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特許7265524電気パルスを哺乳動物の望ましい身体部分へ送達するための装置、例えば動的電気強化疼痛抑制(DEEPC)装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】電気パルスを哺乳動物の望ましい身体部分へ送達するための装置、例えば動的電気強化疼痛抑制(DEEPC)装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20230419BHJP
【FI】
A61N1/32
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020504394
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2018070473
(87)【国際公開番号】W WO2019020809
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】62/538,402
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520028461
【氏名又は名称】スカンディナヴィアン キーモテック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリック,モーハン
(72)【発明者】
【氏名】ペアッソン,ベアティル アールアール
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/161201(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00 ― 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物の望ましい組織に電気パルスを送達するための装置(1)であって、前記装置(1)は、パルス発生装置(100)と、該パルス発生装置(100)に接続された電極装置(200,500,600)とを備え、
-前記パルス発生装置(100)は、インピーダンス測定モジュール(108)によって、前記電極装置(200,500,600)が、使用時に、前記望ましい組織を含む望ましい身体部分に挿入されたとき、そして様々な周波数を有する交流に基づくパルスを電極(200-1,501,601)と参照電極(205;502,503;602-605)との間の前記望ましい身体部分に発生させるときに、前記電極装置(200,500,600)の一方の前記電極(200-1,501,601)と前記電極装置(200,500,600)の前記参照電極(205;502,503;602-605)との間のコンダクタンスおよび位相角の値を決定するように構成され、
-前記決定されたコンダクタンスおよび位相角の値に基づいて、前記パルス発生装置(100)は、前記電極装置(200,500,600)が、使用時に、前記望ましい身体部分に挿入されたときに、前記電極装置(200,500,600)が貫通する組織のタイプを決定するように構成され、
-前記決定されたコンダクタンスおよび位相角の値に基づいて、前記パルス発生装置(100)は、使用中の前記電極装置(200,500,600)が前記望ましい組織に配置されたときに、前記望ましい組織に送達される電気パルスの1つ以上のパラメータを決定するように構成され、
-前記パルス発生装置(100)は、前記決定された1つ以上のパラメータを有する前記電気パルスを発生させるように構成され、
前記パルス発生装置(100)は、複数の異なる周波数でコンダクタンスおよび位相角の値を決定するように構成され、前記パルス発生装置(100)は、前記決定された位相角値の前記決定されたコンダクタンス値に対する比率が周波数の変化に応じてどのように変化するかに基づいて、前記組織のタイプを決定するように構成される、
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記パルス発生装置(100)は、1~1000kHzの範囲の周波数を有する交流に基づいて電気パルスを発生させるように構成される、請求項に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記パルス発生装置(100)は、電気パルスpの数Nについて比吸収エネルギーsWを、
のように決定するように構成され、ここで、σρは前記組織の組織伝導率[S/m]、Eは電界強度[V/m]、tpはパルス長[s]、Nは印加パルス数、pは前記組織の密度であり、また前記電気パルスの適用後の前記組織の伝導率σafterは、次のうちの1つとして決定され、
σafter=σbefore・Gafter/Gbefore、ここで、G=1/R[Ω-1,S]はコンダクタンスであり、
σafter=σbefore・tgθafter/tgθbefore、ここで、θは位相角である、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記パルス発生装置(100)は、電気パルスの前記1つ以上のパラメータを、
1000Vの最大電圧と、
25Vの最小電圧と、
16Aの最大電流と、
0.2Aの最小電流と、
12の最大パルス数と、
1の最小パルス数と、
10J/gの最大比吸収エネルギーと、
2J/gの最小比吸収エネルギーと
のうちの1つ以上として決定するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記電極装置(200)は、
長手方向包絡面に沿った細長い絶縁カバー(202)を含む1つ以上の針電極(200-1)であって、その一端に、使用時に前記望ましい身体部分に貫通するように構成された先端部(201)を有し、その他端は前記パルス発生装置(100)に接続されるように構成される、1つ以上の針電極と、
前記参照電極(205)であって、ばね(204)で前記針電極(200-1)を囲み、使用時に前記望ましい身体部分の入口面を押すように構成された摺動参照電極(205)である、参照電極と
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記電極装置(500)は、
使用時に前記望ましい身体部分に貫通するように構成された前端部を除いて絶縁ケーシングを備え、他端が前記パルス発生装置(100)に接続されるように構成された中空管(506)と、
前記前端部の開口部から外に延びるように構成された第1の電極(501)と、
1つ以上の電極対(502~505)であって、電極対の両方の電極は、前記前端部から共通の距離で前記管(506)の側壁のそれぞれの開口部から外に延びるように構成される、1つ以上の電極対と
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記電極装置(600)が、膨張可能な多電極装置であって、
使用時に前記望ましい身体部分に貫通するように構成された前端部を除いて絶縁ケーシングを備え、他端が前記パルス発生装置(100)に接続されるように構成された中空管(600a)と、
前記前端部の開口部から外に延びるように構成された中央の堅い電極(601)と、
可撓性鋼片で作製された電極を含む1つ以上の電極対(602~605)と、
膨張容積(608)であって、膨張すると、前記1つ以上の電極対(602~605)の電極の一部を前記管(600a)の側壁のそれぞれの開口部から押し出し、前記中央の硬い電極(601)を前記前端部の開口部を通って前方へ押すように構成された、膨張容積と
を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の実施形態は、装置、例えばDEEPC(商標)装置、およびその方法に関する。特に、本明細書の実施形態は、哺乳動物の望ましい身体部分への電気パルスの送達に関する。
【背景技術】
【0002】
生体細胞および組織に印加されるパルス電界は、細胞膜に横チャネルまたは細孔を作製し、これは、電気透過処理またはエレクトロポレーションと呼ばれる現象である。細孔形成の説明は、パルス印加電界による脂質二重層膜の構造における界面水の再編成である。
【0003】
エレクトロポレーションは、細胞膜を通る親水性分子の移動の確率を高める。したがって、細胞外の分子は細胞質に移動し、細胞質から細胞内抗原分子を細胞外空間に移動する。膜の再密閉および細胞の回復の速度は、印加電圧の強さと、印加電気パルスの数および長さとに依存する。
【0004】
実験、臨床およびバイオテクノロジーの用途向けのほとんどのエレクトロポレーションプロトコルは、パルス、例えば少なくとも100μSの持続時間を有する約1000V/cmの直流(DC)パルスを使用する。しかし、膜透過処理は、100nsの範囲のパルス長のより短いパルスでも起こり得るが、電界強度ははるかに高くなる。
【0005】
電気透過処理の概念は、腫瘍細胞の透過性を高めることにより腫瘍治療に採用され、したがって、投与された細胞毒性剤の固形腫瘍へのアクセスを強化する。一般的に、通常は腫瘍細胞膜に浸透しない高毒性の抗生物質である低用量のブレオマイシンを、電気パルスが腫瘍に印加される前に、静脈内投与(15000~25000国際単位(IU))するか、腫瘍に直接投与(260~1000IU/cm)する。しかしながら、薬剤の静脈内投与と直接投与の組み合わせが適用されてもよい。電気パルスを印加することにより、化学療法の治療効果を高めることができる。
【0006】
臨床的に適用されるこの手順は通常、電気化学療法(ECT)と呼ばれ、通常8個の矩形パルスのパッケージが、パルス毎に100μsの持続時間で、約1000V/cm(つまり、約4~12mm、例えば約8~10mmの距離のピン電極間に印加される1000Vの電圧を意味する)の公称電界強度で2秒間以内で送達される。例示的なプロトコルでは、アプリケータ内の多数の(例えば、12)対の電極にわたって合計96個の電気パルスが送達され得る。一般的な仮説によると、ECTの効果は印加電圧と電極間の距離によるものである。パルスあたりの吸収エネルギーは約500J/kg、電流は約16Aと推定される。ただし、これは、特に頭頸部の治療において、組織に有害であると思われる。高すぎる電界強度および高すぎる電流を使用すると、炎症反応および免疫抑制が生じ、キラーT細胞の治療腫瘍への浸潤が制限される。
【0007】
特許文献1は、電離放射線のための手段と、装置に含まれる電極の電圧印加のための短い電圧パルスを発生させる高電圧発生器とを含む装置を開示している。電極は、人間または動物の制限された領域の組織に固定または導入され、電極間の組織に電界を発生させるように設計されている。治療されるその領域の組織の腫瘍に電離放射線を放出する手段が提供され、一方、電極は腫瘍内または腫瘍に置かれるように配置されて、その結果電界が腫瘍を通過する。
【0008】
特許文献2は、装置に含まれる電極に電圧を印加するための短い電圧パルスを発生させる電圧発生器と、電極に結合された測定ユニットとを含む装置を開示している。電極は、人間または動物の制限された領域の組織に固定または挿入され、電極間の組織に電界を発生させるように設計されている。測定ユニットは、電極間のインピーダンスを決定するために配置され、インピーダンスは、電極間に位置する組織の電気特性によって実質的に決定される。登録および計算装置は制御ユニットを形成し、これは測定ユニットによって決定されたインピーダンスに基づいて、組織に形成される電界が常に所定の値になるように、電圧発生器の出力電圧を制御する。電界による治療は、組織内の細胞膜の穿孔を実現し、それにより、身体に供給された物質、例えば、細胞増殖抑制または遺伝物質の通過を可能にする。
【0009】
これまでに知られている装置の欠点は、哺乳動物の治療体積に高すぎる電界強度と高電流が印加される可能性があり、治療反応した腫瘍へのキラーT細胞の浸潤を制限する炎症反応と免疫抑制を引き起こすことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第9814238号
【文献】国際公開第9952589号
【発明の概要】
【0011】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態の目的は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを克服または緩和することである。
【0012】
本明細書の実施形態の一態様によれば、目的は、電気パルスを哺乳動物の望ましい組織に送達するための装置によって達成される。この装置は、パルス発生装置と、パルス発生装置に接続された電極装置とを含む。
【0013】
パルス発生装置は、インピーダンス測定モジュールによって、電極装置が、使用時に、望ましい組織を含む望ましい身体部分に挿入されたとき、そして様々な周波数を有する交流に基づくパルスを電極と参照電極との間の望ましい身体部分に発生させるときに、電極装置の一方の電極と電極装置の参照電極との間のコンダクタンスおよび位相角の値を決定するように構成される。
【0014】
さらに、パルス発生装置は、決定されたコンダクタンスおよび位相角の値に基づいて、電極装置が、使用時に、望ましい身体部分に挿入されたときに、電極装置が貫通する組織のタイプを決定するように構成される。
【0015】
さらに、パルス発生装置は、使用中の電極装置が望ましい組織に配置されたときに、決定されたコンダクタンスおよび位相角の値に基づいて、望ましい組織に送達される電気パルスの1つ以上のパラメータを決定し、決定された1つ以上のパラメータを有する電気パルスを発生させるように構成される。
【0016】
電極装置が貫通する組織のタイプと、望ましい組織に送達される電気パルスの1つ以上のパラメータは、決定されたコンダクタンスおよび位相角の値に基づいて決定されるため、望ましい組織への発生した電気パルスの改善された制御が提供される。
【0017】
本明細書で開示されるいくつかの実施形態の利点は、望ましい身体部分の電流密度および/または比吸収エネルギーを制御して、望ましい身体部分の痛みを軽減する可能性があり、またおそらく治療効果を高めることである。
【0018】
本明細書の実施形態の例は、添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】DEEPC装置のいくつかの第1の実施形態を概略的に示す。
図2】第1の電極装置の実施形態の長手方向断面を概略的に示す。
図3】椎骨に配置された2つの針電極を含む第1の電極装置を概略的に示す。
図4】中央電極をばねで取り囲む参照電極の長手方向断面を概略的に示す。
図5】ハンドルを備えるか、ハンドルに接続された電極装置の実施形態を概略的に示す。
図6A】筋組織についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図6B】筋組織についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図7A】皮質骨についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図7B】皮質骨についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図8A】海綿骨についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図8B】海綿骨についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図9A】骨髄および脊髄についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図9B】骨髄および脊髄についてコンダクタンスおよび損失(正接)が周波数によってどのように変化するかを模式的に示している。
図10】DEEPC装置のいくつかの第2の実施形態を概略的に示す。
図11】多電極装置の実施形態を概略的に示す。
図12】側孔から外に延びる電極を有する多電極装置の長手方向断面の一部を概略的に示す。
図13】電極装置の電極を接続するコネクタの実施形態を概略的に示す。
図14】コネクタに接続された手工具とその回転方法を概略的に示す。
図15】引き込まれた電極を有する多電極装置の長手方向断面の一部を概略的に示す。
図16】DEEPC装置のいくつかの第3の実施形態を概略的に示す。
図17】拡張可能な多電極装置の長手方向断面を、拡張可能な多電極装置の平面正面図と共に概略的に示す。
図18】それぞれ非拡張状態および拡張状態の拡張可能な多電極装置の長手方向断面を、拡張可能な多電極装置の平面正面図と共に概略的に示す。
図19】電極装置に接続されたパルス発生装置の実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述のように、本明細書で開示されるいくつかの実施形態の目的は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを克服または緩和することである。
【0021】
したがって、本明細書に開示されるいくつかの実施形態の目的は、電気パルスの発生の制御が改善されたパルス発生装置を提供することである。それにより、開示された実施形態により、望ましい身体部分の電流密度および比吸収エネルギーを制御して、望ましい身体部分の痛みを軽減し、治療効果を高める可能性がある。
【0022】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態の別の目的は、望ましい身体部分における改善された電極の位置決めを提供することである。
【0023】
以下において、本明細書の実施形態は、例示的な実施形態によって例示される。これらの実施形態は相互に排他的ではないことに留意されたい。一実施形態からの構成要素は、別の実施形態に存在することを暗黙のうちに想定することができ、それらの構成要素が他の例示的な実施形態でどのように使用できるかは当業者には明らかであろう。
【0024】
さらに、当業者は、主に同等の機能を備えた以下の実施形態のいくつかの実現があることに留意されたい。
【0025】
本明細書で開示される実施形態は、電極装置およびパルス発生装置に関する。電極装置はパルス発生装置に接続可能であり、電極装置が望ましい身体部分に配置される、例えば、挿入されると、哺乳動物の望ましい身体部分に電気パルスを送達する。電極装置およびパルス発生装置は、動的電気強化疼痛抑制(dynamic electric enhanced pain control)装置または動的電気強化疼痛抑制(Dynamic Electro Enhanced Pain Control)(D-EEPC(商標)またはDEEPC(商標))装置と呼ばれることもある。例えば、DEEPC装置は、哺乳動物の脊椎の痛みの軽減を得るために使用されてもよく、脊椎の痛みは、例えば、骨転移による可能性がある。
【0026】
いくつかの第1の例示的な実施形態
図1に概略的に示されるいくつかの第1の実施形態では、電極装置200は、パルス発生装置100に取り外し可能に配置された1つ以上の針電極200-1を含む。以下、パルス発生装置100についてより詳細に説明する。
【0027】
1.DEEPC装置1は、パルス発生装置100に接続された1つ以上の電極200-1を備える統合治療ユニットであってもよい。装置1は、1~1000kHzの範囲の周波数成分を有する変調されたACパルスに基づいて、組み合わされた電気強化化学療法(Electro Enhanced Chemotherapy)(EECT)および電気強化アブレーション(Electro-Enhanced-Ablation)(EEA)を実行するように構成され得る。
【0028】
図1に示されるように、パルス発生装置100は、インピーダンス記録ユニット108と、プロセッサ110によって制御されるパルス発生器105とを備える。図2は、電極200-1の実施形態の断面図を概略的に示す。いくつかの実施形態では、電極200-1は、電極200-1の端部ではなく、その長手方向包絡面に沿った細長い絶縁カバー202を含む細長いドリルとして整形される。電極200-1の端部の1つ、例えば前端部とも呼ばれ得る第1の端部は、先端部201を備え、この先端部201は切れ目を有し得る。先端部201は、望ましい身体部分、例えば、哺乳動物の椎骨に、貫通するように構成される。電極200-1の他方の端部、例えば第1の端部に対向し得る第2の端部は、適切なケーブル206によりパルス発生装置100に接続されるように構成される。
【0029】
図3は、椎骨に配置された2つの針電極200-1を含む電極装置200を概略的に示す。
【0030】
インピーダンス測定を可能にするために、参照電極205は、哺乳動物の望ましい身体部分の入口表面に配置されるべきである。参照電極205は、ばね204で電極200-1を取り囲む摺動参照電極205であってもよく、摺動参照電極205は、哺乳動物の入口面に対して押し、例えば、哺乳動物の望ましい身体部分の入口面を押し、その望ましい身体部分に電極200-1が挿入される。摺動電極205および中央電極200-1の配置が、図4に概略的に示されている。
【0031】
インピーダンスZは、AC電気回路(抵抗およびコンデンサを含む)に印加される電圧Vと、回路を流れる電流Iの比率であり、つまり、Z=V/Iである。抵抗のみのDC回路では、インピーダンスは抵抗Rに等しく、つまり、Z=R=V/Iである。したがって、1/RはDCコンダクタンス、1/ZはACコンダクタンス(アドミタンスとも呼ばれる)である。
【0032】
インピーダンス測定は、電極200-1と参照電極205との間の電流を測定することにより実行され得る。電極200-1と参照電極205との間のインピーダンスは、電圧が電極200-1および参照電極205に印加されたときに、電極200-1と参照電極205との間の媒体が電流に示す抵抗の尺度である。電極200-1、205が身体部分の組織に挿入される場合、インピーダンス測定は、電圧が電極200-1、205に印加されたときに、電極200-1、205の間に生じる電流に、身体部分の組織が及ぼす抵抗の尺度である。したがって、コンダクタンスは電流が組織を通過する容易さの尺度であるため、測定されたインピーダンス1/Zの逆数もまたコンダクタンス、例えばすなわち、身体部分の組織のACコンダクタンスの尺度になる。
【0033】
電極200-1の望ましい身体部分へ、例えば椎骨への挿入は、交互に回転する電気装置を使用して行うことができる。交互に回転する電気装置は、コネクタ203によって、電極装置200、例えば、電極200-1および参照電極205に接続されてもよい。
【0034】
代替的に、電極200-1の挿入は、コネクタ203によって、電極装置200、例えば電極200-1に取り付けられたハンドル302を備えた手工具で達成されてもよい。オペレータの握りにより、電極200-1は180度未満で前後に交互に回転されてもよく、その結果、電極200-1は望ましい身体部分に、例えば、哺乳動物の椎骨に貫通し、配線をねじることなく電気的接点が維持される。
【0035】
図5は、電極装置200に接続されるか、または電極装置200に含まれるハンドル302を概略的に示す。
【0036】
インピーダンスは複素量Z=ReZ+ImZであり、ここで、lmZはインピーダンスZの虚数値で、ReZはインピーダンスZの実数値である。インピーダンス記録モジュール108により、電極200と参照電極205との間のコンダクタンスと位相角θ=arctg(ImZ/ReZ)は、電極200、205間に電界を生じさせる交流の複数の異なる周波数について測定または決定され得る。そのような周波数の例は1、2、4、8、18および32kHzである。
【0037】
前述のように、コンダクタンス、すなわちACコンダクタンスはインピーダンスZの逆数に等しい。したがって、コンダクタンスは1/Zである。さらに、損失(正接)=1/(tanθ)=ReZ/ImZであるため、位相角θは、θ=arctg(ImZ/ReZ)として表され得る。
【0038】
複数の異なる周波数についてコンダクタンスおよび位相角を決定する理由は、異なる周波数についてのコンダクタンス値、例えばACコンダクタンス値と、位相角または損失(正接)値を取得するためであり、これらの値は以下に説明するように特定の組織を表す。
【0039】
伝導率および損失(正接)=|ReZ/ImZ|値対周波数の例は、筋肉についてそれぞれ図6A、6Bに、骨皮質についてそれぞれ図7A、7Bに、骨海綿についてそれぞれ図8A、8B、に、骨髄および脊髄についてそれぞれ図9、9Bに示されている。したがって、異なる周波数について決定された複数のコンダクタンス値および位相角/損失(正接)値に基づいて、対応する組織が決定され得る。図6A~9Bでは、異なる組織のコンダクタンスおよび損失(正接)値が、10Hz~100GHzの周波数について示されている。
【0040】
損失の減少=1/tanθ=(ReZ/lmZ)は、本開示では損失(正接)と呼ぶことがある。電極200が小柱骨に当たると、コンダクタンス、例えばAGコンダクタンス、および特定の周波数のうちの1つ、例えば1kHzでの損失の減少=1/tanθ=(ReZ/lmZ)は、超音波画像、コンピュータ断層撮影(CT)画像、または磁気参照画像(MRI)などの診断画像を補完するものとして、電極装置200が、例えば電極200-1により、貫通する組織のタイプを監視するために使用される。電極が小柱骨を貫通するにつれてACコンダクタンスが増加し、損失(正接)が再び減少する。コンダクタンスが再び減少し、損失(正接)が増加すると、電極装置200は、例えば電極200-1により、対向する壁に到達し、望ましい位置に固定することができる。電磁石がオフになると、ドリルグリップはドリルから電極200-1を取り外し、ドリルを取り外すと電極200-1は望ましい身体部分、例えば、椎骨に留まる。あるいは、電極200-1が、手動ツール、例えばハンドル302を使用して位置決めされる場合、オペレータは、電極200-1が所定の位置にあるときに、手動ツールを電極200-1から手動で緩める。
【0041】
この手順は、望ましい数の電極200-1が椎骨に配置されるまで繰り返されてもよい。図3では、椎骨に配置された2つの電極200-1が示されている。
【0042】
1つ以上の電極200-1は、パルス発生装置100に接続され、インピーダンス記録モジュール108は、1つ以上の電極200-1のそれぞれと、それぞれの参照電極205との間のコンダクタンスおよび位相角arctg(ImZ/ReZ)を測定する。
【0043】
測定に基づいて、望ましい身体部分の組織に対する治療効果が、例えば、損失(正接)=1/tanθ=(ReZ/lmZ)などのパラメータに相関させる多変量法治療により分析されてもよく、最適な治療条件に関する情報を得るために、治療のための最大および最小電圧、最大および最小電流、最大および最小パルス数、最大および最小比吸収エネルギーが決定されてもよい。例えば、コンダクタンスが高い組織は、コンダクタンスが低い組織よりも、より低い電圧の電気パルスを必要とする。これに対応して、組織のコンダクタンスが高い場合、電流も高くなり、したがって、所与の電圧では、コンダクタンスが低い組織よりもコンダクタンスが高い組織の方が電流が大きくなる。
【0044】
測定されたコンダクタンスおよび位相角に基づいて、最大および最小電圧、例えば最大および最小二乗平均平方根(RMS)電圧は、それぞれ1000Vおよび25Vとして決定されてもよく、最大および最小電流は、それぞれ16Aおよび0.2Aとして決定されてもよく、最大および最小パルス数はそれぞれ12および1として決定されてもよく、治療の最大および最小比吸収エネルギーはそれぞれ10J/gおよび2J/gとして決定されてもよい。
【0045】
電流密度は電極間の断面積の単位面積あたりの電流であるため、決定された電流に基づいて、電流密度を決定することができる。
比吸収エネルギーWまたはパルスあたりの電気投与量は、次の式から計算できる。
【0046】
N個のパルスのパルス列の場合、比吸収エネルギーの合計は次のとおりであり、
ここで、σは組織の組織伝導率[S/m]、Eは電界強度[V/m]、tはパルス長[s]、Nは印加パルス数、pは組織の密度(例えば筋肉1060kg/m)である。
【0047】
電気パルスの適用後、例えばエレクトロポレーションσafterの後、組織の伝導率は、次の式、
によって予測でき、ここで、G=1/R[Ω-1、またはS]は、1つ以上の周波数、例えば2~5kHzの範囲の1つ以上の周波数で装置1によって記録されたコンダクタンス値である。
【0048】
あるいは、電気パルスの適用後、例えばエレクトロポレーションσafterの後、組織の伝導率は、式、
によって予測でき、ここで、tgθ=tan(θ)であり、θは電気パルスの印加の前後に決定される位相角である。
【0049】
いくつかの第2の例示的な実施形態
いくつかの第2の実施形態では、例えば図10に概略的に示されるように、電極装置500は、複数の電極501、502、503、504、505を含む多電極装置500である。電極の数は様々であってよいが、いくつかの実施形態では、多電極装置500は、少なくとも3つの電極、例えば、第1、第2および第3の電極501、502、503を含む。多電極装置500は、パルス発生装置100に取り外し可能に配置される。
【0050】
DEEPC装置1は、コネクタ515に接続されたケーブル509によってパルス発生装置100に接続された多電極装置500を含む統合治療ユニットであってもよい。図10に概略的に示されるように、パルス発生装置100は、インピーダンス記録ユニット108と、プロセッサ110によって制御されるパルス発生器105とを備える。前述のように、パルス発生装置100のいくつかの例示的な実施形態を以下でより詳細に説明する。
【0051】
図11は、多電極装置500のいくつかの実施形態を概略的に示す。
多電極ユニット500は、端部を除いて絶縁ケーシング(例えばテフロン(登録商標)ケーシング)を備えた中空管506、例えば中空鋼管を含み、一方の端部、例えば前端部には、ダブルカットを有する先端部が設けられている。管506はドリルとして機能することができ、ダブルカットは切断刃を提供することができる。図10では、管506は5つの電極501~505を囲んでおり、そのうちの少なくとも2つの電極、例えば、第2および第3の電極502、503は、管のそれぞれの側壁で終端する。本開示では、管506は電極アセンブリと呼ばれることがあり、これらの用語は互換的に使用できることを理解されたい。いくつかの実施形態では、第2および第3の電極502、503は、先端部から約1cmで終わる。さらに、いくつかの実施形態では、第4および第5の電極504、505は、管506のそれぞれの側壁、例えば、第2および第3の電極502、503の約1cm上、したがって先端部から約2cmで終わる。第2、第3、第4および第5の電極502~505は、中空管から、管の側壁のそれぞれの開口部を通って外に延びることができる。第1の電極501は、先端部の開口部を通って管から外に延びてもよい。必要に応じて、1つ以上の追加の電極対を追加できることを理解されたい。
【0052】
図12は、電極513として示される第2から第5の電極502~505のうちの1つを概略的に示す。電極513は、管、例えば、個々の管512、例えばテフロン(登録商標)管に封入され、電極アセンブリ506の側面にある穴514を通して開く。電極アセンブリ506は、テフロン(登録商標)の層511で覆われていてもよい。
【0053】
図13は、電極装置500内の電極501~505へのコネクタ515の実施形態を概略的に示している。個々の電極501~505は、コネクタ515、例えば正方形のコネクタに接続され、ケーブル509を使用してパルス発生装置100と、したがってインピーダンス記録モジュール108とも接触する。
【0054】
図13に示すように、コネクタ515は、それぞれの電極501~505をケーブル509のそれぞれのリード508に接続するためのそれぞれのスティックコネクタ507を含む。
【0055】
さらに、コネクタ510は、電極装置500をコネクタ515に接続するように構成される。
【0056】
図14に概略的に示すように、ハンドル600を備えた手工具をコネクタ515に取り付け、オペレータのグリップで、電極装置500が180度未満で前後に交互に回転してもよく、その結果電極500は中間組織および椎骨を貫通する。
【0057】
介在組織および骨格の貫通中、電極501~505は引っ込められるが、貫通されている組織のインピーダンスモニタとして機能し得る。引き込まれた電極513、例えば電極502~505の1つが図15に概略的に示されている。電極513が引っ込められると、電極先端部は、穴14の端部と同一平面に収まるか、またはほぼ同一平面に収まり、したがって、穴14から周囲の組織内に延びない。
【0058】
インピーダンスは、第1の電極501ならびに参照電極502および503に接続されたパルス発生装置100のインピーダンス記録モジュール108によって測定または決定されてもよい。コンダクタンスおよび位相角θは、複数の周波数、例えば、1、2、4、8、18および32kHzで電極501~503の間で記録される。特定の周波数の1つでのコンダクタンスおよび損失(正接)=1/tanθ=(ReZ/ImZ)の変化は、超音波画像、CT画像またはMRIなどの診断画像の補完として、電極アセンブリ506がどの組織を貫通するかを監視するために使用される。
【0059】
電極アセンブリ506が望ましい身体部分、例えば、椎骨にあるとき、電極は電極アセンブリ506の側壁の穴514を通って組織内に前進し、コネクタ515およびケーブル509によってパルス発生装置100に接続される。前述のように、図13は、コネクタ515が電極装置500の電極501~505にどのように接続されるかを概略的に示している。
【0060】
インピーダンス記録モジュール108は、電極アセンブリ506を望ましい身体部分に導入する間、および超音波画像、CT画像、またはMRIなどの診断画像を使用した誘導中に、コンダクタンスを測定するように構成され得る。
【0061】
多電極装置500を望ましい身体部分に挿入する手順中に、電極対501、502間、電極対501、503間および電極対502、503間で記録されたコンダクタンスおよび損失(正接)値をディスプレイに表示し、進行状況を確認することができる。
【0062】
多電極装置500が、例えば電極アセンブリ506により、小柱(皮質)骨に当たると、コンダクタンスおよび損失(正接)値は第1電極501と他の電極502~505との間で減少するが、小柱骨を貫通するにつれて、コンダクタンスは増加し、損失(正接)は再び減少する。コンダクタンスは再び減少する傾向にあるため、電極アセンブリ506の先端部は小柱骨の対向する壁に到達しており、電極アセンブリ506は望ましい位置に固定することができる。したがって、コンダクタンスおよび損失(正接)値を監視することにより、電極アセンブリ506が貫通する組織のタイプを決定することが可能である。
【0063】
電極502~505は、それぞれの望ましい深さまで望ましい身体部分に挿入され、コンダクタンスおよび位相角は、損失(正接)値を計算するため、複数の周波数、例えば2、4、8、16および32kHzで記録される。1つ以上の計算された損失(正接)値により、組織の1つ以上の誘電特性が決定され得る。1つ以上のこれらの特性を使用して、1つ以上の治療パラメータの適切な設定を決定することができる。
【0064】
測定に基づいて、望ましい身体部分の組織に対する治療効果が、損失(正接)=1/tanθ=(ReZ/ImZ)などのパラメータに相関させる多変量法治療により分析されてもよく、最適な治療条件に関する情報を得るために、治療のための電圧の最大および最小値、電流の最大および最小値、パルス数の最大および最小値、比吸収エネルギーの最大および最小値が決定されてもよい。
【0065】
前述のように、測定されたコンダクタンスおよび位相角に基づいて、最大および最小電圧、例えば最大および最小RMS電圧は、それぞれ1000Vおよび25Vとして決定されてもよく、最大および最小電流は、それぞれ16Aおよび0.2Aとして決定されてもよく、最大および最小パルス数はそれぞれ12および1として決定されてもよく、治療の最大および最小比吸収エネルギーはそれぞれ10J/gおよび2J/gとして決定されてもよい。
【0066】
いくつかの第3の例示的な実施形態
いくつかの第3の実施形態では、図16に概略的に示されるように、電極装置600は、複数の電極、例えば5つの電極601、602、603、604、605を含む拡張可能な多電極装置600である。電極の数は様々であってよいが、いくつかの実施形態では、拡張可能な多電極装置600は、少なくとも3つの電極、例えば、第1、第2および第3の電極601、602、603を含む。拡張可能な多電極装置600は、パルス発生装置100に取り外し可能に配置される。
【0067】
DEEPC装置1は、ケーブル607によってパルス発生装置100に接続された拡張可能な多電極装置600を含む統合治療ユニットであってもよい。図16に示されるように、パルス発生装置100は、インピーダンス記録ユニット108と、プロセッサ110によって制御されるパルス発生器105とを備える。前述のように、パルス発生装置100のいくつかの例示的な実施形態を以下でより詳細に説明する。
【0068】
拡張可能な多電極ユニット600は、端部、例えば第1の端部すなわち前端部を除いて絶縁ケーシング(例えばテフロン(登録商標)ケーシング)を備えた中空管600a、例えば中空鋼管を含む。端部は、ダブルカットの先端部を備えてもよい。管はドリルとして機能することができ、先端部のダブルカットは切断刃を提供することができる。他方の端部では、例えば第1の端部の反対側またはほぼ反対側の第2の端部では、多電極装置600はパルス発生装置100に接続可能である。管は、少なくとも5つの電極601~605を囲んでおり、そのうち少なくとも2つの電極、例えば、第2および第3の電極602、603は、管のそれぞれの側壁に沿って延びる。少なくとも2つの電極、例えば第2および第3の電極602、603は、管のそれぞれの側壁で終わっていてもよい。いくつかの実施形態では、第2および第3の電極602、603は、先端部から約1cmで終わる。いくつかの実施形態では、電極602~605は薄い可撓性鋼片で作製されており、一方、中央電極601は堅い針電極である。中央電極601は、管600aの長手方向軸に沿って管600a内の中央に配置されている。さらに、いくつかの実施形態では、第4および第5の電極604、605は、管のそれぞれの側壁に沿って延びる。第4および第5の電極604、605は、管のそれぞれの側壁、例えば、第2および第3の電極602、603の約1cm上、したがって先端部から約2cmで終わってもよい。第2、第3、第4および第5の電極602~605の一部は、例えば、多電極600が膨張されるとき、中空管から、管の側壁のそれぞれの開口部を通って外に延びることができる。第1の電極601は、先端部の開口部を通って管から外に延びてもよい。必要に応じて、1つ以上の追加の電極対を追加できることを理解されたい。
【0069】
拡張可能な多電極装置600のいくつかの実施形態の断面側面図が図17に概略的に示されている。拡張は、点線で概略的に示されている。拡張可能な多電極600の拡張は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、多電極600は、2つ以上の側面電極602~605の少なくとも一部が、管内のシリコンバルーンの膨張により、それぞれの側面開口部を通って、治療される組織内に膨張するように膨張させることができる。
【0070】
膨張により、膨張容積608における管600aの直径は、膨張容積608の外側の管600aの直径と比較して増大する。直径の増加により、電極装置600の望ましい身体部分への位置決めが改善され、電極装置600が望ましい身体部分にさらに移動したり、または身体部分から移動したりすることが防止される。
【0071】
いくつかの実施形態では、例えば図18に概略的に示されているように、膨張容積608は、1つ以上のプラグ607、例えばテフロン(登録商標)プラグ607によって囲まれた圧縮性シリコーンゲルで満たされている。図18の下図に示すように、先端部のプラグを固定してもよく、電極のプラグと上のプラグを動かしてシリコーンゲルを圧縮して、それにより電極602、603、604および605を組織内に外側に押し込んでもよい。また、中央電極601は組織内に前方に押される。電極の励起は、均一な治療体積を達成するために、電極601と他の電極602~603との間、および電極602~603の間で対と反対に極性を交互に変えることによって実行される。膨張容積が膨張されると、距離、例えば中央電極601と1つ以上の他の電極602~605のそれぞれとの間の垂直距離は、膨張容積の膨張がない場合と比較して、膨張した膨張容積の領域で増加する。したがって、膨張容積608の膨張を制御することにより、中央電極601と1つ以上の他の電極602~605のそれぞれとの間の距離も制御することができる。
【0072】
図18に概略的に示されるように、拡張可能な多電極装置600は、複数の長手方向の側面開口部、例えば、少なくとも1つの側面開口部610を含み、側面電極602~605が多電極600を拡張できるようにする。
【0073】
インピーダンスは、第1の電極601ならびに参照電極602および603に接続されたパルス発生装置100のインピーダンス記録モジュール108によって測定されてもよい。コンダクタンスおよび位相角θは、複数の周波数、例えば、1、2、4、8、18および32 kHzで電極601~603の間で記録される。特定の周波数の1つでのコンダクタンスおよび損失(正接)=1/tanθ=(ReZ/ImZ)の変化は、超音波画像、CT画像またはMRIなどの診断画像の補完として、電極がどの組織を貫通するかを監視するために使用される。
【0074】
電極が望ましい身体部分、例えば椎骨にあるとき、側面電極602~605は多電極600を膨張させ、側面電極602~605の一部は側面開口部から望ましい身体部分内に延びる。さらに、多電極600は、コネクタ606およびケーブル607によって、パルス発生装置100に接続される。本明細書に記載の実施形態によれば、電極装置は様々な構成を有してもよい。例えば、電極装置は、表面にパッド電極を備えた単一のピン電極、または大きな標的体積用の複数のピン電極を備えてもよい。
【0075】
パルス発生装置100のいくつかの例示的な実施形態
図19に概略的に示されるように、パルス発生装置100は、パルス発生装置100のオペレータなどのユーザとの通信を容易にするために、入力/出力インタフェース101を備えてもよい。インタフェースは、例えば、モニタ、例えばディスプレイ装置などの出力装置、キーボード、キーパッド、マウスなどの入力装置、またはタッチスクリーンなどの入力装置と出力装置の組み合わせとを備えてもよい。入力および出力インタフェース101は、追加または代替として、別の装置(図示せず)との有線または無線通信のための手段を備えてもよい。
【0076】
パルス発生装置100は、受信するように構成された受信モジュール102によって、情報またはデータを1つ以上の他の装置から受信するように構成されてもよい。受信モジュール102は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0077】
パルス発生装置100は、送信するように構成された送信モジュール103によって、情報またはデータを1つ以上の他の装置に送信するように構成されてもよい。送信モジュール103は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0078】
パルス発生装置100は、例えば、そのように構成された決定モジュール104によって、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極間に発生する電気パルスの電圧振幅を決定し、発生する連続する電気パルスの数を決定するように構成されてもよい。決定モジュール104は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0079】
パルス発生装置100は、例えば、決定モジュール104によって、発生する電気パルスのパルス形状、および/または休止期間、例えばパルスの発生が一時停止される期間、したがってパルスが発生しない期間、を決定するようにさらに構成されてもよい。
【0080】
パルス発生装置100は、例えば、1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されたパルス発生器105によって、1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されてもよい。パルス発生器105は、パルス発生装置100のプロセッサ110と通信するように配置されてもよい。
【0081】
パルス発生装置100は、例えば、パルス発生器105によって、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極と電気通信するように配置され、1つ以上の決定された、例えば予め決定された、連続する電気パルスの数を発生し、その結果、発生した第1の電気パルスが第1の電圧振幅を有し、1つ以上の発生した連続する電気パルスが連続して発生した電気パルス間で連続して減少するそれぞれの電圧振幅を有する、ように構成される。それにより、閾値を超える1つ以上の発生した連続する電気パルスの電流値の増加が回避される。
【0082】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置100は、例えばパルス発生器105によって、2つの連続する電気パルス間の事前設定された振幅値で減少するそれぞれの電圧振幅を有する1つ以上の決定された数の連続する電気パルスを発生させるように構成され、事前設定された振幅値は400~1200Vの範囲にある。しかし、いくつかの実施形態では、事前設定された振幅値は100~1200Vの範囲にある。
【0083】
パルス発生装置100は、例えばパルス発生器105によって、2つの連続する電気パルスの間で指数関数的に減少するそれぞれの電圧振幅を有する1つ以上の決定された数の連続する電気パルスを発生させるように構成されてもよい。例えば、それぞれの電圧振幅は、e-fc-tの関数として発生した2つの連続する電気パルス間で指数関数的に減少する場合があり、ここでf=σ/C,σはtは望ましい組織の伝導率であり、Cはパルス発生器105のコンデンサの容量であり、tは発生した2つの連続する電気パルス間の時間である。
【0084】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置100、例えばパルス発生器105によって、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極の第1の電極を正電圧で、少なくとも2つの電極の第2の電極をゼロ電圧で最初に励起するように構成される。次に、パルス発生器105は、第2の励起において、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極の第2の電極を正の電圧で、2つの電極の第1の電極をゼロ電圧で励起し得る。それにより、標的体積における治療効果の改善された均一性が達成される。第3の励起において、パルス発生器105は、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極の第1の電極を正の電圧で、電極装置200、500、600の少なくとも2つの電極の第2の電極をゼロ電圧で励起してもよく、これは次の励起ごとに繰り返されてもよい。各励起は、発生した1つのパルスに対応することを理解されたい。
【0085】
いくつかの実施形態では、パルス発生モジュール105は、1~1000kHzの範囲、例えば20~200kHzの範囲の周波数成分を有する変調ACパルスを発生させるように構成される。
【0086】
1つ以上のドライバユニット105aは、パルス発生器105に含まれるか、またはパルス発生器105に接続され得る。1つ以上のドライバユニット105aのそれぞれは、電極装置200、500、600の一対の電極間に電気パルスを発生させるように構成されてもよい。したがって、数対の電極の場合、パルス発生器105は、電極の各対に対してドライバユニット105aを備えてもよく、したがって、ドライバユニット105aの数は、電極の対の数に対応する。しかしながら、ドライバユニット105aの数は、電極対の数より少なくても多くてもよいことを理解されたい。
【0087】
1つ以上のコンデンサ105bは、パルス発生器105に含まれるか、またはパルス発生器105に接続され得る。1つ以上のコンデンサ105bのそれぞれは、望ましい電圧値、例えば、事前設定された電圧値まで充電されてもよく、放電して1つ以上の電気パルスを発生させるように構成されてもよい。例えば、コンデンサ105bは、パルスを発生させるために段階的に放電されるように構成されてもよい。
【0088】
パルス発生装置100は、例えば、1つ以上の電気パルスの発生を終了するように構成された終了モジュール106によって、1つ以上の電気パルスの発生を終了するように構成されてもよい。終了モジュール106は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0089】
パルス発生装置100は、例えば終了モジュール106によって、1つ以上の発生された電気パルスによって望ましい組織で引き起こされる総吸収エネルギーの値が望ましい閾値を超えたときに、1つ以上の決定された数の電気パルスの発生を終了するように構成されてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、吸収エネルギーは、比吸収エネルギー、例えば、キログラムあたりの与えられた吸収エネルギーである。
【0091】
パルス発生装置100は、例えば終了モジュール106によって、発生した電気パルスのそれぞれの電流値の1つが望ましい電流間隔外にあるときに、1つ以上の決定された数の電気パルスの発生を終了するようにさらに構成され得る。
【0092】
パルス発生装置100は、例えば、1つ以上の発生した電気パルスに関連するフィードバックを与えるように構成されたフィードバックモジュール107によって、1つ以上の発生した電気パルスに関連するフィードバックを与えるように構成される。フィードバックモジュール107は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、パルス発生装置100は、例えばフィードバックモジュール107によって、1つまたは5つ以上の発生した電気パルスのそれぞれの各吸収エネルギーを決定し、決定されたそれぞれの吸収エネルギーおよび場合によってはそれぞれの発生した電気パルスに関する情報を終了モジュール106に送信するように構成される。
【0094】
パルス発生装置100は、例えば、パルスの電流、例えば発生したパルスの電流を記録、例えば、測定するように構成されたインピーダンス記録モジュール108によって、パルスの電流、例えば発生したパルスの電流を記録、例えば、測定するように構成される。インピーダンス記録モジュール108は、パルス発生装置100のプロセッサ110によって実施されるか、プロセッサと通信するように構成されてもよい。
【0095】
アブレーションの目的のために、電気パルスによって望ましい組織に送達される電力のフィードバック制御により、アブレーション温度に達する期間を制御することが望ましい場合がある。フィードバック制御は、標的領域に挿入された1つ以上のサーミスタプローブまたは熱電素子(図示せず)での組織温度記録によって実行されてもよい。
【0096】
パルス発生装置100はまた、データを記憶する手段を含むか、またはデータを記憶する手段に接続することができる。いくつかの実施形態では、パルス発生装置100は、電気パルスの哺乳動物の望ましい組織への送達に関するデータを記憶するように構成されたメモリ109をさらに含むか、またはメモリ109に接続することができる。データは、処理済みまたは未処理のデータおよび/またはそれに関連する情報であり得る。メモリ109は、1つ以上のメモリユニットを備えてもよい。さらに、メモリ109は、コンピュータデータ記憶装置、またはコンピュータメモリ、読み取り専用メモリ、揮発性メモリまたは不揮発性メモリなどの半導体メモリであってもよい。メモリ109は、取得された情報、データ、構成およびアプリケーションを格納して、パルス発生装置100で実行されるときに本明細書の方法を実行するために使用されるように構成される。
【0097】
哺乳動物の望ましい組織に電気パルスを送達するための本明細書の実施形態は、本明細書の実施形態の機能および/または方法動作を実行するためのコンピュータプログラムコードとともに、上の図のいくつかに示された配置のプロセッサ110などの、1つ以上のプロセッサを通じて実施され得る。上述のプログラムコードは、例えば、パルス発生装置100にロードされたときに、本明細書の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムコードを運ぶデータキャリアの形態で、コンピュータプログラム製品として提供されてもよい。そのようなキャリアの1つは、電子信号、光信号、無線信号またはコンピュータ可読記憶媒体の形態であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、CD-ROMディスク、SIMカードまたはメモリスティックであり得る。
【0098】
コンピュータプログラムコードはさらに、サーバに格納され、パルス発生装置100にダウンロードされるプログラムコードとして提供されてもよい。
【0099】
当業者はまた、上記の入力/出力インタフェース101、受信モジュール102、送信モジュール103、決定モジュール104、パルス発生器105、終了モジュール106、フィードバックモジュール107およびインピーダンス記録モジュール108は、アナログおよびデジタル回路の組み合わせ、および/またはパルス発生装置100内のプロセッサなどの1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、上記のように実行する、例えばメモリ109に格納された、ソフトウェアおよび/またはファームウェアで構成された1つ以上のプロセッサを指してもよいことを理解するであろう。1つ以上のこれらのプロセッサ、ならびに他のデジタルハードウェアは、単一の特定用途向け集積回路(ASIC)に含まれていてもよいか、あるいはいくつかのプロセッサおよび様々なデジタルハードウェアは、個別にパッケージ化されているか、またはシステムオンチップ(SoC)に組み込まれているかに関係なく、いくつかの個別の構成要素に分散されてもよい。
【0100】
「含む」または「備える」という単語が本開示で使用される場合、非限定的、すなわち「少なくとも~からなる」という意味として解釈されるものとする。
【0101】
前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する当業者は、説明された実施形態の修正および他の変形を思いつくであろう。したがって、本明細書の実施形態は、開示された特定の例に限定されず、修正および他の変形が本開示の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本明細書では特定の用語を使用することがあるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的ではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19