(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】火災報知設備
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230419BHJP
G08B 17/06 20060101ALI20230419BHJP
G08B 17/107 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/06 J
G08B17/107 A
(21)【出願番号】P 2022072628
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2017251011の分割
【原出願日】2017-12-27
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川添 智由
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-036681(JP,A)
【文献】特開昭63-284696(JP,A)
【文献】特開2000-137876(JP,A)
【文献】特開平04-048398(JP,A)
【文献】特開2002-324280(JP,A)
【文献】特開2001-034863(JP,A)
【文献】特開2012-190058(JP,A)
【文献】特開平01-270199(JP,A)
【文献】特開昭62-092097(JP,A)
【文献】特開平11-312286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B17/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域に沿って広い範囲で敷設され周囲温度の上昇を検出する感熱部と、前記感熱部が接続される本体とを有する分布型感知器と、
該分布型感知器と同じ前記監視区域に設けられ、煙を検出する煙感知器と、火災信号を受信する受信機とを備える火災報知設備であって、
前記煙感知器に、火災と判断する第1閾値と、該第1閾値よりも低い第2閾値が設定され、該第2閾値を超える検出により、前記分布型感知器の感度を上昇させることを特徴とする火災報知設備。
【請求項2】
前記分布型感知器は、前記煙感知器との間で通信を行う送受信部を備え、前記煙感知器による火災の報知は、分布型感知器を経由して受信機に送信されることを特徴とする請求項1に記載の火災報知設備。
【請求項3】
前記分布型感知器は、前記煙感知器の中継器としての役割を担っており、前記分布型感知器と前記煙感知器は無線で通信を行うことを特徴とする請求項2に記載の火災報知設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分布型感知器と煙感知器を使用した火災報知設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や倉庫等の建物においては、発生した火災を感知するために火災報知設備が設けられている。火災報知設備に設置される感知器は、火災感知の方法によって熱感知器や煙感知器などがある。そして熱感知器には、感知器本体に達する熱を感知するスポット型感知器と、広い範囲の熱を感知する分布型感知器が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の火災報知設備の感知器では、火災を早期に報知するために感度を上げようとすると非火災報が発生しやすくなるという問題があった。熱感知器の場合では、感度を上げると気象や空調機、調理器具等による温度や気圧の変化に反応して非火災報を生じてしまうという可能性があった。また煙感知器の場合、高感度とすることによりタバコの煙や粉塵等により非火災報が発生してしまうという問題があった。
【0005】
特許文献1には、熱センサが感知した温度の上昇率などにより煙感知の感度を変更して非火災報を防ぐ、熱感知器と煙感知器が一体となったマルチセンサタイプのスポット型感知器が記載されている。しかし、特許文献1の感知器は熱と煙を一つの感知器で検出して機能するものであり、感知器から離れた場所で火災が生じると、感知器で受熱できず、マルチセンサとしての機能が発揮できない可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、非火災報を防ぎながら火災を確実に捉えて報知することができる火災報知設備を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、以下の構成を有する。
【0008】
(1)本発明は、監視区域に沿って広い範囲で敷設され周囲温度の上昇を検出する感熱部と、前記感熱部が接続される本体とを有する分布型感知器と、該分布型感知器と同じ前記監視区域に設けられ、煙を検出する煙感知器と、火災信号を受信する受信機とを備える火災報知設備であって、 煙感知器に、火災と判断する第1閾値と、該第1閾値よりも低い第2閾値が設定され、該第2閾値を超える検出により、前記分布型感知器の感度を上昇させることを特徴とする。 ここで、監視区域に沿った敷設とは、たとえば、監視区域が部屋の場合、部屋に敷設する場合のみならず、部屋の外の廊下に敷設する場合も含む。
【0009】
(2)また、本発明は、分布型感知器は、前記煙感知器との間で通信を行う送受信部を備え、前記煙感知器による火災の報知は、分布型感知器を経由して受信機に送信されることを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明は、分布型感知器は、前記煙感知器の中継器としての役割を担っており、前記分布型感知器と前記煙感知器は無線で通信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、煙感知器の煙の検出により分布型感知器の感度を高めることで、非火災報を防ぐと共に、煙が多く発生するような火災の種類の場合に、分布型感知器の周辺の温度が低い段階でも火災の予兆を捉えて早期の火災報知を実現することができる。即ち、広い範囲で検出する分布型感知器とスポット型感知器を協働させることにより、非火災報を防いだ早期の火災報知を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態における火災報知設備1の構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施形態における火災報知設備1の監視区域5内での設置状態を示す設置概略図である。
【
図3】本発明の実施形態における差動式分布型感知器2および煙感知器3の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態における差動式分布型感知器2の空気管211内での圧力の変化と、火災報知のタイミングを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、広い範囲で熱を検出する分布型感知器とスポット型の煙感知器の間で通信を行わせ、監視区域内での火災発生時に早期の報知を行う火災報知設備である。以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の実施形態における火災報知設備1の構成を示す説明図である。火災報知設備1は、複数の監視区域5に設置された空気管式の差動式分布型感知器2と、光電式スポット型感知器である煙感知器3、および各監視区域5からの火災の信号を受信する受信機4により構成される。各監視区域5内には、差動式分布型感知器2が1台設置され、
さらに煙感知器3が1台から3台程度設置される。煙感知器3の設置台数は監視区域5内の広さ等の設置条件により異なるが、本実施形態において
図1の上部に記載した監視区域5では2台の煙感知器3を設置している。
【0015】
差動式分布型感知器2は感圧部21、送受信部22、送受信部23を備える。感圧部21は感熱部として機能し、空気管211と検出部212からなる。空気管211は細い金属のパイプであり、監視区域5の天井等に沿って敷設される。検出部212は空気管211の圧力上昇を検出することで空気管211の周囲温度が上昇していることを感知する。送受信部22は、監視区域5内に設置された煙感知器3との間で、火災信号の受信、感度変更通知(火災予兆信号)の送信、煙感知器3の状態確認などの通信を無線で行う。送受信部23は、差動式分布型感知器2と有線で接続された受信機4へ火災報知の信号を送信する。
【0016】
煙感知器3は煙センサ部31、送受信部32を備える。煙センサ部31は光電式のセンサであり、煙感知器内に流入した煙により散乱した光を光電素子で捉える。送受信部32は、火災信号の送信、感度変更通知の受信、煙感知器3の状態の送信などの通信を、差動式分布型感知器2との間で無線により行う。煙感知器3による火災の報知は、差動式分布型感知器2を経由して受信機4に送信される。したがって、差動式分布型感知器2は煙感知器3の中継器としての役割も担っている。受信機4は差動式分布型感知器2と煙感知器3による火災信号を受信し、警報を報知する。
【0017】
図2は、本発明の実施形態における火災報知設備1の監視区域5内での設置状態を示す設置概略図である。
図2には監視区域5の天井等に沿って敷設された差動式分布型感知器2の空気管211と、空気管211に接続された差動式分布型感知器2の本体内の検出部212、および煙感知器3が示されている。監視区域5内では、差動式分布型感知器2と煙感知器3の間で無線による通信が行われる。
【0018】
空気管211は天井等に広い範囲で敷設され、両端は検出部212に接続されている。差動式分布型感知器2では、火災による高温の空気が天井等に達して空気管211の周囲温度が急激に上昇した際には、管内部の空気の膨張による圧力が検出部212に伝わる。検出部212には空気管211内との圧力差により変位するダイヤフラム(図示せず)が内蔵され、ダイヤフラム上の接点により圧力上昇を検出する。ダイヤフラムは、空気管211内の圧力が第1圧力閾値(第1閾値)を超えたときに接触する火災判断用の第1接点に加え、第2圧力閾値(第2閾値)を超えたときに接触する感度変更用の第2接点を備える。
【0019】
第1圧力閾値は、火災と断定される空気管211内の圧力である。差動式分布型感知器2は、第1接点の接触を検出した場合、空気管211の圧力が第1圧力閾値を超えたと判断する。第2圧力閾値は第1圧力閾値よりも低く設定されるもので、火災の予兆を示す。第2接点の接触を検出した場合、差動式分布型感知器2は圧力が第2圧力閾値を超えたと判断する。一方、第2接点の接触が開放された場合には、空気管211内の圧力が第2圧力閾値を下回ったと判断する。
【0020】
図2では、煙感知器3が2台設置され、設置されたそれぞれのスポットで火災による煙の有無を検出している。設置位置に到達した煙の濃度が上がり、煙センサ部31の光電素子に届く散乱光が光量閾値を超えると、煙感知器3は、差動式分布型感知器2を介して受信機4に火災信号を出力する。
【0021】
差動式分布型感知器2と各煙感知器3は、離れた設置位置で動作しながら無線により連携して火災を感知し、報知を行う。差動式分布型感知器2は煙感知器3から無線によって
火災信号を受信し、受信機4に火災信号を出力する。煙感知器3は、第2圧力閾値を超える圧力を検出した差動式分布型感知器2から感度上昇の感度変更通知を受信すると、火災と判断する光量閾値を低くし、高感度化させる。煙感知の感度を上げると一般的には非火災報のリスクが上昇するが、差動式分布型感知器2で火災の予兆である第2圧力閾値を上回る程度の熱を感知してから煙感知の感度を上げているので、非火災報を発するリスクは抑えられる。
【0022】
なお、火災の位置や規模、遮蔽物の存在、火災の種類等によっては、差動式分布型感知器2の空気管211の周囲に熱が十分に伝わりにくい場合も考えられる。その際も煙感知器3が通常感度で煙の感知を行い、火災の報知を行うことができる。また同様に、火災の位置や規模、遮蔽物の存在、火災の種類等によっては煙感知器3に煙が到達しにくい場合も考えられる。その際も差動式分布型感知器2で第1圧力閾値を超えた圧力を検知することにより、火災の報知を行うことができる。差動式分布型感知器2と煙感知器3は、協働して火災を感知するだけでなく、それぞれ単独でも火災を感知することで熱と煙の二重の監視を行う。
【0023】
次に、本発明の実施形態における火災報知設備1の動作処理について説明する。
図3は、本発明の実施形態における差動式分布型感知器2および煙感知器3の動作を説明するフローチャートである。左側には差動式分布型感知器2の処理を、右側には煙感知器3の処理を記述している。
【0024】
まず、差動式分布型感知器2による処理を以下に示す。この処理は、差動式分布型感知器2に設けられた制御装置により行われる。差動式分布型感知器2では、感圧部21により空気管211の内部の圧力を検出する(S101)。検出は、空気管211の圧力により変位するダイヤフラムに備えられた接点の接触を、検出部212により電気的に検出することで行う。
【0025】
空気管211の圧力が第1圧力閾値を超えると第1接点が接触し、その場合は火災と判断され(S102)、火災処理(S105)を行う。一方、第1圧力閾値を超えずに第1接点が接触していない場合は、火災の予兆を捉える圧力変化の有無の判断(S103)に移る。火災処理では、差動式分布型感知器2は送受信部23を通して火災報知を受信機4へ送信する(S105)。火災と判断しなかった場合、第2圧力閾値をまたぐ圧力変化があるか否かの判断を行う(S103)。圧力が第2圧力閾値を超えて第2接点が接触した場合や、第2圧力閾値を下回って第2接点が離れた場合は感度変更通知(S104)の処理を行う。第2圧力閾値をまたぐ圧力変化がない場合は再び圧力検出(S101)に戻る。送受信部22による感度変更通知は、検出部の検出に基づいて無線により煙感知器3へ出力する(S104)。このとき、第2圧力閾値を超えた場合は感度を上げる感度変更通知が、第2圧力閾値を下回った場合は感度を元に戻す感度変更通知が送信される。
【0026】
次に、煙感知器3による処理の手順を以下に示す。この処理は、煙感知器3に設けられた制御装置により行われる。煙感知器3は、流入した煙を煙センサ部31により定期的に検出する(S201)。検出の際は、設定された光電素子の光量閾値に従って煙の有無を監視する。そして、煙の濃度による散乱光が光量閾値(煙の閾値に相当)を超えると、火災と判断する(S202)。
【0027】
煙感知器3は、煙の濃度が煙の閾値を上回り火災と判断した場合、火災処理として送受信部32により無線で火災信号を差動式分布型感知器2の送受信部22へ出力する(S205)。そして、煙感知器3による火災信号を受信した差動式分布型感知器2は、送受信部23により受信機4に火災信号を出力する。一方、火災と判断しなかった場合は、差動式分布型感知器2から感度変更通知を受信したか否かを判断する(S203)。感度変更
通知のない場合は再び煙センサ部31による煙検出(S201)に戻り、感度変更通知のあった場合は感度の変更を行う(S204)。
【0028】
差動式分布型感知器2から受信した感度変更通知が感度上昇の指示の場合は、煙センサ部31の感度を上げる。即ち、煙センサ部31で火災と判断する閾値を低くし、低濃度の煙で火災と判断できるようにする。受信した感度変更通知が感度を元に戻す指示の場合は、煙センサ部31の感度を下げる。煙センサ部31の閾値を元の値まで上げ、通常感度で煙の感知を継続する。本発明の実施形態である火災報知設備1は煙感知器を通常感度に戻すことで、一時的な高温により煙感知器が高感度になり続けて非火災報が発生してしまうことを防いでいる。
【0029】
感度を変更した後は煙検出(S201)に戻り、新たな感度で煙の検出を行う。
【0030】
図4は、本発明の実施形態における差動式分布型感知器2の空気管211での圧力の変化と、火災報知のタイミングを示すグラフである。縦軸は圧力、横軸は時間を表し、星印は火災報知を表す。火災発生時、火災による熱が到達した差動式分布型感知器2の空気管211の圧力は、
図4のグラフのように時間をかけて上昇する。
【0031】
従来の差動式分布型感知器のみの構成では、第1圧力閾値に達したAのタイミングで火災報知を受信機4に送信する。しかし本実施形態では、まず空気管211内部の圧力が第2圧力閾値を超えるBのタイミングで、差動式分布型感知器2から監視区域5内の煙感知器3に感度を上昇させる感度変更通知を送信する。そして火災と判断する閾値を低く設定して感度が上がった煙感知器3は、Cのタイミングで火災報知する。Cのタイミングは火災の種類によっては、Aよりも早いタイミングであり、同時に煙感知器3の通常感度による火災報知よりも早いタイミングである。このように差動式分布型感知器2と煙感知器3とが連携することで、早期の火災報知ができる。なお、CのタイミングがAのタイミングより早い火災の種類としては、紙や段ボールが火種となる火災が挙げられる。このような火災では煙が少なく、本発明は特に有効である。
【0032】
また、従来の差動式分布型感知器では、高感度にするために第1圧力閾値を別の値に下げて使用すると、気象状況や空調機等による気温や圧力の変化を捉えて非火災報を報知してしまう虞があった。本実施形態の火災報知設備1では、気象状況や空調機等による第2圧力閾値を超える変化を捉えた場合であっても、高感度状態に移行した煙感知器3は煙を感知しなければ火災報知せず、非火災報のリスクは抑えられる。一方、煙感知器3が高感度で火災を報知するのは、熱により空気管211の圧力が第2圧力閾値を超えて感度変更通知が発生している場合に限定されているため、煙草の煙等による非火災報のリスクも抑えられている。
【0033】
なおBのタイミングの後、煙センサ部31が火災判断しなくても、差動式分布型感知器2は単独で火災報知を行う。煤成分の少ない可燃物による火災などで煙が煙センサ部31に達しない、または十分な量になるまで時間がかかってしまう場合は、感度を上げた煙感知器3においても火災報知できない可能性がある。しかし煙感知器3からの火災報知を受信しない場合でも、差動式分布型感知器2は空気管211内部の圧力が第1閾値を超えたAのタイミングで火災報知する。
【0034】
また煙感知器3は、前述のようにBのタイミングでの感度変更通知がある場合は蓄積時間を短くして高感度で煙を検出するが、差動式分布型感知器2に十分な熱が伝わらずに感度変更通知がない場合であっても、通常感度で煙の検出を行い火災報知する。よって、たとえば火災による熱の伝わりを阻害する遮蔽物があるなどして、差動式分布型感知器2の空気管211の周囲に熱が伝わらず第2閾値を超える圧力にならない場合であっても、煙感知器3のみにより火災判断されて火災報知が行われる。
【0035】
以上のように、差動式分布型感知器2は広い範囲での熱の監視を、煙感知器3は設置されたスポットにおける煙の感知を行い、連携して非火災報を防ぎながら火災を報知する。また同時に、差動式分布型感知器2と煙感知器3が独立して二重に火災を感知することで、一方の感知器が作動し難い環境条件や火災の性質であっても、確実に火災の報知ができる。設置されたスポットで熱と煙が感知器に達することにより高感度の感知を行う従来のマルチセンサ型のスポット型感知器と比較して、広範囲の熱を感知できる差動式分布型感知器2を用いているため、確実で早期の火災報知ができる。さらに、差動式分布型感知器が既に備えられている施設においては、敷設された空気管を利用しつつ本体部分を交換し、無線式の煙感知器を設けるだけで非火災報を防止した高感度の火災報知を行うことができる。
<変形例>
差動式分布型感知器2の第1接点と第2接点は同じダイヤフラムに設けられても良く、空気管211に接続された異なるダイヤフラムに設けられても良い。検出部212はダイヤフラムと接点によるものでなく、他の圧力センサでもよい。また、差動式分布型感知器2は空気管式でなくてもよく、監視区域内に沿って線状に敷設する分布型感知器であれば熱電対式、熱半導体式や電子ケーブル式でもよい。熱電対式では監視区域5内に敷設した熱電対部に生じる起電力を測定して火災を判断するが、空気管式と同様に、起電力の大きさが第2閾値を超えた場合は煙感知器3に感度変更通知を送信し、第1閾値を超えた場合は火災判断により火災報知する。電気抵抗の変化を検出する熱半導体式の場合や、温度センサを有する電子ケーブルを敷設する電子ケーブル式も同様である。また熱を感知する感知器は、監視区域に沿って敷設して広い範囲の熱を感知する分布型感知器であれば、差動式でなくてもよい。
【0036】
差動式分布型感知器2と煙感知器3間の通信は信号が送れればよく、無線でなく有線であってもよいし、有線と無線が混在していてもよい。差動式分布型感知器2と受信機4との間の通信も同様である。また、差動式分布型感知器2の感度変更通知は、監視区域5内の煙感知器3への送信に加えて、さらに隣接する監視区域や上下層階の監視区域の煙感知器3に対して送信するようにしてもよい。
【0037】
上記の実施形態において、煙感知器3の感度変更は閾値の変更により行うが、煙感知器3に蓄積機能の設け、蓄積時間を短くすることで高感度にしても良い。なお、蓄積機能とは、散乱光の出力値が光量閾値を超えた後、すぐに火災信号を出力せずに、再度散乱光の出力値が光量閾値を超えたときに火災信号を出力するものである。煙感知器3の蓄積時間の処理は、当該煙感知器3の代わりに蓄積式中継器や受信機4を使用してもよい。また、差動式分布型感知器2に蓄積式中継器の役割を担わせてもよい。煙感知器3の煙検出を、蓄積式中継器等に送信し、設定された蓄積時間にわたって煙が検出され続けていることを煙感知器3から受信することで火災判断する。この場合、差動式分布型感知器2による感度変更の通知は蓄積処理を行う蓄積式中継器等に送信する。差動式分布型感知器2が蓄積処理を担う場合は、差動式分布型感知器2内で感度変更の処理を行う。煙感知器3の感度変更を蓄積時間以外によるものとしながら、同時に蓄積時間の処理に蓄積式中継器等を使用してもよい。その場合は感度変更の通知は、本発明の実施形態のように煙感知器3に対して送信する。
【0038】
また、煙感知器3の感度変更は、2段階以上あっても良い。例えば、差動式分布型感知器2に、第1の圧力閾値および第2の圧力閾値の間の値となるように第3の圧力閾値を設定し、第3の圧力閾値を超えたときには、第2の圧力閾値を超えたときよりも煙感知器3をより高感度化する。
【0039】
なお、煙が多く発生するような火災の種類の場合、差動式分布型感知器2が第2の閾値
に達するよりも前に煙感知器3が火災を検知することがある。その場合は、煙感知器に第2の閾値を設け、煙感知器の煙センサ部の検出した煙濃度が第2の閾値を超えたときに差動式分布型感知器の感度を高めても良い。そして、煙濃度が煙感知器の第2の閾値を下回ったときには差動式分布型感知器の感度を元に戻しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 火災報知設備、 2 差動式分布型感知器、 21 感圧部、 211 空気管、
212 検出部、 22 送受信部、 23 送受信部、 3 煙感知器、
31 煙センサ部、 32 送受信部、 4 受信機、 5 監視区域