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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】弁接合測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230419BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61B17/00
A61B5/107
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020520736
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018055920
(87)【国際公開番号】W WO2019075477
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】62/572,034
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508029594
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・メデイカル・センター・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホガンソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ハマー,ピーター・イー
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0327997(US,A1)
【文献】特表2005-517510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0160596(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0282753(US,A1)
【文献】特開平11-206739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 5/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁の接合高さを測定するための接合測定装置であって、
前記接合高さは、前記心臓弁における隣り合う弁尖が互いに接触して弁封鎖を形成することによって前記心臓弁を介した逆流を防止する距離であり、
近位接続部材の端部にある細長いセンサ本体と、
前記センサ本体の第1の面を横切るアレイ状の複数のセンサとを備え、
前記複数のセンサの各センサは、心臓弁の一部が前記センサと接触しているかどうかを検出するように構成され、前記複数のセンサは、前記心臓弁の前記接合高さを評価するために構成されている、接合測定装置。
【請求項2】
複数のセンサが、前記センサ本体の前記第1の面とは反対側の第2の面を横切るように配置される、請求項1に記載の接合測定装置。
【請求項3】
前記複数のセンサの各センサは、前記細長いセンサ本体の幅の少なくとも半分の幅を有する、請求項1または2に記載の接合測定装置。
【請求項4】
前記細長いセンサ本体は可撓性である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合測定装置。
【請求項5】
前記細長いセンサ本体は、数ミリメートルから数センチメートルの幅である、請求項1~4のいずれか1項に記載の接合測定装置。
【請求項6】
前記複数のセンサは、抵抗器要素または温度感知要素を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の接合測定装置。
【請求項7】
前記複数のセンサは、光ファイバ要素または超音波要素を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の接合測定装置。
【請求項8】
前記アレイはコンデンサアレイである、請求項1~7のいずれか1項に記載の接合測定装置。
【請求項9】
接合測定システムであって、
請求項1に記載の接合測定装置と、
前記近位接続部材に取り付け可能な延在部材と、
前記延在部材に接続されるハンドルと、
前記接合測定装置に接続されるディスプレイとを備え、前記ディスプレイは、前記接合測定装置のセンサによって検出された情報を示すとともに、前記接合高さを表示するように構成される、接合測定システム。
【請求項10】
前記延在部材は、可鍛性または屈曲可能である、請求項9に記載の接合測定システム。
【請求項11】
複数のセンサが、前記センサ本体の前記第1の面とは反対側の第2の面を横切るように配置される、請求項9または10に記載の接合測定システム。
【請求項12】
前記複数のセンサの各センサは、前記細長いセンサ本体の幅の少なくとも半分の幅を有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の接合測定システム。
【請求項13】
前記細長いセンサ本体は可撓性である、請求項9~11のいずれか1項に記載の接合測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年10月13日に提出された米国仮出願第62/572,034号からの継続であり、米国特許法第120条に基づく優先権を主張する。優先権出願の内容全体がここに引用により援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、手術または他の介入処置中の心臓弁の接合高さの評価に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
心臓弁機能の評価は現在、さまざまな方法で行われている。心臓弁膜症の患者の評価では、心エコー図が心臓弁の機能を評価するための主要な評価ツールであることがよくある。4つの主要な弁(大動脈弁、肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁)の各々には、特定の関連する解剖学的および機能的特性がある。これらの弁は心エコー図によって評価されるため、逆流つまり逆方向への流れの程度、および狭窄つまり順流に対する障害は、弁機能の重要な側面である。弁が適切に機能していない場合、機能が低下する原因となるいくつかの異なるメカニズムが1つ以上ある可能性がある。逆流性または漏出性の弁の場合、隣接する心臓弁尖間の適切かつ安定した接合の欠如が、弁を介した漏出の根本的な理由であることが多い。適切な接合の欠如の正確なメカニズムはさまざまで、弁の下の支持構造(弁下組織)の問題、弁尖の問題、または弁の周りの支持構造(弁輪)の問題を含む。
【0004】
接合は、弁尖が互いに接触して弁封鎖を形成する場所であり、接合高さとして表される。この高さは、隣接する弁尖が互いに接触して弁を閉鎖し、弁を介した逆流を防止する距離を指す。接合高さが高いほど、弁は短期的および長期的に機能しやすくなる。2つの弁尖間の接合高さは、弁の2つの弁尖間、および3つ以上の弁尖を有する弁の異なる弁尖対間で、接合表面全体に沿って変化し得る。
【0005】
弁への介入の前の接合高さの評価は、通常、心エコー図によって行われてきた。これは、弁尖組織がより厚く、接合高さがより容易に画像化され、測定できることが多い成人弁においてある程度の頻度で行われる。小児心臓弁では、弁尖が薄く、特に房室弁では、心エコー図(ECHO)による接合高さの測定が困難になることがよくある。成人および小児の心臓手術の文献からの報告は、接合高さが弁修復後の機能の重要な予測因子であることを挙げている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、接合表面を横切る心臓弁の接合高さを測定することにより心臓弁を評価する方法に関する。いくつかの態様では、本開示は、弁を横切るように配置された複数のセンサを備える装置に関する。次に、心室または大動脈起始部に注入された流体の力で弁を閉じることによる受動的検査により、または心臓の鼓動を伴う正常な生理的状況下で弁を検査することにより、弁は強制的に接合させられる。弁の接合高さは、装置の遠位側に統合された複数のセンサを用いて、1つ以上の点にわたって測定される。接合高さはユーザに表示され、ユーザは接合表面の1つ以上の点に沿って弁の接合高さを追跡できる。外科医または操作者は、接合高さ情報を用いて、考えられる介入に関する意思決定目的、または弁修復手術の前、最中、もしくは後の弁の妥当性に関するフィードバックのために、弁を評価することができる。
【0007】
一実施形態では、装置の遠位側上のマルチセンサアレイが、弁を横切るように配置され、弁を通過して心腔または大血管内に延在すると共に弁の近位の心腔または大血管に延在する。装置の遠位側は、比較的堅くてもよく、または可撓性でもよく、弁が閉じるときに弁によって変位されるよう十分に可撓性でさえあってもよい。接合測定装置の遠位側の幅は、数値的な接合高さのみが装置からの情報として生成されるように狭くてもよい。別の実施形態では、場所の遠位側の幅は、数ミリメートルまたは最大数センチメートルの幅であってもよく、弁の接合高さは、複数の数値点として、および測定される接合表面の部分に沿った接合高さのグラフィック表示として表示される。
【0008】
接合測定装置は、心臓が鼓動している間のカテーテル法の手順中に弁を横切るように配置できるカテーテルベースの装置に取り付けることができる。別の実施形態では、カテーテルベースの接合装置は、手術中において、患者が心肺装置から引き離された後、心臓が鼓動している間に、外科医が装置を弁を横切るように通過させる場合に利用することができる。カテーテルベースの接合測定装置は、すべての心臓弁にアクセスし、1つ以上の生理学的状態で接合表面に沿って接合高さを測定できる。接合測定装置は、1つ以上の心臓弁に対する可能な介入または再介入に関する意思決定のための情報を提供することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、接合測定装置は、近位接続部材の端部にある細長いセンサ本体と、センサ本体の面を横切るアレイ状の複数のセンサとを含み、複数のセンサの各センサは、心臓弁の一部がセンサと接触しているかどうかを検出するように構成される。
【0010】
実現例には、以下の1つ以上を含むことができる。複数のセンサがセンサ本体の第2の面を横切るように配置される。複数のセンサの各センサは、細長いセンサ本体の幅の少なくとも半分の幅を有する。細長いセンサ本体は可撓性である。細長いセンサ本体は数ミリメートルから数センチメートルの幅である。複数のセンサは、抵抗器要素または温度感知要素を含む。複数のセンサは、光ファイバ要素または超音波要素を含む。アレイはコンデンサアレイである。
【0011】
いくつかの実施形態では、接合表面を横切る心臓弁の接合高さを測定する方法は、接合表面の隣に接合測定装置を配置することを備え、接合装置は、近位接続部材の端部にある細長いセンサ本体と、センサ本体の面を横切るアレイ状の複数のセンサとを備え、複数のセンサの各センサは、心臓弁の一部がセンサと接触しているかどうかを検出するように構成され、この方法はさらに、弁を閉鎖させるかまたは閉鎖することを可能にすることと、複数のセンサのどのセンサが、対応のセンサが心臓弁と接触していることを検出するかを検出することと、センサから接合高さを判断することとを備える。
【0012】
実現例には、以下の1つ以上を含めることができる。判断された接合高さを表示すること。接合表面上の1つ以上の点に沿って上記の配置ステップ、閉鎖ステップ、検出ステップ、および判断ステップを繰り返すこと。接合表面の各点で判断された高さを数値またはグラフィック表示として表示すること。弁を閉鎖させることは、心室または大動脈起始部に流体を注入することを含む。複数のセンサは、抵抗器要素または温度感知要素を含む。複数のセンサは、光ファイバ要素または超音波要素を含む。アレイはコンデンサアレイである。
【0013】
いくつかの実施形態では、接合測定システムは、接合測定装置を含み、接合測定装置は、近位接続部材の端部における細長いセンサ本体と、センサ本体の面を横切るアレイ状の複数のセンサをと備え、複数のセンサの各センサは、心臓弁の一部がセンサと接触しているかどうかを検出するように構成され、接合測定システムはさらに、近位接続部に取り付け可能な延在部材と、延在部材に接続されるハンドルと、装置に接続されるディスプレイとを備え、ディスプレイは、接合測定装置のセンサによって検出される情報を示すように構成される。
【0014】
実現例には、次の1つ以上を含めることができる。延在部材は、可鍛性または屈曲可能である。複数のセンサがセンサ本体の第2の面を横切るように配置される。複数のセンサの各センサは、細長いセンサ本体の幅の少なくとも半分の幅を有する。細長いセンサ本体は可撓性である。複数のセンサは、抵抗器要素または温度感知要素を含む。複数のセンサは、光ファイバ要素または超音波要素を含む。アレイはコンデンサアレイである。
【0015】
本明細書に開示される技術の利点および他の特徴は、当業者には、同様の参照符号は同様の構造要素を特定する本発明の代表的な実施形態を示す図面と併せて、以下の特定の実施形態の詳細な説明により、容易に明らかになるであろう。当業者は、本開示の読後に明らかとなる変形を用いることを伴う概念を拡張することができるため、主題の技術は、記載された実施形態に記載された特定の構築物および方法に限定されることを意図しないことを理解されたい。本明細書で言及されるすべての公開物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、それらの全体がここに引用により援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、材料、方法および例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。上部、下部、左、右、上、および下などの、本明細書におけるすべての相対的な記載は、図を参照しており、限定的な意味であることを意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】左心室に向かって見ている左心房の視点からの僧帽弁の図である。
図1B】左心室を僧帽弁尖および弁下組織とともに示す断面図である。
図1C】拡張期の間の僧帽弁の断面図である。
図1D】左心室に向かって見下ろしている大動脈起始部の視点からの大動脈弁の図である。
図1E】大動脈弁および大動脈起始部の断面図である。
図1F】大動脈弁および大動脈起始部の断面図である。
図2A】僧帽弁および弁下組織を、弁を横切る接合測定装置とともに示す断面図である。
図2B】僧帽弁を、左心房の視点から、弁を横切る接合測定装置とともに示す図である。
図2C】僧帽弁を、左心房の視点から、弁を横切る接合測定装置とともに示す図である。
図2D】大動脈弁および上行大動脈を、弁を横切る接合測定装置とともに示す断面図である。
図2E】大動脈弁を、大動脈起始部の視点から、弁を横切る接合測定装置とともに示す図である。
図2F】大動脈弁を、大動脈起始部の視点から、弁を横切る接合測定装置とともに示す図である。
図3A】接合測定装置のセンサ部分を示す。
図3B】接合測定装置のセンサ部分を示す。
図3C】接合測定装置のセンサ部分を示す。
図3D】僧帽弁を、左心房の視点から、弁を横切る可撓性接合測定装置とともに示す図である。
図4A】近位延在部分およびハンドルを伴う接合測定装置の遠位部分である。
図4B】近位延在部分を伴う接合測定装置の遠位部分である。
図5】関連付けられる表示画面を伴う接合測定装置である。
図6】心臓を、僧帽弁を横切る接合測定カテーテルとともに示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
本開示は、既知の方法を用いる心臓弁の評価における接合高さの測定に関連付けられる課題の多くを克服する。本明細書に記載される接合測定装置は、カテーテル法の手順中または弁の開放外科的評価中に心臓弁を横切るように配置される。接合測定装置は、弁の接合表面に沿った弁の接合高さを定量化することができる。この接合高さ測定は、弁の接合表面に沿って評価され、弁のさまざまな局面を判断して、心臓弁を評価および/または修復しているカテーテル検査室の心臓専門医または外科医に貴重な情報を提供することができる。接合高さの情報は、弁の介入の妥当性を導き、ならびに調整および評価するために用いることができる。
【0018】
手術中に弁が積極的に修復されている間の接合高さの評価は、定性的アプローチに限定されており、露出した弁尖をインクで染色し、弁の染色されていない他の部分を評価することがよくある。これらの手法はすべての弁に適用できるわけではなく、いくつかの固有の制限がある。開心術の一環として修復中に弁を評価する、以前の定性的方法論は、生理食塩水が心室から漏れるのを防ぐ弁の能力の定性的評価をしばしば伴う。心臓が開いている間の房室弁の検査中、生理食塩水または同様の緩衝晶質溶液が心室に注入され、心室を拡張して弁を閉じる。これは、受動的検査と呼ばれる。大動脈弁の修復では、大動脈起始部が満たされ、非常に低い圧力にもかかわらず、弁の接合が定性的に評価される。これらの方法論は、弁の部分に沿った定量的接合高さの評価を提供しない。接合高さは弁の機能の基本であり、一部の報告では、弁機能のその後の結果を予測するが、手術中または別の介入処置中に評価することは困難である。
【0019】
図1Aを参照して、僧帽弁10が左心房から見た状態で示される。僧帽弁10は、前尖12および後尖14を有する。左心室が、収縮期に左心室から左心房への血液の逆流を防ぐために圧迫するとき、前尖12および後尖14が互いに押し合う。図1Bを参照して、左心室の断面画像が示され、左心室壁18および左心室腔17、ならびに僧帽弁の前尖12および僧帽弁の後尖14が左心室を左心房から分離している。僧帽弁尖の索支持構造16は、僧帽弁の正常な機能に不可欠である。弁が弁の接合を閉じるときに、前後の弁尖が互いに接触する程度。接合は、図1Bの矢印20で示すように接合として測定することができる。
【0020】
図1Cを参照して、僧帽弁12の前尖12および後尖14は、弁尖の一方または他方が中央に来ず、正常に接合しないように、それらの正常な機能から変更され得る。これは、接合に利用可能な弁尖材料の量における差をもたらし得る。これにより、前尖12などの1つの弁尖は矢印22で示される潜在的な接合高さを有し、後尖14は矢印24で示される異なる潜在的な接合高さを有し得る。心臓弁は、弁の介入または修復の前、最中、または後に評価されるため、弁尖が互いに接触する実際の接合の高さ(矢印22にわたる)と、後尖について接合のために利用可能な弁尖の材料(矢印24にわたる)とを、それらが異なる場合に知っていることは、非常に役立つ。これは、弁を評価し、最終的にそれに介入するのに非常に役立つ情報である。
【0021】
図1Dを参照して、大動脈弁が、左心室に向かって見下ろしている大動脈起始部から見られるように示される。この大動脈弁40は、弁尖42、44、45であり、大動脈起始部壁46によって拘束される3つの弁部分を有する。図1Eを参照して、大動脈弁、弁尖42および44の断面は、大動脈起始部壁46によって拘束される。隣接する大動脈弁尖42および44の接合の高さは、測定可能な高さ50として示される。図1Fを参照して、弁尖42および44を有する大動脈弁の断面図は、弁がどのように介入されるかに応じて弁の機能的接合高さをもたらし得るさまざまな潜在的な高さ52および54を示す。この現在の弁では、機能的または実際の接合高さは52になるだろう。
【0022】
図2Aは、僧帽弁の断面を、前尖12および後尖14、弁下腱索付着部位16、ならびに細長い遠位部分72を有する接合測定装置70とともに示す。接合測定装置70は、弁尖12と14との間において僧帽弁を横切るように位置決めされ、その遠位端72は左心室内に配置される。
【0023】
接合測定装置70は、カテーテル法の手順中または弁の開放外科的評価中に心臓弁を横切るように配置される。接合測定装置70は、弁の接合表面の評価により、弁の接合高さを定量化することができる。この接合高さ測定は、弁のさまざまな局面にわたり弁の接合表面に沿って評価でき、心臓弁を評価および/または修復しているカテーテル検査室の心臓専門医または外科医に貴重な情報を提供する。接合高さの情報は、弁介入の妥当性を導き、ならびに調整および評価するために用いることができる。
【0024】
接合測定装置70は、装置が横切るように配置された弁の領域における弁の接合の程度を評価するために装置に組み込まれたセンサを有する。左心房、弁の接合部、および左心室を区別することにより、接合の高さを測定できる。接合測定装置70は、弁接合高さを評価するために片側または両側にセンサを有することができる。両側にセンサがある場合、弁の接合高さは、各弁尖の接合高さの小さい方として評価できる。弁尖が何らかの弁介入によって動かされた場合、高さの高い方の弁尖は、より多くの接合の可能性と見なすことができる。
【0025】
図2Bを参照して、僧帽弁10は、左心室に向かって見ている左心房の視点から示される。前尖12および後尖14は、前尖12と後尖14との間に延在する、断面で示される接合測定装置70を有する。接合測定装置70は、弁の一部にわたる接合高さを評価するために用いることができる。図2Cを参照して、断面に示される接合装置70は、図2Bに示されるものとは異なる僧帽弁の部分において前尖12と後尖14との間に位置決めされる。外科医にとっては、心臓弁の接合表面全体に沿った心臓弁の接合高さを知ることが重要である。弁のある部分での接合高さの測定は適切かもしれないが、別の部分では不十分であるかもしれず、後者は弁の逆流の部位かもしれない。接合測定装置70が弁の全接合長さよりも狭い幅を有する場合、接合装置70は、さまざまな場所で弁を評価するために動かされることができ、弁全体に沿った接合高さの適切な画像または完全な画像でさえも得ることができる。例えば、接合測定装置70は、男性の大動脈起始部の平均直径に適合するように、幅において18mmから23mmの最大幅を有することができる。接合測定装置70は、典型的な弁の幅よりも小さく、例えば15mmよりも小さく、10mmよりも小さく、または5mmよりも小さくあることができ、さまざまな位置で弁を評価するために移動させることができる。
【0026】
図2Dを参照して、大動脈の起始部が、大動脈弁尖42および44ならびに大動脈起始部壁46とともに断面で示される。接合測定装置70は、大動脈弁を横切るように位置決めされ、遠位端72は左心室内にある。接合装置は、弁の1つ以上の部分における大動脈弁尖の接合高さを評価することができる。カテーテル法の手順中、心臓が拡張期中に鼓動している間において、心臓が充満して大動脈弁が閉じられているときに、弁を評価するために接合装置を用いることができる。接合測定装置は、大動脈起始部を流体で満たし、大動脈弁尖の接合を加圧または非加圧方式で誘導して接合の高さを評価することにより、弁の評価が行われる、開放手順中にも用いることができる。
【0027】
図2Eを参照して、大動脈弁40は、弁尖42、44、および45とともに示される。接合測定装置70は断面で示され、大動脈弁尖42と45との間において大動脈弁を横切るように位置決めされ、弁尖42と45との間の接合平面の一部を評価する。2つの弁尖間の接合面全体を評価するために、接合測定装置70は、いくつかの領域にわたって接合高さを評価するよう移動される必要があるかもしれない。
【0028】
図2Fを参照して、大動脈弁40は、2つの大動脈弁尖44と45との間の断面位置で示される接合測定70とともに示される。確かに、三尖大動脈弁と肺動脈弁、またはそれほど一般的ではないが、二尖もしくは四尖大動脈弁もしくは肺動脈弁では、弁の接合高さを完全に評価するために、複数の接合面の評価が必要になる場合がある。弁の接合高さは、弁介入とともに変化する。この装置は、介入手順または開放外科処置を通して複数回用いて、接合高さを再評価することができる。接合装置70は、弁の接合を調整するために使用され得、解剖学的構造を変化させることによって、所望の量に較正され得る。これには、弁の弁下側、弁側、弁輪側、およびさらには弁輪上側に対する変更を含む、心臓弁へのさまざまな介入が含まれ得る。
【0029】
図3Aでは、正面および側面から、接合測定装置70が、遠位端72および近位接続部材74とともに示される。接合測定装置70の重要な局面は、装置の面71上にその長さに沿って位置決めされた1つ以上のセンサ80である。接合測定装置70は、1:1未満のアスペクト比を有し得、装置の厚み76が装置の幅よりも小さい寸法を与える。装置の厚み76が小さいほど、接合高さの評価中に発生する弁尖の歪みは小さくなる。
【0030】
装置の面71に沿って位置決めされた1つ以上のセンサ80は、弁の上の空間、接合の領域、および弁の下の空間に隣接する接合装置の部分を評価するために用いられる。さまざまな弁の場合、弁の上下の空間は、心臓の異なる心腔または大血管を表す。本発明の一実施形態では、センサ80は、装置を横切るように位置決めされる複数の抵抗器要素からなり、センサのアレイを形成する。これらの抵抗器要素をコンピュータインターフェースとともに用いて、センサ上のさまざまな抵抗を計算し、センサに押し付けられている隣接する弁尖の接合高さを測定できる。センサ80は、隣接する弁尖の、その上方および下方の領域における接合の領域を評価することができる容量性タッチセンサを形成するコンデンサアレイであってもよい。これらのセンサは、センサの長さに沿った1つ以上のスポットの温度を評価するためのサーミスタを含む温度感知要素とすることができる。弁尖がセンサを押すと、温度センサ要素の一部が他の温度要素とは十分に異なる温度になり、隣接する弁尖の接合面積および高さを評価できる。典型的には、開心術の間、弁は、弁を横切るように流体を注入することによって評価される。
【0031】
弁尖が装置に対して接合する際の温度変化の監視も、接合の高さを示すために用いることができる。これらのセンサ80は、血液または生理食塩水とは異なる光学密度を有する隣接構造の存在を感知して、接合高さの測定のために心臓弁尖の一部に隣接するセンサの面積を評価する光学要素であり得る。センサは、光ファイバ要素から構成され得、光ファイバ要素は、光源およびカメラまたは他のセンサと結合され得、光ファイバ要素からの信号が受信および分析される。センサは、本明細書で説明される1つ以上の異なるタイプのセンサを含み得る。例えば、センサは力を測定し、光学的変化を感知する光学要素を有することができる。力および光学データを連携させて、弁機能に関するデータを提供できる。代替的に、センサ要素80は、超音波信号を送受信する超音波要素とすることができる。センサ80のうちの特定の1つに隣接する領域に送られる超音波信号は、弁尖の一部に隣接するセンサの領域を示すことができる。超音波要素は、複数の個々の結晶、結晶のアレイもしくはアレイのセット、またはKureha(ニューヨーク州ニューヨーク)によって製造されたフィルムのような圧電フィルムを含むがこれらに限定されないさまざまな形態の1つであり得る。
【0032】
センサ80は、弁尖がセンサと接触するところで弁尖に物質を移動させるドーピング剤を含み得る。次に、センサに触れた心臓弁尖の部分を画像化して、接合高さを評価できる。一例は、紫外線物質が付着、例えば接着、エッチング、またはコーティングされたセンサ80である。接合装置70が検査されるべき弁尖に近接して配置された後、センサ80に接触した心臓弁尖の部分は、UV光と、UVスペクトル光を捕捉して、接合測定装置に触れた心臓弁の領域を検出できるカメラとで画像化される。
【0033】
センサ要素は、(装置の長さに沿った、または装置の幅に沿った)センサ要素の1つ以上の行、または装置の面71を横切るセンサ要素のアレイとすることができる。装置の側面に(例えば、その幅76に沿って)センサ要素があってもよい。一実施形態では、センサ技術は、抵抗性タッチセンサ技術のマトリックスであってよい。Tekscan, Inc. (マサチューセッツ州ボストン)には、この装置のセンサとして適した代表的な抵抗性センサ技術がある。この技術は、測定点の1つ以上のセンサ間において隣接するセンサポイント間の距離が2mm未満、または別の好ましい実施形態では1mm未満、または別の好ましい実施形態では0.5mm未満であるよう最適化され得る抵抗性センサの複数アレイを有する。この抵抗性アレイタイプのセンサを用いると、接合を十分な粒度で測定して、接合の高さの妥当性、または追加の調整を行う必要があるかどうかを、外科医に通知することができる。抵抗性アレイセンサは、センサ上の弁尖の力を測定するために較正されてもよい。力の測定値は毎秒何回も感知され、弁の接合の動的な力マップを作成してもよい。弁尖が接合するときにセンサを横切って測定される力は、弁の接合高さに変換できる。弁の接合高さを横切る弁尖力の詳細、およびそれらの力が収縮期にどのように動的に発達するかを用いて、弁の機能をさらに特徴付け、現在の弁機能を理解し、将来の弁機能を予測することができる。接合の高さに加えて弁の機能に関する追加の意思決定のために、接合中に生成される動的な力の分析を医師に表示することができる。図3Bを参照して、遠位部分72および近位接続部材74を伴うこの接合測定装置70は、センサの面71の一部を横切るように延びる(たとえば、その幅を横切るように延びる)1つ以上のセンサ要素82を有し得る。センサ要素は、装置の面71の幅の半分以上の幅を有することができる。
【0034】
図3Cを参照すると、一実施形態では、装置90は、遠位部分92および近位接続部材94、1つ以上のセンサ要素80、ならびに断面厚96の最小寸法を有する。センサまたは接合測定装置90が構成される材料は、薄くて可撓性のある材料であってもよい。心臓弁尖構造は薄く、非常に可撓性があり、特に子供や幼児の心臓弁はそうである。評価される接合の領域で心臓弁尖に適合することができる可撓性のある接合測定装置90は、心臓弁尖のいかなる歪みも排除または最小化することにより、接合高さの正確な評価を容易にすることができる。
【0035】
図3Dを参照すると、僧帽弁が、弁尖12および14、ならびに断面で示される接合測定装置90とともに示される。装置90は可撓性であり、僧帽弁の前尖12と後尖14との間の、弁の湾曲している一部の周囲の接合高さを評価している。可撓性のある接合測定装置90は、弁のより広い接合表面にわたる接合高さを評価することができる、より幅の広い装置が用いられることを可能にすることができる。
【0036】
図4Aでは、接合測定装置70は遠位端72を有し、近位接続部材74は、ハンドル110に接続する延在部材100に接続される。可撓性のある装置90を等価的に用いることができる。ハンドル110から、電気コード112が延びて、ディスプレイおよび制御要素に接続する。延在部材100は、ハンドル110から延び、線形または非線形の形状であり得る。一実施形態では、延在部材100は可鍛性または屈曲可能であるため、外科医は、延在部材100を調整して、弁を視覚化するだけでなく、変形させないように快適に保持するような態様で、弁を横切るように、接合測定装置70のセンサを含む部分を位置決めすることができる。近位接続部材74は、弁を視覚化し、変形させないような態様で、外科医がセンサ部分を弁を横切るように位置決めする能力を最大化するために、非常に短くてもよく、またはある程度の長さ(例えば、1cm超、2cm超、5cm超)を有してもよい。
【0037】
図4Bを参照すると、別の実施形態では、センサを含む接合測定装置70は、延在部材100と連続する近位接続部材102を有する。この近位接続部材102は、本質的に非常に可撓性であり得る。その目標は、弁の変形による弁の接合の評価への影響を最小限に抑えることである。一実施形態では、近位接続部材102は、装置のセンサを含む部分からの電気信号を運ぶ小さなケーブルであり得、またはそれは、可撓性であり、延在部材100と遠位接合測定部70との間に与える力が非常に小さい薄いリボン状構造であり得る。
【0038】
別の実施形態では、延在部材100は、胸部開創器または手術室テーブルに取り付けられたスタンドなどの他の装置に取り付けられてもよい。この配置は、装置70のセンサを含む部分が弁の受動的検査中に弁の歪みの動きなしに弁を横切るように装置が設定できるように装置の固定を可能にするであろう。
【0039】
ここで図5を参照して、接合測定装置70のセンサを含む部分は、延在部材100に接続される。この延在部材は、その近位端に別個のハンドル部分を有し得る。コードまたは電線を含む装置112は、装置70を、少なくとも1つの画面122からなるコンピュータインターフェース120に接続する。このインターフェース120は、外科医または他の操作者が心臓内の任意の弁の接合高さを評価することを可能にする。操作者は、どの弁が評価されているかを選択し、その弁上の各評価ポイントの位置をマークできる。操作者は、各弁について複数の接合高さを測定できる。次に、これらの複数の接合高さを画面122上にグラフィックおよび数値で表示することができる。この表示は、外科医または他の操作者に、弁の全接合長を横切る接合高さの画像を提供する。接合測定装置のセンサを含む部分の幅に応じて、各接合測定値は、数値による高さとして、または装置のセンサ部分の長さに沿った接合長さのグラフィック表示における高さの範囲として表示されてもよい。
【0040】
外科医はこれらのデータを利用して、最小の目標接合が達成されるまで接合高さを変更するよう追加の修復技術を用いて弁をさらに調整する判断を下すことができる。弁の1つ以上の部分の接合高さは、追加の弁修復操作後に再検査できる。心臓を閉じる前に、弁接合の最終検査を完了することができる。患者が心肺バイパスから離脱した後、弁の機能を評価し、測定された接合高さと比較できる。術中測定中に得られた接合高さは、患者が心肺バイパスを離れると、弁機能に対応することになり、短期および長期の弁機能の予測因子となり得、より高い接合高はよりよい長期の弁機能に対応することが期待される。人工コードの使用、弁輪形成術、および交連部形成術の操作を含む微調整が必要な弁修復技術の場合、弁接合高さ測定装置は、これらのさまざまな弁修復技術を可能な限り最良の結果のために微調整するのに非常に役立つことがあり得る。
【0041】
図6を参照すると、心臓200の断面画像が、下大静脈210、右心房212、左心房214、および心房中隔216とともに示される。左心室腔217を有する左心室壁218は、僧帽弁前尖12および後尖14とともに示され、接合測定装置144が僧帽弁を通して突出している。近位接続部材142は、カテーテル140の本体から延びており、カテーテル140は下半身の静脈から心臓に入ることができる。一実施形態では、カテーテルは、大腿静脈に入り、下大静脈および右心房を通過し、心房中隔を横切り左心房を通って僧帽弁を横切ることができる。カテーテルベースの接合測定装置は、患者の心臓がカテーテル法手順中に鼓動している間に僧帽弁接合高さの測定を可能にする。カテーテル法中に各心臓弁にアクセスする方法は複数ある。これは、僧帽弁と交差するカテーテル通路の一実施形態である。上大静脈を経由するなど、カテーテルから僧帽弁と交差する他の経路があってもよい。三尖弁は、三尖弁を横切るよりも上大静脈または下大静脈を介して評価することもできる。カテーテルは右心室を通って肺動脈弁を横切るように延ばされ、肺動脈弁の接合高さを評価する。加えて、カテーテルは、大動脈弁の接合高さを評価するために、大動脈弁を横切るように順行または逆行で延ばすことができる。
【0042】
接合測定装置の使用は、同時経食道または経胸壁心エコー画像と組み合わせて、弁内の接合測定装置の正確な位置を評価することができる。螢光透視法と心エコー検査との組み合わせにより、各弁についての複数の接合高さは、弁の特定の部分を横切る接合装置の既知の位置で評価でき、それにより、特定の患者において対象の各弁について接合表面を横切る接合高さの画像が得られる。接合測定装置のカテーテルベースの実施形態を利用して、鼓動する心臓の接合高さを評価することができる。患者の生理的状態を変化させて、さまざまな条件下で弁を評価することもできる。これには、カテーテル法の手順中に異なる生理的状態での弁の機能を評価するために患者の生理機能をどのように変化させ得るかの二つの例として、患者に液量(volume)を与えること、患者を利尿させること、または変力性の支持を追加もしくは除去することが含まれ得る。接合測定装置144のセンサ部分は、4、6、8、10、12、または14フレンチの標準的なカテーテルサイズに適合するように十分に狭い幅のものであり得る。代替的に、カテーテルのセンサを含む部分144は、巻かれた、折り畳まれた、または他の方法で幅を狭められた状態にすることができ、カテーテル140が心臓内にある間においてそれをカテーテル内から前進させた後に拡張させることができる。カテーテルのセンサを含む部分144の幅は、心臓弁のより広い距離にわたる接合高さの測定を可能にするために、カテーテル144の幅よりも広くてもよい。
【0043】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の記載は例示を意図したものであり、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、特許請求の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6