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特許7265553薄いガラスリボンの処理システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】薄いガラスリボンの処理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/14 20060101AFI20230419BHJP
   C03B 17/06 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C03B35/14
C03B17/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020543262
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018058112
(87)【国際公開番号】W WO2019089518
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】62/578,816
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アマドン,ジェフリー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ビッソン,アントワーヌ ガストン デニス
(72)【発明者】
【氏名】ダニング,ノーマン ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】ジャンソン,ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ローヒット
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,スン ヒ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029669(WO,A1)
【文献】特表2015-532910(JP,A)
【文献】特開2012-211074(JP,A)
【文献】特開2012-096989(JP,A)
【文献】ニューガラスフォーラム編著,おもしろサイエンス ガラスの科学,おもしろサイエンス ガラスの科学,日刊工業新聞社,2013年06月25日,10, 11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 17/06
C03B 23/00-35/26,40/00-40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボン処理方法において、
ガラスリボンを、供給装置から搬送装置の上流側に供給する工程であって、前記搬送装置は、前記上流側の反対側である該搬送装置の下流側に位置する引張装置、および、前記上流側から前記下流側への進行主平面を確立する搬送部装置を有するものである工程と、
引張力を、前記引張装置を用いて、前記ガラスリボンに加えて、該ガラスリボンを進行経路に沿って連続して搬送する工程であって、
前記進行経路は、
前記上流側と前記引張装置の間の第1の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第1の曲がり部と、
前記第1の位置と前記引張装置の間の第2の位置で、前記進行主平面に対して凹状のカーブを画定する第2の曲がり部と、
前記第2の位置と前記引張装置の間の第3の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第3の曲がり部と
を含むものであり、
前記第2の位置と前記進行主平面の間の垂直距離は、前記第1の位置と前記進行主平面の間の垂直距離より長く、前記第3の位置と前記進行主平面の間の垂直距離は、前記第2の位置と前記進行主平面の間の垂直距離より長く
更に、前記進行経路は、前記第3の位置の下流側の位置から前記引張装置まで、前記進行主平面に位置するものである工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1、第2、および、第3の曲がり部の少なくとも1つが、前記ガラスリボンの表面に応力を加えて、該ガラスリボンを平坦化するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスリボンの前記第1の位置での粘度は、該ガラスリボンの前記第3の位置での粘度と異なるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガラスリボンの前記第1の位置での前記粘度は、1×10ポアズ以下であり、該ガラスリボンの前記第3の位置での前記粘度は、1×10ポアズ以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第1の曲げ具との相互作用によって生じるものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の曲がり部は、更に、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンに作用する重力によって生じるものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の曲げ具は、前記進行主平面の上方に位置するベアリング面を含むものであり、前記ガラスリボンは、該進行主平面の上方の前記ベアリング面に接触し、該第1の曲げ具の直ぐ下流側の該進行主平面に向かって進行するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第2の曲げ具との相互作用によって生じるものである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の位置は、前記第1の曲げ具と前記第2の曲げ具の間である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の曲がり部は、更に、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンを前記第1の曲げ具と前記第2の曲げ具の間の前記進行主平面に向けるように該ガラスリボンに作用する重力によって生じるものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第3の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第3の曲げ具との相互作用によって生じるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ガラスリボンを供給する工程は、該ガラスリボンを、垂直方向に前記供給装置から前記上流側へ向ける工程を含むものである、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ガラスリボンを供給する工程は、更に、該ガラスリボンを、前記垂直方向から前記上流側へ向きを変える工程を含むものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ガラスリボン処理システムにおいて、
搬送装置を
含み、
前記搬送装置は、
上流側から前記上流側の反対側である下流側への進行主平面を確立する搬送部装置と、
前記下流側に位置し、ガラスリボンを進行経路に沿って搬送する引張装置と、
前記上流側に近接した第1の曲げ具と、
前記第1の曲げ具と前記下流側の間の第2の曲げ具であって、前記第2の曲げ具と前記進行主平面の間の垂直距離は、該第1の曲げ具と該進行主平面の間の垂直距離より長いものである第2の曲げ具と、
前記第2の曲げ具と前記下流側の間の第3の曲げ具であって、前記第3の曲げ具と前記進行主平面の間の垂直距離は、該第2の曲げ具と該進行主平面の間の垂直距離より長いものである第3の曲げ具と
を含むものであり、
前記第1、第2、および、第3の曲げ具は、前記進行経路を確立するものであり、該進行経路は、
前記上流側と前記引張装置の間の第1の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第1の曲がり部と、
前記第1の位置と前記引張装置の間の第2の位置で、前記進行主平面に対して凹状のカーブを画定する第2の曲がり部と、
前記第2の位置と前記引張装置の間の第3の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第3の曲がり部と
を含み、
更に、前記進行経路は、前記第3の位置の下流側の位置から前記引張装置まで、前記進行主平面に位置するものであるシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条の下、2017年10月30日出願の米国仮特許出願第62/578,816号の優先権の利益を主張し、その内容は依拠され、全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラスリボン処理システムおよび方法に関する。特に、移動するガラスリボンから薄いガラスシートを製造する処理の一部として、ガラスリボンを扱うシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラスシートの製造は、典型的には、溶融ガラス材料からガラスリボンを製造する工程と、次に、ガラスリボンを個々のガラスシートへと切断または分離する工程とを含む。ガラスリボンを製造する様々な技術が知られている。例えば、ダウンドロー処理(例えば、フュージョンドロー処理)を用いて、リボンを下方に、典型的には形成体から引き出す。他のガラス製作処理は、例えば、フロート法、アップドロー法、スロット法、および、フルコール法を含む。更に他の例において、ガラスリボンを、一時的にロール状で保存し、後で解いて、個々のガラスシートへと切断または分離する。
【0004】
多数のエンドユーザによる利用例での要求を満たすために、より薄いガラスシート(例えば、約1ミリメートル(mm)以下)を製造する取り組みが続けられてきた。そこからガラスシートを形成するガラスリボンの厚さが薄くなるほど、反り(または、平坦度偏差)、および、他の問題(より薄いガラスリボンを提供する処理工程中に生じうる表面破損など)を生じ易くなる。反りは、ガラスリボンの幅または長さ方向の1つ以上で生じうる。ガラス製造処理構成も、平坦度偏差を生じる要因となりうる。例えば、巻いた薄いガラス形成技術のいくつかでは、処理構成は、ガラスリボンを垂直向きから水平向きへ変える工程を含む。ここで向きを変える間、ガラスの粘度は、まだ十分に低いので、重力の影響を受け易く、いくつかの端効果により、顕著な横方向の変形を生じうる。縦方向には、引張力を加えて、張力を生じさせることでガラスリボンを安定させうる。その結果、次に圧縮部分が縁部に現れて、幅に亘って皺または反りを生じうる。ガラスリボンが平坦なほど、所定の最終的厚さにするために、研削および/または研磨などによって除去する必要がある材料の量が削減される。例えば、(約250mm×600mmのシートサイズについて)100マイクロメートル程度の平坦度が、いくつかの利用例で必要でありうる。
【0005】
参考として、ガラス形成処理中に、ガラスリボンは、最初に粘性状態で形成され、次に、粘弾性状態まで冷却され、最終的に、弾性状態まで冷却される。反りを最小にするために、ガラスリボンを、完全に粘性である領域の端部に近い位置でニップロールに通す処理が一般的に行われている。ニップロールは円筒状で、一定間隙で、または、一定の挟む力で設定されうる。典型的には、2つのニップロールの一方を駆動させ、他方はアイドル状態にして、望ましい力を加える。いずれの場合でも、ニップロールよってガラスリボンに加えられる機械的効果は、実質的に一方向であり(「スクイーズ」効果)、短い線または直線モードの接触を特徴とする。いくつかのエンドユーザによる利用例では、ニップロールのみによって加えられた直線状の接触では、望ましいレベルの平坦度を実現できない。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本明細書において、例えば、ガラスリボンの反りを削減するガラスリボン処理システムおよび方法を開示する。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態は、ガラスリボン処理方法に関する。ガラスリボンを、供給装置から搬送装置の上流側に供給する。搬送装置は、搬送部装置および引張装置を含む。引張装置は、上流側の反対側である搬送装置の下流側に位置する。搬送部装置は、上流側から下流側への進行主平面を確立する。引張力を、ガラスリボンに加えて、ガラスリボンを進行経路に沿って連続して搬送する。これについて、進行経路は、第1、第2、および、第3の曲がり部を含む。第1の曲がり部は、上流側と引張装置の間の第1の位置に形成される。第1の曲がり部は、進行主平面に対して凸状のカーブを画定する。第2の曲がり部は、第1の位置と引張装置の間の第2の位置に形成される。第2の曲がり部は、進行主平面に対して凹状のカーブを画定する。第3の曲がり部は、第2の位置と引張装置の間の第3の位置に形成される。第3の曲がり部は、進行主平面に対して凸状のカーブを画定する。第3の位置と進行主平面の間の垂直距離は、第1の位置と進行主平面の間の距離より長い。更に、進行経路は、第3の位置の下流側の位置から引張装置まで、進行主平面に位置する。第1、第2、および、第3の曲がり部の少なくとも1つが、ガラスリボンの表面に応力を加えて、ガラスリボンを平坦化する。いくつかの実施形態において、第3の曲がり部でのガラスリボンの粘度は、第1の曲がり部でのガラスリボンの粘度より高い。他の実施形態において、第1、第2、および、第3の曲がり部の少なくとも1つは、少なくとも部分的には、ガラスリボンと曲げ具の間での相互作用、および、重力によって生じる。
【0008】
本開示の更に他の実施形態は、ガラスリボン処理システムに関する。システムは、搬送装置を含む。搬送装置は、搬送部装置、引張装置、第1の曲げ具、第2の曲げ具、および、第3の曲げ具を含む。搬送部装置は、上流側から上流側の反対側である下流側への進行主平面を確立する。引張装置は、下流側に位置し、ガラスリボンを進行経路に沿って搬送する。第1の曲げ具は、上流側に近接する。第2の曲げ具は、第1の曲げ具と下流側の間に位置する。第2の曲げ具と進行主平面の間の垂直距離は、第1の曲げ具と進行主平面の間の垂直距離より長い。第3の曲げ具は、第2の曲げ具と下流側の間に位置する。第3の曲げ具と進行主平面の間の垂直距離は、第2の曲げ具と進行主平面の間の垂直距離より長い。第1、第2、および、第3の曲げ具は、少なくとも部分的には、第1、第2、および、第3の曲がり部を含む進行経路を確立する。第1の曲がり部は、上流側と引張装置の間の第1の位置で形成される。第1の曲がり部は、進行主平面に対して凸状のカーブを画定する。第2の曲がり部は、第1の位置と引張装置の間の第2の位置で形成される。第2の曲がり部は、進行主平面に対して凹状のカーブを画定する。第3の曲がり部は、第2の位置と引張装置の間の第3の位置で形成される。第3の曲がり部は、進行主平面に対して凸状のカーブを画定する。更に、進行経路は、第3の位置の下流側の位置から引張装置まで、進行主平面に位置する。いくつかの実施形態において、第1、第2、および、第3の曲げ具は、ガラスリボンと線接触を確立するように構成される。
【0009】
本開示の更に他の実施形態は、ガラスリボンを処理する曲げ具アセンブリに関する。曲げ具アセンブリは、上流側曲げ具と、下流側曲げ具と、上流側支持部と、下流側支持部と、基部とを含む。上流側支持部は、上流側曲げ具の反対を向いた端部を支持する。下流側支持部は、下流側曲げ具の反対を向いた端部を支持する。基部は、プレート、プレートの反対を向いた端部から突出する第1の側脚部および第2の側脚部、第1の側脚部に接続した第1のクロスビーム、並びに、第2の側脚部に接続した第2のクロスビームを含む。第1および第2のクロスビームが、上流側および下流側支持部を、プレートに対して支持する。更に、曲げ具アセンブリは、上流側および下流側曲げ具の少なくとも1つの反対を向いた端部の少なくとも1つは、プレートに対して選択的に移動自在であるように構成される。
【0010】
更なる特徴および利点を、次の詳細な記載に示し、それは、部分的には、当業者には、その記載から容易に明らかであるか、または、詳細な記載、請求項、および、添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態を行うことで分かるだろう。
【0011】
ここまでの概略的記載と、次の詳細な記載の両方が、様々な実施形態を記載したものであり、請求した主題の本質および特徴を理解するための概観および枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、様々な実施形態の更なる理解のために含められ、本明細書に組み込まれ、一部を構成する。図面は、本明細書に記載の様々な実施形態を示し、記載と共に、請求した主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の原理によるガラスリボン処理システムを簡略に示す側面図である。
図2】進行するガラスリボンに曲がり部を与える処理を概略的に示している。
図3】典型的なガラス粘性曲線のグラフであり、平坦化領域を示している。
図4】本開示の原理による曲げ具アセンブリの斜視図であり、本開示のガラスリボン床上搬送部を用いた場合に有用である。
図5図4の曲げ具アセンブリの一部を拡大して示す斜視側面図である。
図6A図4の曲げ具アセンブリの側面図である。
図6B】曲げ具アセンブリの他の側面図であり、図6Aの位置とは異なる位置の上流側および下流側曲げ具を示している。
図7】本開示のガラスリボン処理の原理による他の床上搬送部を簡略に示す側面図であり、図4の曲げ具アセンブリを含んでいる。
図8】実施例のセクションの比較例ガラスシートの反り測定値のグラフである。
図9】実施例のセクションの実施例ガラスシートの反り測定値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、ガラスリボン処理システムおよび方法、特に、ガラスリボン、例えば、連続したガラスリボンから反りを除去するか、または、その平坦度を改良するシステムおよび方法の様々な実施形態を詳細に記載する。全図を通して、同じ、または、類似の部分を称するには、可能な限り同じ参照番号を用いている。
【0014】
本開示のいくつかの態様は、ガラスリボンを扱うシステムおよび方法を提供し、それは、連続して搬送されるか、または、進行するガラスリボンが、進行経路に沿った位置で一時的曲がり部の作用を受けて、最終的平坦度を改良するものである。与える曲がり部の程度または曲率、並びに、曲がり部の実現に用いる機構(または、曲げ具)を、下記のようにガラスリボンの予想される粘度に基づいて選択し、ガラスリボンのプロファイルを幅に亘ってまっすぐにする傾向のある応力域を生成しうる。これを基に、図1に、本開示の原理に基づくシステム20の一実施形態を概略的に示しており、それは、ガラスリボン22の形成および処理で有用なものである。本明細書において、システム20をガラスリボン処理に用いるものとして記載しているが、本開示のシステムおよび方法は、ポリマー(例えば、plexi‐glass(商標))、金属、または、他の基板材料など、他の種類の材料の処理にも用いうると理解すべきである。
【0015】
システム20は、ガラスリボン供給装置30、および、搬送装置32を含む。より詳細に以下に記載するように、ガラスリボン供給装置30は、ガラスリボン22を生成して搬送装置32の上流側40に送出するのに適した広範囲の様々な形態を想定しうる。搬送装置32は、ガラスリボン22を、上流側40から下流側42へ進行させる。これについて、ガラスリボン22は冷却されて、したがって、上流側40から下流側42へと粘度が上昇する。更に、搬送装置32は、ガラスリボン22が下流側42に進む時に、ガラスリボン22から反り(平坦度偏差)を削減または除去するように構成される。
【0016】
いくつかの限定するものではない実施形態において、ガラスリボン供給装置30は、溶融ガラス50が形成体52へと送られる溶融処理を組み入れたものである。形成体52は、その上面に配置された開口溝54、および、形成体52の底部または根元部58で収束する1対の収束形成面56を含む。溶融ガラス50は、開口溝54に流れ込み、その壁部を越えて流れ、それにより、2つの個々の溶融ガラス流へと分かれて、収束形成面56の上を流れる。分かれた溶融ガラス流が根元部58に到達すると、再結合または融合して、根元部58から下降する粘性溶融ガラスの単一のリボン(つまり、ガラスリボン22)を形成する。様々なローラ60が、粘性ガラスリボン22に、リボンの縁部に沿って接触し、リボン22を最初に下方向62(垂直方向など)に引き出すのを助ける。本開示は、片側オーバーフロー処理、または、スロットドロー処理など、他の種類のダウンドローガラス製作処理にも等しく用いうるもので、それらの基本的処理は当業者に知られている。
【0017】
いくつかの実施形態において、ガラスリボン供給装置30は、更に、ガラスリボン22を第1の方向62から第2の方向66へと再び方向付けて搬送装置32に送るようにする再方向付け装置64を含みうる。図1では、再方向付け装置64を、ローラ68によって表している。いくつかの実施形態において、ガラスリボン22は、再方向付け装置64によって90度の角度で向きを変えられて、第2の方向66は、水平になる。いくつかの実施形態において、再方向付け装置64は、ガラスリボン22に物理的に接触しないか(例えば、空気ベアリング)、または、ローラを用いた場合など、接触が必要な場合には、接触をガラスリボン22の縁部分に限定しうる。
【0018】
上記のような90度向きを変える処理を含むか、または、含まないか、溶融処理を含むか、または、含まないなど、他のガラスリボン形成技術も用いうる。いずれの場合でも、溶融粘性ガラスリボン22は、連続して搬送装置32の上流側40に供給される。
【0019】
搬送装置32は、搬送部装置70(総称)、引張装置72、および、曲げ具74、76、78などの1つ以上の曲げ具を含む。概説すると、搬送部装置70は、上流側40から下流側42への進行主平面Pを確立する。引張装置72は、下流側42に、または、下流側42に直ぐ近接して位置し、引張力をガラスリボン22に加えて、ガラスリボン22を、下記のように少なくとも部分的に曲げ具74、76、78によって画定された進行経路に沿って連続して搬送する。
【0020】
搬送部装置70は、ガラスリボン22を支持するのに適した様々な形態を想定しうるもので、ローラ80などの移送装置を含みうる。ローラ80は、ガラスリボンと相互作用(例えば、接触)するのに適した任意の方式を有しうる。例えば、各ローラ80は、ガラスリボン22の選択された物性に明らかな悪影響を与えないように、ガラスリボン22に直に接触するのに適した材料、剛性、表面被膜などを含むか、示しうる。ローラ80のいくつか、または、全てが、当業者に知られた種類の被駆動ローラでありうる。ベルトコンベア、非接触搬送部(例えば、空気ベアリング)など、他の搬送方式も用いうる。図1では、下流側42に直ぐ隣接したいくつかのローラ80だけを反映して示しているが、他の実施形態において、1つ以上の移送装置(例えば、ローラ)を、上流側40に隣接して、または、上流側40と下流側42の間に含みうる。いずれの場合でも、ローラ80(または、他の搬送装置配列)は、まとまって、進行主平面Pを、搬送部装置70がガラスリボン22と接触するか、他の形態でガラスリボン22と直接相互作用する垂直方向について最も低い位置として確立する。いくつかの限定するものではない実施形態において、搬送部装置70は、ガラス製造施設の床に設置されるように構成され、したがって、ローラ80(または、他の移送装置)を支持する従来から知られた枠部(不図示)を含みうる。
【0021】
引張装置72は、ガラスリボン22を駆動または引っ張るのに適した様々な形態を想定しうるもので、いくつかの実施形態において、第1および第2のローラ90、92を含む従来のニップロール装置を含みうる。ローラ90、92の一方または両方は、従来から知られた被駆動ローラでありうる。これらの構成および同様の構成を用いた場合、引張装置72は、更に、ガラスリボン22の搬送装置32に沿った速度または進行速度を制御するようにプログラムされた制御部(不図示)、例えば、コンピュータのような装置、プログラマブルロジックコントローラなどを含みうる。他の引張装置の構成も用いうる。
【0022】
上記搬送部装置70および引張装置72の概略的パラメータを基に、曲げ具74、76、78は、様々な形態を想定しうるものであり、進行主平面P、上流側40、および、下流側42に対して様々な位置に配置されて、下記のようにガラスリボン22と相互作用しうる。更に概説すると、搬送装置32に含まれた曲げ具74、76、78の配列および構成は、ガラスリボン22との直の接触を最小にしつつ、ガラスリボン22が一連の一時的曲がり部の作用を受けて、ガラスリボン22の反り部を削減する働きをするように選択される。曲げ工程に関わる力は、引張装置72で生成された引張力によって提供される。参考として、進行するガラスリボン22の曲げ処理を、概して図2に反映して示したように、上向きの力Uと下向きの力Dの組合せとしてみることができる。上向きの力U要素を、ガラスリボン22を進行主平面Pより高い位置へと駆動する物理的手段によって提供しうる。この物理的手段は、空気ベアリングを有するか、または、有さない(静止、または、回転した)固体表面であり、摩擦、回転、または、非接触でありうる相互作用を生じうる。下向きの力D要素は、ガラスリボン22の粘度が十分に低い場合に重力によって提供されうるか、または、ガラスリボン22を低い位置に押しやる機械的手段を用いて提供されうる。いずれの場合でも、(ニップロールにより別の態様で生じた線形の力とは対照的に)曲げ処理は、ガラスリボンのプロファイルを幅に亘ってまっすぐにするか平坦化する傾向のある表面応力域を生成する。
【0023】
図1に戻り、上記のように、搬送装置32は、平坦度を改良する一連の曲がり部の各々が、ガラスリボン22の予想粘度の関数として、進行経路に沿った位置で生成されるように構成される。これについて、ガラスリボン22は、上流側40から下流側42へ進行する間に冷却されて、したがって、ガラスリボン22の粘度は、上流側40から下流側42へ徐々に上昇する。更に適切な粘度で曲率を変化させて、最初の形状を非常に改良しうる。粘度が低すぎる場合に曲率を変化させると、ガラスリボン22の厚さを望ましくない態様で変化させうる局所剪断を生じうる。粘度が高すぎる場合に曲率を変化させると、連続した曲げ処理の間にガラスリボン22内で生じた応力は、完全に平坦化させるか反りを除去するのに不十分でありうる。搬送装置32の構成は、これらの制限要因にも基づいて、重力を利用できる場合は重力も曲げ力の要素として用いる。参考として、図3は、例示的な粘度曲線(温度の関数として)を示している。粘度曲線に沿って、本開示の原理により重力による曲げ処理が利点を有する領域94が特定され、更に、本開示の原理による力を加えた曲げ処理(例えば、少なくとも部分的には、ガラスリボンに対して、構造物との相互作用によって加えられた力によって生じた、または、加えられた曲げ処理)領域95も特定される。領域96において、ニップローラによる平坦化が適しうる。意外なことに、(ガラスリボンの厚さが1mm程度で、速度が10~12m/分の場合に)ガラスリボン22が約10~10ポアズの範囲の粘性を有する領域で、重力により生じる曲げ処理が利用でき、ガラスリボン22が約10~10ポアズの範囲の粘度を有する領域では、力を加えた曲げ処理が適することを見い出した。いくつかの実施形態において、他の粘度/曲げ技術の関係も用いうる。
【0024】
図1に戻り、上記概略的背景を基に、搬送装置32は、ガラスリボン22の進行経路に沿って、第1の曲がり部100、第2の曲がり部102、および、第3の曲がり部104など、1つ以上の曲がり部(例えば、進行主平面Pに対する方向変化)を生成するように構成される。曲がり部100~104の1つ以上(全ての場合を含む)は、ガラスリボン22において表面応力を生じて、ガラスリボン22の反りを除去しうる。曲がり部100~104は、重力および引張装置72によって加えられた引張力と共に、ガラスリボン22と曲げ具74、76、78の1つ以上との相互作用によって生成される。
【0025】
曲げ具74、76、78と曲がり部100~104の互いの位置の更なる理解のために、図1に、直交する垂直方向Vおよび水平方向Hを示している。垂直方向Vは、進行主平面Pに垂直で、水平方向Hは、進行主平面Pに平行でありうる。以下の記載で、「垂直の」、および、「垂直に」は、垂直方向Vに関するものであり、「水平の」、「水平に」、「上流側」、および、「下流側」は、水平方向Hに関するものである。更に、図1で、反対側を向いたガラスリボン22の第1の主面110および第2の主面112が確認できる。
【0026】
搬送装置32に対するガラスリボン22の進行経路は、上流側40で、進行主平面P内であるか、進行主平面Pに非常に近接した上流側位置120で始まる。第1の曲げ具74は上流側位置120に近接するが、上流側位置120の下流側に位置して、進行主平面Pの垂直方向に上方に(かつ、上流側位置120の垂直方向に上方に)位置するベアリング面122(物理面、空気ベアリングなどを総称)を提供する。更に、第1の曲げ具74の上流側40に対する位置は、ガラスリボン22の予想粘度と相関する。第1の曲げ具74は、ガラスリボン22の粘度が重力による曲げを伝える位置で、ガラスリボン22の第1の主面110と相互作用するように配置される。この配列で、ガラスリボン22が、上流側位置120からベアリング面122へ、次に、ベアリング面122の向こうに(下流側に)進む時に、第1の曲げ具74および重力が、第1の曲がり部100をガラスリボン22に与える。ガラスリボン22を、第1の曲がり部100の両側に、第1のセグメント124および第2のセグメント126を有するものとして考えることができる。相互作用領域122は、上流側位置120の垂直方向に上方に位置するので、第1のセグメント124は、進行主平面Pから垂直方向に離れて、上流側位置120からベアリング面122へと進む。ガラスリボン22がベアリング面122の向こうへ進行すると、重力が、第2のセグメント126を、垂直方向に第1の曲がり部100から進行主平面Pに向かって進ませる。第1の曲がり部100は、第1のセグメント124と第2のセグメント126の間のガラスリボンにおける湾曲であり、頂点127を有する(つまり、頂点は、第1の曲がり部100のカーブの傾きがゼロの位置である)。第1の曲がり部100によって提供されるカーブは、進行主平面Pに対して凸状である。
【0027】
第2の曲がり部102は、第1の曲がり部100の下流側に形成され、重力、および、少なくとも第2の曲げ具76の位置によって生成される。特に、第2の曲げ具76は、第1の曲げ具74の相互作用領域122の垂直方向に上方に、かつ、水平方向に下流側に配置される。更に、第2の曲げ具76の位置は、ガラスリボン22の予想粘度と相関する。第2の曲げ具76は、ガラスリボン22の粘度が(第1の曲げ具74との接点での粘度と比べて)上昇して、重力だけではガラスリボン22が実質的に曲がりにくい位置で、ガラスリボン22の第1の主面110と相互作用するように配置される。換言すれば、第2の曲げ具76との接点で、ガラスリボン22の粘度は十分高く、したがって、ガラスリボン22は、第2の曲げ具76の周りで、上記ガラスリボン22と第1の曲げ具74の相互作用と同様には単に曲がらない。しかしながら、第1の曲げ具74と第2の曲げ具76の間の距離(垂直方向と水平方向の両方)と、ガラスリボン22の予想粘度との組合せで、第2の曲がり部102がガラスリボン22(第2の曲げ具76の上流側)に重力により形成される。換言すれば、第2の曲げ具76の位置、および、ガラスリボン22の予想粘度により、ガラスリボン22は、第2の曲がり部102の両側に、上記のような(つまり、垂直方向に進行主平面Pに向かう)第2のセグメント126、および、第3のセグメント128を画定する。第2の曲がり部102から第2の曲げ具76に進行する時に、第2の曲げ具76は、第3のセグメント128が進行主平面Pから垂直方向に離れるように進むようにさせる。第2の曲がり部102は、第2のセグメント126と第3のセグメント128の間のガラスリボン22の湾曲を表し、頂点129を有する。第2の曲がり部102によって確立されたカーブは、進行主平面Pに対して凹状である。ガラスリボン22の粘度が高すぎるか、および/または、第2の曲げ具76が第1の曲げ具74により近く配置された場合、重力のみでは、第2の曲がり部102を形成するのに十分でないことがありうる。これらの説明を基に、次に、ガラスリボン22が第3の曲げ具78に向かって進む時にガラスリボン22を進行経路に沿って支持するように、第2の曲げ具76を構成し配置する。
【0028】
第3の曲がり部104は、第2の曲がり部102の下流側に形成されて、第3の曲げ具78および重力によって生成される。特に、第3の曲げ具78は、第2の曲げ具76の垂直方向に上方に、かつ、水平方向に第2の曲げ具76の下流側に配置される。更に、第3の曲げ具78の位置は、ガラスリボン22の予想粘度に相関する。第3の曲げ具78は、ガラスリボン22の粘度が(第1の曲げ具74との接点でのガラスリボン22の粘度と比べて)上昇して、力を加えた曲げに適切なレベルになり、重力だけではガラスリボン22が実質的に曲がりにくい位置で、ガラスリボン22の第2の主面112と相互作用するように配置される。換言すれば、ガラスリボン22の粘度は十分に高く、ガラスリボン22は、表面(第3の曲げ具78など)に接触しても局所剪断を生じないが、接触に応じて容易に変形するには十分に低い。第3の曲げ具78の位置は、第3の曲げ具78との接点でのガラスリボン22の予想粘度と相関し、ガラスリボン22は、第3の曲がり部104の両側に、上記第3のセグメント128(つまり、進行主平面Pから垂直方向に離れるように進む)、および、第4のセグメント130を含む。第4のセグメント130は、第3の曲がり部104から進行主平面Pに向かって垂直方向に進む。第3の曲がり部104は、第3のセグメント128と第4のセグメント130の間のガラスリボンの湾曲を表し、頂点131を有する。第3の曲がり部104を確立するカーブは、進行主平面Pに対して凸状である。参考として、第3の曲げ具78がないと、重力が、ガラスリボン22を結果的に第3のセグメント128の方向から逸らして、ガラスリボン22が第2の曲げ具76から離れるように進む時に、徐々に進行主平面Pに向かって湾曲する。第3の曲げ具78を、この自然な重力により生じた経路に加えて、ガラスリボン22が、上記表面応力を生成するのに適する、よりはっきりとしたカーブとなるようにする(例えば、ガラスリボン22の反りを除去するのに十分)。したがって、図1に反映して示されているように、第3の曲がり部104は、第3の曲がり部104の頂点131が第3の曲げ具78の僅かに上流側となるように、ガラスリボン22に形成される。つまり、ガラスリボン22は、はっきりとしたカーブを、第3の曲げ具78の位置でも、その周りでも形成しない。そうではなく、第3の曲げ具78は、進行経路に偏向を与えるように構成され、(第2の曲げ具76に対して)配置され、第3の曲げ具78との接点での重力およびガラスリボン22の粘度との組合せで、反りを除去するのに適した第3の曲がり部104を生成する。いずれの場合でも、進行主平面Pと第3の曲がり部104の間の垂直距離は、進行主平面Pと第1の曲がり部100の間の垂直距離より長い。
【0029】
ガラスリボン22の進行経路は、第3の曲がり部104の頂点131から進行主平面Pに向かって続く。下流側端部42に隣接して、第1の主面110は、ローラ80によって、(例えば、接触して)支持される。ガラスリボン22は、ローラ80に沿って、更に、引張装置72で、進行主平面Pに位置しうる。いくつかの実施形態において、ローラ80の位置は、ローラ80との接点での、ガラスリボン22の予想粘度と相関し、それは、例えば、ガラスリボン22の粘度が、ローラ表面と破損せずに直に接触するのに適したレベルまで上昇した位置である。
【0030】
搬送装置32を、3つの曲げ具74、76、78を含み、3つの曲がり部100、102、104を含む進行経路が画定するものとして記載したが、それより少数か多数の任意の他の数の曲げ具を用いうる。例えば、(例えば、上記第2の曲げ具76と類似の)更なる曲げ具を備えて、ガラスリボン22を、望ましい進行経路に沿って支持しうる。いずれの場合でも、本開示の搬送装置は、ガラスリボン22の進行経路で、少なくとも1つのカーブまたは曲がり部を、ガラスリボン22から反りを除去するのに十分な表面応力を生成するのに適した曲がり部の位置で形成するように構成される。粘性膜(例えば、粘性ガラスリボン)の場合、曲げ処理により生じた応力は、部分的には、ガラスリボン22を肉眼で分かるように変形し、更に、局所的に平坦化するのに用いられる。これらの応力は、短期間で緩和し、局所変形を不変にさせる。ガラスリボン22は、曲がり部100、102、104の少なくとも1つ以上に沿って、この平坦化を生じる。上流側40から下流側42へのガラスリボン22の進行経路を、(進行主平面Pに対して)凸状の第1の曲がり部100で始まるように記載したが、他の実施形態において、上流側からの進行経路は、第1の曲がり部100の上流側に1つ以上の他の曲がり部(例えば、凸状の第1の曲がり部100の上流側の1つ以上の(進行主平面Pに対して)凹状の曲がり部)を含みうる。
【0031】
本開示の搬送装置と共に用いた曲げ具74、76、78などの曲げ具は、上記のような反りを削減する曲がり部を機械的に生成するように、ガラスリボン22が進行経路に沿って搬送される時にガラスリボン22と相互作用するのに適した様々な形態を想定しうる。更に概説すると、曲げ具は、熱の影響を最小にするか、または、なくすようにした状態で、ガラスリボン22と線状の接触または相互作用を確立するように構成される(つまり、曲げ具は、ガラスリボン22に「熱による傷」を生じない)。いくつかの実施形態において、1つ以上の曲げ具74、76、78など、本開示の床上搬送部を備えた曲げ具の1つ以上または全ては、静止体(例えば、静止しているか、または、回転しないロッド)でありうる。本開示の床上搬送部および方法を用いて有用である静止曲げ具は、熱伝導率の高い材料を含み、ガラスリボン22での熱勾配による変形を防ぎうる。いくつかの実施形態において、静止型曲げ具は、低摩擦係数材料(または、ガラスリボンとの間で低摩擦相互作用を有するように構成された他の材料)を、少なくとも進行するガラスリボンと相互作用することを意図した表面で組み込んで、引き摺られたり、くっ付いたりする恐れを最小にしうる。例えば、静止型曲げ具は、炭化ケイ素、グラファイトなどを、少なくともガラスリボン22と相互作用することを意図した表面で含みうる。更に他の実施形態において、静止型曲げ具は、進行するガラスリボン22と相互作用する空気ベアリングを含みうる(例えば、第1の曲げ具74は、空気ベアリング構成を有しうる)。空気ベアリング構成を、適度の力がガラスリボン22に望ましい曲がり部またはカーブを生成するのに適した位置で、曲げ具として用いうる。
【0032】
いくつかの実施形態において、1つ以上の曲げ具74、76、78など、本開示の搬送装置を備えた1つ以上または全ての曲げ具は、軸によって回転自在に支持されたローラなど、回転型構成を有しうる。いくつかの実施形態において、回転型曲げ具は、熱伝導率がより低い設計を組み込んで、上記のような熱勾配による変形の削減を促進しうる。例えば、回転型曲げ具は、アルミナ材料を、少なくとも進行するガラスリボン22と相互作用することを意図した表面で含みうる。適したアルミナ体(管、ロッドなど)を容易に利用可能で、高温で扱いうる。回転型曲げ具を用いた場合に有用である材料の他の限定するものではない例は、高強度セラミック(例えば、炭化ケイ素)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示の搬送装置を備えた1つ以上または全ての曲げ具は、熱伝導率の高い材料の周りで循環を生じさせることによって、起こりうる熱伝達の問題を解決するように構成される。これらの任意の構成は、熱勾配を緩やかにして、残留応力(面内要素)のレベルを低下させるのを助けうる。例えば、曲げ具を、ガラスリボン22が高熱浸透率の物の上を進行して、湾曲向きが逆になるように構成しうる。関連する実施形態において、1つ以上または全ての曲げ具を、ガラスリボン22の両方の主面110、112から熱伝達するように構成して、全体的効果を高めうる。
【0034】
いくつかの実施形態において、1つ以上または全ての曲げ具74、76、78など、本開示の搬送装置を備えた1つ以上または全ての曲げ具は、自動位置合わせ機構を組み込みうる。参考として、曲げ具を、ガラスリボン22の主進行方向と一致するように適切に位置合わせすることは、面外変形を次に生じさせうる圧縮/引張力がガラスリボン22に生じるのを防ぐのに利点がありうる。自動位置合わせ機構は、主進行方向との位置合わせを維持するのに適した様々な形態を想定しうる。例えば、ガラスリボン22の平面に垂直である上流側回転軸を提供する装置は、曲げ具に連結されうる。この構成を用いて、(引張装置72によって加えられた)下流側の引張力は、アセンブリを位置合わせするモーメントを生成する(例えば、風向計に類似する)。
【0035】
いくつかの実施形態において、1つ以上または全ての曲げ具74、76、78など、本開示の搬送装置を備えた1つ以上または全ての曲げ具は、搬送部システム70に対して、特に、進行主平面Pに対して(垂直方向および/または水平方向に調節自在に)位置調節可能となるように構成されうる。参考として、ガラスリボン22を高粘度で曲げ処理する場合、進行経路に沿った2つの連続した曲げ具の相対位置を、厳しい許容誤差内に(例えば、100mmの距離に亘って100マイクロメートル以内に)制御する必要がありうる。いくつかの実施形態において、2つの連続した曲げ具の間隔は、(ガラスリボン進行経路に沿って)約50mmより長い。距離が短くなると、連続した曲げ具の間での小さい位置合わせ不良が、重大な面外応力および/または不安定性を生じうる。更に、連続した曲げ具の間でガラスリボンが平行であることは、一定の曲率半径をガラスリボン22の幅に亘って生成するのに利点を有しうる。これに基づいて、曲げ具を、搬送部装置70に対して、枠部(不図示)、若しくは、垂直および/または水平方向の調節を可能とする他の構造物によって支持しうる。関連する実施形態において、(例えば、空気圧、機械的、電子などの)適切な作動部を、作動部の動作を制御部(例えば、PLC)によって制御した状態で、曲げ具に連結または接続しうる。これらの実施形態および他の実施形態を用いて、ガラスリボン製造動作前または動作中に、1つ以上の曲げ具の位置を自動調節しうる。例えば、システム20を最初に開始(例えば、加熱、および、ガラスリボンの導入または通すこと)中の条件は、そうではなく通常の製造中には望まれる曲げ具の位置と適合しなくてもよい。これらの状況および他の状況で、1つ以上の曲げ具を自動再配置しうる。同様に、異なるガラスリボン物性、および/または、製造要件は、異なる曲げ具位置を提供しうる。1つ以上の曲げ具を、(例えば、オペレータが入力した製造制限要因に応じて)自動再配置しうる。
【0036】
本開示の原理に基づき、床上搬送部32(図1)など、本開示の床上搬送部を用いて有用である例示的な曲げ具アセンブリ150を、図4に示す。曲げ具アセンブリ150は、上流側曲げ具160、下流側曲げ具162、上流側支持部164(総称)、下流側支持部166(総称)、および、基部168を含む。様々な構成要素の詳細を以下に示す。概して、曲げ具アセンブリ150は、上記搬送部装置70(図1)などの搬送部装置に対して載置されて、曲げ具160、162を、引張装置72(図1)などの引張装置の上流側に配置しうる。曲げ具160、162は、反りを削減するか、または、平坦度を改良するように、連続して搬送されるガラスリボン(不図示)と相互作用するように構成および配置される。上流側支持部164は、上流側曲げ具160を基部168に対して保持し、更に、いくつかの実施形態において、上流側曲げ具160を、搬送部装置に対して、特に搬送部装置の進行主平面(上記進行主平面P(図1)など)に対して、選択的に配置するのを可能にする。いくつかの実施形態において、下流側支持部164は、同様に、下流側曲げ具162を保持する。
【0037】
曲げ具160、162は、各々、本開示を通して記載した任意の形態を想定しうるものであり、いくつかの実施形態において、(上流側曲げ具160について確認できる)円筒状ロッド180であるか、または、それを含む。曲げ具160、162の一方または両方は、(下記のように対応する上流側支持部164および下流側支持部166に載置された時に)ロッド180をその中心軸を中心に回転させる回転特徴物(例えば、図4で、その1つを確認できるベアリング182)を組み込んだローラを含みうる。任意で、曲げ具160、162の一方または両方は、更に、ロッド180に載置されて対応する回転特徴物の1つ(例えば、ベアリング182の1つ)をガラスリボン(不図示)から放射される熱から保護するように構成された(図4で、その1つを確認できる)熱遮蔽部184を含みうる。曲げ具160、162の一方または両方は、他の構成を有しうるもので、それは、図4に示しうるか、または、示されず、更に、ローラ型方式を有しうるか、または、有さないものである。
【0038】
上流側支持部164は、対向する第1および第2の上流側支持体190、192を含む。いくつかの実施形態において、上流側支持体190、192は同一でありうるもので、各々、概して、上流側曲げ具160の端部領域(例えば、上流側曲げ具160の円筒状ロッド180)を支持して、上流側曲げ具160の基部168に対する空間位置を確立するように構成されうる。図5は、第1の上流側支持体190の一部をより詳細に示している。上流側支持体190は、ツール受付けスロット194およびガイドスロット196を形成または画定する。ツール受付けスロット194のサイズおよび形状は、上流側曲げ具160の特徴物と対応し、上流側曲げ具160を上流側支持体190に選択的に組立て、または、載置するのを可能にする。例えば、ツール受付けスロット194のサイズおよび形状は、ロッド180によって担持されたベアリング182のサイズおよび形状に対応し、したがって、ベアリング182は、図5の載置状態でスロット194内に収容される。更に、上流側曲げ具160は、環部200、並びに、バネ202または環部200を支持体190に付勢する同様の構成要素など、ベアリング182を支持体190に対して載置した状態で選択的に保持または固定する1つ以上の更なる構成要素を含みうる。この構成を用いて、上流側曲げ具160を、選択的に第1の上流側支持体190に(第2の上流側支持体192(図4)にも)固定したり、取り外したりしうる。他の載置構成も用いうるもので、上流側曲げ具160を上流側支持部164(図4)に取外し自在に組立てても、そうでなくてもよい。
【0039】
いくつかの任意の実施形態において、ガイドスロット196を含み、それは、概して、第1の上流側支持体190と基部168を移動自在に接続するのを容易にするように構成される。例えば、いくつかの実施形態において、ガイドスロット196は、基部168に含まれた固定部210を摺動自在に受け付けるようなサイズおよび形状を有する。この任意の構成を用いて、固定部210を緩めて、支持体190(したがって、それによって担持された上流側曲げ具160)を基部168に対して上下させるのを可能にし、支持体190が望ましい垂直位置になると、次に、固定部210を締めて支持体190を基部168に対して固定しうる。これについて、より詳細に以下に記載するように、支持体190は、基部168に含まれた目盛りまたは他の印に対して、支持体190の垂直位置を相関させるか特定する役割を果たすインジケータ212(例えば、溝)を形成するか担持しうる。第1の上流側支持体190(および、基部168)は、ガイドスロット196を含んでも、含まなくてよい他の載置構成を組み込みうる。
【0040】
図4に戻り、下流側支持部166は、上記上流側支持部164と、同一など、同様に構成され、例えば、対向する第1および第2の下流側支持体220、222を含みうる。いくつかの実施形態において、下流側支持体220、222は、より不変的に下流側曲げ具162が接続または組み立てられるように構成される。例えば、いくつかの実施形態において、下流側曲げ具162は、下流側支持部166から、容易に取り外せないものでありうる。
【0041】
基部168は、プレート230、対向する第1および第2の側脚部232、234、並びに、枠部236(総称)を含みうる。側脚部232、234は、サイズおよび形状が同一でありうるもので、プレート230の反対を向いた端部に取り付けられて、そこから突出する。枠部236は、対向する第1および第2のクロスビーム240、242を含み、更に、任意の対向する第1および第2のアーム部244、246を含む。クロスビーム240、242は、対応する1つの側脚部232、234、並びに、上流側支持部164および下流側支持部166に含まれた対応する1つの支持体190、192、または、220、222に移動自在に接続される。アーム部244、246は、クロスビーム240、242の間に延伸して、それら同士を接続する。この構成を用いて、プレート230は、曲げ具アセンブリ150を床上搬送部に対して設置するのに丈夫な構造を提供し、プレート230および脚部232、234を静止させて保持する。各クロスビーム240、242は、対応する脚部232、234に対して選択的に移動されて、対応する上流側および下流側支持部164、166の端部(したがって、それによって担持される対応する上流側および下流側曲げ具160、162の端部)をプレート230に対して、まとめて上下させるのを可能にする。更に、上流側および下流側曲げ具160、162の各々の端部をプレート230に対して、個々に、対応する支持体190、192、220、222の対応するクロスビーム240、242に対する移動を介して、上下させうる。
【0042】
支持部164、166と基部168の相互接続を、更に図6Aに示す。第1の上流側支持体190は、(別に、ガイドスロット196内に摺動自在に受け付けられる)固定部210によって、第1のクロスビーム240に選択的に連結されて、第1の上流側支持体190(したがって、それによって担持される上流側曲げ具160の端部)を第1のクロスビーム240に対して上下させうる。上流側目盛りまたは測定具250を、第1の上流側支持体190に近接した第1のクロスビーム240に取り付け、それは、増分表示(例えば、数値、ハッシュマークなど)を含む。第1の上流側支持体190のインジケータ212と、目盛り250に含まれた表示との関係は、第1のクロスビーム240および/またはプレート230に対する、第1の上流側支持体190によって担持された上流側曲げ具160の端部の垂直位置を示しうる。例えば、図6Bの配列において、第1の上流側支持体190は、(図6Aの位置と比べて)第1のクロスビーム240に対して垂直方向に上げられている。この位置変化は、インジケータ212および目盛り250によって、ユーザに視覚的に示されうる。図6Aの位置において、インジケータ212は、目盛り250に沿った第1の表示と位置合わせされ(つまり、「30」)、一方、図6Bの位置では、インジケータ212は、目盛り250に沿った他の表示と位置合わせされる(つまり、「30」と「40」の間の表示、約「38」)。その代わりに、他のスカラー型特定方法を用いうる。
【0043】
図5および6Aを参照すると、第1の下流側支持体220は、同様にガイドスロット252を画定し、ガイドスロット252内に摺動自在に受け付けられる固定部254によって、選択的に第1のクロスビーム240に連結されうる。したがって、第1の下流側支持体220(および、それによって担持された下流側曲げ具162の端部)を、第1のクロスビーム240に対して、上下させうる。下流側目盛りまたは測定具256を、第1の下流側支持体220に近接した第1のクロスビーム240に取り付けうる。第1の下流側支持体220上に形成されるか担持されたインジケータ258と下流側目盛り256に含まれた測定に関する情報の関係は、第1のクロスビーム240および/またはプレート230に対する、第1の下流側支持体220によって担持された下流側曲げ具162の端部の垂直位置を示しうる。例えば、図6A図6Bを比べると、図6Bの配列において、第1の下流側支持体220は、第1のクロスビーム240に対して(図6Aの位置と比べて)垂直方向に下げられていることが分かる。この位置変化を、ユーザに対して、インジケータ258および下流側目盛り256によって示しうる。図6Aの位置で、インジケータ258は、下流側目盛り256に沿って第1の表示に位置合わせされる(つまり、「10」と「20」の間、約「13」)、一方、図6Bの位置では、インジケータ258は、下流側目盛り256に沿った他の表示と位置合わせされる(つまり、「10」より下の約「8」)。
【0044】
いくつかの実施形態において、上流側目盛り250および下流側目盛り256は、同一の測定に関する表示を担持または表示し、第1のクロスビーム240に沿って、互いに水平に位置合わせされうる。例えば、図6Aに示したように、上流側目盛り250の「30」という表示は、下流側目盛り256の「30」という表示と水平に位置合わせされうる。この任意の構成を用いて、ユーザは、上流側曲げ具160と下流側曲げ具162の垂直方向の望ましい間隔が、より容易に分かり、選択しうる。例えば、目盛り250、256がミリメートル単位で増加する表示を有し、ユーザが上流側曲げ具160と下流側曲げ具162の間の垂直方向の間隔を20mmにしたい場合には、第1の上流側支持部190のインジケータ212を上流側目盛り250の「30」と位置合わせし、インジケータ258を下流側目盛り256の「10」と位置合わせしうる。
【0045】
いくつかの実施形態において、第1のクロスビーム240を、選択的に第1の側脚部232に連結しうる。例えば、第1の側脚部232は、1つ以上のガイドスロット260を形成し、それは、各々、次に第1のクロスビーム240に取り付けられる固定部262を摺動自在に受け付けるサイズを有しうる。この例示的な構成を用いて、第1のクロスビーム240、更に、したがって、支持体190、220を介して上流側および下流側曲げ具160、162を、第1の側脚部232に対して、したがって、プレート230に対して上下させうる。中流部目盛りまたは測定具264を、ガイドスロット260の1つに近接した第1の側脚部232に取り付けうる。第1のクロスビーム240上に形成または担持されたインジケータ266と、目盛り264に含まれた測定に関する情報の関係は、プレート230に対する第1のクロスビーム240(したがって、曲げ具160、162)の垂直位置を示しうる。
【0046】
図4に戻り、上記と同様に第2の上流側支持体192および第2の下流側支持体222を、選択的に第2のクロスビーム242に連結しうる。これらの任意のアセンブリ構成を用いて、第1および第2の上流側支持体190、192を対応するクロスビーム240、242に対して選択的に移動させて、第1の曲げ具160をプレート230に対して垂直方向に上下させうる。いくつかの実施形態において、第2の上流側支持体192は、第1の上流側支持体190のインジケータ212(図5)と同様か同一の(隠れている)インジケータを含むか担持し、第2のクロスビーム242は、上記上流側目盛り250と同様か同一の上流側目盛り270を含むか担持する。第2の上流側支持体インジケータの第2の上流側支持体192に沿った垂直位置は、インジケータ212の第1の上流側支持体190に沿った位置と同様または同一でありうる。第2のクロスビーム242に含まれた上流側目盛り270に沿った増分表示は、第1のクロスビーム240に含まれた上流側目盛り250の表示と同様か同一でありうる。第2のクロスビーム242の上流側目盛り270の垂直位置は、第1のクロスビーム240の上流側目盛り250と同様または同一でありうる。これらの任意の構成を用いて、上流側支持体190、192によって決められた上流側曲げ具160の反対を向いた端部の垂直位置について、ユーザに視覚的に示しうる。例えば、ユーザが、上流側曲げ具160を、ロッド180の中心軸が略水平となるように配列したい場合に、プレート230が水平に載置されたと仮定すると、第1および第2の上流側支持体190、192は、対応するクロスビーム240、242に対して、第1の上流側支持体190のインジケータ212および第2の支持体192のインジケータが、対応する上流側目盛り250、270に含まれた同じ増分表示と位置合わせされるように配列される。更に、ユーザは、第1および第2の上流側支持体190、192を、対応する上流側目盛り250、270に対して選択した異なる垂直位置に配列することによって、水平からの既知の偏差を確立しうる。同様または同一の位置合わせ特徴物を、任意で、下流側支持部166に含みうる。
【0047】
いくつかの実施形態において、第1のクロスビーム240と第1の側脚部232の間での選択的連結について記載したのと同様に、第2のクロスビーム242を、第2の側脚部234に選択的に連結しうる。更に、第2のクロスビーム242は、第1のクロスビーム240のインジケータ266(図7A)と同様または同一のインジケータ(隠れている)を含むか担持し、第2の側脚部234は、第1の側脚部232に関連した中流部目盛り264と同一の中流部目盛り(隠れている)を含むか担持しうる。これらの任意の構成を用いて、枠部236を側脚部232、234に対して上下させることによって、上流側および下流側曲げ具160、162を、まとめて、プレート230に対し垂直方向に上下させうる。アーム部244、246を含む場合には、枠部236を全体として扱うためのハンドルとして機能しうる。いずれの場合でも、ユーザに、対応する側脚部232、234に関する対応する中流部目盛り(例えば、第1の側脚部232の中流部目盛り264)に対する各クロスビーム240、242のインジケータ(例えば、第1のクロスビーム240のインジケータ266)を介して、対応する側脚部232、234に対するクロスビーム240、242の垂直方向の位置合わせを視覚的に示しうる。上流側および下流側曲げ具160、162をまとめて容易に垂直移動させうるか、そうではないかなどの他の載置構成も用いうる。
【0048】
曲げ具アセンブリ150は、任意で、1つ以上の更なる構成要素または特徴物を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、上記調節または測定の1つ以上を、制御部(例えば、プログラマブルロジックコントローラ)またはコンピュータインターフェイスを通して遠隔で行って、曲げ具アセンブリ150を、自動化または機械化しうる。
【0049】
図7は、搬送装置32’がガラスリボン22を本開示の原理に基づいて処理する一例を簡略に示している。搬送装置32’は、上記搬送部装置70および引張装置72、並びに、曲げ具アセンブリ150を含む。上記記載と同様に、搬送部装置70は、上流側40から下流側42への進行主平面Pを確立する。曲げ具アセンブリ150は、上流側40と下流側42の間に配列されて、上流側曲げ具160は、下流側曲げ具162の上流側に位置する。曲げ具アセンブリ150は、進行主平面Pを外れた進行経路を確立し、それは、上流側曲げ具160の上を(かつ、接触して)進行し、更に、下流側曲げ具162の下を(かつ、接触して)進行するガラスリボン22を含む。ガラスリボン22を上流側曲げ具160で曲げることで、対応する曲げ応力が、上記のように反りを除去する。いくつかの実施形態において、上流側および下流側曲げ具160、162は、ガラスリボン22が高い粘度を有すると予想される位置で、ガラスリボン22と相互作用するように配置される(例えば、上流側曲げ具160との接点でのガラスリボン22の粘度は、そうではなくガラスリボン22が重力だけで上流側曲げ具160の周りで曲がるのに必要な粘度より高いと予想される)。参考として、ガラスリボン22を搬送装置30’に通す処理は、上流側曲げ具160を上流側支持部164から取り外す処理、ガラスリボン22を搬送装置30’に通す処理、次に、上流側曲げ具160を上流側支持部164に設置する処理を含みうる(図7の進行経路になる)。他の実施形態において、上流側曲げ具160を、より不変的に上流側支持部164に設置しうる。
【0050】
図1に戻り、本開示のシステム、並びに、搬送装置および方法は、反りの削減を助ける1つ以上の更なる特徴物を組み込みうる。例えば、搬送部装置70は、平坦な面を有する台またはプレートを含み、それは、進行主平面Pの上流側40から突出し、ガラスリボン22との望ましい熱伝達を意図しうる。いくつかの実施形態において、搬送装置32は、ガラスリボン22が台の平坦な面と接触するのを防ぐように配置された1つ以上のサスペンションロッド、または、同様の構造物(例えば、グラファイトロッド)を含みうる。意外なことに、進行するガラスリボン22と細長い平坦な面の接触を防ぐことで、低温面と長く接触することで生じうる大きい縦波(例えば、ガラスリボン22の長さ方向に延伸する3mmより大きい平坦度偏差)を削減することを見い出した。関連する実施形態において、支持台またはエアテーブルを、(グラファイトの代わりに)Zircarセラミックから形成して、低放射性および低い熱伝導性を提供しうる。その代わりに、または、追加で、ガラスリボン22を、ガラスリボンの進行経路に垂直に配列されたロッドの上で逆に曲げること、上流側に隣接したサスペンションロッドに、ガラスリボン22を曲げたり、平坦化させたりするカテナリー部分を備えること、および/または、ロールオンロールの線形の接触を提供する1つ以上の更なるニップ/平坦化ロールを提供して高い局所曲げ圧力を生成することによって、ガラスリボン22の縁部での反りを削減しうる。
【0051】
本開示の実施形態および特徴の利点を、更に、以下の限定するものではない例に示すが、これらの例で記載する特定の材料、および、その量、並びに、他の条件および詳細は、本開示の範囲を不当に限定すると解釈されるべきではない。
【実施例
【0052】
比較例のガラスシートを、連続したガラスリボンをダウンドロー溶融供給装置から受け付ける搬送装置を含む従来のフュージョンドロー法の製造システムを用いて用意した。搬送装置は、下流側端部にニップローラを含み、ガラスリボンを進行主平面で上流側端部から下流側端部へ搬送した。ガラスリボンは、溶融供給装置から搬送装置へ向かう時に、90度(垂直から水平へ)向きを変えて、搬送装置を通る間に冷却された。冷却後に、ガラスリボンから、比較例のガラスシートを切断した。比較例のガラスシートは、幅250mmで長さ650mmだった。次に、比較例のガラスシートの反りを測定し、それを図8に示している。比較例のガラスシートが示した平坦度偏差範囲は、300マイクロメートルより大きいことが分かった。
【0053】
実施例のガラスシートを、上記比較例のガラスシートと同じ調合のガラスを用いて用意した。比較例のガラスシートを用意するのに用いた溶融供給装置も用いて、曲げ具が搬送装置に図1の配列と同様に組み込まれた以外は搬送装置も用いて、ガラスリボンに一連の曲がり部を形成した。冷却後に、ガラスリボンから、実施例のガラスシートを切断した。実施例のガラスシートは、幅250mmで長さ650mmだった。次に、実施例のガラスシートの反りを測定し、それを図9に示している。実施例のガラスシートが示した平坦度偏差範囲は、100マイクロメートル未満であることが分かった。図8図9を比べると、全ての他のパラメータが等しい状態で、本開示の搬送装置、システム、および、方法を用いることで平坦度が改良されていることが分かる。
【0054】
本開示のガラスリボン処理システム、並びに、搬送装置および方法は、これまでの設計および技術を顕著に改良するものである。本開示のいくつかのシステム、装置、および、方法は、異なる粘度で一連の1つ以上の曲がり部を通って、連続して搬送されるガラスリボンの反りを削減する。曲がり部を形成する上向きの力要素は、ガラスリボンを進行基準平面と比べて高い位置に駆動する物理的手段によって加えられうる。この物理的手段は、空気ベアリングを有するか、または、有さない、静止または回転した固体表面であり、摩擦、回転、または、非接触でありうる相互作用を生じうる。曲がり部を形成する下向きの力要素は、粘度が十分に低い場合には重力によって提供されうるか、または、ガラスリボンを低い位置に押しやる機械的手段を用いて提供されうる。ガラスリボン曲げ処理は、ガラスリボンのプロファイルを幅に亘って平坦化する傾向のある応力域を生成する。
【0055】
本明細書に記載の実施形態に、請求した主題の範囲を逸脱することなく、様々な変更および変形が可能である。したがって、本明細書は、本明細書に記載の様々な実施形態の変更例および変形例も、添付の請求項および等価物の範囲である限りは、網羅することを意図する。
【0056】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0057】
実施形態1
ガラスリボン処理方法において、
ガラスリボンを、供給装置から搬送装置の上流側に供給する工程であって、前記搬送装置は、前記上流側の反対側である該搬送装置の下流側に位置する引張装置、および、該上流側から前記下流側への進行主平面を確立する搬送部装置を有するものである工程と、
引張力を、前記引張装置を用いて、前記ガラスリボンに加えて、該ガラスリボンを進行経路に沿って連続して搬送する工程であって、
前記進行経路は、
前記上流側と前記引張装置の間の第1の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第1の曲がり部と、
前記第1の位置と前記引張装置の間の第2の位置で、前記進行主平面に対して凹状のカーブを画定する第2の曲がり部と、
前記第2の位置と前記引張装置の間の第3の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第3の曲がり部と
を含むものであり、
前記第3の位置と前記進行主平面の間の垂直距離は、前記第1の位置と該進行主平面の間の距離より長く、
更に、前記進行経路は、前記第3の位置の下流側の位置から前記引張装置まで、前記進行主平面に位置するものである工程と
を含む方法。
【0058】
実施形態2
前記第1、第2、および、第3の曲がり部の少なくとも1つが、前記ガラスリボンの表面に応力を加えて、該ガラスリボンを平坦化するものである、実施形態1に記載の方法。
【0059】
実施形態3
前記ガラスリボンの前記第1の位置での粘度は、該ガラスリボンの前記第3の位置での粘度と異なるものである、実施形態2に記載の方法。
【0060】
実施形態4
前記ガラスリボンの前記第1の位置での前記粘度は、該ガラスリボンの前記第3の位置での前記粘度の少なくとも1/10未満である、実施形態3に記載の方法。
【0061】
実施形態5
前記ガラスリボンの前記第1の位置での前記粘度は、1×10ポアズ以下であり、該ガラスリボンの前記第3の位置での前記粘度は、1×10ポアズ以上である、実施形態3に記載の方法。
【0062】
実施形態6
前記第1の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第1の曲げ具との相互作用によって生じるものである、実施形態1に記載の方法。
【0063】
実施形態7
前記第1の曲がり部は、更に、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンに作用する重力によって生じるものである、実施形態6に記載の方法。
【0064】
実施形態8
前記第1の曲げ具は、前記進行主平面の上方に位置するベアリング面を含むものであり、前記ガラスリボンは、該進行主平面の上方の前記ベアリング面に接触し、該第1の曲げ具の直ぐ下流側の該進行主平面に向かって進行するものである、実施形態7に記載の方法。
【0065】
実施形態9
前記第2の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第2の曲げ具との相互作用によって生じるものである、実施形態6に記載の方法。
【0066】
実施形態10
前記第2の位置は、前記第1の曲げ具と前記第2の曲げ具の間である、実施形態9に記載の方法。
【0067】
実施形態11
前記第2の曲がり部は、更に、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンを前記第1の曲げ具と前記第2の曲げ具の間の前記進行主平面に向けるように該ガラスリボンに作用する重力によって生じるものである、実施形態10に記載の方法。
【0068】
実施形態12
前記第3の曲がり部は、少なくとも部分的には、前記ガラスリボンと、前記搬送装置に含まれた第3の曲げ具との相互作用によって生じるものである、実施形態9に記載の方法。
【0069】
実施形態13
前記ガラスリボンは、第2の主面の反対側である第1の主面を含み、前記第1の主面は、前記第1および第2の曲げ具と相互作用し、前記第2の主面は、前記第3の曲げ具と相互作用するものである、実施形態12に記載の方法。
【0070】
実施形態14
前記ガラスリボンを供給する工程は、該ガラスリボンを、垂直方向に前記供給装置から前記上流側へ向ける工程を含むものである、実施形態1に記載の方法。
【0071】
実施形態15
前記ガラスリボンを供給する工程は、更に、該ガラスリボンを、前記垂直方向から前記上流側へ向きを変える工程を含むものである、実施形態14に記載の方法。
【0072】
実施形態16
ガラスリボン処理システムにおいて、
搬送装置を
含み、
前記搬送装置は、
上流側から前記上流側の反対側である下流側への進行主平面を確立する搬送部装置と、
前記下流側に位置し、ガラスリボンを進行経路に沿って搬送する引張装置と、
前記上流側に近接した第1の曲げ具と、
前記第1の曲げ具と前記下流側の間の第2の曲げ具であって、前記第2の曲げ具と前記進行主平面の間の垂直距離は、該第1の曲げ具と該進行主平面の間の垂直距離より長いものである第2の曲げ具と、
前記第2の曲げ具と前記下流側の間の第3の曲げ具であって、前記第3の曲げ具と前記進行主平面の間の垂直距離は、該第2の曲げ具と該進行主平面の間の垂直距離より長いものである第3の曲げ具と
を含むものであり、
前記第1、第2、および、第3の曲げ具は、前記進行経路を確立するものであり、該進行経路は、
前記上流側と前記引張装置の間の第1の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第1の曲がり部と、
前記第1の位置と前記引張装置の間の第2の位置で、前記進行主平面に対して凹状のカーブを画定する第2の曲がり部と、
前記第2の位置と前記引張装置の間の第3の位置で、前記進行主平面に対して凸状のカーブを画定する第3の曲がり部と
を含み、
更に、前記進行経路は、前記第3の位置の下流側の位置から前記引張装置まで、前記進行主平面に位置するものであるシステム。
【0073】
実施形態17
前記第1、第2、および、第3の曲げ具は、各々、前記進行経路に沿って搬送されている連続したガラスリボンと線接触を確立するように構成されたものである、実施形態16に記載のシステム。
【0074】
実施形態18
前記第1の曲げ具と前記第2の曲げ具の間の水平距離は、該第2の曲げ具と前記第3の曲げ具の間の水平距離より長いものである、実施形態16に記載のシステム。
【0075】
実施形態19
前記第1、第2、および、第3の曲げ具の少なくとも1つは静止したものである、実施形態16に記載のシステム。
【0076】
実施形態20
ガラスリボンを処理する曲げ具アセンブリにおいて、
上流側曲げ具と、
下流側曲げ具と、
前記上流側曲げ具の反対を向いた端部を支持する上流側支持部と、
前記下流側曲げ具の反対を向いた端部を支持する下流側支持部と、
プレート、前記プレートの反対を向いた端部から突出する第1の側脚部および第2の側脚部、前記第1の側脚部に接続した第1のクロスビーム、並びに、前記第2の側脚部に接続した第2のクロスビームを含み、前記第1および第2のクロスビームが、前記上流側および下流側支持部を、該プレートに対して支持するものである基部と
を含み、
前記上流側および下流側曲げ具の少なくとも1つの前記反対を向いた端部の少なくとも1つは、プレートに対して選択的に移動自在である曲げ具アセンブリ。
【符号の説明】
【0077】
22 ガラスリボン
30 ガラスリボン供給装置
32 搬送装置
68 基部
70 搬送部装置
72 引張装置
74、76、78 曲げ具
80、90、92 ローラ
100 第1の曲がり部
102 第2の曲がり部
104 第3の曲がり部
150 曲げ具アセンブリ
160 上流側曲げ具
162 下流側曲げ具
164 上流側支持部
166 下流側支持部
240、242 クロスビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9