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  • 特許-水中油型乳化皮膚化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】水中油型乳化皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20230420BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230420BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230420BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/06
A61K8/34
A61Q19/00
A61Q1/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019234540
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102576
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 大河
(72)【発明者】
【氏名】市川 晶子
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/221278(WO,A1)
【文献】特開2019-172716(JP,A)
【文献】特開2012-207000(JP,A)
【文献】特開2019-112314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記アルキレンオキシド誘導体を0.1~10質量%、
(B)炭素数12~22の一価アルコールを0.2~10質量%、
(C)融点が20~90℃の、固形またはペースト状の油剤を1~15質量%、および
(D)HLB3~18かつ炭素数12~24の炭化水素基もしくはHLB3~18かつ炭素数12~24の水酸基含有炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤を0.5~10質量%
含有することを特徴とする、水中油型乳化皮膚化粧料。

(A) 式(1)で表され、かつゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出される重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが式(2)の関係を満足するアルキレンオキシド誘導体

Z-[O-(PO)-(PO)/(EO)]-H] ・・・・(1)

(式(1)中、
Zは、炭素数1~24かつ1~6個の水酸基を有する化合物から、全ての水酸基を除いた残基を示し、
nは1~6の数を示し、
POはオキシプロピレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
aおよびbは、それぞれ前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数を示し、
cは前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数を示し、
aは0~100の数を示し、bは1~100の数を示し、cは1~200を示し、a+b+c≧10かつb/c=1/5~5/1であり、
(PO)/(EO)は前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOがランダム付加していることを示し、前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOのランダム率xが0.1≦x≦1である。)

5≦M/M≦60 ・・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布時に厚みが感じられつつもべたつき感が無く、肌にみずみずしさを与え、塗布中の白浮きを抑制する水中油型乳化皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
角質層のバリア機能、水分保持機能が低下すると、肌荒れやキメの乱れ、かさつき、柔軟性の低下を助長する等、様々な皮膚トラブルを起こす。このような皮膚トラブルに対して、油分が皮膚上に皮膜を形成して水分蒸散を抑制する乳化化粧料が用いられることが知られている。
【0003】
一般に、乳化化粧料は、消費者に好まれる使用感であることが重要である。消費者に好まれる使用感としては、べたつきがないことや、保湿感に優れること、またみずみずしい使用感を有することなどが挙げられる。特定のエステル油と増粘剤を配合することで、肌なじみが良好でみずみずしくべたつきがない使用感に優れた乳化組成物(特許文献1)が開示されている。
【0004】
近年では特に、消費者に継続した使用を促すために、高級感をもたらすような塗布時に厚みのある感触等も求められている。塗布時の厚みについては、高融点の油剤と液状油を組み合わせて配合する水中油型乳化組成物(特許文献2)を使用する方法が開示されている。
【0005】
上記のような方法で調整した水中油型乳化化粧料は、厚みは付与できるものの、みずみずしさに欠ける場合があった。このような課題に対して、高融点の油剤と特定のアルキレンオキシド誘導体を用いることで、塗布時の厚みを付与しつつ、みずみずしさも演出できる乳化組成物が開示されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-53090号公報
【文献】特開2012-214448号公報
【文献】特開2013-189392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高融点の油剤を多く使用した水中油型乳化化粧料は、塗布時に厚みを付与できるものの、塗布中に白浮きが生じ、肌上でムラになるという問題があった。
このため、塗布時の厚みやみずみずしさを両立するだけではなく、塗布中の感触の改善が求められる。
【0008】
本発明の課題は、塗布時に厚みが感じられつつもべたつき感が無く、肌にみずみずしさを与え、塗布中の白浮きを抑制する水中油型乳化皮膚化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決する為に研究を重ねたところ、特定のアルキルオキシド誘導体と、高融点油剤を特定の比率で組み合わせることにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)下記アルキレンオキシド誘導体を0.1~10質量%、
(B)炭素数12~22の一価アルコールを0.2~10質量%、
(C)融点が20~90℃の、固形またはペースト状の油剤を1~15質量%、および
(D)HLB3~18かつ炭素数12~24の炭化水素基もしくはHLB3~18かつ炭素数12~24の水酸基含有炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤を0.5~10質量%
含有することを特徴とする、水中油型乳化皮膚化粧料に係るものである。

(A) 式(1)で表され、かつゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出される重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが式(2)の関係を満足するアルキレンオキシド誘導体

Z-[O-(PO)-(PO)/(EO)]-H] ・・・・(1)

(式(1)中、
Zは、炭素数1~24かつ1~6個の水酸基を有する化合物から、全ての水酸基を除いた残基を示し、
nは1~6の数を示し、
POはオキシプロピレン基を示し、
EOはオキシエチレン基を示し、
aおよびbは、それぞれ前記オキシプロピレン基POの平均付加モル数を示し、
cは前記オキシエチレン基EOの平均付加モル数を示し、
aは0~100の数を示し、bは1~100の数を示し、cは1~200を示し、a+b+c≧10かつb/c=1/5~5/1であり、
(PO)/(EO)は前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOがランダム付加していることを示し、前記オキシプロピレン基POと前記オキシエチレン基EOのランダム率xが0.1≦x≦1である。)

5≦M/M≦60 ・・・・(2)
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料は、塗布時に厚みが感じられつつもべたつき感が無く、肌にみずみずしさを与え、塗布中の白浮きを抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明にて定義されるMz/Mwを説明するためのモデルクロマトグラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料は、下記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を含有する。以下、(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分を順次説明する。
【0014】
[(A)成分]
本発明に用いられる(A)成分は、式(1)で表される化合物であり、かつゲル浸透クロマトグラフィー測定により求められるクロマトグラムから算出される重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが式(2)の関係を満足するアルキレンオキシド誘導体である。

Z-[O-(PO)-(PO)/(EO)]-H] ・・・・(1)
【0015】
Zは、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6であり、かつ1~6個の水酸基を有する化合物(Z(OH)n)から全ての水酸基を除いた残基であり、nは化合物(Z(OH)n)の水酸基の数で1~6である。1~6個の水酸基を有する化合物(Z(OH)n)としては、n=1であれば、メタノール、エタノール、ブタノール、n=2であればエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、n=3であればグリセリン、トリメチロールプロパン、n=4であればエリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ジグリセリン、アルキルグリコシド、n=5であればキシリトール、n=6であればジペンタエリスリトール、ソルビトール、イノシトールなどが挙げられる。また、1~6個の水酸基を有する化合物として、これらの混合物を用いても良い。nは好ましくは1~4であり、さらに好ましくは1~3であり、最も好ましくは1である。
【0016】
式(1)において、n=1の場合、Zは炭素数1~24の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基が挙げられる。好ましくはアルキル基またはアルケニル基であり、炭素数1~12のアルキル基またはアルケニル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基が最も好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては直鎖でも分岐でも良いが、直鎖のものがより好ましい。炭素数1~6の直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などを挙げることができる。炭素数1~24の炭化水素基は1種のみでも、2種以上でもよい。
【0017】
POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、a,bはそれぞれPO,EOの平均付加モル数を示す。aは0~100の数を示し、bは1~100の数を示し、cは1~200を示し、a+b+c≧10である。
(PO)/(EO)は、POとEOがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基を示し、POとEOのモル比(b/c)は1/5~5/1、POとEOのランダム率xが0.1≦x≦1である。
【0018】
a+b+cが10未満であると、水中油型皮膚化粧料の塗布時の厚みが不十分になる可能性がある。こうした観点から、a+b+cを10以上とするが、15以上とすることが更に好ましく、50以上とすることが最も好ましい。また、a+b+cが大きくなるにつれて粘度が上昇する。分散・配合のしやすさの観点から、a+b+cは150以下であることが好ましく、120以下であることが更に好ましく、70以下とすることが最も好ましい。また、PO、EOの全平均付加モル数n×(a+b+c)は、30以上とすることが好ましく、40以上とすることが更に好ましく、50以上とすることが最も好ましい。また、100以下とすることが好ましく、80以下とすることがさらに好ましく、70以下とすることが最も好ましい。
【0019】
b/cが1/5未満であると、水中油型皮膚化粧料の塗布時の厚みが不十分になる可能性がある。b/cが5/1以上であると水中油型皮膚化粧料のみずみずしさが不十分になる可能性がある。
【0020】
POとEOのランダム率xは、式(3)より求められる。
x=(b+c)/(a+b+c) ・・・(3)
ランダム率xは0.1≦x≦1とする。ランダム率xが0.1未満になると、水中油型皮膚化粧料の塗布時の厚みが不十分になる可能性がある。0.1以上とするが、0.6以上が更に好ましく、0.8以上とすることが更に好ましく、0.9以上とすることが最も好ましい。また、ランダム率xは1以下であるが、x<1であることが好ましく、0.99以下であることが更に好ましく、0.97以下であることが最も好ましい。
【0021】
本発明のアルキレンオキシド誘導体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、示差屈折率計を用いて得られたクロマトグラムによって得られる分子量で規定される。このクロマトグラムとは、屈折率強度と溶出時間との関係を表すグラフである。
【0022】
本発明の誘導体では、クロマトグラムから得られる重量平均分子量(Mw)とz平均分子量(Mz)の比率Mz/Mwが5≦Mz/Mw≦60である。
【0023】
ここでMw、MzはGPCからそれぞれ下記式によって求められる。
【数1】
【0024】
ただし、Nはポリマー分子の数、Mは分子量、Cは試料濃度である。Mwは、分子量を重みとして用いた加重平均、Mzは、分子量の2乗を重みとして用いた加重平均である。Mwは高分子量の存在に影響を受け、MzはMwよりもさらに大きく高分子量の存在に影響を受ける。そのため本発明のアルキレンオキシド誘導体は図1に示したクロマトグラムのようなMw、Mzが得られる。
【0025】
Mz/Mwが5より小さくなると、塗布時の厚みが損なわれることに加え、保湿感の持続効果が低くなる可能性がある。塗布時の厚みや、保湿感の持続効果を高くするためには、Mz/Mwが20以上であることが好ましく、40以上が更に好ましい。Mz/Mwが60より大きくなると、分子量分布における高分子量側の偏りが大きくなり粘度の上昇などが見られ、各製剤へ分散・配合しにくくなる。この観点から、Mz/Mwが60以下であることが好ましく、50以下であることが更に好ましい。
【0026】
本発明において、Mz/Mwを求めるためのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、システムとしてSHODEX(登録商標) GPC101GPC専用システム、示差屈折率計としてSHODEX RI-71s、ガードカラムとしてSHODEX KF-G、カラムとしてHODEX KF804Lを3本連続装着し、カラム温度40℃、展開溶剤としてテトラヒドロフランを1ml/分の流速で流し、得られた反応物の0.1重量%テトラヒドロフラン溶液0.1mlを注入し、BORWIN GPC計算プログラムを用いて屈折率強度と溶出時間で表されるクロマトグラムを得る。
【0027】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の全量を100重量%としたとき、(A)成分の含有量は、0.1~10質量%とする。(A)成分の含有量が0.1質量%未満では、塗布時の厚みが損なわれることに加え、白浮き抑制効果が低くなるので、0.1質量%以上とするが、1質量%以上が好ましい。また(A)成分の含有量が10質量%を超えるとみずみずしさが失われ、べたつきを生じる可能性があるので、10質量%以下とするが、8質量%以下が好ましい。
【0028】
[(B)成分]
本発明で用いる(B)成分は、炭素数12~22の一価アルコールであり、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、14~22が好ましく、16~22がより好ましい。
【0029】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の全量を100重量%としたとき、(B)成分の含有量は、0.2~10質量%が好ましく、より好ましくは0.2~5質量%である。含有量をこの範囲とすることにより、使用感が良く、高い安定性が得られるという効果がある。含有量が0.2質量%未満であると、十分な安定性が得られない場合があり、10質量%を超えると結晶析出など安定性に影響を及ぼす場合がある。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分である、融点が20~90℃の固形またはペースト状の油剤としては、通常の化粧料に使用可能であれば、その性状や組成等については特に制限されずに使用できる。具体的には固形パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンなどの炭化水素油や、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリン、カルナウバロウ、ホホバ脂、モンタンロウなどのロウ、水添ホホバ油、硬化ヤシ油、水添パーム油、パーム核油、シア脂、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリドなどのエステル油が挙げられるが、使用感等の観点から、特にロウまたは炭化水素油が好ましく、具体的にはミツロウ、ワセリンが好ましい。
【0031】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の全量を100重量%としたとき、(C)成分の含有量は、1~15質量%である。(C)成分の含有量が1質量%未満では、塗布時の厚みが損なわれ、保湿感の持続性も弱くなる。このため、(C)成分の含有量を1.0質量%以上とするが、1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上が更に好ましい。また、(C)成分の含有量が15質量%を超えると、ぬるつきやべたつきを生ずるので、15質量%以下とするが、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0032】
((D)成分)
(D)成分は、HLB3~18かつ炭素数12~24の炭化水素基もしくはHLB3~18かつ炭素数12~24の水酸基含有炭化水素基を有する非イオン性界面活性剤である。
HLBとは、Hyrophile-Lipophile Balanceの略で、界面活性剤の親水基および親油基のバランスを数値化した概念である。一般的に、0から20で示され、数値が高い方が、親水性が高いことを示す。
【0033】
HLBの算出は、Griffinの式により算出する。
【0034】
(D)成分は、熱安定や塗布時の肌なじみの観点から、炭素数12~24の炭化水素基もしくは炭素数12~24の水酸基含有炭化水素基を有する非イオン性(ノニオン)界面活性剤とする。この炭化水素基は、炭素原子と水素原子からなる置換基であり、水酸基含有炭化水素基は、一個以上の水酸基を有する炭化水素基である。
【0035】
(D)成分の炭化水素基または水酸基含有炭化水素基の炭素数としては、16~24がさらに好ましい。炭化水素基もしくは水酸基含有炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、不飽和でも何れでもよい。このような炭化水素基もしくは水酸基含有炭化水素基としては、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、セチル基、イソパルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、オクチルドデシル基、ベヘニル基、ヒドロキシステアリル基やこれらの混合アルキル基が挙げられる。
【0036】
このような条件を満足する非イオン性界面活性剤は、1種または2種以上を用いることができる。中でも、HLBが3以上、10未満のポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤の1種以上と、HLBが10以上、18以下のポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤の1種以上を組み合わせることが特に好ましい。その理由として乳化安定性に優れ、製剤の厚みや伸びを良好にする効果を奏するためである。
【0037】
HLBが3以上、10未満の非イオン性界面活性剤としては、モノイソステアリン酸ジグリセリン(HLB7)、ジイソステアリン酸ジグリセリン(HLB4)、モノオレイン酸ジグリセリン(HLB7)、モノステアリン酸ジグリセリン(HLB7)、モノラウリン酸ソルビタン(HLB8)、モノステアリン酸ソルビタン(HLB7)、モノオレイン酸ソルビタン(HLB7)、セスキオレイン酸ソルビタン(HLB5)などが例示される。
【0038】
HLBが10以上、18以下の非イオン性界面活性剤としては、POE(20モル)ラウリルエーテル(HLB17)、POE(20モル)セチルエーテル(HLB16)、POE(20モル)オレイルエーテル(HLB15)、などのPOEアルキルエーテル型ノニオン;POE(12モル)イソステアリン酸エステル(HLB14)、POE(12モル)オレイン酸エステル(HLB14)、POE(75モル)ステアリン酸エステル(HLB18)などのPOE脂肪酸エステル型ノニオン;POE(20モル)POP(4モル)セチルエーテル(HLB14)などのPOEPOPアルキルエーテル型ノニオン;モノイソステアリン酸POE(60モル)グリセリル(HLB18)、トリイソステアリン酸POE(30モル)グリセリル(HLB12)などのPOEグリセリン脂肪酸エステル型ノニオン;モノラウリン酸POE(20モル)ソルビタン(HLB17)、モノオレイン酸POE(20モル)ソルビタン(HLB16)、モノステアリン酸POE(20モル)ソルビタン(HLB16)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル型ノニオン;テトラオレイン酸POE(60)ソルビトール(HLB14)、テトライソステアリン酸POE(40モル)ソルビトール(HLB13)などのPOEソルビトール脂肪酸エステル型ノニオン;POE(60モル)硬化ヒマシ油(HLB15)、POE(30モル)ヒマシ油(HLB12)などが例示される。
【0039】
HLBが3以上、10未満の非イオン性界面活性剤とHLBが10以上、18以下の非イオン性界面活性剤の配合比率は、重量比として1:10~10:1が好ましく、1:5~5:1が更に好ましい。
である。HLBが10未満の非イオン性界面活性剤の量が、HLBが10以上の非イオン性界面活性剤の量の0.1倍より少ない場合、又は10倍より多い場合には、乳化安定性に劣る。
【0040】
本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の全量を100重量%としたとき、(D)成分の含有量は、0.5~10質量%である。(D)成分の含有量が0.5質量%未満では、塗布時の厚みや安定性が損なわれるので、0.5質量%以上とするが、1質量%以上が好ましい。また、(D)成分の含有量が10質量%
より多いと、ぬるつきなどの原因となり肌なじみが悪く、べたつきを感じる。このため、(D)成分の含有量を10質量%以下とするが、8質量%以下が好ましい。
【0041】
本発明において、塗布時の厚みや、塗布中の白浮きを抑制する効果を付与するためには、上記(A)成分と(C)成分の配合比(A/C)は1/10~5/1の範囲内にあることが好ましく、1/3~2/1の範囲内にあることが更に好ましく、1/2~1/1の範囲内にあることが最も好ましい。
みずみずしさや白浮きを抑制する効果を付与するためには、上記(A)成分と(D)成分の配合比(A/D)は1/10~5/1の範囲内にあることが好ましく、1/5~3/1の範囲内にあることが更に好ましく、1/2~2/1の範囲内にあることが最も好ましい。
【0042】
本発明の皮膚化粧料は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を用い、調製する化粧品や医薬品の種類に応じて適宜調製することができる。例えば、公知の方法により、乳液、クリーム、軟膏、パック、ファンデーション等の皮膚用の化粧品や医薬品などを調製することができる。
【0043】
本発明の皮膚化粧料には、化粧料や医薬品に常用されている添加剤を、本発明の水中油型乳化皮膚化粧料の性能を損なわない範囲で、配合することも可能である。上記(A)~(D)成分に加えて、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤、多価アルコール、糖類、アミノ酸等の保湿剤、水溶性高分子等の増粘剤、ビタミン類、核酸類、動植物抽出物等の生理活性成分、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収・散乱剤、pH調整剤、着色剤、香料等の一般的に化粧料に配合される添加剤を、必要に応じて配合することもできる。この観点からは、本発明の水中油型乳化皮膚化粧料における添加剤の合計量は15質量%以下が好ましく、8%以下がさらに好ましい。
(A)~(D)成分および添加剤の残部は実質的に水である。
【実施例
【0044】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、各種物性値については、下記に示す方法によって測定した。
【0045】
〔(A)成分の調製〕
(合成例1:実施例化合物1の合成)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備した5Lオートクレーブに、プロピレングリコールモノブチルエーテル100gと複合金属シアン化物錯体触媒0.03gを仕込み、窒素置換後、110℃へと昇温し、0.3MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、オキシプロピレン132gを滴下し、反応槽内の圧力と温度の経時的変化を測定したところ、1時間後、反応槽内の圧力が急激に減少した。その後、反応槽内を90℃に保ちながら、0.5MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にオキシプロピレン1054gとオキシエチレン1164gの混合物を滴下した。添加終了後、90℃で1時間反応させ、75~85℃で1時間減圧処理後、ろ過を行った。得られた化合物1について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
【0046】
(合成例2-5:実施例化合物2、3、4、比較例化合物1の合成)
出発原料、オキシプロピレンとオキシエチレンの平均付加モル数、ランダム率以外は、合成例1と同様の方法で化合物を合成した。得られた実施例化合物2~4、比較例化合物1について、ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定を行った。
【0047】
(合成例6:比較例化合物2の合成)
温度計、圧力計、安全弁、窒素ガス吹き込み管、撹拌機、真空排気管、冷却コイル、蒸気ジャケットを装備した5Lオートクレーブに、プロピレングリコールモノブチルエーテル100gと触媒としての水酸化カリウム6.0gを仕込み、窒素置換後、110℃へと昇温し、0.5MPa以下の条件で、窒素ガス吹き込み管より、徐々にオキシプロピレン1186gとオキシエチレン1164gの混合物を滴下した。添加終了後、110℃で1.5時間反応させ、75~85℃で1時間減圧処理後、反応物を5Lナスフラスコに移し、速やかに1N塩酸で中和し、窒素ガス雰囲気下で脱水後、ろ過を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
各実施例化合物,比較例化合物の各クロマトグラムから求められるMz/Mw、化合物の特性を表1に示す。ただし、水酸基価はJIS K-1557-1に準拠して測定したものであり、分子量は水酸基価より算出したものである。
【0050】
(実施例1~7、比較例1~3)
表3に示す配合比率で、以下の方法により水中油型乳化皮膚化粧料を調製した。なお、表3中の共通添加成分は、表2に示す6成分である。
【0051】
すなわち、イオン交換水と共通添加成分からなる水性成分を含めた水相と、(A)成分、(C)成分、(D)成分および共通添加成分からなる油性成分とをそれぞれ混合し、75~80℃に過熱し、ホモミキサーを用いて混合した後に冷却し共通添加成分中の防腐剤を添加して水中油型乳化皮膚化粧料を得た。
【0052】
【表2】
【0053】
得られた皮膚化粧料を用いて、4項目について下記の評価基準により評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0054】
〔評価項目及び評価基準〕
(1) べたつき
10名の男女(25才~48才)をパネラーとし、実施例および比較例の皮膚化粧料各1.0gを右腕前腕内側に中指を用いて塗布した際のべたつきについて、下記評点基準により評価した。10名の合計点を算出し、以下の評価基準により評価した。
(評点基準)
3点: べたつきを感じない
2点: べたつきをわずかに感じる
1点: べたつきを感じる

(評価基準)
◎: 25点以上
○: 20点以上、25未満
△: 20点未満
【0055】
(2) みずみずしさ
10名の男女(25才~48才)をパネラーとし、実施例および比較例の皮膚化粧料各1.0gを右腕前腕内側に中指を用いて塗布した際のみずみずしさについて、下記評点基準により評価した。10名の合計点を算出し、以下の評価基準により評価した。
(評点基準)
3点: みずみずしさを感じる
2点: どちらとも言えない
1点: みずみずしさを感じない

(評価基準)
◎: 25点以上
○: 20点以上、25点未満
△: 20点未満
【0056】
(3) 塗布時の厚み
10名の男女(25才~48才)をパネラーとし、実施例および比較例の皮膚化粧料各1.0gを右腕前腕内側に中指を用いて塗布した直後の厚みについて、下記評点基準により評価した。10名の合計点を算出し、以下の評価基準により評価した。
(評点基準)
3点: 厚みを十分に感じる
2点: 厚みをやや感じる
1点: 厚みを感じられない

(評価基準)
◎: 25点以上
○: 20点以上、25点未満
△: 20点未満
【0057】
(4) 白浮き
人工皮革に、実施例および比較例の皮膚化粧料各50mgを添加し、直径1cmに塗布後、摩擦感テスター(RUBBING TESTER)に人工皮革をセットし、100gの荷重で人工皮革同士を10往復摺合わせた時の白浮きについて、下記評価基準により評価した。
(評点基準)
◎: 白浮きが見られない
○: 白浮きがわずかに見られる
△: 白浮きが見られる
【0058】
【表3】
注1:「ポリソルベート80」(日油(株)社製)
注2:「モノグリMB」(日油(株)社製)
【0059】
表3から明らかなように、実施例1~7は、いずれも塗布直後における厚みが感じられ、肌なじみが良好で、べたつきがなく、また白浮きの抑制効果に優れていた。
【0060】
これに対して、表3から明らかなように、本発明のアルキレンオキシド誘導体に該当しない比較例化合物1、2は、塗布時の厚み、肌なじみ、白浮きの抑制効果すべてを満たすものはなかった。
図1