(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-18
(45)【発行日】2023-04-26
(54)【発明の名称】ストーカ式廃棄物発電システム及びその廃棄物発電量の安定化方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230419BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20230419BHJP
F22B 35/00 20060101ALI20230419BHJP
【FI】
F23G5/50 J ZAB
F23G5/50 C
F23G5/46 A
F22B35/00 Z
(21)【出願番号】P 2022107969
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2018131813の分割
【原出願日】2018-07-11
【審査請求日】2022-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】栗林 和浩
(72)【発明者】
【氏名】藤永 泰佳
(72)【発明者】
【氏名】今村 幸平
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133983(JP,A)
【文献】特開2001-349520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
F23G 5/46
F22B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストーカ炉の火格子部で廃棄物を燃焼しボイラで蒸気を発生させて発電するストーカ式廃棄物発電システムにおいて、火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へ
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを直接投入し、ボイラでの蒸気発生量を安定化させる廃棄物発電量の安定化方法であって、
ボイラでの蒸気発生量を検出し、蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量を制御する主制御を実施しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを検出した後に
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を開始し、蒸気発生量が目標蒸気発生量に戻り始めたら
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を停止又は減少する副制御を実施し、
前記副制御では、
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの最大投入量が、廃棄物の燃焼による平均発熱量の5%から50%に相当する量とすることを特徴とする廃棄物発電量の安定化方法。
【請求項2】
ストーカ炉の火格子部で廃棄物を燃焼しボイラで蒸気を発生させて発電するストーカ式廃棄物発電システムにおいて、火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へ
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを直接投入するバイオマス燃料投入部を備えるストーカ式廃棄物発電システムであって、
ボイラでの蒸気発生量を検出する蒸気発生量検出手段と、廃棄物の供給量を調整、検出する廃棄物供給量調整検出手段と、前記バイオマス燃料投入部からの
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入量を調整、検出するバイオマス燃料投入量調整検出手段と、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量と
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入量を制御する制御手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量を制御する主制御を実施しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを前記蒸気発生量検出手段が検出した後に
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を開始し、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量に戻り始めたら
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を停止又は減少する副制御を実施し、前記副制御では、
バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの最大投入量が、廃棄物の燃焼による平均発熱量の5%から50%に相当する量とすることを特徴とするストーカ式廃棄物発電システム。
【請求項3】
前記バイオマス燃料投入量調整検出手段が、バイオマス燃料を燃焼させるバーナを備え、このバーナで燃焼させた燃焼ガスを前記バイオマス燃料投入部へ供給
し、このバイオマス燃料投入部が前記燃焼ガスを火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へ直接投入する、請求項
2に記載のストーカ式廃棄物発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式廃棄物発電システムにおける廃棄物発電量の安定化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ストーカ式廃棄物発電システムにおいては、ストーカ炉の火格子部で廃棄物を燃焼しボイラで蒸気を発生させて発電するが、燃焼処理される都市ごみ等の廃棄物の発熱量は、回収される季節や曜日あるいは地域によって大きく変動することがある。廃棄物の発熱量が大きく変動するとボイラでの蒸気発生量も大きく変動することから、廃棄物発電量が不安定となる。廃棄物発電量が不安定となると、定格発電量を維持すること、更には廃棄物発電量を最大化することが困難となる。
【0003】
これに対して、燃焼処理される廃棄物の発熱量の変動を小さくする技術として、複数種類の廃棄物を予め混合して燃焼するという技術が知られている(例えば特許文献1、2)。しかし、このような従来の技術では、複数種類の廃棄物を予め混合するという前処理が必要となり、そのための労力や費用が必要となる。また、複数種類の廃棄物を予め混合したとしても、混合による廃棄物の発熱量調整には限界があるため、燃焼処理される廃棄物の発熱量の変動が生じることがある。燃焼処理される廃棄物の発熱量が変動すると、前述のとおり廃棄物発電量が不安定となる。また、ストーカ式廃棄物発電システムに装備されているバーナで、発熱量を補填すると温暖化ガスの排出につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-317012号公報
【文献】特開2006-342240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ストーカ式廃棄物発電システムにおける廃棄物発電量を簡単かつ確実に安定化できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、次の廃棄物発電量の安定化方法が提供される。
ストーカ炉の火格子部で廃棄物を燃焼しボイラで蒸気を発生させて発電するストーカ式廃棄物発電システムにおいて、火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを直接投入し、ボイラでの蒸気発生量を安定化させる廃棄物発電量の安定化方法であって、
ボイラでの蒸気発生量を検出し、蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量を制御する主制御を実施しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを検出した後にバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を開始し、蒸気発生量が目標蒸気発生量に戻り始めたらバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を停止又は減少する副制御を実施し、
前記副制御では、バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの最大投入量が、廃棄物の燃焼による平均発熱量の5%から50%に相当する量とすることを特徴とする廃棄物発電量の安定化方法。
【0007】
本発明の他の観点によれば、次のストーカ式廃棄物発電システムが提供される。
廃棄物発電システムにおいて、火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを直接投入するバイオマス燃料投入部を備えるストーカ式廃棄物発電システムであって、
ボイラでの蒸気発生量を検出する蒸気発生量検出手段と、廃棄物の供給量を調整、検出する廃棄物供給量調整検出手段と、前記バイオマス燃料投入部からのバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入量を調整、検出するバイオマス燃料投入量調整検出手段と、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量とバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入量を制御する制御手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量を制御する主制御を実施しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを前記蒸気発生量検出手段が検出した後にバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を開始し、前記蒸気発生量検出手段で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量に戻り始めたらバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの投入を停止又は減少する副制御を実施し、前記副制御では、バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスの最大投入量が、廃棄物の燃焼による平均発熱量の5%から50%に相当する量とすることを特徴とするストーカ式廃棄物発電システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へバイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを直接投入することで、廃棄物の発熱量変動をバイオマス燃料で補填することができるから、灯油や重油といった化石燃料を使用することなく、ストーカ式廃棄物発電システムにおける廃棄物発電量を簡単かつ確実に安定化できる。また、バイオマス燃料を燃焼させた燃焼ガスを火格子部上方とボイラ内の2次燃焼室との少なくとも一方へ直接投入することで、廃棄物の発熱量変動に対して高い応答性をもって安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるストーカ式廃棄物発電システムを概念的に示すシステム構成図。
【
図2】バイオマス燃料の投入による廃棄物発電量の安定化の概念を示す図。
【
図3】本発明の一実施形態における廃棄物発電量の安定化方法を概念的に示す図。
【
図4】本発明の他の実施形態の要部を概念的に示す図。
【
図5】本発明の更に他の実施形態の要部を概念的に示す図。
【
図6】
図5の実施形態において火格子部のトラック毎に燃えきり点を検出し、各トラックへのバイオマス燃料の投入量のバランスを調整する例を概念的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の一実施形態であるストーカ式廃棄物発電システムのシステム構成を概念的に示している。まず、この実施形態のストーカ式廃棄物発電システムの基本的な構成について説明する。
【0011】
廃棄物ピット10に、都市ごみ等の廃棄物Wが貯留されている。この廃棄物ピット10から、廃棄物クレーン20のバケット21により所定量の廃棄物Wが切り出され、廃棄物投入ホッパ30へ投入される。廃棄物投入ホッパ30へ投入された廃棄物は、この廃棄物投入ホッパ30の下部に配置されている廃棄物供給機40(廃棄物の供給量を調整、検出する廃棄物供給量調整検出手段)によりストーカ炉50の火格子部51へ供給される。火格子部51は、上流から乾燥ゾーン51a、燃焼ゾーン51b、後燃焼ゾーン51cの3つのゾーンに分かれており、廃棄物は各ゾーンの火格子の動きにより順次、乾燥ゾーン51aから燃焼ゾーン51b、後燃焼ゾーン51cへ搬送されて燃焼処理される。廃棄物の燃焼処理により生じた高温の排ガスは、ストーカ炉50の上方に配置されているボイラ60に導入されて熱回収される。ボイラ60での熱回収により発生した蒸気は発電機へ送られ発電に供される。一方、熱回収後の排ガスは、ボイラ60に付属する過熱器61、節炭器62などを経て大気中へ放出される。
【0012】
このように、この実施形態のストーカ式廃棄物発電システムは、ストーカ炉50の火格子部51で廃棄物を燃焼しボイラ60で蒸気を発生させて発電するが、前述のとおり廃棄物の発熱量が変動するとボイラでの蒸気発生量も変動し、結果として廃棄物発電量が不安定となる。また、廃棄物は成分を調整できないことから、処理量を一定以上に保っていると廃棄物の発熱量低下によってボイラ60での蒸気発生量は低下する。そこで、ボイラ60での蒸気発生量を一定に保とうとすると、基準となる廃棄物の処理量の設定値又はストーカ式廃棄物発電システムの設計条件を低い水準に設定する必要があり、廃棄物の発熱量が高い場合は処理量を低下させる必要があり、廃棄物の発熱量を最大限利用できず、廃棄物発電量を最大化することができない。
【0013】
これに対して、この実施形態では、ストーカ炉50の火格子部51(より具体的には乾燥ゾーン51a)の上方にバイオマス燃料投入部52を設け、このバイオマス燃料投入部52から火格子部51(乾燥ゾーン51a)の上方へバイオマス燃料を直接投入するようにしている。このように火格子部51の上方へバイオマス燃料を直接投入することで、廃棄物の発熱量変動をバイオマス燃料で補填することができるから、ボイラ60での蒸気発生量、ひいては廃棄物発電量を簡単かつ確実に安定化できる。
【0014】
このバイオマス燃料の投入による廃棄物発電量の安定化の概念を
図2(a)、(b)に示している。このうち
図2(a)は、廃棄物の燃焼による平均発熱量で定格発電量を計画した場合の廃棄物の発熱量と発電量との関係を示している。同図に示しているように、廃棄物の発熱量が定格発電量を得るのに不足するときに、その不足分の発熱量をバイオマス燃料で補填することにより、ボイラでの蒸気発生量を安定化させ、廃棄物発電量を安定化させることができる。なお、廃棄物の発熱量が定格発電量を得るのに過剰であるときは、その過剰分の発熱量に相当する蒸気又は熱を放散することにより、定格発電量を維持することができる。
【0015】
図2(b)は、バイオマス燃料を用いて最適化した場合の廃棄物の発熱量と発電量との関係を示している。同図に示しているように、バイオマス燃料を用いることにより定格発電量を増大させることが可能となり、廃棄物の発熱量を最大限利用しつつ廃棄物発電量を最大化することができる。
なお、
図2(a),(b)には廃棄物の発熱量変動に合わせた発電量を一点鎖線で示しているが、廃棄物の発熱量が大きく低下した場合、蒸気発生量も大きく低下するため、発電機の効率が負荷低下により低下し、その分、発電量が更に低下する。
【0016】
また、この実施形態では、バイオマス燃料を火格子部51の上方へ直接投入するから、廃棄物の発熱量変動に対して高い応答性をもって、ボイラ60での蒸気発生量(廃棄物発電量)を安定化させることができる。すなわち、この実施形態において廃棄物投入ホッパ30に投入された廃棄物が火格子部51の乾燥ゾーン51aに到達するまでに1時間程度を要することから、廃棄物投入ホッパ30に投入する廃棄物の種類を変更するなどして燃焼処理される廃棄物の発熱量を調整しようとしても、その効果が表れるのは1時間程度経過後となる。これに対して、この実施形態では発熱量を補填するためのバイオマス燃料を火格子部51の上方へ直接投入することで、5秒程度で炉内への供給量を変更できる。
なお、バイオマス燃料は、ボイラ60内の2次燃焼室60aへ直接投入することもできる。要するに本発明では、火格子部51上方とボイラ60内の2次燃焼室60aとの少なくとも一方へバイオマス燃料を直接投入することで、ボイラ60での蒸気発生量(廃棄物発電量)を安定化させることを特徴とする。また、ボイラ60内の2次燃焼室60aへバイオマス燃料を直接投入することによっても、廃棄物の発熱量変動に対して高い応答性をもってボイラ60での蒸気発生量(廃棄物発電量)を安定化させることができる。
【0017】
ここで、廃棄物の燃焼による平均発熱量は例えば10000kJ/kg程度であり、廃棄物の発熱量の変動は平均発熱量に対し±20~40%である。そこで、この実施形態では廃棄物の発熱量の変動を安定化するため、バイオマス燃料の最大投入量は、廃棄物の燃焼による平均発熱量の5%から50%に相当する量とすることができる。
【0018】
次に、この実施形態における廃棄物発電量の安定化方法について、より詳細に説明する。
図3に、この実施形態における廃棄物発電量の安定化方法を概念的に示している。この実施形態では、ボイラでの蒸気発生量を検出し、大きな変動については廃棄物の供給量制御を主体とし(主制御)、短期的な変動についてはバイオマス燃料の投入量を従属的に調整する(副制御)。すなわち、この実施形態では廃棄物の発熱量を最大限に利用することが目的の一つであるため、蒸発発生量変動の調整は廃棄物の供給量制御を主とし、廃棄物の供給量で調整できない範囲をバイオマス燃料で補填するようにしている。また、短期的な変動については、廃棄物の供給量制御では応答性が低くなるため、バイオマス燃料で調整することで蒸気発生量(廃棄物発電量)の早期安定化を図ることができる。
【0019】
なお、この実施形態の廃棄物発電量の安定化方法を別の観点から述べると、ボイラでの蒸気発生量を検出し、蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量(kg/h)を制御する主制御を実施しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを検出した後にバイオマス燃料の投入量(kg/h)を制御する副制御を実施するということである。更に具体的には、ボイラでの蒸気発生量を検出し、蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量を制御しつつ、蒸気発生量が目標蒸気発生量を下回ることを検出した後にバイオマス燃料の投入を開始し、蒸気発生量が目標蒸気発生量に戻り始めたらバイオマス燃料の投入を停止又は減少するということである。
ここで、廃棄物の供給量(kg/h)の制御は、廃棄物供給機40の駆動速度と火格子の送り速度(駆動速度又は駆動間隔)とのいずれか一方又は両方で実施する。
【0020】
この実施形態の廃棄物発電量の安定化方法を実施するために、この実施形態のストーカ式廃棄物発電システムは
図1に示しているように、ボイラ60での蒸気発生量を検出する蒸気発生量検出手段としての蒸気検出センサ70と、廃棄物の供給量を調整、検出する廃棄物供給量調整検出手段としての廃棄物供給機40と、バイオマス燃料投入部52からのバイオマス燃料の投入量を調整、検出するバイオマス燃料投入量調整検出手段としてのバイオマス投入装置80と、蒸気検出センサ70で検出した蒸気発生量が目標蒸気発生量となるように廃棄物の供給量とバイオマス燃料の投入量を制御する制御手段90とを備える。
【0021】
また、この実施形態においてバイオマス投入装置80(バイオマス燃料の投入量を調整、検出するバイオマス燃料投入量調整検出手段)は、バイオマス燃料を貯留するホッパ81と、このホッパ81からバイオマス燃料を可変的に定量切り出してバイオマス燃料投入部52へ供給する定量切出機82とを備えている。前述のとおり、蒸気発生量(発電量)を安定化させるためにはバイオマス燃料の投入量制御が必要となるが、切出量が可変である定量切出機82を用いることで、バイオマス燃料の投入量を簡単に制御することができる。切出量が可変である定量切出機82としては、ロータリーバルブ、スクリューコンベアなどを用いることができる。なお、ホッパ81には重量検出機構を設け、バイオマス燃料の投入量をリアルタイムで検出できるようにしておくことが好ましい。
【0022】
また、この実施形態では、バイオマス燃料の投入量に合わせて、火格子部51へ吹き込む1次空気の吹込み量と、火格子部51の各ゾーン51a~cへの1次空気の吹込み量分布と、ボイラ60内の2次燃焼室60aへ吹き込む2次空気の吹込み量と、火格子の駆動速度又は駆動間隔とを調整する。言い換えれば、この実施形態ではバイオマス投入装置80(バイオマス燃料投入量調整検出手段)で検出したバイオマス燃料の投入量に合わせて、制御手段90が、火格子部51へ吹き込む1次空気の吹込み量と、火格子部51の各ゾーン51a~cへの1次空気の吹込み量分布と、2次燃焼室60aへ吹き込む2次空気の吹込み量と、火格子の駆動速度又は駆動間隔について、バイオマス燃料の投入量が0のときの各制御目標値に補正をかけて制御する。
この実施形態ではバイオマス燃料をストーカ炉50の火格子部51の上方へ投入するので、このバイオマス燃料の投入量により、ストーカ炉50内での燃料(廃棄物とバイオマス燃料)の燃焼処理(乾燥、ガス化燃焼、固形燃焼、灰の冷却等のプロセス)に必要な時間、空気量が変わる。そこで、バイオマス燃料の投入量に合わせて、火格子部51へ吹き込む1次空気の吹込み量と、火格子部51の各ゾーン51a~cへの1次空気の吹込み量分布と、ボイラ60内の2次燃焼室60aへ吹き込む2次空気の吹込み量と、火格子の駆動速度又は駆動間隔とを調整(補正)することで、最適な燃焼状態を得ることができ、ストーカ炉50炉内が局部的に高温になって発生するクリンカの成長、燃焼空気の不足による主灰中の未燃物質の増大等を防止できる。
【0023】
この実施形態において1次空気は1次空気送風機53から供給され、火格子部51の下方に設置されている5つの風箱54a~eを介して火格子部51の各ゾーン51a~cへ吹き込まれる。具体的には、風箱54aの上方が乾燥ゾーン51a、風箱54b,54cの上方が燃焼ゾーン51b、風箱54d,54eの上方が後燃焼ゾーン51cである。また、この実施形態ではこれら5つの風箱54a~eに分けて1次空気の吹込み量を制御するようにしており、この制御により火格子部51へ吹き込む1次空気の吹込み量(総吹込み量)と共に、火格子部51の各ゾーン51a~cへの1次空気の吹込み量分布を調整するようにしている。
また、この実施形態において火格子部51の火格子の駆動速度又は駆動間隔は、前述した5つの風箱54a~eに対応する領域に分けて調整するようにしている。
一方、この実施形態において2次空気は2次空気送風機63から供給され、ボイラ60内の2次燃焼室60aへ吹き込まれる。すなわち、この実施形態において2次空気の吹込み量は2次空気送風機63の制御によって調整するようにしている。
【0024】
この実施形態においてバイオマス燃料は下水汚泥乾燥燃料であることが好ましい。下水及び廃棄物は共に人間の生活によって発生するものであり、場所による発生割合の違いは少なく、また、廃棄物発電所と下水処理場は近隣に設置されることも多いためバイオマス燃料の授受が容易で合理的な運営が可能となる。ただし、下水汚泥乾燥燃料以外のバイオマス燃料(例えば木チップ、バイオエタノール等)を単独使用又は下水汚泥乾燥燃料と併用することもできる。
下水汚泥乾燥燃料の性状の一例を挙げると、大きさは粒径数mm程度の粒状、平均発熱量は20000kJ/kg程度である。
【0025】
一方、下水汚泥乾燥燃料には、硫黄(S)成分と塩素(Cl)成分が含まれるため(例えば、硫黄(S)成分の含有率は0.8質量%程度、塩素(Cl)成分の含有率は0.1質量%程度)、排ガス性状の悪化、ストーカ炉50内の腐食、水冷式主灰冷却装置(図示せず)でのpHの低下による腐食等が発生することがある。そこで、この実施形態ではこれら腐食等の発生を抑制するために、下水汚泥乾燥燃料の投入量に合わせ中和剤を投入するようにしている。具体的には
図1に示しているように、ストーカ炉50の火格子部51(より具体的には乾燥ゾーン51a)の上方に中和剤投入部55を設け、この中和剤投入部55から火格子部51(乾燥ゾーン51a)の上方へ中和剤を投入するようにしている。また、中和剤投入部55からの中和剤の投入量を調整、検出する手段として中和剤投入装置100を設けている。この中和剤投入装置100は、中和剤を貯留するホッパ101と、このホッパ101から中和剤を可変的に定量切り出して中和剤投入部55へ供給する定量切出機102とを備えている。このように切出量が可変である定量切出機82を用いることで、中和剤の投入量を下水汚泥乾燥燃料の投入量に合わせて簡単に制御することができる。切出量が可変である定量切出機102としては、バイオマス燃料の定量切出機82と同様にロータリーバルブ、スクリューコンベアなどを用いることができる。また、中和剤としては、生石灰、石灰石、消石灰、重曹など用いることができる。
なお、中和剤投入部55を設ける位置は火格子部51(乾燥ゾーン51a)の上方には限定されず、例えば2次燃焼室60aに設けてもよい。また、中和剤の投入は省略することもできる。
【0026】
また、バイオマス燃料として下水汚泥乾燥燃料を用いる場合は特に、バイオマス燃料を例えばホッパ81まで空気輸送すると臭気が発生する。そこで、この実施形態ではバイオマス燃料の空気輸送に使用した空気を前述した1次空気と2次空気との少なくとも一方として使用することができる。すなわち、バイオマス燃料の空気輸送に使用した空気を1次空気や2次空気としてストーカ炉50や2次燃焼室60aに吹き込むことで、臭気を分解することができる。
【0027】
図4に、本発明の他の実施形態の要部を概念的に示している。先の実施形態では、バイオマス燃料を粒状の固形物の状態で投入するようにしたが、この実施形態では、バイオマス燃料投入部52からのバイオマス燃料の投入量を調整、検出するバイオマス燃料投入量調整検出手段として、バイオマス投入装置80(ホッパ81及び定量切出機82)に加えて、バイオマス燃料を燃焼させるバーナ83を設け、このバーナ83で燃焼させた燃焼ガスをバイオマス燃料投入部52へ供給し、2次燃焼室60aへ直接投入するようにしている。この実施形態によっても、先の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、バイオマス燃料をバーナ燃焼させることでより早い制御速度で制御することができる。
ここで、この実施形態のようにバーナ83を使用する場合、バイオマス燃料を事前に粉砕してバーナ83で燃焼しやすくすることもできる。また、前述のバイオエタノールのように、液体状のバイオマス燃料を使用することもできる。
なお、
図4ではバイオマス燃料投入部52を2次燃焼室60aに設けたが、
図1のように火格子部51上方に設けることもでき、2次燃焼室60aと火格子部51上方の両方に設けることもできる。
【0028】
図5に、本発明の更に他の実施形態の要部を概念的に示している。この実施形態では、火格子部51が複数(
図5では3つ)のトラック51-1~3に分かれており、バイオマス燃料投入部51が各トラック51-1~3の上方にそれぞれ設けられている。これにより、トラック毎にバイオマス燃料の投入調整が可能となり、局所的な高温、廃棄物の発熱量低減等に対し柔軟な対応が可能となる。
【0029】
また、このように火格子部51が複数のトラック51-1~3に分かれている場合、
図6に示しているように、トラック51-1~3毎に燃えきり点を検出する燃えきり点検出手段110を設け、検出した各トラックの燃えきり点の位置に応じて、各トラックへのバイオマス燃料の投入量のバランスを調整するようにすることができる。すなわち、各トラックの燃焼量をバイオマス燃料で平準化することで局所的な高温燃焼を抑制し、クリンカの発生、乾燥のアンバランスさに起因する未燃の発生等を抑制できる。なお、燃えきり点検出手段110としては、炉内後端部及び/又は天井部に設置した温度計、炉内を見るカメラ、サーモグラフィーのほか、後燃焼ゾーン51cの裏面に設置した温度計等を用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 廃棄物ピット
20 廃棄物クレーン
21 バケット
30 廃棄物投入ホッパ
40 廃棄物供給機
50 ストーカ炉
51 火格子部
51-1~3 トラック
51a 乾燥ゾーン
51b 燃焼ゾーン
51c 後燃焼ゾーン
52 バイオマス燃料投入部
53 1次空気送風機
54a~e 風箱
55 中和剤投入部
60 ボイラ
60a 2次燃焼室
61 過熱器
62 節炭器
63 2次空気送風機
70 蒸気検出センサ
80 バイオマス投入装置
81 ホッパ
82 定量切出機
90 制御手段
100 中和剤投入装置
101 ホッパ
102 定量切出機
110 燃えきり点検出手段