(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】位置測位装置及び位置測位方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/10 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
G01S5/10 Z
(21)【出願番号】P 2020030257
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】津町 直人
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-113597(JP,A)
【文献】特開2015-057895(JP,A)
【文献】特開平05-196718(JP,A)
【文献】特開2020-005128(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
H04W 4/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行う位置測位装置であって、
無線通信を行う複数の通信装置のそれぞれの位置を示す装置位置情報を記憶する記憶部と、
位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数
である必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記記憶部に記憶されている前記装置位置情報に基づいて、
複数の前記通信装置のうち、当該2つの通信装置
を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択する選択部と、
前記選択部が選択した
前記必要台数の前記通信装置から送信された無線信号を前記通信端末が受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行う位置測位部と、
を備え
、
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記装置位置情報と、前記位置測位部が測位した前記通信端末の位置を示す端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置のユークリッド距離、及び当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離を算出し、当該2つの通信装置を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値であって、当該2つの通信装置のユークリッド距離が大きければ大きいほど高くなり、当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離が小さければ小さいほど高くなる前記第2の評価値を算出し、
前記選択部は、前記算出部が算出した前記第2の評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記必要台数の前記通信装置を再選択し、
前記位置測位部は、前記選択部が再選択した前記必要台数の前記通信装置から送信された無線信号を前記通信端末が受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を再度行う、
位置測位装置。
【請求項2】
前記通信端末が前記通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である下り受信信号強度を示す下り受信信号強度情報を取得する取得部をさらに備え、
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、
前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が特定した前記下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度にさらに基づいて、前記評価値を算出し、
前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記下り受信信号強度が相対的に小さい前記通信装置を除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択する、
請求項1に記載の位置測位装置。
【請求項3】
前記通信端末と前記通信装置との通信における通信品質を示す通信品質情報を取得する取得部をさらに備え、
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、
前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が取得した前記通信品質情報が示す前記通信品質にさらに基づいて、前記評価値を算出し、
前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記通信品質が相対的に低い前記通信装置を除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択する、
請求項1又は2に記載の位置測位装置。
【請求項4】
無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行う位置測位装置であって、
無線通信を行う複数の通信装置のそれぞれの位置を示す装置位置情報を記憶する記憶部と、
位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数
である必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記記憶部に記憶されている前記装置位置情報に基づいて、
複数の前記通信装置のうち、当該2つの通信装置
を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択する選択部と、
前記選択部が選択した
前記必要台数の前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行う位置測位部と、
を備え
、
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記装置位置情報と、前記位置測位部が測位した前記通信端末の位置を示す端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置のユークリッド距離、及び当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離を算出し、当該2つの通信装置を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値であって、当該2つの通信装置のユークリッド距離が大きければ大きいほど高くなり、当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離が小さければ小さいほど高くなる前記第2の評価値を算出し、
前記選択部は、前記算出部が算出した前記第2の評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記必要台数の前記通信装置を再選択し、
前記位置測位部は、前記選択部が再選択した前記必要台数の前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を再度行う、
位置測位装置。
【請求項5】
前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である上り受信信号強度を示す上り受信信号強度情報を取得する取得部をさらに備え、
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、
前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が特定した前記上り受信信号強度情報が示す上り受信信号強度にさらに基づいて、前記評価値を算出し、
前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記上り受信信号強度が相対的に小さい前記通信装置を除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択する、
請求項4に記載の位置測位装置。
【請求項6】
無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行うコンピュータが実行する、
位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数
である必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記通信装置の位置を示す装置位置情報に基づいて、
複数の前記通信装置のうち、当該2つの通信装置
を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出するステップと、
算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、
前記必要台数の前記通信装置を選択するステップと、
前記通信端末が、選択された
前記必要台数の前記通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差、又は選択された
前記必要台数の前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて、位置測位を行うステップと、
前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記必要台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記装置位置情報と、測位した前記通信端末の位置を示す端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置のユークリッド距離、及び当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離を算出し、当該2つの通信装置を含む前記必要台数の通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値であって、当該2つの通信装置のユークリッド距離が大きければ大きいほど高くなり、当該2つの通信装置それぞれと前記通信端末とのユークリッド距離が小さければ小さいほど高くなる前記第2の評価値を算出するステップと、
算出した前記第2の評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記必要台数の前記通信装置を再選択するステップと、
前記通信端末が、再選択した前記必要台数の前記通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差、又は再選択された前記必要台数の前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を再度行うステップと、
を有する位置測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置測位装置及び位置測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線アクセス技術を利用した三次元位置測位手法として、無線信号の到来時間差(TDOA:Time Difference of Arrival)を利用した位置測位方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
TDOAを利用した二次元位置測位方法では、通信端末が、3つの既知位置に設置される通信装置から送信された信号を受信したときの各信号のTDOA、又は、3つの既知位置に設置される通信装置が、通信端末から送信された信号を受信したときの各信号のTDOAを利用して、通信端末の二次元位置測位を行う。また、TDOAを利用した三次元位置測位方法では、通信端末が、4つの既知位置に設置される通信装置から送信された信号を受信したときの各信号のTDOA、又は、4つの既知位置に設置される通信装置が、通信端末から送信された信号を受信したときの各信号のTDOAを利用して、通信端末の三次元位置測位を行う。
【0004】
以下に、TDOAを利用した位置測位方法について簡単に説明する。
図6は、通信端末300の周囲に設置されている通信装置200の例を示す図である。
【0005】
例えば、
図6に示すように、通信端末300の周囲に、既知位置に設置される3つの通信装置200として、通信装置200A~200Cが存在しているものとする。また、通信端末300は、通信装置200を介して位置測位装置100と通信可能であるものとする。通信端末300は、3つの通信装置200A~200Cから送信された無線信号を受信し、3つの通信装置200のうち、2つの通信装置200のそれぞれから送信された信号のTDOAを観測する。通信端末300は、3つの通信装置200が取り得る2つの通信装置200の組み合わせの全てについて、TDOAを観測する。
【0006】
通信端末300は、通信装置200を介して、観測したTDOAと、当該TDOAに対応する2つの通信装置200の組み合わせを示す情報とを関連付けて、位置測位装置100に送信する。
【0007】
位置測位装置100は、受信したTDOAと、当該TDOAに対応する2つの通信装置200の組み合わせを示す情報とに基づいて、通信端末300の位置測位を行う。具体的には、位置測位装置100は、2つの通信装置200の位置と、2つの通信装置200に対応するTDOAとに基づいて、当該TDOAを取り得る位置の候補を特定する。二次元位置測位の場合には、当該TDOAを取り得る位置の候補は双曲線で表され、三次元位置測位の場合には、当該TDOAを取り得る位置の候補は双曲面で表される。
【0008】
位置測位装置100は、二次元位置測位を行う場合には、2つのTDOAに基づいて2つの双曲線を特定し、2つの双曲線の交点の二次元の位置を通信端末300の位置として算出する。位置測位装置100は、三次元位置測位を行う場合には、3つのTDOAに基づいて3つの双曲面を特定し、3つの双曲面の交点の三次元の位置を通信端末300の位置として算出する。
【0009】
図7は、2つのTDOAにより2つの双曲線が特定された例を示す。
図7では、通信装置200Aと、通信装置200BとのTDOAに基づく双曲線H
ABと、通信装置200Aと、通信装置200CとのTDOAに基づく双曲線H
ACとが示されている。位置測位装置100は、
図7に示す双曲線H
ABと双曲線H
ACとの交点Pの位置を算出することにより、通信端末300の位置を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、通信端末と通信可能な通信装置の台数が、位置測位に用いる通信装置の台数に比べて多い場合、位置測位に利用する通信装置の選択によっては位置測位の精度が低下してしまうという問題がある。
【0012】
図8は、通信端末300の周囲に設置されている通信装置200の別の例を示す図である。
図8に示す例では、通信端末300の周囲に4つの通信装置200が設置されているとともに、通信装置200Cと、通信装置200Dとの距離が相対的に近接していることが確認できる。例えば、TDOAを観測する通信装置200として、通信装置200A、通信装置200C、通信装置200Dが選択されたとする。
【0013】
図9は、相対的に近接している通信装置200を含む3つの通信装置200に対応する2つのTDOAにより2つの双曲線が特定された例を示す。
図9に示すように、2つの双曲線H
AC及び双曲線H
ADは、
図7に示す2つの双曲線H
AB及び双曲線H
ACに比べて近似していることが確認できる。この結果、無線信号に含まれる雑音や、無線信号受信機の時間分解能等の様々な要因によって、TDOAがわずかに変動するだけでも推定位置となる双曲線の交点位置が大きくずれてしまい、位置測位の精度が低下してしまう。このように通信装置が近接しているケースは、モバイルネットワークにおけるマクロセル基地局とピコセル基地局とが近接している場合等で見受けられる。
【0014】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、位置測位の精度を向上させることができる位置測位装置及び位置測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様に係る位置測位装置は、無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行う位置測位装置であって、無線通信を行う複数の通信装置のそれぞれの位置を示す装置位置情報を記憶する記憶部と、位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記記憶部に記憶されている前記装置位置情報に基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択する選択部と、前記選択部が選択した前記通信装置から送信された無線信号を前記通信端末が受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行う位置測位部と、を備える。
【0016】
前記位置測位装置は、前記通信端末が前記通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である下り受信信号強度を示す下り受信信号強度情報を取得する取得部をさらに備え、前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が特定した前記下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度にさらに基づいて、前記評価値を算出し、前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記下り受信信号強度が相対的に小さい前記通信装置を除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択してもよい。
【0017】
前記位置測位装置は、前記通信端末と前記通信装置との通信における通信品質を示す通信品質情報を取得する取得部をさらに備え、前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が取得した前記通信品質情報が示す前記通信品質にさらに基づいて、前記評価値を算出し、前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記通信品質が相対的に低い前記通信装置を除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択してもよい。
【0018】
前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記装置位置情報と、前記位置測位部が測位した前記通信端末の位置を示す端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値を算出し、前記選択部は、前記算出部が算出した前記第2の評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を再選択し、前記位置測位部は、前記選択部が再選択した前記通信装置から送信された無線信号を前記通信端末が受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行ってもよい。
【0019】
本発明の第2の態様に係る位置測位装置は、無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行う位置測位装置であって、無線通信を行う複数の通信装置のそれぞれの位置を示す装置位置情報を記憶する記憶部と、位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記記憶部に記憶されている前記装置位置情報に基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択する選択部と、前記選択部が選択した前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行う位置測位部と、を備える。
【0020】
前記位置測位装置は、前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である上り受信信号強度を示す上り受信信号強度情報を取得する取得部をさらに備え、前記算出部は、前記通信端末と無線通信を行う前記通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記取得部が特定した前記上り受信信号強度情報が示す上り受信信号強度にさらに基づいて、前記評価値を算出し、前記選択部は、前記算出部が算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のうち、対応する前記上り受信信号強度が相対的に小さい前記通信装置を除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択してもよい。
【0021】
本発明の第3の態様に係る位置測位方法は、無線信号の到来時間差を利用して位置測位を行うコンピュータが実行する、位置を測位する対象である通信端末と無線通信を行う通信装置の台数が、前記位置測位に必要とされる前記通信装置の台数よりも多い場合に、前記通信端末と無線通信を行う複数の前記通信装置が取り得る2つの前記通信装置の組み合わせの全てについて、前記通信装置の位置を示す装置位置情報に基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの前記位置測位の精度の高さを示す評価値を算出するステップと、算出した前記評価値が相対的に低い前記組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、前記位置測位に必要とされる前記台数の前記通信装置を選択するステップと、前記通信端末が、選択された前記通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差、又は選択された前記通信装置が前記通信端末から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて、位置測位を行うステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、位置測位の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る位置測位装置の概要を説明する図である。
【
図2】第1実施形態に係る位置測位装置の構成を示す図である。
【
図4】通信端末と無線通信を行う通信装置が5つである場合において、各組み合わせに対応する評価値を算出した例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る位置測位装置がアイテムの特徴ベクトルを生成するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】通信端末の周囲に設置されている通信装置の例を示す図である。
【
図7】2つのTDOAにより2つの双曲線が特定された例を示す。
【
図8】通信端末の周囲に設置されている通信装置の別の例を示す図である。
【
図9】相対的に近接している通信装置を含む3つの通信装置に対応する2つのTDOAにより2つの双曲線が特定された例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
[位置測位装置1の概要]
図1は、第1実施形態に係る位置測位装置1の概要を説明する図である。位置測位装置1は、同じタイミングで送信された無線信号の到来時間差であるTDOAを利用して、通信端末3の三次元測位を行うコンピュータである。
【0025】
位置測位装置1は、位置を測位する対象である通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2と通信可能に接続されている。通信装置2は、例えば、モバイルネットワークにおけるマクロセル基地局やピコセル基地局であり、設置位置が予め定められているものとする。
【0026】
位置測位装置1は、通信端末3が、通信装置2から送信された無線信号を受信したときの各無線信号のTDOAと、TDOAの算出に用いた2つの通信装置2の組合せを示す組み合わせ情報を、当該通信装置2を介して、当該通信端末3から取得する(
図1の(1))。
【0027】
位置測位装置1は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、取得した組み合わせ情報が示す2つの通信装置2の組合せについて、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する(
図1の(2))。本実施形態では、位置測位装置1は、通信装置2の位置を示す位置情報に基づいて評価値を算出する。例えば、位置測位装置1は、2つの通信装置2の位置が近ければ近いほど、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度が低くなるように評価値を算出する。
【0028】
位置測位装置1は、算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とする台数の通信装置2を選択する(
図1の(3))。
図1に示す例では、位置測位装置1は、位置測位に必要とする台数の通信装置2として、通信装置2A、通信装置2B、通信装置2C、通信装置2Eを選択する。
【0029】
位置測位装置1は、通信端末3が、選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて、位置測位を行う(
図1の(4))。このようにすることで、位置測位装置1は、互いに近接している2つの通信装置2のうち、いずれかの通信装置2を除外して位置測位を行うことができるので、位置測位の精度を向上させることができる。
続いて、位置測位装置1の構成について説明する。
【0030】
[位置測位装置1の構成例]
図2は、第1実施形態に係る位置測位装置1の構成を示す図である。位置測位装置1は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0031】
通信部11は、携帯電話回線等の通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。
記憶部12は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等である。記憶部12は、位置測位装置1を機能させるための各種プログラムを記憶する。例えば、記憶部12は、位置測位装置1の制御部13を、取得部131、算出部132、選択部133、位置測位部134、及び出力部135として機能させる位置測位プログラムを記憶する。
【0032】
また、記憶部12は、複数の通信装置2のそれぞれの位置を示す装置位置情報を記憶する。具体的には、記憶部12は、通信装置2を識別する装置識別情報としての装置IDと、装置位置情報とを関連付けた位置情報テーブルを記憶する。
図3は、位置情報テーブルの一例を示す図である。
図3に示すように、位置情報テーブルにおいて、装置IDと、装置位置情報とが関連付けられていることが確認できる。また、装置位置情報は、例えば、通信装置2の設置場所の緯度経度と、通信装置2の設置場所の標高とを示す情報である。
【0033】
制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部13は、記憶部12に記憶されている各種プログラムを実行することにより、位置測位装置1に係る機能を制御する。制御部13は、記憶部12に記憶されている位置測位プログラムを実行することにより、取得部131、算出部132、選択部133、位置測位部134、及び出力部135として機能する。
【0034】
取得部131は、通信部11を介して、通信端末3から、TDOAを示すTDOA情報と、当該TDOAの算出に用いた2つの通信装置2の組み合わせを示す組み合わせ情報とを取得する。具体的には、まず、通信端末3は、通信可能な複数の通信装置2から、当該複数の通信装置2が同一のタイミングで送信した無線信号を受信する。通信端末3は、複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、受信した無線信号のTDOAを算出する。通信端末3は、通信装置2を介して、TDOAを示すTDOA情報と、当該TDOAの算出に用いた2つの通信装置2の組み合わせを示す組み合わせ情報とを位置測位装置1に送信する。ここで、組み合わせ情報は、組み合わせに対応する2つの通信装置2の装置IDである。取得部131は、通信装置2を介して、通信端末3から、TDOA情報と、組み合わせ情報とを取得する。
【0035】
算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報に基づいて、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する。本実施形態では、位置測位装置1は三次元測位を行うことから、位置測位に必要とされる通信装置2の台数は4台である。算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、5台以上である場合に、評価値を算出する。
【0036】
具体的にはまず、算出部132は、記憶部12に記憶されている位置情報テーブルを参照して、取得部131が取得した複数の組み合わせ情報のそれぞれに含まれる装置IDに関連付けられている装置位置情報を特定する。算出部132は、複数の組み合わせ情報のそれぞれについて、装置IDから特定した装置位置情報に基づいて、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離を算出する。算出部132は、装置位置情報が示す緯度、経度、標高を用いてユークリッド距離を算出してもよいし、装置位置情報が示す緯度及び経度を用いて水平面投影時のユークリッド距離を算出してもよい。
【0037】
例えば、通信端末3と無線通信を行う通信装置2が5つである場合、算出部132は、5つの通信装置2が取り得る2つの通信装置2の全ての組み合わせに対して、2つの通信装置2のユークリッド距離を算出する。
【0038】
続いて、算出部132は、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離の入力に対して、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を出力する評価関数を用いて、当該評価値を算出する。この評価関数は、ユークリッド距離が大きければ大きいほど、高い評価値を出力する関数である。例えば、評価関数は、ユークリッド距離に比例する評価値を出力する関数であってもよい。
【0039】
図4は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2が5つである場合において、各組み合わせに対応する評価値を算出した例を示す図である。
図4に示す例では、装置ID「C」、「D」に対応する2つの通信装置2の評価値が「100」であり、最も低いことが確認できる。
【0040】
選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。
図4に示す例では、装置ID「C」、「D」に対応する2つの通信装置2の評価値が「100」であることから、選択部133は、装置ID「C」、「D」に対応する2つの通信装置2のうち、装置ID「D」に対応する通信装置2を除外し、位置測位に必要とされる通信装置2として、装置ID「A」、「B」、「C」、「E」の4つの通信装置2を選択する。
【0041】
位置測位部134は、通信端末3が、選択部133が選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行う。具体的には、位置測位部134は、取得部131が取得した複数のTDOAのうち、選択部133が選択した4つの通信装置2に対応するTDOAに基づいて、三次元位置測位を行う。
【0042】
例えば、位置測位部134は、装置ID「A」、「B」に対応する通信装置2から無線信号を受信したときのTDOA、装置ID「A」、「C」に対応する通信装置2から無線信号を受信したときのTDOA、装置ID「A」、「E」に対応する通信装置2から無線信号を受信したときのTDOAに基づいて、3つの双曲面を算出し、3つの双曲面の交点を通信端末3の位置として算出する。
【0043】
出力部135は、位置測位部134が算出した通信端末3の位置を示す端末位置情報を出力する。例えば、出力部135は、位置測位部134が算出した端末位置情報を、通信部11及び通信装置2を介して通信端末3に送信する。これにより、通信端末3は、自身の位置を特定することができる。
【0044】
[位置測位装置1における処理の流れ]
続いて、位置測位装置1における処理の流れの一例について説明する。
図5は、第1実施形態に係る位置測位装置1がアイテムの特徴ベクトルを生成するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
まず、取得部131は、通信端末3から、TDOAを示すTDOA情報と、当該TDOAの算出に用いた2つの通信装置2の組み合わせを示す組み合わせ情報とを取得する(S1)。
続いて、算出部132は、通信端末3から取得したTDOA情報に基づいて、通信端末3が通信している通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数以上か否かを判定する(S2)。算出部132は、通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数以上であると判定すると、S3に処理を移し、通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数未満であると判定すると、本フローチャートに係る処理を終了する。
【0046】
続いて、算出部132は、通信端末3から取得したTDOA情報に基づいて、通信端末3が通信している通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数よりも多いか否かを判定する(S3)。算出部132は、通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数よりも多いと判定すると、S4に処理を移し、通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数よりも多くない、すなわち、通信装置2の台数が位置測位に必要とされる台数と等しいと判定すると、S6に処理を移す。
【0047】
続いて、算出部132は、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する(S4)。
【0048】
続いて、選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する(S5)。
【0049】
位置測位部134は、取得部131が取得した複数のTDOAのうち、選択部133が選択した通信装置2に対応するTDOAに基づいて、位置測位を行う(S6)。
続いて、出力部135は、位置測位部134が算出した通信端末3の位置を示す端末位置情報を出力する(S7)。
【0050】
[シミュレーション結果]
コンピュータシミュレーションによって、通信端末3をあるセル内の1.5メートルの高さにランダムに配置し、当該通信端末3からユークリッド距離が短い順に、位置測位に用いる通信装置2を選択し、選択した通信装置2のTDOA情報を用いて三次元位置を測定した場合の実際の位置との測位誤差を算出した。ここで、隣接する2つの通信装置2の距離は、約2000mである。通信装置2における無線信号の受信時のサンプリング間隔を8ナノ秒である。
【0051】
ここで、上記セル内の中央に位置する通信装置2に対し、水平方向に100メートル離れた地点の高さ10メートルの位置に通信装置2を設置した場合、すなわち、上記セル内の中央に位置する通信装置2と、新たに配置した通信装置2が近接している場合を考える。この場合、近接した2つの通信装置2を含んで、ユークリッド距離が短い順に通信装置2を4つ選択し、4つの通信装置2のそれぞれに対応するTDOA情報を用いて三次元位置測位誤差を計算した。この結果、算出された測位誤差の中央値は16.1メートルとなった。この結果から、近接した2つの通信装置2を用いて三次元位置測位に用いると、測位精度が低下していることが確認できた。
【0052】
さらにその後、本実施形態に係る位置測位装置1を用いて、評価値を算出するとともに、評価値に基づいて、近接した2つの通信装置2のうち少なくとも一方を除外することにより、通信装置2を選択して三次元測位を行った。この結果、算出された測位誤差の中央値は10.6メートルとなった。これにより、位置測位精度が低下する程度に2つの通信装置2が近接している場合、一方の通信装置を三次元位置測位の対象から除外したことにより、位置測位精度を向上させることが確認できた。
【0053】
[変形例1]
なお、第1実施形態において、位置測位装置1は、三次元測位を行うこととしたが、これに限らない。位置測位装置1は、二次元測位を行ってもよい。この場合、位置測位に必要とされる通信装置2の台数は3台である。したがって、算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、4台以上である場合に、評価値を算出する。そして、選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、3つの通信装置2を選択する。
【0054】
[変形例2]
また、第1実施形態において、位置測位部134は、通信端末3が、選択部133が選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行ったが、これに限らない。位置測位部134は、通信装置2が通信端末3から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて、位置測位を行ってもよい。
【0055】
この場合、取得部131は、通信端末3と通信を行う複数の通信装置2のそれぞれから、通信端末3が送信した無線信号を通信装置2が受信した時刻を示す受信時刻情報を取得し、受信時刻情報に基づいて、TDOA情報と、当該TDOAの算出に用いた2つの通信装置2の組み合わせを示す組み合わせ情報とを取得する。そして、位置測位部134は、取得部131が取得した複数のTDOAのうち、選択部133が選択した通信装置2に対応するTDOAに基づいて、位置測位を行う。このようにすることで、位置測位装置1は、通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行う場合と同様に位置測位を行うことができる。
【0056】
[第1実施形態における効果]
以上の通り、本実施形態に係る位置測位装置1は、位置を測位する対象である通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報に基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を算出する。そして、位置測位装置1は、算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの前記通信装置のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択し、通信端末3が、選択された通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差、又は選択された通信装置2が通信端末3から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて、位置測位を行う。このようにすることで、位置測位装置1は、位置測位の精度を向上させることができる。
【0057】
<第2実施形態>
[受信信号強度に基づいて評価値を算出する]
続いて、第2実施形態について説明する。通信端末3が通信装置2から受信する無線信号の信号強度が小さい場合、無線信号に含まれるノイズの影響を受けて、無線信号の受信の検出タイミングに誤差が生じることが考えられる。検出タイミングに誤差が生じると、TDOAにも誤差が生じ、位置測位の精度が低くなる。これに対して、第2実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3が通信装置2から受信した無線信号の受信信号強度にさらに基づいて評価値を算出する点で第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態に係る位置測位装置1について説明する。なお、第1実施形態と同じ部分については適宜説明を省略する。
【0058】
第2実施形態において、取得部131は、通信端末3が通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である下り受信信号強度を示す下り受信信号強度情報を取得する。具体的には、取得部131は、通信端末3から、TDOA情報及び組み合わせ情報とともに、通信装置2の装置IDに関連付けられた下り受信信号強度情報を取得する。
【0059】
算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、取得部131が取得した下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度とに基づいて、評価値を算出する。
【0060】
具体的にはまず、算出部132は、第1実施形態と同様に、取得部131が取得した複数の組み合わせ情報のそれぞれについて、装置IDから特定した装置位置情報に基づいて、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離を算出する。
【0061】
続いて、算出部132は、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の装置IDに関連付けられている下り受信信号強度情報を特定する。そして、算出部132は、組み合わせ情報に対応するユークリッド距離と、当該組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の装置IDに関連付けられている下り受信信号強度情報の入力に対して、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を出力する評価関数を用いて、当該評価値を算出する。
【0062】
この評価関数は、ユークリッド距離が大きければ大きいほど、高い評価値を出力する。また、この評価関数は、2つの下り受信信号強度情報が示す2つの下り受信信号強度の合計が大きければ大きいほど、高い評価値を出力する。
【0063】
選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のうち、対応する下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度が相対的に小さい通信装置2を除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。このようにすることで、位置測位装置1は、下り受信信号強度が小さいことによりノイズの影響を受けやすく、TDOAの観測精度が低くなる可能性が高い通信装置2を除外することができる。
【0064】
位置測位部134は、第1実施形態と同様に、通信端末3が、選択部133が選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行う。
【0065】
[変形例]
なお、第2実施形態において、位置測位部134が、通信装置2が通信端末3から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて、位置測位を行う場合、取得部131は、通信装置2が通信端末3から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である上り受信信号強度を示す上り受信信号強度情報を取得してもよい。そして、算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、取得部131が取得した上り受信信号強度情報が示す上り受信信号強度とに基づいて、評価値を算出してもよい。
【0066】
そして、選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のうち、対応する下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度が相対的に小さい通信装置2を除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。このようにすることで、位置測位装置1は、上り受信信号強度が小さいことによりノイズの影響を受けやすく、TDOAの観測精度が低くなる可能性が高い通信装置2を除外することができる。
【0067】
[第2実施形態における効果]
以上の通り、第2実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3が通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の受信信号強度である下り受信信号強度を示す下り受信信号強度情報を取得し、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、取得部131が取得した下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度とに基づいて、評価値を算出する。そして、位置測位装置1は、算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のうち、対応する下り受信信号強度情報が示す下り受信信号強度が相対的に小さい通信装置2を除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。
【0068】
このようにすることで、位置測位装置1は、下り受信信号強度が小さく、無線信号に含まれているノイズの影響を受けやすい通信装置2を除外して位置測位を行うことができるので、位置測位の精度を向上させることができる。
【0069】
<第3実施形態>
[通信品質に基づいて評価値を算出する]
続いて、第3実施形態について説明する。通信端末3が通信装置2から受信する無線信号の通信品質が低い場合、無線信号に含まれるノイズの影響を受けて、無線信号の受信の検出タイミングに誤差が生じることが考えられる。これに対して、第3実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3が通信装置2から受信した無線信号の通信品質にさらに基づいて評価値を算出する点で第1実施形態と異なる。
【0070】
第2実施形態において、取得部131は、通信端末3と通信装置2との通信における通信品質を示す通信品質情報として、チャネル品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)を取得する。具体的には、取得部131は、通信端末3から、TDOA情報及び組み合わせ情報とともに、通信装置2の装置IDに関連付けられたチャネル品質情報を取得する。なお、本実施形態では、通信品質情報としてチャネル品質情報を用いる例について説明するが、通信品質情報は、チャネル品質情報に限らない。取得部131は、チャネル品質情報として、ランク指標(RI:Rank Indicator)、プレコーディング行列指標(PMI:Precoding Matrix Indicator)等の他の指標を取得してもよい。
【0071】
算出部132は、通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、取得部131が取得したチャネル品質情報が示す通信品質とに基づいて、評価値を算出する。
【0072】
具体的にはまず、算出部132は、第1実施形態と同様に、取得部131が取得した複数の組み合わせ情報のそれぞれについて、装置IDから特定した装置位置情報に基づいて、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離を算出する。
【0073】
続いて、算出部132は、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の装置IDに関連付けられているチャネル品質情報を特定する。そして、算出部132は、組み合わせ情報に対応するユークリッド距離と、当該組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の装置IDに関連付けられているチャネル品質情報の入力に対して、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す評価値を出力する評価関数を用いて、当該評価値を算出する。
【0074】
この評価関数は、ユークリッド距離が大きければ大きいほど、高い評価値を出力する。また、この評価関数は、2つのチャネル品質情報が示す2つのチャネル品質の合計が大きければ大きいほど、高い評価値を出力する。
【0075】
選択部133は、算出部132が算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のうち、対応する通信品質が相対的に低い通信装置2を除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。このようにすることで、位置測位装置1は、通信品質が低いことによりノイズの影響を受けやすく、TDOAの観測精度が低くなる可能性が高い通信装置2を除外することができる。
【0076】
位置測位部134は、第1実施形態と同様に、通信端末3が、選択部133が選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行う。
【0077】
[第3実施形態における効果]
以上の通り、第3実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3と通信装置2との通信における通信品質を示す通信品質情報を取得し、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、取得部131が取得したチャネル品質情報が示す通信品質とに基づいて、評価値を算出する。そして、位置測位装置1は、算出した評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のうち、対応する通信品質が相対的に低い通信装置2を除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を選択する。
【0078】
このようにすることで、位置測位装置1は、通信品質が悪く、無線信号に含まれているノイズの影響を受けやすい通信装置2を除外して位置測位を行うことができるので、位置測位の精度を向上させることができる。
【0079】
<第4実施形態>
[通信端末3の位置と、通信装置2との位置関係に基づいて評価値を算出する]
続いて、第4実施形態について説明する。第1実施形態では、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の位置が近いと評価値が低くなるように評価値を算出したが、位置測位の精度の高さは、2つの通信装置2のユークリッド距離だけではなく、これらの通信装置2と、通信端末3との高さも考慮して算出することが好ましい。例えば、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2の位置が相対的に近かったとしても、これらの通信装置2と、通信端末3とのユークリッド距離が相対的に大きい場合には、これらの通信装置2と、他の通信装置2とによって求められる双曲面が類似したものとなり、精度良く位置測位が行えない。これに対し、第4実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3の位置と、通信装置2との位置関係に基づいて評価値を算出する点で、第1実施形態と異なる。
【0080】
第4実施形態に係る算出部132は、位置を測位する対象である通信端末3と無線通信を行う通信装置2の台数が、位置測位に必要とされる通信装置2の台数よりも多い場合に、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、記憶部12に記憶されている装置位置情報と、位置測位部134が測位した通信端末3の端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値を算出する。
【0081】
具体的には、算出部132は、位置測位部134が端末位置情報を算出した後に、当該端末位置情報に基づいて、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のそれぞれと、通信端末3とのユークリッド距離を算出する。
【0082】
続いて、算出部132は、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離と、当該2つの通信装置2のそれぞれと通信端末3とのユークリッド距離との入力に対して、当該2つの通信装置2を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値を出力する評価関数を用いて、当該第2の評価値を算出する。この評価関数は、組み合わせ情報に対応する2つの通信装置2のユークリッド距離が大きければ大きいほど、高い評価値を出力し、当該2つの通信装置2のそれぞれと通信端末3とのユークリッド距離が小さければ小さいほど高い評価値を出力する。
【0083】
選択部133は、算出部132が算出した第2の評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を再選択する。
【0084】
その後、位置測位部134は、通信端末3が、選択部133が第2の評価値に基づいて再選択した通信装置2から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号のTDOAに基づいて位置測位を行う。
【0085】
[第4実施形態における効果]
以上の通り、第4実施形態に係る位置測位装置1は、通信端末3と無線通信を行う複数の通信装置2が取り得る2つの通信装置2の組み合わせの全てについて、装置位置情報と、位置測位部134が測位した通信端末3の位置を示す端末位置情報とに基づいて、当該2つの通信装置を用いたときの位置測位の精度の高さを示す第2の評価値を算出する。そして、位置測位装置1は、算出した第2の評価値が相対的に低い組み合わせに対応する2つの通信装置2のいずれかを除外することにより、位置測位に必要とされる台数の通信装置2を再選択し、当該通信装置から送信された無線信号を受信したときの当該無線信号の到来時間差に基づいて位置測位を行う。このようにすることで、位置測位装置1は、通信端末3の位置と、通信装置2との位置関係も考慮して、位置測位の精度をさらに向上させることができる。
【0086】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施形態も、本発明の実施形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施形態の効果は、もとの実施形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0087】
1・・・位置測位装置、11・・・通信部、12・・・記憶部、13・・・制御部、131・・・取得部、132・・・算出部、133・・・選択部、134・・・位置測位部、135・・・出力部、2・・・通信装置、3・・・通信端末