(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】金属酸化物膜を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/42 20060101AFI20230419BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230419BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230419BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230419BHJP
C07F 7/04 20060101ALN20230419BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/455
H01L21/316 X
H01L21/31 C
C07F7/04 G
(21)【出願番号】P 2021118491
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2018542759の分割
【原出願日】2017-02-10
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2016-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518282923
【氏名又は名称】シースター ケミカルズ ユーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】オデドラ,ラジェシュ
(72)【発明者】
【氏名】ドン,チュンハイ
(72)【発明者】
【氏名】センベラ,ショウン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-018718(JP,A)
【文献】特表平06-505695(JP,A)
【文献】特開2005-354076(JP,A)
【文献】特開2000-143294(JP,A)
【文献】特表2014-532118(JP,A)
【文献】特表2008-514605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/42
C23C 16/455
H01L 21/316
H01L 21/31
C07F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子層堆積(ALD)プロセスにより金属酸化物膜を形成する方法であって、
a.表面を覆う官能性O-H基を有する少なくとも1つの基材を提供する工程、
b.前記基材に、少なくとも1種の式1の化合物を気相中にて送達する工程であって、
(A)
x-M-(OR
3)
4-x
(1)
式中:
Aは、-NMe
2、-N(R
4)(CH
2)
nN(R
5R
6)、-N=C(NR
4R
5)(NR
6R
7)、OCOR
1、及びYからなる群から選択され;
R
1は、独立して、1~8個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基からなる群から選択され;
R
4、R
5、R
6及びR
7は、独立して、H及び1~4個の炭素原子を有する非環式アルキル基からなる群から選択され;
Yは、窒素原子を介してMに結合された3~13位の複素環式基からなる群から選択され;
R
3は、1~6個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基であり;
Mは、Si、Ge、及びSnからなる群から選択され;
xは、1~3の整数であり;
nは、1~4の整数で
あり、
式1の化合物はジアセトキシ-ジブトキシシランでは
なく、
Aが-NMe
2
の場合、R
3がメチル及びエチルからなる群から選択される
、工程、
c.前記基材をパージガスでパージする工程、
d.前記基材に、酸素源を、気相中にて送達する工程、
e.前記基材をパージガスでパージする工程、
f.工程b)~工程e)を、所望の厚さの酸化ケイ素が蒸着されるまで繰り返す工程
を含む、方法。
【請求項2】
Aは、アセタート、テトラエチルグアニジニル、ジメチルエチレンジアミニル、及びYからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは、-NMe
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R
1は、独立して、メチル、エチル及びイソブチルからなる群から選択される、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Aは、Yである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Yは、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピペリジニル、ピリジニル、アゼパニル、及びアゼピニルからなる群から選択される、請求項1、2又は5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸素源は、気相中H
2O、気相中H
2O
2、O
2、O
3及びヒドラジンから選択される、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Mは、Siである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Aは、OCOR
1であり、R
1は、独立して、1~4個の炭素原子を有する非環式アルキル基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
Yは、アジリジニル、アゼチジニル、及びピロリジニルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
R
3が1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐した非環式アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
R
3がメチル及びエチルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
R
3がメチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Aは、-N(R
4)(CH
2)
nN(R
5R
6)又は-N=C(NR
4R
5)(NR
6R
7)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
R
4、R
5、R
6及びR
7は、独立して、メチル及びエチルからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Aは、ピロリジニルであり、R
3がメチル及びエチルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物気相蒸着の前駆体として有用となり得る有機金属化合物に関する。本発明の有機金属化合物は、強いルイス塩基である配位子を1つ以上含む。本発明は、かかる化合物を触媒として使用した、オキシダントの存在下での金属酸化物低温気相蒸着にも関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタのサイズが縮小され続けていることから、SiO2及びその他の金属酸化物を高温で熱蒸着するための標準的方法の使用に問題が生じてきた。高温の使用は、いくつかの元素の拡散を引き起こす。この拡散は、トランジスタの基本的特性を変える。結果として、デバイスが損傷される。したがって、High-kを適用するための高品質SiO2及び金属酸化物の低温熱蒸着が好ましい。しかし、一般的に、プラズマアシスト蒸着は、その下にあるデバイス構造を損傷する可能性があることから、SiO2の熱(すなわち、高温)蒸着が好ましい。二酸化ケイ素(SiO2)は、シリコンマイクロエレクトロニクスデバイスにおいて一般的な誘電材料である。高品質のSiO2は、700~900℃でのケイ素の熱酸化によって形成されてきた。SiO2は、化学蒸着(CVD)による堆積も行われており、いくつかのこのようなアプローチは、プラズマ技術を利用する。しかし、CVDは高アスペクト比構造においてコンフォーマルではなく、トレンチ及びバイアスにボイド構造を示す。
【0003】
原子層堆積(ALD)法は、コンフォーマル性及び薄膜成長の原子層制御を得るために使用できる。原子層堆積(ALD)は、逐次的な、自己制御型の表面反応に基づく成長方法である。酸化物、窒化物、及び種々の金属等の様々な材料が、ALDを用いて堆積されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その重要性にもかかわらず、SiO2のALDは実現が困難であった。SiCl4及びH2Oを使用するSiO2のALDは、高温(>325℃)及び大量の反応物質曝露(>109L(1L)10-6トル)を必要とする。NH3又はピリジンの使用により、室温に近い温度及び約103~104Lの曝露が可能になる。しかし、上記の方法によって発生する副生成物は、真空ラインの閉塞、アミン塩酸塩の薄膜への混入を引き起こす場合があり、そのため、薄膜の最終的な品質は極めて低い。
【0005】
しかし、これらの方法においてハロゲン化物を使用すると、堆積中に腐食性のHClが放出される。さらに、放出されたHClは、アミン触媒と反応して塩化物塩を形成し、膜汚染、ひいては低い膜品質を招く。
【0006】
ハロゲン化物の使用を避けるため、SiO2のALDは、アルコキシシラン、アミノシラン及びイソシアナート等の様々な反応物質の使用、種々の触媒及び反応条件の使用を試みてきた。これらの方法は、大量の反応物質曝露を必要とする、長い蒸着時間や、堆積膜の汚染を生じるなど、多数の欠点に悩まされてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
有機金属化合物の一分類が提供される。化合物は、式1の構造に相当し:
(A)x-M-(OR3)4-x
式中:
Aは、-NR1R2、-N(R4)(CH2)nN(R5R6)、-N=C(NR4R5)(NR6R7)、OCOR1、ハロ及びYからなる群から選択され;
R1及びR2は、R1及びR2のうちの少なくとも1つはH以外でなければならないことを条件として、独立して、H及び1~8個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基からなる群から選択され;
R4、R5、R6及びR7は、独立して、H及び1~4個の炭素原子を有する非環式アルキル基からなる群から選択され;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含有する3員~13員の複素環式基からなる群から選択され;
R3は、1~6個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基であり;
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr及びHfからなる群から選択され;
xは、1~3の整数であり;
nは、1~4の整数である。
【0008】
かかる化合物は、金属酸化物気相蒸着の前駆体として有用となり得る。本発明の化合物は、強いルイス塩基である配位子を1つ以上含む。代表的な塩基は、アセタート、ハロゲン化物並びにホスファゼン、アミジン及びグアニジンのような中性でプロトン親和性の高い含窒素種を含む。
【発明の効果】
【0009】
これらの化合物は、CVD、ALD、プラズマアシストALD及びプラズマアシストCVD等の気相堆積プロセスの前駆体として有用となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】薄膜堆積のためのALDシステムの概略図である。
【
図2】(ピロロジニル)Si(OMe)
3のNMRスペクトルを示す。
【
図3】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2のNMRスペクトルを示す。
【
図4】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2のTGAを示す。
【
図5】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2の蒸気圧を示す。
【
図6】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2の熱安定性を示す。
【
図7】(ピロロジニル)
3Si(OMe)のNMRスペクトルを示す。
【
図8】(ピロロジニル)
3Si(OMe)のTGAを示す。
【
図9】(ピロロジニル)
3Si(OMe)の蒸気圧を示す。
【
図10】(テトラメチルグアニジニル)Si(OMe)
3のNMRスペクトルを示す。
【
図11】(テトラメチルグアニジニル)
2Si(OMe)
2のNMRスペクトルを示す。
【
図12】(Et
2N)Si(OMe)
3のNMRスペクトルを示す。
【
図13】ClSi(OMe)
3のNMRスペクトルを示す。
【
図14】Cl
2Si(OMe)
2のNMRスペクトルを示す。
【
図15】(AcO)Si(OMe)
3のNMRスペクトルを示す。
【
図16】(Me
2N)
2Si(OMe)
2のNMRスペクトルを示す。
【
図17】(Me
2N)
2Si(OMe)
2の蒸気圧を示す。
【
図18】(Me
2N)
2Si(OMe)
2の熱安定性を示す。
【
図19】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びH
2Oを80トルにて使用したSiO
2のCVD成長速度と温度の関係を示す。
【
図20】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びO
3を使用したSiO
2のCVD成長速度と温度及び圧力の関係を示す。
【
図21】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びO
3を使用したSiO
2のALDであり、ALDサイクルの数と膜厚の線形性を示す。
【
図22】(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びO
3を用いたSiO
2のALDであり、成長速度に対する温度の影響を示す。
【
図23】希HF酸(0.1%)中でSiOの
2膜のウェットエッチング速度を示す。膜は(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びO
3を使用して250℃及び種々の圧力にてCVDにより作製。
【
図24】希HF酸(0.1%)中でのSiO
2膜のウェットエッチング速度を示す。膜は(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及びO
3を使用して種々の温度にてCVD及びALDにより作製。
【
図25】同一条件を用いて酸化ケイ素の堆積実施に使用した新規材料と市販材料とのウェットエッチング速度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
有機金属化合物の一分類が提供される。化合物は、式1の構造に相当し:
(A)x-M-(OR3)4-x
式中:
Aは、-NR1R2、-N(R4)(CH2)nN(R5R6)、-N=C(NR4R5)(NR6R7)、OCOR1、ハロ及びYからなる群から選択され;
R1及びR2は、R1及びR2のうちの少なくとも1つはH以外でなければならないことを条件として、独立して、H及び1~8個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基からなる群から選択され;
R4、R5、R6及びR7は、独立して、H及び1~4個の炭素原子を有する非環式アルキル基からなる群から選択され;
Yは、少なくとも1個の窒素原子を含有する3~13位の複素環式基からなる群から選択され;
R3は、1~6個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基であり;
Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr及びHfからなる群から選択され;
xは、1~3の整数であり;
nは、1~4の整数である。
【0012】
かかる化合物は、金属酸化物気相蒸着の前駆体として有用となり得る。本発明の化合物は、強いルイス塩基である配位子を1つ以上含む。代表的な塩基は、アセタート、ハロゲン化物並びにホスファゼン、アミジン及びグアニジンのような中性でプロトン親和性の高い含窒素種を含む。
【0013】
強塩基は、当該技術分野で使用される塩基の代表例であるNH3のような塩基よりもはるかに有効かつ効率的にSiO2の形成を触媒する。強塩基触媒の使用により、低温でのSiO2のCVD及びALDの蒸着が可能になる。さらには、高品質のSiO2膜も得られる。
【0014】
本発明の化合物は、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、プラズマアシストALD及びプラズマアシストCVDのような化学相堆積のプロセスにおいて前駆体として有用となり得る。
【0015】
本発明の化合物を上記プロセスに使用することは、当該技術分野において以前から知られているプロセスよりも低温(0~500℃)で蒸着を実施できるという利点がある。
【0016】
反応が進行する温度範囲は、式1の化合物に結合する(NR1R2)x基の数を変える(すなわち、xを変える)ことによって、及び(NR1R2)基の性質を変えることによって、調節できる。
【0017】
反応温度は、0~500℃、より好ましくは100~350℃の範囲であってもよい。
【0018】
強塩基配位子を式1の化合物に組み込むことにより、2成分(Si前駆体+触媒)を使用する当該技術分野のプロセスと比べて、より単純なプロセスが可能になり、曝露の均一性及び膜品質が改善される。
【0019】
式1の化合物は、基材への適用を促進する揮発性及び安定性等の所望の特性を提供するように設計できる。これは、強塩基配位子A及びアルキル基(OR3)の数(x)及び同一性を調節することによって影響を受ける可能性がある。
【0020】
本発明の化合物は、Mが、Si、Ge、Sn、Ti、Hf及びZrからなる群から選択される化合物を含む。好ましい化合物としては、Mが、Si、Ge及びSnからなる群から選択されるものが挙げられる。より好ましい化合物としては、MがSiのものが挙げられる。
【0021】
本発明の化合物は、R3が、1~6個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基である化合物も含む。好ましい化合物は、R3が1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐した低級アルキル基である化合物である。さらに他の好ましい化合物は、R3がメチル及びエチルからなる群から選択される化合物である。
【0022】
本発明の化合物としては、Aが、-NR1R2、-N(R4)(CH2)nN(R5R6)、-N=C(NR4R5)(NR6R7)、OCOR1、ハロ及びYからなる群から選択される化合物も挙げられる。好ましい化合物としては、Aがアセタート、テトラエチルグアニジニル、ジメチルエチレンジアミニル、ブロモ、ヨード及び-NR1R2基からなる群から選択されるものが挙げられる。より好ましい化合物としては、Aが-NR1R2基であるものが挙げられる。
【0023】
その他の好ましい化合物は、R1及びR2が、独立して、H及び1~8個の炭素原子を有する環式又は非環式アルキル基からなる群から選択される化合物である。
【0024】
本発明のより好ましい化合物としては、R1及びR2が、独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基からなる群から選択されるものが挙げられる。本発明のその他の好ましい化合物としては、R1及びR2が、独立して、メチル、エチル及びイソブチルからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0025】
本発明の化合物は、Yが、少なくとも1個の窒素原子を含有する3~13位の複素環式ラジカルを表すものも含む。
【0026】
本発明の好ましい化合物としては、Yが、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピペリジニル、ピリジニル、アゼパニル、又はアゼピニルのような基である化合物が挙げられる。
【0027】
本発明の更なる化合物としては、Yが少なくとも1個のその他のヘテロ原子を有するもの、例えば、オキサジリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、ジアジニル、又はオキサジニル基である化合物が挙げられる。
【0028】
好ましい化合物は、Yが、ピロリジニル、アゼチジニル及びアジリジニルからなる群から選択される化合物である。
【0029】
本発明の化合物としては、R4、R5、R6及びR7が、独立して、H及び1~4個の炭素原子を有する非環式アルキル基からなる群から選択されるものも挙げられる。好ましい化合物は、独立して、メチル及びエチルからなる群から選択されるものである。
【0030】
本発明の化合物は、ALD又はCVDのような方法を使用した薄膜堆積のための前躯体として有用となり得る。例えば、SiO2膜のALDによる蒸着を実施し得る1つの方法は、次のとおりである:
a)表面を覆う官能性O-H基を有する少なくとも1つの基材を提供する、
b)上記基材に、少なくとも1種の式1の化合物(式中、M=Si)を気相中にて送達する、
c)基材をパージガスでパージする;
d)上記基材に、酸素源を、気相中にて送達する、
e)基材をパージガスでパージする;
f)工程b)~工程e)を、所望の厚さの酸化ケイ素が堆積されるまで繰り返す。
【0031】
好適な酸素源としては、気相中H2O、気相中H2O2、O2、O3及びヒドラジンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
【0033】
前駆体Aの反応の半分のサイクルでは、Ar等の不活性キャリアガス(1)は、制御された流量で手動弁(2)及びマスフローコントローラ(3)を通って、前駆体Aを収容するバブラー1(7)まで流れ、気化した前駆体Aを反応室(10)へと運ぶ。バブラー1用の自動切換弁(ASV)4及び8は、予め設定した時間の長さで自動的に開く。その後、ASV4及び8は自動的に閉まり、続いて反応室を、予め設定した時間の長さでパージ及び真空処理する。前駆体Aの反応の半サイクルが終了する。自動的に、ASV13及び17が開き、Ar等の不活性キャリアガス(1)は、制御された流量で手動弁(2)及びマスフローコントローラ(3)を通って、前駆体Bを収容するバブラー2(15)まで流れ、気化した前駆体Bを反応室(10)へと運ぶ。予め設定した時間の長さの後、ASV13及び17は自動的に閉まり、その後反応室を、予め設定した時間の長さでパージ及び真空処理する。前駆体Bの反応の半サイクルが終了する。全反応サイクルが終了し、すなわち、生成物の1つの原子層が基材(20)上に堆積される。このサイクルを繰り返して、所望の厚さを得る。温度は、ヒーター(18)及び熱電対(19)によって制御される。反応室内の圧力は、圧力調整弁(12)によって制御され、この弁は真空ポンプに接続している。
【0034】
本発明の化合物は、当該技術分野において既知のプロセスによって調製されてもよい。以下の実施例は、かかるプロセスの例示であるが、限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0035】
(ピロロジニル)Si(OMe)3の合成
化学式:[(CH2)4N]-Si(OCH3)3
【0036】
7.1gのピロリジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、40mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、15.2gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図2に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例2】
【0037】
(ピロロジニル)2Si(OMe)2の合成
化学式:[(CH2)4N]2-Si(OCH3)2
【0038】
7.1gのピロリジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、40mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、7.6gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図3に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
図4に見られるように、TGA曲線は、残留物が極めて少ない安定な材料を示す。
図5に示す蒸気圧測定は、良好な揮発性を実証し、
図6は、化合物の450℃までの熱安定性を実証する。
【実施例3】
【0039】
(ピロロジニル)3Si(OMe)の合成
化学式:[(CH2)4N]3-Si(OCH3)
【0040】
7.1gのピロリジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、40mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、5.1gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図7に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
図8に見られるように、TGA曲線は、残渣が極めて少ない安定な材料を示す。
図9に示す蒸気圧測定は、良好な揮発性を実証する。
【実施例4】
【0041】
(テトラメチルグアニジニル)Si(OMe)3の合成
化学式:[NC(N(CH3)2)2]-Si(OCH3)3
【0042】
10gのテトラメチルグアニジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、35mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、13.2gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図10に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例5】
【0043】
(テトラメチルグアニジニル)2Si(OMe)2の合成
化学式:[NC(N(CH3)2)2]2-Si(OCH3)2
【0044】
10gのテトラメチルグアニジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、35mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、6.6gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図11に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例6】
【0045】
(テトラメチルグアニジニル)3Si(OMe)の合成
化学式:[NC(N(CH3)2)2]3-Si(OCH3)
【0046】
10gのテトラメチルグアニジン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN2下で仕込んだ後、35mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、4.4gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
【実施例7】
【0047】
(Et2N)Si(OMe)3の合成
化学式:[(CH3CH2)2N]-Si(OCH3)3
【0048】
3.7gのジエチルアミン及び100mLのヘキサンを、250mLフラスコにN
2下で仕込んだ後、20mLの2.5M BuLiを加えた。1時間撹拌した後、7.6gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図12に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例8】
【0049】
ClSi(OMe)3の合成
化学式:Cl-Si(OCH3)3
【0050】
250mLフラスコに、5.1gの塩化アセチル、7.6gのオルトケイ酸テトラメチル及び0.02gの三塩化アルミニウムを、N
2下で仕込んだ。混合物を約3時間加熱還流し、次いで室温まで自然冷却した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図13に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例9】
【0051】
Cl2Si(OMe)2の合成
化学式:Cl2-Si(OCH3)2
【0052】
250mLフラスコに、4gの(ピロロジニル)
2Si(OMe)
2及び50mLのジエチルエーテルを仕込み、続いて35mLの2M HCl/ジエチルエーテル溶液を添加した。1時間撹拌した後、反応混合物を濾過した。氷/アセトン浴中で冷却しながら、真空下で揮発分を濾液から除去した。
図14に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例10】
【0053】
(AcO)Si(OMe)3の合成
化学式:(AcO)-Si(OCH3)3
【0054】
100mLフラスコに、22.8gのオルトケイ酸テトラメチル及び15.3gの無水酢酸を、N
2下で仕込んだ。混合物を120℃で約4時間加熱し、次いで室温まで自然冷却した。揮発分を真空下で除去した。次いで、分別蒸留を実施して、所望の生成物を回収した。
図15に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
【実施例11】
【0055】
(Me2N)2Si(OMe)2の合成
化学式:[(CH3)2N]2-Si(OCH3)2
【0056】
40mLの2.5M BuLi/ヘキサン溶液を、250mLフラスコにN
2下で仕込み、続いて、反応完了までジメチルアミンガスを通した。1時間撹拌した後、7.6gのオルトケイ酸テトラメチルを加えた。終夜撹拌後、反応混合物を濾過し、透明な液体を回収した。揮発分を真空下で除去した。得られた液体生成物を、その後、蒸留により精製した。
図16に示すように、NMR分析により、生成物を確認した。
図17に示す蒸気圧測定は、非常に良好な揮発性を実証している。
図18に示す封止アンプル内で実施した熱分解試験は、この材料が450℃まで熱的に安定であることを示す。
【実施例12】
【0057】
(ピロリジニル)2Si(OMe)2を使用したSiO2蒸着
SiO2膜を、前駆体(ピロリジン)2Si(OMe)2から、O3又はH2Oを酸化剤として使用して、様々な温度及び圧力でCVD及びALDにより作製した。SiO2膜の成長速度に関するデータを取得し、膜品質を密度及び希HF酸中でのウェットエッチング速度(WER)によって評価した。
【0058】
CVDによって作製した膜の成長速度と温度及びガス圧力の関係を
図19及び20に示す。これらは、H
2Oをオキシダントとして使用したときには成長速度が比較的遅く、3A/分以下(
図19の目盛はnm/分単位で、これは10A/分)であることを示す。後続の試験はO
3を酸化剤として使用し、
図20に示すように、約10倍の成長速度が得られた。成長速度は堆積圧とはほぼ無関係で、200~300℃の温度範囲で最適化されることがわかる。
【0059】
その後の試験は、1サイクル当たりの膜成長を、ALDを使用して測定した。
図21は、1サイクルにつき1つの原子層堆積プロセスが正しく機能している場合に予想される通り、膜厚成長がサイクルの数に対して線形であり、曝露時間の増大とともに1サイクル当たりの成長速度が平坦になることを示す。
【0060】
図22は、1サイクル当たりの成長速度の温度依存性を温度の関数として示し、最適温度範囲が250~400℃であることを示唆している。
【0061】
生成した膜の品質を、密度及び0.1%HF酸中でのウェットエッチング速度を測定することによって評価した。
図23は、250℃及び様々な堆積圧でCVDによって作製された膜のWER及び密度を示す。
図24は、様々な温度でCVD及びALDによって作製した膜のWERを比較しており、ALDで作製した膜の卓越した品質を示す(より低いWERが、より優れた膜品質の指標とみなされる)。
【0062】
比較のため、様々な方法で作製した膜のWERを文献から引用する。熱的SiO
2のWERは、1.8A/分で測定した。これは最も高品質の薄膜であるが、多数の用途で不適合となる高温を必要とする。標準的な前駆体を用いてプラズマアシストCVD及びALDによって作製した薄膜を、それぞれ60A/分及び40A/分で測定した。
図25に示すように、これらは本明細書で示したALD膜のWERよりも実質的に高い。
【符号の説明】
【0063】
1 不活性キャリアガス導入
2 不活性ガス導入を制御する手動弁
3 不活性ガス導入をデジタル制御するマスフローコントローラ
4 不活性キャリアガスをバブラー1に導入するための自動切換弁
5 不活性キャリアガスを導入するためのバブラー上の手動弁
6 気化した前駆体を含む不活性キャリアガスを排出するためのバブラー上の手動弁
7 前駆体Aを収容するバブラー
8 気化した前駆体を含む不活性キャリアガスを反応室に導入するための自動切換弁
9 ライン内の残留物を除去するための自動切換弁
10 反応室
11 ライン内の前駆体及び残留物を除去するための自動切換弁
12 反応室内のガス圧を制御する真空ポンプの圧力調整弁
13 不活性キャリアガスをバブラー2に導入するための自動切換弁
14 不活性キャリアガスを導入するためのバブラー上の手動弁
15 前駆体Bを収容するバブラー
16 気化した前駆体を含む不活性キャリアガスを排出するためのバブラー上の手動弁
17 気化した前駆体を含む不活性キャリアガスを反応室に導入するための自動切換弁
18 ヒーター
19 熱電対
20 基材