IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許7265587自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法
<>
  • 特許-自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法 図1
  • 特許-自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法 図2
  • 特許-自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法 図3
  • 特許-自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法 図4
  • 特許-自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230419BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230419BHJP
【FI】
G01S7/40 130
G01S7/40 134
G01S13/931
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021098873
(22)【出願日】2021-06-14
(62)【分割の表示】P 2019532720の分割
【原出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2021144055
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】102016226312.9
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェトシュキン,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ダロッチ,ガボーバラージュ
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191682(JP,A)
【文献】特開2016-191686(JP,A)
【文献】特開2016-191685(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013202377(DE,A1)
【文献】米国特許第05977906(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0218398(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法であって、前記運転者支援システムが、レーダセンサ(10)を備え、かつ可変な機能範囲を有している方法において、
第1の作動時間間隔(34)において、前記レーダセンサ(10)の調節エラーの評価が第1のエラー公差の範囲(38)を有する第1の評価精度として与えられる第1ステップであって、
前記第1ステップは、
前記レーダセンサ(10)による測定で得られたデータに基づいて調節エラーを評価する第1評価ステップと、
前記第1評価ステップで評価され、前記第1のエラー公差の範囲(38)を有する前記第1の評価精度として与えられた前記調節エラーが、予め設定された調節エラー範囲(36)の外の潜在的なエラーを示しているか否かを判断する第1判断ステップと、
を含み、
前記第1判断ステップで、前記調節エラーが前記予め設定された調節エラー範囲(36)の外の潜在的なエラーを示していると判断された場合、前記運転者支援システムの機能範囲を限定する第2ステップと、
前記第1の作動時間間隔(34)の後の第2の作動時間間隔(40)において、第2のエラー公差の範囲(42)を有する第2の評価精度として与えられた前記調節エラーの信頼性を確認し、前記調節エラーを規定する第3ステップであって、(a)前記レーダセンサ(10)の前記調節エラーの評価が前記第2のエラー公差の範囲(42)を有する前記第2の評価精度として与えられ、前記第2のエラー公差の範囲(42)が前記第1のエラー公差の範囲(38)よりも小さく、(b)前記第2ステップで、前記運転者支援システムの機能範囲が限定された場合に、前記運転者支援システムの限定された機能範囲で作動する第3ステップであって、
前記第3ステップは、
前記レーダセンサ(10)の前記調節エラーが、前記レーダセンサ(10)によってさらに測定されて得られた、さらなるデータに基づいて評価される第2評価ステップと、
前記第2評価ステップで評価され、前記第2のエラー公差の範囲(42)を有する前記第2の評価精度として与えられた前記調節エラーが、前記予め設定された調節エラー範囲(36)の外の潜在的なエラーを示しているか否かを判断する第2判断ステップと、
をさらに含み、
前記第2判断ステップで、前記調節エラーが前記予め設定された調節エラー範囲(36)の外の潜在的なエラーを示していないと判断された場合、前記運転者支援システムの機能範囲を拡張する第4ステップと、
前記第2判断ステップで、前記調節エラーが前記予め設定された調節エラー囲(36)の外の潜在的なエラーを示していると判断された場合、前記運転者支援システムの限定された機能範囲での作動が維持され、運転者にエラーメッセージが送信される第5ステップと、
を有することを特徴とする、自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法。
【請求項2】
前記機能範囲の限定が、前記レーダセンサ(10)の到達距離の短縮を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記運転者支援システムが複数の支援機能(16)を有していて、前記機能範囲の限定が前記支援機能のうちの1つの遮断を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記機能範囲の拡張を、評価精度のそれぞれの改善後に複数のステップで徐々に行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1ステップから前記第5ステップを、前記運転者支援システムの作動開始後に直ちに実行する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1ステップから前記第5ステップを、前記運転者支援システムの利用段階(44)中に繰り返し実行する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
レーダセンサ(10)およびコントロールユニット(12)を備えた運転者支援システムにおいて、
前記コントロールユニットが、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実行するために構成されていることを特徴とする、運転者支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の運転者支援システムを作動させるための方法であって、運転者支援システムが、レーダセンサを備えかつ可変な機能範囲を有しており、作動中に調節エラーを補正するためにレーダセンサの連続的な再校正を行う方法に関する。
【0002】
自動車用の運転者支援システムの機能は、しばしば、車両の前方に取り付けられたレーダセンサの測位データに基づいており、このレーダセンサによって、先行車両およびその他の、車両周囲の対象物の間隔、相対速度、方位角および場合によっては仰角も測定される。これらのデータに基づいて、運転者支援システムは様々な支援機能、例えば車間自動調整、衝突警告機能、衝突回避のために非常ブレーキの自動的な作動開始等を提供する。運転者支援システムの支障のない確実な機能は、位置測定された対象物の方位角に関する正確な推測を含む、交通状況の適切な評価を前提としている。しかしながら、レーダセンサを用いた正確な角度測定は、車両に取り付ける際にセンサが正確に調節されているときにだけ可能であるので、0°の方位角測定に相当する方向は、実際に車両の前方方向でもある。
【背景技術】
【0003】
校正モジュールを備えた運転者支援システムは公知であり、この校正モジュールは、車両の運転中にレーダセンサの正確な調節を検査することができ、検知された調節エラーを、これが許容範囲内にある限りは計算により補正することができる。
【0004】
しかしながら調節エラーの定量規定は、通常は、所定の時間に亘って集計された測定の統計的評価によってのみ可能である。従って、十分に正確かつ信頼できる、調節エラーの規定のためには所定の測定時間が必要であり、その結果、駐車場でしばしば発生する軽い「衝撃」のような、例えば車両の振動に基づいて、調節エラーが突然発生した場合、エラーはかなり遅れてからはじめて検知され、補正され得ることになる。他方では、運転者支援機能は、調節エラーが十分確実に検知され、かつ補正されたときにだけ利用されるように要求されるので、支援機能の提供可能性は限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の課題は、調節エラーを迅速に検知し、かつ運転者支援システムの提供可能性を高めることができる方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、
限定された第1の作動時間間隔に亘る測定に基づいて調節エラーを評価するステップと、
評価された調節エラーに依存して運転者支援システムの機能範囲を限定するステップと、
調節エラーの評価精度を改善するために、第2の作動時間間隔内で限定された機能範囲を有する作動中に測定を継続するステップと、
前記評価精度の改善に従って機能範囲を拡張するステップと、
を有する方法によって解決される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、調節エラーの正確な大きさがまだ確実に確定していなくても、機能範囲だけが調節エラーに関する不確実性を考慮して適切に限定される限りは、運転者支援システムの利用が可能である、という考えに基づいている。例えば、特に非常に大きい間隔を保って位置する対象物の位置規定時に、角度測定を狂わせる調節エラーが必然的に生じる。従って、角度測定時の不確実性は、レーダセンサの利用された到達距離を限定することによって、考慮することができる。従って、機能範囲のある程度の限定にも拘わらず、運転者支援機能の主要な部分は利用され得るので有用性は全体的に高まる。限定された機能範囲を有する運転者支援システムのさらなる作動中に、調節エラーの評価を連続的な測定によって常に改善することができる。この場合、十分な信頼性を伴って調節エラーがまだ許容範囲内にあることが確認されると、運転者支援システムの機能範囲はさらに拡張される。
【0008】
この方法は、車両にレーダセンサを取り付ける際のレーダセンサの最初の校正の省略、または少なくとも最初の校正における手順の短縮および簡略化を可能にする。このような形式で、組み立て時間の短縮およびひいては費用の節約が得られる。
【0009】
さらに本発明は、システムが、車両の運転中に、後になってからはじめて自然に発生する調節エラーに、より素早く反応するという重要な利点を提供する。調節エラーの発生から比較的短い第1の作動時間間隔の経過後に既に、“Dejustage「調節不良」”の大まかな評価が可能であり、この大まかな評価は、まず調節エラーが存在するための最初の疑いの理由付けをすることができる。システムはこれに反応して、最終的に調節エラーを高い精度で定量的に検出できるようになるまで、機能範囲を限定し、かつ測定を継続する。次いで、より精確な測定が調節エラーの存在に関する疑いを証明しないかまたは補正が可能である限り、機能範囲は自動的に再び拡張され得る。
【0010】
本発明の好適な実施形態および変化実施例は従属請求項に記載されている。
【0011】
機能範囲の限定の形式および大きさは、調節エラーの評価の結果に依存する。第2の作動時間間隔中に、より長い測定時間に基づいて評価精度が次第に改善されると、機能範囲の限定は、最終的に完全な機能範囲が再び提供されるまで、再び徐々に減少される。
【0012】
本発明の対象は、上記方法を実行するために構成された運転者支援システムでもある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による運転者支援システムのブロック図およびレーダセンサの側面図である。
図2】レーダセンサの調節エラーを評価するための方法を説明する原理図および図1に示したレーダセンサの平面図である。
図3】本発明による方法を説明するための時間グラフである。
図4】レーダセンサの調節エラーを方位角および仰角で示す図である。
図5】本発明による方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を用いて1実施例を詳しく説明する。
【0015】
図1に、自動車用の運転者支援システムがブロック図で示されている。運転者支援システムは、レーダセンサ10と電子コントロールユニット12とを有しており、この電子コントロールユニット12はレーダセンサ10の測位データを評価し、このデータに基づいて自動車の図示されていないアクチュエータを制御する。このために、コントロールユニット12は、レーダセンサ10の測位データを評価する評価モジュール14と複数の支援モジュール16とを有しており、これらの支援モジュール16は、様々な支援機能、例えば車間制御、渋滞交通のためのストップアンドゴー機能および衝突警告機能を実行する。
【0016】
レーダセンサ10は、レードーム18の後ろ、例えばプラスチックより成っていて従ってマイクロ波を透過させる、車両の前方のバンパの後ろで、取り付けハウジング20内に取り付けられていて、第1の機械式の調節装置22によって仰角で調節可能、および第2の機械式の調節装置24によって方位角で調節可能である。一点鎖線で示された軸線Aは、主にレーダセンサの放射方向および受信方向を示し、レーダセンサの平面型のグループアンテナ26の中央を通って、このグループアンテナの平面に対して直角に延びている。
【0017】
レーダセンサ10の取り付け時に、仰角でもまた方位角でも調節エラーが生じ得る。仰角の調節エラーは図1に一点鎖線で示されている。同様に、調節エラーは、例えば車両ボディが他の対象物に軽くぶつかったときの振動、または(仰角では)車両が異常に強く負荷されたときの振動に基づいて、車両の運転中に自然に発生することもある。従って、コントロールユニット12は、校正モジュール28(ソフトウエアモジュール)を有しており、この校正モジュール28は、このような調節エラーをレーダセンサ10によって提供されたデータを用いて自動的に検知し、それに応じて角度測定の結果を修正することができる。
【0018】
図2には、校正モジュール28が組み立てエラーをどのように検知するかについての1
例が示されている。ここでは方位角の調節エラーが図示されており、この調節エラーは、レーダセンサ10の送受信方向(軸線A)が自動車の縦軸線Bと所定の角度を成していることを示す。ここでは、1例として、対象物30が正確にレーダセンサの軸線A上に位置していると仮定されている。従って、この対象物のために測定された方位角は0°である。レーダセンサが正しく調節されていると仮定すれば、これは、対象物30が車両の縦軸線B上に位置していて、従って、測定された方位角は対象物30の間隔とは無関係である、つまり対象物30が遠ざかっていても近づいていても0°の値を維持する、ということを意味する。符号30′により、図2では、同じ側方の置き位置でレーダセンサに対してより短い間隔を有する、対象物30の位置が示されている。これにより、位置30がもはや軸線A上に位置しておらず、従って測定された方位角は0°とは異なっていることが分かる。角度測定の想定された結果(0°)と実際に得られた結果との間の、このような不一致を用いて、校正モジュール28が調節エラーの存在を検知して定量規定することができる。
【0019】
ただし、調節エラーの定量規定のために、対象物30も自車およびひいてはレーダセンサ10も、その側方位置が変わらずに保たれていることが前提とされなければならない。自車の側方位置の変化は、横加速度の測定によってまたはステアリングの切れ角の検出によって決定され得る。これに対して、対象物30では、側方位置が実際に変化せずに保たれていることは確かではない。従って、調節エラーのための確実なまたは少なくとも概ね正確な結果を得るために、図2に(簡略化されて)示された形式の一般的な測定で、多数の対象物のために何回も繰り返し統計的に評価されるので、不正確な仮定および統計的な変動が算出さる。従って、調節エラーが量的に決定され得る精度は、測定時間が長くなるにつれてより改善される。これは、逆の推論では、原則的には、調節エラーの信頼できる検知および修正は、交通安全のための不都合な影響を伴う、所定の時間的な遅延によってはじめて可能である、ということである。
【0020】
従って従来では、レーダセンサ10の調節を、取り付け直後に管理された条件下において“Messstand「測定スタンド」”で検査することが一般的である。この場合、所定の調節エラーが存在している場合、この調節エラーが比較的小さく許容範囲内にあり、従って運転者支援システムの機能が妨げられなければ、レーダセンサの機械的な後調節を省略し、その代わり、測定された調節エラーを校正モジュール28で計算により補正することができる。
【0021】
以下では、安全上のリスクが発生することなしに、測定スタンドでのこのような校正測定のための費用を低減するか、またはこのような校正測定を省略することができる方法について説明する。
【0022】
図3には、この方法の手順が時間グラフで示されている。時点t=0は、車両および運転者支援システムの作動開始の時点である。この時点に校正段階34(限定された第1の作動時間間隔)が続いており、この校正段階34で、校正モジュール28を用いてレーダセンサの調節が通常の走行条件下で検査される。校正段階は所要時間aを有しており、この所要時間aは、ほんの数メートル進んだ走行距離に相当する。この比較的短い時間間隔内で、調節エラーの測定時に比較的大きい測定公差が発生する。
【0023】
図4は、-6°乃至+6°の方位角に亘っておよび-8℃乃至+5°の仰角に亘って延在している立体角セグメントを概略的に示す。点Nは、レーダセンサの通常の調節位置を示す。通常の調節位置は、ここに示された例では、方位角0°および仰角-2°である。点Nにセンタリングされた方形36は、調節エラーが許容され得る許容範囲を示す。レーダセンサ10の実際の調節エラーがこの範囲内にあることが確実に確定していれば、調節不良は計算により修正され、すべての支援機能16が利用され得る。
【0024】
点K1は、校正段階34の最後に得られる校正測定の結果を示す。この点は方形36内にある。つまり、点K1が実際の調節エラーを正確に示していれば、この調節エラーは許容され得る。しかしながら、短い測定時間に基づいて、この測定は相当なエラー公差を含んでいる。ここでは、このエラー公差の範囲は、点K1でセンタリングされたフィールド38によって示されている。従って、調節エラーが許容範囲内にあることは、多分そうではあるが確実ではない。従って、支援機能のより確実な作動は、簡単に保証できない。
【0025】
それでも、支援機能の機能範囲が適切に限定されている限りは、支援機能の確実な利用は可能である。簡単な例として、完全な機能範囲を有する支援機能の確実な利用のためには、(車両の縦軸線Bに対して横方向で)位置測定された対象物の側方位置が+/-0.2mの精度で確定されている必要があることが前提とされるべきである。このために、対象物のそれぞれの間隔に依存する精度を有する対象物の方位角を測定する必要がある。対象物間隔が大きい場合、より精確な角度測定が必要であり、これに対して対象物間隔が小さい場合、角度測定時により大きい測定エラーが許容され得る。従って、レーダセンサの到達距離が公称の到達距離に対して限定されることによって、支援機能を限定的な範囲内で利用することが可能である。つまり、支援機能の機能範囲は、限定された到達距離内にある対象物だけが評価されることによって限定される。
【0026】
図3に示した時間グラフで、このような機能範囲の限定は、校正段階34の終わりの時点t+aで行われている。この時点に信頼性確認段階40(第2の作動時間間隔)が続いており、この信頼性確認段階40で、限定された機能範囲を有する運転者支援システムが利用され、一方、校正測定が継続される。より長い測定時間に基づいて、調節エラーが測定され得る精度が改善される。図4では、これは、点K1の周囲のエラー公差範囲が方形42の大きさに収縮することによって示されている。この狭いエラー公差を有する調節エラーの測定は時点t+a+bで終了されている。この時点で、実際の調節エラーがより狭い許容範囲内にあることが分かるので、レーダセンサの到達距離は、再び公称値に拡大されてよく、それによって再び運転者支援システムの完全な機能範囲が提供される。
【0027】
これによって、原則として時間的に無制限である、運転者支援システムの利用段階44が開始される。点K1によって示された調節エラーは、十分な精度を有することが知られていて、校正モジュール28で計算により補正されるので、交通状況が正確に検知され得る。
【0028】
上記考察は仰角の調節エラーのためにも合理的に通用することは明らかである。同様に、機能範囲の限定が必ずしも到達距離の限定を意味するものではなく、例えば所定の支援機能が完全に遮断されるようになっていてもよい。
【0029】
時点t+aで、車両の運転者は、一時的に運転者支援システムの限定的な機能範囲だけが提供されることを運転者に示す警告メッセージを得ることができる。このような指示は、もちろんすべてのケースにおいて必要な訳ではない。レーダセンサの全到達距離は、一般的に比較的高い車両速度での車間距離調整時においてのみ必要とされる。何故ならば、この場合、車両間の必要な安全車間距離は、安全車間距離が確実に維持され得るようにするためにレーダセンサの全到達距離が利用されなければならない程度に大きいからである。これに対して、低い車両速度では、非常に遠く離れた対象物はまだ考慮される必要がないので、到達距離の限定が重大な結果を招くことはなく、従って、運転者にこの措置について通知する必要はない。
【0030】
図示の実施例では、校正測定は、利用段階44中でも継続される。例えば調節エラーは常に測定され、所定回数の測定および統計的評価後に、調節が変更された(例えば“Pa
rkrempler「駐車衝撃」”のために)ことが明らかになると、調節エラーがもはや図4の点K1によってではなく、例えば点K2によって表され、また短い測定時間に基づいてエラー公差範囲が最終的な判断のためには大き過ぎる場合、機能範囲が新たに限定され(または極端な場合、支援機能が完全に遮断され)、新たな信頼性確認段階40が開始される。この信頼性確認段階の最後に十分な信頼性を伴って、調節エラーが許容範囲内にあることが確認されると、機能範囲は再び拡張され、運転者支援システムの完全な機能性を有する利用段階44が続けられる。
【0031】
図5には、上記方法の主要なステップがフローチャートで示されている。
【0032】
ステップS1で、運転者支援システムは、測定スタンドで校正測定を強制的に実施する必要なしに、作動開始される。続いて校正段階34が実行され、この校正段階34においてステップS2で校正測定が通常の走行状況下で実行される。校正段階は調節エラーの(大まかな)評価によってステップS3で終了する。ステップS4で、測定公差を含む調節エラーが許容範囲内にあるかどうかが検査される。そうでなければ(NO)、運転者支援システムの機能範囲がステップS5で限定され、ステップS6で信頼性確認段階が開始される。ステップS4での問い合わせが肯定的な結果を有していれば(YES)、ステップS5は飛ばされる。
【0033】
ステップS7で、長い測定時間に基づいて精度の高い調節エラーが新たに決定される。
【0034】
ステップS8での問い合わせは、ステップS4での問い合わせに相当する。調節エラーが許容されるものであれば(結果“YES”)、ステップS9で機能範囲が再び拡張され、ステップS10で、利用段階44が開始される。利用段階の開始後に、ステップS3へのリターンジャンプが行われる。ステップS3での調節エラーの新たな評価は、図3に示した利用段階44内での制御測定に相当する。
【0035】
ステップS8で、調節エラーが許容できないことが示されると(結果“NO”)、機能範囲が限定されたまま維持され、運転者はステップS11でエラーメッセージを受け、場合によってはサービス工場を探すように指示される。選択的に、このステップで運転者支援システムが完全に遮断されてもよい。代替的に、限定された機能範囲を有する運転者支援システムをさらに利用することが可能であり、場合によっては調節のさらなる変更を検出して測定された結果に応答するために、制御測定を規則的に繰り返すことも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10 レーダセンサ
12 コントロールユニット
14 評価モジュール
16 支援機能、支援モジュール
18 レードーム
20 取り付けハウジング
22 第1の機械式の調節装置
24 第2の機械式の調節装置
26 グループアンテナ
28 校正モジュール
30 対象物、位置
30′ 対象物30の位置
34 第1の作動時間間隔、校正段階
36 方形
38 フィールド
40 信頼性確認段階、第2の作動時間間隔
42 方形
44 運転者支援システムの利用段階
a 所要時間
A 軸線
B 縦軸線
S1~S11 ステップ
t+a,t+a+b 時点
K1 点
N 点
図1
図2
図3
図4
図5