】
(B)成分
・無水石膏:サンエス石膏株式会社製
・二水石膏:富士フィルム和光純薬株式会社製
【0045】
水硬性粉体
・普通ポルトランドセメント:太平洋セメント株式会社製
【0046】
土壌は、表1に示す泥炭、スミクレー泥水を用いた。泥炭、スミクレー泥水の有機質分量は、日本工学規格JIS A1226:2009で規定される方法によって測定した。また泥炭、スミクレー泥水の土懸濁液のpHは、地盤工学会基準JGS0211-2009で規定される方法によって測定した。泥炭の土懸濁液のpHは4.2、スミクレー泥水の土懸濁液のpHは7であった。
【0047】
【表1】
【0048】
<実施例、比較例及び参考例>
表1の土壌を用いてソイルセメントを調製し、ソイルセメントに対する評価を以下のように行った。結果を表2、表3に示す。
【0049】
(1)ソイルセメントの調製
まず、セメントミルクを次の手順で調製した。500mlプラスチックカップ(500mLディスポカップ、ニッコー・ハンセン株式会社)内で水硬性粉体と(A)成分と、(B)成分を混合した。その混合物に水を加えハンドミキサーにて1分間混練してセメントスラリーを調製した。
セメントスラリーを調製するための水は上水道水を用いた。水硬性粉体と水は、水/水硬性粉体の質量比が60質量%となるように用いた。
(A)成分、(B)成分は、水硬性粉体に対する添加量が表2、3の通りとなるように用いた。
その後、別の500mlプラスチックカップ内に、土壌を投入し、セメントスラリーを、表2、3に記載の注入量となるように投入し(水硬性粉体/土壌の質量比=0.38)、ハンドミキサーにて3分間撹拌してソイルセメントを調製した。攪拌後、振動を与えて上面を均し、ラップフィルムで封をして所定時間まで22℃で静置した。
【0050】
(2)評価
調製したソイルセメントを用いて得た地盤改良体の強度を次の方法で評価した。ソイルセメントを、型枠(直径50mm×高さ100mm)に充填した。充填は、テーブルバイブレータで30秒の2層詰めとした。供試体は2本作製した。前記で得た供試体の硬化体(地盤改良体)の20℃気中7日強度を、一軸圧縮試験機により測定した。表2、3には、2本の供試体の強度の平均値を7日強度として示した。
【0051】
【表2】
【0052】
表2中、7日強度が0と表記されている比較例は、ソイルセメントが硬化しないことにより型枠から脱型できなかったため、強度を測定しなかった。
【0053】
【表3】
【0054】
表2中、有機物を含む酸性土の土壌である泥炭に、水硬性粉体のみで(A)成分を混合しない比較例1では、ソイルセメントを硬化させることができないが、泥炭に、水硬性粉体と(A)成分を特定量混合した本発明の実施例1~12では、ソイルセメントを硬化させることが出来ることが分かる。
また表3の結果から、有機物を含まない土壌であるスミクレー泥水に、水硬性粉体と(A)成分を添加しても、ソイルセメントの7日強度を向上させることはなく、本発明の地盤の改良工法は、特定の土壌に対してだけ、効果があることが分かる。