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特許7265606燃料要素のための鋼-バナジウム合金のクラッディング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】燃料要素のための鋼-バナジウム合金のクラッディング
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/07 20060101AFI20230419BHJP
   G21C 3/06 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G21C3/07 200
G21C3/06 220
G21C3/06 320
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021190069
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2019543229の分割
【原出願日】2017-06-14
(65)【公開番号】P2022024128
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】62/458,377
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513313945
【氏名又は名称】テラパワー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハケット,マイカ,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴェテリック,グレッグ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュ,チェン
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0064105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06- 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼-中間層-バナジウムクラッディングであって、
鋼の外側層と、
バナジウム、バナジウムとチタンとの合金、および、バナジウムとチタンとクロムとの合金から選択される内側層と、
前記外側層と前記内側層との間のクロムまたはクロム合金の中間層と、
を含むことを特徴とする、鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項2】
前記外側層はT92鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項3】
前記内側層は、V-4Cr-4Tiからなることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項4】
前記内側層は、前記外側層の厚さの0.1%から50%である厚さを有し、前記中間層は、前記外側層の厚さの0.1%から50%である厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項5】
前記内側層は、前記外側層の厚さの0.1%から50%までの厚さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項6】
前記中間層は、前記外側層の厚さの0.1%から50%までの厚さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項7】
前記内側層は、前記外側層の厚さの1%から5%までの厚さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項8】
前記中間層は、前記外側層の厚さの1%から5%までの厚さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項9】
前記内側層は、前記外側層の厚さの1%から5%までの厚さを有し、前記中間層は、前記外側層の厚さの1%から5%までの厚さを有していることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項10】
前記外側層は、鋼-中間層-バナジウムクラッディングの全厚さの少なくとも99%であり、
前記内側層と前記中間層のそれぞれは、前記外側層の厚さの0.0001%~0.5%であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項11】
鋼-中間層-バナジウムクラッディングは、内表面および外面を有する管の形態であり、前記内側層は、前記管の内表面を形成し、前記外側層は、前記管の外面を形成することを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項12】
さらに、前記管の内部に、ある量の核物質を含むことを特徴とする、請求項11に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項13】
前記核物質が、U、Th、Am、Np、およびPuから選択される1つ以上の元素を含むことを特徴とする、請求項12に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項14】
前記核物質が、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、Nd、およびHfから選択される少なくとも1つの耐熱材料を含むことを特徴とする、請求項12に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項15】
前記内側層がバナジウムからなり、前記中間層がクロムからなることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【請求項16】
前記内側層がバナジウムからなり、前記中間層がクロム合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の鋼-中間層-バナジウムクラッディング。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、PCT国際出願として2017年6月14日に出願されており、2017年2月13日に出願された米国仮特許出願第62/458,377号(発明の名称「燃料要素用鋼-バナジウム合金クラッディング」)に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
核燃料が原子炉で使用される場合、該核燃料には、通常、クラッディング(cladding)が設けられている。上記クラッディングは、燃料を収容するために、および/または、燃料が外部環境と相互作用することを防止するために設けられてもよい。例えば、幾つかの核燃料は、冷却材その他の材料との化学的反応性を有しているが、そうではない場合、上記冷却材その他の材料と接触してもよく、上記クラッディングがセパレータとして作用しなくてもよい。
【0003】
上記クラッディングは、構造的要素であってもよいし、なくてもよい。例えば、或る場合には、核燃料は、例えばウラン金属または二酸化ウランの固体ロッドのような固体の構造的要素であり、上記クラッディングは、本質的には、固体燃料の表面に塗布されるコーティングである。他の場合には、核燃料は、液状の形態、粉末の形態、或いは、例えばペレットまたは粒子のような集合体の形態であってもよく、これは、構造的クラッディング内に封じ込めることを必要としてもよい。いずれの場合も、上記クラッディングは、上記燃料が内部に配置される管、箱、または容器の形態となってもよい。上記燃料と上記クラッディングとの組合せは、多くの場合、「燃料要素」、「燃料棒」、または「燃料ピン」と称される。
【0004】
金属燃料システムにおける燃料クラッド化学的相互作用(fuel clad chemical interaction)(FCCI)は、上記燃料と上記クラッド構成要素との間における化学反応による燃料要素の劣化を指す。上記化学的相互作用は、少なくとも部分的に、上記クラッディングから上記燃料へ、或いは上記燃料から上記クラッディングへの化学種(species)の多成分相互拡散に起因する。具体的には、拡散対の実験および照射の実験の両方により、クラッド構成要素(鉄およびニッケル)の上記燃料への移動が実証されている。一方、核分裂生成物(主に、セリウム、ネオジム、およびプラセオジムのようなランタニド)は、外側に拡散して上記クラッドに移動する。
【0005】
FCCIは、2つの主要な懸念をもたらす。すなわち、脆性金属間化合物の形成および上記クラッディングの損耗/薄化からクラッドの機械的特性が低下すること、および、上記燃料およびクラッドの界面内に比較的低融点の組成物が形成されることである。これらの懸念は、最終的には、上記燃料システムの性能限界に影響を及ぼし、内部燃料被覆最高温度(peak inner clad temperature )(PICT)は、33at%のFeで形成されるウラン-鉄共晶の低融点(725℃)によって影響される。さらに、EBR-IIで照射されたロッドの燃料供給領域におけるクラッディング破損の発生により、破損位置に隣接する広範なFCCI(上記クラッド内への最大170μmまでの貫通)が示され、FCCIがこれらの破損の主要な原因であることが示唆された。
【0006】
ナトリウム結合ド型金属燃料ピンは、管理可能な量のFCCIで、最大20at%で燃焼度を最大限とするために照射されているが、該照射は、通常、2~4年にわたって行われている。進行波炉(TWR)の用途に必要とされるより高いピーク燃焼度(30at%)を超えると、所定の温度での使用時間が延長されることにより、FCCIによる劣化の懸念がいっそう大きくなる。
【0007】
〔図面の簡単な説明〕
本出願の一部を形成する以下の図面は、記載された技術を例示するものであり、特許請求の範囲に種々の形態で記載された本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本発明の範囲は、本願に添付の特許請求の範囲に基づくべきである。
【0008】
図1は、クラッディングまたは壁要素の縦断面(linear section)を示す切り欠き図であり、構造的な外層を有するクラッディングの2層構造を示すものである。
【0009】
図2は、図1の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0010】
図3は、核物質と接触している、図1の上記壁要素を示す図である。
【0011】
図4は、管状クラッディング内に核物質を含む、図2の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0012】
図5は、クラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、構造的な内部バナジウム合金層を有するクラッディングの2層構造を示すものである。
【0013】
図6は、図5の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0014】
図7は、核物質と接触している、図5の上記壁要素を示す図である。
【0015】
図8は、管状クラッディング内に核物質を含む、図6の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0016】
図9は、別の実施形態のクラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、3層構造を有するものである。
【0017】
図10は、図9の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0018】
図11は、核物質と接触している、図9の上記壁要素を示す図である。
【0019】
図12は、管の中空中央に核物質を含む、図10の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
【0020】
図13は、上述のような、外部環境から核物質を分離するための2層または3層の壁要素を製造する方法を示す図である。
【0021】
図14aは、核燃料アセンブリを示す図である。
【0022】
図14bは、燃料要素の詳細を示す図である。
【0023】
図15Aは、炭素がドープされたバナジウムの第1層の一方の側と、HT9鋼の第2の層の他方の側とに電気めっきされたNiの中間層を有するトライメタルのクラッディングを示す顕微鏡写真である。
【0024】
図15Bは、炭素がドープされたバナジウムの第1層の一方の側と、HT9鋼の第2の層の他方の側とに電気めっきされたNiの中間層を有するトライメタルのクラッディングを示す顕微鏡写真である。
【0025】
図15Cは、図15Aおよび図15Bのトライメタルのクラッディングの化学組成マッピングを示す図である。
【0026】
〔発明の詳細な実施形態〕
本開示によって、核物質を外部環境から分離する壁要素として使用するためのバイメタルおよびトライメタル(trimetallic)のクラッディングに関する様々な構成および構成要素が説明される。上記クラッディングの材料は、核燃料要素のためのクラッディングとしての利用に適しており、特に、核燃料と反応する傾向を有するナトリウムその他の冷却材或いは環境に曝される燃料要素のためのクラッディングとしての利用に適している。
【0027】
〔2層鋼・バナジウム合金クラッディング〕
〔炭素ドープされたバナジウムライナを有する構造的鋼層〕
図1は、クラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、上記クラッディングの2層構造を示すものである。クラッディング100は、反応性の外部環境から核燃料を分離する任意の構造的構成要素の一部であってもよい。例えば、クラッディング100は、核燃料を収容する管、容器、その他任意の形状の貯蔵コンテナにおける壁の一部であってもよい。代替の実施形態では、上記クラッディングは、コンテナの壁部である代わりに、固体核燃料の表面に何らかの付着技術またはクラッディング技術によって生成された層であってもよい。これらの技術は、ごく少数の例を挙げるとすれば、電気めっき、溶射コーティング、化学蒸着、スパッタリング、イオン注入、イオンプレーティング、スパッタ蒸着、レーザ表面合金化、ホットディッピング、およびアニーリングのように、当該技術分野で周知であり、所望の最終的なクラッディング特性に依存して、任意の好適な技法を使用することができる。
【0028】
使用される製造技術にかかわらず、図1に示されるクラッディング100は、2つの材料の層102、104、すなわち、第1の層102と、上記クラッディングの構造的要素である第2の構造層104とからなる。第1の層102は、上記燃料を構造層104から分離し、或いは、燃料が未だ供給されていない場合に燃料が配置される格納領域を構造層104から分離する。第1の層102は、構造層104を燃料との接触から保護するきせ金(liner)として機能する。第2の層104は、第1の層102と外部環境との間に存在する。従って、第1の層102は、一方の表面が上記燃料に曝され、他方の表面が第2の層104に曝される材料の層であり、一方、第2の層104は、第1の層との対向面と、上記外部環境に曝される表面とを有する。
【0029】
図1に示すクラッディング100が有する第1の層102の材料は、第1の層102と貯蔵される上記燃料との両方の特性に対するFCCIの影響を低減するように選択され、かつ、第2の層104と第1の層102との間の有害な化学的相互作用の影響を低減するように選択される。一実施形態では、第1の層102は炭素ドープバナジウムであり、上記第2の層は鋼である。上記鋼の層と上記炭素ドープバナジウムの層との間の相互作用を低減するために、一実施形態では、上記炭素ドープバナジウムは、少なくとも0.001wt%(10ppm)の炭素でドープされる。これにより、上記鋼にて観察される脱炭素の量が低減して、燃料要素として使用されている間の上記鋼の劣化が低減するであろう。
【0030】
一実施形態では、上記炭素ドープバナジウムは、少なくとも99.0wt%のVと、0.001~0.5wt%のCと、残りの他の元素とからなるバナジウム炭素合金である。ここで、上記炭素ドープバナジウムにおける上記他の元素のいずれもが0.1wt%以下であり、上記他の元素の総量は、0.5wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量(すなわち、VまたはCではない組成物の総量)は、上記合金の0.05、0.025、または0.01wt%を超えない。或る具体的な実施形態では、例えば、上記炭素の範囲は0.1~0.3wt%のCであり、上記他の元素(VまたはCではない全て)の総量は0.5wt%未満であり、残りはVである。別の具体的な実施形態では、例えば、上記炭素の範囲は0.1~0.3wt%のCであり、上記他の元素(VまたはCではない全て)の総量は0.1wt%未満であり、残りはVである。
【0031】
鋼層104は、任意の適切な鋼とすることができる。適切な鋼の例には、マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、FeCrAl合金、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、および304鋼が含まれる。上記鋼は、任意の種類の微細構造を有することができる。例えば、一実施形態では、層104内の略全ての鋼は、焼戻しマルテンサイト相、フェライト相、およびオーステナイト相から選択される少なくとも1つの相を有する。一実施形態では、上記鋼は、HT9鋼またはHT9鋼の改質版である。
【0032】
一実施形態では、改質型HT9鋼は、9.0~12.0wt%のCr、0.001~2.5wt%のW、0.001~2.0wt%のMo、0.001~0.5wt%のSi、0.5wt%までのTi、0.5wt%までのZr、0.5wt%までのV、0.5wt%までのNb、0.3wt%までのTa、0.1wt%までのN、0.3wt%までのC、および、0.01wt%までのBであり、残りはFeおよび他の元素である。ここで、上記鋼に含まれる上記他の元素のそれぞれは、0.15wt%未満であり、上記他の元素の総量は0.35wt%を超えない。他の実施形態では、上記鋼は、Siの範囲が0.1~0.3wt%のようにより狭くてもよい。鋼層104の上記鋼には、Ti、Zr、V、Nb、TaまたはBの炭化物析出物、Ti、Zr、V、NbまたはTaの窒化物析出物、および/または、Ti、Zr、V、NbまたはTaの炭窒化物析出物のうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0033】
図2は、図1の上記クラッディングの管状の実施形態を示す。図示の実施形態では、壁要素200は、内面および外面を有する管の形態であり、炭素ドープバナジウムの第1の層202が上記管の内面を形成し、鋼の第2の層204が上記管の外面を形成する。燃料貯蔵領域は、上記管の中央に存在する。従って、上記管内の燃料は、反応性の外部環境から保護されると同時に、鋼層104が燃料から分離される。
【0034】
本明細書にて壁要素という一般的な用語を使用することにより、管、容器、または他の形状のコンテナが、図1に示すように、クラッディング100における異なる複数の壁または壁部を有してもよいということが認識される。すなわち、上記コンテナの形状は、容器を形成するための1つ以上の連続的に接続された壁要素によって定義される。しかし、クラッディングの実施形態には、図1に示されるようなクラッディング100の壁要素と同様に、クラッディング100ではない材料で構成される1つ以上の壁要素を有するものが含まれる。例えば、管は、図1および図2に記載されたクラッディング100の筒状壁要素を有するが、端壁が異なる構造であってもよい。同様に、立方体形状の燃料コンテナは、側壁および底壁が図1に示すような構造であるが、頂部が異なる構造であってもよい。
【0035】
図3は、図1の上記壁要素を示すが、図3では核物質310が炭素ドープバナジウム層302と接触している。なお、核物質310は核燃料を含むがこれに限定されるものではない。鋼層304は、上記クラッディングに望ましい強度特性を提供するのに必要な任意の厚さ(すなわち、反応性の環境に曝される鋼層304の外面とバナジウム層302との間の最短距離)であってもよい。炭素ドープバナジウム層302の厚さは、薄いコーティングの厚さ(構造層304の厚さの0.1%)から構造層304の厚さの50%の厚さまでであってもよい。例えば、上記炭素ドープバナジウム層の実施形態では、厚さの範囲は、上記鋼層の厚さのパーセンテージとして、低端における0.1%、0.5%、1.0%、2.5%、5%、10%、15%、20%および25%から、高端における5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%および50%までである。上記壁要素の実施形態は、上述で提供された上限および下限の任意の組み合わせである範囲を含む。例えば、上述で具体的に含む炭素ドープバナジウム層の実施形態は、上記鋼層の厚さの1~5%、0.1~10%、20~45%、および0.1~50%の範囲を有する。しかし、上記炭素ドープバナジウム層の厚さに関係なく、壁要素300の主要な構造的要素は鋼層304である。
【0036】
同様に、図4は、図2の上記クラッディングの管状の実施形態を示すが、図4では核物質410が管400の中空中央に存在する。なお、核物質410は核燃料を含むがこれに限定されるものではない。また、鋼層404は、上記クラッディングに望ましい強度特性を提供するのに必要な任意の厚さであってもよい。炭素ドープバナジウム層402の厚さは、薄いコーティングの厚さ(構造層404の厚さの0.1%)から構造層404の厚さの50%の厚さまでであってもよい。しかし、上記炭素ドープバナジウム層の厚さに関係なく、壁要素400の主要な構造的要素は鋼層404である。
【0037】
代替の実施形態では、図1図4に示す上記クラッディングには、上記鋼構造層と上記炭素ドープバナジウム層との間に第3の中間層が設けられて、上記鋼と上記炭素ドープバナジウムとの間の相互作用がさらに低減されてもよい。適切な中間層の実施形態は、図9図12を参照して以下に説明される。
【0038】
本出願の目的のために、核物質は、核燃料として使用できるかどうかにかかわらず、アクチニドを含有する任意の物質を含む。従って、任意の核燃料は核物質であるが、より広義には、微量以上のU、Th、Am、Np、および/またはPuを含有する任意の物質は核物質である。核物質の他の例には、使用済み燃料、劣化ウラン、イエローケーキ、二酸化ウラン、ジルコニウムおよび/またはプルトニウムを有する金属ウラン、二酸化トリウム、トリアナイト、四塩化ウランおよび/または三塩化ウランを含有する塩などの塩化ウラン塩が含まれる。
【0039】
一方、核燃料は、任意の核分裂性物質を含む。核分裂性物質は、低エネルギー熱中性子または高エネルギー中性子に曝されると核分裂を経ることが可能な任意の核種を含む。さらに、核分裂性物質は、任意の核分裂性物質、任意の親物質、または核分裂性物質と親物質との組み合わせを含む。核分裂性物質は、金属および/または金属合金を含むことができる。一実施形態では、上記燃料は金属燃料であってもよい。金属燃料は、比較的高い重金属負荷と優れた中性子経済とをもたらすことができ、これは、核分裂原子炉の増殖および燃焼処理にとって望ましいことが理解され得る。用途に応じて、燃料は、U、Th、Am、Np、およびPuから選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。一実施形態では、上記燃料は、少なくとも約90wt%のU、例えば、少なくとも95wt%、98wt%、99wt%99.5wt%、99.9wt%、99.99wt%、またはそれ以上のUを含んでもよい。さらに、上記燃料は耐熱性物質を含んでもよく、該耐熱性物質は、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、およびHfから選択される少なくとも1つの元素を含んでもよい。一実施形態では、上記燃料は、ホウ素、ガドリニウム、またはインジウムなどの追加の可燃性毒を含んでもよい。さらに、照射中に上記燃料を寸法的に安定させ、上記クラッディングの低温共晶および腐食損傷を抑制するために、金属燃料は約3wt%~約10wt%のジルコニウムで合金化されてもよい。
【0040】
上記核物質が分離される反応性の環境または物質の例には、NaCl-MgCl、Na、NaK、臨界超過のCO、鉛、および鉛ビスマス共晶などの原子炉冷却材が含まれる。
【0041】
〔鋼のきせ金を有する構造的バナジウム合金層〕
図5は、クラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、構造的な内部バナジウム合金層を有するクラッディングの2層構造を示すものである。この場合も、クラッディング500は、反応性の外部環境から核燃料を分離する任意の構造的構成要素の一部であってもよい。例えば、クラッディング500は、核燃料を収容する管、容器、その他任意の形状の貯蔵コンテナにおける壁の一部であってもよい。代替の実施形態では、上記クラッディングは、コンテナの壁部である代わりに、固体核燃料の表面に何らかの付着技術またはクラッディング技術によって生成された層であってもよい。これらの技術は、ごく少数の例を挙げるとすれば、電気めっき、溶射コーティング、化学蒸着、スパッタリング、イオン注入、イオンプレーティング、スパッタ蒸着、レーザ表面合金化、ホットディッピング、およびアニーリングのように、当該技術分野で周知であり、所望の最終的なクラッディング特性に依存して、任意の好適な技法を使用することができる。
【0042】
使用される製造技術にかかわらず、図5に示されるクラッディング500は、2つの材料の層502、504からなる。第1の層502は、上記クラッディングの主要な構造的要素であり、上記燃料を第2の層504から分離し、或いは、燃料が未だ供給されていない場合に燃料が配置される格納領域を第2の層504から分離する。第2の層504は、第1の層502と外部環境との間に存在する。従って、第1の層502は、一方の表面が上記燃料に曝され、他方の表面が第2の層504に曝される材料の層であり、一方、第2の層504は、第1の層との対向面と、上記外部環境に曝される表面とを有する。
【0043】
図1図4を参照して上述した上記クラッディングと同様に、図5に示すクラッディング500が有する第1の層502の材料は、第1の層502と貯蔵される上記燃料との両方の構造特性に対するFCCIの影響を低減するように選択され、また、第2の層504と第1の層502との間の有害な化学的相互作用の影響を低減するように選択される。
【0044】
一実施形態では、第1の層502は、少なくとも90%のVを含むバナジウム合金であり、第2の層504は、鋼である。第1の層502に使用され得るバナジウム合金には、バナジウム炭素合金、V-20Ti、V-10Cr-5Ti、V-15Cr-5Ti、V-4Cr-4Ti、V-4Cr-4Ti NIFS Heats1&2、V-4Cr-4Ti USHeats832665&8923864、および、V-4Cr-4Ti Heat CEA-J57が含まれるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、上記バナジウム合金は、3.0~5.0wt%のCr、3.0~5.0wt%のTi、および0.02wt%以下のCを含み、残りはVおよび他の元素である。ここで、上記バナジウム合金に含まれる上記他の元素のそれぞれは、0.1wt%以下であり、上記他の元素の総量は、0.5wt%を超えない。この純粋性要件は、例えばTiの二重若しくは三重溶融、またはVの電気精製のような、VおよびTiの特殊精製を必要としてもよい。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記合金の0.4、0.25、または0.1wt%さえも超えない。上記炭素の範囲は、上記実施形態に依存するが、0.0001~0.02wt%Cであってもよい。上記バナジウム合金は、Cr、Tiおよび/または他の元素の1つ以上の炭化物析出物を含んでも良い。
【0045】
或る具体的なV-4Cr-4Tiの実施形態が、以下の表1に提供される。
【0046】
【表1】
表1に示す実施形態について、或る適切な製造プロセスは以下の通りである。原材料源は、不純物の含有量が低いヨウ化バナジウムまたは電気精製バナジウムであってもよく、一実施形態では、カルシウム還元プロセスは、バナジウムを取得するために使用されることはない。一実施形態では、チタン源は、Cl、K、およびNa不純物を低減するためにスポンジチタンを含むことはなく、チタン供給原料の二重溶融または三重溶融は、必要な純粋レベルを達成するために行われることができる。上記V-4Cr-4Tiは、汚染を防止するために、レーザービーム溶融、真空アーク溶融、または冷陰極誘導溶融などの適切な方法を用いて溶融されてもよい。次に、インゴットを均質化して、CrおよびTiの局所不均質性を±0.3wt%よりも狭い範囲内に低減する。その後、上記インゴットをステンレス鋼でカプセル化し、1100~1300℃の温度で押し出しまたは熱間加工し、続いて300~900℃の温度でバイメタルのクラッディング管の製造に必要な最終ビレットサイズに温間圧延する。熱間加工中の1つ以上の中間焼鈍は、真空炉内にて800~1200℃で3時間まで行ってもよい。1つ以上の同様の焼鈍が、任意の冷間加工処理の一部として実行されてもよい。冷間加工中の上記焼鈍は、バナジウムを軟化させるために900~1000℃(例えば、950±10℃)の一連の焼鈍を含み、続いてHT9をマルテンサイトからフェライトに変換するために700~780℃の1つ以上の焼鈍を含んでもよい。バイメタルのクラッディング管製品の最終熱処理は、1075±10℃での20分間および室温への空気冷却、続いて650~700℃での1~3時間および急速な冷却速度、が行われる。
【0047】
鋼層504は、図1図4を参照して上述したように、任意の適切な鋼であってもよい。例えば、一実施形態では、上記鋼は、9.0~12.0wt%のCr、0.001~2.5wt%のW、0.001~2.0wt%のMo、0.001~0.5wt%のSi、0.5wt%までのTi、0.5wt%までのZr、0.5wt%までのV、0.5wt%までのNb、0.3wt%までのTa、0.1wt%までのN、0.3wt%までのC、および0.01wt%までのBを有し、残りがFeおよび他の元素である改質型HT9鋼である。ここで、上記鋼に含まれる上記他の元素のそれぞれは、0.15wt%以下であり、上記他の元素の総量は0.35wt%を超えない。他の実施形態では、上記鋼は、Siの範囲が0.1~0.3wt%のようにより狭くてもよい。鋼層104の上記鋼には、Ti、Zr、V、Nb、TaまたはBの炭化物析出物、Ti、Zr、V、NbまたはTaの窒化物析出物、および/またはTi、Zr、V、NbまたはTaの炭窒化物析出物のうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0048】
上述したように、バナジウム合金層502は、上記クラッディングの主要な構造的要素である。すなわち、バナジウム合金層502は、燃料要素の形状を維持し、かつ、クラッディングの破損および核物質の放出を防止する固体構造の大部分を提供する層である。鋼層504は、バナジウム合金層502の外面における鋼のコーティングに過ぎない。これらの実施形態では、上記バナジウム合金層は、鋼層504の少なくとも2倍の厚さである。すなわち、鋼層504は、バナジウム合金層502の厚さの0.001%程度であってもよく、バナジウム合金層502の厚さの50%までであってもよい。様々な実施形態では、上記鋼層の厚さは、バナジウム合金層502の厚さの0.01%、0.1%または1%から、バナジウム合金層502の厚さの5%、10%、15%、20%または25%までとしてもよい。
【0049】
図6は、図5の上記クラッディングの管状の実施形態を示す。図示の実施形態では、壁要素600は、内面および外面を有する管の形態であり、バナジウム合金の第1の層602は、上記管の内面を形成し、鋼の第2の層604は、上記管の外面を形成する。燃料貯蔵領域は、上記管の中央領域に存在する。従って、上記管内の燃料は、反応性の外部環境から保護されると同時に、鋼層604が上記燃料から分離される。また、本明細書にて壁要素という一般的な用語を使用することにより、管、容器、または他の形状のコンテナが、図5に示すように、クラッディング500における異なる複数の壁または壁部を有してもよいということが認識される。
【0050】
図7は、図5の上記壁要素を示すが、図7では核物質710がバナジウム層702と接触している。なお、核物質710は核燃料を含むがこれに限定されるものではない。また、鋼層704の厚さは、薄いコーティングの厚さからバナジウム合金構造層702の厚さの50%の厚さまでであってもよい。
【0051】
図8は、同様に、図6の上記クラッディングの管状の実施形態を示すが、図8では核物質810が管800の中空中央に存在する。なお、核物質810は核燃料を含むがこれに限定されるものではない。また、鋼層804の厚さは、薄いコーティングの厚さからバナジウム層802の厚さの50%の厚さまでであってもよい。しかし、主要な構造的要素はバナジウム合金層802である。
【0052】
代替の実施形態では、図5図8に示す上記クラッディングには、上記バナジウム合金構造層と上記鋼層との間に第3の中間層を設けられて、上記鋼と上記バナジウム合金との間の相互作用をさらに低減されてもよい。適切な中間層の実施形態は、図9図12を参照して以下に説明される。
【0053】
〔3層の鋼-バナジウムのクラッディング〕
また、バイメタルのクラッディングの上記実施形態に加えて、上述のクラッディングのトライメタル版が有用であり得る。トライメタルのクラッディングの実施形態は、上述の上記鋼層および上記バナジウム層の間の相互作用を低減するために、上記鋼層および上記バナジウム層の間に中間層を設けることを含む。これらの実施形態は、上記鋼層が上記構造層であるクラッディングと、上記バナジウム層がバナジウム合金であり、上記構造層として機能するクラッディングとを含む。いずれの実施形態においても、上記中間層は、上記鋼と上記バナジウムとの間の相互作用を防止する障壁として機能する。上記鋼層が上記クラッディングの上記構造的要素である実施形態では、本明細書に記載のバナジウム材料のいずれもがバナジウム層に適している。図9図12には、中間層と構造的鋼層とを有する上記トライメタルのクラッディングの実施形態が具体的に例示されているが、本明細書では、複数のトライメタルのクラッディングの実施形態が説明されている。
【0054】
図9は、別の実施形態のクラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、3層構造を有するものである。上述したクラッディングの実施形態と同様に、第1の層902に使用されるバナジウム材料は、第1の層902の特性と、燃料要素に使用される燃料の特性との両方に対するFCCIの影響を低減するように再び選択される。また、外層904は、上述のように鋼である。
【0055】
図示のクラッディング900では、真ん中の層すなわち中間層906は、鋼層904とバナジウム層902との間のきせ金として機能する。図示の実施形態では、鋼層904は、燃料クラッディング900の主要な構造的構成要素である。本実施形態では、鋼層904は、最も厚い層であり、その結果、クラッディング900のための構造的支持を提供する。鋼層904は、クラッディング900の全厚さの50%以上であってもよい。例えば、鋼層904の実施形態では、下限は、クラッディング900の全厚さの50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%、さらには99.9%である。上限は、100%よりも或る量だけ少なく制限され、該或る量は、上記中間層および上記バナジウム層は、FCCIからの或る程度の保護を提供するのに十分な量である。例えば、上限は、クラッディング900の全厚さの75%、80%、90%、95%、99%、99.9%、さらには99.999%の中から考えられる。残りの厚さは、他の2つの層によって形成される。従って、広義の実施形態では、上記クラッディングは、冷却材と対向する厚い鋼層と、薄い燃料側バナジウム合金または炭素ドープバナジウム層と、2つの上記層の間の薄い保護層と考えてもよい。ここで、「薄い」とは、上記クラッディングの全厚さの10%以下を意味する。例えば、一実施形態では、クラッディング900の鋼層904は、具体的には、上記クラッディング全体の厚さの少なくとも99%であり、中間層906およびバナジウム合金層902のそれぞれは、上記クラッディング全体の厚さの0.0001%~0.9%である。
【0056】
第1の層902に使用される材料は、図1図4を参照して上述したバナジウム材料、または図5図8を参照して上述したバナジウム合金のいずれであってよい。
【0057】
同様に、外側の鋼層906に使用される材料は、図1図8を参照して上述した鋼のいずれであってもよい。一実施形態では、例えば、上記鋼は、上記で定義された改質型HT9鋼である。
【0058】
中間層906を形成する材料について、該材料とバナジウム合金層902との化学的相互作用は、鋼層904内の鋼とバナジウム合金層902との化学的相互作用よりも低い。このようにして、中間層906は、燃料側のバナジウム層902と外側の鋼層904との間の保護障壁として機能する。
【0059】
一実施形態では、中間層906の材料は、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウム、またはジルコニウム合金から選択される。ニッケルの実施形態では、上記材料は、略純粋であり、すなわち、少なくとも99.9wt%がNiであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料が上記他の元素のそれぞれを0.05wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量が0.1wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記材料の0.025、0.01、または0.005wt%を超えない。ニッケル合金の実施形態では、上記材料は、少なくとも90.0wt%がNiであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料は、上記他の元素のそれぞれを5.0wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量は10.0wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記ニッケル合金の2.5、1、または0.5wt%を超えない。
【0060】
クロムの実施形態では、上記材料は、略純粋であり、すなわち、少なくとも99.9wt%がCrであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料が上記他の元素のそれぞれを0.05wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量が0.1wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記材料の0.025、0.01、または0.005wt%を超えない。クロム合金の実施形態では、上記材料は、少なくとも90.0wt%がCrであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料は、上記他の元素のそれぞれを5.0wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量は10.0wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記クロム合金の2.5、1、または0.5wt%を超えない。
【0061】
ジルコニウムの実施形態では、上記材料は、略純粋であり、すなわち、少なくとも99.9wt%がZrであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料が上記他の元素のそれぞれを0.05wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量が0.1wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記材料の0.025、0.01、または0.005wt%を超えない。ジルコニウム合金の実施形態では、上記材料は、少なくとも90.0wt%がZrであり、残りが他の元素である。ここで、上記材料は、上記他の元素のそれぞれを5.0wt%以下含み、かつ、上記他の元素の総量は10.0wt%を超えない。より純粋な実施形態では、上記他の元素の総量は、上記クロム合金の2.5、1、または0.5wt%を超えない。
【0062】
図示の実施形態では、上記鋼層は、上記クラッディングの構造的支持体であり、図1図4を参照して上述したような厚さを有する。また、中間層906およびバナジウム層902は、上記クラッディングのより薄い層である。図示しない実施形態では、バナジウム層902は、より厚い構造層であり、図5図8を参照して説明したような厚さを有する。また、中間層906および鋼層904は、上記クラッディングのより薄い層である。しかしながら、図1図8と同様に、鋼層904は外側の層であり、バナジウム層902は内側の層である。
【0063】
図10は、図9の上記クラッディングの管状の実施形態を示す。図示の実施形態では、壁要素1000は、内面および外面を有する管の形態であり、バナジウム合金の第1の層1002は上記管の内面を形成し、鋼の第2の層1004は上記管の外面を形成し、第1の層および第2の層は中間層1006によって分離されている。燃料貯蔵領域は、上記管の中央領域に存在する。従って、上記管内の燃料は、反応性の外部環境から保護されると同時に、鋼層1004が上記燃料から分離される。また、本明細書にて壁要素という一般的な用語を使用することにより、管、容器、または他の形状のコンテナが、図9に示すように、クラッディング900における異なる複数の壁または壁部を有してもよいということが認識される。
【0064】
図11は、図9の上記壁要素を示すが、図11では核物質1110が壁要素1100のバナジウム層1102と接触している。なお、核物質1110は核燃料を含むがこれに限定されるものではない。バナジウム層1102は、中間層1106によって鋼層1104から分離されている。
【0065】
図12は、同様に、図9の上記クラッディングの管状の実施形態を示すが、図12では、核物質1210が管1200の中空中央に存在する。なお、核物質1210は核燃料を含むが、これに限定されるものではない。また、バナジウム層1202は、中間層1206によって鋼層1204から分離されている。
【0066】
上記の3層の鋼-バナジウムのクラッディングが有する利点は、(a)該クラッディングが有する鋼の外層によって、燃料要素が反応性の冷却材環境に曝されることから保護される点と、(b)燃料側バナジウム合金層によりFCCIが低減される点とに存在する。主な構造的要素は、上記鋼層または上記バナジウム層のいずれかであってもよい。
【0067】
図13は、上述のような、核物質を外部環境から分離するための2層または3層の壁要素を製造する方法を示す。方法1300は、第1の層を製造することを含み、第1の層は、第1の層の製造工程1302において、少なくとも鋼層を含む。次に、第1の層は、第2の層に接続され、第2の層は、層の接続工程1304において、バナジウム合金の少なくとも1つの層を含む。
【0068】
層の接続工程1304の一実施形態では、上記バナジウム層は、第2の層を第1の層に接続する前に製造される。層の接続工程1304の代替の実施形態では、第2の層を第1の層上に堆積させることによって第2の層が生成される。
【0069】
層の接続工程1304の一実施形態では、第2の層は、上記バナジウム合金層のみからなり、上記鋼層を上記バナジウム合金層に直接接続することを含む。
【0070】
第1の層の構築工程1302の一実施形態では、第1の層を製造することは、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウム、またはジルコニウム合金によって形成された第3の層に接続された上記鋼層からなる第1の層を製造することを含む。そして、層接続工程1304は、第3の層が上記鋼層と上記バナジウム合金層との間に存在するように、第1の層を第2の層に接続することを含む。
【0071】
代替の実施形態では、第2の層は、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウム、またはジルコニウム合金の第3の層に接続されたバナジウム合金層からなり、層の接続工程1304は、第3の層が上記鋼層と上記バナジウム合金層との間に存在するように、第1の層を第2の層に接続することを含む。
【0072】
〔燃料要素および燃料アセンブリ〕
図14aは、上述のクラッディングの1つ以上を利用する核燃料アセンブリ10の部分図を提供する。図示のように、燃料アセンブリ10は、格納構造16内に保持された個々の燃料要素(すなわち「燃料棒」または「燃料ピン」)11を多数含む。図14bは、一実施形態による燃料要素11の部分図を提供する。この実施形態に示すように、上記燃料要素は、クラッディング13と、燃料14と、幾つかの例では少なくとも1つのギャップ15とを含む。クラッディング13は、単一の要素として図示されているが、上述の2層または3層クラッディングによって全体的に構成され、或いは少なくとも部分的に構成される。
【0073】
燃料は、外部のクラッディング13によって形成されたキャビティ内に密封される。幾つかの例では、複数の燃料物質は、図14bに示すように軸方向に積み重ねられてもよいが、必ずしもそうである必要はない。例えば、燃料要素は、1つの燃料物質のみを含んでもよい。一実施形態では、ギャップ15は、上記燃料物質と上記クラッディングとの間に存在してもよいが、ギャップ15は存在する必要はない。一実施形態では、上記ギャップは、加圧ヘリウム雰囲気などの加圧雰囲気で充填される。
【0074】
一実施形態では、個々の燃料要素11には、直径が約0.8mm~約1.6mmである細いワイヤ12がクラッド管の周囲に螺旋状に巻き付けられていてもよい。これにより、燃料アセンブリ10のハウジング内において冷却材の空間と個々の燃料要素11の機械的分離とが提供され、燃料アセンブリ10は冷却材ダクトとしても機能する。一実施形態では、クラッディング13および/またはワイヤ巻付物12は、経験的データの集まりによって示されるように、その照射性能のゆえにフェライト-マルテンサイト鋼から製造されてもよい。
【0075】
上記燃料要素は、外部の形状および内部の燃料貯蔵領域の形状の両方に関して、任意の幾何学的形状を有してもよい。例えば、上述の幾つかの実施形態では、上記燃料要素は、円筒形であり、円筒形ロッドの形態を採用してもよい。さらに、燃料要素に関する幾つかの擬似角錐台(prismatoid)の形状は、特に効率的であり得る。例えば、上記燃料要素は、3つ以上の側面と、基部に関して任意の多角形形状とを有する、直角柱、斜角柱、または切頭プリズムであってもよい。六角形プリズム、長方形プリズム、正方形プリズム、および三角形プリズムは、全て、燃料アセンブリに充填するための潜在的に効率的な形状である。
【0076】
上記燃料要素および上記燃料アセンブリは、原子力発電プラントの一部である発電用原子炉の一部であってもよい。核反応によって発生した熱は、燃料要素の外部と接触する冷却材を加熱するために使用される。次に、この熱は、除去され、タービンその他の機器を駆動するために使用されて、除去された熱から動力が有益に獲得される。
【0077】
〔実施例〕
図15Aおよび図15Bは、炭素がドープされたバナジウムの第1の層の一方の側と、HT9鋼の第2の層の他方の側とに電気めっきされたNiの中間層を有するトライメタルのクラッディングの顕微鏡写真である。図15Bは、図15Aの破線ボックス内に示された、上記トライメタルのクラッディングの領域の拡大図である。上記クラッディングにおいて、上記バナジウムは0.2wt%のCでドープされている。
【0078】
図15Cは、図15Aおよび図15Bにおける上記トライメタルのクラッディングに関する化学組成のマッピングを示す。図15Cには、上記中間層の周辺の領域を範囲とするCr、Fe、V、Ni、C、およびMoの量および分布が示されている。これを分析すると、少なくとも幾らかのバナジウムが中間層に拡散したが、バナジウムはHT9層にほとんどまたは全く拡散しなかったことが示される。
【0079】
図15Cは、図15Aおよび15Bのトライメタルのクラッディングの化学組成マッピングを示す。図15(C)には、中間層周辺のCr、Fe、V、Ni、C、Moの量と分布が示されている。この分析は、少なくともいくらかのバナジウムが中間層中に拡散したが、バナジウムはほとんどまたは全くHT9層中に拡散しなかったことを示している。
【0080】
添付の特許請求の範囲にもかかわらず、本開示は、以下の条項によっても定義される。
【0081】
1.鋼の第1の層と、
少なくとも90%のバナジウムの第2の層と、
第1の層と第2の層との間のニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金の第3の層と、
からなる、壁要素。
【0082】
2.前記第2の層は、前記第1の層の厚さの0.1%~50%である厚さを有し、前記第3の層は、前記第1の層の厚さの0.1%~50%である厚さを有する、条項1に記載の壁要素。
【0083】
3.前記第2の層は、前記第1の層の厚さの1%~5%である厚さを有し、前記第3の層は、前記第1の層の厚さの1%~5%である厚さを有する、条項1に記載の壁要素。
【0084】
4.前記第2の層が、バナジウム合金 V-20Ti、V-10Cr-5Ti、V-15Cr-5Ti、V-4Cr-4Ti、V-4Cr-4Ti NIFS Heats 1および2、V-4Cr-4Ti US Heats 832665および8923864、ならびにV-4Cr-4Ti Heats CEA-J57から選択される、条項1~3のいずれか1項に記載の壁要素。
【0085】
5.前記第2の層がV-4Cr-4Tiである、条項4に記載の壁要素。
【0086】
6.前記第2の層が、以下からなる、条項4に記載の壁要素:
3.0-5.0重量%のCr、
3.0-5.0重量%のTi、および
0.02重量%以下のC、
残りはVおよび他の元素であり、バナジウム合金は、0.1重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.5重量%以下である。
【0087】
7.前記第2の層が、以下からなる、条項5に記載の壁要素:
3.5-4.5重量%のCr、
3.5-4.5重量%のTi、
0.04-0.1重量%のSi、
0.02重量%までのO、
0.02重量%までのN、
0.02重量%までのC、
0.02重量%までのAl、
0.02重量%までのFe、
0.001重量%までのCu、
0.001重量%までのMo、
0.001重量%までのNb、
0.001重量%までのP、
0.001重量%までのS、および
0.0002重量%以下のCl、
残りはVおよび他の元素であり、バナジウム合金は、0.001重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.01重量%以下である。
【0088】
8.前記第2の層が、以下からなる、条項1~4のいずれか1項に記載の壁要素:
0.001-0.5重量%のC、
残りはVおよび他の元素であり、第2の層はこれらの他の元素の各々を0.1重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.5重量%以下である。
【0089】
9.前記第2の層が、Vに加えて0.1~0.3重量%のCを含む、条項8に記載の壁要素。
【0090】
10.前記第1の層の鋼が、焼戻マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、および304鋼から選択される、条項1~9のいずれか1項に記載の壁要素。
【0091】
11.前記第1の層の鋼が、以下からなる、条項1~10のいずれか1項に記載の壁要素:
9.0-12.0重量%のCr、
0.001-2.5重量%のW、
0.001-2.0重量%のMo、
0.001-0.5重量%のSi、
0.5重量%までのTi、
0.5重量%までのZr、
0.5重量%までのV、
0.5重量%までのNb、
0.3重量%までのTa、
0.1重量%までのN、
0.3重量%までのC、
0.01重量%までのB、
残りはFeおよび他の元素であり、鋼はこれらの他の元素の各々を0.15重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.35重量%以下である。
【0092】
12.前記鋼が、Ti、Zr、V、Nb、TaまたはBの炭化物析出物、Ti、Zr、V、NbまたはTaの窒化物析出物、および/またはTi、Zr、V、NbまたはTaの炭窒化物析出物のうちの1つ以上を含む、条項1~11のいずれか1項に記載の壁要素。
【0093】
13.前記バナジウム合金が、Cr、Tiおよび/または他の元素の1つ以上の炭化物析出物を含む、条項5~7のいずれか1項に記載の壁要素。
【0094】
14.前記第1の層が、前記壁要素の全厚の少なくとも99%であり、前記第3の層および前記第2の層の各々が、前記第1の層の厚さの0.0001%~0.5%である、条項1~13のいずれか1項に記載の壁要素。
【0095】
15.前記壁要素は、内表面および外面を有する管の形態であり、前記第1の層は、前記管の内表面を形成し、前記第2の層は、前記管の外面を形成する、条項1~14のいずれか1項に記載の壁要素。
【0096】
16.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
少なくとも99.9重量%のNi、
残りは他の元素であり、材料は、0.05重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.1重量%以下である。
【0097】
17.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
少なくとも90.0重量%のNi、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を1.0重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、5.0重量%以下である。
【0098】
18.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
少なくとも99.9重量%のCr、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を0.05重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.1重量%以下である。
【0099】
19.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
少なくとも90.0重量%のCr、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を1.0重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、5.0重量%以下である。
【0100】
20.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
99.9重量%以上のZr、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を0.05重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.1重量%以下である。
【0101】
21.前記第3の層が、以下からなる、条項1~15のいずれか1項に記載の壁要素:
少なくとも90.0重量%のZr、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を1.0重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、5.0重量%以下である。
【0102】
22.条項1~21のいずれか1項に記載の壁要素から少なくとも部分的に作製されたコンテナ。
【0103】
23.核燃料を保持するためのコンテナであって、
燃料貯蔵領域を外部環境から分離する少なくとも1つの壁要素を含み、
前記壁要素は、少なくとも90%のバナジウムの第2の層から、第1の層と第2の層との間の第3の層によって分離された、鋼からなる第1の層を有し、
壁の前記第1の層は前記外部環境に接触し、前記第2の層は前記燃料貯蔵領域に接触し、
前記第3の層は、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金からなる、コンテナ。
【0104】
24.前記コンテナは、容器を形成するために、1つ以上の連続的に接続された壁要素によって画定される形状を有する、条項23に記載のコンテナ。
【0105】
25.前記コンテナは円筒状の管として形成され、少なくとも1つの壁要素が前記管の円筒壁を形成し、前記燃料貯蔵領域が前記管の内側である、条項23に記載のコンテナ。
【0106】
26.前記コンテナは底壁と1つ以上の側壁とを含み、少なくとも1つの壁要素が前記コンテナの底壁または側壁を形成する、条項23~25のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0107】
27.物品であって、
ある量の核物質と、
核燃料の外部に配置され、核物質の少なくとも一部を外部環境から分離する壁要素とを含み、前記壁要素は、
前記外部環境と接触する鋼の第1の層と、
前記核物質と接触する少なくとも90%のバナジウムの第2の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間の第3の層と、からなり、
ニッケルの前記第1の層は、鋼からバナジウム合金への炭素の移動を阻止し、
前記第3の層は、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金からなる、物品。
【0108】
28.前記核物質が、U、Th、Am、Np、およびPuのうちの少なくとも1つを含む、条項27に記載の物品。
【0109】
29.前記核物質が、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、Nd、およびHfから選択される少なくとも1つの耐熱材料を含む、条項27または28に記載の物品。
【0110】
30.前記第1の層が、鋼を含み、その実質的にすべてが、焼戻しマルテンサイト相、フェライト相、およびオーステナイト相から選択される少なくとも1つの相を有する、条項27~29のいずれか1項に記載の物品。
【0111】
31.前記クラッディング層が、マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、酸化物分散鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、346鋼、および304鋼から選択される少なくとも1つの鋼を含む、条項27~30のいずれか1項に記載の物品。
【0112】
32.前記核燃料と前記壁要素とが機械的に結合されている、条項27~31のいずれか1項に記載の物品。
【0113】
33.前記外部環境が溶融ナトリウムを含み、鋼の前記第1の層が、前記第2の層におけるナトリウムとバナジウムとの間の接触を防止する、条項27~32のいずれか1項に記載の物品。
【0114】
34.前記第1の層および前記第2の層が、前記第3の層の両側に機械的に結合される、条項27~33のいずれか1項に記載の物品。
【0115】
35.前記核物質が少なくとも90重量%のUを含む、条項27~34のいずれか1項に記載の物品。
【0116】
36.前記核物質が核燃料であり、前記物品が核燃料素子である、条項27~35のいずれか1項に記載の物品。
【0117】
37.前記第3の層が、以下からなる、条項27~36のいずれか1項に記載の物品:
少なくとも99.9重量%のNi、
残りは他の元素であり、材料は、0.05重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.1重量%以下である。
【0118】
38.前記第3の層が、以下からなる、条項27~36のいずれか1項に記載の物品:
少なくとも90.0重量%のNi、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を5.0重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、10.0重量%以下である。
【0119】
39.前記第3の層が、以下からなる、条項27~36のいずれか1項に記載の物品:
少なくとも99.9重量%のCr、
残りは他の元素であり、材料は、0.05重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.1重量%以下である。
【0120】
40.前記第3の層が、以下からなる、条項27~36のいずれか1項に記載の物品:
少なくとも90.0重量%のCr、
残りは他の元素であり、材料は、これらの他の元素の各々を5.0重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、10.0重量%以下である。
【0121】
41.前記第2の層が、以下からなる、条項27~36のいずれか1項に記載の物品:
0.001-0.5重量%のC、
残りはVおよび他の元素であり、前記第2の層はこれらの他の元素の各々を0.1重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.5重量%以下である。
【0122】
42.鋼の第1の層と、
鋼の前記第1の層の上に少なくとも0.001重量%の炭素がドープされたバナジウムの第2の層であって、VおよびC以外の他の元素を0.5重量%以下有する第2の層と、
からなる、壁要素。
【0123】
43.前記第1の層と前記第2の層との間の第3の層であって、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金からなる第3の層を含む、条項42に記載の壁要素。
【0124】
44.前記第2の層が、以下からなる、条項42または43に記載の壁要素:
0.001-0.5重量%のC、
残りはVおよび他の元素であり、前記第2の層のドープされたバナジウムは、0.1重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.5重量%以下である。
【0125】
45.前記第2の層の前記ドープされたバナジウムが、0.1~0.3重量%のCを含む、条項42~44のいずれか1項に記載の壁要素。
【0126】
46.前記第1の層の鋼が、焼戻マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、および304鋼から選択される、条項42~45のいずれか1項に記載の壁要素。
【0127】
47.前記第1の層の鋼が、以下からなる、条項42~46のいずれか1項に記載の壁要素:
9.0-12.0重量%のCr、
0.001-2.5重量%W、
0.001-2.0重量%のMo、
0.001-0.5重量%のSi、
0.5重量%までのTi、
0.5重量%までのZr、
0.5重量%までのV、
0.5重量%までのNb、
0.3重量%までのTa、
0.1重量%までのN、
0.3重量%までのC、
0.01重量%までのB、
残りはFeおよび他の元素であり、鋼はこれらの他の元素の各々を0.15重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.35重量%以下である。
【0128】
48.前記鋼が、Ti、Zr、V、Nb、TaまたはBの炭化物析出物、Ti、Zr、V、NbまたはTaの窒化物析出物、および/またはTi、Zr、V、NbまたはTaの炭窒化物析出物のうちの1つ以上を含み、および/またはバナジウム合金が、Cr、Tiおよび/または他の元素の1つ以上の炭化物析出物を含む、条項42~47のいずれか1項に記載の壁要素。
【0129】
49.前記第2の層は、前記第1の層の厚さの0.1%~50%の厚さを有する、条項42に記載の壁要素。
【0130】
50.前記第2の層は、前記第1の層の厚さの1%~5%の厚さを有する、条項42~49のいずれか1項に記載の壁要素。
【0131】
51.前記壁要素は、内表面および外面を有する管の形態であり、前記第1の層は、前記管の内表面を形成し、前記第2の層は、前記管の外面を形成する、条項42~50のいずれか1項に記載の壁要素。
【0132】
52.更に、前記管の内部に、ある量の核物質を含む、条項51に記載の壁要素。
【0133】
53.前記核物質が、U、Th、Am、Np、およびPuから選択される1つ以上の元素を含む、条項52に記載の物品。
【0134】
54.前記核物質が、Nb、Mo、Ta、W、Re、Zr、V、Ti、Cr、Ru、Rh、Os、Ir、Nd、およびHfから選択される少なくとも1つの耐熱材料を含む、条項52または53に記載の物品。
【0135】
55.核燃料を保持するためのコンテナであって、
燃料貯蔵領域を外部環境から分離する少なくとも1つの壁要素を含み、
前記壁要素は、少なくとも0.001重量%の炭素でドープされたバナジウムの第2の層に取り付けられた鋼の第1の層を有し、0.5重量%以下の他の元素を有し、
壁の前記第1の層は前記外部環境に接触し、前記第2の層は前記燃料貯蔵領域に接触する、コンテナ。
【0136】
56.前記コンテナは、容器を形成するために、1つ以上の連続的に接続された壁要素によって画定される形状を有する、条項55に記載のコンテナ。
【0137】
57.前記コンテナは円筒状の管として形成され、少なくとも1つの壁要素が前記管の円筒壁を形成し、前記燃料貯蔵領域が前記管の内側である、条項55または56に記載のコンテナ。
【0138】
58.前記コンテナは底壁と1つ以上の側壁とを含み、少なくとも1つの壁要素が前記コンテナの底壁を形成する、条項55~57のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0139】
59.前記コンテナが底壁と1つ以上の側壁とを含み、少なくとも1つの壁要素が前記コンテナの1つ以上の側壁のうちの少なくとも1つを形成する、条項55~58のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0140】
60.鋼の第1の層と、
鋼の第1の層の上のバナジウム合金の第2の層であって、鋼の前記第1の層が、第2の層の厚さの0.1%~50%である、第2の層と、
からなる、壁要素。
【0141】
61.前記第1の層と前記第2の層との間の第3の層であって、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、ジルコニウムまたはジルコニウム合金からなる第3の層を含む、条項60に記載の壁要素。
【0142】
62.前記第2の層が、バナジウム合金V-20Ti、V-10Cr-5Ti、V-15Cr-5Ti、V-4Cr-4Ti、V-4Cr-4Ti NIFS Heats 1および2、V-4Cr-4Ti US Heats 832665、8923864、ならびにV-4Cr-4Ti Heats CEA-J57から選択される、条項60または61に記載の壁要素。
【0143】
63.前記第2の層が、以下からなる、条項62に記載の壁要素:
3.0-5.0重量%のCr、
3.0-5.0重量%のTi、および
0.02重量%以下のC、
残りはVおよび他の元素であり、バナジウム合金は、0.1重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.5重量%以下である。
【0144】
64.前記第2の層が、以下からなる、条項62に記載の壁要素:
3.5-4.5重量%のCr、
3.5-4.5重量%のTi、
0.04-0.1重量%のSi、
0.02重量%までのO、
0.02重量%までのN、
0.02重量%までのC、
0.02重量%までのAl、
0.02重量%までのFe、
0.001重量%までのCu、
0.001重量%までのMo、
0.001重量%までのNb、
0.001重量%までのP、
0.001重量%までのS、および
0.0002重量%以下のCl、
残りはVおよび他の元素であり、バナジウム合金は、0.001重量%以下のこれらの他の元素の各々を含み、これらの他の元素の合計は、0.01重量%以下である。
【0145】
65.前記第1の層の鋼が、焼戻マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、酸化物分散強化鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、および304鋼から選択される、条項60~64のいずれか1項に記載の壁要素。
【0146】
66.前記第1の層の鋼が、以下からなる、条項60~64のいずれか1項に記載の壁要素:
9.0-12.0重量%のCr、
0.001-2.5重量%W、
0.001-2.0重量%のMo、
0.001-0.5重量%のSi、
0.5重量%までのTi、
0.5重量%までのZr、
0.5重量%までのV、
0.5重量%までのNb、
0.3重量%までのTa、
0.1重量%までのN、
0.3重量%までのC、
0.01重量%までのB、
残りはFeおよび他の元素であり、鋼はこれらの他の元素の各々を0.15重量%以下含み、これらの他の元素の合計は、0.35重量%以下である。
【0147】
67.前記鋼が、Ti、Zr、V、Nb、TaまたはBの炭化物析出物、Ti、Zr、V、NbまたはTaの窒化物析出物、および/またはTi、Zr、V、NbまたはTaの炭窒化物析出物のうちの1つ以上を含み、および/またはバナジウム合金が、Cr、Tiおよび/または他の元素の1つ以上の炭化物析出物を含む、条項60~66のいずれか1項に記載の壁要素。
【0148】
68.前記第1の層は、前記第2の層の厚さの1%~5%の厚さを有する、条項60~67のいずれか1項に記載の壁要素。
【0149】
69.前記壁要素は、内表面および外面を有する管の形態であり、前記第1の層は、前記管の内表面を形成し、前記第2の層は、前記管の外面を形成する、条項60~68のいずれか1項に記載の壁要素。
【0150】
70.核燃料を保持するためのコンテナであって、
燃料貯蔵領域を外部環境から分離する少なくとも1つの壁要素を含み、
前記壁要素は、バナジウム合金の第2の層に取り付けられた鋼の第1の層であって、鋼の前記第1の層が前記第2の層の厚さの0.1%~50%である、鋼の第1の層を有し、
壁の前記第1の層は前記外部環境に接触し、前記第2の層は前記燃料貯蔵領域に接触する、コンテナ。
【0151】
71.前記コンテナは、容器を形成するために、1つ以上の連続的に接続された壁要素によって画定される形状を有する、条項70に記載のコンテナ。
【0152】
72.前記コンテナは円筒状の管として形成され、少なくとも1つの壁要素が前記管の円筒壁を形成し、前記燃料貯蔵領域が前記管の内側である、条項70または71に記載のコンテナ。
【0153】
73.前記コンテナは底壁と1つ以上の側壁とを含み、少なくとも1つの壁要素が前記コンテナの底壁を形成する、条項70~72のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0154】
74.前記コンテナは底壁と1つ以上の側壁とを含み、少なくとも1つの壁要素が前記コンテナの1つ以上の側壁のうちの少なくとも1つを形成する、条項70~73のいずれか1項に記載のコンテナ。
【0155】
75.物品であって、
ある量の核物質と、
核燃料の外部に配置され、核物質の少なくとも一部を外部環境から分離する壁要素とを含み、前記壁要素は、
鋼の第1の層と、
鋼の前記第1の層と核物質との間のバナジウム合金の第2の層であって、鋼の前記第1の層が第2の層の厚さの0.1%~50%であり、鋼の前記第1の層が第2の層を前記外部環境から分離する第2の層と、
を含む、物品。
【0156】
76.前記核物質が、U、Th、Am、Np、およびPuのうちの少なくとも1つを含む、条項75に記載の物品。
【0157】
77.前記第1の層が、マルテンサイト鋼、フェライト鋼、オーステナイト鋼、酸化物分散鋼、T91鋼、T92鋼、HT9鋼、316鋼、および304鋼から選択される少なくとも1つの鋼を含む、条項75または76に記載の物品。
【0158】
78.前記核燃料と前記壁要素とが機械的に結合されている、条項75~77のいずれか1項に記載の物品。
【0159】
79.前記外部環境が溶融ナトリウムを含み、鋼の前記第1の層が、前記第2の層におけるナトリウムとバナジウム合金との間の接触を防止する、条項75~78のいずれか1項に記載の物品。
【0160】
80.前記第1の層と前記第2の層とが機械的に結合されている、条項75~79のいずれか1項に記載の物品。
【0161】
81.前記核物質が少なくとも90重量%のUを含む、条項75~80のいずれか1項に記載の物品。
【0162】
82.前記核物質が核燃料であり、前記物品が核燃料素子である、条項75~81のいずれか1項に記載の物品。
【0163】
83.条項27~41および75~82のいずれか1項に記載の物品を含む、発電原子炉。
【0164】
84.核物質を外部環境から分離するための壁要素を製造する方法であって、
少なくとも鋼の層を含む第1の層を製造する製造ステップと、
前記第1の層を、少なくともバナジウム合金層を含む第2の層に接続する接続ステップと、
を含む、方法。
【0165】
85.前記第2の層を前記第1の層に接続する前に、前記第2の層を製造することを含む、条項84に記載の方法。
【0166】
86.前記接続ステップは、前記鋼の層を前記バナジウム合金層に接続することを含む、条項84または85に記載の方法。
【0167】
87.前記第1の層を製造するステップは、クロム層に接続された前記鋼の層からなる前記第1の層を製造することを含み、
前記接続ステップは、前記クロム層が前記鋼の層と前記バナジウム合金層との間にあるように、前記第1の層を前記第2の層に接続することを含む、条項84~86のいずれか1項に記載の方法。
【0168】
88.前記第2の層は、クロム層に接続されたバナジウム合金層からなり、
前記接続ステップは、前記クロム層が前記鋼の層と前記バナジウム合金層との間にあるように、前記第1の層を前記第2の層に接続することを含む、条項84~87のいずれか1項に記載の方法。
【0169】
本技術の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の具体例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0170】
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、言及される目的および利点、ならびにその中に固有のものを達成するように十分に適合されることが明らかである。当業者であれば、本明細書内の方法およびシステムは多くの方法で実施することができ、そのような方法は前述の例示的な実施形態および実施例によって限定されるものではないことを認識するであろう。この点に関して、本明細書に記載される異なる実施形態の任意の数の特徴が、1つの単一の実施形態に組み合わされてもよく、本明細書に記載される特徴の全てよりも少ないか、またはそれよりも多い特徴を有する代替の実施形態が可能である。
【0171】
本開示の目的のために様々な実施形態を説明してきたが、本開示によって十分に企図される範囲内にある様々な変更および修正を行うことができる。当業者には容易に示唆され、本開示の精神に包含される多数の他の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0172】
図1】クラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、構造的な外層を有するクラッディングの2層構造を示すものである。
図2図1の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図3】核物質と接触している、図1の上記壁要素を示す図である。
図4】管状クラッディング内に核物質を含む、図2の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図5】クラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、構造的な内部バナジウム合金層を有するクラッディングの2層構造を示すものである。
図6図5の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図7】核物質と接触している、図5の上記壁要素を示す図である。
図8】管状クラッディング内に核物質を含む、図6の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図9】別の実施形態のクラッディングまたは壁要素の縦断面を示す切り欠き図であり、3層構造を有するものである。
図10図9の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図11】核物質と接触している、図9の上記壁要素を示す図である。
図12】管の中空中央に核物質を含む、図10の上記クラッディングの管状の実施形態を示す図である。
図13】上述のような、外部環境から核物質を分離するための2層または3層の壁要素を製造する方法を示す図である。
図14a】核燃料アセンブリを示す図である。
図14b】燃料要素の詳細を示す図である。
図15A】炭素がドープされたバナジウムの第1層の一方の側と、HT9鋼の第2の層の他方の側とに電気めっきされたNiの中間層を有するトライメタルのクラッディングを示す顕微鏡写真である。
図15B】炭素がドープされたバナジウムの第1層の一方の側と、HT9鋼の第2の層の他方の側とに電気めっきされたNiの中間層を有するトライメタルのクラッディングを示す顕微鏡写真である。
図15C図15Aおよび図15Bのトライメタルのクラッディングの化学組成マッピングを示す図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15A
図15B
図15C