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特許7265738芳香族アミン系化合物及び光電デバイスにおけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】芳香族アミン系化合物及び光電デバイスにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/88 20060101AFI20230420BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 409/14 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 493/06 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 491/153 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 495/04 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 421/14 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 517/04 20060101ALI20230420BHJP
   C07D 495/22 20060101ALI20230420BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20230420BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20230420BHJP
【FI】
C07D209/88 CSP
C07D405/14
C07D409/14
C07D493/06
C07D403/14
C07D491/153
C07D495/04 101
C07D519/00
C07D421/14
C07D495/14
C07D517/04
C07D495/22
C07F7/10 S
H01L31/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021532165
(86)(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 CN2020109402
(87)【国際公開番号】W WO2021135261
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】202010007667.X
(32)【優先日】2020-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬
(72)【発明者】
【氏名】王 一鳴
(72)【発明者】
【氏名】魏 月芳
(72)【発明者】
【氏名】張 静
(72)【発明者】
【氏名】袁 芸
(72)【発明者】
【氏名】雷 鳴
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105304823(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109503457(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107556239(CN,A)
【文献】特開昭62-280850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N-ジアルキルジカルバゾールアミン官能基で大きい共役系を有するπ単位を修飾してなり、化学構造式が下式(1)~(44)、(46)~(112)のいずれか1つである芳香族アミン系化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(各式中、RはC1~C3のアルキル基である。)
【請求項2】
以下のステップを含む請求項1に記載の芳香族アミン系化合物の製造方法であって、
モル比1:5:0.2:0.4:15でπ共役単位含有化合物、N,N-ジメチルジカルバゾールアミン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びナトリウムtert-ブトキシドをトルエンに加え、窒素ガスの保護下で、撹拌しながら120℃に加熱し、12h反応させ、静置して室温に冷却し、有機溶媒を濾過して除去することで粗生成物を取得し、カラムクロマトグラフィーにより精製して芳香族アミン系化合物を取得することを特徴とする、製造方法。
【請求項3】
前記π共役単位含有化合物は、5,9-ジブロモジナフトフラン、5,9-ジブロモジナフトチオフェン、3,9-ジブロモジオキサアンタントレン、3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセン、2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレン及び18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールのうちのいずれか1種であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
以下のステップを含む請求項1に記載の芳香族アミン系化合物のうち、化学構造式が前記式(7)~(12)、(69)~(112)のいずれか1つである前記芳香族アミン系化合物の製造方法であって、
乾燥した三口丸底フラスコにおいて、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンを超乾燥テトラヒドロフランに溶解し、-78Cに降温し、アルゴンガスの保護下で、注射針を用いて1.5倍当量のn-ブチルリチウムのヘキサン溶液を前記溶液にゆっくりと加え、0.5時間撹拌し、その後、注射器を用いて2倍当量のイソプロポキシボロン酸ピナコールを加え、室温にゆっくりと昇温し、2時間撹拌し、反応終了後、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機相を保留し、カラムクロマトグラフィーにより精製することで中間体である3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラートを取得し、
モル比1:5:0.08:0.08:10でπ共役単位含有化合物、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラート、酢酸パラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びリン酸カリウムをジオキサンと水の混合溶媒に加え、混合溶媒中のジオキサンと水との体積比が5:1であり、アルゴンガスの保護下で、撹拌しながら100℃に加熱し、6h反応させ、静置して室温に冷却し、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機層を保留し、粗生成物を取得し、カラムクロマトグラフィーにより精製して芳香族アミン系化合物を取得することを特徴とする、製造方法。
【請求項5】
化学構造式が前記式(7)~(12)のいずれか1つである前記芳香族アミン系化合物の製造方法であって、
前記π共役単位含有化合物は、5,9-ジブロモジナフトフラン、5,9-ジブロモジナフトチオフェン、3,9-ジブロモジオキサアンタントレン、3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセン、2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレン及び18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールのうちのいずれか1種であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
光電デバイスの製造における請求項1に記載の芳香族アミン系化合物の使用であって、
前記芳香族アミン系化合物が有機正孔輸送材料として光電デバイスの製造に使用されることを特徴とする、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機半導体技術分野に属し、具体的には芳香族アミン系化合物及びその光電デバイスにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機半導体に基づくソリッドステート エレクトロニクスは何十年にもわたって開発されることで、マイクロエレクトロニクスコンポーネントのサイズはマイクロメートルおよびサブマイクロメートルに縮小されているため、集積度をさらに向上させることは困難である。そのため、有機分子領域での電子運動の制御を実現し、さらには分子集合体が特別なデバイスを構成するように光子過程を制御するとの発想が提案され、集積度をさらに改善する道が切り開いた。有機半導体の電子特性、伝導メカニズム、不純物の影響は、従来の無機半導体とは異なるため、有機半導体の化学構造と物性との関係、モデルデバイスの研究・作製は、重要な科学的意義があるだけでなく、巨大な応用の可能性も持っていると考えられている。
【0003】
近年、有機半導体材料の発展は非常に速く、オプトエレクトロニクスや電子部品に広く使用されており、有機感光体(OPCs)、有機エレクトロルミネセントダイオード(OLED)、有機太陽電池(OPV)、有機電界効果トランジスタ(OFETs)、光屈折ホログラフィック撮影等の多くの分野に使用されている。有機半導体は、いくつかの面で無機半導体を補完する性能を示している。主に、半導体材料の基本的な性能をもとに、有機分子の間により柔軟なファンデルワールスの相互作用があることで、柔軟なプラスチックフィルムまたは金属箔上での有機半導体デバイスの製造は可能となり、隣接する原子間の共有結合によって引き起こされる脆くて硬い無機半導体デバイスの欠点を効果的に克服する。有機半導体は、溶解性が良好で、透明度が高く、分子仕立てにより光電性能を調整でき、潜在的な生体適合性を有する等の利点を有する。
【0004】
現在製造された有機光電デバイスにおいて、キャリア生成機能と輸送機能とが分離されることが多く、具体的には、デバイス上では、材料が膜状に積層され、各層が独立して最適な状態になる。有機正孔輸送材料(OHTMs)は有機光電デバイスにおいて非常に重要な役割を果たしている。
【0005】
従来技術では、有機正孔輸送材料は通常2,2’,7,7’-テトラ[N,N-二(4-メトキシフェニル)アミノ]-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-OMeTAD)を使用している。しかし、そのガラス転移温度は低く、加熱条件下で結晶化しやすく、この材料で製造されるデバイスの熱安定性が十分ではない。そのため、コストが低く、安定性が高い新規の有機半導体材料の開発は、デバイスの性能の向上、動作安定性の向上、及び商業化の促進に非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の不足を克服するために、芳香族アミン系化合物及び光電デバイスにおけるその使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
N,N-ジアルキルジカルバゾールアミン官能基で大きい共役系を有するπ単位を修飾してなり、化学構造式が下式(1)~(112)のいずれか1つである芳香族アミン系化合物であるが提供される。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(各式中、RはC1~C3のアルキル基である。)
【0008】
本発明によれば、以下のステップを含む芳香族アミン系化合物の製造方法が提供される。
モル比1:5:0.2:0.4:15でπ共役単位含有化合物、N,N-ジメチルジカルバゾールアミン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びナトリウムtert-ブトキシドをトルエンに加え、窒素ガスの保護下で、撹拌しながら120℃に加熱し、12h反応させ、静置して室温に冷却し、有機溶媒を濾過して除去することで粗生成物を取得し、カラムクロマトグラフィーにより精製して芳香族アミン系化合物を取得する。
【0009】
本発明において、上記π共役単位含有化合物は、5,9-ジブロモジナフトフラン、5,9-ジブロモジナフトチオフェン、3,9-ジブロモジオキサアンタントレン、3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセン、2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレン及び18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールのうちのいずれか1種である。
【0010】
本発明によれば、以下のステップを含む芳香族アミン系化合物の別の製造方法がさらに提供される。
乾燥した三口丸底フラスコにおいて、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンを超乾燥テトラヒドロフランに溶解し、-78Cに降温し、アルゴンガスの保護下で、注射針を用いて1.5倍当量のn-ブチルリチウムのヘキサン溶液を前記溶液にゆっくりと加え、0.5時間撹拌し、その後、注射器を用いて2倍当量のイソプロポキシボロン酸ピナコールを加え、室温にゆっくりと昇温し、2時間撹拌し、反応終了後、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機相を保留し、カラムクロマトグラフィーにより精製することで中間体である3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラートを取得し、
モル比1:5:0.08:0.08:10でπ共役単位含有化合物、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラート、酢酸パラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びリン酸カリウムをジオキサンと水の混合溶媒に加え、混合溶媒中のジオキサンと水との体積比が5:1であり、アルゴンガスの保護下で、撹拌しながら100℃に加熱し、6h反応させ、静置して室温に冷却し、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機層を保留し、粗生成物を取得し、カラムクロマトグラフィーにより精製して芳香族アミン系化合物を取得する。
【0011】
本発明において、上記π共役単位含有化合物は5,9-ジブロモジナフトフラン、5,9-ジブロモジナフトチオフェン、3,9-ジブロモジオキサアンタントレン、3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセン、2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレン及び18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールのうちのいずれか1種である。
【0012】
本発明によれば、芳香族アミン系化合物を有機正孔輸送材料として光電デバイスの製造に使用される芳香族アミン系化合物の使用がさらに提供される。
【0013】
(本発明の原理)
本発明はN,N-ジアルキルジカルバゾールアミン官能基により大きい共役系を有するπ単位を修飾することにより、芳香族アミン系化合物を設計した。本発明に係る半導体材料は、ガラス転移温度が高く、溶解度が高く、成膜性が良好で、膜形態の熱安定性が高く、正孔輸送材料として光電デバイスに使用されて優れた熱安定性を達成することができる。
【発明の効果】
【0014】
従来技術に比べ、本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)本発明の化合物は、製造プロセスが簡単で、原料が入手されやすく、コストが低く、工業生産に適している。
(2)本発明の化合物は、ガラス転移温度が高く、熱安定性が高く、光電デバイスの使用寿命の延長に有利である。
(3)本発明の化合物は、溶解度が高く、高品質のアモルファス膜を形成することができ、光電デバイスにおける使用に有利である。デバイスの光電変換効率が高いため、本発明の化合物は性能に優れた正孔輸送材料であることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】示差走査熱量法により測定された本発明の化合物のガラス転移温度を示す。
図2】本発明の化合物を正孔輸送材料として作製されたペロブスカイト太陽電池の85℃、暗所の条件下での老化安定性のデータ図(横座標:電池劣化時間;縦座標:光電変換効率保有率)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0017】
本発明の目的、技術的解決策、および利点をより明確にするために、以下図面及び実施例により本発明をさらに詳しく説明する。以下の実施例は本発明を解釈するためのものであり、本発明を限定するものではない。また、以下に説明される本発明の各実施形態における技術的特徴は互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0018】
異なるπ共役単位を変更し、N,N-ジメチルジカルバゾールアミン置換基を修飾することにより、以下の化合物を得ることができる。使用されるπ共役単位、及び合成された対応化合物H1~H12を下表に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
<実施例1>
化合物H1の合成
モル比1:5:0.2:0.4:15で5,9-ジブロモジナフトフラン、N,N-ジメチルジカルバゾールアミン、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びナトリウムtert-ブトキシドをトルエンに加え、窒素ガスの保護下で、撹拌しながら120℃に加熱し、12h反応させ、静置して室温に冷却し、有機溶媒を濾過して除去することで粗生成物を取得し、カラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物H1(90%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:9.21(d,J=8.5Hz,2H),8.51(d,J=8.6Hz,2H),7.89-7.79(m,8H),7.65(t,J=7.6Hz,2H),7.56(s,2H),7.35(ddt,J=15.4,8.2,7.7Hz,18H),7.00(t,J=7.5Hz,4H),3.82ppm(d,J=4.9Hz,6H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:156.15,147.45,144.18,142.81,138.57,130.79,129.76,127.81,127.03,126.87,126.48,125.25,124.73,123.83,123.76,121.28,119.33,117.67,116.02,112.67,110.20,109.37,29.29ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C7250O)理論値:1014.4046,測定値:1014.4041。
得られた化合物H1の化学構造式は式(1)に示される。
【0021】
<実施例2>
化合物H2の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに5,9-ジブロモジナフトチオフェンを使用する以外、実施例1と同じ製造方法により、化合物H2(87%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:8.94(d,J=8.5Hz,2H),8.45(d,J=8.4Hz,2H),7.87(dd,J=7.3,5.0Hz,8H),7.65(s,2H),7.55-7.23(m,18H),7.02(t,J=7.4Hz,4H),3.85ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:146.69,144.36,143.04,139.93,138.86,132.53,130.86,129.85,127.60,127.41,126.72,126.21,125.82,124.99,124.33,124.00,121.53,120.18,119.58,116.57,110.46,109.60,29.52ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C7250S)理論値:1030.3818,測定値:1030.3812。
得られた化合物H2の化学構造式は式(2)に示される。
【0022】
<実施例3>
化合物H3の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに3,9-ジブロモジオキサアンタントレンを使用する以外、実施例1と同じ製造方法により、化合物H3(70%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:7.87(d,J=7.7Hz,4H),7.77(d,J=2.0Hz,4H),7.50(d,J=9.4Hz,2H),7.44-7.32(m,12H),7.23(dd,J=8.7,2.2Hz,4H),7.07-7.01(m,4H),6.89(d,J=8.3Hz,2H),6.78(d,J=9.4Hz,2H),6.66ppm(d,J=8.3Hz,2H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:150.14,145.53,143.36,142.70,142.10,140.85,138.32,134.99,128.68,126.34,125.73,124.57,123.70,123.67,123.33,121.13,119.20,117.66,115.29,110.35,109.99,109.25,30.69ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C7248)理論値:1028.3839,測定値:1028.3833。
得られた化合物H3の化学構造式は式(3)に示される。
【0023】
<実施例4>
化合物H4の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセンを使用する以外、実施例1と同じ製造方法により、化合物H4(74%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:8.27(d,J=2.3Hz,4H),8.19(d,J=9.0Hz,4H),7.80(dd,J=4.9,2.9Hz,16H),7.39-7.29(m,16H),7.23(d,J=8.7Hz,8H),7.20-7.09(m,12H),7.04-6.95(m,8H),3.70ppm(s,24H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:147.41,141.60,141.01,137.67,129.74,125.19,125.04,124.16,123.54,123.43,122.69,122.28,120.16,119.24,118.20,117.68,116.71,109.13,108.23,28.18ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C1309212)理論値:1821.7601,測定値:1821.7596。
得られた化合物H4の化学構造式は式(4)に示される。
【0024】
<実施例5>
化合物H5の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレンを使用する以外、実施例1と同じ製造方法により、化合物H5(75%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:7.92(s,8H),7.88(d,J=7.7,8H),7.37(d,J=8.2,8H),7.35-7.16(m,24H),6.97(t,J=7.4,8H),6.92(s,4H),6.87-6.66(m,8H),3.81ppm(s,24H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:148.58,141.60,140.59,137.77,130.98,128.87,125.28,124.74,123.63,122.51,120.24,120.16,119.75,118.33,117.91,117.60,109.06,108.12,27.96ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C1289212)理論値:1797.7601,測定値:1797.7596。
得られた化合物H5の化学構造式は式(5)に示される。
【0025】
<実施例6>
化合物H6の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールを使用する以外、実施例1と同じ製造方法により、化合物H6(85%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:12.40(s,1H),9.28(d,J=8.0Hz,2H),9.22(d,J=8.4Hz,2H),8.79(d,J=8.0Hz,2H),8.51(d,J=8.3Hz,2H),8.03(s,2H),7.83(dd,J=12.1,4.6Hz,8H),7.73-7.55(m,6H),7.45-7.18(m,18H),6.97(t,J=6.8Hz,4H),3.74ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:158.82,154.57,148.71,147.47,146.07,141.55,140.00,133.88,131.43,130.78,130.29,129.76,129.68,129.30,128.61,128.51,127.99,127.13,127.09,126.45,125.07,124.62,122.54,122.37,118.53,118.43,117.78,113.36,112.62,83.02,82.80,82.58,32.63ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C9259)理論値:1293.4730,測定値:1293.4725。
得られた化合物H6の化学構造式は式(6)に示される。
【0026】
<実施例7>
化合物H7の合成
乾燥した三口丸底フラスコにおいて、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンを超乾燥テトラヒドロフランに溶解し、-78Cに降温し、アルゴンガスの保護下で、注射針で1.5倍当量のn-ブチルリチウムのヘキサン溶液を上記溶液にゆっくりと加え、0.5時間撹拌した後、注射器で2倍当量のイソプロポキシボロン酸ピナコールを上記反応系に加え、反応系を室温にゆっくりと昇温し、2時間撹拌し、反応終了後、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機相を保留し、カラムクロマトグラフィーにより精製することで中間体である3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラートを得た。
モル比1:5:0.08:0.08:10で5,9-ジブロモジナフトフラン、3,4-エチレンジオキシチオフェンメチルカルバゾールトリアリールアミンボラート、酢酸パラジウム、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート及びリン酸カリウムをジオキサンと水の混合溶媒に加え、ジオキサンと水との体積比が5:1であり、アルゴンガスの保護下で、撹拌しながら100℃に加熱し、6h反応させ、静置して室温に冷却し、脱イオン水を加え、ジクロロメタンで抽出して分液し、有機相を保留し、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィーにより精製することで化合物H7(60%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:9.21(d,J=8.4Hz,2H),8.42(d,J=8.5Hz,2H),8.00(d,J=1.7Hz,4H),7.99-7.93(m,6H),7.76(t,J=7.6Hz,2H),7.63(d,J=8.7Hz,4H),7.61-7.54(m,2H),7.44(t,J=8.6Hz,8H),7.38(t,J=7.5Hz,8H),7.09(t,J=7.4Hz,4H),7.03(d,J=8.8Hz,4H),4.36(d,J=2.4Hz,4H),4.27(d,J=2.1Hz,4H),3.87ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:155.01,149.89,142.69,141.30,140.60,139.14,138.20,131.94,130.92,129.84,129.73,129.35,129.20,127.58,127.11,126.52,125.79,125.50,124.74,123.63,121.20,120.59,119.94,119.45,119.01,118.63,115.64,111.44,110.27,109.41,65.72,65.54,29.23ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C9666)理論値:1446.4536,測定値:1446.4531。
得られた化合物H7の化学構造式は式(7)に示される。
【0027】
<実施例8>
化合物H8の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに5,9-ジブロモジナフトチオフェンを使用する以外、実施例7と同じ製造方法により化合物H8(60%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:8.94-8.86(m,2H),8.40-8.31(m,2H),8.13(s,2H),8.00(d,J=1.9Hz,4H),7.96(d,J=7.8Hz,4H),7.66-7.60(m,4H),7.56(dd,J=9.3,5.0Hz,4H),7.44(dd,J=8.4,5.1Hz,8H),7.42-7.32(m,8H),7.14-7.05(m,4H),7.02(t,J=5.7Hz,4H),4.41-4.22(m,8H),3.87ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:148.85,141.77,141.69,140.31,139.50,138.14,137.21,130.81,130.68,130.05,129.91,127.64,126.53,125.89,125.47,125.16,124.76,124.65,124.59,123.75,122.76,122.65,120.18,119.60,118.41,117.87,117.61,110.38,109.20,108.35,64.71,64.50,28.18ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C9666)理論値:1463.4341,測定値:1463.4345。
得られた化合物H8の化学構造式は式(8)に示される。
【0028】
<実施例9>
化合物H9の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに3,9-ジブロモジオキサアンタントレンを使用する以外、実施例7と同じ製造方法により化合物H9(45%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:8.36(d,J=7.8Hz,4H),7.87-7.85(m,4H),7.70(d,J=7.5Hz,4H),7.42-7.37(m,16H),7.24(dd,J=8.3,5.2Hz,4H),7.14(s,4H),7.03(d,J=7.8Hz,2H),6.99(d,J=9.0Hz,4H),6.54(d,J=7.2Hz,2H),4.28(d,J=5.0Hz,4H),4.27(d,J=3.5Hz,4H),3.82ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:158.57,148.69,148.51,148.52,145.96,144.34,134.88,132.97,131.11,129.92,128.42,128.16,126.83,125.49,125.18,123.25,122.44,121.78,121.47,119.82,115.33,114.19,114.07,113.74,113.72,111.08,110.49,109.67,109.26,103.33,65.21,65.28,29.90ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C9664)理論値:1461.4362,測定値:1461.4357。
得られた化合物H9の化学構造式は式(9)に示される。
【0029】
<実施例10>
化合物H10の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに3,6,11,14-テトラクロロジベンゾクリセンを使用する以外、実施例7と同じ製造方法により化合物H10(42%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:9.26(s,4H),8.59(d,J=5.0Hz,4H),8.01(d,J=5.1Hz,4H),7.95(s,8H),7.75(d,J=5.0Hz,8H),7.45(t,J=9.9Hz,8H),7.42-7.18(m,32H),7.00(t,J=4.8Hz,8H),6.89(t,J=6.5Hz,8H),4.14(s,16H),3.76ppm(s,24H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:148.60,141.62,140.38,139.55,138.00,137.78,131.53,130.59,129.27,128.86,126.59,125.37,124.73,124.57,124.17,123.65,123.36,122.64,120.27,119.80,118.38,117.49,116.38,113.49,109.18,108.24,64.59,64.44,28.12ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C17812412)理論値:2685.8581,測定値:2685.8576。
得られた化合物H10の化学構造式は式(10)に示される。
【0030】
<実施例11>
化合物H11の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに2,7,10,15-テトラクロロテトラ-o-フェニレンを使用する以外、実施例7と同じ製造方法により化合物11(48%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:8.36(d,J=9.0Hz,8H),7.77-7.60(m,20H),7.42-7.37(m,32H),7.24(dd,J=7.6,4.5Hz,8H),7.14(s,8H),6.99(d,J=8.8Hz,8H),4.28(s,16H),3.77ppm(s,24H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:148.69,148.55,145.97,138.61 135.83,134.83,133.78,129.56,129.07,128.53,128.40,128.18,127.53,126.92,123.21,121.73,121.47,119.87,116.53,114.17,114.08,113.79,112.37,111.06,109.66,109.21,65.35,65.22,29.90ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C17612412)理論値:2661.8581,測定値:2661.8576。
得られた化合物H11の化学構造式は式(11)に示される。
【0031】
<実施例12>
化合物H12の合成
5,9-ジブロモジナフトフランの代わりに18,23-ジブロモビスジナフトフロピロールを使用する以外、実施例7と同じ製造方法により化合物H12(50%収率)を得た。H NMR(600MHz,THF-d)δ:12.50(s,1H),9.37(d,J=8.1Hz,2H),9.28(d,J=8.4Hz,2H),8.89(d,J=7.9Hz,2H),8.41(d,J=8.2Hz,2H),8.38(s,2H),8.00(d,J=1.3Hz,4H),7.92(d,J=7.8Hz,4H),7.85-7.72(m,8H),7.65(d,J=8.8Hz,4H),7.62-7.56(m,4H),7.43-7.32(m,12H),7.09-7.00(m,8H),4.37(d,J=5.0Hz,4H),4.29(d,J=3.5Hz,4H),3.82ppm(s,12H).13C NMR(150MHz,THF-d)δ:154.30,151.33,151.26,150.98,142.81,141.60,140.74,140.69,139.21,137.10,136.87,136.39,136.34,129.69,129.24,129.18,128.28,127.62,127.43,126.57,126.31,125.93,125.22,124.89,123.80,121.70,121.44,121.36,121.28,119.56,118.84,118.62,114.25,113.95,113.91,112.25,112.12,110.33,109.45,106.57,65.89,65.66,29.30ppm.HR-MS(MALDI-TOF)m/z(分子式C11675)理論値:1726.5254,測定値:1726.5249。
得られた化合物H12の化学構造式は式(12)に示される。
【0032】
以上は本発明に係る芳香族アミン系化合物の製造方法の例示である。上記12個の製品以外、構造式(13)-(68)の製品は実施例1の化合物H1の製造方法を参考して製造することができる。構造式(69)-(112)の製品は実施例7の化合物H7の製造方法を参考して製造することができる。当業者は、構造式中のπ共役単位の変化に応じて従来技術により対応反応原料を選択することができる。この内容について上記実施例により例示されたので、ここで説明を省略する。
【0033】
以下、実施例13、実施例14、実施例15により本発明で合成された化合物の光電デバイスにおける正孔輸送層材料としての使用方法及び効果を詳しく説明する。
【0034】
<実施例13>
本発明の化合物が正孔輸送材料としてペロブスカイト太陽電池に使用される。
本発明の化合物を正孔輸送層製造として製造したペロブスカイト太陽電池は、FTOガラス基板、緻密TiO層、多孔質TiO層、ペロブスカイト層、正孔輸送層及び金属電極を含む。FTOガラス基板はガラス基板及びFTO陰極(フッ素ドープ酸化スズガラス電極)から構成され、緻密TiO層及び多孔質TiO層はTiO電子輸送層、ペロブスカイト層は光吸収層である。
【0035】
<実施例14>
ペロブスカイト太陽電池の製造
1)洗浄:まず洗剤でFTOガラス基板の表面に付着した埃等の汚染物を洗浄し、そしてそ水、アセトン及びエタノールをそれぞれ用いて超音波により有機汚染物を除去し、さらに洗浄されたFTOガラス基板を窒素ガスで乾燥させることで、表面がきれいな透明導電性基板を取得し、さらに表面の清潔が保証されるように紫外線-オゾンで30min処理した。
2)緻密TiO層の製造:450℃の条件下で体積比1:9でビス(アセチルアセトニル)ジイソプロピルチタネートをエタノールに溶解し、溶液を噴霧熱分解により清潔なFTOガラス基板に堆積させ、室温に冷却した後、TiO/FTO基板を得た。
3)多孔質TiO層の製造:上記TiO/FTO基板上にTiOスラリーとエタノールで調製された懸濁液(TiOスラリーとエタノールとの質量比1:6)をスピンコーティングした後、100℃で10min乾燥させ、450℃で30min焼成し、多孔質TiO層を形成した。
4)ペロブスカイト層の製造:FAI、PbI、MABr及びPbBr、CsIをDMF:DMSO=4:1(v:v)に混合して(FAPbI0.875(MAPbBr0.075(CsPbI0.05(PbI0.03前駆体溶液を得た。前駆体溶液中のFAI濃度は1.19mol/L、PbI濃度は1.30mol/L、MABr濃度は0.14mol/L、PbBr濃度は0.14mol/L、CsI濃度は0.07mol/Lであった。二段のスピンコーティングによりペロブスカイト層を作成した。二段のスピンコーティングでは、それぞれ2000rpmで10s回転し、5000rpmで30s回転し、2段目のスピンコーティングの最後の15s内でクロロベンゼン逆溶剤を滴下し、その後、基板を120℃で1h乾燥させることで所望なペロブスカイト層を製造した。
5)正孔輸送層の製造:520mg/mLのLiTFSIのアセトニトリル溶液及びTBPをクロロベンゼンに加え、濃度がそれぞれ20mmol/L及び132mmol/Lの混合溶液を得た。N,N-ジアルキルジカルバゾールアミン置換基を含む化合物を上記混合溶液に加え、濃度30mmol/Lの溶液に調製し、その後、溶液を4000rpmで20sスピンコーティングしてペロブスカイト層に堆積させた。
6)真空蒸着室に置き、真空蒸着法により金属電極を正孔輸送層の表面に蒸着することでペロブスカイト太陽電池を製造した。
【0036】
<実施例15>
表2:本発明の化合物を正孔輸送材料として製造されたペロブスカイト太陽電池の光電変換効率
【表2】
【0037】
以上の説明は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。当業者は本発明の技術的解決策の範囲内で本発明の技術的な本質により上記実施例に対して簡単な修正、同等置換及び改良等を加えることができ、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
図2