(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】抗体およびワクチン送達用のナノ粒子プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230419BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20230419BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230419BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230419BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230419BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20230419BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K9/51
A61K47/42
A61P35/00
A61P37/06
C07K19/00 ZNA
C07K14/47
C07K16/00
(21)【出願番号】P 2020528499
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 CA2018050954
(87)【国際公開番号】W WO2019023811
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520040740
【氏名又は名称】ザ ホスピタル フォー シック チルドレン
(73)【特許権者】
【識別番号】501318567
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン、ジャン - フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シカード、テイラー
(72)【発明者】
【氏名】セメシ、アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】トレナー、ベビーン
(72)【発明者】
【氏名】ザオ、ティエンティエン
(72)【発明者】
【氏名】ルヤス ディエス、エデュルネ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】Dehal, P. K. et al.,Magnetizable antibody-like proteins,Biotechnol. J.,2010年,5,596-604
【文献】Falvo, E. et al.,Antibody-drug conjugates: targeting melanoma with cisplatin encapsulated in protein-cage nanoparticles based on human ferritin,Nanoscale,2013年,5,12278-12285
【文献】Jaaskelainen, A. et al.,Biologically produced bifunctional recombinant protein nanoparticles for immunoassays,Anal. Chem.,2008年,80,583-587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノケージ単量体、および
前記ナノケージ単量体に連結された抗
体フラグメントを含む融合タンパク質であって、
前記抗
体フラグメントは結合対の第1の成分を含み、
複数の前記融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成し、複数の前記抗
体フラグメントが前記ナノケージの外面を装飾し、それにより、前記結合対の第1の成分が、前記結合対の第2の成分と相互作用するために露出されて
おり、
前記ナノケージ単量体と前記抗体フラグメントとの間にリンカーをさらに含み、前記リンカーが1個~30個のアミノ酸残基を含み、
前記ナノケージ単量体が、フェリチンであり、
前記結合対の第1の成分が抗体のFc部分であり、前記結合対の第2の成分がFc受容体であり、
前記抗体フラグメントが単鎖Fc(scFc)を含む、
上記融合タンパク質。
【請求項2】
前記リンカー
が8個
~16個のアミノ酸残基を含む、請求項
1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記リンカーがGGSリピートを含む、請求項
1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記リンカーが4つのGGSリピートを含む、請求項
3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
検出可能な部分をさらに含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記検出可能な部分が
、蛍光タンパク
質である、請求項
5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記蛍光タンパク質が、GFP、EGFP、アメトリン
から選択される蛍光タンパク質、および/またはiLOV
、LOVタンパク質
から選択されるフラビンに基づく蛍光タンパク質である、請求項
6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質を含むナノケージ。
【請求項9】
前記ナノケージが多価である、請求項
8に記載のナノケージ。
【請求項10】
前記ナノケージ
が3個~100個のナノケージ単量
体を含む、請求項
8また
は9に記載の
ナノケージ。
【請求項11】
前記ナノケージが24個または60個のナノケージ単量体を含む、請求項10に記載のナノケージ。
【請求項12】
疾患の治療および/または予防に使用するための請求項8~11のいずれか一項に記載のナノケージ。
【請求項13】
がんまたは自己免疫疾患の治療および/または予防に使用するための請求項8~11のいずれか一項に記載のナノケージ。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコード化する核酸分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子に関する。特に、本発明は、ナノ粒子サブユニット融合タンパク質、ナノ粒子を含むワクチン、ならびに関連する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、様々な学問分野の進歩に貢献している。ナノ粒子を使用すると、標的を絞った送達が可能になる;また、規則正しいマイクロアレイの設計、徐放性、および触媒プロセスのためにケージ化された微小環境が可能である。
【0003】
ナノ粒子は、多糖類、リポソーム、または無機ナノ材料など、様々な材料から合成することができる。しかしながら、これらの送達プラットフォームは、過酷な製造条件によるタンパク質の活性低下、望ましくない分解産物および低カプセル化効率など、生体分子を融合する際の重要な制限と関連している。不適切な条件または製剤は、構造に壊滅的な影響を与える可能性があるため、所望の機能を阻害する可能性がある。例えば、三量体gp120糖タンパク質(最も重度にグリコシル化された既知の糖タンパク質)および抗体ドメインには、最適な活性を得るための厳密な緩衝液範囲がある。
【0004】
タンパク質ナノ粒子は、上記技術にとって魅力的な代替品である;それらの構成単位はアミノ酸であり、遺伝子工学は組成、分子量および機能の絶妙な制御を可能にする。高感度の準安定タンパク質を含むナノ粒子の製造には、タンパク質の自己集合が最適な方法である。実際、自己集合したナノ粒子は、生理的条件下で非共有結合的相互作用により形成され、均一であり、対称的なことも多いナノカプセルの生成を確実なものにし得る。自己集合性タンパク質ナノ粒子は、追加の機能を伝達するためにすべて微調整することができる3つの異なる表面:外部表面、内部表面およびサブユニット間表面を有する。
【0005】
ペプチドの自己集合性タンパク質への融合に関する多数の報告が存在する。チタンまたは金結合ペプチドを使用して、これらの金属にナノ粒子を選択的に付着させることができる。しかしながら、生物学的相互作用は三次および四次の構造を必要とすることが多く、したがって折り畳まれたタンパク質は一般にペプチドよりも拡張された機能を付与する。さらに、ヒトタンパク質の50%はグリコシル化されていると推定されており、これらの翻訳後修飾は、タンパク質構造の維持において重要な役割を演じ、安定性を伝達し、機能を提供するものである。糖タンパク質とタンパク質ナノ粒子の遺伝子融合については、わずか数例しか存在しない。
【0006】
ワクチンで使用するための抗原で表面が装飾されたナノケージは、例えば、米国特許第8,546,337号、米国特許出願公開第2015/0110825号、国際特許出願公開第2016/109792号、Kanekiyoら(Nature(ネイチャー)、2013、499:102-106)、およびSliepenら(Retrovirology(レトロバイロロジー)、2015、12:82)によって記載されている。以前に、本発明者らは、多量体(60量体)提示のために自己集合性ルマジンシンターゼタンパク質の外部にカーゴを遺伝子融合することが可能であることを示した(Jardineら、Science(サイエンス)、2013年5月10日;340(6133):711-6)。
【0007】
国際特許出願公開第2010/0222501号は、ナノ粒子の表面から突出する有機基に抗体などの部分を付着させることができる複合ナノ粒子の製造方法を記載している。
【0008】
Choeら(Materials(マテリアルズ)2016、9(12):994)は、Fc受容体の抗体への結合を模倣するスマート生体材料を使用して、抗体を単離および標的指向化するいくつかの方法の総括を提供する。Fc結合ペプチドは、例えば、ナノ材料上に抗体を局在化し、血清中のタンパク質の半減期を延長するために適用される。この総括では、Fc結合ペプチドの最近の開発を提示し、その結合特性と多様な適用性について検討する。
【0009】
Khoshnejadら(Bioconjugate Chem.(バイオコンジュゲート・ケミストリー)、2016、27(3):628-637)は、ICAM-1およびPECAM-1またはそれらの単鎖抗原結合フラグメント(scFv)に対するモノクローナル抗体がフェリチンナノ粒子にコンジュゲートされた研究について記述している。フェリチンナノ粒子は、20nmのサイズ範囲の担体で内皮接着分子を標的とするプラットフォームを提供する可能性があることが示唆されている。
【0010】
Kangら(多機能、ハイブリッドおよびナノマテリアルに関する第4回国際会議(Fourth International Conference on Multifunctional,Hybrid and Nanomaterials)、ポスタープログラム、2015年、P1.048)は、トラスツズマブとヒトフェリチンのscFvバリアントのキメラタンパク質ナノケージについて記載している。
【0011】
Carterら(Science.(サイエンス)、1992、256(5053):105-7)は、抗原と同時にCD19を取り込むと、その抗原に対するB細胞応答が高まることを示している。
【0012】
公衆に有用な代替品を提供する生成物、組成物および/または方法の開発が要望される。
【発明の概要】
【0013】
一実施態様によると、
ナノケージ単量体、および
前記ナノケージ単量体に連結された抗体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質であって、
前記抗体またはそのフラグメントは結合対の第1の成分を含み、
複数の前記融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成し、複数の前記抗体またはそのフラグメントが前記ナノケージの外面を装飾し、それにより、前記結合対の第1の成分が、前記結合対の第2の成分と相互作用するために露出されているものとする、融合タンパク質。
【0014】
一実施態様において、前記結合対の第1の成分は抗体またはそのフラグメントのFc部分であり、前記結合対の第2の成分はFc受容体である。
【0015】
一実施態様において、前記結合対の第1の成分は抗原結合エピトープであり、前記結合対の第2の成分は抗原である。
【0016】
一実施態様において、前記ナノケージは、約3~約100のナノケージ単量体、例えば24の単量体または60の単量体を含む。
【0017】
一実施態様において、前記ナノケージ単量体は、フェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ボールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらのフラグメント、およびそれらのバリアントから選択される。
【0018】
一実施態様において、前記融合タンパク質は、前記ナノケージ単量体と前記抗体またはそのフラグメントとの間にリンカーをさらに含む。
【0019】
一実施態様において、前記リンカーは柔軟性があるかまたは剛性であり、約1~約30個のアミノ酸残基を含む。
【0020】
一実施態様において、前記リンカーは約8~約16個のアミノ酸残基を含む。
【0021】
一実施態様において、前記リンカーはGGSリピートを含む。
【0022】
一実施態様において、前記リンカーは4つのGGSリピートを含む。
【0023】
一実施態様において、前記融合タンパク質は前記抗原をさらに含む。
【0024】
一実施態様において、前記抗原はリピートドメインを含む。
【0025】
一実施態様において、前記抗原はマラリア抗原である。
【0026】
一実施態様において、前記抗原はマラリアCSPタンパク質のフラグメントである。
【0027】
一実施態様において、前記抗原は前記マラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインのフラグメントである。
【0028】
一実施態様において、前記抗原は5.5NANPリピートを含む。
【0029】
一実施態様において、前記抗原はNPNANPNANPNANPNANPNANPである。
【0030】
一実施態様において、前記融合タンパク質はFcドメインである。
【0031】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントはリピートドメインに特異的である。
【0032】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントはマラリア抗原に特異的である。
【0033】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントはマラリアCSPタンパク質に特異的である。
【0034】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは、マラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインに特異的である。
【0035】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは、次の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列またはそのフラグメントを含む:
【化1】
【0036】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは次の配列を含む:
【化2】
【0037】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは次の配列からなる:
【化3】
【0038】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは腫瘍抗原に特異的である。
【0039】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは自己抗原に特異的である。
【0040】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは、CD19、CD22、CD79、BCMA、またはCD20に特異的である。
【0041】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは標的臓器に特異的である。
【0042】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントは、Fabフラグメントの重鎖および/または軽鎖を含む。
【0043】
一実施態様において、前記抗体またはそのフラグメントはscFvを含む。
【0044】
一実施態様において、前記融合タンパク質は、Fab軽鎖および/またはFab重鎖をさらに含む。
【0045】
一実施態様において、前記融合タンパク質は、別個に生成されたFab軽鎖および/またはFab重鎖と会合している。
【0046】
一実施態様において、前記融合タンパク質は検出可能な部分をさらに含む。
【0047】
一実施態様において、前記検出可能な部分は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビンに基づく蛍光タンパク質である。
【0048】
一実施態様によれば、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質を含むナノケージが提供される。
【0049】
一実施態様において、各ナノケージ単量体は、本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0050】
一実施態様では、ナノケージ単量体の約20%から約80%が本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0051】
一実施態様において、前記ナノケージは多価である。
【0052】
一実施態様において、前記ナノケージは、医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持している。
【0053】
一実施態様において、前記カーゴ分子はタンパク質であり、前記カーゴ分子が前記ナノケージに内包されるように前記融合タンパク質に融合されている。
【0054】
一実施態様において、前記カーゴ分子は、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビンに基づく蛍光タンパク質である。
【0055】
一実施態様において、前記カーゴ分子は前記融合タンパク質に融合されておらず、前記ナノケージに内包されている。
【0056】
一実施態様において、前記カーゴ分子は内部に含まれることによりT細胞エピトープを提供するが、場合によってはB細胞エピトープを提供しないこともある。
【0057】
一実施態様において、前記カーゴ分子は前記融合タンパク質に融合されており、内部に含まれることによりT細胞エピトープを提供するが、場合によってはB細胞エピトープを提供しないこともある。
【0058】
一実施態様において、前記カーゴ分子は小分子、放射性同位体、または磁性粒子である。
【0059】
一実施態様において、前記融合タンパク質は、表面に抗原をさらに含む。
【0060】
一実施態様において、前記抗原はナノケージ単量体との融合タンパク質として発現される。
【0061】
一実施態様によれば、本明細書に記載のナノケージを含むワクチンが提供される。
【0062】
一実施態様によれば、本明細書に記載の融合タンパク質をコード化する核酸分子が提供される。
【0063】
一実施態様によれば、本明細書に記載の核酸分子を含むベクターが提供される。
【0064】
一実施態様によれば、本明細書に記載のcのベクターを含み、本明細書に記載の融合タンパク質を産生する宿主細胞が提供される。
【0065】
一実施態様によれば、本明細書に記載のナノケージまたは本明細書に記載のワクチンを投与することを含む、対象を免疫化する方法が提供される。
【0066】
一実施態様によれば、本明細書に記載のナノケージまたは本明細書に記載のワクチンを投与することを含む、疾患または状態を処置および/または予防する方法が提供される。
【0067】
一実施態様において、前記疾患または状態は、がん、HIV、マラリア、または自己免疫疾患である。
【0068】
一実施態様によれば、診断的イメージング方法であって、本明細書に記載のナノケージを対象、組織、または試料に投与すること、および前記対象、組織、または試料をイメージングすることを含み、前記ナノケージが、蛍光タンパク質または磁気イメージング部分などの診断標識を含むものとする方法が提供される。
【0069】
一実施態様によれば、FACSまたはELISAなどの研究ツールとしての、本明細書に記載の融合タンパク質または本明細書に記載のナノケージの使用が提供される。
【0070】
本発明の新規特徴は、以下の本発明の詳細な説明を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の詳細な説明および提示された特定の例は、本発明のある特定の実施態様を示しているが、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正は、後述の本発明の詳細な説明および特許請求の範囲から当業者にとって明らかなものとなるため、例示のみを目的としていることを理解されたい。
【0071】
本発明は、図面を参照した上で以下の説明からさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、本明細書に記載のヒトフェリチン(
図1A)またはアキフェクス・エオリクス(Aquifex aeolicus)ルマジンシンターゼ(
図1B)の自然発生する自己集合ナノ粒子バックボーンを示す;
図1Cは、1つのプラスミドのトランスフェクションのみを必要とする単鎖Fab-フェリチンナノ粒子を生成するための概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明のフェリチン(
図2A)ナノ粒子またはルマジンシンターゼ(
図2B)ナノ粒子を発現する抗体Fabを生成するために使用される構築物の概略図を示す。
図2Cは、本明細書に記載の抗体発現ナノ粒子の概略図を示す。
【
図3】
図3は、アフィニティクロマトグラフィーおよびSDS-PAGE分析によって測定された
図2Aおよび2Bの方法に従って生成されたフェリチン(
図3A)ナノ粒子またはルマジンシンターゼ(
図3B)ナノ粒子を発現する抗体Fabの純度を表すデータを示す。
【
図4】
図4は、本明細書に記載のフェリチン(
図4A)ナノ粒子またはルマジンシンターゼ(
図4B)ナノ粒子を発現する抗体Fabの電子顕微鏡写真を示す。
【
図5】
図5は、ナノ粒子バックボーンを伴わない抗体Fabに対するCD22の結合親和性(
図5A)、本明細書に記載のフェリチンナノ粒子を発現する抗体Fabに対するCD22の結合親和性(
図5B)またはルマジンシンターゼナノ粒子を発現する抗体Fabに対するCD22の結合親和性(
図5C)を表すデータを示す。
【
図6】
図6は、フェリチンナノ粒子単独でのエンドサイトーシスの非存在下の場合(
図6C)と比較した、フェリチンナノ粒子を発現する2つの異なる抗体Fabの受容体介在エンドサイトーシスを立証するデータを示す(
図6Aおよび
図6B)。
【
図7】
図7は、本明細書に記載のフェリチンナノ粒子の蛍光能力を表すデータを示す。
【
図8】
図8は、CSP NANPリピートドメイン抗原と2つのFab抗体フラグメントとの間の相互作用の結晶構造を示す。
【
図9】
図9は、CSP NANPリピートドメイン抗原、Fab抗体フラグメント、およびB細胞間の相互作用の模式的なモデリングを示す。
【
図10】
図10は、様々な長さのリンカーでFab重鎖に融合したCSP NANPリピートドメイン抗原を含む融合タンパク質の配列を示す。
【
図11】
図11は、
図10の融合タンパク質のサイズ排除クロマトグラフィー精製のデータを示す。
【
図12】
図12は、
図10の融合タンパク質に対応するが、CSP NANPリピートドメインおよびリンカーを欠く野生型抗体のサイズ排除クロマトグラフィー精製からのデータを示す。
【
図13】
図13は、野生型抗体による結合と比較した
図10の融合タンパク質のCSP結合速度論を示す。
【
図18】
図18は、野生型抗体と融合タンパク質の相互作用についての絶対質量を決定するための多角度光散乱と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィーからのデータおよび本明細書に記載されている融合タンパク質に特異的なIgM受容体を発現するB細胞の相互作用を表す概略図を示す。
【
図19】
図19は、ワクチンプラットフォームとしてα-CD19刺激Fabと抗原を共提示するように設計されたナノ粒子を示す。
【
図20】
図20は、刺激抗体と抗原とを共提示するようにナノ粒子を設計できることを示す。
【
図21】
図21は、二重特異性ナノ粒子が十分に折り畳まれており、高密度のFabおよび抗原を提示していることを示す。
【
図22】
図22は、二重特異性ナノ粒子が、予想どおりに機能性があり、結合することを示す。
【
図23】
図23は、自己アジュバントナノ粒子が、対照との比較においてCa
2+依存性B細胞活性化を促進できることを示す。
【
図24】
図24は、単鎖Fcナノ粒子の折りたたみ、集合、および溶出データを示す。
【
図25】
図25は、高親和性ヒトPfCSP NANP抗体の親和性成熟を示す。(A)選択された(標識された)VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8抗PfCSP抗体(緑色)および非VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8抗PfCSP抗体(灰色)の表面プラズモン共鳴(SPR)親和性およびSHM(9)。(B~D)元の抗体および変異抗体。[(B)および(C)]PfCSP ELISA反応性。(D)2~4回の独立した実験からの平均(バー)Pf肝細胞横断阻害(記号)。
**スチューデントの両側t検定にて有意(α=0.01)。(E)VH3-33/Vκ1-5抗体におけるサイレント(灰色)および置換(赤色)SHM(バー)(n=63)。(F)ベースライン(ベース)モデルと比較した、観測された(obs)アミノ酸使用(22、23)。(GおよびH)独立したNANP3 SPR親和性測定値(ドット)および平均値(線)。
**ボンフェローニ多重比較検定では有意(α=0.01)および非有意(ns)。(A)、(B)、および(C)、少なくとも2つの独立した実験の1つの表示。
【
図26】
図26は、親和性成熟が同型リピート結合を推進することを示す。(A~H)1210 Fab/NANP5共結晶構造。(A)4つのNANP結合Fabの重ね合わせ。(B)抗原-抗体相互作用の表面表示。(C)1210によるコアエピトープ認識の詳細。黒のダッシュはH結合を示す。(D)NANP5と複合体を形成した2つの1210Fab。[(E)および(F)]Fab-B(E)およびFab-A(F)の表面表示。同型相互作用に関与する残基は濃い灰色である。[(G)および(H)]同型相互作用の詳細。親和性成熟残基は赤で標識されている。(I)等温滴定熱量測定(ITC)によって測定された平均値±SEM KD。ドットは、少なくとも3つの独立した実験からの測定値を表す。片側マン・ホイットニー検定:
*P<0.05、
**P<0.01。(J)1210Fab-PfCSP複合体についての多角度光散乱と組み合わせたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC/MALS)。赤い線は、2つの測定値からの平均±SDモル質量を示す。(K)1210Fab-PfCSP複合体の2Dクラス平均。赤い矢印は個々のFabを示し、赤い線は結晶構造で観察された結合角を示す(D)。スケールバー、10nm。
【
図27】
図27は、抗体1210によるNANP5リピート結合を示す。A、1210-NANP5結晶構造の非対称単位において4つの1210Fabが2つのNANP5ペプチドに結合している。B、580(ティール;(10))、663(緑;(10))、1210(黄)および非リガンドペプチド(紫;(12))構造のNPNAケイデンスの重ね合わせ。フィー(Φ)角およびプシー(Ψ)角の標準偏差が示されている。C、NANP3ペプチドとの複合体におけるH.2140/L.1210キメラFabとの1210-NANP5の重ね合わせ。1210結合NANP5ペプチドは黄色に着色され、キメラFabおよびNANP3結合ペプチドは灰色に着色されている。
【
図28】
図28は、抗原結合に対する残基H.Y52AおよびH.Y58のアラニン交換の効果を示す。抗体1210、2140、2219ならびにH.Y52AおよびH.Y58の位置がアラニン交換されたそれぞれの変異体のPfCSPおよびNANP5 ELISA反応性。3つの代表的な実験のうちの1つが示されている。
【
図29】
図29は、1210-NANP5の結晶構造を示す。A、1210とNANP5の詳細な相互作用。分子間H結合は黒色の破線で、分子内H結合は赤色で色付けされている。B、2つの1210Fabに結合したNANP5ペプチドについての1.0σに輪郭を合わせた不偏電子密度省略マップ(黒メッシュ)。C、SEC/MALSで調べた1210-NANP5の溶出プロファイル。赤い水平線は、NANP5に結合した2つの1210Fabの計算されたモル質量に対応する。D、SEC/MALSによって調査された完全長PfCSPの溶出プロファイル。赤い水平線は、溶出抗原の計算されたモル質量に対応する。
【
図30】
図30は、NANPリピートペプチドへの1210結合の等温滴定熱量測定を示す。A、B、NANP5(A)およびNANP3(B)への1210、1210_NS、1210_YY、および1210_GLの結合の代表的な生ITCデータ(上部パネル)および適合した結合曲線(下部パネル)が示されている。C、(A)および(B)で観察されたこれらの相互作用について測定された結合熱力学値の概要。少なくとも3つの独立した実験の平均値±SEMが報告されている。
【
図31】
図31は、1210および1210_YYのPfCSPへの結合力を示す。代表的なバイオレイヤー干渉センサーグラム(緑)、1:1モデルの最適な適合(黒)、および(A)1210IgGおよび(B)1210_YY IgGの完全長PfCSPへの結合についての結合力の計算値。
【
図32】
図32は、B細胞の活性化と寄生虫の抑制を示す。(A~D)1210およびバリアントのNANP5誘導カルシウムシグナル伝達。[(A)および(B)]少なくとも6つの代表的な実験のうちの1つについての1μg/mL NANP5に対する、反応速度論と活性化細胞のパーセント(A)、およびシグナル強度の中央値のオーバーレイ(B)。[(C)および(D)]1μg/mL(C)(n=6または7)NANP5および0.1μg/mL(D)(n=3)NANP5後の活性化細胞のパーセントおよび活性化時間の中央値。記号は独立した実験を示し、線とエラーバーは平均値±標準偏差を示す。
**ボンフェローニ多重比較検定について有意(α=0.01)および非有意(ns)。(EおよびF)寄生虫抑制。(E)示されたNANP3親和性を有する1210(黒色)抗体および2163(茶色)抗体についての少なくとも3回の独立した実験の平均値±SD IC50値。信頼区間が大幅に重複しているため、IC50値間に有意差は無い。(F)Pb‐PfCSPスポロゾイトを皮下注射する24時間前に、30μgまたは100μgの1210またはバリアントによる受動免疫を行った後の無寄生虫マウス。データは、1群につき5匹のマウスを使用した1回(100μg)または2回(30μg)の独立した実験を示す。1210バリアントについての生存に有意差は無い(マンテルコックス検定)。
【
図33】
図33は、Pf肝細胞横断の抗体介在阻害を示す。A、B、1210(A)、2163(B)、および示されたバリアントについてのPf肝細胞横断阻害。IC50値(g/mL)およびヒル(Hill)係数(n)値とそれらの標準偏差を、各プロットの上に示す。C、1210(黒色)および2163(茶色)、ならびに(AおよびB)に示すそれぞれのバリアントについてのNANP3親和性およびヒル係数。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図34】
図34は、IGHV3-23でコード化されたPfCSP NANP抗体の抗同型親和性成熟を示す。(A)すべてのVH3-23/Vκ1-5抗PfCSP抗体(緑色)および非VH3-23/Vκ1-5抗PfCSP抗体(灰色)のうちの1450のSPR親和性およびSHM(9)。(B)VH3-23/Vκ1-5抗体におけるサイレント(灰色)および置換(赤色)SHM(バー)(n=100)。(C~E)Fab1450-NANP5共結晶構造。頭-頭結合モード(C)、Fab-Fab(D)、およびFab-NANP5(E)の相互作用。黒のダッシュはH結合を示す。親和性成熟残基は、SHM aa使用スキームに従って色付けされ、赤で標識されている。ベースライン(ベース)モデルと比較している観測された(obs)アミノ酸使用(22、23)。(F)総メモリーB細胞(18)およびCD19+CD27hiCD38hi形質芽球(PB)およびCD19+CD27+PfCSP反応性メモリーB細胞(CSPmem)におけるVH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8抗体またはVH3-23/Vκ1-5抗体(8、9)。ドットは、n=1500配列のサブサンプルを表す。ボックスプロットは、分布の中央値、標準偏差、最大値と最小値を示す。
***両側スチューデントt検定で有意(α=0.001)。(G)クローン的に拡大した場合対シングレットをプールした場合のPBおよびCSPmem間におけるVH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8抗体およびVH3-23/Vκ1-5抗体の頻度(9)。
【
図35】
図35は、抗体1450および580-glによるNANP5リピート結合を示す。A、NANP5に結合した1450および580-gl(PDB 6AZM、(10))パラトープの表面を表したもの。B、1450とNANP5の詳細な相互作用。分子間H結合は黒色の破線で、分子内H結合は赤色で色付けされている。
【
図36】
図36は、1210とRTS,Sワクチン誘導NANP抗体311(IGHV3-33およびIGLV1-40によってコード化される)の構造比較を示す。最小限のNPNANPNANAリピートエピトープの認識について、同様の抗原結合立体配座が観察される。1210における抗同型変異H.N56_Kと同様に、311はH.N56_Rを有しており、これは抗同型親和性成熟も受けている可能性があることを示唆している。A、1210Ig
K鎖はティール色、1210 IgH鎖は緑色で示されている。B、311Igλ鎖は茶色で、311IgH鎖は紫色で示されている。NANPリピート抗原はピンク色で示されている。変異した残基は黄色に色付けされている。H.31、H.50、およびH.56の位置におけるAA交換が強調表示されている。C、D、1210(C)と311(D)の隣接するリピートエピトープに結合するFab間における同型HCDR2相互作用の詳細な表示。Dについては、311-NANP複合体の構造が複製され、1210_NANP5複合体のFab-AとFab-Bの両方に構造的に整列した。親和性成熟残基H.K56(C、1210Fab)およびH.R56(D、311Fab、(11))は赤色で標識されている。
【
図37】
図37は、IGHV3-33、IGHV3-30/IGHV3-30-3、IGHV3-30-5の遺伝子頻度を示す。末梢血単核細胞のゲノム配列決定により決定されるIGHV3-33、IGHV3-30/IGHV3-30-3、IGHV3-30-5生殖細胞系遺伝子セグメントの頻度(8、9)。表1に示すように、CDR2配列に基づいて、それぞれの生殖細胞系遺伝子に配列を割り当てた。
【
図38】
図38は、マラリアワクチン抗原(CSP-NANP5.5-リンカー抗体)が完全長PfCSP抗原を認識できるIgG力価を引き出すことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
定義
別に説明されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学の一般的な用語の定義は、1994年にオックスフォード大学プレスによって発行された、Benjamin Lewin、Genes(ジーンズ)V(ISBN 0-19-854287-9);Blackwell Science Ltd.により1994年に発行された、Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology(分子生物学辞典)(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers、Inc.により1995年に発行されたRobert A.Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference(分子生物学および生物工学:包括的デスクリファレンス)(ISBN 1-56081-569-8)に記載されている。本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料はすべて本発明の試験の実施に使用することができるが、典型的な材料および方法は本明細書に記載されている。本発明についての説明および請求において、以下の用語が使用される。
【0074】
また、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書では多くの特許出願、特許、および出版物を参照することにより、記載されている実施態様の理解が促進される。これらの参考文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
本出願の範囲を理解する上で、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said(前記の)」は、1つまたは複数のエレメントがあることを意味するものとする。さらに、本明細書で使用される「含んでいる」という用語およびその派生語は、述べられた特徴、エレメント、構成要素、群、整数、および/または段階の存在を明記しているが、記載されていない他の特徴、エレメント、構成要素、群、整数、および/または段階の存在を除外するものではない開放形式の用語であることを意図する。上記はまた、用語「含んでいる(including)」、「有する(having)」、およびそれらの派生語などの類似の意味を持つ語にも適用される。
【0076】
また、ある特定の構成要素を「含んでいる(comprising)」として記載されている実施態様はすべて、「~からなる(consist of)」または「~から本質的になる(consist essentially of)」こともあり得、この「~からなる」は、閉鎖的または制限的な意味を有し、「~から本質的になる」は、明記された構成要素を含んでいるが、不純物として存在する材料、該構成要素を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する避けられない材料、および本発明の技術的効果を達成する以外の目的で追加された構成要素を除く他の構成要素を除外することを意味するものと理解されよう。例えば、「本質的に~からなる」という句を使用して定義される組成物は、既知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを含む。典型的には、一セットの構成要素から本質的になる組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満、より典型的には1重量%未満、さらにより典型的には0.1重量%未満の割合で非特定成分(複数可)を含むことになる。
【0077】
本明細書において含まれるものとして定義された構成要素はいかなるものであっても、但し書きまたは否定的限定により、特許請求された発明から明確に除外されることもあり得ることが理解されよう。
【0078】
さらに、本明細書に記載されているすべての範囲には、明確に記述されているかどうかにかかわらず、該範囲の末端と中間範囲の点もすべて含まれる。
【0079】
本明細書で使用される「実質的に」、「約」および「およそ」などの度合を示す用語は、最終結果が大幅に変更されないように修飾された用語の妥当な量の逸脱を意味する。これらの度合を示す用語は、この偏差が修飾する単語の意味を否定するものではない場合、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0080】
さらに、核酸またはポリペプチドに与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量の値は近似値であり、説明のために提供されていることは言うまでもない。本開示の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することはできるが、適切な方法および材料は以下に記載されている。略語「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、略語「e.g.」は「例えば(for example)」の語と同義である。「または」という単語は、文脈からそうでないことが明確に示されていない限り、「および」を含むものとする。
【0081】
用語「タンパク質ナノ粒子」および「ナノケージ」は、本明細書では互換的に使用され、マルチサブユニットの、タンパク質ベースの多面体形状の構造を指す。サブユニットまたはナノケージ単量体は、それぞれタンパク質またはポリペプチド(例えば、グリコシル化ポリペプチド)により構成され、また場合によっては単一または複数の、以下の特徴あるもの:核酸、補欠分子族、有機化合物および無機化合物で構成されることもある。タンパク質ナノ粒子の非限定的な例には、フェリチンナノ粒子(例えば、Zhang、Y.Int.J.Mol.Sci.(インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・サイエンシーズ)、12:5406-5421、2011を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる)、エンカプスリンナノ粒子(例えば、Sutterら、Nature Struct,and Mol.Biol.(ネイチャー・ストラクチュラル・アンド・モレキュラー・バイオロジー)、15:939-947、2008参照、これは参照により本明細書に組み込まれる)、硫黄オキシゲナーゼレダクターゼ(SOR)ナノ粒子(例えば、Urichら、Science(サイエンス)、311:996-1000、2006を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる)、ルマジンシンターゼナノ粒子(例えば、Zhangら、J.Mol.Biol.(ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー)、306:1099-1114、2001を参照)またはピルビン酸デヒドロゲナーゼナノ粒子(例えば、Izardら、PNAS(米国科学アカデミー紀要)96:1240-1245、1999を参照、これは参照により本明細書に組み込まれる)が含まれる。フェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、およびピルビン酸デヒドロゲナーゼは、それぞれ、いくつかの場合では24、60、24、60、および60のタンパク質サブユニットからなる球状タンパク質複合体に自己集合する単量体タンパク質である。カルボキシソーム、ボールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2PおよびMS2コートタンパク質もまた、本明細書での使用が想定されるナノケージを生成する。さらに、完全にまたは部分的に合成された自己集合単量体も、本明細書での使用が想定される。
【0082】
「ワクチン」は、対象において予防的または治療的免疫応答を誘導する医薬組成物である。場合によっては、免疫反応は防御免疫反応である。典型的には、ワクチンは、病原体、例えばウイルス病原体の抗原、または病的状態と相関する細胞成分に対する抗原特異的免疫応答を誘導する。ワクチンには、ポリヌクレオチド(開示された抗原をコード化する核酸など)、ペプチドまたはポリペプチド(開示された抗原など)、ウイルス、細胞または1つもしくは複数の細胞成分が含まれ得る。1つの具体的な非限定的な例において、ワクチンは、マラリア感染に随伴する症状の重症度を軽減し、および/または対照と比較して寄生虫保有量を低減する免疫応答を誘導する。別の非限定的な例では、ワクチンは、対照と比較してマラリア感染を低減および/または予防する免疫応答を誘導する。
【0083】
本明細書で使用される「免疫グロブリン」(Ig)としても当該技術分野で呼ばれる用語「抗体」は、対合した重ポリペプチド鎖および軽ポリペプチド鎖から構築されたタンパク質を指し;IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、およびIgMなど、様々なIgアイソタイプが存在する。抗体は、ヒト、マウス、ラット、サル、ラマ、またはサメを含む任意の種に由来し得ることが理解されよう。抗体が正しく折り畳まれるとき、各鎖は、さらなる直鎖ポリペプチド配列によって結合された若干の異なる球状ドメインに折り畳まれる。例えば、免疫グロブリン軽鎖は可変(VL)ドメインおよび定常(CL)ドメインに折り畳まれ、重鎖は可変(VH)ドメインおよび3つの定常(CH、CH2、CH3)ドメインに折り畳まれる。重鎖および軽鎖の可変ドメイン(VHおよびVL)の相互作用により、抗原結合領域(Fv)が形成される。各ドメインは、当業者によく知られた十分に確立された構造を有する。
【0084】
軽鎖および重鎖の可変領域は、標的抗原の結合に関与しているため、抗体間でかなりの配列多様性を示す可能性がある。定常領域は配列多様性が少なく、若干の天然タンパク質との結合に関与しており、重要な免疫学的事象を誘発する。抗体の可変領域は、分子の抗原結合決定基を含み、したがって、その標的抗原に対する抗体の特異性を決定する。配列の可変性の大部分は、可変重鎖と軽鎖ごとに3つずつ、すなわち6つの超可変領域で発生する;超可変領域は結合して抗原結合部位を形成し、抗原決定基の結合と認識に寄与する。抗原に対する抗体の特異性と親和性は、超可変領域の構造、ならびに抗原に提示する表面のサイズ、形状、および化学的性質によって決まる。
【0085】
本明細書で言及される「抗体フラグメント」には、当技術分野で既知のあらゆる適切な抗原結合抗体フラグメントが含まれ得る。抗体フラグメントは、天然に存在する抗体フラグメントであってもよく、または天然に存在する抗体を操作することにより、または組換え法を使用することにより得られることもある。例えば、抗体フラグメントには、限定されるわけではないが、Fv、単鎖Fv(scFv;ペプチドリンカーで連結されたVLとVHからなる分子)、Fc、単鎖Fc、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(sdAb;単一のVLまたはVHで構成されるフラグメント)、およびこれらのいずれかの多価を提示するものが含まれ得る。
【0086】
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。この用語はまた、該抗体をコード化するDNA分子であって抗体タンパク質を発現するDNA分子、または該抗体を特定するアミノ酸配列の合成によって生成される抗体を意味すると解釈されるべきであり、前記DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野において利用可能であり周知である合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られた。
【0087】
「エピトープ」という用語は、抗原決定基を指す。エピトープは、抗原性である、すなわち特異的な免疫応答を誘発する分子上の特定の化学基またはペプチド配列である。抗体は、例えばポリペプチド上の特定の抗原性エピトープに特異的に結合する。エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並置された連続アミノ酸または非連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは通常、変性溶媒にさらされたときに保持されるが、三次折り畳みによって形成されたエピトープは通常、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、独特の空間的立体配座で少なくとも3個、より通常は少なくとも5個、約9個、約11個、または約8個~約12個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的立体配座を決定する方法には、例えば、X線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Methods in Molecular Biology(分子生物学における方法)、Vol.66、Glenn E.Morris編(1996)の「Epitope Mapping Protocols」(エピトープマッピングプロトコル)を参照。
【0088】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生、特定の免疫学的適格細胞の活性化、またはその両方が含まれ得る。当業者であれば、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含むあらゆる高分子が抗原としての役割を果たすことができることを理解するはずである。さらに、抗原は組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者であれば、したがって、免疫応答を誘発するタンパク質をコード化するヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含むDNAであれば、本明細書で使用されているところの用語「抗原」をコード化することになると理解するはずである。さらに、当業者であれば、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコード化される必要はないことを理解するはずである。本明細書に記載の実施態様は、2つ以上の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むが、これらに限定されないこと、およびこれらのヌクレオチド配列を様々な組み合わせで配置して所望の免疫応答を誘発できることは即明らかである。さらに、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によってコード化される必要はまったくないことを理解するはずである。抗原を合成できること、または生物学的試料から誘導できることは即明らかである。かかる生物学的試料には、組織試料、細胞、または生体液が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0089】
したがって、本明細書に記載の組成物は、例えばウイルス、細菌、真菌または寄生虫による感染、がん、および自己免疫障害などの様々な疾患状態に対する脊椎動物対象の保護または処置に適している可能性がある。これらの特定の疾患状態は例としてのみ言及されており、限定することを意図していないことを認識されたい。
【0090】
本明細書に記載の組成物と組み合わせて有用な適切な抗原には、本明細書で定義される任意の抗原が含まれる。抗原は市販されているか、または当業者はそれらを生成することができる。抗原は、改変された生きた微生物もしくは死滅した微生物、または腫瘍細胞、合成生成物、遺伝子操作されたタンパク質、ペプチド、多糖類もしくは類似の生成物、またはアレルゲンを含むがこれらに限定されない微生物または他の細胞から精製された天然産物であり得る。抗原性部分はまた、タンパク質、ペプチド、多糖類または類似の生成物のサブユニットであり得る。抗原はまた、遺伝的抗原、すなわち、免疫応答を引き起こすDNAまたはRNAであってもよい。
【0091】
使用できる抗原の代表例には、予防用または治療用ワクチンおよびアレルゲンで使用される可能性のある自己免疫疾患、ホルモン、または腫瘍抗原に加えて、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、および他の感染源に由来する天然、組換えまたは合成の生成物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。一実施形態では、抗原は、インフルエンザ、HIV、RSV、ニューカッスル病ウイルス(NDV)などの様々なウイルスからのウイルス様粒子(VLP)を含む。国際出願US2006/40862、国際出願US2004/022001、米国特許出願第11/582,540号、米国特許出願第60/799,343号、米国特許出願第60/817,402号、米国特許出願第60/859,240号参照、これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、抗原はキメラVLPを含む。「キメラVLP」とは、少なくとも2つの異なる供給源(生物)由来のタンパク質またはその一部を含むVLPを指す。通常、1つのタンパク質は、宿主細胞からのVLPの形成を推進することができるウイルスに由来する。したがって、一実施形態では、前記キメラVLPはRSV Mタンパク質を含む。別の実施形態では、前記キメラVLPはNDV Mタンパク質を含む。別の実施形態では、前記キメラVLPはインフルエンザウイルスMタンパク質を含む。
【0092】
ウイルス産物または細菌産物は、酵素切断により生物が産生する成分であり得るか、または当業者に周知の組換えDNA技術により生成された生物の成分であり得る。
【0093】
抗原のいくつかの特定の例は、肝炎ウイルスA、B、C、DおよびE3、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヘルペスウイルス1、2、6および7、サイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹、乳頭腫ウイルス、エプスタインバーウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ブニヤウイルス(ハンタウイルスなど)、コクサキエウイルス、ピコマウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、パポバウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス(複数のタイプ)、アデノウイルス(複数のタイプ)、パラインフルエンザウイルス(複数のタイプ)、鳥インフルエンザまたはパンデミックインフルエンザ(様々なタイプ)、季節性インフルエンザ、輸送熱ウイルス、西部および東部馬脳脊髄炎、日本B型脳脊髄炎、ロシア春夏脳脊髄炎、豚コレラウイルス、ニューカッスル病ウイルス、鶏痘、狂犬病、ネコおよびイヌジステンパーなどのウイルス、遅脳ウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポキシウイルス科(天然痘またはワクシニアなど)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV-I、HTLV-II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(例えば、ルビウイルス)によって引き起こされるウイルス感染に由来する抗原である。これらのファミリーに属するウイルスは、関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(結膜炎、角膜炎など)、慢性疲労症候群、B型日本脳炎、ジュニン、チクングニア、リフトバレー熱、黄熱、髄膜炎、日和見感染症(エイズなど)、肺炎、バーキットリンパ腫、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ、狂犬病、風邪、ポリオ、白血病、風疹、性感染症、皮膚病(例、カポジ、いぼ)、およびウイルス血症などの様々な病気や症状を引き起こす可能性があるが、これらに限定されるわけではない。
【0094】
抗原はまた、細菌や真菌の感染症に由来する場合もあり、例えば:結核やハンセン病を引き起こすマイコバクテリア、肺炎球菌(pneumocci)、好気性グラム陰性菌(aerobic gram negative bacilli)、マイコプラズマに起因する感染症、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、サルモネラ菌(salmonellae)およびクラミジア門(chlamydiae)、ボルデテラ・パーツシス(百日咳菌、B.pertussis)、レプトスピラ・ポモナ(Leptospira pomona)および黄疸出血病レプトスピラ(Leptospira icterohaemorrhagiae)に由来する抗原がある。特定の実施形態は、サルモネラ・パラチフィ(S.paratyphi、パラチフス菌)AおよびB、コリネバクテリウム・ジフセリエ(C.diphtheriae、ジフテリア菌)、クロストリジウム・テタニ(C.tetani、破傷風菌)、ボツリヌス菌(C.botulinum)、ウェルシュ菌(C.perfringens)、フェセリ菌(C.feseri)および他のガス壊疽菌、炭疽菌(B.anthracis)、ペスト菌(P.pestis)、パスツレラ・マルトサイダ(P.multocida)、髄膜炎菌(ナイセリア・メニンギチジス、Neisseria meningitidis)、淋菌(ナイセリア・ゴノロエエ、N.gonorrheae)、ヘモフィルス・インフルエンゼ(Hemophilus influenzae)、アクチノマイセス(Actinomyces、放線菌)(例、ノカルジア(Norcardia))、アシネトバクター(Acinetobacter)、バシラス科(例、バシラス・アンスラシス(Bacillus anthrasis)炭疽菌)、バクテロイデス(Bacteroides)(例、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis))、ブラストマイコシス(Blastomycosis)、ボルデテラ(Bordetella)、ボレリア(Borrelia)(例、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi))、ブルセラ(Brucella)、カンジダ、カンピロバクター、クラミジア、コクシジオイデス(Coccidioides)、コリネバクテリウム(例えば、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diptheriae))、クリプトコッカス(Cryptococcus)、皮膚糸状菌(Dermatocycoses)、大腸菌(E.coli、例えば、毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic E.coli)および腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E.coli))、エンテロバクター(例えば、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes))、腸内細菌科(Enterobacteriaceae、クレブシエラ(Klebsiella)、サルモネラ(Salmonella)(例、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi、チフス菌)、サルモネラ・エンテリチジス(Salmonella enteritidis、腸炎菌)、セラチア(Serratia)、エルシニア(Yersinia)、シゲラ(Shigella、赤痢菌))、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、ヘモフィルス(Haemophilus)(例、ヘモフィルス・インフルエンザB型)、ヘリコバクター(Helicobacter)、レジオネラ(Legionella)(例、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)(例、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes))、マイコプラズマ、マイコバクテリウム(例、マイコバクテリウムレプラエおよびマイコバクテリウムツベルクローシス)、ビブリオ(例、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae))、パスツレラ科(Pasteurellacea)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas、例、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa))、リケッチア科(Rickettsiaceae)、スピロヘータ属(Spirochetes、例、トレポネマ属(Treponema spp)、レプトスピラ属(Leptospira spp)、ボレリア属(Borrelia spp))、赤痢菌属(Shigella spp)、髄膜炎菌(Meningiococcus)、肺炎球菌(Pneumococcus)および連鎖球菌(Streptococcus)(例えば、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)ならびにA群、B群、およびC群連鎖球菌)、ウレアプラズマ(Ureaplasmas)、トレポネマ・ポリドゥム(Treponema pollidum)など;黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、マラリア原虫(Plasmodium sp、熱帯熱マラリア原虫(Pl.falciparum)、三日熱マラリア原虫(Pl.vivax)など)、アスペルギルス属(Aspergillus sp)、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、パスツレラヘモリティカ(Pasteurella haemolytica)、コリネバクテリウムジフセリエトキソイド(Corynebacterium diptheriae toxoid)、髄膜炎菌多糖類(Meningococcal polysaccharide)、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertusis、百日咳菌)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、肺炎球菌(pneumococcus))多糖類、破傷風菌トキソイド、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis、ウシ結核菌)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、およびアスペルギルス(Aspergillus)の死滅細胞を含む。
【0095】
抗原はまた、寄生性マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、住血吸虫症、フィラリア症マラリア、アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外寄生虫、ジアルジア、蠕虫病、タイレリア症、トリコモナスおよび胞子虫類(例、三日熱マラリア原虫(Plasmodium virax)、プラスモジウム・ファキパリウム(Plasmodium fakiparium)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)および卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale))に由来するものであり得る。これらの寄生虫は、疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(赤痢、ジアルジア症など)、肝疾患、肺疾患、日和見感染症(AIDS関連など)、マラリア、妊娠合併症、およびトキソプラズマ症を含む様々な疾患や症状を引き起こす可能性があるが、これらに限定されるわけではない。
【0096】
本明細書に記載の組成物での使用に適した腫瘍関連抗原には、単一の腫瘍タイプを示し得る、いくつかのタイプの腫瘍間で共有され得る、および/または正常細胞と比較して腫瘍細胞で排他的に発現または過剰発現され得る変異分子および非変異分子の両方が含まれる。タンパク質および糖タンパク質に加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質およびムチンの発現の腫瘍特異的パターンも立証されている。対象のがんワクチンで使用するための例示的な腫瘍関連抗原には、がん遺伝子のタンパク質産物、腫瘍抑制遺伝子、および腫瘍細胞に特有の変異または再配列を有する他の遺伝子、再活性化胚遺伝子産物、がん胎児性抗原、組織特異的(ただし腫瘍特異的ではない)分化抗原、成長因子受容体、細胞表面炭水化物残基、外来ウイルスタンパク質、ならびに若干の他の自己タンパク質が含まれる。腫瘍関連抗原の特定の実施形態には、例えば、Ras p21がん原遺伝子、腫瘍抑制因子p53およびHER-2/neuおよびBCR-ab1がん遺伝子のタンパク質産物、ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8、およびベータカテニンなどの変異抗原;ガレクチン4、ガレクチン9、炭酸脱水酵素、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB-2およびKSAなどの過剰発現抗原、アルファフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などのがん胎児性抗原;がん胎児性抗原(CEA)などの自己抗原、およびMart 1/Melan A、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1およびTRP2などのメラニン細胞分化抗原;PSA、PAP、PSMA、PSM-P1、PSM-P2などの前立腺関連抗原;MAGE 1、MAGE 3、MAGE 4、GAGE 1、GAGE 2、BAGE、RAGEなどの再活性化胚遺伝子産物、ならびにNY-ESO1、SSX2およびSCP1などの他のがん精巣抗原;Muc-1やMuc-2などのムチン;GM2、GD2、GD3などのガングリオシド、中性糖脂質、およびLewis(y)やglobo-Hなどの糖タンパク質;ならびにTn、トムゼン・フリーデンライヒ(Thompson-Freidenreich)抗原(TF)、sTnなどの糖タンパク質が含まれる。また、本明細書において腫瘍関連抗原として含まれるのは、全細胞および腫瘍細胞溶解物ならびにその免疫原性部分、ならびにB細胞リンパ腫に対する使用のためのBリンパ球のモノクローナル増殖で発現される免疫グロブリンイディオタイプである。腫瘍関連抗原およびそれらのそれぞれの腫瘍細胞標的には、例えば、がん腫の抗原としてのサイトケラチン、特にサイトケラチン8、18および19が含まれる。上皮膜抗原(EMA)、EphA1、EphA2、EphA3、EphA4、EphA5、EphA6、EphA7、EphA8、EphA10、EphB1、EphB2、EphB3、EphB4、EphB6、ヒト胎児抗原(HEA-125)、ヒト乳脂肪球、MBr1、MBr8、Ber-EP4、17-1A、C26およびT16も既知のがん抗原である。デスミンと筋肉特異的アクチンは筋原性肉腫の抗原である。胎盤アルカリホスファターゼ、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、およびアルファフェトプロテインは、栄養芽細胞腫瘍および胚細胞腫瘍の抗原である。前立腺特異抗原は、前立腺がんの抗原、結腸腺がんのがん胎児性抗原である。HMB-45は黒色腫の抗原である。子宮頸がんでは、有用な抗原がヒト乳頭腫ウイルスによってコード化される可能性がある。クロマグラニンAとシナプトフィシンは、神経内分泌腫瘍と神経外胚葉性腫瘍の抗原である。特に興味深いのは、壊死領域を有する固形腫瘍塊を形成する攻撃的な腫瘍である。かかる壊死細胞の溶解は、抗原提示細胞の抗原の豊富な供給源であり、したがって、対象の治療については、従来の化学療法および/または放射線療法と併せて有利な用途が見出される可能性がある。抗原は、あらゆる腫瘍または悪性細胞株に由来し得る。
【0097】
抗原は、アレルギーを引き起こす一般的なアレルゲンに由来する場合もある。アレルゲンには、植物材料、金属、化粧品または洗剤の成分、ラテックスなど、様々な人工資源または天然資源に由来する有機または無機の材料が含まれる。本明細書に記載の組成物および方法で使用するための適切なアレルゲンのクラスには、花粉、動物のフケ、草、カビ、ほこり、抗生物質、刺咬昆虫の毒、および様々な環境的(化学物質および金属を含む)薬物および食物アレルゲンが含まれるが、これらに限定されない。一般的な木のアレルゲンには、ハコヤナギ、ポプラ(popular)、トネリコ、カバノキ、メープル、オーク、ニレ、ヒッコリー、およびペカンの木からの花粉が含まれる;一般的な植物のアレルゲンには、ライ麦、ブタクサ、オオバコ、スイバドックおよびブタクサからのアレルゲンが含まれる;植物接触アレルゲンには、毒オーク、ツタウルシおよびイラクサ由来のものが含まれる;一般的な草のアレルゲンには、ティモシー、ジョンソン、バミューダ、ウシノケグサおよびブルーグラスのアレルゲンが含まれる;一般的なアレルゲンはまた、カビや菌類、例えばアルテルナリア(Alternaria)、フザリウム(Fusarium)、ホルモデンドラム(Hormodendrum)、アスペルギルス、ミクロポリスポラ(Micropolyspora)、ムコール(Mucor)および好熱性放線菌(thermophilic actinomycetes)からも入手できる;ペニシリンとテトラサイクリンは一般的な抗生物質アレルゲンである;表皮アレルゲンは、ハウスダストまたはオーガニックダスト(通常は菌類起源)、イエダニ(デルマルファゴイデス・プテロシナイシス(dermalphagoides pterosinyssis))などの昆虫、または羽、猫や犬のフケなどの動物源から入手できる;一般的な食物アレルゲンには、牛乳とチーズ(乳製品)、卵、小麦、ナッツ(ピーナッツなど)、魚介類(甲殻類など)、エンドウ豆、豆、グルテンのアレルゲンが含まれる;一般的な環境アレルゲンには、金属(ニッケルおよび金)、化学物質(ホルムアルデヒド、トリニトロフェノールおよびターペンチン)、ラテックス、ゴム、繊維(綿または羊毛)、黄麻布、染毛剤、化粧品、洗剤および香水アレルゲンが含まれる;一般的な薬物アレルゲンには、局所麻酔薬とサリチル酸アレルゲンが含まれる;抗生物質アレルゲンには、ペニシリンおよびスルホンアミドアレルゲンが含まれる;一般的な昆虫のアレルゲンには、蜂、スズメバチおよびアリの毒、およびゴキブリのキノコ体傘部(calyx)のアレルゲンが含まれる。特に十分に特性確認されたアレルゲンには、Der pIアレルゲンの主要エピトープおよび潜在エピトープ(Hoyneら(1994)Immunology(イムノロジー)83、190-195)、蜂毒ホスホリパーゼA2(PLA)(Akdisら(1996)J.Clin.Invest.(ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション)98、1676-1683)、カバノキ花粉アレルゲンBet v 1(Bauerら(1997)Clin.Exp.Immunol.(クリニカル・アンド・エクスペリメンタル・イムノロジー)107、536-541)、および多エピトープ組換え草アレルゲンrKBG8.3(Caoら(1997)Immunology(イムノロジー)90、46-51)があるが、これらに限定されるわけではない。これらおよび他の適切なアレルゲンは市販されており、および/または既知の技術に従って抽出物として容易に調製することができる。
【0098】
抗原は、精製抗原形態でもまたは部分精製抗原形態でもよく、上記の抗原、抗原性ペプチド、当技術分野において既知で利用可能なタンパク質、および慣用的技術を使用して同定できる他のタンパク質のいずれかに由来し得る。抗原は、典型的には、その毒性または猛毒特性が低減または破壊され、適切なものに導入されると、特定の微生物、抗原の調製に使用される微生物の抽出物または生成物に対して免疫応答を誘導する形態をとることになり、またはアレルゲンの場合、特定のアレルゲンによるアレルギーの症状を緩和するのに役立つことになる。抗原は、単独で、または組み合わせて使用することができる;例えば、複数の細菌抗原、複数のウイルス抗原、複数の細菌抗原、複数の寄生虫抗原、複数の細菌性、ウイルス性のトキソイド、複数の腫瘍抗原、複数のアレルゲンまたは前述の生成物のいずれかの組み合わせをアジュバント組成物と組み合わせることにより、多価抗原性組成物および/またはワクチンを作り出すことができる。本明細書に記載の組成物において、抗原は、組成物の小胞構造成分に捕捉、吸着、または混合された抗原であってもよい。
【0099】
一実施形態において、本明細書に記載の組成物と共に使用するのに適した抗原には、免疫原性が低い抗原、例えばマラリア抗原、デング抗原およびHIV抗原、またはパンデミック疾患に対する免疫を付与することを意図した抗原、例えばインフルエンザ抗原が含まれる。
【0100】
「コード化する」とは、特定されたヌクレオチド配列(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)または特定されたアミノ酸配列およびそれから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型としての役割を果たす、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特異的配列の固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳により細胞または他の生物学的系でタンパク質が産生される場合、遺伝子はタンパク質をコード化している。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコーディング鎖と、遺伝子またはcDNAの転写用の鋳型として使用される非コーディング鎖は両方とも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の生成物をコード化しているということができる。
【0101】
本明細書で使用される「発現」という用語は、そのプロモータによって推進される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0102】
「単離された」とは、自然状態から変更または除去されたことを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸またはペプチドは「単離され」ていないが、その自然状態の共存材料から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離され」ている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができるか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在することができる。
【0103】
特に明記しない限り、「アミノ酸配列をコード化するヌクレオチド配列」には、互いに縮重したバージョンであり、同じアミノ酸配列をコード化するすべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質またはRNAをコード化するフレーズヌクレオチド配列はまた、タンパク質をコード化するヌクレオチド配列が何らかのバージョンでイントロンを含み得る程度までイントロンを含み得る。
【0104】
本明細書で使用される「調整する」という用語は、処置または化合物の非存在下での対象の応答レベルと比較した、および/または他の点では同一だが未処置である対象の応答レベルと比較した対象の応答レベルの検出可能な増加または減少を調節することを意味する。この用語は、本来のシグナルまたは応答を摂動すること、および/または影響を与えることにより、対象、典型的にはヒトにおける有益な治療応答を調節することを含む。
【0105】
「機能し得るように連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指し、後者の発現をもたらす。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能し得るように連結されている。例えば、プロモータがコーディング配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモータはコーディング配列に機能し得るように連結されている。一般に、機能し得るように連結されたDNA配列は連続しており、必要に応じて同じ読み枠内にある2つのタンパク質コーディング領域を結合させる。
【0106】
免疫原性組成物の「非経口」投与には、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内の注射または注入技術が含まれる。
【0107】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸およびポリヌクレオチドは交換可能である。当業者であれば、核酸がポリヌクレオチドであり、単量体の「ヌクレオチド」に加水分解できるという一般的な知識を有するはずである。単量体のヌクレオチドは加水分解されてヌクレオシドになり得る。本明細書で使用されるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCRなどを用いた、組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングなど、および合成手段を含むがこれらに限定されない、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0108】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合的に連結されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質またはペプチドには少なくとも2つのアミノ酸が含まれていなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限は無い。ポリペプチドには、ペプチド結合により互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含むペプチドまたはタンパク質が含まれる。本明細書で使用する場合、この用語は、例えば当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖、および当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指し、多くのタイプが存在する。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0109】
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という語は、特異的抗原を認識するが、試料中の他の分子を実質的に認識することもまたは結合することもない抗体を意味する。例えば、1つの種に由来する抗原に特異的に結合する抗体が、1つ以上の種に由来するその抗原に結合する場合もある。しかし、そのような異種間反応性は、それ自体が特異的であるものとしての抗体の分類を変えることはない。別の例では、ある抗原に特異的に結合する抗体が、該抗原の異なる対立遺伝子型にも結合することがある。しかしながら、かかる交差反応性自体が、特異的であるものとしての抗体の分類を変更することはない。場合によっては、用語「特異的結合」または「特異的に結合する」を、抗体、タンパク質、またはペプチドと第2の化学種との相互作用に関して使用することにより、該相互作用が該化学種上の特定構造(例、抗原決定基またはエピトープ)の存在に左右されること;例えば、抗体は一般的にタンパク質ではなく、ある特定のタンパク質構造を認識して結合することを意味することができる。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識「A」と抗体を含む反応におけるエピトープA(または遊離の非標識A)を含む分子の存在は、抗体に結合した標識Aの量を減少させることになる。
【0110】
「治療有効量」、「有効量」または「十分な量」という用語は、哺乳動物、例えばヒトを含む対象に投与された場合、所望の結果を達成するのに十分な量、例えば防御免疫応答を誘発するのに有効な量を意味する。本明細書に記載の化合物の有効量は、対象の免疫原、年齢、性別、および体重などの要因によって異なり得る。当業者に理解されているように、最適な治療応答を実現するために、投薬または処置計画を調整してもよい。例えば、本明細書に記載の治療有効量の融合タンパク質の投与は、実施態様において、マラリア原虫(Plasmodium)などの病原体に対する免疫を高めるのに十分である。他の実施態様において、本明細書に記載の融合タンパク質の治療有効量の投与は、がん、HIV、マラリア、または自己免疫疾患などの疾患または状態を処置するのに十分である。さらに他の実施態様において、本明細書に記載の治療有効量の融合タンパク質の投与は、ワクチンの有効性を高めるアジュバントとして作用するのに十分である。
【0111】
さらに、治療的有効量での対象の処置計画は、単回投与で構成されてもよく、あるいは一連の適用を含んでもよい。処置期間の長さは、免疫原、対象の年齢、薬剤の濃度、薬剤に対する患者の応答性、またはそれらの組み合わせなどの様々な要因によって異なる。また、処置に使用される薬剤の有効投与量は、特定の処置計画の過程で増加または減少する場合があることも理解されよう。投与量の変化が生じ、当技術分野で知られている標準的な診断アッセイによって明らかになる可能性がある。本明細書に記載の融合タンパク質は、実施態様において、マラリア、HIVまたはがんなどの問題の疾患または障害に対する慣用的治療法による処置の前、最中または後に投与されることがある。例えば、本明細書に記載の融合タンパク質については、がんを処置するための免疫療法と組み合わせた特定の用途が見出される可能性がある。
【0112】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクト、形質転換または形質導入された細胞である。細胞には、一次対象細胞とその子孫が含まれる。
【0113】
本明細書で使用される「転写制御下」または「機能し得るように連結された」という語句は、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するために、プロモータがポリヌクレオチドに対して正しい位置および配向にあることを意味する。
【0114】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる物質の組成物である。直鎖ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物に関連するポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含むがこれらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミドまたはウイルスが含まれる。この用語はまた、例えばポリリジン化合物、リポソームなどの、細胞への核酸の移入を促進する非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物界の任意の構成員、典型的には哺乳動物を指す。「哺乳動物(哺乳類)」という用語は、ヒト、その他の高等霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどの家畜および農場の動物、および動物園、スポーツ、または愛玩用の動物を含む哺乳類に分類されるあらゆる動物を指す。通常、哺乳類はヒトである。
【0116】
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与には、同時(並行)投与および任意の順序での連続投与が含まれる。
【0117】
「医薬的に許容し得る」という用語は、化合物または化合物の組み合わせが医薬用の製剤の残りの成分と適合性があること、および米国食品医薬品局によって公布されたものを含む確立された政府基準に従ってヒトに投与することが一般に安全であることを意味する。
【0118】
「医薬的に許容し得る担体」という用語には、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および/または吸収遅延剤などが含まれるが、これらに限定されない。医薬的に許容し得る担体の使用は周知である。
【0119】
「アジュバント」という用語は、ワクチン中に存在し、ワクチン中に存在する抗原に対する免疫応答を強化する化合物または混合物を指す。例えば、アジュバントは、本明細書で検討されているワクチンに存在するポリペプチド、または本明細書で検討されているその免疫原性フラグメントもしくはバリアントに対する免疫応答を増強することもある。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポーとして、また免疫応答を非特異的に強化するリンパ系活性化因子としての役割を果たすこともある。使用され得るアジュバントの例には、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA/合成トレハロースジコリノミコラート、例えばGSK Biologicsから入手可能)が含まれる。別の適切なアジュバントは、免疫刺激性アジュバントAS021/AS02(GSK)である。これらの免疫刺激アジュバントは、強いT細胞応答を与えるように製剤化されており、QS-21、キライ・サポナリア(Quillay saponaria)由来のサポニン、TL4リガンド、モノホスホリルリピドAを脂質またはリポソームの担体中に一緒に含む。他のアジュバントには、非イオン性ブロックコポリマーアジュバント(例えば、CRL 1005)、リン酸アルミニウム(例えば、AIPO.sub.4)、R-848(Th1様アジュバント)、イミキモド、PAM3CYS、ポリ(I:C)、ロキソリビン、BCG(bacille Calmette-Guerin、カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウムパルブム(Corynebacterium parvum)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、コレラ毒素由来抗原(例、CTA 1-DD)、リポ多糖アジュバント、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、水中の油または炭化水素エマルジョン(例:Novartis Vaccinesから入手可能なMF59またはモンタナイド(Montanide)ISA 720)、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
「バリアント」は、比較配列内の1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、修飾および/または置換により、比較基準配列とは異なるアミノ酸配列を有する生物学的に活性な融合タンパク質、抗体、またはそのフラグメントである。バリアントは一般に、比較配列との配列同一性が100%未満である。しかしながら、通常、生物学的に活性なバリアントは、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性など、比較配列と少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有することになる。バリアントには、比較基準配列の生物活性のある程度のレベルを保持する少なくとも10個のアミノ酸のペプチドフラグメントが含まれる。またバリアントには、比較配列のN末端もしくはC末端に、または比較配列内に1つ以上のアミノ酸残基が付加されているポリペプチドも含まれる。またバリアントには、いくつかのアミノ酸残基が欠失し、場合によっては1つ以上のアミノ酸残基により置換されていてもよいポリペプチドも含まれる。バリアントはまた、例えば、天然に存在するアミノ酸以外の部分で置換することにより、またはアミノ酸残基を修飾して天然に存在しないアミノ酸を生成することにより、共有結合的に修飾されることもある。
【0121】
「アミノ酸配列同一性パーセント」は、本明細書では、配列を整列させ、必要ならばギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後における、配列同一性の一部として保存的置換を考慮に入れていない、本発明のポリペプチドなどの興味の対象である配列内の残基と同一である候補配列内のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。候補配列へのN末端、C末端、もしくは内部伸長、欠失または挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響すると解釈されるものではない。アラインメントのための方法およびコンピュータプログラムは、「BLAST」など、当技術分野で周知である。
【0122】
本明細書における目的のための「活性の」または「活性」は、本明細書に記載の融合タンパク質の生物学的活性および/または免疫学的活性を指し、「生物学的」活性は、融合タンパク質によって引き起こされる生物学的機能(阻害性または刺激性)を指す。
【0123】
本明細書に記載の融合タンパク質は、修飾を含み得る。かかる修飾には、抗マラリア剤またはアジュバントなどのエフェクター分子へのコンジュゲーションが含まれるが、これに限定されない。修飾にはさらに、検出可能なレポーター部分へのコンジュゲーションが含まれるが、これに限定されない。半減期を延長する修飾(例:ペグ化)も含まれる。タンパク質および非タンパク質の薬剤は、当該分野で既知の方法により融合タンパク質にコンジュゲーションされ得る。コンジュゲーション法には、直接結合、共有結合したリンカーを介した結合、および特異的結合対メンバー(例、アビジン-ビオチン)が含まれる。かかる方法には、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Greenfieldら、Cancer Research(キャンサー・リサーチ)50、6600-6607(1990)によって記載された方法、ならびにAmonら、Adv.Exp.Med.Biol.(アドバンシーズ・イン・エクスペリメンタル・メディシン・アンド・バイオロジー)303、79-90(1991)およびKiselevaら、Mol.Biol.(モレキュラー・バイオロジー)(USSR)25、508-514(1991)によって記載された方法が含まれ、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0124】
融合タンパク質
本明細書に記載されているのは、融合タンパク質である。融合タンパク質は、ナノケージ単量体およびナノケージ単量体に結合した抗体またはそのフラグメントを含み、抗体またはそのフラグメントは抗原結合エピトープを含む。複数の融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成し、複数の抗体またはそのフラグメントがナノケージの外表面を装飾し、それにより抗原結合エピトープが抗原との相互作用のために露出される。
【0125】
他の実施態様において、融合タンパク質は、ナノケージ単量体およびナノケージ単量体に結合した抗体またはそのフラグメントを含み、抗体またはそのフラグメントは、抗体またはそのフラグメントのFc部分を含む。複数の融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成し、複数の抗体またはそのフラグメントがナノケージの外面を装飾し、それにより抗体またはそのフラグメントのFc部分がFc受容体と相互作用するために露出される。
【0126】
典型的な実施態様において、ナノケージは、約3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、または98~約4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、55、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、または100のナノケージ単量体、例えば24単量体または60単量体など、約3~約100のナノケージ単量体を含む。ナノケージ単量体は、天然、合成、または部分合成の任意の既知ナノケージ単量体であってもよく、実施態様では、フェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ボールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、そのフラグメント、およびそのバリアントから選択される。
図1Aおよび1Bは、自己集合ナノケージの画像を示す。
【0127】
特定の実施態様において、本明細書に記載の融合タンパク質は、ナノケージ単量体と抗体またはそのフラグメントとの間にリンカーを含む。このリンカーにより、タンパク質が発現されると、ナノケージ単量体と抗体またはそのフラグメントの両方が、自己集合と抗体機能に有利な立体配座をとることができる。リンカーは、柔軟性があっても剛性でもよい。
【0128】
リンカーは一般に、融合タンパク質にある程度の柔軟性を与えるのに十分な長さではあるが、リンカーの長さはナノケージ単量体と抗体の配列および融合タンパク質の三次元立体配座に応じて変わることが理解されよう。したがって、リンカーは、典型的には、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29~約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30のアミノ酸残基、例えば8、10、または12のアミノ酸残基などの約8~約16のアミノ酸残基など、約1から約30のアミノ酸残基である。
【0129】
リンカーは、抗体の抗原結合部位への抗原の結合を妨げることのないものであればいかなるアミノ酸配列のものであってもよい。典型的な一例では、リンカーはGGSリピートを含み、より典型的には、リンカーは、約4のGGSリピートなど、約2、3、4、5、または6のGGSリピートを含む。
【0130】
典型的には、抗体はFabフラグメントの重鎖および/または軽鎖を含むが、上記抗体の1つなどの任意の抗体またはそのフラグメントを本明細書に記載の融合タンパク質に使用し得ることが理解されよう。他の典型的な実施態様において、抗体またはそのフラグメントはscFvまたはscFcを含む。
【0131】
特定の実施態様において、融合タンパク質は抗原をさらに含むことがある。そのような実施態様は、米国特許出願第______(Julienら、本明細書と同時に提出、整理番号3206-5005)に明記されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。簡単に述べると、かかる実施態様では、抗原は少なくとも第1および第2の抗体結合エピトープ;ならびに少なくとも第1の抗原エピトープに特異的な抗体またはそのフラグメントを有する。抗体またはそのフラグメントの第1の抗原エピトープへの結合は、抗原結合部分に結合するための第2の抗原エピトープを提示し、および/または第1の抗体結合エピトープは抗体またはそのフラグメントに結合し、前記結合は抗体またはそのフラグメントの状況において前記第2の抗体結合エピトープを提示する。
【0132】
実施態様では、抗原は典型的にはリピートドメインを含む。これにより、単一体に2つの同一の抗体結合エピトープを含めることが容易になる。もちろん、抗原は、上記のように、異なる抗体結合エピトープを有することがあり、その場合、リピートドメインは適切ではない。関連実施態様において、抗体はリピートドメインに特異的である。
【0133】
典型的な実施態様において、抗原はマラリアCSPタンパク質のフラグメントなどのマラリア抗原である。より典型的には、抗原はマラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインのフラグメントであり、5.5のNANPリピートを含む。典型的な実施態様において、抗原はNPNANPNANPNANPNANPNANPである。関連する実施態様において、抗体はマラリアCSPタンパク質などのマラリア抗原に特異的であり、より典型的には、マラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインに特異的である。
【0134】
マラリアCSPタンパク質が、NPDP、NVDP、およびNANAを含め、NANP以外に、またはNANPに加えて、他の繰り返しアミノ酸を有する可能性があることは言うまでもない。これらは、単独で、またはNANPの有無にかかわらず組み合わせた形で繰り返されて、抗原または抗原の一部を形成することもあり、明確にするために、NANPが存在しない場合でも「NANPリピートドメイン」という語句に含まれるものとする。N末端ドメインと中央リピート領域との間の接合部でのNPDPモチーフのユニークな位置は、ほぼすべてのPf分離株で保存されている(>99.8%)(Kisaluら、2018)。対照的に、NANP-NVDP交互配列は一般にNPDPモチーフの直後に位置するが、NANPモチーフは40回超も繰り返され得、長さはPf野生分離株間で大きく異なり得る。そのため、リピート・ターゲティングmAbは、単一のPfCSP分子内であっても、エピトープの多くのコピーに結合することが示されている。mAbのMGG4およびCIS43は、NPDP、NVDP、およびNANPに無差別に結合するが、特異的繰り返しモチーフに対する独特の優先傾向も示す。重要なことに、記載されているmAbは、NPDPモチーフ(接合エピトープと呼ばれる、KQPADGNPDPNANPNVDPN)に関与する能力を有しており、これは、Pfスポロゾイトを阻害する効力を高める可能性がある。mAbのMGG4およびCIS43のパラトープは、繰り返しモチーフ内のある特定のアミノ酸の互換性に対応する能力を有する(NPDP対NVDP対NANP)。
【0135】
典型的には、抗体またはそのフラグメントは、配列:
【数4】
に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列またはそのフラグメント、例えば、上記配列に対して、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する配列、例えば100%配列同一性を含むか、またはそれからなる配列を含む。
【0136】
他の実施態様において、抗体またはそのフラグメントは、エプラツズマブまたはデニンツズマブなどの抗CD22抗体または抗CD19抗体である。特定の実施態様において、抗原は、別個のサブユニット融合タンパク質として、または他の既知の方法によってナノケージの表面に結合した形で、ナノケージの表面に共提示されることもある。抗原および抗CD19抗体またはそのフラグメントを共提示することにより、抗原に特異的に結合したアジュバント効果が提供される。抗CD19と共提示されている抗原は、ナノ粒子表面に直接的または間接的に結合され得、上記の抗体またはそのフラグメントの状況で提示され得ることが特に考えられる。
【0137】
他の実施態様において、抗体またはそのフラグメントは、上記で列挙したものなどの任意の抗原に指向され得る。典型的には、抗原は、がんまたはA型、B型、C型の肝炎、HIV、マイコバクテリア、マラリア病原体、SARS病原体、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、ポリオウイルスなどの感染源、またはクラミジアやマイコバクテリアなどの細菌性病原体、または共動員および細胞傷害性殺傷のための自己反応性B細胞または任意のT細胞に由来する。
【0138】
一般に、本明細書に記載の融合タンパク質は、Fab軽鎖および/または重鎖と関連しており、これらは融合タンパク質とは別個にまたは連続して生成され得る。
【0139】
あるいは、本明細書に記載の融合タンパク質については、治療薬または診断薬としての用途が見出され得る。したがって、実施態様における抗体またはそのフラグメントは、例えば、腫瘍抗原または自己抗原に特異的であり得る。
【0140】
実質的に同一の配列は、1つ以上の保存的アミノ酸変異を含み得る。参照配列に対する1つ以上の保存的アミノ酸変異が、参照配列と比較して生理学的、化学的、または機能的特性の実質的な変化を伴わない変異体ペプチドを生成する可能性があることは当技術分野で知られている;そのような場合、参照配列と変異体配列は「実質的に同一」のポリペプチドとみなされる。保存的アミノ酸変異には、アミノ酸の付加、欠失、または置換が含まれ得る;保存的アミノ酸置換は、本明細書において、類似の化学的性質(例えば、サイズ、電荷、または極性)を有する別のアミノ酸残基へのアミノ酸残基の置換として定義される。
【0141】
非限定的な例では、保存的変異はアミノ酸置換であり得る。かかる保存的アミノ酸置換は、塩基性、中性、疎水性、または酸性のアミノ酸で同じ群の別のものを置換してもよい。「塩基性アミノ酸」という用語は、生理的pHで典型的には正に帯電している、7より大きい側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を意味する。塩基性アミノ酸には、ヒスチジン(HisまたはH)、アルギニン(ArgまたはR)、およびリシン(LysまたはK)が含まれる。「中性アミノ酸」(別名「極性アミノ酸」)という用語は、生理的pHでは非荷電状態であるが、2つの原子によって共有される電子対がその一方の原子の方により近く引き寄せられている少なくとも1つの結合を有する側鎖を有する親水性アミノ酸を意味する。極性アミノ酸には、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、システイン(CysまたはC)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン(AsnまたはN)、およびグルタミン(GlnまたはQ)が含まれる。「疎水性アミノ酸」(別名「非極性アミノ酸」)という用語は、アイゼンバーグ(1984)の正規化されたコンセンサス疎水性スケールに従ってゼロより大きい疎水性を示すアミノ酸を含むことを意味する。疎水性アミノ酸には、プロリン(ProまたはP)、イソロイシン(IleまたはI)、フェニルアラニン(PheまたはF)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(LeuまたはL)、トリプトファン(TrpまたはW)、メチオニン(MetまたはM)、アラニン(AlaまたはA)、およびグリシン(GlyまたはG)がある。
【0142】
「酸性アミノ酸」とは、生理学的pHで典型的には負に帯電している、7未満の側鎖pK値を有する親水性アミノ酸を指す。酸性アミノ酸には、グルタミン酸(GluまたはE)、およびアスパラギン酸(AspまたはD)が含まれる。
【0143】
配列同一性は、2つの配列の類似性を評価するために使用される;これは、残基の位置間における最大の対応を得るように2つの配列を整列させたときに同じ残基のパーセントを計算することによって決定される。任意の既知の方法を使用して配列同一性を計算することもある;例えば、コンピュータのソフトウェアを使用して配列同一性を計算できる。限定することを望むものではないが、配列同一性は、Swiss Institute of Bioinformatics(およびca.expasy.org/tools/blast/にある)によって維持されるNCBI BLAST2サービス、BLAST-P、Blast-N、またはFASTA-Nなどのソフトウェア、または当技術分野で知られている他の適切なソフトウェアにより計算することができる。
【0144】
本発明の実質的に同一の配列は、少なくとも85%同一であり得る;別の例では、実質的に同一の配列は、アミノ酸レベルで本明細書に記載の配列に対し少なくとも70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、または100%(またはその間の任意のパーセンテージ)同一であり得る。特定の実施態様において、実質的に同一の配列は、参照配列の活性および特異性を保持している。非限定的な実施形態では、配列同一性の違いは、複数の場合もある保存的アミノ酸変異によるものであり得る。
【0145】
本発明のポリペプチドまたは融合タンパク質はまた、それらの発現、検出または精製の助けとなる追加の配列を含んでいてもよい。当業者に知られているそのような配列またはタグを使用することができる。例えば、限定することを望むものではないが、融合タンパク質は、ターゲティングまたはシグナル配列(例えば、限定されないがompA)、検出タグを含み得、具体例としてのタグカセットはStrepタグまたはその任意のバリアントを含む;例えば、米国特許第7,981,632号参照、Hisタグ、配列モチーフDYKDDDDKを有するFlagタグ、Xpressタグ、Aviタグ、カルモジュリンタグ、ポリグルタマートタグ、HAタグ、Mycタグ、Nusタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1を参照、Softag 3、V5タグ、CREB結合タンパク質(CBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、チオレドキシンタグ、またはそれらの任意の組み合わせ;精製タグ(例えば、限定されるわけではないが、His5またはHis6)、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0146】
別の例では、追加の配列は、国際公開第95/04069号のCronanらまたは国際公開第2004/076670号のVogesらによって記載されているものなどのビオチン認識部位であり得る。また、当業者に知られているように、リンカー配列は、追加の配列またはタグと組み合わせて使用されてもよい。
【0147】
より具体的には、タグカセットは、高い親和性または結合力で抗体に特異的に結合することができる細胞外成分を含んでもよい。単鎖融合タンパク質構造内で、タグカセットは、(a)コネクター領域に対しアミノ末端直近に位置し得るか、(b)リンカーモジュールの間に挟まれて連結する形をとり得るか、(c)結合ドメインに対しカルボキシ末端直近に位置し得るか、(d)結合ドメイン(例えば、scFv)とエフェクタードメインの間に挟まれて連結する形を取りうるか、(e)結合ドメインのサブユニットの間に挟まれて連結する形を取りうるか、または(f)単鎖融合タンパク質のアミノ末端に位置し得る。特定の実施形態では、1つ以上の接合アミノ酸は、タグカセットと疎水性部分との間に配置されてそれらを連結するか、タグカセットとコネクター領域の間に配置されてそれらを連結するか、タグカセットとリンカーモジュールの間に配置されてそれらを連結するか、またはタグカセットと結合ドメインとの間に配置されてそれらを連結してもよい。
【0148】
また、本明細書には、様々な方法論を使用して表面に固定化された単離もしくは精製された融合タンパク質、ポリペプチド、またはそのフラグメントも含まれる;例えば、限定することを望むものではないが、ポリペプチドは、Hisタグカップリング、ビオチン結合、共有結合、吸着などを介して表面に結合またはカップリングされてもよい。固体表面は、任意の適切な表面、例えば、限定されるわけではないが、マイクロタイタープレートのウェル表面、表面プラズモン共鳴(SPR)センサーチップのチャネル、膜、ビーズ(磁気ベースまたはセファロースベースのビーズまたはその他クロマトグラフィー樹脂)、ガラス、フィルム、またはその他の有用な表面であり得る。
【0149】
他の実施態様において、融合タンパク質はカーゴ分子に結合され得る;融合タンパク質は、カーゴ分子を所望の部位に送達し得、当技術分野で知られている任意の方法(組換え技術、化学的コンジュゲーション、キレート化など)を使用してカーゴ分子に結合され得る。カーゴ分子は、治療薬または診断薬などの任意のタイプの分子であり得る。例えば、いかなる方法でも限定することを望むものではないが、治療薬は放射性免疫療法に使用されることもある放射性同位体;免疫毒素などの毒素;免疫サイトカインなどのサイトカイン;細胞毒素;アポトーシス誘導剤;酵素;免疫療法用の抗がん抗体;または当技術分野で知られている任意の他の適切な治療分子であってもよい。他方、診断薬には、放射性同位体、ガドリニウムまたは酸化鉄などの常磁性標識、発蛍光団、近赤外(NIR)蛍光色素または染料(Cy3、Cy5.5、Alexa680、Dylight680、またはDylight800など)、検出可能なタンパク質ベースの分子に融合した親和性標識(例えば、ビオチン、アビジンなど)、またはイメージング法で検出され得るその他の任意の適切な薬剤が含まれ得るが、これらに限定されるわけではない。特定の非限定的な例において、融合タンパク質は、FITCなどの蛍光剤に結合されてもよく、または強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)に遺伝子融合されてもよい。
【0150】
いくつかの実施態様において、カーゴ分子はタンパク質であり、カーゴ分子がナノケージに内包されるように融合タンパク質に融合される。他の実施態様において、カーゴ分子は融合タンパク質に融合されておらず、ナノケージに内包されている。カーゴ分子は通常、タンパク質、小分子、放射性同位元素、または磁性粒子である。
【0151】
本明細書に記載の融合タンパク質は、それらの標的に特異的に結合する。本明細書に記載の抗体またはフラグメントの、抗原の特定のエピトープに対する抗体の選択的認識を指す抗体特異性は、親和性および/または結合力に基づいて決定することができる。親和性は、抗原と抗体との解離の平衡定数(KD)で表され、抗原決定基(エピトープ)と抗体結合部位との結合強度を測定する。結合力とは、抗体とその抗原との結合強度の尺度である。抗体は、典型的には10-5~10-11 MのKDで結合する。10-4Mを超えるKDはいずれも、一般に非特異的結合を示すと考えられる。KDの値が小さくなると、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合強度は強くなる。実施態様において、本明細書に記載の抗体は、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、または10-9M未満のKDを有する。
【0152】
また、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質を含むナノケージも本明細書に記載されている。ナノケージは、複数の同一の融合タンパク質、複数の異なる融合タンパク質(したがって多価である)、融合タンパク質と野生型タンパク質の組み合わせ、およびそれらの任意の組み合わせから自己集合し得ることは言うまでもない。例えば、ナノケージは、免疫療法のための少なくとも1つの抗がん抗体と組み合わせて、本明細書に記載の少なくとも1つの融合タンパク質で装飾されていてもよい。典型的な実施態様において、ナノケージ単量体の約20%~約80%が本明細書に記載の融合タンパク質を含む。
【0153】
また、本明細書に記載の融合タンパク質およびポリペプチドをコード化する核酸分子、ならびに核酸分子を含むベクターおよびベクターを含む宿主細胞も本明細書に記載される。
【0154】
本明細書に記載の融合タンパク質をコード化するポリヌクレオチドには、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列と実質的に同じ核酸配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。「実質的に同じ」核酸配列は、本明細書では、2つの配列を(適切なヌクレオチドの挿入または欠失により)最適な形で整列させ、比較して2つの配列間のヌクレオチドの正確な一致を決定したときに、別の核酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%の同一性を有する配列として定義される。
【0155】
抗体のフラグメントをコード化するDNAの適切な供給源には、完全長抗体を発現するハイブリドーマや脾臓細胞などの細胞が含まれる。フラグメントは、抗体等価物としてそれ自体で使用されてもよいし、上記のように等価物に組み換えられてもよい。このセクションで説明するDNAの欠失と組換えは、「Functional Equivalents of Antibodies」(抗体の機能的等価物)というタイトルのセクションで上記に列挙された公開特許出願に記載されている方法などの既知の方法および/または下記に記載されているものなどの他の標準的な組換えDNA技術によって実行され得る。DNAの別の供給源は、当技術分野で知られているように、ファージディスプレイライブラリーから産生された単鎖抗体である。
【0156】
さらに、発現配列、プロモータおよびエンハンサー配列に機能し得るように結合された前述のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターが提供される。限定されるわけではないが酵母および哺乳類細胞培養系を含む、細菌および真核生物系などの、原核生物における抗体ポリペプチドの効率的な合成のための様々な発現ベクターが開発されている。本発明のベクターは、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
【0157】
任意の適切な発現ベクターを使用することができる。例えば、原核生物クローニングベクターには、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、pUC、pKSM、およびRP4などの大腸菌(E.coli)由来のプラスミドが含まれる。また、原核生物ベクターには、Ml3などのファージDNAの誘導体や他の繊維状一本鎖DNAファージも含まれる。酵母で有用なベクターの一例は、2μプラスミドである。哺乳類細胞での発現に適したベクターには、SV-40のよく知られた誘導体、アデノウイルス、レトロウイルス由来のDNA配列、上記のものなど、機能性哺乳類ベクターの組み合わせに由来するシャトルベクター、および機能性プラスミドおよびファージDNAがある。
【0158】
追加の真核生物発現ベクターが当技術分野で知られている(例、P J.SouthernおよびP.Berg、J.Mol.Appl.Genet(ジャーナル・オブ・モレキュラー・アンド・アプライド・ジェネティクス)、1:327-341(1982);Subramaniら、Mol.Cell.Biol(モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー)、1:854-864(1981);KaufinannおよびSharp、“Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene”(モジュラージヒドロ葉酸レダクターゼ相補的DNA遺伝子でコトランスフェクトされた配列の増幅と発現)、J.Mol.Biol(ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー)、159:601-621(1982);KaufhiannおよびSharp、Mol.Cell.Biol(モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー)、159:601-664(1982);Scahillら、“Expression And Characterization Of The Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells”(チャイニーズハムスター卵巣細胞におけるヒト免疫インターフェロンDNA遺伝子の産物の発現と特性評価)Proc.Nat’l Acad.Sci USA(米国科学アカデミー紀要)、80:4654-4659(1983);UrlaubおよびChasin、Proc.Nat’l Acad.Sci USA(米国科学アカデミー紀要)、77:4216-4220、(1980)、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。
【0159】
発現ベクターは、典型的には、発現されるDNA配列またはフラグメントに機能し得るように結合されている少なくとも1つの発現制御配列を含む。クローン化されたDNA配列の発現を制御および調節するために、制御配列がベクターに挿入される。有用な発現制御配列の例は、lac系、trp系、tac系、trc系、ファージラムダの主要なオペレータおよびプロモータ領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖系プロモータ、例えば、3-ホスホグリセリン酸キナーゼのプロモータ、酵母酸性ホスファターゼのプロモータ、例えばPho5、酵母アルファ接合因子のプロモータ、ならびにポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、およびサルウイルスに由来するプロモータ、例えば初期および後期プロモータまたはSV40、および原核細胞または真核細胞およびそれらのウイルスまたはそれらの組み合わせの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列である。
【0160】
本明細書には、前述の発現ベクターを含む組換え宿主細胞も記載されている。本明細書に記載の融合タンパク質は、ハイブリドーマ以外の細胞株で発現させることができる。本発明のポリペプチドをコード化する配列を含む核酸は、適切な哺乳類宿主細胞の形質転換に使用することができる。
【0161】
特に優先性の高い細胞株は、高レベルの発現、興味の対象であるタンパク質の構成的発現、および宿主タンパク質からの最小限の混入に基づいて選択される。発現用の宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当技術分野で周知であり、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびその他多くの細胞など、多くの不死化細胞株を含む。適切なさらなる真核細胞には、酵母および他の真菌が含まれる。有用な原核生物宿主には、例えば、大腸菌(E.coli)SG-936、大腸菌HB 101、大腸菌W3110、大腸菌X1776、大腸菌X2282、大腸菌DHI、および大腸菌MRC1などの大腸菌、シュードモナス(Pseudomonas)、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス(Bacillus)、およびストレプトマイセス(Streptomyces)がある。
【0162】
これらの本組換え宿主細胞は、ポリペプチドの発現を可能にする条件下で細胞を培養し、宿主細胞または宿主細胞を取り囲む培地からポリペプチドを精製することにより融合タンパク質を製造するために使用され得る。組換え宿主細胞における分泌のための発現されたポリペプチドのターゲティングは、興味の対象である抗体をコード化する遺伝子の5’末端にシグナルまたは分泌リーダーペプチドをコード化する配列を挿入することにより促進され得る(Shokriら、(2003)Appl Microbiol Biotechnol.(アプライド・マイクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー)60(6):654-664、Nielsenら、Prot.Eng.(プロテイン・エンジニアリング)、10:1-6(1997);von Heinjeら、Nucl.Acids Res.(ヌクレイック・アシッズ・リサーチ)、14:4683-4690(1986)参照、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。これらの分泌リーダーペプチドエレメントは、原核生物配列または真核生物配列のいずれかに由来し得る。したがって好適には、宿主細胞の細胞質ゾルからのポリペプチドの移動および培地への分泌を指令するために、ポリペプチドのN末端に連結されたアミノ酸である分泌リーダーペプチドが使用される。
【0163】
本明細書に記載の融合タンパク質は、追加のアミノ酸残基に融合させることができる。そのようなアミノ酸残基は、例えば、単離を促進するペプチドタグであり得る。特定の臓器または組織への抗体のホーミングのための他のアミノ酸残基も考えられる。
【0164】
HCフェリチンとLCの同時トランスフェクションにより、Fabナノケージを生成できることは言うまでもない。別法として、
図1Cに示すように、1つのプラスミドのトランスフェクションのみを必要とする単鎖Fab-フェリチンナノケージを使用することができる。これは、LCとHCとの間における異なる長さのリンカー、例えば60または70のアミノ酸で行うことができる。単鎖Fabを使用すると、重鎖と軽鎖が対になることが確保され得る。タグ(例:Flag、HA、myc、His6x、Strepなど)も、上記の精製を容易にするために、構築物のN末端またはリンカー内に追加することができる。さらに、タグ系を使用することにより、異なるFab-ナノ粒子プラスミドを同時トランスフェクトしたときに、連続/追加的アフィニティクロマトグラフィー段階を使用して、同じナノ粒子上に多くの異なるFabが存在することを確認できる。これにより、ナノ粒子に多重特異性が提供される。プロテアーゼ部位(TEV、3Cなど)を挿入して、必要に応じて、発現および/または精製後にリンカーとタグを切断することができる。かかる構築物の一例は、抗HIV広域中和性Fab 10E8についてのものである:
【化5】
【0165】
別の実施態様では、本明細書に記載の融合タンパク質の治療有効量を、それを必要とする哺乳動物、典型的には若齢、若年、または新生児哺乳動物に投与することにより対象にワクチン接種する方法が本明細書に記載されている。治療有効な、とは、問題の抗原に対する防御免疫応答を提供するなど、所望の治療効果を生み出すのに有効な量を意味する。
【0166】
本明細書に記載の融合タンパク質およびワクチンを投与するために、任意の適切な方法または経路を使用することができる。投与経路には、例えば、経口、静脈内、腹腔内、皮下、または筋肉内投与が含まれる。
【0167】
本明細書に記載の融合タンパク質が、予防または処置の目的で哺乳動物で使用される場合、医薬的に許容し得る担体をさらに含む組成物の形態で投与されることは言うまでもない。適切な医薬的に許容し得る担体には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、およびそれらの組み合わせが含まれる。医薬的に許容し得る担体は、結合タンパク質の貯蔵寿命または有効性を高める湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝液などの少量の補助物質をさらに含んでいてもよい。注射の組成物は、当技術分野で周知のように、哺乳動物への投与後に有効成分の迅速、持続的または遅延放出を実現するように製剤化され得る。
【0168】
ヒト抗体は、ヒトへの投与に特に有用であるが、他の哺乳類にも投与され得る。本明細書で使用される「哺乳動物(哺乳類)」という用語は、ヒト、実験動物、飼いならされたペットおよび農場の動物を含むことを意図しているが、これらに限定されない。
【0169】
また、本明細書に記載の融合タンパク質の治療的または予防的有効量を含むワクチン接種用キットも本明細書に含まれる。キットは、例えば任意の適切なアジュバントをさらに含むことができる。キットには説明書が含まれている場合がある。
【0170】
上記の開示は、本発明を全般的に説明している。以下の特定の例を参照すると、より完全な理解が得られる。これらの例は、説明のみを目的として提供されており、特に指定がない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、決して以下の例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆる変形を包含するものと解釈されるべきである。
【0171】
以下の例には、ベクターおよびプラスミドの構築、かかるベクターおよびプラスミドへのポリペプチドをコード化する遺伝子の挿入、または宿主細胞へのプラスミドの導入に使用されるものなど、従来の方法の詳細な説明は含まれない。かかる方法は、当業者に周知であり、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(分子クローニング:実験室マニュアル)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Pressを含む多数の刊行物に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0172】
さらに説明しなくても、当業者であれば、前述の説明および以下の実例となる例を使用して、本発明の化合物を製造および利用し、特許請求の方法を実施できるはずであると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の典型的な実施態様を具体的に指摘するものであり、決して本開示の残りを限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0173】
例1:本発明のナノ粒子の構築物設計、クローニング、発現および精製
構築物設計およびクローニング
ヒトフェリチンL鎖のアミノ酸配列(Uniprot:P02792)を得、12アミノ酸のGGS
4xリンカーをN末端およびC末端に付加した。N末端リンカーの上流に、StrepTag IIアフィニティタグを付加してアフィニティ精製を促進し、AflII制限部位およびXbaI制限部位を付加して下流のクローニングを促進した。さらに、NheI制限部位およびKpnI制限部位をC末端リンカーに対し下流に付加した(
図2A)。同様に、テルモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ルマジンシンターゼ(Uniprot:Q9X2E5)のアミノ酸配列を得、N末端およびC末端のGGS
4xリンカーを隣接させた。AgeI制限部位およびNheI制限部位をこの構築物のN末端に付加し、AflII部位およびXbaI部位をC末端に付加した後、Strep Tag IIを付加した(
図2B)。両方の構築物を、ヒト発現のためにコドン最適化し、合成し、pHLsec発現ベクターにクローニングした。エプラツズマブFabの重鎖(エプラツズマブHC)またはデニンツズマブFabの重鎖(デニンツズマブHC)を、フェリチン(
図2A)構築物およびルマジンシンターゼ(
図2B)構築物のN末端に上記の制限部位を使用してクローニングした。さらに、NheI制限部位およびKpnI制限部位を使用して、eGFPおよびiLOVをフェリチンのC末端にクローニングした。
【0174】
ナノ粒子の発現および精製
Fab HCナノ粒子構築物、Fab LCおよび非コンジュゲートナノ粒子(Fabは例としてデニンツズマブまたはエプラツズマブであり、ナノ粒子はフェリチン(
図2A)またはルマジンシンターゼ(
図2B)である)を、一時的にHEK293F(Thermo Fisher Scientific)細胞に1:1:1の比率で同時トランスフェクトした。細胞を200 mLの培養液に0.8 x 10
6細胞mL
-1で分割した。50μgのDNAをろ過し、トランスフェクション試薬FectoPRO(Polyplus Transfections)と1:1の比率で混合し、室温で10分間インキュベートした。次に、DNA:FectoPRO溶液を細胞に直接添加し、細胞をMultitron Proシェーカー(Infors HT)中37℃、180rpm、8%CO
2で6~7日間インキュベートした。
【0175】
6,371xgで20分間の遠心分離により細胞を採取し、上清を保持し、0.22μmのSteritopフィルター(EMD Millipore)を使用してろ過した。上清をStrepTrapアフィニティカラム(GE Healthcare)に4mL/分で通過させた。20mM Tris pH 9.0、150mM NaCl、1mM EDTA、および10mMデスチオビオチンで溶出する前に、カラムを20mM Tris pH 9.0、150 mM NaCl、1mM EDTA緩衝液で洗浄した。溶出したナノ粒子を含む画分をプールし、濃縮し、20mM Tris pH 9.0、150mM NaCl緩衝液中0.5mL/分でSuperose 6 Increaseサイズ排除カラム(GE Healthcare)で分離して、サイズの均一性を達成した。フェリチン(
図3A)ナノ粒子およびルマジンシンターゼ(
図3B)ナノ粒子を発現する抗体Fabの純度を示すデータを、溶出プロファイル(上)およびウェスタンブロット(下)によって示す。
【0176】
同じプロトコルを使用して、フェリチン-GFP/iLOV粒子を生産したが、例外として、HEK293F細胞にフェリチン-GFP/iLOV構築物のみをトランスフェクトした。
【0177】
例2:フェリチンナノ粒子およびルマジンシンターゼナノ粒子を発現する抗体Fabのネガティブ染色電子顕微鏡法
本発明のフェリチン(
図4A)ナノ粒子およびルマジンシンターゼ(
図4B)ナノ粒子を発現する抗体Fabの電子顕微鏡写真の作成について説明する。精製されたナノ粒子を、2%ギ酸ウラニルで染色した。20~50枚の画像からなるデータセットを、200kVで動作する電界放出FEI Tecnai F20電子顕微鏡と30e-Å
-2の電子線照射により手動で収集した。Orius電荷結合素子(CCD)カメラ(Gatan Inc.)を使用して画像を34,483×の較正倍率で取得し、その結果、標本でのピクセルサイズは2.61Åになり、約0.75~2μmのデフォーカス範囲が使用された。EMAN2を使用して、合計約1,000枚の粒子画像を手動で選択した。粒子画像の2D分類は、50クラスが許可されて実行された。
【0178】
例3:フェリチンナノ粒子およびルマジンシンターゼナノ粒子を発現する抗体Fabの結合親和性
エプラツズマブFab(
図5A)、エプラツズマブ-フェリチン(
図5B)およびエプラツズマブ-ルマジンシンターゼ(
図5C)のCD22への結合親和性を、Octet RED96 BLIシステム(Pall ForteBio)を使用したバイオレイヤー干渉法(BLI)により測定した。Ni-NTAバイオセンサーを1xカイネティクスバッファー(1X PBS、pH 7.4、0.002%Tween、0.01%BSA)で水和し、25ng/μLのCD22(Uniprot:P20273)を1,000rpmで300秒間ロードした。次に、バイオセンサーを、1xカイネティクスバッファーを含むウェルに60秒間ベースラインまで移入した後、Fab/ナノ粒子の連続希釈液を含むウェルに移した。その後、180秒会合段階の後に、1xカイネティクス中における180秒解離段階が続いた。分析は、Octetソフトウェアを用いて1:1の適合モデルで実行された。
【0179】
例4:Fabナノ粒子を発現する抗体の受容体介在エンドサイトーシス
抗体-フェリチン(
図6Aおよび6B)またはフェリチン単独(
図6C)のナノ粒子(0.5mg/ml~1mg/mL)を、1時間Alexa Fluor-647(4mg/mL)(Thermo Fisher Scientific)により10:1v/vの比率で標識した。次に、ナノ粒子を2Lの1x PBSで8時間透析し、透析緩衝液を3回交換した。5μg/mLの透析標識ナノ粒子を使用して、5分間、10分間または30分間、ヒトBjab細胞(1x10
6細胞/mL)を処理した。所望のインターナリゼーション時間の後、細胞を3回洗浄し、Lab-Tek IIチャンバー(Nalge Nunc International)に分注した。63x油浸対物レンズとEM-CCDカメラ(Hamamatsu Photonics)を装備したWaveFX-XI回転ディスク共焦点顕微鏡(Quorum Technologies)を使用して画像を捉えた。細胞の中心面の画像を取得し、Volocityソフトウェア(Improvision)を使用して画像を処理および解析した。
【0180】
例5。蛍光タンパク質の内部コンジュゲーションにより、ナノ粒子を蛍光性にすることができる
クローニング、発現、精製およびEMは上記と同様である。さらに、NheI制限部位およびKpnI制限部位を使用して、eGFPおよびiLOVをフェリチンのC末端にクローニングした。フェリチン-GFP/iLOV粒子の生成に関しては、HEK293F細胞にフェリチン-GFP/iLOV構築物のみをトランスフェクトしたことを除き、プロトコルは上記と同様である。染色は、例2で上述した要領で行われた。フェリチン-GFP/iLOVナノ粒子の蛍光を、365nmの波長でトランスイルミネータにより測定した(
図7)。
【0181】
例6:CSP-NPNA5.5-リンカー-1210融合タンパク質の発現および精製
融合タンパク質を以下の要領で構築および精製した。まず初めに、5.5x CSP NPNAリピートと、それに続く8、10、または12残基のフレキシブルGGSリンカーを、pcDNA3.4 TOPO発現ベクターにおける1210-HC-Fab配列のN末端にクローニングした。CSP-NPNA5.5-8x-1210 Fab(
図10A)、CSP-NPNA5.5-10x-1210 Fab(
図10B)およびCSP-NPNA5.5-12x-1210 Fab(
図10C)を、FectoPRO(Polyplus)トランスフェクション試薬を使用し、pcDNA3.4 TOPO発現ベクターでの1210-LC遺伝子(
図10D)による同時トランスフェクションによりHEK293F細胞において一時的に発現させることにより製造した。精製は、KappaSelectアフィニティクロマトグラフィー(GE Healthcare)により行われた。Fabを、サイズ排除クロマトグラフィーによってさらに精製した(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare、
図11および
図12参照)。
【0182】
例7:融合タンパク質はCSPに結合しないが、野生型抗体によって認識および結合される
CSPへの結合の測定を、次の要領で実施した。CSP-NPNA5.5-リンカー-1210 FabがCSPを認識できるかどうか、またはCSP結合部位がNPNA5.5によって閉塞されているかどうかを判断するために、バイオレイヤー干渉法(Octet RED96、ForteBio)実験を実施した(
図13)。組換えCSPをカイネティクスバッファー(PBS、pH 7.4、0.01%(w/v)BSA、0.002%Tween-20)で10μg/mLに希釈し、Ni-NTA(NTA)バイオセンサー(ForteBio)に固定した。カイネティクスバッファーにリガンドをロードして安定したベースラインを確立した後、バイオセンサーを、1210 Fab、CSP-NPNA5.5-8x-1210 Fab、CSP-NPNA5.5-10x-1210 Fab、およびCSP-NPNA5.5-12x-1210 Fabを含むウェルに浸漬した。その後、解離速度をモニターするために、カイネティクスバッファーにチップを浸漬した。
【0183】
融合タンパク質に対する野生型抗体の結合親和性の測定を、等温滴定熱量測定法(ITC)を使用して以下の要領で実施した。熱量測定滴定実験は、Auto-iTC200 MicroCalorimeter(MicroCal)を使用して25℃で行った。タンパク質を、20mM Tris、150mM NaCl pH 8.0に対して4℃で一晩透析した。熱量測定セル内のCSP-NPNA5.5-8x-1210 Fab、CSP-NPNA5.5-10x-1210 FabおよびCSP-NPNA5.5-12x-1210 Fab(10μM)を、2.5μlの15回の連続注入で1210 Fab(92μM)により滴定した。Origin 7.0の1:1結合モデルに従って実験データを分析し、
図14~
図16に示した。
【0184】
例8:サイズ排除クロマトグラフィー多角度光散乱(SEC-MALS)
抗体-融合タンパク質相互作用の絶対質量の測定を、以下の要領で実施した。ITCから回収された1210 Fab/CSP-NPNA5.5-リンカー-1210 Fab共複合体を、次の較正済検出システム:(i)MiniDawn Treos MALS検出器(Wyatt);(ii)準弾性光散乱(QELS)検出器(Wyatt);および(iii)Optilab T-reX屈折率(RI)検出器(Wyatt)を備えたAKTA Pureクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)にインラインで結合されたSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)にロードした。データ処理を、ASTRAソフトウェア(Wyatt)を使用して実行し、
図18Aに示す。
【0185】
例9。抗体発現Fabナノ粒子は、抗原と共提示されるとB細胞の活性化を促進する
BG505 Env SOSIP三量体を、AgeI制限部位およびXbaI制限部位を使用してフェリチンのN末端にクローニングした。eOD-GT6のアミノ酸配列を得、ルマジンシンターゼのC末端に付加し、GGS
4xリンカーとNheI制限部位により分離させた。Strep Tag IIを構築物のC末端に付加して、アフィニティ精製を促進した。構築物全体を哺乳類発現用にコドン最適化し、合成し、制限酵素AgeIおよびXhoIを使用してpHLsec発現ベクターにクローニングした(
図19)。Fab HCナノ粒子、Fab LCおよび抗原ナノ粒子(Fabはデニンツズマブであり、抗原はBG505 SOSIPまたはeODGT6であり、ナノ粒子はフェリチンまたはルマジンシンターゼのいずれかである)を、上記前例で説明した要領で、一時的にHEK293F(Thermo Fisher Scientific)に同時トランスフェクトし、上記と同じプロトコルを使用して精製したが、ただしBG505含有ナノ粒子も、500mM塩化ナトリウム洗浄と1 Mα-メチルマンノシド溶出を使用してスノードロップ(Galanthus Nivalis)レクチン(GNL)アガロース親和性によって精製した。ネガティブ染色電子顕微鏡法は、前の例での説明と同様であった。バイオレイヤー干渉法は、前の例での説明と同様であり、CD19mVenusおよびVRC01 Fabを、Ni-NTAバイオセンサーおよび抗ヒトFabバイオセンサーにコーティングされたリガンドとして使用して、デニンツズマブナノ粒子およびBG505/eODGT6-ナノ粒子への結合をそれぞれ検出した。カルシウムフラックスアッセイ(
図23)については、Bjab細胞(1x10
6細胞)を、HBSS中で1μMのFluo-4染料(Life Technologies)と30分間インキュベートした。細胞を5mLの1X PBSで2回洗浄し、氷上で500μlのRPMIに再懸濁した。取得前に、細胞を37℃浴中で5分間温め、BD LSR Fortess Cell AnalyzerのFITCチャネルで30秒間高値で取得し、ベースラインを確立した。次に、示された量のナノ粒子を細胞に加えて素早く混合し、その後データを5~10分間、またはシグナルがベースラインに戻るまで取得した。FlowJoでデータを分析して平均強度を確立し、それを経時的にプロットした。
【0186】
例10:単鎖Fcナノ粒子の設計
単鎖Fcナノ粒子を、次の配列を使用して設計した。配列中、太字はFcドメインを示し、通常のフォントはリンカーを示し、下線はフェリチンを示す:
【化6】
【0187】
プロテインAカラムに結合する能力によって示されるように、抗体のFcドメインは正しく折りたたまれている。
図24に示すように、低pHまたは3 M MgCl2により溶出することができる。サイズ排除クロマトグラフィーでの単分散ピークが示すように、単鎖Fcナノ粒子は正しく組み立てられている。
【0188】
例4:抗同型親和性成熟により、反復エピトープに対するヒトB細胞応答は改善される
概要
親和性成熟により、病原体の侵入から保護するために、抗原結合特性が改善された体細胞変異抗体バリアントを発現するB細胞が選択される。本発明者らは、マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲タンパク質(PfCSP)に対する防御抗体を発現するヒトB細胞のクローン選択と親和性成熟の根底にある分子メカニズムを究明した。PfCSPの反復性により、2つのPfCSPリピート結合モノクローナル抗体間の直接的な同型相互作用が促進され、それによって抗原親和性とB細胞活性化が改善されることを分子詳細で示す。これらのデータは、ヒトにおいて寄生虫曝露を繰り返した後、同型抗体の相互作用を伝達する体細胞変異の強力な選択についての機構的な説明を提供する。本発明者らの発見は、PfCSPおよびおそらくは他の反復抗原に対する抗体応答を改善するための抗原介在親和性成熟の異なる方式を示している。
【0189】
材料および方法
ジェノタイピング
この研究は、テュービンゲン(Tubingen)大学の医学部および大学クリニックの倫理委員会によって承認され、医薬品の臨床試験の実施の基準およびヘルシンキ宣言の原則を厳守した。試料を入手した臨床試験は、https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02115516およびEudraCTデータベースの番号2013-003900-38の下で登録され、FDA IND 15862の下、Paul-Ehrlich-Institute(ポール・エールリッヒ研究所)の承認を受けて実施された(8、9)。ゲノムDNAを全血から抽出した。IGHV3遺伝子ファミリーセグメントを、バーコードプライマーを使用して増幅させた。アンプリコンをプールし、TruSeq PCRフリーライブラリー調製キット(Illumina)を使用して配列決定用に調製した。300~300 bpのペアエンドプロトコルを使用して、MiSeqシーケンサーで配列決定を実行した。配列決定リードを、PandaSeq(24)を使用して組み立て、バーコード識別によりドナーに割り当てた。
【0190】
部位特異的変異導入
抗体コード化プラスミドでの部位特異的変異導入を、Q5部位特異的変異導入キット(Qiagen)を使用して実施した。
【0191】
抗体およびFabの製造
IgG産生については、IGH可変領域およびIGK可変領域を、以前に説明したように、それぞれヒトIGK定常領域およびIGG1定常領域の上流の発現ベクターにクローニングした(25)。組換えモノクローナル抗体をHEK293F細胞(ThermoFisher Scientific)で発現させ、プロテインGセファロース(GE healthcare)精製抗体の抗体濃度を前述のようにELISAで測定した(9、10)。FabをIgGのパパイン消化により生成し、プロテインAクロマトグラフィー、続いて陽イオン交換クロマトグラフィー(MonoS、GE Healthcare)およびサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare)で精製した。ITC研究では、IGH可変領域およびIGK可変領域を、それぞれヒトIGK定常領域およびCH1定常領域のすぐ上流にあるpcDNA3.4 TOPO発現ベクターにクローニングした。Fabを、HEK293F細胞(ThermoFisher Scientific)で一時的に発現させ、KappaSelectアフィニティクロマトグラフィー(GE Healthcare)およびサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare)で精製した。
【0192】
抗原製造
ELISAを、以前に記載されているように大腸菌(E.coli)で発現されたN末端が切断された形でNANP5(Alpha Diagnostic International)、NANP3(PSL GmbH、Heidelberg)またはPfCSPに対して実施した(10、26)。BLI、SEC-MALS、および単一粒子ネガティブ染色EMについては、HEK293F細胞での一時的発現のために、完全長PfCSP(NF54株)をpcDNA3.4-TOPOにクローニングした。PfCSPを、HisTrap Ni/NTA(GE Healthcare)およびサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare)で精製した。
【0193】
表面プラズモン共鳴
表面プラズモン共鳴測定を、シリーズSセンサーチップCM5(GE Healthcare)にドッキングされたBIACORE T200機器(GE Healthcare)で実行した。pH 7.4の150mM NaClを含む10ミリモルのHEPESを、記載されているように(9)ランニングバッファーとして使用した。アミンカップリングベースのヒト抗体捕捉キットを使用して、抗ヒトIgG抗体をチップに固定した。等しい濃度のサンプル抗体とアイソタイプ対照が、それぞれサンプルフローセルとリファレンスフローセルで捕捉された。フローセルを安定させるために、ランニングバッファーを10μL/分の速度で20分間注入した。ランニングバッファー中の0.015μM、0.09μM、0.55μM、3.3μM、および20μMのNANP3を30μL/分の速度で注入した。フローセルを3 M MgCl2で再生させた。データを、BIACORE T200ソフトウェアV2.0を使用した定常状態速度論解析により適合させた。
【0194】
結晶化と構造決定
精製1210 FabおよびキメラH.2140/K.1210 Fabを、12mg/mLに濃縮し、結晶化試験前に1:5モル比でNANP5(10mg/mL)およびNANP3(10mg/mL)によりそれぞれ10mg/mLに希釈した。精製1450 FabとNANP5を3:1のモル比で混合し、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200 Increase 10/300 GL、GE Healthcare)により過剰の1450 Fabを除いて精製した。次いで、精製1450-NANP5を、結晶化試験の前に6mg/mLに濃縮した。1210-NANP5共結晶は20%(w/v)PEG 3350および0.2 Mクエン酸ナトリウム中で成長し、15%(w/v)エチレングリコールで凍結保護された。NANP3と複合体を形成したキメラH.2140/K.1210 Fabの共結晶は、20%(w/v)PEG 4000、0.6 M塩化ナトリウム、および0.1 M MES pH 6.5中で成長し、15%(w/v)グリセロールで凍結保護された。1450-NANP5共結晶は、22.5%(w/v)PEG 3350および0.2 Mクエン酸水素二アンモニウム中で成長し、15%(w/v)エチレングリコールで凍結保護された。データを、Canadian Light Source(CLS)の08ID-1ビームラインまたはAdvanced Photon Source(APS)の23-IDビームラインで収集し、XDSを使用して処理およびスケーリングした(27)。Phaserを使用した分子置換によって、構造を決定した(28)。phenix.refine(29)を使用して構造の精密化を行い、Coot(30)を使用して精密化の反復を行った。ソフトウェアはSBGridを介してアクセスされた(31)。
【0195】
等温滴定熱量測定
熱量測定滴定実験を、Auto-iTC200機器(Malvern)を使用して25℃で行った。タンパク質を、20mM Tris pH 8.0および150mM塩化ナトリウムに対して4℃で一晩透析した。NANP5ペプチドおよびNANP3ペプチドを透析緩衝液で2~3μMに希釈し、熱量測定セルに加え、2.5μlの15回の連続注入で1210、1210_GL、1210 H.D100Ymut_K.N92Ymut(1210_YY)Fab、および1210_H.K56_Nrev_K.N93_Srev(1210_NS)Fab(100μM)により滴定した。実験を少なくとも3回実施し、平均値と平均値の標準誤差を記録した(
図30)。Origin 7.0を使用して、1:1結合モデルに従って実験データを分析した。Prismでの片側マン・ホイットニー検定を使用して、統計解析を実行した。
【0196】
バイオレイヤー干渉結合試験
BLI(Octet RED96、ForteBio)実験を実施して、完全長PfCSPに対する1210および1210_YY IgGの結合力を測定した。完全長PfCSPをカイネティクスバッファー(PBS、pH 7.4、0.01%(w/v)BSA、および0.002%Tween20)で10μg/mLに希釈し、Ni/NTA(NTA)バイオセンサー(ForteBio)に固定した。カイネティクスバッファーにリガンドをロードして安定したベースラインを確立した後、IgGの2倍希釈系列を含むウェルにバイオセンサーを浸漬した。その後、解離速度をモニターするために、カイネティクスバッファーにチップを浸漬した。ForteBioのデータ分析ソフトウェア9.0を使用して速度論データを分析し、曲線を1:1結合モデルに適合させた。
【0197】
サイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱(SEC/MALS)
NANP5ペプチドと3倍モル過剰の1210 Fabとで複合体を形成させ、次の較正済検出システム:(i)MiniDawn Treos MALS検出器(Wyatt);(ii)準弾性光散乱(QELS)検出器(Wyatt);および(iii)Optilab T-reX屈折率(RI)検出器(Wyatt)を備えたAKTA Pureクロマトグラフィーシステム(GE Healthcare)にインラインで結合されたSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)にロードした。330マイクログラムの完全長PfCSPを、上記検出システムを備えたAgilent Technologies 1260 Infinity II HPLCとインラインで結合されたSuperdex 200 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)にロードした。完全長PfCSP(5μM)と20倍モル過剰の1210 Fab(100μM)とで複合体を形成させ、100μLまたは400μLを、上記の検出システムを備えたAgilent Technologies 1260 Infinity II HPLCとインラインで結合されたSuperose 6 Increase 10/300 GL(GE Healthcare)にロードした。ASTRAソフトウェア(Wyatt)を使用して、データ処理を実行した。
【0198】
ネガティブ染色透過電子顕微鏡
400メッシュのCuグリッドをコロイドン(colloidon)でコーティングし、炭素の薄い連続層をグリッド上に蒸着させた。カーボングリッドを、標準プロトコルに従ってグロー放電させた。完全長PfCSPと複合体を形成した1210 Fabの3μLの液滴を、グロー放電カーボングリッドに塗布した。20秒後、グリッドをブロットし、3μLの1%(w/v)ギ酸ウラニル溶液を、中間でブロットして、5秒間と最終18秒間の2ロットについて3回加えた。200 kVで稼働するFEI Tecnai 20でデータを収集した。デフォーカス値が1~3μmである120枚の画像が収集された。最初に、Relion 2.0(32)で合計1080枚の粒子画像を手動で選択し、10のクラスを許可して粒子画像の2D分類を実行した。それに続いて、947枚の粒子画像を含む最高の6つの2Dクラスを使用して、120枚の顕微鏡写真から13,146枚の粒子画像を自動選択し、50クラスを許可して2D分類を実行した。
【0199】
TKO-EST細胞のレトロウイルス形質導入
内因性BCR発現を欠いている、トリプルRag2、λ5、およびSLP-65 TKO-EST欠損マウスのプレB細胞を、レトロウイルス形質導入によりIg重鎖および軽鎖の遺伝子で再構成した(33)。ウイルス粒子の生成のために、完全なIGHMおよびIGK可変領域をコード化する構築物を、pMIZCCおよびpMIZYNベクターバックボーンにクローニングした(34)。1ウェルあたり1.8 x 105のPhoenix-Ecoウイルスパッケージング細胞を、完全イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、5%FCS、2mMグルタミン、0.5mLβ-メルカプトエタノール、およびペニシリン/ストレプトマイシン含有)中の6ウェル培養プレートに播種した。24時間後、3μlのGeneJuice試薬を使用して100μlの純IMDM中、0.5μgの重鎖および0.5μgの軽鎖プラスミドを細胞にトランスフェクトし、37℃および8%CO2で48時間インキュベートした。上清を採取し、0.45μmフィルターを使用してウイルス粒子を精製した。1μl/mLのポリブレンをウイルス粒子懸濁液に加えた。並行して、2 x 105TKO-EST細胞を1.5 mLチューブに移し入れ、遠心分離した(366xg、4℃、5分)。上清を捨て、細胞ペレットを800μlのウイルス粒子懸濁液に再懸濁した。TKO-EST細胞に対し、366xgおよび37℃でスピン形質導入を行った。3時間後、培地を、IL-7を補充した新鮮な完全なIMDMと交換し、細胞を6ウェルプレートに播種した。
【0200】
Ca2+フラックス測定
Ca2+fluxを(33)に記載されているように測定した。ウイルス形質導入後、1×106TKO-EST細胞にカルシウム感受性染料Indo-1 AM(Molecular Probes)を37℃で45分間ロードした。Indo-1染色溶液を、25μlのIndo-1ストック溶液(25μlのDMSOで50μgのIndo-1を希釈して調製)と25μlのプルロン酸F-127および113μlのFCSを混合することにより調製し、インキュベートした。(5分、暗所、RT)。Indoロード細胞を5mLの1%FCS IMDMで洗浄し、500μlの1%FCS IMDMに再懸濁し、FACSチューブに移した。各試料を、測定前にホットプレート上37℃で10分間個別に予熱した。Ca 2+フラックスのベースラインをLSRサイトメータで30秒間記録した後、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT、最終濃度:2μM)を含む抗原溶液5μlを添加し、抗原に応答したCa 2+フラックスを6分間記録した。異なる細胞株における表面Ig発現は、抗IgMおよび抗IgKの蛍光標識抗体の結合によりFACSで測定したとき同低度であった。4-OHTおよびα-Igκ抗体(1μg/mL)で刺激すると、すべての細胞株の同等の機能が確認された。
【0201】
Pf横断アッセイ
Pf横断アッセイを、記載されているように(9、10)96ウェルプレート形式で実行した。簡単に述べると、雌のアノフェレス・コルッツィ(Anopheles coluzzii)の蚊の唾液腺から得られた75,000 Pfのスポロゾイトを、異なる濃度のモノクローナル抗体と30分間プレインキュベートした後、0.5mg/mLデキストラン/ローダミン(Molecular Probes)の存在下でHC-04ヒト肝細胞とインキュベートした。未処理のスポロゾイトとデキストラン/ローダミンのみをそれぞれ陽性対照として使用し、実験のバックグラウンドシグナルを決定した。1%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定した後、デキストラン陽性(すなわち、横断した細胞)のパーセンテージをLSR IIフローサイトメータを使用して測定した。バックグラウンドシグナルを、すべての測定値から差し引いた。横断阻害を、未処理のスポロゾイトで観察された横断速度に基づいて測定した。各抗体についてのデータを、少なくとも3つの独立した実験からプールし、3パラメトリックHill関数を使用して滴定曲線を適合させた。
【0202】
マウスへの免疫付与と感染
すべての動物実験は、ドイツのベルリンにあるLAGeSo(H0027/12)によって承認された。免疫付与と感染を、以前に説明されているように実行した(9、10)。簡単に述べると、8週齢のC57BL/6雌マウス(1群あたり5匹)に対し、100μlのPBS中の100μgまたは30μgのモノクローナルヒト抗PfCSP抗体またはアイソタイプ対照(mGO53(35))による腹腔内での受動免疫を行った。受動免疫の24時間後、マウスに対し、5,000のPfCSPトランスジェニックネズミマラリア原虫(プラスモジウム・ベルゲイ(Plasmodium berghei))(Pb‐PfCSP)(10)スポロゾイトを尾根に皮下注射して感染させた。感染後3日目から12日目まで、ギムザ染色された血液塗抹標本を毎日分析した。寄生虫陽性であると公表するために、少なくとも100個の顕微鏡視野をカウントした。
【0203】
結果および考察
ヒトマラリア原虫である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum、Pf)のスポロゾイトは、免疫優性中央NANPリピート領域を伴う表面タンパク質のスポロゾイト周囲タンパク質(PfCSP)を発現する(1~3)。動物モデルがPf感染から防御される場合、該リピートに対する抗体が介在することがあり得る(4~6)。しかしながら、抗NANP抗体介在による防御は、ワクチン接種では容易に達成されない。したがって、防御的PfCSP NANP抗体の誘導は、前赤血球ワクチン開発の主要な目標である(7)。本発明者らは、最近、クロロキンによる予防下における生きたPfスポロゾイトへの繰り返し曝露後のPfナイーブボランティアにおける抗NANP PfCSPメモリーB細胞応答が、8-アミノ酸(aa)長の免疫グロブリン(Ig)κ相補性決定領域(CDR)3(KCDR3:8)を有する強力なPf抑制性のIGHV3-33およびIGKV1-5コード化生殖細胞系抗体のクローン選択および拡大によって主に成熟することを示した(8、9)。
【0204】
ここでは本発明者らは、NANP五量体ペプチド(NANP
5)に対して10
-6~10
-9Mの親和性が報告されている5つの代表的な生殖細胞系または低変異抗体を分析した(
図25Aおよび表1)(9)。元のIgVκ1-5がVκ2-28で置き換えられたとき、または天然Ig重鎖(IgH)が9アミノ酸長KCDR3を伴うVκ1-5軽鎖と対合したとき、抗原結合は抑止されることから(
図25B)、抗原認識におけるこれらの特異的なIg遺伝子の特徴の重要性が実証された。
【表1】
【0205】
すべてのVH3-33/Vk1-5/KCDR3:8抗体は、IGHV3-33*01対立遺伝子によってコード化された(9)。IGHV3-33
*01は、セリンやアルギニンではなくトリプトファンを厳密にコード化するIgH CDR(HCDR)2の52位が、他の点で非常に類似した3つの遺伝子セグメント(IGHV3-30、IGHV3-30-3、およびIGHV3-30-5)とは異なる(表2および表3)。抗体2140におけるH.W52_A変異体、およびIGHV3-30
*02およびIGHV3-30-5
*02対立遺伝子を模倣する二重変異体(H.W52_R、H.V50_F)を含む、選択された抗体のH.W52_SおよびH.W52_R変異体はすべて、インビトロ寄生虫阻害活性の低下に関連するPfCSP反復反応性の低下を示した(
図25、CおよびD)。
【表2】
【表3】
【0206】
NANP反応性VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8 B細胞の大部分は、HCDR1(H.S31)およびHCDR2(H.V50、H.N56)、ならびにKCDR3(K.S93)での置換変異を強力に選択したクローン拡大および体細胞超変異(SHM)多様化細胞クラスターに属しており、これはおそらく親和性成熟の結果であると考えられた(
図25、EおよびF)(9)。生殖細胞系抗体2163および低変異抗体1210について示されているように、H.V50位およびより少ない程度ではあるがH.S31位での欠損突然変異(mut)または復帰(rev)の導入により、最小NANP3ペプチド(10、11)への結合におけるある役割が明らかになった(
図25、GおよびH、および表4)。対照的に、H.N56位およびK.S93位での交換は、単独(1210_H.K56_N
rev、1210_K.N93_S
rev、2163_H.N56_K
mut)でも、組み合わせ(1210_NS、2163_KN)の場合でも、有意な効果を示さなかった(
図25、GおよびH、および表4)。したがって、リピートへの親和性成熟により、VH3-33/VK1-5/KCDR3:8抗NANP抗体の4つの特徴的な置換変異のうち2つだけの強い選択が説明された。
【表4】
【0207】
次に、本発明者らは、NANP5との1210抗原結合フラグメント(Fab)の共結晶構造を決定した(
図26、
図27A、および表5~7)。NANPコアエピトープは、IgH 2140/Igκ1210キメラ抗体に結合されたNANPに類似した、以前の観察結果と一致する、タイプIβターンと伸長立体配座(
図26、AおよびC、
図27B)を含んでいた(
図27Cおよび表5および8)(10-14)。KCDR3における主鎖原子は、該リピートとのH結合に介在するように最適な形で配置されており、8アミノ酸長のKCDR3の強力な選択の一因であると考えられる(
図26、BおよびC、表3、6、および11)。VH3-33生殖細胞系残基は、抗原接触の大部分、特にH.V50およびH.W52(IGHV3-33対立遺伝子によってユニーク形式でコード化される残基)、ならびにHCDR2のH.Y52AおよびH.Y58に介在していた(表6および
図28)(15)。H.V50およびH.S31での親和性成熟は、該リピートとのファンデルワールス相互作用の強化によって説明され得る(
図26C)。
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表7】
【表8】
【表9-1】
【表9-2】
【表10】
【表11】
【0208】
特に、本発明者らの結晶構造はまた、2つの1210 Fab(1210 Fab-AおよびFab-Bと呼ばれる)が133°の角度での頭-頭立体配置で1つのNANP5ペプチドに結合することも明らかにした(
図26Dおよび
図29)。この独特な結合モードにより、2つのFab間で263Å2の埋没表面積(BSA)が得られ、Fabとリピート間でさらに約120Å2のBSAが得られる6つの同型抗体-抗体H結合が生じた(
図26、EおよびF、および表6、7、および11)。2つの高度に選択された変異、H.N56_KおよびK.S93_N(
図25、EおよびF)は、反対側のFabでH.Y52AおよびH.S99とH結合を形成し、それによって頭-頭立体配置を安定化した(
図26、GおよびH)。8アミノ酸長のKCDR3が反対側の1210分子のHCDR3と最適な形で接触していることから、KCDR3の長さ制限についての別の説明が提供された。
【0209】
同型相互作用を調べるため、次に本発明者らは、1210、1210_NS(同型結合に関与する選択された変異を欠く)、1210 H.D100_Ymut/K.N92_Ymutmutant(1210_YY、立体的な衝突により頭-頭結合を破壊するように設計された)、および1210生殖細胞系列(1210_GL)についてNANP
5およびNANP
3へのFab親和性を測定した(
図26Iおよび
図30)。1210と比較して、1210_YYおよび1210_NSは、NANP3に対してではなくNANP5に対する親和性が有意に弱いが、1210_GLの場合両方のペプチドの結合が著しく悪化していた(
図26Iおよび
図30)(16)。これらのデータは、1210のみが高親和性の同型の頭-頭結合立体配置で該リピートを効率的に認識したことを示唆している。38のNANPリピートを有する完全長PfCSPの分析により、この仮説が確認された。約12個の1210 FabがPfCSPに結合し、1210 Fab-NANP
5結晶構造に類似した頭-頭結合立体配置でNANPリピートを認識した(
図26、JおよびK、および
図29D)(11、17)。さらに、同型抗体相互作用に関与する能力が制限されている1210_YYは、1210よりも完全長PfCSPへの結合親和性が低いことを示した(
図31)。したがって、親和性成熟により、同型の抗体相互作用を改善する変異が選択され、それにより間接的にPfCSPのNANP結合が増加する。
【0210】
細胞レベルでのSHMの選択をよりよく理解するために、本発明者らは、1210またはバリアントB細胞受容体(BCR)を発現するトランスジェニックB細胞株のNANP
5に応答したB細胞活性化の程度を測定した(
図32、A~D)。BCRシグナル伝達は、1210と比較して1210_GLを発現する細胞では遅れていた。この効果は、1210_YY変異細胞でさらに顕著であった。予想どおり、特に低い抗原濃度では、高いリピート親和性を有する1210_V50Imutは1210よりも強いシグナルを伝達したが、1210_NSは有意差を示さなかった(
図32D)。したがって、直接的なNANP結合と同型抗体相互作用の両方によって、B細胞の活性化が促進される。NANP
3親和性の2log差異(
図25、GおよびH)およびこれらの抗体が同型相互作用に関与する様々な可能性にもかかわらず、すべてがインビトロでPfスポロゾイトを阻害する同様の能力を示した(
図32Eおよび
図33)。同様に、すべての抗体は、おそらく強力な結合力効果により、マウスでの受動免疫後の血液段階の寄生虫の発生から同様のレベルの用量依存的防御を付与した(
図32F)。これらのデータにより、可溶性抗体としての防御効果とは関係無く、親和性成熟による抗同型抗体変異体の強力なインビボ選択の機構的説明が得られる。
【0211】
VH3抗体は、抗PfCSPメモリー応答に多大な影響を及ぼす(9、11、14)。VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8に加えて、本発明者らは、選択時に高度に変異した親和性成熟VH3-23/Vκ1-5NANP反応性メモリーB細胞抗体のクラスターを観察した(
図34、AおよびB)(9)。代表的なVH3-23/Vκ1-5抗体である1450のNANP
5結合モードは1210とは異なるが、これもまた、HCDR3が直接並置され、親和性が成熟したK.N30残基がFab-AとFab-Bの間にH結合を形成している、頭-頭立体配置であるNANP
5を認識した(
図34、CからE、
図35、AおよびB、表5、9、および10)。VH3-23/Vk1-5抗体クラスターの配列解析により、抗体-抗原相互作用、抗体-抗体接触に直接関与する、またはNANPエピトープ認識に最適な1450パラトープ立体配座に有利なアミノ酸交換の濃縮が確認された(
図34B)。
【0212】
マラリア未経験者のPfSPZ-CVac免疫付与後、PfCSP反応性メモリーB細胞の約15%が、VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8またはVH3-23/Vκ1-5の配列特性を示した(
図34F)(18)。さらに、これらの細胞は、非拡大集団と比較して、拡大された抗PfCSPメモリーB細胞プールで強く濃縮されていた(
図34G)。したがって、低変異高親和性VH3-33抗体と他の遺伝子の組み合わせを使用した低親和性抗体の両方で、Pfスポロゾイト曝露を繰り返した後、抗同型の親和性成熟が観察される(9)。この現象はまた、RTS、Sマラリアワクチン接種によって誘発されるB細胞応答でも発生する可能性がある(
図36)(11)。
【0213】
したがって、従来の抗体-抗原親和性成熟に加えて、抗同型親和性成熟により、ヒトにおけるPfCSP反応性B細胞の強力なクローン拡大と競合的選択が促進される。親和性成熟がない場合でも、VH3-33/Vκ1-5/KCDR3:8抗体は中程度以上の強力なNANP結合剤であり、強力なPf阻害剤である。これは、HCDR2のH.W52に大きく依存している。IGHV3-33はIGH遺伝子座の構造多型の領域に位置するため、特にPf流行地域では、ハプロタイプ頻度により、予防接種時の防御的体液性抗PfCSPリピート応答の効率的な誘導が決定される可能性がある(19)。事実、本発明者らの研究での1人のドナーはIGHV3-33陰性であった(
図37)。本発明者らは、反復抗原(マラリアなど)が2つの抗体を近接させて結合を最適化し、同型相互作用により表面免疫グロブリン分子のクラスター化を促進する場合、抗同型親和性成熟はB細胞応答の一般化可能な特性であり得ると提案している(20、21)。
【0214】
参考文献
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15.反復反応性についてのH.Y52AおよびH.Y58の重要性は、抗体1210、2140、および2219のアラニン変異によって確認された(
図29)。
16.すべての抗体は、それぞれ約2および約1の結合化学量論でNANP5およびNANP3を認識し、より短いNANP3ではなくNANP5が2つのFabの結合を可能にすることを実証した。
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【0215】
例5:免疫付与実験
図38は、マラリアワクチン抗原(CSP-NANP5.5-リンカー抗体)が完全長PfCSP抗原を認識できるIgG力価を引き出すことを示す。予想どおり、応答はブースト可能で、3回の投与で増加する。これら2つの例において、マラリアワクチンは2つの異なるナノ粒子に表示され、一方は他方よりも強い免疫応答をもたらす。
図39は、
図38における免疫付与から誘発された抗PfCSP血清の活性/機能を示す。これは、スポロゾイト横断阻害アッセイで測定される。所定の血清希釈度で、ナノ粒子上でのマラリアワクチンの提示方法に応じて、阻害活性は50%~80%の間で変化する。これらの結果は、1)本明細書に記載のマラリアワクチンが抗マラリア免疫応答を誘導すること、および2)得られた免疫血清がスポロゾイトに対する阻害能力を有することを示す。
なお、本発明は以下に挙げる態様を含む。
[態様1]
ナノケージ単量体、および
前記ナノケージ単量体に連結された抗体またはそのフラグメントを含む融合タンパク質であって、
前記抗体またはそのフラグメントは結合対の第1の成分を含み、
複数の前記融合タンパク質が自己集合してナノケージを形成し、複数の前記抗体またはそのフラグメントが前記ナノケージの外面を装飾し、それにより、前記結合対の第1の成分が、前記結合対の第2の成分と相互作用するために露出されているものとする、融合タンパク質。
[態様2]
前記結合対の第1の成分が抗体またはそのフラグメントのFc部分であり、前記結合対の第2の成分がFc受容体である、態様1に記載の融合タンパク質。
[態様3]
前記結合対の第1の成分が抗原結合エピトープであり、前記結合対の第2の成分が抗原である、態様1に記載の融合タンパク質。
[態様4]
前記ナノケージが約3個~約100個のナノケージ単量体、例えば24個または60個の単量体を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様5]
前記ナノケージ単量体が、フェリチン、エンカプスリン、SOR、ルマジンシンターゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、カルボキシソーム、ボールトタンパク質、GroEL、熱ショックタンパク質、E2P、MS2コートタンパク質、それらのフラグメント、およびそれらのバリアントから選択される、態様1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様6]
前記ナノケージ単量体と前記抗体またはそのフラグメントとの間にリンカーをさらに含む、態様1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様7]
前記リンカーが柔軟性であるかまたは剛性であり、約1個~約30個のアミノ酸残基を含む、態様6に記載の融合タンパク質。
[態様8]
前記リンカーが約8個~約16個のアミノ酸残基を含む、態様7に記載の融合タンパク質。
[態様9]
前記リンカーがGGSリピートを含む、態様6~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様10]
前記リンカーが4つのGGSリピートを含む、態様9に記載の融合タンパク質。
[態様11]
前記抗原をさらに含む、態様3~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様12]
前記抗原がリピートドメインを含む、態様3~11のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様13]
前記抗原がマラリア抗原である、態様3~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様14]
前記抗原がマラリアCSPタンパク質のフラグメントである、態様13に記載の融合タンパク質。
[態様15]
前記抗原が前記マラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインのフラグメントである、態様14に記載の融合タンパク質。
[態様16]
前記抗原が5.5 NANPリピートを含む、態様15に記載の融合タンパク質。
[態様17]
前記抗原がNPNANPNANPNANPNANPNANPである、態様16に記載の融合タンパク質。
[態様18]
前記抗体またはそのフラグメントがリピートドメインに特異的である、態様1~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様19]
前記抗体またはそのフラグメントがマラリア抗原に特異的である、態様1~18のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様20]
前記抗体またはそのフラグメントがマラリアCSPタンパク質に特異的である、態様19に記載の融合タンパク質。
[態様21]
前記抗体またはそのフラグメントが、前記マラリアCSPタンパク質のNANPリピートドメインに特異的である、態様20に記載の融合タンパク質。
[態様22]
前記抗体またはそのフラグメントが、次の配列:
[数1]
に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列またはそのフラグメントを含む、態様1~21のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様23]
前記抗体またはそのフラグメントが次の配列:
[数2]
を含む、態様22に記載の融合タンパク質。
[態様24]
前記抗体またはそのフラグメントが配列:
[数3]
からなる、態様23に記載の融合タンパク質。
[態様25]
前記抗体またはそのフラグメントが腫瘍抗原に特異的である、態様1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様26]
前記抗体またはそのフラグメントが自己抗原に特異的である、態様1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様27]
前記抗体またはそのフラグメントが、CD19、CD22、CD79、BCMA、またはCD20に特異的である、態様1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様28]
前記抗体またはそのフラグメントが標的臓器に特異的である、態様1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様29]
前記抗体またはそのフラグメントがFabフラグメントの重鎖および/または軽鎖を含む、態様1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様30]
前記抗体またはそのフラグメントがFcフラグメントを含む、態様1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様31]
前記抗体またはそのフラグメントがscFvを含む、態様1~28のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様32]
Fab軽鎖および/または重鎖をさらに含む、態様31に記載の融合タンパク質。
[態様33]
別個に生成されたFab軽鎖および/またはFab重鎖と会合している、態様31に記載の融合タンパク質。
[態様34]
検出可能な部分をさらに含む、態様1~33のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
[態様35]
前記検出可能な部分が、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビンに基づく蛍光タンパク質である、態様34に記載の融合タンパク質。
[態様36]
態様1~35のいずれか一項に記載の少なくとも1つの融合タンパク質を含むナノケージ。
[態様37]
各ナノケージ単量体が、態様1~32のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、態様36に記載のナノケージ。
[態様38]
前記ナノケージ単量体の約20%~約80%が態様1~26のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、態様36に記載のナノケージ。
[態様39]
前記ナノケージが多価である、態様36~38のいずれか一項に記載のナノケージ。
[態様40]
医薬品、診断薬、および/または造影剤などのカーゴ分子を担持する、態様36~39のいずれか一項に記載のナノケージ。
[態様41]
前記カーゴ分子がタンパク質であり、前記カーゴ分子が前記ナノケージに内包されるように前記融合タンパク質に融合されている、態様40に記載のナノケージ。
[態様42]
前記カーゴ分子が、GFP、EGFP、アメトリンなどの蛍光タンパク質、および/またはiLOVなどのLOVタンパク質などのフラビンに基づく蛍光タンパク質である、態様41に記載のナノケージ。
[態様43]
前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に融合されておらず、前記ナノケージに内包されている、態様42に記載のナノケージ。
[態様44]
前記カーゴ分子が内部に含まれることによりT細胞エピトープを提供するが、場合によってはB細胞エピトープを提供しないこともある、態様36~43のいずれか一項に記載のナノケージ。
[態様45]
前記カーゴ分子が前記融合タンパク質に融合されており、内部に含まれることによりT細胞エピトープを提供するが、場合によってはB細胞エピトープを提供しないこともある、態様36~43のいずれか一項に記載のナノケージ。
[態様46]
前記カーゴ分子が小分子、放射性同位体、または磁性粒子である、態様43に記載のナノケージ。
[態様47]
前記表面に抗原をさらに含む、態様36~46のいずれか一項に記載のナノケージ。
[態様48]
前記抗原が、ナノケージ単量体との融合タンパク質として発現される、態様47に記載のナノケージ。
[態様49]
態様36~48のいずれか一項に記載のナノケージを含むワクチン。
[態様50]
態様1~35のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコード化する核酸分子。
[態様51]
態様50に記載の核酸分子を含むベクター。
[態様52]
態様51に記載のベクターを含み、態様1~35のいずれか一項に記載の融合タンパク質を生産する宿主細胞。
[態様53]
態様36~48のいずれか一項に記載のナノケージまたは態様59に記載のワクチンを投与することを含む、対象に免疫を付与する方法。
[態様54]
態様36~48のいずれか一項に記載のナノケージまたは態様49に記載のワクチンを投与することを含む、疾患または状態を処置および/または予防する方法。
[態様55]
前記疾患または状態が、がん、HIV、マラリア、または自己免疫疾患である、態様54に記載の方法。
[態様56]
診断的イメージング方法であって、態様36~48のいずれか一項に記載のナノケージを対象、組織、または試料に投与すること、および前記対象、組織、または試料をイメージングすることを含み、前記ナノケージが、蛍光タンパク質または磁気イメージング部分などの診断標識を含むものとする、方法。
[態様57]
FACSまたはELISAなどにおける研究ツールとしての、態様1~35のいずれか一項に記載の融合タンパク質または態様36~48のいずれか一項に記載のナノケージの使用。
【配列表フリーテキスト】
【0216】
配列表1 <223>抗原
配列表2 <223>抗体
配列表3 <223>エピトープ
配列表4 <223>Flagタグ
配列表5 <223>抗体
配列表6 <223>ナノ粒子
配列表7~25 <223>抗体
【配列表】