(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】FXR(NR1H4)調節化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 413/14 20060101AFI20230419BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230419BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230419BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230419BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230419BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
C07D413/14 CSP
A61K31/4439 ZNA
A61P43/00
A61P1/16
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/501
(21)【出願番号】P 2021540517
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 US2020013319
(87)【国際公開番号】W WO2020150136
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500029420
【氏名又は名称】ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ブロムグレン, ピーター エー.
(72)【発明者】
【氏名】キュリー, ケビン エス.
(72)【発明者】
【氏名】フリック, モリン マエ
(72)【発明者】
【氏名】ホーストマン, エリザベス エム.
(72)【発明者】
【氏名】カプラン, ジョシュア エー.
(72)【発明者】
【氏名】クロップフ, ジェフリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス, ウィリアム ジェイ.
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/218330(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280394(US,A1)
【文献】国際公開第2018/089212(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/191393(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/075650(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/218337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化25】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態の処置における使用のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記FXRによって媒介される状態が、肝疾患である、請求項2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記FXRによって媒介される状態が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
前記FXRによって媒介される状態が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、請求項2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記FXRによって媒介される状態が、原発性胆汁性胆管炎(PBC)である、請求項2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
前記FXRによって媒介される状態が、肝線維症である、請求項2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
以下の式(I):
【化26】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態を有する患者を処置するための、請求項1に記載の化合物もしくは薬学的に許容される塩を含む組成物または請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記FXRによって媒介される状態が、
慢性的な肝内または肝外の胆汁うっ滞状態;
肝線維症;
肝臓の慢性または閉塞性炎症性障害;
肝硬変;
脂肪肝または関連症候群;
アルコール誘導性肝硬変にまたは肝炎のウイルス媒介性形態に関連する胆汁うっ滞性または線維性効果;
急性または慢性肝不全;
広範囲肝切除後の肝虚血;
化学療法関連脂肪性肝炎(CASH);
原発性胆汁性肝硬変(PBC);
原発性硬化性胆管炎(PSC);
胃腸管または肝臓の新生物疾患;ならびに
炎症性腸疾患(IBD);
脂質障害またはリポタンパク質障害;
I型糖尿病;
II型糖尿病;
糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症および臨床的に明確な長期糖尿病の観察される他の影響からなる群から選択されるI型およびII型糖尿病の臨床的合併症;
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD);
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);
肥満;
脂質異常症、糖尿病および異常に高いボディマス指数の複合的な状態からなる群から選択されるメタボリックシンドローム;
急性心筋梗塞;
急性脳卒中;ならびに
慢性閉塞性アテローム性動脈硬化症のエンドポイントとして発生する血栓症;
非悪性過剰増殖性障害;
肝細胞癌、結腸腺腫、およびポリポーシスからなる群から選択される悪性過剰増殖性障害;
結腸腺癌;
乳がん;
膵臓腺癌;ならびに
バレット食道
からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態の処置のための医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項13】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤およびファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組み合わせ物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化27】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組み合わせ物。
【請求項14】
前記ASK1阻害剤が式(II):
【化28】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項13に記載の組み合わせ物。
【請求項15】
FXRアゴニストおよび前記ASK1阻害剤が別々に投与される、請求項13から14のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項16】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項13から15のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項17】
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、請求項13から15のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項18】
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、請求項13から15のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項19】
治療有効量のアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化29】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
【請求項20】
前記ASK1阻害剤が、式(II):
【化30】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項19から20のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項22】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤およびファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組み合わせ物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化31】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組み合わせ物。
【請求項23】
前記ACC阻害剤が式(III):
【化32】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項22に記載の組み合わせ物。
【請求項24】
前記ACC阻害剤および前記FXRアゴニストが別々に投与される、請求項22から23のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項25】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項22から24のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項26】
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、請求項22から24のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項27】
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、請求項22から24のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項28】
治療有効量のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化33】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
【請求項29】
前記ACC阻害剤が、式(III):
【化34】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項28から29のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項31】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、甲状腺ホルモン受容体(THR)βアゴニストおよびファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組み合わせ物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化35】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組み合わせ物。
【請求項32】
前記THRβアゴニストが、式(IV):
【化36】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項31に記載の組み合わせ物。
【請求項33】
前記THRβアゴニストおよび前記FXRアゴニストが別々に投与される、請求項31から32のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項34】
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、請求項31から33のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項35】
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、請求項31から33のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項36】
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、請求項31から33のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項37】
治療有効量の甲状腺ホルモン受容体(THR)βおよび治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化37】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
【請求項38】
前記THRβアゴニストが、式(IV):
【化38】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項37から38のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項40】
肝疾患を有する患者においてUGT1A1を阻害するための、式(I):
【化39】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物。
【請求項41】
以下の式:
【化40】
の化合物の結
晶。
【請求項42】
前記結
晶が形態Iであ
り、9.6、19.3、および22.6度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射を有するX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項41に記載の結
晶。
【請求項43】
3.2、6.4、および12.8度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射をさらに含むX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項4
2に記載の結
晶。
【請求項44】
22.1、25.8、29.1度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射をさらに含むX線回折パターンにより特徴付けられる、請求項42から
43のいずれかに記載の結
晶。
【請求項45】
221℃
±10%において開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する、請求項42から
44のいずれかに記載の結
晶。
【請求項46】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤を含む組成物であって、前記組成物は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与されることを特徴とし、前記FXRアゴニストが式(I):
【化27】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組成物。
【請求項47】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組成物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化27】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、前記組成物は、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項48】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤を含む組成物であって、前記組成物は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与されることを特徴とし、前記FXRアゴニストが式(I):
【化31】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組成物。
【請求項49】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組成物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化31】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、前記組成物は、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤と組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項50】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、甲状腺ホルモン受容体(THR)βアゴニストを含む組成物であって、前記組成物は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与されることを特徴とし、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化35】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、組成物。
【請求項51】
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防するための、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む組成物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化35】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、前記組成物は、甲状腺ホルモン受容体(THR)βアゴニストと組み合わせて投与されることを特徴とする、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2019年1月15日に出願された、「FXR (NR1H4) MODULATING COMPOUNDS」という表題の米国仮特許出願第62/792,714号の優先権の利益を主張し、この米国仮出願の内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
配列表
本出願と関連する配列表は紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供し、ここに参照により本明細書に組み込まれている。配列表を含むテキストファイルの名称は、「1274_SequenceListing.」である。2018年12月17日に作成されたテキストファイルは、約1キロバイトであり、EFS-ウェブを介して電子的に提出する。
【0003】
分野
本開示は、ファルネソイドX受容体(FXR)に結合し、そのアゴニストまたはモジュレーターとして作用し、FXRのアゴニストまたはモジュレーターとして作用する化合物に関する。本開示は、前記化合物による疾患および/または状態の処置および/または予防のための化合物の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
ファルネソイドX受容体(FXR)は、ヒト受容体について言及する場合、頻繁にNR1H4(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー4)とも呼ばれ、核ホルモン受容体である。FXRは複数の生物学的機能に関連している。FXRは主に肝臓および胃腸管全体にわたり発現するばかりでなく、腎臓、副腎、および卵巣にもまた見出される。FXRは、細胞内の遺伝子発現の制御に関連しており、パラクリンおよび内分泌性シグナル伝達に関与し得る。腸および肝臓において、FXRは、胆汁酸ホメオスタシスおよび肝臓の脂質生成の制御因子として機能する。FXRはまた肝臓のクッパー細胞および肝類洞内皮細胞にも関連しており、炎症、線維症、および門脈圧亢進症に関係した機能を有すると考えられている。
【0005】
いくつかのFXRアゴニストは公知であり、肝疾患を含むいくつかの生理学的状態と関連づけて調査されてきた。FXRアゴニストは、脂肪変性、小葉炎症、肝細胞の肥大、および線維症に有益であることができる。
【0006】
FXRアゴニズムは、体内の異なる領域に異なる作用をもたらし得る。小腸末端および全身の臓器、例えば肝臓において、FXRの活性化は、ホルモンFGF19の発現および分泌を直接引き起こす。FGF19は、胆汁酸合成をダウンレギュレートすることにより、胆汁酸をモジュレートし、これは、例えば、肝疾患などの状態において有益となり得る。FXRアゴニストはまた、有害作用、例えば、掻痒症に関連している。このような有害作用、および被る有害作用の程度は、FXRアゴニズムの部位に依存し得る。掻痒症は、例えば、腸外FXRアゴニズムに関連していることが示唆されている。
【0007】
望ましい効力、選択性、およびより低い有害作用を有するFXRアゴニストに対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示は、NR1H4受容体(FXR)に結合し、FXRのアゴニストまたはモジュレーターとして作用する化合物を提供する。本開示はさらに、前記化合物による前記核内受容体への結合を介した疾患および/または状態の処置および/または予防のための化合物の使用に関する。
【0009】
本開示は、式(I):
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0010】
一部の実施形態は、式(I)の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
一部の実施形態は、固体形態の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
本明細書においてまた提供するのは、式(I)の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、FXRによって媒介される状態を有する患者を処置する方法である。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
以下の式(I):
【化25】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目2)
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態の処置における使用のための、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目3)
前記FXRによって媒介される状態が、肝疾患である、項目2に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目4)
前記FXRによって媒介される状態が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目5)
前記FXRによって媒介される状態が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、項目2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目6)
前記FXRによって媒介される状態が、原発性胆汁性胆管炎(PBC)である、項目2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目7)
前記FXRによって媒介される状態が、肝線維症である、項目2から3のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
(項目8)
以下の式(I):
【化26】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
(項目9)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目8に記載の医薬組成物。
(項目10)
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態を有する患者を処置する方法であって、項目1に記載の化合物もしくは薬学的に許容される塩または項目8に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
(項目11)
前記FXRによって媒介される状態が、
慢性的な肝内または肝外の胆汁うっ滞状態;
肝線維症;
肝臓の慢性または閉塞性炎症性障害;
肝硬変;
脂肪肝または関連症候群;
アルコール誘導性肝硬変にまたは肝炎のウイルス媒介性形態に関連する胆汁うっ滞性または線維性効果;
急性または慢性肝不全;
広範囲肝切除後の肝虚血;
化学療法関連脂肪性肝炎(CASH);
原発性胆汁性肝硬変(PBC);
原発性硬化性胆管炎(PSC);
胃腸管または肝臓の新生物疾患;ならびに
炎症性腸疾患(IBD);
脂質障害またはリポタンパク質障害;
I型糖尿病;
II型糖尿病;
糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症および臨床的に明確な長期糖尿病の観察される他の影響からなる群から選択されるI型およびII型糖尿病の臨床的合併症;
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD);
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);
肥満;
脂質異常症、糖尿病および異常に高いボディマス指数の複合的な状態からなる群から選択されるメタボリックシンドローム;
急性心筋梗塞;
急性脳卒中;ならびに
慢性閉塞性アテローム性動脈硬化症のエンドポイントとして発生する血栓症;
非悪性過剰増殖性障害;
肝細胞癌、結腸腺腫、およびポリポーシスからなる群から選択される悪性過剰増殖性障害;
結腸腺癌;
乳がん;
膵臓腺癌;ならびに
バレット食道
からなる群から選択される、項目10に記載の方法。
(項目12)
ファルネソイドX受容体(FXR)によって媒介される状態の処置のための医薬の製造のための、項目1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の使用。
(項目13)
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防する方法であって、前記患者に、治療有効量のアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤を、治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与することを含み、前記FXRアゴニストが式(I):
【化27】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法。
(項目14)
前記ASK1阻害剤が式(II):
【化28】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目13に記載の方法。
(項目15)
FXRアゴニストおよび前記ASK1阻害剤が別々に投与される、項目13から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目13から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、項目13から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、項目13から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
治療有効量のアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化29】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
(項目20)
前記ASK1阻害剤が、式(II):
【化30】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目19に記載の医薬組成物。
(項目21)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目19から20のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目22)
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防する方法であって、前記患者に、治療有効量のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤を、治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与することを含み、前記FXRアゴニストが式(I):
【化31】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法。
(項目23)
前記ACC阻害剤が式(III):
【化32】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記ACC阻害剤および前記FXRアゴニストが別々に投与される、項目22から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目22から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、項目22から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、項目22から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
治療有効量のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化33】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
(項目29)
前記ACC阻害剤が、式(III):
【化34】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目28に記載の医薬組成物。
(項目30)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目28から29のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目31)
それを必要とする患者において肝疾患を処置および/または予防する方法であって、前記患者に治療有効量の甲状腺ホルモン受容体(THR)βアゴニストを、治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与することを含み、前記FXRアゴニストが、式(I):
【化35】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、方法。
(項目32)
前記THRβアゴニストが、式(IV):
【化36】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記THRβアゴニストおよび前記FXRアゴニストが別々に投与される、項目31から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記肝疾患が、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である、項目31から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記肝疾患が、原発性硬化性胆管炎(PSC)である、項目31から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記肝疾患が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)である、項目31から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
治療有効量の甲状腺ホルモン受容体(THR)βおよび治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが式(I):
【化37】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、医薬組成物。
(項目38)
前記THRβアゴニストが、式(IV):
【化38】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である、項目37に記載の医薬組成物。
(項目39)
薬学的に許容される担体をさらに含む、項目37から38のいずれかに記載の医薬組成物。
(項目40)
肝疾患を有する患者においてUGT1A1を阻害する方法であって、前記患者に治療有効量の式(I):
【化39】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
(項目41)
以下の式:
【化40】
の化合物の結晶形態。
(項目42)
前記結晶形態が形態Iである、項目41に記載の結晶形態。
(項目43)
9.6、19.3、および22.6度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射を有するX線回折パターンにより特徴付けられる、項目42に記載の結晶形態。
(項目44)
3.2、6.4、および12.8度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射をさらに含むX線回折パターンにより特徴付けられる、項目42から43のいずれかに記載の結晶形態。
(項目45)
22.1、25.8、29.1度2θ±0.2度2θにおいて2θ-反射をさらに含むX線回折パターンにより特徴付けられる、項目42から44のいずれかに記載の結晶形態。
(項目46)
図4に実質的に示されているようなX線回折パターンを有する、項目42から45のいずれかに記載の結晶形態。
(項目47)
約221℃において開始する吸熱を含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する、項目42から46のいずれかに記載の結晶形態。
(項目48)
図5に実質的に示されているような示差走査熱量測定サーモグラムを有する、項目42から47のいずれかに記載の結晶形態。
(項目49)
図6に実質的に示されているような熱重量分析を有する、項目42から48のいずれかに記載の結晶形態。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0014】
【
図2】
図2は、比較例1の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0015】
【
図3】
図3は、比較例2の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0016】
【
図4】
図4は、式(I)のメシル酸塩形態IのX線粉末回折図である。
【0017】
【
図5】
図5は、式(I)のメシル酸塩形態IのDSC曲線である。
【0018】
【
図6】
図6は、式(I)のメシル酸塩形態IのTGA曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明
本開示はFXRアゴニストに関する。本開示はまたFXRアゴニストに関する組成物および方法、ならびに前記化合物によるFXRへの結合を介した疾患および状態の処置および/または予防のためのこのような化合物の使用に関する。本開示はまた、肝疾患を処置するおよび/または予防する組成物および方法であって、FXRアゴニストを1つまたは1つより多くのさらなる治療剤と組み合わせて含む、組成物および方法に関する。
【0020】
FXRアゴニストは、肝臓において、および胃腸管全体にわたり発現し、そこで、これらの活動または無活動は、1つまたは1つより多くの肝臓の疾患、例えば、NASH、PSC、および/または肝線維症においてある役割を果たし得る。しかし、FXRアゴニストは、身体の他の領域においても同定されており、この場合、これらの機能は異なり得る。FGF19は、回腸の上皮細胞内のFXRの初期標的遺伝子である。胆汁酸による回腸FXRの生理学的活性化はFGF19の分泌をもたらす。肝臓において、FXRアゴニズムおよびFGF19シグナル伝達は重複するおよび違った機能を有する。例えば、両方の経路は胆汁酸合成を抑制する。肝細胞内のFXRアゴニズムは、FGF19により低減した同じ酵素の多くを間接的にダウンレギュレートする。
【0021】
FXRアゴニストは、肝疾患を含む様々な状態を処置および予防するのに有用であることができる。肝疾患は、例えば、感染症、傷害、血液中の正常物質の異常な蓄積、または他の原因による肝臓への急性または慢性の損傷を含むことができる。多くのFXRアゴニストおよび関連したアナログが公知であるにもかかわらず、このようなFXRアゴニストは、低い有効性、代謝問題、および/または有害事象を含む弱点を抱えている可能性がある。
【0022】
FXRアゴニストならびに関連した組成物および方法が本明細書に開示されている。本明細書に開示されているFXRアゴニストは、驚くことに、有害効果および有害代謝問題を最小限に抑えながら、良好な治療効果を維持することができる。
【0023】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているFXRアゴニストは、望ましい細胞の効力を有することができる。例えば、一部の実施形態では、高い細胞効力は、より低い細胞効力を有する化合物と比べて、より低い用量の投与薬物でより高いFXRアゴニズムを提供することができる。
【0024】
一部の実施形態では、本開示は、全身性FXRアゴニズムが低減した胃腸管において、高レベルのFXRアゴニズムを実証することができるFXRアゴニストを提供する。本明細書に開示されているFXRアゴニストは、静脈内投与により最小のFGF19増加をもたらす一方で、経口投薬によりFGF19分泌の増加を引き起こすことができる。全身性FXRアゴニズムの低減は、例えば、ある特定の有害反応、例えば、掻痒症の可能性を低減および/もしくは限定することにより、または全身性薬物に伴う潜在的な薬物-薬物相互作用の危険性を低減させることにより、有利となり得る。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書に記載されているFXRアゴニストは、良好な標的選択性を有する。例えば、本明細書に記載されているFXRアゴニストは、FXRをアゴナイズし、TGR5および/またはFXRに関係した他の核ホルモン受容体の活性を有意に変化させない。一部の実施形態では、本明細書に記載されているFXRアゴニストは、肝臓FXRよりも腸FXRを優先的にアゴナイズする。
【0026】
有利なことに、経口的に投薬された本明細書に開示されているFXRアゴニストは、血漿FGF19レベルの用量依存的増加および血清C4レベルの減少を生じることができ、胆汁酸合成の低減を示す。
定義および一般的パラメーター
【0027】
本明細書において使用されているように、下記の用語および語句は一般に、これらが使用される文脈が他を示す場合を除き、下記で記載するような意味を有することを意図する。
【0028】
本明細書において「約」の値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーターそれ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、示された量±5%を含む。ある特定の他の実施形態では、「約」という用語は、示された量±1%を含む。また、「約X」という用語は、「X」の説明を含む。また、単数形「a」および「the」は、文脈によって明らかにそれ以外のことの指示がない限り複数の参照対照を含む。このように、例えば、「化合物」への言及は、複数種のこのような化合物を含み、「アッセイ」への言及は、当業者には公知の1つもしくは複数のアッセイおよびその同等物への言及を含む。
【0029】
本明細書に例示的に記載されている開示は、本明細書において具体的に開示されていない任意の要素(複数可)、限定(複数可)の非存在下で適切に実施され得る。このように、例えば、用語「含むこと(comprising)」、「含まれること(including)」、「含有すること(containing)」などは、拡張的および無制限に読むべきである。さらに、本明細書において利用する用語および表現は、限定の用語としてではなく説明の用語として使用してきており、このような用語および表現の使用において、示し記載するフィーチャまたはその部分のいずれかの均等物を除外する意図は存在されず、様々な改変が特許請求する本開示の範囲内で可能であることが認識される。
【0030】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、「プロドラッグ」の形態でよい。「プロドラッグ」という用語は、医薬品分野において、人体へ投与すると、何らかの化学的または酵素的経路によって生物活性のある親薬物へと変換される、薬物の生物学的に不活性な誘導体として定義される。プロドラッグの例は、エステル化カルボン酸を含む。
【0031】
ヒト肝臓内で、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼは、アミノ、カルバミル、チオ(スルフヒドリル)またはヒドロキシル基を有するある化合物に作用して、グリコシド結合を介してウリジン二リン酸-α-D-グルクロン酸にコンジュゲートするか、または第II相代謝プロセスにおいてカルボキシもしくはヒドロキシル基を有する化合物をエステル化する。本開示の化合物は、グルクロン酸抱合を形成することができ、すなわち、グルクロン酸にコンジュゲートして、グルクロニド、特に(β-D)グルクロニドを形成することができる。
【0032】
胆汁の形成における1つのステップは、個々の胆汁酸と、アミノ酸、特に、グリシンまたはタウリンとのコンジュゲーションである。本開示の化合物は、置換可能な位置においてグリシンまたはタウリンとコンジュゲートすることができる。
【0033】
本開示の化合物は、薬学的に許容される塩の形態でよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基または無機酸および有機塩基または有機酸を含めた、薬学的に許容される無毒性の塩基または酸から調製される塩を指す。本開示の化合物は薬学的に許容される塩の形態であってよい。「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基または無機酸および有機塩基または有機酸を含む、薬学的に許容される無毒性塩基または酸から調製される塩を指す。本開示の化合物が1つまたは1つより多くの酸性基または塩基性基を含有する場合、本開示はまた、これらの対応する薬学的または毒物学的に許容される塩、特にこれらの薬学的に利用可能な塩を含む。したがって、酸性基を含有する本開示の化合物は、本開示に従い、これらの基の上で、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩として存在することができ、使用することができる。このような塩のさらに正確な例として、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、あるいはアンモニアまたは有機アミン、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノ酸、もしくは当業者に公知の他の塩基との塩が挙げられる。1つもしくは1つより多くの塩基性基、すなわち、プロトン化され得る基を含有する本開示の化合物が、本開示に従い、無機酸または有機酸とのこれらの付加塩の形態で存在することができ、使用することができる。適切な酸の例として、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸(sulfaminic acid)、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、および当業者に公知の他の酸が挙げられる。
【0034】
本開示の化合物が酸性基と塩基性基を分子内に同時に含有する場合、本開示はまた、記述されている塩形態に加えて、分子内塩またはベタイン(双性イオン)も含む。それぞれの塩は、当業者に公知の慣習的な方法、例えば、溶媒もしくは分散剤中で、これらを有機酸もしくは有機塩基または無機酸もしくは無機塩基と接触させること、あるいは他の塩とのアニオン交換もしくはカチオン交換により得ることができる。
【0035】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は双性イオンを含む。例えば、式(I)の化合物は、以下の通り双性イオンを形成することができる:
【化2】
【0036】
本開示はまた、生理学的適合性が低いことから、そのままでは医薬品における使用に適切ではないが、例えば、化学反応のため、または薬学的に許容される塩の調製のために中間体として使用することができる本開示の化合物のすべての塩も含む。薬学的に許容される塩(それぞれ酸付加塩または塩基付加塩)を形成するための基本化合物との反応に有用な酸および塩基は、当業者に公知である。同様に、基本化合物から薬学的に許容される塩を調製する方法は(開示により)当業者に公知であり、例えば、Berge, et al. Journal of Pharmaceutical Science, Jan. 1977 vol. 66, No.1および他の出典において開示されている。
【0037】
さらに、本明細書に開示される化合物は、互変異性に供され得る。化合物またはこれらのプロドラッグの互変異性、例えば、ケト-エノール互変異性などが生じ得る場合、個々の形態、例えば、ケト形およびエノール形など、ならびに任意の比のこれらの混合物は、それぞれ本開示の範囲内にある。同じことが立体異性体、例えばエナンチオマー、cis/trans異性体、ジアステレオマー、配座異性体などにも当てはまる。
【0038】
「保護基」という用語は、官能基の特性または化合物全体の特性をマスクまたは変化させる化合物の部分を指す。化学的保護基、および保護/脱保護のための戦略は、当技術分野で周知である。例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、Theodora W. Greene、John Wiley & Sons, Inc.、New York、1991年を参照されたい。保護基をしばしば利用して、特定の官能基の反応性をマスクし、所望の化学反応の効率を助け、例えば、秩序立った計画された様式で化学結合を作製および切断する。「脱保護すること」という用語は、保護基を除去することを指す。
【0039】
「脱離基」は、化学反応の間に、反応している炭素原子への共有結合から電子対と共に離脱することができる分子断片を含む。
【0040】
代替の置換基のリストが、これらの原子価の必要条件または他の理由により、特定の基を置換するのに使用することができないメンバーを含む場合、このリストは、当業者の知識があれば、この特定の基を置換するのに適切であるリストのメンバーのみを含むものと読み取られることを目的としていることを、当業者は理解している。
【0041】
さらに、本開示の化合物は、溶媒和物、例えば、溶媒和物として水、または薬学的に許容される溶媒和物、例えば、アルコール、特に、エタノールを含むものの形態で存在し得る。「溶媒和物」は、溶媒および化合物の相互作用によって形成される。
【0042】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載されている化合物もしくは薬学的に許容される塩、またはこれらの混合物の、光学異性体、ラセミ化合物、または他のこれらの混合物を提供する。所望する場合、異性体は、当技術分野で周知の方法により、例えば、液体クロマトグラフィーで分離することができる。これらの状況において、単一のエナンチオマーまたはジアステレオマー、すなわち、光学活性な形態は、不斉合成によってまたは分割によって得ることができる。分割は、例えば、従来の方法、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用したクロマトグラフィーによって達成することができる。
【0043】
「立体異性体」は、同じ結合によって結合している同じ原子で構成されているが、互換的ではない、異なる三次元構造を有する化合物を指す。本開示は、様々な立体異性体およびこれらの混合物を意図し、その分子が互いの重ねることが出来ない鏡像である2つの立体異性体を指す「エナンチオマー」を含む。「ジアステレオマー」は、少なくとも2個の不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。
【0044】
本明細書において開示されている化合物およびその薬学的に許容される塩は、一部の実施形態において、不斉中心を含んでもよく、したがって、絶対立体化学に関して、(R)-もしくは(S)-として、またはアミノ酸については、(D)-もしくは(L)-として定義し得る、エナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体の形態を生じさせ得る。一部の実施形態は、すべてのこのような可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含む。光学活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製され得るか、または従来の技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別結晶化を使用して分割され得る。個々のエナンチオマーの調製/単離のための従来の技術は、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、あるいは例えば、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用したラセミ化合物(または塩もしくは誘導体のラセミ化合物)の分割を含む。本明細書に記載されている化合物が、オレフィン性二重結合、または他の幾何学的な不斉中心を含有するとき、および他に特定しない限り、これらの化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図される。
【0045】
本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体、もしくは混合物を含む本明細書において提供する組成物は、ラセミ混合物、または鏡像体過剰の1つのエナンチオマーもしくは単一のジアステレオマーを含有する混合物、またはジアステレオマー混合物を含み得る。1つ1つの異性体形態が具体的におよび個々に列挙されるのと同じように、これらの化合物のすべてのこのような異性体形態は本明細書において明確に含まれる。
【0046】
本明細書において与えられる任意の式または構造はまた、化合物の非標識形態および同位体標識形態を表すことを意図する。同位体標識化合物は、1個または1個より多くの原子が、選択した原子質量または質量数を有する原子で置き換えられていることを除いて、本明細書において与えられる式によって示される構造を有する。本開示の化合物中に組み込むことができる同位体の例は、これらに限定されないが、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、11C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Clおよび125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体を含む。本開示の様々な同位体標識化合物、例えば、放射性同位体、例えば、3H、13Cおよび14Cが組み込まれるもの。このような同位体標識化合物は、代謝研究、反応速度論研究、検出またはイメージング技術、例えば、薬物または基質組織分布アッセイを含めたポジトロン放出断層撮影(PET)または単光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)において、あるいは患者の放射線処置において有用であり得る。本開示の同位体標識化合物およびそのプロドラッグは一般に、同位体標識されていない試薬を容易に利用可能な同位体標識された試薬で置換することによって、スキームにおいてまたは下記の実施例および調製において開示されている手順を行うことによって調製することができる。
【0047】
本開示はまた、炭素原子に付着している1~n個の水素が、重水素で置き換えられている、本明細書において開示されている化合物の「重水素化類似体」を含み、ここで、nは、分子中の水素の数である。このような化合物は、代謝に対して増加した抵抗性を示し得、したがって、哺乳動物、例えば、ヒトに投与したとき、式Iの任意の化合物の半減期を増加させるのに有用であり得る。例えば、Foster、「Deuterium Isotope Effects in Studies of Drug Metabolism」、Trends Pharmacol. Sci. 5巻(12号):524~527頁(1984年)を参照されたい。このような化合物は、当技術分野で周知の手段によって、例えば、1個または1個より多くの水素が重水素で置き換えられている出発物質を利用することによって合成される。
【0048】
本開示の重水素標識または重水素置換された治療化合物は、分布、代謝および排泄(ADME)に関して有益なDMPK(薬物代謝および薬物動態)特性を有し得る。より重い同位体、例えば、重水素による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、in vivoでの半減期の増加、投与必要量の低減および/または治療指数の改善からもたらされる特定の治療上の利点を与え得る。18F標識化合物は、PETまたはSPECT研究のために有用であり得る。
【0049】
このようなより重い同位体、特に、重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義し得る。本開示の化合物において、特定の同位体として特に指定されない任意の原子は、その原子の任意の安定的な同位体を表すことを意味する。他に記述しない限り、ある位置が「H」または「水素」と特に指定されるとき、その位置は、その天然存在度同位体組成において水素を有すると理解される。したがって、本開示の化合物において、重水素(D)として特に指定される任意の原子は、重水素を表すことを意味する。
【0050】
さらに、本開示は、活性成分として、本開示の化合物、またはそのプロドラッグ化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0051】
「医薬組成物」は、1つもしくは1つより多くの活性成分、および担体を構成する1つもしくは1つより多くの不活性成分、ならびに任意の2つもしくは2つより多くの成分の組合せ、錯体形成もしくは凝集から、または1つもしくは1つより多くの成分の解離から、または1つもしくは1つより多くの成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から直接的または間接的に生成する任意の生成物を意味する。したがって、本開示の医薬組成物は、少なくとも1つの本開示の化合物および薬学的に許容される担体を混和することによって作製される任意の組成物を包含し得る。
【0052】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、開示化合物またはその使用に対して有害ではない、賦形剤または薬剤、例えば、溶媒、希釈剤、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質の組成物を調製するためのこのような担体および薬剤の使用は当技術分野で周知である(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mace Publishing Co., Philadelphia, PA 17th Ed.(1985);およびModern Pharmaceutics, Marcel Dekker, Inc. 3rd Ed. (G.S. Banker & C.T. Rhodes, Eds.)を参照されたい)。
【0053】
「治療有効量」および「有効量」という用語は、交換可能なように使用され、このような処置を必要とする患者(例えば、ヒト)に1回または1回より多くの投薬で投与された場合、以下に定義されているような処置を実行するのに十分な化合物の量を指す。治療有効量は、患者、処置されている疾患、患者の体重および/もしくは年齢、疾患の重症度、または資格のある処方者もしくは介護者により決定される投与方式に応じて変動する。
【0054】
「処置」または「処置する」という用語は、式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を以下の目的のために投与することを意味する:(i)疾患の開始を遅延させること、すなわち、疾患の臨床症状を進展させないもしくはその進展を遅延させること;(ii)疾患を阻害すること、すなわち、臨床症状の進展を抑止すること;および/または(iii)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状またはその重症度の寛解をもたらすこと。
略語および頭字語のリスト
略語 意味
(±)-BINAP (±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフタレン
2-MeTHF 2-メチルテトラヒドロフラン
ACNまたはMeCN アセトニトリル
aq. 水性
Bn ベンジル
BOCまたはBoc t-ブチルオキシカルボニル
BSA ウシ血清アルブミン
BSS 平衡塩類溶液
calcd 計算値
DAST 三フッ化(ジエチルアミノ)硫黄
DCM ジクロロメタン
DIBAL-H 水素化ジイソブチルアルミニウム
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO N,N-ジメチルスルホキシド
EA 酢酸エチル
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ESI エレクトロスプレーイオン化
Et エチル
Et2O ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
FBS ウシ胎仔血清
hまたはhr(s) 時間
HATU 1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェートHPLC 高速液体クロマトグラフィー
IPA イソプロピルアルコール
IPTG イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド
LCMSまたはLC/MS 液体クロマトグラフィー質量分析法
Me メチル
MEM 最小必須培地
MeOH メタノール
MSA メタンスルホン酸
min 分
MS 質量分析法
m/z 質量電荷比
NADPH ジヒドロニコチンアミド-アデニンジヌクレオチドリン酸NMP N-メチルピロリドン
NMR 核磁気共鳴分光法
n-BuLi n-ブチルリチウム
PE 石油エーテル
rpm 毎分回転数
RTまたはrt 室温
sat. 飽和
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
TBS tert-ブチルジメチルシリル
TEMPO 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMS トリメチルシリル
UPLC 超高性能液体クロマトグラフィー
【0055】
本明細書で使用される場合、「FXRアゴニスト」は、ファルネソイドX受容体(FXR)に結合し、これらを活性化することが可能な任意の薬剤を指し、ファルネソイドX受容体は胆汁酸受容体(BAR)またはNR1H4(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー4)受容体と呼ばれてもよい。FXRアゴニストは、FXRのアゴニストまたは部分アゴニストとして作用し得る。薬剤は化学化合物であっても、生物学的分子(例えば、タンパク質または抗体)であってもよい。FXRアゴニストの活性は、いくつかの異なる方法、例えば、Pellicciari, et al. Journal of Medicinal Chemistry, 2002 vol. 15, No. 45:3569-72に記載されている蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)細胞不含アッセイを使用してin vitroアッセイにより測定することができる。
【0056】
本明細書で言及される場合、「ASK1阻害剤」とは、アポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)タンパク質を不活化することが可能な任意の薬剤であってよい。薬剤は化学化合物であっても、生物学的分子(例えば、タンパク質または抗体)であってもよい。ASK1タンパク質活性はいくつかの異なる方法で測定することができる。例えば、ASK1タンパク質の活性は、ASK1タンパク質が基質タンパク質をリン酸化する能力に基づき決定することができる。ASK1阻害剤を同定するための方法は公知である(例えば、両方ともこれら全体が参照により本明細書に組み込まれているU.S.2007/0276050およびU.S.2011/0009410を参照されたい)。例示的ASK1基質タンパク質として、MAPKK3、MAPKK4、MAPKK6、MAPKK7、またはこれらの断片が挙げられる。ASK1タンパク質活性はまた、ASK1タンパク質のリン酸化レベル、例えば、ヒト全長ASK1タンパク質のスレオニン838(T838)またはマウス全長ASK1タンパク質のスレオニン845(T845)に対応するASK1タンパク質におけるスレオニン残基のリン酸化レベルで測定することもできる。例えば、ASK1タンパク質がヒト全長ASK1タンパク質配列を含む場合、ASK1阻害剤は、ヒト全長ASK1タンパク質配列におけるT838のリン酸化を減弱し得る。ヒトASK1 T838またはマウスASK1 T845に対する部位特異的抗体を使用して、リン酸化レベルを検出することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「ACC阻害剤」は、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)に結合し、これを阻害することが可能な任意の薬剤を指す。ACC阻害剤は、ACCの阻害剤または部分的阻害剤として作用することができる。薬剤は化学化合物であっても、生物学的分子(例えば、タンパク質または抗体)であってもよい。ACC阻害剤の活性は、当技術分野で公知の方法、例えば、米国特許第8,969,557号、および/または米国特許出願公開第20160108061号に記載および引用されている方法で測定することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「甲状腺ホルモン受容体βアゴニスト」または「THRβアゴニスト」は、甲状腺ホルモン受容体ベータ(NR1A2(核内受容体サブファミリー1、グループA、メンバー2)受容体と呼んでもよい)に結合し、活性化することが可能な任意の薬剤を指す。THRβアゴニストは、THRβのアゴニストまたは部分アゴニストとして作用することができる。薬剤は化学化合物であっても、生物学的分子(例えば、タンパク質または抗体)であってもよい。THRβアゴニストの活性は公知の方法で測定することができる。
化合物
【0059】
本明細書において提供するのは、以下の式(I):
【化3】
を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0060】
一部の実施形態では、薬学的に許容される塩はメシル酸塩である。例えば、以下の式の化合物が提供される:
【化4】
固体形態
【0061】
一部の実施形態では、本開示は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の固体形態を提供する。固体形態、例えば、結晶形態は、医薬組成物中の活性成分としての使用に適切であり得るバイオアベイラビリティーおよび安定性という利点を提供することができる。
【0062】
医薬品原薬または活性成分の結晶構造における変化は、医薬製品または活性成分の溶解速度(バイオアベイラビリティーなどに影響を与え得る)、製造可能性(例えば、取扱いの容易さ、公知の強度の用量を常に調製する能力)、および安定性(例えば、熱安定性、貯蔵寿命など)に影響を与え得る。このような変化は、異なる剤形または送達形態、例えば、液剤、または錠剤およびカプセル剤を含む固形経口剤形の医薬組成物の調製または製剤化に影響を与え得る。他の形態、例えば、非結晶形態または非晶質形態と比較して、結晶形態は、所望のまたは適切な吸湿性、粒径の制御、溶解速度、溶解度、純度、物理的安定性および化学的安定性、製造可能性、収率、ならびに/またはプロセス制御を提供することができる。
【0063】
一部の実施形態では、式(I)の化合物の安定した固体形態が提供される。例えば、式(I)のメシル酸塩は、様々な製造条件下で他の多形形態に変換しない、および/または同じ多形形態として形成される安定した結晶形態として生成することができる。
【0064】
よって、式(I)の化合物の結晶形態は、例えば、化合物の製造プロセス、化合物の薬物製品形態の安定性もしくは保存性、化合物の原薬の安定性もしくは保存性、および/または活性剤としての化合物のバイオアベイラビリティーおよび/もしくは安定性を改善するなどの利点をもたらすことができる。
【0065】
一部の実施形態では、固体形態は式(I)のメシル酸塩形態Iである。
【0066】
式(I)のメシル酸塩形態Iは、固体形態が
図4に実質的に示されているような粉末X線回折(XRPD)パターンを示すX線粉末回折図により特徴付けることができる。式(I)のメシル酸塩形態Iは、
図5に実質的に示されているような示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示し得る。式(I)のメシル酸塩形態Iは、
図6に実質的に示されているような熱重量分析(TGA)サーモグラムを示し得る。
【0067】
式(I)のメシル酸塩形態Iの一部の実施形態では、以下の(a)~(c)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはすべてがあてはまる:(a)式(I)のメシル酸塩形態Iは
図4に実質的に示されているようなXRPDパターンを有する;(b)式(I)のメシル酸塩形態Iは
図5に実質的に示されているようなDSCサーモグラムを有する;(c)式(I)メシル酸塩形態Iは
図6に実質的に示されているようなTGAサーモグラムを有する。
【0068】
一部の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、以下の特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つを有する:
(a)
図4に実質的に示されているようなXRPDパターン
(b)
図5に実質的に示されているようなDSCサーモグラム
(c)
図6に実質的に示されているようなTGAサーモグラム。
【0069】
一部の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、
図4に実質的に示されているようなXRPDパターンとして、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9つの、最も大きな強度を有する度2θ-反射を示すXRPDパターンを有する。
【0070】
ある特定の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、9.6、19.3、および22.6度において度2θ-反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有する。一部の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、9.6、19.3、および22.6度において度2θ-反射(±0.2度2θ)を含み、3.2、6.4、および12.8度において、1つ、2つまたは3つの度2θ-反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有する。一部の実施形態では、式(I)のメシル酸塩形態Iは、9.6、19.3、および22.6度において度2θ-反射(±0.2度2θ)を含み、22.1、25.8、および29.1度において、1つ、2つまたは3つの度2θ-反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有する。一部の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、9.6、19.3、22.6、3.2、6.4、12.8、22.1、25.8、および29.1度において度2θ-反射(±0.2度2θ)を含むXRPDパターンを有する。
【0071】
一部の実施形態では、式(I)メシル酸塩形態Iは、約221℃において開始する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0072】
医薬組成物および投与モード
さらに、本開示は、活性成分として、少なくとも1つの本開示の化合物、またはそのプロドラッグ化合物、または薬学的に許容される塩、もしくは溶媒和物を、薬学的に許容される担体と一緒に含む、医薬組成物を提供する。
【0073】
本開示の医薬組成物は、プロドラッグ化合物または他の核内受容体モジュレーターのような1つまたは1つより多くの他の化合物を、活性成分としてさらに含んでもよい。
【0074】
組成物は、経口、直腸、局所的、非経口(皮下、筋内、および静脈内を含む)、眼球(眼用)、肺(鼻腔用もしくは口腔内頬側吸入)または経鼻投与に適切であるが、ただし、任意の所与のケースにおいて最も適切な経路は、処置している状態の性質および重症度ならびに活性成分の性質に依存することになる。これらは好都合にも単位剤形で提示することができ、薬学分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。
【0075】
実用では、本開示の化合物は、往来の薬学的配合技術に従い、薬学的担体との密接な混和物中で活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与、例えば、経口もしくは非経口(静脈内を含む)に対して所望の調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物の調製において、例えば、懸濁剤、エリキシル剤および液剤などの経口用液体調製物の場合には、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤など;または、例えば、散剤、硬質および軟質カプセル剤ならびに錠剤などの経口用固体調製物の場合には、担体、例えば、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などの通常の薬学的媒体のいずれかを利用することができ、経口固体調製物が液体調製物よりも好ましい。
【0076】
投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口投与単位形態に相当し、この場合、固体薬学的担体が利用される。所望する場合、錠剤は、標準的な水性または非水性技術によりコーティングされていてもよい。このような組成物および調製物は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含有すべきである。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは当然変えることができ、好都合には、この単位の重量の約2パーセントから約60パーセントの間であってよい。このような療法的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効用量が得られるような量である。活性化合物はまた、例えば、液体の点鼻薬またはスプレー剤として鼻腔内に投与することもできる。
【0077】
錠剤、丸剤、カプセル剤などはまた、結合剤、例えば、トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなど;賦形剤、例えば、リン酸二カルシウムなど;崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸など;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムなど;および甘味剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリンを含有してもよい。投与単位形態がカプセル剤である場合、上記種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。
【0078】
様々な他の材料が、コーティングとして、または投与量単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤は、セラック、糖または両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチルパラベンおよびプロピルパラベン、染料および香味剤、例えば、サクランボまたはオレンジ香味料などを含有してもよい。
【0079】
一部の実施形態では、本開示の化合物は、経口的に利用可能な製剤を産出するために様々な対カチオンとの塩として使用することもできる。
【0080】
本開示の化合物はまた、非経口的に投与することができる。これらの活性化合物の液剤または懸濁剤は、ヒドロキシ-プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水中で調製することができる。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよび油中のこれらの混合物中で調製することもできる。貯蔵および使用の普通の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を阻止するための防腐剤を含有する。
【0081】
注射使用に適切な医薬品形態として、無菌水溶液または分散液、および注射可能な無菌溶液または分散液の即時調合のための無菌粉末が挙げられる。すべての場合において、この形態は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性がなければならない。これは、製造および貯蔵の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒体であることができる。
【0082】
任意の適切な投与経路を、哺乳動物、特にヒトに、本開示の化合物の有効用量を提供するために利用することができる。例えば、経口、直腸、局所的、非経口、眼、肺、経鼻などを利用することができる。剤形として、錠剤、トローチ剤、分散剤、懸濁剤、液剤、カプセル剤、クリーム剤、軟膏剤、エアゾール剤などが挙げられる。一部の実施形態では、本開示の化合物は、経口的に投与される。
【0083】
キット
本明細書において提供するのはまた、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、もしくは重水素化類似体、および適切な包装を含むキットである。一実施形態では、キットはさらに、使用のための説明書を含む。一態様では、キットは、本開示の化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、もしくは重水素化類似体、ならびに本明細書に記載されている疾患もしくは状態を含めた適応症の処置における化合物の使用のためのラベルおよび/または説明書を含む。
【0084】
本明細書において提供するのはまた、適切な容器中に本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、もしくは重水素化類似体を含む製造品である。容器は、バイアル、ジャー、アンプル、事前充填したシリンジ、および静脈内バッグであり得る。
処置方法および使用
【0085】
「処置」または「処置する」は、臨床結果を含めた有益または所望の結果を得るためのアプローチである。有益または所望の臨床結果は、下記の1つもしくは1つより多くを含み得る。a)疾患もしくは状態を阻害すること(例えば、疾患もしくは状態からもたらされる1つもしくは1つより多くの症状を減少させること、および/または疾患もしくは状態の程度を低減させること);b)疾患もしくは状態と関連する1つもしくは1つより多くの臨床症状の発生を遅らせるまたは抑止すること(例えば、疾患もしくは状態を安定化すること、疾患もしくは状態の悪化もしくは進行を予防または遅延させること、および/または疾患もしくは状態の拡散(例えば、転移)を予防もしくは遅延させること);ならびに/あるいはc)疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の後退をもたらすこと(例えば、病態を寛解させること、疾患もしくは状態の部分的もしくは全体的緩解を実現すること、別の薬物療法の効果を増強すること、疾患の進行を遅延させること、生活の質を向上させること、および/または生存を延長すること)。
【0086】
「予防」または「予防すること」は、疾患もしくは状態の臨床症状を発生させない、疾患もしくは状態の任意の処置を意味する。化合物は、一部の実施形態では、疾患もしくは状態の危険性があるか、または疾患もしくは状態の家族歴を有する対象(ヒトを含めた)に投与し得る。
【0087】
「対象」は、処置、観察もしくは実験の目的であったか、またはこれから目的となる、動物、例えば、哺乳動物(ヒトを含めた)を指す。本明細書に記載の方法は、ヒトの治療および/または獣医学の用途において有用であり得る。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0088】
本明細書に記載されている化合物、またはその薬学的に許容される塩、互変異性体、立体異性体、立体異性体の混合物、プロドラッグ、もしくは重水素化類似体の「治療有効量」または「有効量」という用語は、対象に投与したときに処置をもたらし、治療上の利点、例えば、症状の寛解、または疾患の進行の遅れを実現するのに十分な量を意味する。例えば、治療有効量は、FXRアゴニズムに対して応答性である疾患もしくは状態の症状を減少させるのに十分な量であり得る。治療有効量は、対象、処置される疾患もしくは状態、対象の体重および年齢、疾患もしくは状態の重症度、ならびに投与の様式によって変化し得、これは当業者が容易に決定することができる。
【0089】
本開示はさらに、本明細書において開示される化合物による前記核内受容体への結合を介した疾患および/または状態の処置および/または予防のための前記化合物の使用に関する。さらに、本開示は、前記化合物による前記核内受容体への結合を介した疾患および/または状態の処置および/または予防のための医薬の調製のための前記化合物の使用に関する。
【0090】
一部の実施形態では、本開示は、慢性的な肝内または一部の形態の肝外の胆汁うっ滞状態、肝線維症、急性肝内胆汁うっ滞性状態、不適切な胆汁組成から生じる閉塞性もしくは慢性炎症性障害、食事性脂肪および食事性脂溶性ビタミンの取り込みの減少を伴う胃腸管状態、炎症性腸疾患、脂質およびリポタンパク質障害、II型糖尿病、ならびに、I型およびII型糖尿病の臨床的合併症、脂質、具体的にはトリグリセリドの強制的な蓄積およびその後の線維化促進経路の活性化による臓器の慢性脂肪および線維性変性に起因する状態および疾患、肥満およびメタボリックシンドローム(脂質異常症、糖尿病および異常に高いボディマス指数の複合的な状態)、急性心筋梗塞、急性脳卒中、慢性閉塞性アテローム性動脈硬化症のエンドポイントとして発生する血栓症、細胞内細菌もしくは寄生虫の原虫による持続性感染症、非悪性過剰増殖性障害、悪性過剰増殖性障害、特に結腸腺癌および肝細胞癌、脂肪肝および関連症候群、慢性肝疾患もしくは外科的肝臓摘除の結果としての肝不全もしくは肝機能不全、B型肝炎感染症、C型肝炎感染症ならびに/またはアルコール誘導性肝硬変にもしくは肝炎のウイルス媒介性形態に関連する胆汁うっ滞および線維化効果の予防および/または処置のための医薬の調製における式(I)による化合物の使用に関する。
【0091】
本開示による化合物と薬学的に許容される担体の組合せを含む、本明細書で呼ぶところの医薬は、従来のプロセスにより調製することができる。
【0092】
FXRは、(胆汁酸結合タンパク質を調節することによって)肝臓での胆汁酸の合成量と、腸内でのこれらのリサイクルの両方をモジュレートできる。FXRは、コレステロール胆石、代謝障害、例えば、II型糖尿病、脂質異常症または肥満など、慢性炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患など、または慢性肝内形態の胆汁うっ滞およびその他多くの疾患などの多種多様にわたる疾患の原因および処置に関連する多くの多様な生理学的プロセスの調節に関与し得る。
【0093】
FXRは、肝臓および胃腸管における応答遺伝子の複雑なパターンを調節している。遺伝子産物は、多様な生理学的プロセスに影響を及ぼす。例えば、FXRは、LRH-1よりも優位抑制性であるさらなる核内受容体SHPをコードしているmRNAのアップレギュレーションを介して、Cyp7A1の誘導を抑制する。FXRはこの経路の最終生成物である1次胆汁酸と結合するので、これは、遺伝子発現レベルでのフィードバック阻害の例とみなすことができる。
【0094】
FXRリガンドは、胆汁流を誘発させ、胆汁酸組成をさらに親水性組成へと変更する。ツール化合物としての最初の合成FXRリガンドGW4064および半合成人工胆汁酸リガンド6-アルファ-エチル-CDCAの開発と共に、強力なアゴニストによるFXRの過剰刺激の作用を分析することができた。両方のリガンドとも胆管結紮した動物において胆汁流を誘発することが示された。さらに、胆汁分泌促進作用に加えて、肝保護作用も実証することができた。これらの肝保護作用は、抗線維化作用を含み、この抗線維化作用は、マトリックス-メタロプロテイナーゼの組織阻害剤、TIMP-1および2の抑制、肝臓星細胞内でのコラーゲン沈着分解マトリックスメタロプロテイナーゼ2の誘導、ならびに、その後の、両方とも線維症を進行させる因子であるアルファ-コラーゲンmRNAおよびトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-ベータ)mRNAの減少から生じる。
【0095】
さらに、抗胆汁うっ滞性活性が、胆管結紮した動物モデルにおいて、ならびにエストロゲン誘発性胆汁うっ滞の動物モデルにおいて実証された。遺伝の研究によって、遺伝性形態の胆汁うっ滞(進行性家族性肝内胆汁うっ滞=PFIC、I~IV型)において、FXRそれ自体の核局在化が、FIC1遺伝子の突然変異の結果として減少するか(PFIC I型、またバイラー病とも呼ばれる)(F. Chenら、Gastroenterology、2004年、126巻、756頁;L. Alvarezら、Hum. Mol. Genet.、2004年、13巻、2451頁)またはMDR-3リン脂質輸出ポンプをコードしているFXR標的遺伝子のレベルが減少する(PFIC III型)ことが実証されている。FXR結合化合物は、慢性胆汁うっ滞性状態、例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC)または原発性硬化性胆管炎(PSC)などの療法用レジメンにおいて、かなりの臨床的有用性を実証できるという増大する数の証拠が存在する。
【0096】
FXRアゴニストは、コレステロール胆石の形成を予防する、または外科切除もしくは衝撃波砕石術後の胆石の再形成を予防するのに有用となり得る。例えば、合成FXRツール化合物GW4064を使用することで、FXRの活性化は、コレステロール飽和指数(CSI)の改善をもたらし、直接的には、C57L胆石感受性マウスにおける胆石形成の根絶をもたらすのに対してFXRノックアウトマウスにおける薬物処置は胆石形成に作用を示さないことを実証することができた。したがって、本開示の一実施形態では、式(I)による化合物および前記化合物を含む医薬組成物は、不適切な胆汁組成物から生じる閉塞性または慢性炎症性障害、例えば、コレステロール胆石としても公知の胆石症などの予防および/または処置のために使用される。
【0097】
FXRアゴニストは、腸内での新生物形質転換ならびにポリープの発生およびこれらの腺癌への転移から腸を保護するのに有用であり得る。FXRの不在は、肝細胞癌(Cacrcinoma)(HCC)、すなわち、最も顕著な形態の肝がんの形成の高い増加をもたらす。機能性FXRが結腸腺癌および肝細胞癌の形成を阻止するのに対して、FXRの活性化は、肝切除術後の肝再生を誘発する。
【0098】
FXR活性化に伴う肝保護作用、抗新生物および肝再生作用の組合せは、重症肝疾患の処置におけるFXRアゴニストの使用のために療法的に利用することができる。一実施形態では、本開示による化合物および前記化合物を含む医薬組成物は、肝疾患、例えば、HCCなどの処置、肝再成長の刺激および広範囲肝切除に伴う副作用の緩和、肝硬変(原因に関係なく)、ならびに肝移植または主広範囲肝臓手術の過程での肝虚血の予防または処置に使用される。
【0099】
さらに、FXRは、血清トリグリセリドの主要制御因子であり得る。合成アゴニストによるFXRの活性化は、主にVLDLの減少という形態で血清トリグリセリドの顕著な減少をもたらすだけでなく、全血清コレステロールの減少ももたらし得る。血清トリグリセリドの低下は、単独の効果ではない。db/dbまたはob/obマウスの合成FXRアゴニストGW4064での処置は、血清トリグリセリド、全コレステロール、遊離脂肪酸、ケトン体、例えば、3-OHブチレートなどの顕著なおよび複合的な減少をもたらした。さらに、FXR活性化は、肝細胞における細胞内インスリンシグナル伝達経路とかみ合わさって、肝臓の糖新生からのグルコースの放出を減少させるが、同時に肝臓グリコーゲンを増加させる。インスリン感受性ならびにグルコース耐性は、FXR処置によりプラスに影響を受けた。体重減少に対する効果も最近、高脂質の食事を過剰に与えたマウスにおいて観察された。この減量効果は、減量およびスポーツ性表現型をもたらすことが公知である、線維芽細胞成長因子FGF-19のFXRによる誘導から生じ得る。最近の特許出願において、FXRアゴニストの体重減少に対する効果が実証されている。
【0100】
したがって、FXRアゴニストは、様々な療法の方式において利用することができる。FXR結合化合物は、これらのインスリン増感作用、糖新生(glycogenogenic)、および脂質低下効果によりII型糖尿病の処置に対する有力な候補であると考えられる。
【0101】
一実施形態では、本開示による化合物および前記化合物を含む医薬組成物は、全身的なインスリン感受性および肝臓における細胞内インスリンシグナル伝達のFXR媒介性アップレギュレーション、末梢でのグルコース取り込みおよび新陳代謝の増加、肝臓内のグリコーゲン貯蔵の増加、肝臓由来の糖新生からの血清へのグルコース放出の低減により克服することができるII型糖尿病の予防および/または処置に使用される。
【0102】
さらなる実施形態では、前記化合物および医薬組成物は、慢性肝内胆汁うっ滞性状態、例えば、PBC、PSC、進行性家族性胆汁うっ滞(PFIC)、アルコール誘導性肝硬変および関連する胆汁うっ滞など、ならびに一部の形態の肝外胆汁うっ滞性状態、または肝線維症などの予防および/または処置に使用される。
【0103】
本開示はまた、胆汁酸およびリン脂質の腸管レベルの増加により克服することができる食物脂肪および食事性脂溶性ビタミンの取り込みの減少を伴う胃腸管状態の予防および/または処置のための式(I)の化合物または前記化合物を含む医薬組成物に関する。
【0104】
さらなる実施形態では、前記化合物または医薬組成物は、全血漿コレステロールの低下、血清トリグリセリドの低下、肝臓での、肝臓コレステロールの胆汁酸への変換の増加ならびにVLDLおよび他のリポタンパク質のクリアランスおよび代謝性変換の増加に対するFXRの有益な効果により回復させることができる臨床的に明白な状態としての高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、およびアテローム性動脈硬化症などの脂質およびリポタンパク質障害からなる群から選択される疾患を予防および/または処置するために使用される。
【0105】
さらなる一実施形態では、前記化合物および医薬組成物は、FXR標的医薬の脂質低下、抗胆汁うっ滞効果および抗線維化効果の組合せが、脂肪肝および関連症候群、例えば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの処置のために、またはアルコール誘導性肝硬変にもしくは肝炎のウイルス媒介性形態に関連する胆汁うっ滞および線維化効果の処置のために利用することができる疾患の予防および/または処置のために使用される。
【0106】
脂質低下効果と併せて、機能的FXRの損失は、ApoEノックアウトマウスにおいてアテローム性動脈硬化症の増加をもたらすことが示された。したがって、FXRアゴニストは、抗アテローム硬化および心臓保護の薬物として臨床的有用性を有し得る。血管平滑筋細胞内のエンドセリン-1のダウンレギュレーションはまた、このような有益な療法的効果にも寄与し得る。
【0107】
本開示はまた、慢性閉塞性アテローム性動脈硬化症のエンドポイントとして発生する心血管障害、例えば、急性心筋梗塞、急性脳卒中、または血栓症などの予防的および外傷後処置のための、式(I)による化合物または前記化合物を含む医薬組成物に関する。
【0108】
腸管および結腸のポリープ形成の制御の他に、FXRは、乳がん組織および細胞株では発現するが、健康な乳房組織では発現しないようであり、ERポジティブ乳がん細胞内のエストロゲン受容体と相互作用しているようである。したがって、FXRは、増殖性疾患、特に小分子応答性形態のFXRを発現する転移性がん形態の処置のための潜在的標的であり得る。
【0109】
さらなる実施形態では、前記化合物および医薬組成物は、悪性過剰増殖性障害、例えば、異なる形態のがん、具体的には、FXRリガンドによる妨害が有益な影響を有することになるある特定の形態の乳がん、肝臓がんまたは結腸がんなどの予防および/または処置のために使用される。
【0110】
FXRは、腸内の抗菌剤防御の制御に関与し得る。FXRアゴニストは、炎症性腸疾患(IBD)の療法において有益な影響を及ぼし得る。例えば、腸上側(回腸)部分が病気に冒されているIBD形態(例えば、回腸クローン病)において、FXRアゴニストは、細菌増殖のFXR媒介性の制御を介して有益な効果を有し得る。IBDでは、適応免疫応答の脱感作が何らかの形で、腸管免疫系において損なわれる。よって、細菌過剰繁殖が慢性炎症性応答の確立に向けた引き金となり得る。したがって、FXR媒介性機序により細菌増殖の勢いを弱めることは、急性炎症性症状の発現を予防するための主要な機序となり得る。
【0111】
したがって、本開示はまた、炎症性腸疾患に関係した疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎などを予防および/または処置するための式(I)による化合物または前記化合物を含む医薬組成物にも関する。FXRで媒介される、腸管バリア機能の回復および非共生細菌量の減少は、腸内免疫系への細菌性抗原の曝露を減少させるのに役立ち、したがって炎症性応答を減少させることができると考えられている。
【0112】
本開示は、肥満および関連する障害、例えば、FXR媒介性の血清トリグリセリド、血糖の低下、ならびにインスリン感受性の増加およびFXR媒介性減量により克服することができるメタボリックシンドローム(脂質異常症、糖尿病および異常に高いボディマス指数の複合的な状態)の予防および/または処置のための化合物または医薬組成物にさらに関する。
【0113】
さらなる実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、I型およびII型糖尿病の臨床的合併症を予防および/または処置するのに有用である。このような合併症の例として、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、または末梢動脈閉塞疾患(PAOD)が挙げられる。糖尿病の他の臨床的合併症もまた本開示により包含される。
【0114】
さらに、脂質、具体的にはトリグリセリドの強制的な蓄積およびその後の線維化促進経路の活性化による臓器の慢性脂肪および線維性変性に起因する状態および疾患もまた、本開示の化合物または医薬組成物を投与することによって予防および/または処置することができる。このような状態および疾患は、肝臓のNASHおよび慢性胆汁うっ滞性状態、腎臓の糸球体硬化症および糖尿病性腎症、眼の網膜黄斑変性および糖尿病性網膜症、ならびに神経変性疾患、例えば、脳のアルツハイマー病、または末梢神経系の糖尿病性神経障害を包含する。
【0115】
さらなる実施形態では、本開示の化合物または医薬組成物は、先天性肝線維症を予防および/または処置するのに有用である。
投与量
【0116】
利用される活性成分の有効用量は、利用される特定の化合物、投与モード、処置している状態および処置している状態の重症度に応じて異なり得る。このような用量は、当業者が容易に確定することができる。
【0117】
本開示の化合物が適応される、FXRによって媒介される状態を処置または予防する際に、本開示の化合物が動物の体重1キログラム当たり約0.1ミリグラムから約300ミリグラムの1日投与量で投与された場合に、一般的に満足できる結果が得られる。一部の実施形態では、本開示の化合物は、1日1回用量として、または1日2回から6回の分割用量で、または持続放出形態で与えられる。大部分の大型哺乳動物に対しては、1日当たりの総用量は、約1ミリグラムから約1000ミリグラム、または約1ミリグラムから約50ミリグラムである。70kgのヒト成人の場合、総1日用量は一般的に約7ミリグラムから約350ミリグラムとなる。この投与レジメンは、最適な治療応答が得られるように調整することができる。一部の実施形態では、1日当たりの総用量は、約1ミリグラムから約900ミリグラム、約10ミリグラムから約800ミリグラム、約20ミリグラムから約700ミリグラム、約30ミリグラムから約600ミリグラム、約40ミリグラムから約550ミリグラム、約50ミリグラムから約400ミリグラム、約50ミリグラムから約300ミリグラム、または約50ミリグラムから約200ミリグラムである。
【0118】
本出願の化合物またはその組成物は、上記の任意の適切なモードを使用して、毎日1回、2回、3回、または4回投与し得る。また、化合物による投与または処置は、数日間継続し得る。例えば、一般に、処置は、1サイクルの処置について少なくとも7日間、14日間、または28日間継続する。処置サイクルは、がん化学療法において周知であり、頻繁に、サイクルの間に約1~28日、一般に、約7日または約14日の休止期間と交替させる。処置サイクルはまた、他の実施形態では、継続的であり得る。
【0119】
特定の実施形態では、本明細書において提供する方法は、対象に約1~800mgの本明細書に記載されている化合物の最初の1日用量を投与し、用量を臨床有効性が達成されるまで刻みで増加させることを含む。約5mg、10mg、25mg、50mg、または100mgの刻みを使用して、用量を増加させることができる。投与量は、毎日、1日おき、週2回、または週1回増加させることができる。
併用
【0120】
一部の実施形態では、本明細書において開示されている化合物は、1つもしくは1つより多くのさらなる治療剤と組み合わせて投与して、本明細書において開示されている疾患もしくは状態を処置または予防する。一部の実施形態では、1つもしくは1つより多くのさらなる治療剤は、ACE阻害剤、アセチルCoAカルボキシラーゼ阻害剤、アデノシンA3受容体アゴニスト、アディポネクチン受容体アゴニスト、AKTタンパク質キナーゼ阻害剤、AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)、アミリン受容体アゴニスト、アンジオテンシンII AT-1受容体アンタゴニスト、オートタキシン阻害剤、生物活性脂質、カルシトニンアゴニスト、カスパーゼ阻害剤、カスパーゼ-3刺激物質、カテプシン阻害剤、カベオリン1阻害剤、CCR2ケモカインアンタゴニスト、CCR3ケモカインアンタゴニスト、CCR5ケモカインアンタゴニスト、クロライドチャネル刺激物質、CNR1阻害剤、サイクリンD1阻害剤、チトクロムP450 7A1阻害剤、DGAT1/2阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、エンドシアリンモジュレーター、エオタキシンリガンド阻害剤、細胞外マトリックスタンパク質モジュレーター、ファルネソイドX受容体アゴニスト、脂肪酸シンターゼ阻害剤、FGF1受容体アゴニスト、線維芽細胞成長因子(FGF-15、FGF-19、FGF-21)リガンド、ガレクチン-3阻害剤、グルカゴン受容体アゴニスト、グルカゴン様ペプチド1アゴニスト、G-タンパク質共役胆汁酸受容体1アゴニスト、ヘッジホッグ(Hh)モジュレーター、C型肝炎ウイルスNS3プロテアーゼ阻害剤、肝細胞核因子4アルファモジュレーター(HNF4A)、肝細胞成長因子モジュレーター、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、IL-10アゴニスト、IL-17アンタゴニスト、回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤、インスリン増感剤、インテグリンモジュレーター、インターロイキン(intereukin)-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)阻害剤、Jak2チロシンキナーゼ阻害剤、ケトヘキソキナーゼ阻害剤、Klothoベータ刺激物質、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、リポタンパク質リパーゼ阻害剤、肝臓X受容体、LPL遺伝子刺激物質、リゾホスファチジン酸-1受容体アンタゴニスト、リジルオキシダーゼ相同体2阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤、MEKK-5タンパク質キナーゼ阻害剤、膜銅アミンオキシダーゼ(VAP-1)阻害剤、メチオニンアミノペプチダーゼ-2阻害剤、メチルCpG結合タンパク質2モジュレーター、ミクロRNA-21(miR-21)阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、ミエリン塩基性タンパク質刺激物質、NACHT LRR PYDドメインタンパク質3(NLRP3)阻害剤、NAD依存性デアセチラーゼサーチュイン刺激物質、NADPHオキシダーゼ阻害剤(NOX)、ニコチン酸受容体1アゴニスト、P2Y13プリン受容体刺激物質、PDE3阻害剤、PDE4阻害剤、PDE5阻害剤、PDGF受容体ベータモジュレーター、ホスホリパーゼC阻害剤、PPARアルファアゴニスト、PPARデルタアゴニスト、PPARガンマアゴニスト、PPARガンマモジュレーター、プロテアーゼ活性化受容体-2アンタゴニスト、タンパク質キナーゼモジュレーター、Rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤、ナトリウムグルコース輸送体-2阻害剤、SREBP転写因子阻害剤、STAT-1阻害剤、ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤、サイトカインシグナリング-1刺激物質のサプレッサー、サイトカインシグナリング-3刺激物質のサプレッサー、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)、トランスフォーミング増殖因子β活性化キナーゼ1(TAK1)、甲状腺ホルモン受容体ベータアゴニスト、TLR-4アンタゴニスト、トランスグルタミナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ受容体モジュレーター、GPCRモジュレーター、核内ホルモン受容体モジュレーター、WNTモジュレーター、またはYAP/TAZモジュレーターである。
【0121】
1つもしくは1つより多くのさらなる治療剤の非限定的例は、
ACE阻害剤、例えば、エナラプリル;
アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤、例えば、DRM-01、ゲムカベン(gemcabene)、PF-05175157、およびQLT-091382;
アデノシン受容体アゴニスト、例えば、CF-102、CF-101、CF-502、およびCGS21680;
アディポネクチン受容体アゴニスト、例えば、ADP-355;
アミリン/カルシトニン受容体アゴニスト、例えば、KBP-042;
AMP活性化タンパク質キナーゼ刺激物質、例えば、O-304;
アンジオテンシンII AT-1受容体アンタゴニスト、例えば、イルベサルタン;
オートタキシン阻害剤、例えば、PAT-505、PAT-048、GLPG-1690、X-165、PF-8380、およびAM-063;
生物活性脂質、例えば、DS-102;
カンナビノイド受容体タイプ1(CNR1)阻害剤、例えば、ナマシズマブ(namacizumab)およびGWP-42004;
カスパーゼ阻害剤、例えば、エムリカサン(emricasan);
全カテプシン(Pan cathepsin)B阻害剤、例えば、VBY-376;
全カテプシン阻害剤、例えば、VBY-825;
CCR2/CCR5ケモカインアンタゴニスト、例えば、セニクリビロク(cenicriviroc);
CCR2ケモカインアンタゴニスト、例えば、プロパゲルマニウム;
CCR3ケモカインアンタゴニスト、例えば、ベルチリムマブ(bertilimumab);
クロライドチャネル刺激物質、例えば、コビプロストン;
ジグリセリドアシルトランスフェラーゼ2(DGAT2)阻害剤、例えば、IONIS-DGAT2Rx;
ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、例えば、リナグリプチン;
エオタキシンリガンド阻害剤、例えば、ベルチリムマブ;
細胞外マトリックスタンパク質モジュレーター、例えば、CNX-024;
脂肪酸シンターゼ阻害剤、例えば、TVB-2640;
線維芽細胞成長因子19(rhFGF19)/チトクロムP450(CYP)7A1阻害剤、例えば、NGM-282;
線維芽細胞成長因子21(FGF-21)リガンド、例えば、BMS-986171、BMS-986036;
線維芽細胞成長因子21(FGF-21)/グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アゴニスト、例えば、YH-25723;
ガレクチン-3阻害剤、例えば、GR-MD-02;
グルカゴン様ペプチド1(GLP1R)アゴニスト、例えば、AC-3174、リラグルチド、セマグルチド;
G-タンパク質共役胆汁酸受容体1(TGR5)アゴニスト、例えば、RDX-009、INT-777;
熱ショックタンパク質47(HSP47)阻害剤、例えば、ND-L02-s0201;HMG CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチン;
IL-10アゴニスト、例えば、ペギロデカキン(peg-ilodecakin);
回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤、例えば、A-4250、ボリキシバット(volixibat)カリウムエタノレート水和物(SHP-262)、およびGSK2330672;
インスリン増感剤、例えば、KBP-042、MSDC-0602K、Px-102、RG-125(AZD4076)、およびVVP-100X;
ケトヘキソキナーゼ阻害剤、例えば、PF-06835919;
ベータKlotho(KLB)-FGF1cアゴニスト、例えば、NGM-313;
5-リポキシゲナーゼ阻害剤、例えば、チペルカスト(tipelukast)(MN-001);リポタンパク質リパーゼ阻害剤、例えば、CAT-2003;
LPL遺伝子刺激物質、例えば、アリポゲンチパルボベク(alipogene tiparvovec);
肝臓X受容体(LXR)モジュレーター、例えば、PX-L603、PX-L493、BMS-852927、T-0901317、GW-3965、およびSR-9238;
リゾホスファチジン酸-1受容体アンタゴニスト、例えば、BMT-053011、UD-009、AR-479、ITMN-10534、BMS-986020、およびKI-16198;
リジルオキシダーゼ相同体2阻害剤、例えば、シムツズマブ(simtuzumab);
セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ/血管接着タンパク質-1(SSAO/VAP-1)阻害剤、例えば、PXS-4728A;
メチオニンアミノペプチダーゼ-2阻害剤、例えば、ZGN-839;
メチルCpG結合タンパク質2モジュレーター、例えば、メルカプタミン;
ミトコンドリア脱共役剤、例えば、2,4-ジニトロフェノール;
ミエリン塩基性タンパク質刺激物質、例えば、オレソキシム;
NADPHオキシダーゼ1/4阻害剤、例えば、GKT-831;
ニコチン酸受容体1アゴニスト、例えば、ARI-3037MO;
ニタゾキシニド;
NACHT LRR PYDドメインタンパク質3(NLRP3)阻害剤、例えば、KDDF-201406-03、およびNBC-6;
核内受容体モジュレーター、例えば、DUR-928;
P2Y13プリン受容体刺激物質、例えば、CER-209;
PDE3/4阻害剤、例えば、チペルカスト(MN-001);
PDE5阻害剤、例えば、シルデナフィル;
PDGF受容体ベータモジュレーター、例えば、BOT-191、BOT-509;
PPARアゴニスト、例えば、エラフィブラノール(elafibranor)(GFT-505)
、MBX-8025、重水素化ピオグリタゾンR-エナンチオマー、ピオグリタゾン、DRX-065、サログリタザル(saroglitazar)、およびIVA-337;
プロテアーゼ活性化受容体-2アンタゴニスト、例えば、PZ-235;
タンパク質キナーゼモジュレーター、例えば、CNX-014;
Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)阻害剤、例えば、KD-025;
ナトリウムグルコース輸送体-2(SGLT2)阻害剤、例えば、イプラグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、エルツグリフロジン(ertugliflozin)、ダパグリフロジ
ン、およびソタグリフロジン(sotagliflozin);
SREBP転写因子阻害剤、例えば、CAT-2003およびMDV-4463;
ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1阻害剤、例えば、アラムコール(aramchol);
甲状腺ホルモン受容体(THR)ベータアゴニスト、例えば、MGL-3196、MGL-3745、VK-2809;
TLR-4アンタゴニスト、例えば、JKB-121;
チロシンキナーゼ受容体モジュレーター、例えば、CNX-025;
GPCRモジュレーター、例えば、CNX-023;ならびに
核内ホルモン受容体モジュレーター、例えば、Px-102
を含む。
【0122】
ある特定の具体的な実施形態では、1つもしくは1つより多くのさらなる治療剤は、A-4250、AC-3174、アセチルサリチル酸、AK-20、AKN-083、アリポゲンチパルボベク、アラムコール、ARI-3037MO、ASP-8232、アトロバスタチン、ベルチリムマブ、無水ベタイン、BAR-704、BI-1467335、BMS-986036、BMS-986171、BMT-053011、BOT-191、BTT-1023、BWD-100、BWL-200、CAT-2003、セニクリビロク、CER-209、CF-102、CGS21680、CNX-014、CNX-023、CNX-024、CNX-025、コビプロストン、コレセベラム、ダパグリフロジン、16-デヒドロ-プレグネノロン、重水素化ピオグリタゾンR-エナンチオマー、2,4-ジニトロフェノール、DRX-065、DS-102、DUR-928、EDP-305、エラフィブラノール(GFT-505)、エムリカサン、エナラプリル、EP-024297、エルツグリフロジン、エボグリプチン(evogliptin)、EYP-001、F-351、フェキサラミン、GKT-831、GNF-5120、GR-MD-02、ヒドロクロロチアジド、イコサペントエチルエステル、IMM-124-E、INT-767、IONIS-DGAT2Rx、INV-33、イプラグリフロジン、イルベサルタ(Irbesarta)、プロパゲルマニウム、IVA-337、JKB-121、KB-GE-001、KBP-042、KD-025、M790、M780、M450、メトホルミン、シルデナフィル、LC-280126、リナグリプチン、リラグルチド、LJN-452、LMB-763、MBX-8025、MDV-4463、メルカプタミン、MET-409、MGL-3196、MGL-3745、MSDC-0602K、ナマシズマブ、NC-101、ND-L02-s0201、NFX-21、NGM-282、NGM-313、NGM-386、NGM-395、NTX-023-1、ノルウルソデオキシコール酸、O-304、オベチコール酸、25HC3S、オレソキシム、PAT-505、PAT-048、ペギロデカキン、ピオグリタゾン、ピルフェニドン、PRI-724、PX20606、Px-102、PX-L603、PX-L493、PXS-4728A、PZ-235、RDX-009、RDX-023、エタボン酸レモグリフロジン、別用途トリカプリリン(repurposed tricaprilin)、RG-125(AZD4076)、サログリタザル、セマグルチド、シムツズマブ、SIPI-7623、ソリスロマイシン、ソタグリフロジン、スタチン(アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、TCM-606F、TERN-101、TEV-45478、チペルカスト(MN-001)、TLY-012、トロピフェキサール(tropifexor)、TRX-318、TVB-2640、UD-009、ウルソデオキシコール酸、VBY-376、VBY-825、VK-2809、ビスモデギブ、ボリキシバットカリウムエタノレート水和物(SHP-626)、VVP-100X、WAV-301、WNT-974、およびZGN-839から選択される。
【0123】
一部の実施形態では、方法および組成物は、治療有効量のアポトーシスシグナル調節キナーゼ1(ASK1)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含み、FXRアゴニストは式(I):
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0124】
本明細書に開示されている方法および医薬組成物のある特定の実施形態では、ASK1阻害剤は、式(II):
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0125】
ASK1阻害剤、例えば、式(II)の化合物は、当業者に公知の方法、例えば、米国特許出願公開第2007/0276050号、第2011/0009410号、および第2013/0197037号に記載されている方法を使用して、合成および特徴付けすることができる。
【0126】
一部の実施形態では、方法および組成物は、治療有効量のアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤および治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを含み、FXRアゴニストは、式(I):
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0127】
本明細書に開示されている方法および医薬組成物のある特定の実施形態では、ACC阻害剤は、式(III):
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0128】
ACC阻害剤、例えば、式(III)の化合物は、当業者に公知の方法、例えば、PCT国際出願公開WO2013/071169に記載されている方法を使用して合成および特徴付けることができる。
【0129】
一部の実施形態では、方法および組成物は、治療有効量の甲状腺ホルモン受容体(THR)βアゴニストを、治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて含み、FXRアゴニストは、式(I):
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0130】
本明細書に開示されている方法および医薬組成物のある特定の実施形態では、THRβアゴニストは、式(IV):
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物、もしくは互変異性体である。
【0131】
THRβアゴニスト、例えば、式(IV)の化合物は、当業者に公知の方法を使用して、合成および特徴付けることができる。
【実施例】
【0132】
下記の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれる。下記の実施例において開示されている技術は、本開示の実施において良好に機能する技術を表し、したがって、その実施のための特定のモードを構成すると考えることができることを当業者は認識すべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、これらの実施例が例示的なものであり、網羅的なものでないことを認識すべきである。開示されている特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなくそれでもなお類似または同様の結果を得る。
【0133】
本明細書に開示される化合物は、以下のスキームおよび実施例の手順に従って、適当な材料を使用して調製することができ、以下の具体例によりさらに例示する。さらに、当技術分野の通常の知識と併せて、本明細書に記載されている手順を利用することによって、本明細書で特許請求されている追加の本開示の化合物を容易に調製することができる。実施例は、本開示の化合物の調製についての詳細をさらに例示している。以下の調製手順の条件およびプロセスの公知の変化形を使用して、これらの化合物を調製することができることは、当業者であれば容易に理解している。本開示において記載されている実施形態である化合物を合成するために、合成される化合物の構造の検査によって、それぞれの置換基のアイデンティティーを提供する。一部の場合には、本明細書における実施例を前提として、最終生成物のアイデンティティーは、検査の単純なプロセスによって必要な出発物質のアイデンティティーを明白にし得る。化合物は、これらの薬学的に許容される塩、例えば、上に記載されているものなどの形態で単離され得る。本明細書に記載されている化合物は典型的には、室温および室内圧力で安定的および単離可能である。
【0134】
本明細書に開示される化合物の調製の例証を以下に示す。他に指摘されていない限り、変数は、前述のものと同じ意味を有する。以下に提示される実施例は、本開示の特定の実施形態を例示することを意図する。以下に記載されるような合成において利用されている適切な出発物質、構成ブロックおよび試薬は、例えば、Sigma-AldrichまたはAcros Organicsから市販されているか、または文献、例えば「March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure」第5版;John Wiley & Sons またはT. Eicher、S. Hauptmann「The Chemistry of Heterocycles; Structures, Reactions, Synthesis and Application」第2版、Wiley-VCH 2003年;Fieserら、「Fiesers' Reagents for organic Synthesis」、John Wiley & Sons、2000年に記載されている手順により慣習的に調製することができる。
方法
粉末X線回折(XRPD)
【0135】
以下の実験設定下での周囲条件で、PANanalytical XPERT-PRO回折計でXRPDパターンを収集した:45KV、40mA、Kα1=1.5406Å、スキャン範囲2~40°2θ、ステップサイズ0.0084または0.0167°2θ、測定時間:5分。
示差走査熱量測定(DSC)
【0136】
50ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000システムでDSCサーモグラムを収集した。認定インジウムを使用して、エネルギーおよび温度に対する較正を行った。小さい穴を開けたアルミニウム皿の中の通常1~5mgの各試料を10℃/分で約25℃から約300℃へと加熱した。50mL/分における乾燥窒素のパージを、測定中ずっと試料上に維持した。融解吸熱反応の開始を融点として報告した。
熱重量分析(TGA)
【0137】
25ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q5000システムでTGAサーモグラムを収集した。予め空の重量を量ったアルミニウム皿に約1~5mgの各試料を充填し、10℃/分で約25℃から約350℃へと加熱した。25mL/分での窒素パージを、測定中ずっと試料上に維持した。
一般的合成スキーム
【0138】
YがNである式(Ia)の化合物は、下記の一般的合成スキームによって合成することができる。
【化11】
【化12】
【0139】
上記の一般的な合成スキームにおいて、Aは、それぞれがハロゲン、C1~4-アルコキシ、ハロ-C1~4-アルコキシ、C1~4-アルキル、およびハロ-C1~4-アルキルから独立して選択される1つまたは2つの基で必要に応じて置換されているピリジレンまたはフェニレンであり、Qは、それぞれがハロゲン、メチル、C1~4-アルコキシ、ハロ-C1~4-アルコキシ、-CH2F、-CHF2、および-CF3から独立して選択される1つまたは2つの置換基で必要に応じて置換されているフェニレンまたはピリジレンであり、Xは脱離基であり、Yは、有機金属種、例えば、グリニャール試薬の形成のために使用することができるハロゲンなどの基であり、ZはR1で置換されているイソオキサゾールまたはC1~4-アルキルもしくはC3~6-シクロアルキルで置換されているピラゾールであり、R2およびR3は、独立して、水素、ハロゲン、メトキシ、-CF3、-CHF2、-CH2F、-OCH2F、-OCHF2、-OCF3、およびメチルから選択され、R4は-CO2R5または-C(O)NR5R6であり、R5は水素、C1~6-アルキル、またはハロ-C1~6-アルキルであり、R6は水素またはC1~6-アルキルであり、前記C1~6-アルキルは、ハロゲン、-SO3H、および-CO2Hから独立して選択される1~6個の置換基で必要に応じて置換されている。PGは保護基であり、残りの変数は本明細書に提供されている通りである。式(C)の化合物は、塩基の存在下で、式(A)の化合物を式(B)の化合物と反応させることにより調製することができる。式(D)の化合物は、有機金属種、例えば、グリニャール試薬の形成、その後の適切に保護された3-ケトアゼチジンとの縮合を介して式(C)の化合物から形成される。式(E)の化合物は、適当な脱保護条件下で、式(D)の化合物から形成される。式(E)の化合物は、塩基の存在下で式(F)の化合物と合わせて、式(Ia)の化合物を得ることができる。
【0140】
代わりに、式(D)の化合物は、塩基の存在下で式(A)の化合物を、式(G)の化合物と反応させることにより形成することができる。
【0141】
構造(A)および(B)の適当な化合物は、以下の実施例に記載されている方法に従いまたは当技術分野で公知の方法により調製することができる。例えば、Xはハロゲン(例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ、および/またはヨード)であることができ、PGはtert-ブチルカルボニル保護基(BOC)であることができる。
(実施例1)
式(I)の調製
ステップ1:2,6-ジクロロ-4-フルオロベンズアルデヒドオキシムの調製
【化13】
【0142】
エタノール/水(5:1、170mL)中の2,6-ジクロロ-4-フルオロベンズアルデヒド(20g、100mmol)、ヒドロキシルアミン塩酸塩(14g、210mmol)、および炭酸ナトリウム(27g、260mmol)の懸濁液を約10分間超音波処理し、次いで室温にて終夜撹拌したまま置いた。
【0143】
混合物を水および酢酸エチルで希釈した。水相を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
7H
5Cl
2FNOの計算値:207.97;実測値:207.99。
ステップ2:2,6-ジクロロ-4-フルオロ-N-ヒドロキシベンズイミドイルクロリドの調製
【化14】
【0144】
N,N-ジメチルホルムアミド(200mL)中の2,6-ジクロロ-4-フルオロベンズアルデヒドオキシム(21g、99mmol)の溶液を単一部分のN-クロロスクシンイミド(1.5g、11mmol)で処理した。塩化水素蒸気(およそ40mL、濃塩酸ビンのヘッドスペースから採取)を混合物にバブリングした。もう1つの部分のN-クロロスクシンイミド(1.5g、90mmol)の添加後、もう2つの容量の塩化水素気体(40mL×2)を導入した。さらなるN-クロロスクシンイミド(12g、11mmol)を少量ずつ加えた。25℃に達する発熱を観察したら、混合物を室温の水浴内で冷却した。温度を約23℃に低下させ、N-クロロスクシンイミドの残りを少しずつ加えた。添加の終わりに、LC/MS分析はオキシム出発材料が残っていることを明らかにし、よって最後の部分のN-クロロスクシンイミド(1.2g、9.0mmol)を加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、ワークアップなしで、その後の合成ステップに前進した。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
7H
4Cl
3FNOの計算値:241.93;実測値:242.20。
ステップ3:エチル5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4カルボキシレートの調製
【化15】
【0145】
2-メチルテトラヒドロフラン中のエチルシクロプロピル-3-オキソプロパノエート(19g、120mmol)の溶液を、シリンジを介してトリエチルアミン(55mL、400mmol)で室温にて処理した。30分間の撹拌後、2,6-ジクロロ-4-フルオロ-N-ヒドロキシベンズイミドイルクロリド(24g、99mmol)を含有する反応混合物を、シリンジを介して滴下添加した。添加の終わりに、混合物を約60℃で終夜加熱した。反応混合物を減圧下で濃縮した。残留物を10%塩酸溶液および酢酸エチルで希釈した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機抽出物を飽和塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
15H
13Cl
2FNO
3の計算値:344.02;実測値:344.03。
ステップ4:(5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メタノールの調製
【化16】
【0146】
(エチル5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-カルボキシレート(15g、44mmol)の溶液を、2-メチルテトラヒドロフラン(220mL)に溶解し、磁気撹拌しながら約-12~-10℃の湿潤氷/アセトン浴内で冷却した。水素化リチウムアルミニウム溶液(テトラヒドロフラン中2.0M、53mmol)を滴下添加した。浴内での30分間の撹拌後、氷水浴内で冷却した混合物を水(2.0mL、非常に慎重に滴下)、15%水酸化ナトリウム水溶液(2.0mL)、および水(6.0mL)で連続的にクエンチした。懸濁液を室温にて15分間撹拌してから、無水硫酸マグネシウムを加え、これに続いてもう1時間撹拌した。スラリーを濾過した。フィルターケーキを酢酸エチルで洗浄し、濾液を減圧下で濃縮乾燥させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
13H
11Cl
2FNO
2の計算値:302.01;実測値:302.51。
ステップ5:4-(クロロメチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾールの調製
【化17】
【0147】
塩化チオニル(6.6mL、90mmol)を、ジクロロメタン(150mL)中の(5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メタノール(9.1g、30mmol)の混合物に室温にて加えた。次いで、混合物を約45℃にて45分間加熱した。混合物を減圧下で濃縮した。残留物をジエチルエーテルに溶解し、再濃縮した。これをもう2回繰り返して、所望の中間体を得、これをさらに精製することなく繰り越した。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
13H
10Cl
3FNOの計算値:319.97;実測値:320.50。
ステップ6:4-((4-ブロモ-3-クロロフェノキシ)メチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾールの調製
【化18】
【0148】
N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)中の粗4-(クロロメチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール(4.2g、13mmol)の溶液を4-ブロモ-3-クロロフェノール(2.7g、13mmol)、ヨウ化ナトリウム(3.3g、22mmol)、および無水炭酸カリウム(3.6g、26mmol)で処理した。混合物を約60℃で25分間加熱した。冷却後、混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
19H
13BrCl
3FNO
2の計算値:489.91;実測値:490.10。
ステップ7:tert-ブチル3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレートの調製
【化19】
【0149】
アルゴンの雰囲気下で、テトラヒドロフラン(27mL)中の4-((4-ブロモ-3-クロロフェノキシ)メチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール(5.1g、10mmol)の溶液を、シリンジを介して塩化イソプロピルマグネシウム/塩化リチウム溶液(1.3M、12mL、15mmol)で処理した。得られた混合物を1時間撹拌してから、さらなる容量の塩化イソプロピルマグネシウム/塩化リチウム溶液(1.3M、4.0mL、5.2mmol)を導入した。45分間の撹拌の経過後、もう1つの部分の塩化イソプロピルマグネシウム/塩化リチウム溶液(1.3M、1.0mL、1.3mmol)を加えた。1時間の撹拌後、tert-ブチル3-オキソアゼチジン-1-カルボキシレート(3.8g、22mmol)を一度にグリニャール混合物に加え、これを湿潤氷/アセトン浴内で冷却した。30分間の撹拌後、さらなる部分のtert-ブチル3-オキソアゼチジン-1-カルボキシレート(0.80g、4.7mmol)を加えた。混合物を10%クエン酸水溶液(50mL)でクエンチした。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で1回ずつ洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
27H
27Cl
3FN
2O
5の計算値:584.86;実測値:483.19。
ステップ8:3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アゼチジン-3-オールトシレート塩の調製
【化20】
【0150】
p-トルエンスルホン酸一水和物(3.5g、18mmol)をtert-ブチル3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート(5.3g、9.1mmol)およびイソプロパノール(21mL)の混合物に加えた。混合物を約50℃で終夜加熱し、続いて磁気撹拌しながら、湿潤氷/アセトン浴内で冷却した。得られた懸濁液をほぼ均質に戻るように約50℃で加熱した。混合物を冷却した後、ヘキサンを加え、得られた懸濁液を超音波処理し、次いで約50℃に温めた。固体を吸引濾過で収集し、ヘキサンで洗浄し、約75℃の真空オーブン内で乾燥させて、所望の中間体のトシレート塩を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
22H
19Cl
3FN
2O
3の計算値:483.04;実測値:483.19。
ステップ9:メチル6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチネートの調製
【化21】
【0151】
N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)中の3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アゼチジン-3-オールトシレート(0.47g、0.71mmol)、メチル6-クロロニコチネート(0.15g、0.90mmol)、および炭酸カリウム(0.49g、3.6mmol)の混合物を80℃で終夜加熱した。混合物を酢酸エチルと水の間で分配した。水相を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた抽出物を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で連続的に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、所望の中間体を得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
29H
24Cl
3FN
3O
5の計算値:618.07;実測値:618.41。
ステップ10:6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸の調製
【化22】
【0152】
テトラヒドロフラン/水(1:1、10mL)中のメチル6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)イソニコチネート(0.32g、0.51mmol)および水酸化リチウム一水和物(43mg、1.0mmol)の混合物を室温で終夜撹拌した。
【0153】
混合物を減圧下で濃縮して、揮発物の大部分を除去した。得られた水性混合物を水でさらに希釈し、酢酸で処理し、これに続いて10%塩酸水溶液で処理した。得られた沈殿物を吸引濾過で収集し、水で洗浄し、約50℃の真空オーブン内で乾燥させて、所望の材料を遊離酸として得た。LCMS-ESI
+(m/z):[M+H]
+ C
28H
22Cl
3FN
3O
5の計算値:604.05;実測値:604.41。
ステップ11:6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸、トリス塩の調製
【化23】
【0154】
6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸(0.29g、0.48mmol)をMeOH/水(95:5、2mL)中に懸濁液として取り入れ、トロメタミン(58mg、0.48mmol)で処理し、55℃で加熱し、濃縮して、所望の酸をトロメタミン塩として得た。1H NMR (400 MHz, Methanol-d4) δ 8.65 (dd, J = 2.2, 0.8 Hz, 1H), 8.05 (dd, J = 8.7, 2.2 Hz, 1H), 7.38 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.35 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 6.78 (dd, J = 8.6, 2.6 Hz, 1H), 6.42 (dd, J = 8.8, 0.8 Hz, 1H), 4.92 (s, 2H), 4.57 (dd, J = 9.3, 1.1 Hz, 2H), 4.29 (dd, J = 9.2, 1.1 Hz, 2H), 3.63 (s, 7H), 2.32 (tt, J = 8.0, 5.5 Hz, 1H), 1.25 - 1.11 (m, 4H).
(実施例2)
比較例1の合成
6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチン酸
【化24】
中間体Aの合成:
【0155】
THF(500mL)中の(4-ブロモ-3-クロロフェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(60g、187mmol)の溶液に、n-BuLi(2.5M、75mL)を約-78℃にてN2下で滴下添加した。反応物を約-78℃にて1時間撹拌した。次に、THF(500mL)中のtert-ブチル3-オキソアゼチジン-1-カルボキシレート(27g、155mmol)の溶液を、混合物に-78℃にて滴下添加した。次いで、反応物を約20℃にて3時間撹拌した。反応混合物をH2O(1L)中に注ぎ、EtOAc(2L)で3回抽出した。合わせた有機層を水(1L)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物を10:1の石油エーテル:EtOAcで溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、3-(4-((tertブチルジメチルシリル)オキシ)-2-クロロフェニル)アゼチジン-3-オール(中間体A)を得た。
ステップ1:tert-ブチル3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート
【0156】
THF(50.0mL)中のtert-ブチル3-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-クロロフェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート(中間体A、1.27g、3.07mmol)の溶液に、約-10℃にて、THF中の1MのTBAF(3.68mL、3.68mmol)を滴下添加した。反応物を2時間撹拌し、濃縮し、tert-ブチル3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレートを得て、これをさらに精製することなく使用した。
ステップ2:4-(クロロメチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール
【0157】
DCM(28.0mL)中の(5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メタノール;45mg、2.80mmol)の溶液を、約0℃に冷却した。塩化チオニル(1.02mL、14.0mmol)を加え、溶液を約45℃にて1時間加熱した。反応物を濃縮乾固させ、次のステップにおいて精製せずに使用した。
ステップ3:tert-ブチル3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート
【0158】
DMF(28.0mL)中のtert-ブチル3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート(922mg、3.07mmol)の溶液を、粗4-(クロロメチル)-5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾールに加え、それに続いて、炭酸カリウム(773mg、5.60mmol)を加えた。混合物を約60℃にて8時間加熱した。反応物を濃縮し、水で希釈し、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機層を水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(DCM/Et2O/MeOH)によって精製し、tert-ブチル3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレートを得た。LCMS-ESI+(m/z):[(M+H)-BOC]+
計算値483.04;実測値483.04。
ステップ4:3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アゼチジン-3-オール
【0159】
DCM(130mL)中のtert-ブチル3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-カルボキシレート(1.52g、2.60mmol)の溶液に、1,4-ジオキサン中の4NのHCl(26.0mL、104mmol)を加えた。溶液を室温にて2.5時間撹拌し、濃縮乾固させ、3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アゼチジン-3-オールを塩酸塩として得て、これをさらに精製することなく使用した。LCMS-ESI+(m/z):[M+H]+ 計算値483.04;実測値483.03。
ステップ5:メチル6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチネート
【0160】
DMF(30.0mL)中のメチル6-クロロ-5-フルオロピリジン(235mg、1.24mmol)、塩酸塩として3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)アゼチジン-3-オール(495mg、0.952mmol)および炭酸カリウム(1.05g、7.61mmol)の混合物を、約60℃にて1時間加熱した。反応物を濃縮し、水で希釈し、EtOAc(3×)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(DCM/Et2O/MeOH)によって精製し、メチル6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチネートを得た。LCMS-ESI+(m/z):[M+H]+ 計算値636.07;実測値635.96。
ステップ6:6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチン酸(比較例1)
【0161】
THF/水(1:1、20.0mL)中のメチル6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチネート(364mg、0.571mmol)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(41.3mg、0.984mmol)を加えた。溶液を18時間撹拌し、濃縮し、THFを除去し、水(10.0mL)で希釈した。1NのHClを使用してpHを3に調整した。固体を濾過し、水で洗浄し、ACN/水に溶解し、凍結乾燥し、6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)-5-フルオロニコチン酸(比較例1)を得た。LCMS-ESI+(m/z):[M+H]+ 計算値622.05;実測値622.12。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.84 (bs, 1H), 8.44 (t, J = 1.7 Hz, 1H), 7.79 - 7.63 (m, 3H), 7.39 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.77 (dd, J = 8.6, 2.6 Hz, 1H), 6.28 (s, 1H), 4.93 (s, 2H), 4.70 (d, J = 9.8 Hz, 2H), 4.34 (d, J = 9.5 Hz, 2H), 2.50-2.43 (m, 1H), 1.22 - 1.08 (m, 4H).
(実施例3)
FRET活性アッセイ
【0162】
核内受容体FXRへのリガンド結合を定量化するためのリガンド媒介性コファクターペプチド相互作用の決定を下記の通り実施した。
【0163】
ヒトFXRアルファリガンド結合ドメイン(LBD)の調製:ヒトFXRアルファLBDを、N末端GSTタグ付融合タンパク質として大腸菌株BL21(DE3)に発現させた。FXRリガンド結合ドメインをコードするDNAを、ベクターpDEST15(Invitrogen)にクローニングした。発現は、IPTG誘導性T7プロモーターの制御下にあった。リガンド結合ドメインのアミノ酸境界は、データベースエントリーNM_005123(RefSeq)のアミノ酸187~472であった。FXR-LBDの発現および精製:形質転換した大腸菌株の終夜の前培養物をLB-アンピシリン培地中で1:20に希釈し、30℃で増殖させてOD600=0.4~0.6の光学密度にした。次いで、遺伝子発現を0.5mM IPTGの添加により誘発させた。30℃、180rpmでさらに6時間、細胞をインキュベートした。細胞を遠心分離(7000×g、7分、室温)により収集した。元の細胞培養物1リットル当たり10mLの溶解緩衝液(50mMグルコース、50mMトリスpH7.9、1mM EDTAおよび4mg/mLのリゾチーム)に細胞を再懸濁させ、氷上に30分間にわたり放置した。次いで、細胞を超音波処理にかけ、細胞デブリを、遠心分離(22000×g、30分、4℃)を介して除去した。上清10mL当たり0.5mLの予め洗浄したグルタチオン4Bセファローススラリー(Qiagen)を添加し、懸濁液を4℃で1時間ゆっくりと回転させた。グルタチオン4Bセファロースビーズを遠心分離(2000×g、15秒、4℃)によってペレット化し、洗浄緩衝液(25mMトリス、50mM KCl、4mM MgCl2および1M NaCl)で2回洗浄した。ペレットを、元の培養物1リットル当たり3mLの溶出緩衝液中に再懸濁させた(溶出緩衝液:20mMトリス、60mM KCl、5mM MgCl2および80mMグルタチオンを粉末として使用の直前に添加した)。懸濁液を4℃で15分間にわたり回転させたままでおき、ビーズをペレット化し、1回目に対して半分の容量の溶出緩衝液で再度溶出した。溶出液をプールし、60mM KCl、5mM MgCl2ならびに1mMジチオトレイトールおよび10%(v/v)グリセロールを含有する20mM Hepes緩衝液(pH7.5)中で終夜透析した。タンパク質をSDS-Pageによって分析した。
【0164】
本方法は、精製された細菌発現FXRリガンド結合ドメイン(LBD)と、SRC-1の残基676~700(LCD2、676-700)に基づく合成ビオチン化ペプチドとの間の相互作用をモジュレートする推定リガンド能力を測定する。使用したペプチドの配列は、B-CPSSHSSLTERHKILHRLLQEGSPS-COOH(配列番号1)であり、ここでN-末端はビオチン化されていた(B)。FXRのリガンド結合ドメイン(LBD)を、ベクターpDEST15を使用して、BL-21細胞内でGSTとの融合タンパク質として発現させた。細胞を超音波処理によって溶解し、融合タンパク質を、製造業者の指示に従いグルタチオンセファロース(Pharmacia)で精製した。FXR-ペプチド相互作用に対するこれらの影響に関する化合物のスクリーニングに、Perkin Elmer LANCE技術を適用した。この方法は、供与体から、目的の結合パートナーに結合している受容体蛍光体への結合依存エネルギー移動に依存する。取扱いを簡略化し、化合物の蛍光からのバックグランドを減少させるために、LANCE技術は、一般的蛍光体ラベルを利用し、時間分解検出アッセイは、20~60ng/ウェルのGSTに縮合した組換え発現させたFXR-LBD、200~600nMの、SRC1アミノ酸676~700を示すN末端ビオチン化ペプチド、200ng/ウェルのストレプトアビジン-xlAPCコンジュゲート(Prozyme)および6~10ng/ウェルのEu W1024-抗GST(Perkin Elmer)を含有するトリスベースの緩衝液(20mMトリス-HCl pH7.5;60mM KCl、5mM MgCl2;35ng/μLのBSA)中、384ウェルプレート内で、最終容量25μLで行った。試料のDMSO含有量を1%で保持した。アッセイミックスの生成および潜在的FXR調節リガンドの希釈後、アッセイを、FIAプレートブラック384ウェル(Greiner)内、暗所で、室温で1時間かけて平衡化させた。LANCEシグナルをPerkin Elmer VICTOR2VTMマルチラベルカウンターで検出した。結果を、665および615nmにおける放射光の間での比をプロットすることによって視覚化した。FXR-ペプチド形成の基礎レベルを、リガンドを添加しない状態で観察した。複合体形成を促進するリガンドは、時間分解蛍光シグナルの濃度依存性の増加を誘発する。モノマーFXRと、FXR-ペプチド複合体の両方に等しく良好に結合する化合物は、シグナルに変更を起こさないと予想されるのに対して、モノマー受容体に選択的に結合するリガンドは、観察されるシグナルの濃度依存性の低減を誘発すると予想される。
【0165】
化合物のアゴニスト能を評価するため、実施例の化合物に対してEC50値を決定した。下記の表1に列挙する(FRET EC50)。表1に示されている通り、実施例1の化合物を、化学構造が以下の表に示されている比較例1および比較例2(米国特許出願公開第2017/0355685号の実施例3)と共に評価した。
実施例4:哺乳動物のワンハイブリッド(M1H)アッセイ
【0166】
FXRのリガンド結合媒介性活性化を定量化するために、リガンド媒介性Gal4プロモーターで駆動されたトランス活性化の決定を下記の通り実施した。
【0167】
FXRリガンド結合ドメインをコードするcDNA部分を、ベクターpCMV-BD(Stratagene)に、酵母GAL4 DNA結合ドメインへの融合物として、CMVプロモーターの制御下でクローニングした。リガンド結合ドメインのアミノ酸境界は、データベースエントリーNM_005123(RefSeq)のアミノ酸187~472であった。酵母GAL4結合部位の5つのタンデム反復を有する合成プロモーターを含有する、プラスミドpFR-Luc(Stratagene)をリポータープラスミドとして使用して、レポーター遺伝子としてのPhotinus pyralis(キタアメリカホタル)ルシフェラーゼ遺伝子の発現を推進した。実験精度を改善するために、プラスミドpRL-CMV(Promega)をコトランスフェクトした。pRL-CMVは、Renilla reniformisルシフェラーゼの発現を制御する構成CMVプロモーターを含有している。すべてのGal4レポーター遺伝子アッセイは、10%のウシ胎児血清、0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、および1mL当たり100単位のペニシリン/ストレプトアビジンを補充したL-グルタミンおよびEarle’s BSSを有するMEM中、約37℃、5%CO2で増殖させたHEK293細胞(DSMZ、Braunschweig、Germanyから入手)で行った。培地および補充物は、Invitrogenから入手した。アッセイのために、96ウェルプレート中の1ウェル当たり5×105の細胞を、フェノールレッドおよびL-グルタミンを含まず、10%の木炭/デキストラン処理したFBS(HyClone、South Logan、Utah)、0.1mM非必須アミノ酸、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、および1mL当たり100単位のペニシリン/ストレプトアビジンを補充したEarle’s BSSを含む1ウェル当たり100μLのMEM中にプレーティングし、約37℃、5%CO2でインキュベートした。翌日、細胞は、>90%コンフルエンスであった。培地を除去し、上に記載されている3種のプラスミドを含む、1ウェル当たり20μLのOptiMEM-ポリエチレン-イミンベースの形質移入試薬(OptiMEM、Invitrogen;ポリエチレンイミン、Aldrich Cat No.40,827-7)を使用して細胞を一時的に形質移入した。細胞をプレーティングするために使用したのと同じ組成を有するMEMを、形質移入混合物の添加の2~4時間後に添加した。次いで、MEM中で予備希釈した化合物ストックを添加した(最終ビヒクル濃度は、0.1%を上回らない)。細胞をさらに16時間インキュベートし、その後、ホタルおよびレニラルシフェラーゼ活性を、同じ細胞抽出物中で、Dual-Light-ルシフェラーゼ-アッセイ系を使用して順次測定した(Dyerら、Anal. Biochem.、2000年、282巻、158~161頁)。すべての実験は3回重複して行った。
【0168】
実施例化合物のFXRアゴニスト効力を評価するために、有効性を、M1Hアッセイで決定した。下記の表1に列挙する(M1H EC
50)。
【表1-1】
(実施例5)
カニクイザルにおけるin vivoでの薬力学の評価
【0169】
実施例1の式(I)、比較例1、および比較例2のin vivoでの薬力学を以下の通り決定した。
試験物品および製剤
経口懸濁液の用量
【0170】
式(I)(実施例1)の経口溶液の用量を、pH2で、1%ラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurel sulfate)(SLS)、1%エタノール、および98%水の水性懸濁液中1mg/mLの濃度で製剤化した。比較例1、および比較例2の経口懸濁液の用量を、1%ヒドロキシプロピル(hydyroxypropyl)メチルセルロース(HPMC)、0.5%Tween 80、および98.5%水中2.5mg/mLの濃度で製剤化した。
静脈内用量
【0171】
式(I)(実施例1)、比較例1、および比較例2の化合物の静脈内用量を、1.1当量のNaOHを有する5%DMSO、15%NMP、60%PEG 300および水を含むビヒクル中0.5mg/mLの濃度で製剤化した。
動物
【0172】
それぞれの投薬群は、3~6匹の雄カニクイザルからなった。投薬時に、動物は2.4~4.4kgの体重であった。
投薬
【0173】
経口用の試験物品は、5mg/kgの用量に対して、経口胃管栄養法を介して2mL/kgを、または経鼻胃管挿管を介して5mL/kgをサルに投与した。静脈投与用の試験物品は、1mg/kgの用量に対して、留置カテーテルを介した伏在静脈または橈側皮静脈へのおよそ30分間の点滴として、およそ2mL/kgを投与した。
試料収集
【0174】
投薬した後、各動物から静脈血試料を特定の時点において採取した。血液試料を収集し、カリウム(K2)EDTA抗凝固剤を含むチューブ中に移した。
血漿中のFGF19濃度の決定
【0175】
BioVendorからのFGF19 ELISAアッセイキット(製品番号RD191107200R)を使用して、収集した血液試料においてFGF19濃度を決定した。
血漿中の薬物濃度の決定
【0176】
API 5000 LC/MS/MSシステムでの分析用に、各血漿試料50μLの一定分量を、内部標準を含有する200μLのアセトニトリル(ACN)で処理した。上記の溶液を、5000RPMで10分間遠心分離し、50μLの上清を清浄な96ウェルプレートに移し、それに続いて200μLの水を加えた。10μLの一定分量を、API 5000 LC/MS/MSシステムへと注入した。
【0177】
Applied Biosystems API 5500 LC/MS/MSシステムでの分析用に、各血漿試料20μLの一定分量を、内部標準を含有する120μLのアセトニトリル(ACN)で処理した。上記溶液を遠心分離し、100μLの上清をきれいな96ウェルプレートに移し、これに続いて100μLの水を加えた。7~10μLの一定分量をAPI 5500 LC/MS/MSシステムに注入した。
HPLC条件
【0178】
Agilent TechnologiesからのZorbax Extend C18 HPLCカラム(50×2.1mm、3.5μm)(パーツ番号735700-902)(比較例1、および比較例2)またはWaters BEH C18カラム(50×2.1mm、1.7μm)(実施例1)を使用した。Zorbax Extend C18 HPLCカラムに対して、移動相Aは、ギ酸でpH3.0に調整した、10mMギ酸アンモニウムの1%アセトニトリル水溶液を含有し、移動相Bは、ギ酸でpH4.6に調整した、アセトニトリル中10%の10mMギ酸アンモニウムを含有した。Waters BEH C18カラムに対して、移動相Aは、95%水、5%アセトニトリル、および0.1%ギ酸を含有し、移動相Bは、50%メタノール、50%アセトニトリル、および0.1%ギ酸を含有した。2個の同一のAgilent 1200シリーズバイナリーポンプ(P/N G1312A Bin Pump)を備えたThermo Ariaマルチプレクサーを溶出および分離に使用した。使用される溶出プログラムは、Zorbax Extend C18 HPLCに対して以下の表2に、Waters BEH C18カラムに対して表3に記載されている。
【表2】
【表3】
【0179】
AB Sciex、Foster City、CAからのAPI 5000三連四重極型質量分析計を多重反応モニタリングモードで使用して、化合物を定量した。使用した質量分析パラメーターを、下記の表4において記載する。
【表4】
カニクイザルにおける経口投与とIV投与との対比
【0180】
小腸末端ならびに全身の臓器、例えば、肝臓におけるファルネソイドX受容体の活性化は、FGF19の発現および分泌を直接的に引き起こす。実施例1、比較例1、または比較例2のある用量の経口投与および静脈内投与後の雄のカニクイザルにおけるFXR活性化の薬力学マーカーとして血漿FGF19レベルを評価した。経口投与(PO)対静脈内投与(IV)後のFGF19レベルの差異を使用して、腸のFXRアゴニズム(POデータの分析を介して)および全身性FXRアゴニズム(IVデータの分析を介して)の程度を、投与した各化合物に対して比較した。薬物およびFGF19の血漿レベルを24時間の期間にわたり様々な時間点で測定して、薬物動態学的および薬力学曲線を作成した。
【0181】
図1は、実施例1の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0182】
図2は、比較例1の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0183】
図3は、比較例2の化合物の投薬後のカニクイザルにおける、時間の経過によるFGF19血漿中濃度のチャートを表している。
【0184】
薬物動態学的なデータは以下の表5に要約されている。
【表5】
【0185】
結果に反映されているように、実施例1、比較例1、および比較例2の経口投与はすべて、投薬前のFGF19のベースラインレベルと比較して、投薬間隔にわたり血漿FGF19の増加を引き起こした。これは腸のFXR受容体のアゴニズムを示唆する。実施例1のIV投与はFGF19の増加を引き起こさなかった。これは全身性FXRアゴニズムの欠如を示している。対照的に、比較例1および2のIV投与は、投薬前のFGF19のベースラインレベルと比較してFGF19レベルを増加させた。これは全身性FXRアゴニズムが生じたことを示している。
【0186】
これらのデータは、実施例1および比較例2の回腸での曝露が腸上皮におけるFXR活性化を引き起こすことを示唆している。データは、IV投与を介した比較例1および比較例2の全身暴露が、実施例1と比べてより大きな全身性、腸外のFXR活性化を引き起こすことをさらに示唆している。
(実施例6)
UGT1A1の阻害
【0187】
式(I)(実施例1)の化合物をUGT1A1の阻害について試験し、比較例1と比較した。アッセイを実施するために、試料化合物を、プローブ基質エストラジオール(10μM)の存在下、ヒトUGT1A1を発現するSupersomes(商標)(0.25mg/mL)、アラメチシン(25μg/mg)およびUDPGA(5mM)と共に37℃で30分間インキュベートした。選択的UGT1A1阻害剤、アタザナビルを正の対照として試験化合物と一緒にスクリーニングした。一定分量を2容量のメタノールへとクエンチすることにより、反応を終結した。2500rpmで、4℃で30分間試料を遠心分離し、上清の一定分量を脱イオン水および内部標準中のギ酸(最終のギ酸濃度0.1%)で希釈した。Cyprotexの一般的LC-MS/MS条件を使用して、エストラジオール3-グルクロニドの形成をモニターした。ビヒクル対照と比較した代謝産物の形成の減少を使用してIC50値を計算する。
【0188】
データは、実施例1の化合物が比較した化合物の中で最も強力なUGT1A1阻害を示したことを示した。実施例1は0.44μMのIC50を有した。
(実施例7)
CYP2C8、CYP3A4、およびCYP2B6の阻害
【0189】
式(I)の化合物(実施例1)をCYP2C8、CYP3A4、およびCYP2B6阻害について評価し、比較例1に対して比較した。
CYP2C8
【0190】
6つの濃度の試料化合物(DMSO中0.1、0.25、1、2.5、10、25μM;最終DMSO濃度0.25%)を、プローブ基質トルブタミド(120μM)の存在下、37℃で60分間、ヒト肝ミクロソーム(1mg/mL)およびNADPH(1mM)と共にインキュベートした。選択的CYP2C9阻害剤、スルファフェナゾールを正の対照として試験化合物と一緒にスクリーニングした。
CYP3A4
【0191】
6つの濃度の試料化合物(DMSO中0.1、0.25、1、2.5、10、25μM;最終DMSO濃度0.26%)を、プローブ基質ミダゾラム(2.5μM)の存在下、37℃で5分間ヒト肝ミクロソーム(0.1mg/mL)およびNADPH(1mM)と共にインキュベートした。選択的CYP3A4阻害剤、ケトコナゾールを正の対照として試験化合物と一緒にスクリーニングした。あるいは、6つの濃度の試料化合物(DMSO中0.1、0.25、1、2.5、10、25μM;最終DMSO濃度0.275%)を、プローブ基質テストステロン(50μM)の存在下、37℃で5分間ヒト肝ミクロソーム(0.5mg/mL)およびNADPH(1mM)と共にインキュベートした。選択的CYP3A4阻害剤、ケトコナゾールを正の対照として試験化合物と一緒にスクリーニングした。
CYP2B6
【0192】
6つの濃度の試験化合物(DMSO中0.1、0.25、1、2.5、10、25μM;最終DMSO濃度0.3%)を、プローブ基質ブプロピオン(110μM)の存在下、37℃で5分間ヒト肝ミクロソーム(0.1mg/mL)およびNADPH(1mM)と共にインキュベートする。選択的CYP2B6阻害剤、チクロピジンを正の対照として試験化合物と一緒にスクリーニングする。
【0193】
CYP2B6、CYP2C8、およびCYP3A4のインキュベーションのそれぞれに対して、メタノールの添加により反応を終結した。次いで試料を遠心分離し、LC-MS/MSで分析した。内部標準を含有する脱イオン水中のギ酸(最終濃度0.1%)を分析前に最終試料に加えた。ビヒクル対照と比較して、代謝産物の形成の減少を使用して、IC50を計算した。
【0194】
データは、実施例Iの化合物はCYP2B6を阻害しなかったが、その一方で比較例1はCYP2B6を阻害したことを示した。
(実施例8)
式(I)のメシル酸塩形態Iの調製
【0195】
イソプロピルアルコール(1mL)を有するバイアル内で、6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸(0.050g、0.0827mmol)を、メタンスルホン酸(8uL、0.123mmol)をと合わせて、スラリーを生成することにより、式(I)メシル酸塩形態Iを調製した。スラリーを約50℃に約30分間加熱し、次いで室温までゆっくりと約16時間冷却した。次いでスラリーを濾過し、単離した固体を
図4で提示されたXRPDにより特徴付けた。次いで、固体を真空オーブン内、約50℃で乾燥させ、XRPDで特徴付け、同じパターンをもたらした。式(I)のメシル酸塩形態IのXRPDピークは、3.2、6.4、9.6、12.8、19.3、22.1、22.6、25.8、29.1°2θにおいてピークを含んだ。得たXRPDピークは以下の表1に列挙されている。
【表1-2】
【0196】
DSCおよびTGA分析を実施した。式(I)のメシル酸塩形態IのDSCサーモグラムは、
図5に見られるように、約221℃で吸熱性事象、これに続いて発熱性事象を示した。式(I)メシル酸塩形態IのTGAサーモグラムは、
図6に見られるように、約200℃への加熱により約0.6%の重量の減少を示した。
【0197】
式(I)のメシル酸塩形態Iはまた、6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸(3.00g、4.96mmol)を懸濁液として、MeCN/水(1.5:1v/v、15mL)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液(30重量%、0.56mL、5.95mmol)で処理することにより形成された。次いで、生成した溶液を、数時間にわたり約50℃に予熱したMeCN(15mL)中のメタンスルホン酸(1.0mL、15.9mmol)の撹拌溶液を含有する第2の容器に投入した。このように得られたスラリーを約50℃で数時間熟成し、次いで約20℃に冷却した。スラリーを真空下で濾過する。このように得られた固体を真空下、約60℃までの高温で乾燥させて、式(I)のメシル酸塩形態Iを得た。
【0198】
6-(3-(2-クロロ-4-((5-シクロプロピル-3-(2,6-ジクロロ-4-フルオロフェニル)イソオキサゾール-4-イル)メトキシ)フェニル)-3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)ニコチン酸(0.5g、0.83mmol)を懸濁液としてアセトン/水(97:3v/v、10mL)に溶解し、約55℃に加熱することによっても、式(I)のメシル酸塩形態Iを形成した。メタンスルホン酸(60μL、0.91mmol)をスラリーに投入し、混合物を約55℃で数時間熟成した。スラリーを約20℃に冷却し、真空下で濾過した。このように得られた固体をアセトンで洗浄し、真空下、約60℃までの高温で乾燥させて、式(I)のメシル酸塩形態Iを得た。
【0199】
別段の定義がない限り、本明細書において使用するすべての技術および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
【0200】
このように、本開示を好ましい実施形態および必要に応じたフィーチャによって特に開示してきたが、本明細書において開示されているその中で実施される本開示の改変、改善および変化形を当業者が用いてもよいこと、およびこのような改変、改善および変化形は、本開示の範囲内であると考えられることを理解すべきである。ここで提供する材料、方法、および実施例は、好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本開示の範囲を限定するものとして意図しない。
【0201】
本開示を本明細書において広範および一般的に記載してきた。種類の開示内に入るより狭い種および亜属グルーピングのそれぞれはまた、本開示の部分を形成する。除外された材料が本明細書において特に列挙されているかどうかに関わらず、これは、任意の主題を種類から除去する条件または消極的な限定を伴って、本開示の種類の記載を含む。
【0202】
さらに、本開示のフィーチャまたは態様が、マーカッシュ群に関して記載されている場合、本開示はまた、それによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群に関して記載されていることを当業者なら理解するであろう。
【0203】
本開示を上記の実施形態と併せて記載してきた一方、上記の説明および実施例は、本開示の範囲を例示するのであり、限定しないことを意図することを理解すべきである。本開示の範囲内の他の態様、利点および改変は、本開示が関係する技術分野の当業者には明らかであろう。
【配列表】