(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】血管運動症状を治療または予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/472 20060101AFI20230419BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
A61K31/472
A61P9/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020533860
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2018046544
(87)【国際公開番号】W WO2019124366
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エム・パルンボ
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-508105(JP,A)
【文献】特開2014-074021(JP,A)
【文献】特表2016-535742(JP,A)
【文献】特許第6943887(JP,B1)
【文献】Journal of Investigative Dermatology,2011年,Vol.131,S2, Abstract012
【文献】British Journal of Pharmacology,2004年,Vol.141,p.737-745
【文献】Am J Physiol Heart Circ Physiol,2009年,Vol.296,H1868-H1877
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/472
A61P 9/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mg以下の1日用量で4-({(4-シクロプロピルイソキノリン-3-イル)[4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}スルホニル)安息香酸またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象者における血管運動症状を治療または予防するための
医薬組成物。
【請求項2】
1日用量が1mg~10mgの範囲である請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
1日用量が5mg~10mgの範囲である請求項1または2に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
1日用量が1mg~5mgの範囲である請求項1または2に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
1日用量が10mgである請求項1~3のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項6】
1日用量が5mgである請求項1~4のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項7】
1日用量が1mgである請求項1、2または4のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項8】
対象者が、ヒト対象者である、請求項1~7のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項9】
ヒト対象者が、閉経期の女性である、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
ヒト対象者が、閉経周辺期の女性である、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
ヒト対象者が、閉経後の女性である、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
ヒト対象者が、癌患者である、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
ヒト対象者が、癌の治療を受けているか、または受けたことがある、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
癌の治療が、性腺切除療法または性腺ホルモン抑制療法である、請求項13に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
ヒト対象者が、外科手術を受けたことがある、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
外科手術が、子宮摘出、卵巣切除または睾丸切除である、請求項15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
血管運動症状が、ホットフラッシュである、請求項1~16のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項18】
血管運動症状が、寝汗である、請求項1~16のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物が、血管運動症状の発症を感知した直後に投与される、請求項1~18のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項20】
医薬組成物が、毎日投与される、請求項1~19のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が、1日1回投与される、請求項1~19のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項22】
医薬組成物が、1日2回投与される、請求項1~19のいずれか1つに記載の
医薬組成物。
【請求項23】
追加の活性剤をさらに含む、請求項
1~22のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、それぞれ、対象者における血管運動症状を治療または予防するための、有効成分として低用量の4-({(4-シクロプロピルイソキノリン-3-イル)[4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}スルホニル)安息香酸またはその薬学的に許容される塩を含む組成物、および該化合物またはその薬学的に許容される塩を低用量で投与することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管運動症状、たとえば、閉経の症状が一般的に報告されている。血管運動症状としては、寝汗、ホットフラッシュ、および潮紅が挙げられる。主要かつ最も一般的な血管運動症状はホットフラッシュである。一般に、ホットフラッシュ(hot flashes)(またはホットフラッシュ(hot flushes)もしくは寝汗)は、熱感の断続的な出現である。ホットフラッシュは、閉経周辺期または閉経後の女性が経験する最も一般的な症状であり、また、たとえば、性ホルモンの産生または活性を阻害する乳癌または前立腺癌治療を受けている患者などの、癌の治療を受けているか、または受けたことがある男性および女性も、ホットフラッシュを一般的に経験する。非特許文献1及び2を参照。研究は、ホットフラッシュが中核体温の上昇後に起こる可能性があることを示唆している。非特許文献3を参照。
【0003】
血管運動症状の出現は、発汗、潮紅、悪寒、不安、および心臓の動悸に関連している可能性もある。たとえば、ホットフラッシュの症状としては、発汗、皮膚の赤らみ、もしくは潮紅の1つ以上、および痒みや寒さの感覚を伴うことが多い、突然のほてり感が挙げられる。ホットフラッシュは、波状の熱および大量の発汗へと向かう、短く、かつ軽度のほてりによって特徴付けられる。典型的なホットフラッシュは、胸におけるほてり感の突然の発症から始まり、その後、首および顔へと上方に広がり、身体全体に広がることもある。人によっては、身体の上部全体にほてりの突然の発症を感じることもある。ホットフラッシュは、めまい、吐き気、頭痛、および動悸も伴うことがある。発汗を伴うホットフラッシュは、夜間にも起こりうる。これらは寝汗と呼ばれ、慢性の不眠症および主観的な睡眠の質の悪さに関連している。非特許文献4を参照。近年の睡眠ポリグラフの研究は、夜間に発生するホットフラッシュが、睡眠不足、疲労、苛立ちなどをもたらす睡眠の断片化の増加と相関することを実証している。したがって、ホットフラッシュは、睡眠および仕事を中断させ、生活の質を妨げうる。
【0004】
血管運動症状の重症度は、人によって異なり、同じ人においても時期によっても異なることがある。たとえば、ホットフラッシュは、暑い天候、ストレス、食事、飲酒、ホルモンの変化、病状、または薬物治療などのいくつかの因子によって引き起こされうる。症状の出現は、数秒から数分持続し、まれには1時間以上続くこともある。血管運動症状は、1年に数回から、1週間に数回、もしくは1時間に1回以上の頻度で起こりうる。
【0005】
ホットフラッシュは、閉経周辺期および閉経後の女性において広く研究されてきた。研究によれば、約60%~80%の女性が、閉経周辺期および閉経後の期間にホットフラッシュを経験することが示されている。この集団の中で、40%~60%が中程度から重症のホットフラッシュを報告し、10%~20%がそれをほぼ耐えられないと訴えている。したがって、多くの女性の生活の質を維持するために、血管運動症状(たとえば、ホットフラッシュ)を効果的に治療または予防する必要がある。
【0006】
血管運動症状を、男性および女性の両方が医学的状態の症状または治療の症状として経験することもある。たとえば、血管運動症状を、多くの癌患者が癌の症状または癌治療の症状として経験する。
【0007】
たとえば、アンドロゲン遮断療法(ADT)を受けている前立腺癌の男性には、ホットフラッシュが起こる可能性がある。これは、ADTを受けている男性のうち、かなりの割合の人にとって重要な生活の質の問題である。そのような男性の約40%~80%がホットフラッシュに苦しんでおり、30%~40%がその出現中に重大な不快感を訴えている。。非特許文献5を参照。
更に、男性にとってはまた、加齢の過程で、煩わしいホットフラッシュを同時に被ることがあり得る。年齢が55歳、65歳及び75歳の1.885人のスウェーデン人の男性の2003研究は、これらの男性の約3分の1がホットフラッシュを被り、そして、これらの男性の半分がその症状を煩わしいと気づくことが示されている。非特許文献6を参照。
【0008】
血管運動症状に対するいくつかの既知の治療がある;しかしながら、現在の治療は完全には有効ではなく、重大な合併症のリスクを高める可能性がある。エストロゲン補充療法は、女性の血管運動症状を効果的に最小限に抑制するか、または予防することができるが、多くの女性はホルモン補充療法の潜在的なリスクを懸念する。このことは特に、乳癌に罹患しているか、または乳癌の家族歴および/または凝固障害の病歴を有する、女性に当てはまる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ガバペンチンおよびクロニジンもまた、血管運動症状の治療に使用することができるが、症状の治療に必ずしも有効ではなく、多くは望ましくない副作用を伴う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】R. E. Williamsら、Frequency and severity of 血管運動症状 among peri- and postmenopausal women in the United States, Climacteric, 11:32-43 (2008);
【文献】Laura J. Hanischら、Increases in core body temperature precede hot flashes in a prostate cancer patient, Psycho-Oncology、18:564-567 (2009)
【文献】Karen Elkind-Hirsch、Cooling off hot flashes: uncoupling of the circadian pattern of core body temperature and hot flash frequency in breast cancer survivors, Menopause: The Journal of The North American Menopause Society, Vol. 11, No. 4, pp. 369-371 (2004)
【文献】Hadine Joffeら、A Gonadotropin-Releasing Hormone Agonist Model Demonstrates That Nocturnal Hot Flashes Interrupt Objective Sleep, Sleep, Vol. 36, No. 12, pp. 1977-1985 (2013)
【文献】Naseem A. Aziz、Evaluation of Core and Surface Body Temperatures, Prevalence, Onset, Duration and Severity of Hot Flashes in Men after Bilateral Orchidectomy for Prostate Cancer, Int. Braz. J. Urol., 34:15-22 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、血管運動症状のための新規な安全かつ有効な治療が必要である。本発明者は、一過性受容器電位メラスタチン8(TRPM8)アンタゴニストである4-({(4-シクロプロピルイソキノリン-3-イル)[4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}スルホニル)安息香酸(以降、「化合物A」とも称する)を低用量で投与することによる、血管運動症状の新しい治療を発見した。
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、TRPM8遮断作用によって体温低下作用を示し、そのことにより、血管運動症状に対する効果を有すると考えていたが、予想外にも、体温低下作用を示さない低用量でヒトにおいて血管運動症状に対する治療または予防効果を有することが見出された。したがって、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩は、血管運動症状に罹患した対象者に、予想外の低用量で投与して、血管運動症状の発現頻度を改善する(すなわち、抑制する)ことができる。
【0011】
一過性受容器電位(TRP)チャネルは、さまざまな物理的(たとえば、温度、浸透圧、機械的)刺激および化学的刺激によって活性化される非選択的陽イオンチャネルである。TRPチャネルスーパーファミリーのサブセットは温度反応性であり、各チャネルは、侵害性冷刺激から侵害性熱刺激に累積的にまたがる不連続な温度範囲で活性化される。TRPM8は、TRPチャネルスーパーファミリーのメラスタチンサブグループに属する。TRPM8は低温およびメントールに感受性があり、したがって冷およびメントール受容体-1(CMR-1)とも称される。McKemyら、Identification of a cold receptor reveals a general role for TRP channels in thermosensation, Nature, Vol. 416, No. 6876, pp. 52-58 (2002)。TRPM8は、低温から冷温(8~28℃)ならびにメントールおよびイシリンなどの化学物質によって刺激されることが知られている。
【0012】
TRPM8は、一次侵害ニューロン(A-δおよびC-繊維)上に位置し、炎症媒介二次メッセンジャーシグナルによっても調節される。Abeら、Ca2±-dependent PKC activation mediates menthol-induced desensitization of transient receptor potential M8, Neuroscience Letters, Vol. 397, No. 1-2, p. 140-144 (2006);Premkumarら、Downregulation of Transient Receptor Potential Melastatin 8 by Protein Kinase C-Mediated Dephosphorylation, The Journal of Neuroscience, Vol. 25, No. 49, p. 11322-11329 (2005)。TRPM8は、三叉神経および後根神経節の感覚ニューロンで高度に発現される。TRPM8はまた、脳、肺、膀胱、消化管、血管、前立腺、および免疫細胞において発現されることが知られている。
【0013】
TRPM8アンタゴニストおよび治療におけるその使用は、以前の特許出願において開示されている(たとえば、米国特許第8,987,445号;米国特許第9,096,527号;国際公開 WO 2014/042238を参照)。これらの開示は、慢性疼痛(たとえば、神経因性疼痛)、泌尿器疾患、胃腸疾患および頭痛の治療などの用途を報告する。しかしながら、これらの開示のいずれも、TRPM8アンタゴニストによる血管運動症状の治療または予防を開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を対象者に投与することを含む、それを必要とする対象者における血管運動症状を治療または予防するための方法に関する。
【0015】
本開示はまた、対象者における血管運動症状を治療または予防するための低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む組成物に関する。
【0016】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、血管運動症状を経験している女性の対象者において、本明細書に記載の化合物Aの反復投与の安全性、忍容性、および薬物動態を評価するための計画された第I相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の試験デザインを示す。
【
図2】
図2は、14日の治療期間の間、最初の投与後の24時間以内での、経時的な血管運動症状(VMS)の平均観察値の変化を示す。
図2において、三角形または四角形の記号の各々は、5mgの化合物Aまたはプラセボのそれぞれの結果を示す。
【
図3】
図3は、プラセボ(
図3A)または5mg(
図3B)投与群における、診察1日目または7日目での、投与後の24時間以内での、経時的な中核温度のベースラインからの変化を示す。
図3の各図において、四角形または白丸の記号の各々は、それぞれ診察1日目または7日目での5mgの化合物Aまたはプラセボの結果を示す。
【
図4】
図4は、20mg(
図4A)または50mg(
図4B)投与群における、診察1日目または7日目での、投与後の24時間以内での、経時的な中核温度のベースラインからの変化を示す。
図4の各図において、四角形または白丸の記号の各々は、それぞれ診察1日目または7日目での結果を示す。
【
図5】
図5は、閉経後の女性における血管運動症状の頻度および重症度に及ぼす、4-({(4-シクロプロピルイソキノリン-3-イル)[4-(トリフルオロメトキシ)ベンジル]アミノ}スルホニル)安息香酸またはその薬学的に許容される塩の効果を評価するための、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の試験デザインを示す。
【
図6】
図6は、5mg投与群における、診察1日目、7日目、10日目、及び14日目での、投与前及び投与後の24時間以内での、経時的な中核温度の変化を示す。
図6の各図において、黒丸の記号はベースライン日(診察日-1日目)での1つの単一曲線に組み合わせた化合物Aの全ての用途群についての結果を示し、また、白丸のひし形、白丸の四角形、白丸の円、および×の記号は、それぞれ、診察1日目、7日目、10日目、及び14日目での、5mgの化合物Aについての結果を示す。
【
図7】
図7は、バーチャル臨床トライアルにおけるファーマコメトリクスの結果、および具体的には、1日目および14日目での化合物Aの5、10、20および50mgの複数回用量におけるシミュレートした薬理学的効果を示す。この
図7において、上方、中間、および、下方のパネルは、24時間以内の経時での、コア体温、コアボディからの熱伝達の効率性と関連する測定値としての皮膚血流速度、および血管運動症状(VMS)の回数のそれぞれの、平均的なシミュレート値の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
説明
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的および説明的なものに過ぎず、請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。また、本開示は、特定の活性剤、製剤、投薬レジメンなどに限定されず、変えうるものであることも理解されるべきである。
【0019】
本開示の特定の態様を、以下に、より詳細に記載する。本願で使用され、本明細書において明確にされる用語および定義は、本開示内の意味を表すことを意図する。
【0020】
本明細書で使用される「低用量」という用語は、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を投与するとき、体温低下作用を示さないが、血管運動症状の発現頻度を改善する(抑制する)ことができる用量であればいかなる用量でもよい。例えば、1日用量として10mg以下の用量が挙げられ、好ましくは1日用量として1mg~10mgの用量が挙げられ、より好ましくは、1日用量として1mg~5mgまたは5mg~10mgの用量が挙げられる。
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩の1日用量としては、10mg以下の用量であればいかなる用量でもよいが、具体的には、10mg、9.5mg、9mg、8.5mg、8mg、7.5mg、7mg、6.5mg、6mg、5.5mg、5mg、4.5mg、4mg、3.5mg、3mg、2.5mg、2mg、1.5mg、1mg、0.5mg、0.25mg、0.1mgまたは0.05mgが挙げられる。1日用量として、好ましくは、10mg、9.5mg、9mg、8.5mg、8mg、7.5mg、7mg、6.5mg、6mg、5.5mg、5mg、4.5mg、4mg、3.5mg、3mg、2.5mg、2mg、1.5mgまたは1mgが挙げられる。また、1日用量として、好ましくは、10mg、9.5mg、9mg、8.5mg、8mg、7.5mg、7mg、6.5mg、6mg、5.5mgまたは5mgが挙げられる。さらに、1日用量として、好ましくは、5mg、4.5mg、4mg、3.5mg、3mg、2.5mg、2mg、1.5mgまたは1mgが挙げられる。なかでも、1日用量として、10mg、5mgまたは1mgが好ましく、とりわけ、5mgの1日用量が好ましい。
【0021】
本明細書で使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によって特別の指示がない限り、複数形を包含する。
【0022】
「およそ」および「約」という用語は、測定の性質または精度を考慮して、測定された量の許容誤差を含む、参照された番号または値とほぼ同じであることを意味する。本明細書で使用する「およそ」および「約」という用語は、一般に、特定の量、頻度または値の±20%を含むと理解されるべきである。本明細書に記載された数値は、特に明記しない限り、おおよそのものであり、明示的に記載されていない場合、「約」または「およそ」という用語が推論されうることを意味する。本明細書で使用される「血管運動症状」は、当該技術分野において公知であり、軽度、中等度、または重度のいずれのホットフラッシュも包含する。血管運動症状として、寝汗や潮紅が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書で使用される「ホットフラッシュ(hot flashes)」という用語は、潮紅および発汗を任意に伴い、かつ任意に頻脈および寒さを伴う、熱の出現感覚を示す。本明細書で使用される「ホットフラッシュ」は、閉経に関連するか、医学的状態の症状または影響に関連するか、たとえば癌治療の副作用などの医学的状態の治療の副作用に関連するか、またはホットフラッシュのその他のトリガーまたは原因に関連する、ホットフラッシュを示す。この用語には「ホットフラッシュ(hot flushes)」も含まれる。「寝汗」は、睡眠中に発生するホットフラッシュである。
【0024】
本明細書で使用される、血管運動症状を「治療する」もしくは「予防する」、または血管運動症状の「治療」もしくは「予防」という用語は、(1)血管運動症状の発生または頻度を低減、最小化、または排除すること;(2)血管運動症状が発生したときにそれらを緩和すること;(3)血管運動症状の重症度を軽減または最小化するか、または血管運動症状の1つ以上の症状を除去する(または緩和する)こと;および(4)血管運動症状の進行または発症を遅らせること;の1つ以上を包含する。本明細書に記載の組成物および方法は、夜間に起こる血管運動症状(たとえば、ホットフラッシュ)(すなわち、寝汗)を治療または予防することができる。これらの実施態様では、本明細書に記載の治療または予防はまた、睡眠開始までの時間の短縮、全睡眠時間の増加、睡眠障害または覚醒の数の減少、および睡眠のより深いレベルの増加を含む。
【0025】
本明細書で使用される「対象者」という用語は、ヒトまたは動物でありうる。
【0026】
本明細書で使用される「中核体温」という用語は、対象者の体内温度を示す。中核体温は、当技術分野で公知の技術を用いて測定されうる。いくつかの実施態様では、温度プローブを食道、肺動脈、または膀胱に配置するなどの侵襲的手段が使用される。いくつかの実施態様では、中核体温は、消化器官で測定される。いくつかの実施態様では、中核体温は、直腸、口腔、腋窩、側頭動脈、または外耳道などの非侵襲部位において測定される。いくつかの実施態様では、たとえば、対象者の中核体温の低下の発生および/または程度を評価する際に、中核体温は一貫して同じ部位で測定される。
【0027】
用語「投与する」、「投与」または「投与すること」という用語は、個体に本開示による薬物を提供するステップ、付与するステップ、投与するステップ、および/または処方するステップ、あるいは個体が本開示による薬物を受けるステップ、適用するステップ、摂取するステップ、および/または消費するステップを意味する。本開示による活性剤または組成物の投与経路は、任意の投与経路、たとえば、経口、非経口、経粘膜、鼻腔内、吸入または経皮でありうる。
【0028】
「閉経周辺期の女性」という用語とは、女性の身体が排卵および月経のおおむね規則的な周期から永久不妊または閉経に移行する期間内の女性を示す。この期間は、閉経前の数ヶ月から、数年、15年またはそれ以上の期間でありうる。「閉経周辺期」は、閉経移行としても知られる。「閉経後の女性」とは、閉経を経験した、すなわち月経を伴わない連続的12ヶ月を経験した女性を示す。本明細書で使用される「閉経期の女性」は、本明細書で定義される閉経周辺期の女性および閉経後の女性の両方を包含する。これらの女性における閉経は、自然的(年齢と共になど)であるか、手術(両卵巣の除去によるなど)の結果であるか、または化学療法(エストロゲン拮抗薬、たとえば、フルベストラント、ラロキシフェン、タモキシフェン、またはトレミフェンによる治療による)によって誘発されるかのいずれかでありうる。
【0029】
本発明者は、TRPM8アンタゴニストである化合物Aを低用量で投与することによる血管運動症状の新しい治療を発見した。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本発明者は、体温低下作用を示さない低用量で血管運動症状に対する治療または予防効果を有する理由として、例えば、次の可能な理論があると考えている。
【0030】
TRPM8受容体遮断の状況において起こることが判明している血管運動症状の低減は、生体システムの一連の因果的相互作用に依存する。これらのシステムに対するTRPM8遮断の効果は拡張性のある(scalable)である。
【0031】
TRPM8受容体の遮断の増分の将来的かつ計画的な改変は、投薬の静的、変動的、および動的な適用によって達成され得て、その結果、その標的へのTRPM8遮断分子の大きさ、タイミングおよび送達を改変することができる実験的および臨床的な使用を与える。例えば経口、直腸、膣、静脈内、髄腔内、鼻腔内、頬内、吸入、局所、および体内への様々な注射の方法を含めたいくつかの投薬経路のいずれか(これらの例に限定されるものではない)を介して、例えば拍動的な、断続的な、調整可能な、および連続的な投薬方法(これらの例に限定されるものではない)は、例えば感覚系、心血管系、呼吸系、胃腸系、生殖系、外皮系、末梢および中枢神経系、体温調節系、概日調節系、交感および副交感神経系、内分泌系、腎臓および泌尿器系の様々な態様による様々な生理的応答(これらの例に限定されるものではない)を創製し、そして、血管運動症状の様々な発現を軽減し、緩和し、遮断し、中断し、または予防するのに使用することができる。
【0032】
末梢皮膚から視床下部への温度感覚シグナル伝達のTRPM8関連の改変、および結果として生じる温度エフェクター機構のカスケードへの影響は、これらの症状を患っている、それぞれ個体および研究集団における、血管運動症状の経過、タイミング、重症度、頻度、関連性、および医学的重要性への科学的かつ医学的に明白な変化をもたらす。
【0033】
関連する生理学的な性質には、中核および末梢の体温、概日リズムの振幅、頻度および規則性、TRPM8受容体のすべての発現、TRPM8受容体の相互作用および遮断のすべての発現、およびTRPM8シグナル伝達の完全性の全ての態様、および体温調節の全ての態様を含むが、これらの例に限定されるものではない。
【0034】
TRPM8の阻害または遮断の効果は、最終的には、熱力学の法則によって予測される範囲内の熱の影響を受けて、複数のコンパートメントを通る熱伝達をより容易にするために、様々な生理学的システムを制御する能力によって現れる。
【0035】
いくつかの経路のいずれかによって送達される、TRPM8阻害剤または遮断剤の拡張可能でかつ潜在的に動的に投与される量の用量は、概日温度曲線が連続的かつ動的に改変されるように、中核および周辺温度を急速に維持または制御することを可能とする。急速で、連続的で、動的に変更可能な温度のこのプロセスは、TRPM8シグナル伝達の強度、持続時間および時間的変化の改変を様々に感知する体温調節システムの能力に依存する。血管運動症状を有する平均的な患者には、正常なおよび予想される概日温度リズム並びに周期の記述的な平坦化がある。具体的には、通常の日中の温度変化の範囲が狭くなる。
【0036】
4つの熱コンパートメントが最も重要である。1.エネルギーと熱の発生コンパートメントがある。2.中核部(頭部、胸部、腹部)のコンパートメントがある。3.周辺皮膚コンパートメントがある。4.外部の環境コンパートメントがある。ヒトの体温調節(hTR)の統合モデルは、ヒト身体の熱伝達モデル(modified Gagge’s Two-node model, ASHRAE Transactions, 77: 247-62. (1971); Metabolic heat production model with circadian rhythm, J. Pharmacol. Exp. Ther., 317: 209-19. (2006)) in the context of physiology outlined in a neuronal thermoregulation model (Temperature, 1: 142-9. (2014))に記載されている要素から理解することができる。このモデルは、下記の図において図示することができる。
【化1】
【0037】
健康な正常機能では、熱がこれらのコンパートメントを順に移動する熱サイクルが存在し、そして、熱は24時間のリズムで発生し、消散する。熱は、通常、中心コンパートメントから末消皮膚に、次いで周囲環境に消散され、典型的な夜はコア温度が夜間に降下し、次に目を覚ます前に発生および温めが行われる。この通常のサイクルが妨げられ、熱が末消皮膚に効率的に移動することができず、外部コンパートメントに消散すると、温度が上昇し、熱の消散のための好ましくない経路が補充される。顔、頭部、胸部および他の領域が急に動員されると、血液はこれらの領域の表面にシフトし、そして、熱が、表面の血管拡張およびその結果生じる発汗による緊急で非効率的な方法で、外部コンパートメントに消散される。このプロセスは主観的に「ホットフラッシュ」と認識されており、そして発生した体熱の「緊急救済弁」の等価物である。「ホットフラッシュ」のバーストで消散される熱は、正常な生理的概日温度曲線を回復するには不十分であるが、機能的な恒常性への復帰を可能にする。これは「短期的な」修正である。
【0038】
恒常性を回復させるために、TRPM8の遮断は、治療的にスケール化することができる。熱生産は減少し、これは「ホットフラッシュ」による非効率的な熱放出に対する大幅に低下した必要性、したがって薬理学的恒常性と関連する。遮断はまた、心臓血管および睡眠のさらなる利益をもたらすと予想され得る、より通常の生理学的温度曲線を回復するようにスケール化することができる。
【0039】
振幅、周波数、脈動、衝動、減衰、およびパワーの技術的な原理を適用すると、温度曲線は様々な様式で影響を受けることがある。実際の兆候では、TRPM8シグナル伝達の小さな遮断(低用量)は、恒常性のためにホットフラッシュを使用する必要性なしで、体温調節システムの調節を補償するのに十分である。したがって、この場合(低用量)には、中核温度の測定可能な変化はない。化合物Aのいくつかの用量(睡眠時間前に、約5~10mg/日)では、薬物の導入は、温度サイクルの予想される「冷えた」肢の間に効力を発揮するように特に時間調節されたときに、より正常な概日リズムを再確立し、血管運動症状を罹患している患者において最も典型的に失われる(平らにされる)正常な概日温度サイクルを再確立する(J Steroid Biochem Mol Biol. 2014 July ; 142: 115-120)。
【0040】
高潔で効率的な温度リズムおよび熱流プロセスのこの再確立は、治療前「平坦化」温度曲線の下に薬理学的に確立された温度低下として視覚化することができ、続いて治療前の平坦化曲線よりも上のより正常なピークに、従って健康な概日状態に近づく。
【0041】
曲線の再確立とともに、熱は中核から周囲環境へよりよく伝達され、「ホットフラッシュ」から「オフロード」熱への緊急の必要性が防止される。
【0042】
ホットフラッシュは、多数の個体にとって、睡眠開始時、および睡眠の最初の数時間では最も厄介であり、これらのとき、脳との相互作用は通常体を冷却するように指示するが、通常の受動的および能動的な冷却が失敗するにつれて、ひょっとしたら、熱機関は熱産生を遅らせるのに失敗する。冷却するための概日の駆動と、身体を十分に冷却することができないこととの間のこの明らかな不一致は、ホットフラッシュ中に現れることがあり得る。
【0043】
化合物Aは、概日曲線、並びに、曲線を改変し、体温の低下を促進し、または具体的に且つ代替的に、受動的および能動的な身体冷却、および/または、TRPM8冷却温度センサの中断による熱機関のエネルギー出力の低下、を容易にするための具体的な意図、と一致するように時間調節された投与によって、概日曲線と協働して作用する。
【0044】
受容体の効果的な薬力学的遮断は意図的に時間的に改変され得る(すなわち、短い 対 長い)ので、化合物Aの用量は、最初に冷却を通して、次いで、目覚めの予想される朝の時間の前に、排泄、続く生理学的な温めに導かれる代謝を通して、温度曲線の薬理学的な正常化を駆動するための一夜の用量として意図的に脈動(pulse)することができる。パルスの強度は、様々な薬物動態学的なおよび薬力学的なスケール化を伴って改変し得る、大きさ、振幅、持続時間および強度の概念が、意図的に含まれる。更に、リズム(具体的には、ヒトの概日リズム)を改変または調節することができる波力学の概念は、化合物Aが有益な臨床効果をもたらすメカニズムにとって本質的且つ中心的なものである。必然的に、血管運動症状の強度、頻度、数、大きさ、および臨床的干渉は、化合物Aの治療学的機序によって低減される。さらに、これらの効果に関連して、睡眠パターンは正常化され、また、睡眠効率は、血管運動症状および負担の状況で睡眠障害の証拠を有する患者において改善される。全体で、これらの効果は、就寝前に夜間に投与される、10mg以下の用量、特に1mg~10mgの範囲の用量を、ホットフラッシュが低減し、概日リズムが回復し、また睡眠が正常化されるような効果的なものとして、サポートしている。一方で、より大用量の化合物Aは、冷却の時間の延長、および中核温度のより一時的に延長された低減を可能とし、その結果、ホットフラッシュを含めた血管運動症状の軽減を容易にし、最終的には、生活の質、パルス特性、および化合物Aのある特定の十分な低用量の投与の時期における臨床的に関連する改善が、関連する熱力学的な効率と共に、より自然な24時間概日回復の曲線および頻度を回復するのに特異な効果を有することが分かった。これらの相関は、数学的に表すことができ、そして、化合物Aのこれまでの研究の間に集められたヒト臨床データに基づいてモデル化することができる。これらの相関は、要素が本明細書中にて表にされている式(表1を参照)、および約50%の代謝的熱産生の低下による、一次作用(これは、血管運動症状の数、回数、および強度の低下を生じる)を発揮する、低用量の化合物Aの効果についてのモデル、によって更に数学的に記載することができる。
【表1】
上記表中、各用語は下記の通り訳す。
「Parameters」:「パラメータ」、
「Values」:「数値」、
「Descriptions」:「記載表示」、
「Individual」:「個別」、
「Height」:「高さ」、
「Weight」:「重量」、
「Weight of core body」:「コアボディの重量」、
「Weight of skin」:「皮膚の重量」、
「Body surface area」:「体表面積」、
「Specific heat in core body」:「コアボディにおける比熱」、
「Specific heat in skin」:「皮膚における比熱」、
「Temperature of ambient air」:「外気の温度」、
「Relative humidity(fraction)」:「相対湿度」、
「Saturated vapor pressure in ambient air」:「外気の飽和蒸気圧」、
「Evaporative heat of water」:「水の蒸発熱」、
「Convective heat transfer coefficient」:「対流熱伝達係数」、
「Radiative heat transfer coefficnet」:「放射熱伝達係数」。
「moisture transfer coefficient」:「湿気伝達係数」、
「Working efficiency」:「作業効率」、
「Minimum heat conductance by skin tissue」:「皮膚組織による最小熱伝導率」、
「Specific heat in blood」:「血液における比熱」、
「Setting point of core temperature」:「コア温度のセットポイント」、
「Setting point of skin temperature」:「皮膚温度のセットポイント」、
「Coefficient of sweating rate」:「発汗率の係数」、
「Skin blood flow rate under thermally neutral conditions」:「熱的に中性条件での皮膚血液の流速」、
「Coefficient of vasodilation」:「血管拡張の係数」、
「Coefficient of vasoconstriction」:「血管収縮の係数」。
低用量で化合物Aによって変更される、熱伝達の熱力学的なモデルは、以下の通りであり、また、熱力学第1法則に基づく微分方程式を用いる。
【数1】
当該モデルにおける、熱産生、伝達、および損失の反応速度式を、更に以下に記載する。
【数2】
調節する発汗率(自立系による調節)の式を、さらに下記に記載する。
【数3】
血流速度(自立系による調節)の式を、また下記に記載する。
【数4】
次に、これらの効果を、概日モデルの内容内で記載する。
【数5】
要するに、このモデルは、コア体温を低下するための一次作用よりもむしろ、熱的熱発生の感覚統合療法(sensory integration)および恒常性の低下に基づく、血管運動症状に及ぼす有益な効果を提供するための、化合物Aの効果についてのサポートを供する。
当該モデルは、1日当たり10mg以下の用量での、予測される最適なヒト臨床効果を支持する(
図7を参照)。
【0045】
本開示は、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を対象者に投与することを含む、それを必要とする対象者における血管運動症状を治療または予防するための方法に関する。いくつかの実施態様では、血管運動症状は、ホットフラッシュである。いくつかの実施態様では、対象者はヒトである。対象者は、男性であっても、女性であってもよい。方法は、ホットフラッシュなどの血管運動症状を有する傾向があるか、または有するか、または有することが予測される対象者に使用されることが想定される。それを必要とする対象者は、閉経に関連するか、医学的状態の症状または影響に関連するか、医学的状態の治療の副作用に関連するか、または血管運動症状のその他のトリガーまたは原因に関連する、血管運動症状に苦しむか、または苦しむことが予測されうる。
【0046】
対象者として、閉経期の女性;抗エストロゲン剤(タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤など)を服用中または服用が見込まれる対象者;外科手術を予測しているか、または外科手術を受けたことがある対象者;または任意の他の病状を有するか、または有することが予測される対象者;あるいはホルモンレベルの変化をもたらす任意の他の治療を受けているか、または受けることが予測される対象者が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
対象者は、さらに、腫瘍患者を包含するが、これに限定されるものではない。たとえば、対象者は、外科手術または放射線療法などの癌治療を予測しているか、受けているか、または受けたことがあるものを含みうる。たとえば、対象者は、性腺切除療法または性腺ホルモン抑制療法を予測しているか、受けているか、または受けたことがあるものを含みうる。対象者が、癌治療を受けているか、または癌治療を受けたことがある場合、癌治療は、たとえば、乳癌、卵巣癌および前立腺癌のホルモン療法治療など、対象者のホルモンレベルに影響を及ぼす治療でありうる。癌に対するホルモン療法の例として、以下のものが挙げられる:タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、ラロキシフェン(Evista(登録商標))、ラソフォキシフェン(Fablyn)およびトレミフェン(Fareston(登録商標))などの選択的エストロゲン受容体アンタゴニスト;フルベストラント(Faslodex(登録商標))などの抗エストロゲン薬;アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、レトロゾール(Femara(登録商標))、ボロゾール(Rivizor)、ホルメスタン(Lentaron)、ファドロゾール(Afema)およびエキセメスタン(Aromasin(登録商標))などのアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン(Zoladex(登録商標))、ロイプロリド(Lupron(登録商標))などの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;ブセレリン、リュープロレリン(Prostap(登録商標))、ヒストレリン(Vantas(登録商標))、デスロレリン(Suprelorin(登録商標))、ナファレリン(Synarel(登録商標))およびトリプトレリン(Decapeptyl(登録商標)などの黄体形成ホルモン(LH)遮断薬;フルタミド(Drogenil(登録商標))、ニルタミド(Nilandron(米国)/ Anandron(カナダ))およびビカルタミド(Casodex(登録商標))などの抗アンドロゲン剤;デガレリクス(Firmagon(登録商標))などのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)遮断薬;およびアビラテロン(Zytiga(登録商標))。
【0048】
対象者としては、子宮摘出、卵巣切除および睾丸切除などの外科手術で誘発されるホルモン変化を予測しているか、または経験したことがある対象者も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩を、低用量の化合物Aおよび薬学的に許容される担体を含む組成物として投与することができる。ある実施態様では、組成物は、医薬組成物である。
【0050】
低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、またはその組成物の投与は、必要に応じて行うことができるか、または進行中の投与計画などのスケジュールで行うことができる。たとえば、化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、またはその組成物の必要量を、ホットフラッシュなどの血管運動症状の発症を感知した直後など、必要に応じて投与してもよい。予定された投与は、症状のある集団または処置された個体のいずれかにおいて、投与の頻度が血管運動症状の概日リズムと相関する、均一なスケジュールまたは不均一なスケジュールであってもよい。予定された投与を使用する場合であっても、血管運動症状がまだ発生している場合、必要に応じて化合物を投与することが可能である。いくつかの実施態様では、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、またはその組成物は、1日1回または1日2回など、毎日投与される。いくつかの実施態様では、投与のタイミングおよび頻度は、本明細書に記載される夜間に起こる血管運動症状(たとえば、ホットフラッシュ)(すなわち、寝汗)の治療または予防を標的とするように選択される。特定の実施態様では、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、またはその組成物は、夕方に1回の投与を含む投与計画など、夕方に投与される。いくつかの実施態様では、低用量の化合物Aまたはその組成物は、就寝前に1日1回の投与を含む投与計画など、就寝前に投与される。
【0051】
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩、またはその組成物の投与は、経口投与などの特定の投与経路に限定されない。
【0052】
化合物Aまたはその薬学的に許容される塩が1つ以上の追加の活性剤と共に投与される併用療法も本開示の範囲内である。そのような併用療法は、単一の組成物中の異なる活性剤の投与によって、異なる組成物中の異なる活性剤の同時投与によって、または異なる活性剤の逐次投与によって行われうる。所望の効果を誘導する、本明細書に開示されている活性剤の誘導体および類縁体ならびに活性剤のクラスは、本開示の範囲内である。ここで、「活性剤」という用語は、所望の効果を誘発する化学的化合物を示す。
【0053】
追加の活性剤の例としては、エストロゲン、エストロゲン受容体モジュレーター、エストロゲンアゴニスト、アンドロゲン受容体モジュレーター、ペプチドホルモン、ニューロキニンクラス薬物(ニューロキニン-3受容体アンタゴニストなど)、鎮静剤、催眠剤、抗不安除去薬、抗精神病薬、抗不安薬、マイナー・トランキライザー、ベンゾジアゼピン、バルビツール酸系催眠薬、セロトニン(5-HT)アゴニスト、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI's)、5HT-2アンタゴニスト、非ステロイド性抗炎症薬、経口避妊薬、プロゲステロン、プロゲスチン、モノアミン酸化酵素阻害剤、炭水化物混合物などの血管運動症状を治療もしくは予防するための活性剤またはホルモン変化の他の徴候および症状の治療に有用な活性剤、または冷却剤などの物理的方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。追加の活性剤の例としては、エストロゲン、プロゲステロン、クロニジン、ベンラファキシン、酢酸メゲストロール、ミルタザピン;アセトアミノフェン、アルプロスタジル、アスピリン、ジクロフェナク、エトドラク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラクトロメタミン、ミソプロストール、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、スピロノラクトン、スピロノラクトンとヒドロクロルチアジド、またはトロバフロキサシンなどの非ステロイド性抗炎症薬;コルチコステロイド;セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、メロキシカム、フロスライド、ニメスリド、MK-663、NS 398、DuP 697、SC-58125、SC-58635、またはRS 57067などの選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤;アジナゾラム、アビラテロン、アロバルビタール、アロニミド、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモバルビタール、アモキサピン、アナストロゾール、ベンタゼパム、ベンゾオクタミン、ビカルタミド、ブロチゾラム、ブプロピオン、ブセレリン、ブスピロン、ブタバルビタール、ブタルビタール、カプリド、カルボクロラール、クロラールベタイン、抱水クロラール、クロルジアゼポキシド、クロメテロン、クロミプラミン、クロペリドン、クロラゼプ酸、クロレテート、クロザピン、シプラゼパム、デガレリクス、デルマジノン、デシプラミン、デスロレリン、デクスクラモール、ジアゼパム、ジクロロアルフェナゾン、ジバルプロエクス、ジフェンヒドラミン、ドキセピン、ドロロキシフェン、エスタゾラム、エストラジオール、エストロゲン、エチクロルビノール、エトミデート、エキセメスタン、ファドロゾール、フェノバム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、フルタミド、フルボキサミン、フルソキセチン、ホルメスタン、フォサゼパム、フルベストラント、グルテチミド、ゴセレリン、ハラゼパム、ヒストレリン、ヒドロキシジン、イドキシフェン、イミプラミン、ラソフォキシフェン、ロイプロリド、リチウム、レトロゾール、ロイシン、ロイプロリド、ロイプロレリン、ロラゼパム、ロメタゼパム、マプロチリン、メクロカロン、メラトニン、メホバルビタール、メプロバメート、メタカロン、ミダフルール、ミダゾラム、ナファレリン、ナホキシジン、ネファゾドン、ニトロミフェン、ニルタミド、ニソバメート、ニトラゼパム、ノシセプチン、ノルトリプチリン、オルメロキシフェン、オキサゼパム、パラアルデヒド、パロキセチン、ペントバルビタール、ペルラピン、ペルフェナジン、フェネルジン、フェノバルビタール、プラゼパム、プロゲステロン、プロメタジン、プロポフォール、プロトリプチリン、クアゼパム、ラロキシフェン、レクラゼパム、ロレタミド、セコバルビタール、セルトラリン、スプロクロン、タモキシフェン、テマゼパム、チオリダジン、トレミフェン、トラカゾラート、トラニルシプロマイン、トラゾドン、トリオキシフェン、トリアゾラム、トリプトレリン、トレピパム、トリケタミド、トリクロホス、トリフルオペラジン、トリメトジン、トリミプラミン、ウルダゼパム、バルプロエート、ベンラファキシン、ボロゾール、ザレプロン、ゾラゼパム、ゾルピデム、およびそれらの塩、およびそれらの組み合わせなど、ならびにそれらの混合物および組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。追加の活性剤の例として、タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))、ラロキシフェン(Evista(登録商標))およびトレミフェン(Fareston(登録商標))などの選択的エストロゲン受容体アンタゴニスト;フルベストラント(Faslodex(登録商標))などの抗エストロゲン薬;アナストロゾール(Arimidex(登録商標))、レトロゾール(Femara(登録商標))およびエキセメスタン(Aromasin(登録商標))などのアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン(Zoladex(登録商標))、ロイプロリド(Lupron(登録商標))などの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;ブセレリン、リュープロレリン(Prostap(登録商標))、ヒストレリン(Vantas(登録商標))およびトリプトレリン(Decapeptyl(登録商標)などの黄体形成ホルモン(LH)遮断薬;フルタミド(Drogenil(登録商標))およびビカルタミド(Casodex(登録商標))などの抗アンドロゲン剤;デガレリクス(Firmagon(登録商標))などのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)遮断薬;およびアビラテロン(Zytiga(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
いくつかの実施態様では、本開示は、血管運動症状を治療または予防するための低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される担体を含む組成物を含む。特定の実施態様では、組成物は医薬組成物である。組成物を、各投与方法に適した不活性担体と一緒に使用することができ、従来の製剤(たとえば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、注射剤、点滴剤など)に製剤化することができる。このような担体としては、薬学的に許容される、たとえば、結合剤(たとえば、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、ポリビニルピロリドンなど)、賦形剤(たとえば、乳糖、砂糖、コーンスターチ、ソルビトールなど)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールなど)、崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプンなど)などが挙げられる。組成物を注射液または輸液として使用する場合には、たとえば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液等を用いて製剤化することができる。特定の実施態様では、本開示は、処置が必要な対象者における血管運動症状を治療または予防するための、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される、または有効成分として該化合物を含有する組成物の使用を含む。また、特定の実施態様では、本開示は、血管運動症状を治療または予防するための医薬の製造における、低用量の化合物Aまたはその薬学的に許容される塩の使用を含む。
【0055】
前述の説明および以下の実施例は、本発明の範囲を例示するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の他の態様、利点および変更は、本発明が関連する当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0056】
実施例1:血管運動症状を経験している女性の被検者における化合物Aの反復投与の安全性、忍容性および薬物動態を評価するためのフェーズI、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
【0057】
試験デザイン:これはフェーズIb、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である。試験デザインを
図1に示す。最初のスクリーニング訪問の後、適格な被験者には、VMSの適格性基準(2週間の平均で≧7 VMS/日)を確認するために、スクリーニング中の2週間の期間、血管運動症状(VMS)イベントとしてのフラッシュの出現を記録するためのアクティグラフ・イベント・モニタ(腕時計)が与えられた。被験者は、場合によっては、スクリーニング期間中、アクティグラフ・イベント・モニタを読むかまたは交換するためにサイトに戻る必要がある。VMSデータの再検討後に適格とみなされた被験者は、14日間の治験薬品(IMP)投与を含む16日間からなる1つの居住期間の間、臨床研究ユニット(CRU)に参加するように招待された。被験者は、投薬の1日前(第-1日)にCRUに入院した。-1日目には投薬は行わなかった。1日目に、化合物A(6人の被験者)または対応するプラセボ(2人の被験者)のいずれかの1用量レベルを二重盲検法で受けるために、試験適格基準を満たす被験者を無作為化した。無作為化された処置は、1日目から開始され、毎晩1回、合計14日間投与された。
【0058】
投与される化合物Aの予想される用量レベルは、コホート1については50mgであり、コホート2については20mgであり、コホート3については10mgである。次の用量レベルへの進行およびコホート2およびコホート3で投与される用量の選択は、先の投与コホートから新たに出現した安全性および忍容性のデータおよび入手可能な中核体温データに基づく。用量漸増停止基準が満たされる場合、次のコホートの用量を減らす。評価されるべき最低の潜在力のある用量は5mgであり、試験のための最大用量は50mgを超えない。3つのコホートに順次投薬し、他の用量レベルを調べるための第4の追加コホートに、必要に応じて投薬する。
【0059】
被験者は、投与24時間後のすべての処置が15日目の夜に完了した後、または被験者によってより都合がよいと思われる場合は、処置が16日目の早朝に完了した後に、CRUから退院し、21日目に追跡調査のために来院する。各被験者の全参加期間は最大で63日(-42日目の最初のスクリーニング来院から21日目の追跡調査まで)である。
【0060】
評価項目:
主要評価
・安全性および忍容性:バイタルサイン、ECGパラメータ、臨床検査評価、身体検査、有害事象および全体的な忍容性の評価
副次評価
・薬物動態評価
中核体温評価
・中核体温におけるベースラインからの変化
探索評価
・VMSの頻度および睡眠評価
・気分および主観的睡眠の質
【0061】
5mgの化合物Aを、血管運動症状(VMS)を被っている女性対象者に投与し、上記評価としてVMSの頻度および中核体温評価を調べた。VMSの頻度については、血管運動症状(VMS)頻度の平均観察値(Mean Observed Value)の変化を、14日の治療期間の間、最初の投与後の24時間以内、経時的に観察した。中程度のVMSおよび重度のVMSをVMS頻度としてカウントした。各診察日におけるVMS頻度の平均観察値を、表2にまとめる。
5mgの化合物Aの投与後の、1日目、7日目、10日目、および14日目でのコアボディ温度のパターン変化を
図6に示した。
【表2】
【0062】
プラセボ及び化合物AについてのVMS頻度の平均観察値の各々を、
図2に示す通りプロットした。
図2において、三角形または四角形の記号の各々は、それぞれ5mgの化合物Aまたはプラセボの結果を示す。
図2に示す通り、化合物AはVMSの頻度を有意に低下させた。また、エストロゲンまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、パロキセチン)と比較して、VMS頻度の低下効果が治療薬物療法の1日目の晩またはそれ以後、すなわち、投与の数日以内に示されたことを理由に、化合物Aは即効性の効果を有した。
【0063】
中核温度の評価については、対象者の中核温度のベースラインからの変化を、診察1日目または7日目で、投与24時間以内、経時的に観察した。プラセボ(
図3A)および5mg(
図3B)投与群の試験結果を
図3に、20mg(
図4A)および50mg(
図4B)投与群の試験結果を
図4に示す。四角形または白丸の記号の各々は、それぞれ診察日(Visit Day)1日目または7日目での結果を示す。
図3および4に示す通り、化合物Aは、20mgおよび50mgの各投与群と比較して、5mg投与では、プラセボと同様に、中核温度の有意な低下を示さなかった。
【0064】
実施例2:血管運動症状を経験している閉経後女性の被験者における、血管運動症状の頻度および重症度に対する化合物Aの効果を評価するためのフェーズII、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験
【0065】
試験デザイン:これは、用量選択のための、フェーズII、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験であった。
適格基準を満たす被験者を、2週間の単回盲検プラセボ投与期間に登録した。全ての適格被験者が、就寝前に毎日一重盲検プラセボを受けた。プラセボ投与期間に続いて、適格基準を満たしている被験者を、12週間のプラセボ対照二重盲検治療期間に入れた。二重盲検治療期間は、プラセボと、化合物Aの1mg、5mg、および10mgを含む4種類の腕を有した。就寝前に1日用量の試験薬を1回投与した。研究の終了(EOS)時、フォローアップ訪問を、二重盲検治療期間の終了後30日目に安全性フォローアップのために電話で行った。合計期間はスクリーニング期間およびフォローアップ期間を含めて20週間とした(
図5参照)。
【0066】
安全性のための計画された中間評価、および有効性(無益)および安全性のための計画された中間分析を、試験中に行った;登録は中断することなく進めた。
・約25%の被験者が二重盲検治療期間に12週目で完了すると、安全性の中間評価を行った。
・約50%の被験者が二重盲検治療期間に12週目で完了すると、有効性(無益)および安全性のための中間分析を行った。
主要評価を、第4週および第12週に評価した。
【0067】
評価項目:
複合主要有効性評価項目
・中程度~重度のVMSの平均1日の頻度のベースラインからの変化。これは、中程度~重度のVMSの数をデータを有する日数で割った値の合計として定義した。ここでのおよび以下の1日スコアは、7日期間の平均スコアであった。詳細は、統計解析計画書(SAP)で定義した。
・軽度から重度のVMSの平均1日の重症度スコアのベースラインからの変化。ベースラインVMS重症度スコアは、(2xFmo + 3xFse)/(Fmi + Fse)で定義し、そして二重盲検治療期間中の特定の週のVMS重症度スコアは、(1xFmi + 2xFmo + 3xFse)/(Fmi + Fmo + Fse)で定義した。ここで、Fmi、FmoおよびFseは、各適用可能な試験週の間の、それぞれ軽度、中等度および重度のVMSの1日の頻度であった。
複合評価項目を、第4週および第12週に評価した。
【0068】
副次有効性評価項目
・第4週および第12週の応答者の割合(すなわち、ベースラインからと比較した、中程度および重度のVMSの平均1日頻度におけるカットオフ数*またはより大きい低下を有する被験者)
・応答への時間。これは、無作為から、被験者が応答者基準を最初に充足する最初のときまでの時間(週単位)として定義された(すなわち、中程度および重度のVMSの平均1日頻度のベースラインからのカットオフ数またはより大きい低下)。
*注:カットオフ数は、アンカーベースの方法を使用して算出した。カットオフ数は、患者の全般的印象の変化(PGIC)をアンカーとして用いて、感度および特異性を最大にするための数値として定義した。
・不眠症重症度質問票(ISI)合計スコアの、ベースラインからの4週目と12週目までの変化。
【0069】
その他の有効性評価項目
・4週目および12週目でのPGIC
・ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)の、ベースラインからの4週目と12週目までの変化。
・閉経に特有の生活の質(MENQOL)の、4週目と12週目までの変化。
・36項目短期健康調査(SF-36)の、ベースラインからの4週目と12週目までの変化。
・中程度から重度のVMSの平均1日重度スコアの、ベースラインからの4週目と12週目までの変化。これは、2xFmo + 3xFseと定義した。
【0070】
薬物動態(PK)評価
化合物Aの血漿濃度を評価するための血液サンプルは、二重盲検治療期間中に5回の訪問で入手した。
【0071】
安全性評価
・身体検査(乳房安全性評価を含む)
・バイタルサイン(血圧、脈拍、耳内温度)
・ECGパラメータ(心拍間隔:心拍数、PR、QRS、QT、QTcF、およびQTcBを含む)
・臨床検査室評価(血液学、生化学、凝固、および尿検査)
・生殖ホルモン(黄体形成ホルモン[LH]、卵胞刺激ホルモン[FSH]、エストラジオール[E2])
・有害事象(AE)
・子宮内膜の安全性(経膣的超音波検査によって測定する子宮内膜の厚さ、および子宮内膜検査によって測定する子宮内膜増殖症の発生)
・8項目患者健康アンケート(PHQ-8)および7項目全般性不安障害質問票(GAD7)によってそれぞれ測定される、うつ病および不安。
【0072】
本発明の他の実施態様は、本明細書の考察および本明細書に開示された本発明の実施から、当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、例示的なものとしてのみ考慮され、本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示されることを意図される。