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特許7265746回動体の保持機構及びこれを用いたダンパーユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】回動体の保持機構及びこれを用いたダンパーユニット
(51)【国際特許分類】
   A47K 13/12 20060101AFI20230420BHJP
   F16F 9/14 20060101ALI20230420BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
A47K13/12
F16F9/14 A
F16C11/04 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018226849
(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公開番号】P2020089446
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236665
【氏名又は名称】不二ラテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】横尾 貴志
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-005813(JP,A)
【文献】特開平08-024161(JP,A)
【文献】特開2002-333048(JP,A)
【文献】特開2004-194772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 13/12
F16F 9/14
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心に回動する回動体を所定の回動位置で保持する回動体の保持機構であって

前記回動軸と連動して軸周りに回転する円柱状の回転部材と、
該回転部材の外面に対向して配置された弾性片と、
前記回転部材の外面から突出する被乗越え部と、
前記回転部材の外面に対向する前記弾性片の内面から突出し前記回転部材の回転に応じ
て前記被乗越え部を前記弾性片の弾性変形により乗り越える乗越え部と、
前記回転部材の外面又は前記弾性片の内面の少なくとも一方に設けられ前記突出による
前記被乗越え部の前記外面に対する段差又は前記乗越え部の前記内面に対する段差を小さ
くして前記乗越え部を前記回転部材の外面側で当接させ又は前記被乗越え部を前記弾性片
の内面側で当接させるための膨出部と、
を備えたことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項2】
請求項1記載の回動体の保持機構であって、
前記膨出部は、前記被乗越え部及び前記乗越え部の少なくとも一方に対し前記回転部材の周方向に近接するにつれて前記段差を漸次小さくするスロープ状である、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回動体の保持機構であって、
前記回転部材を内部に収容し前記回転部材の外周に位置する筒状壁部を備え、
前記弾性片は、前記筒状壁部に前記回転部材の周方向に沿って設けられた一対のスリットにより区画され前記筒状壁部に一体の板バネである、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項4】
請求項3記載の回動体の保持機構であって、
前記乗越え部は、前記弾性片の前記回転部材の周方向での中央部に設けられ、
前記弾性片の中央部及び両端部は、前記弾性片の他の部分に対して板厚が増加され、
前記膨出部は、少なくとも前記乗越え部の両側に設けられ、前記弾性片の中央部の板厚
が増加された部分からなる、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項5】
請求項3又は4記載の回動体の保持機構であって、
前記筒状壁部は、断面円形又は断面楕円形である、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項6】
請求項3~5の何れか一項に記載の回動体の保持機構であって、
前記筒状壁部の開口部に取り付けられる蓋部を備え、
前記筒状壁部と前記蓋部との間には、前記弾性片の変位方向に対する交差方向に隙間が
設けられている、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の回動体の保持機構であって、
前記乗越え部及び被乗越え部は、それぞれ前記回転部材及び前記弾性片とは別体に形成
されると共に前記回転部材及び前記弾性片に支持された耐摩耗性のピンである、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項8】
請求項7記載の回動体の保持機構であって、
前記回転部材及び前記弾性片は、前記ピンを保持する保持凹部を備え、
前記保持凹部の少なくとも一部は、前記膨出部により区画される、
ことを特徴とする回動体の保持機構。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の回動体の保持機構と回転ダンパーとを有するダンパ
ーユニットであって、
前記回転ダンパーは、ダンピングトルクを生じさせる本体部と、該本体部に対して回転
自在に支持されたダンパー軸とを備え、
前記保持機構の回転部材は、前記ダンパー軸に一体回転可能に支持された、
ことを特徴とするダンパーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの便座等の回動体を所定の回動位置に保持するための回動体の保持機構及びこれを用いたダンパーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回動体の保持機構としては、例えば特許文献1に記載の回転ダンパにおける自立機構がある。
【0003】
この自立機構は、回転ダンパのダンパ軸に外表面から突出する長棒からなる第1ニードルを設け、ダンパ軸の外側に嵌め込まれる円筒状の外枠のスリットから内側に突出する長棒からなる第2ニードルを設け、さらに外枠を包囲して第2ニードルを内側に付勢する板状のリングばねを設けている。
【0004】
そして、ダンパ軸が回転して第1ニードルと第2ニードルとが接触すると、リングばねを弾性変形させることにより第2ニードルが第1ニードルを乗り越えるようになっている。
【0005】
これにより、ダンパ軸は、所定のトルクを与えない限り逆回転できず、ダンパ軸に支持された便座等の回動体は、所定の回動位置に保持され、例えば自立した状態となる。
【0006】
かかる自立機構では、第2ニードルが第1ニードルを乗り越える際の節度感をもって回動体を確実に所定の回動位置に保持することができる。
【0007】
しかし、第2ニードルが第1ニードルを乗り越えた際に、第2ニードルがダンパ軸にリングばねの弾性力によって衝突して異音が発生するという問題があった。
【0008】
また、ダンパ軸の外側に嵌め込まれる外枠をさらにリングばねで包囲するため、構造が複雑化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第2739164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、回動体を所定の回動位置で保持するために異音が発生していたと共に構造が複雑化していた点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、異音を抑制すると共に構造を簡素化して回動体を所定の回動位置で保持するために、回動軸を中心に回動する回動体を所定の回動位置で保持する回動体の保持機構であって、前記回動軸と連動して軸周りに回転する円柱状の回転部材と、該回転部材の外面に対向して配置された弾性片と、前記回転部材の外面から突出する被乗越え部と、前記回転部材の外面に対向する前記弾性片の内面から突出し前記回転部材の回転に応じて前記被乗越え部を前記弾性片の弾性変形により乗り越える乗越え部と、前記回転部材の外面又は前記弾性片の内面の少なくとも一方に設けられ前記突出による前記被乗越え部の前記外面に対する段差又は前記乗越え部の前記内面に対する段差を小さくして前記乗り越え部を前記回転部材の外面側で当接させ又は前記被乗越え部を前記弾性片の内面側で当接させるための膨出部とを備えたことを回動体の保持機構の最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、構造を簡素化しつつ回動体を所定の回動位置に保持することができる。しかも、乗越え部が被乗越え部を乗り越えたときに、乗越え部又は被乗越え部が膨出部に当接することによって乗越え部の回転部材への衝突による異音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】回転ダンパーに保持機構を設けたダンパーユニットの正面図である(実施例1)。
図2図1のダンパーユニットのII-II線断面図である(実施例1)。
図3図1のダンパーユニットの右側面図である(実施例1)。
図4図1のダンパーユニットの左側面図である(実施例1)。
図5図2のダンパーユニットのV-V線断面図である(実施例1)。
図6図5の要部拡大図である(実施例1)。
図7図2のダンパーユニットのVII-VII線断面図である(実施例1)。
図8】保持機構を適用したダンパーユニットの断面図である(実施例2)。
図9】保持機構を適用したダンパーユニットの断面図である(実施例3)。
図10】保持機構を適用したダンパーユニットの要部断面図である(実施例4)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
異音を抑制すると共に構造を簡素化して回動体を所定の回動位置で保持するという目的を、回転部材の外面から突出する乗越え部及び弾性片の内面から突出する被乗越え部の少なくとも一方に対し、突出による段差を小さくする膨出部を設けた回転体の保持機構によって実現した。
【0015】
すなわち、回転体の保持機構は、回動軸を中心に回動する回動体を所定の回動位置で保持する回動体の保持機構であって、回動軸と連動して軸周りに回転する円柱状の回転部材と、回転部材の外面に対向して配置された弾性片と、回転部材の外面から突出する被乗越え部と、回転部材の外面に対向する弾性片の内面から突出し回転部材の回転に応じて被乗越え部を弾性片の弾性変形により乗り越える乗越え部と、被乗越え部及び乗越え部の少なくとも一方に対し回転部材の周方向における両側に設けられ被乗越え部及び乗越え部の少なくとも一方の突出による段差を小さくする膨出部とを備えている。
【0016】
膨出部は、被乗越え部及び乗越え部の少なくとも一方に対し周方向に近接するにつれて段差を漸次小さくするスロープ状であってもよい。
【0017】
また、回転部材を内部に収容し回転部材の外周に位置する筒状壁部を備え、弾性片は、筒状壁部に周方向に沿って設けられた一対のスリットにより区画され筒状壁部に一体の板バネである構成であってもよい。
【0018】
乗越え部は、板バネの周方向での中央部に設けられ、板バネの中央部及び両端部は、板バネの他の部分に対して板厚が増加され、膨出部は、少なくとも乗越え部の両側に設けられ、板バネの中央部の板厚が増加された部分からなる構成であってもよい。
【0019】
筒状壁部は、断面円形又は断面楕円形であってもよい。
【0020】
ケースは、筒状壁部の開口部に取り付けられ回転部材の端部を覆う蓋部を備え、筒状壁部と蓋部との間には、弾性片の変位方向に対する交差方向に隙間が設けられている構成であってもよい。
【0021】
乗越え部及び被乗越え部は、それぞれ回転部材及び弾性片とは別体に形成されると共に回転部材及び弾性片に支持された耐摩耗性のピンであってもよい。
【0022】
回転部材及び前記弾性片は、ピンを保持する保持凹部を備え、保持凹部の少なくとも一部は、膨出部により区画される構成であってもよい。
【0023】
回動体の保持機構は、回転ダンパーと共にダンパーユニットを構成してもよい。この場合、回転ダンパーは、ダンピングトルクを生じさせる本体部と、この本体部に対して回転自在に支持されたダンパー軸とを備え、保持機構の回転部材は、ダンパー軸に一体回転可能に支持される。
【実施例1】
【0024】
図1は、回転ダンパーに保持機構を設けたダンパーユニットの正面図、図2は、図1のダンパーユニットのII-II線断面図、図3及び図4は、図1のダンパーユニットの右側面図及び左側面図、図5は、図2のダンパーユニットのV-V線断面図であり、図6は、図5の要部拡大図、図7は、図2のVII-VII線断面図である。
【0025】
本実施例のダンパーユニット1は、図1図7のように、ケース3と、回転ダンパー5と、保持機構7とで構成されている。このダンパーユニット1は、例えば便座や便座カバー等の回動軸を中心に回動する回動体を所定の回動位置で保持し、且つ回動位置から回動前の初期位置に戻る際の回動体の回動を緩やかに行わせるものである。
【0026】
なお、ダンパーユニット1は、便座等の回動体への適用に限られるものではなく、他の回動体への適用も可能である。また、本実施例では、回転ダンパー5と共に保持機構7をダンパーユニット1として適用しているが、回転ダンパー5を省略することも可能である。
【0027】
ケース3は、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン等の樹脂によって形成され、ダンパー保持部9及び保持機構7の筒状壁部11とが軸方向で一体に設けられている。なお、軸方向とは、後述する回転部材15の回転軸Xに沿った方向をいう。本実施例では、回転部材15の回転軸Xが回動体の回転軸と一致している。
【0028】
ダンパー保持部9は、円筒形状に形成され、内部に回転ダンパー5を収容する。ダンパー保持部9の一端は、回転ダンパー5を位置決める一端壁部9aが設けられている。一端壁部9aには、ダンパー保持部9の内外を貫通する開口部9bが形成されている。
【0029】
ダンパー保持部9の他端には、フランジ部13を介して筒状壁部11が一体に設けられている。なお、筒状壁部11については、保持機構7の一部として後述する。
【0030】
回転ダンパー5は、本体部5aからダンパー軸5bが突出して形成されている。本体部5aは、ダンパー軸5bから入力されたトルクに対するダンピングトルクを生じさせる。かかるダンピングトルクにより、回動位置から回動前の初期位置に戻る際の回動体の回動を緩やかに行わせることを可能とする。
【0031】
この本体部5aは、ダンパー保持部9の内部形状に応じた円柱形状に形成され、ダンパー保持部9内に収容されている。本体部5aの一端には、突起部5cが設けられている。突起部5cは、ダンパー保持部9の一端壁部9aの開口部9bに対して挿通により係合している。この係合により、回転ダンパー5の回り止めを行っている。本体部5aの他端には、ダンパー軸5bが設けられている。
【0032】
ダンパー軸5bは、本体部5aに対して回転自在に支持され、回動体の回動に応じたトルクが保持機構7の回転部材15を介して入力される。
【0033】
保持機構7は、回転部材15と、筒状壁部11とを備えている。
【0034】
回転部材15は、回動体の回動軸と連動して軸周りに回転するものである。この回転部材15は、ポリブチレンテレフタレート等の樹脂によって、円柱状に形成されている。回転部材15の外径は、回転ダンパー5の本体部5aの外径とほぼ同一に形成されている。
【0035】
回転部材15は、一端部がダンパー保持部9内に入れ込まれ、径方向において位置決められている。また、回転部材15の一端部は、ダンパー保持部9内で回転ダンパー5の本体部5aに当接している。これにより、回転部材15は、回転ダンパー5をダンパー保持部9の一端壁部9aとの間で位置決めている。
【0036】
回転部材15の一端側の軸心部には、嵌合凹部15aが設けられており、嵌合凹部15a内に回転ダンパー5のダンパー軸5bが嵌合している。これにより、回転部材15は、ダンパー軸5bに一体回転可能に支持されている。
【0037】
回転部材15の他端側の軸心部には、結合軸15bが設けられている。結合軸15bは、回転部材15の他端から突設され、回動体側に結合される。これにより、回転部材15を回動体の回動軸と連動して軸周りに回転可能とする。
【0038】
本実施例のダンパーユニット1では、結合軸15bにより回動体を回転自在に支持するようになっている。ただし、回転部材15は回動体の回転軸と連動すればよいので、結合軸15bは回動体を支持せずに回動体の回転軸と連動するようにギア等によって連結する構成としてもよい。
【0039】
回転部材15の外面には、径方向に突出した凸部15cが設けられている。凸部15cは、ダンパー保持部9の他端側の端面9cに当接しつつ、後述する筒状壁部11の一方のスリット29a内に配置されている。これにより、回転部材15は、スリット29aを利用して軸方向への抜け止めがなされている。
【0040】
また、回転部材15の外面15cには、被乗越え部としての第1ピン17a,17bが設けられている。本実施例では、第1ピン17a,17bが回転部材15の外面15cの周方向で180度ずれた2ヶ所に配置されている。ただし、第1ピン17a,17bは、回転部材15の外面15cの1ヶ所に設けてもよい。
【0041】
各第1ピン17a,17bは、回転部材15とは別体に形成されると共に回転部材15に支持され、回転部材15の外面から径方向に突出した構成となっている。なお、被乗越え部は、第1ピン17a,17bに代えて、回転部材15と一体の突起部として形成することも可能である。従って、被乗越え部は、回転部材15に対する突起部であればよい。
【0042】
第1ピン17a,17bは、耐摩耗性の材料、例えばステンレス等の金属からなり、円柱状に形成されている。なお、第1ピン17a,17bの材質は、樹脂等とすることも可能である。また、第1ピン17a,17bは、球状に形成することも可能である。
【0043】
この第1ピン17a,17bは、回転部材15の外面15cに設けられた保持凹部15dに保持されている。保持凹部15dは、回転部材15の外面15cから径方向に凹状に形成されている。保持凹部15dは、軸方向の一端が閉止され、軸方向の他端が回転部材15の端面15e上に開放されている。また、保持凹部15dの径方向の開口縁部15fは、後述する膨出部19a,19bによって形成されている。これにより、保持凹部15dの一部は、膨出部19a,19bによって区画されている。
【0044】
この保持凹部15dに対し、第1ピン17a,17bは、軸方向で挿入されている。この第1ピン17a,17bは、その一端が保持凹部15dの軸方向の一端に突き当たった状態で、他端が保持凹部15dの端面15eから突出して後述する蓋部41の裏面に対向している。また、径方向において、第1ピン17a,17bは、開口縁部15fから一部が突出している。
【0045】
回転部材15の周方向において、保持凹部15dの両側には、膨出部19a,19bが設けられている。従って、膨出部19a,19bは、被乗越え部である第1ピン17a,17bに対し回転部材15の周方向における両側に設けられている。この膨出部19a,19bは、第1ピン17a,17bの回転部材15の外面15cからの突出による段差を小さくする。
【0046】
本実施例の膨出部19a,19bは、回転部材15と一体に設けられ、第1ピン17a,17bに対して周方向に近接するにつれて段差を漸次小さくするスロープ状に形成されている。なお、膨出部19a,19bは、回転部材15とは別体に設け、回転部材15に結合する構成としてもよい。
【0047】
膨出部19a,19bの膨出量は、後述する異音を低減可能な範囲で適宜変更することが可能である。ただし、膨出部19a,19bの膨出量は、最大でも後述するように第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17bを乗り越える際に、両者が摺動する部分を避けるように設定される。
【0048】
筒状壁部11は、回転部材15を内部に収容し、回転部材15の外周に位置するようになっている。筒状壁部11は、断面楕円形の筒状であり、内部の回転部材15を収容する収容空間Sもほぼ楕円形となっている。なお、筒状壁部11は、断面円形にすることも可能である。
【0049】
本実施例の筒状壁部11は、相互に対向した短径上の円弧部21a,21bと、円弧部21a,21bに隣接して相互に対向した長径上の角部23a,23bとで構成されている。円弧部21a,21bは、それぞれ筒状壁部11の中心を曲率中心とする1/4円の円弧状に形成されている。角部23a,23bは、円弧部21a,21bから相互に交差する方向に延びる連結部25a,25bを円弧部21a,21bよりも曲率半径が小さい弧状部25cによって結合することで構成されている。
【0050】
筒状壁部11の円弧部21a,21bの中央部及び角部23a,23bの弧状部25cは、他の部分に対して板厚が増加している。
【0051】
この筒状壁部11には、弾性片27a,27bが一体に設けられている。
【0052】
弾性片27a,27bは、回転部材15の外面15cに対向して配置されている。本実施例の弾性片27a,27bは、筒状壁部11に周方向に沿って設けられた一対のスリット29a,29bにより区画され、筒状壁部11に一体の板バネとなっている。
【0053】
弾性片27a,27bの周方向の長さは、スリット29a,29bの長さによって設定される。本実施例において、各弾性片27a,27bは、筒状壁部11の円弧部21a,21bから両側の連続する角部23a,23bの連結部25a,25bにわたる部分を、筒状壁部11に設けられたスリット29a,29bによって軸方向両側で切り離した両持ちの板バネ状部分となっている。なお、弾性片27a,27bは、周方向の一端を筒状壁部11から切り離して片持ち状にしてもよい。
【0054】
弾性片27a,27bの周方向の中央部31及び両端部33a,33bは、弾性片27a,27bの他の部分に対して板厚が増加されている。本実施例において、弾性片27a,27bの中央部31は、中央部31に対する周方向の両側から漸次肉厚が増加している。弾性片27a,27bの両端部33a,33bは、それぞれ筒状壁部11の角部23a,23bの弧状部25cにわたって漸次肉厚が増加している。
【0055】
弾性片27a,27bの中央部31には、乗越え部としての第2ピン35a,35bを保持する保持凹部37が形成されている。従って、本実施例では、板バネである弾性片27a,27bの周方向での中央部に第2ピン35a,35bが設けられた構成となっている。
【0056】
保持凹部37は、回転部材15の保持凹部15dと同様に構成され、弾性片27a,27bの内面27cから径方向に凹状に形成されている。保持凹部37の周方向の両側では、弾性片27a,27bの板厚が増加された部分からなる膨出部39a,39bが形成されている。
【0057】
従って、膨出部39a,39bは、第2ピン35a,35bに対して周方向に近接するにつれて第2ピン35a,35bの突出による段差を漸次小さくするスロープ状となっている。また、弾性片27a,27bの保持凹部37は、全体として膨出部39a,39bによって区画されている。
【0058】
この弾性片27a,27bの保持凹部37に対し、第2ピン35a,35bが軸方向で挿入されて保持され、径方向で保持凹部37の開口縁部37aから一部が突出している。
【0059】
従って、第2ピン35a,35bは、回転部材15の外面15cに対向する弾性片27a,27bの内面27cから突出している。この第2ピン35a,35bは、回転部材15の回転に応じて、第1ピン17a,17bを弾性片27a,27bの弾性変形により乗り越える構成となっている。
【0060】
弾性片27a,27bの弾性変形は、筒状壁部11の楕円形状の短径方向に変位することで行われる。
【0061】
なお、第2ピン35a,35bは、第1ピン17a,17bと同一構成となっている。また、乗り越え部としての第2ピン35a,35bも、第1ピン17a,17bと同様、弾性片27a,27bと一体に設けたり、或いは球状等とすることも可能である。従って、乗越え部は、弾性片27a,27bに対する突起部であればよい。
【0062】
第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bを共に球状とする場合は、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの形状や位置決めの精度が要求されるため、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの一方をピン状にするのが好ましい。
【0063】
筒状壁部11は、開口部11aに取り付けられた蓋部41を備えている。蓋部41は、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの抜け止めを行わせる。蓋部41には、係合突起41aが設けられており、係合突起41aは、筒状壁部11のスリット29bに径方向で入り込んで係合している。これにより、本実施例では、スリット29bを利用して蓋部41を固定している。
【0064】
係合突起41aは、軸方向において第2ピン35a,35bに係合して、第2ピン35a,35bの抜け止めを行っている。また、蓋部41は、その裏面が第1ピン17a,17bに隣接し、それら第1ピン17a,17bの抜け止めを行っている。
【0065】
蓋部41と筒状壁部11との間には、弾性片27a,27bの変位方向に対する交差方向に隙間G1,G2が設けられている。弾性片27a,27bの変位方向は、筒状壁部11の短径に沿った方向であり、交差方向は、筒状壁部11の長径に沿った方向である。
【0066】
本実施例では、蓋部41が円形の板状であり、筒状壁部11の開口部11aが楕円形となっており、この形状の相違によって隙間G1,G2が形成されている。
【0067】
[ダンパーユニットの動作]
本実施例のダンパーユニット1は、初期位置にある便座や便座カバー等の回動体を、手動により所定の回動位置まで回動させると、回動体の回動位置が節度感をもって保持される。
【0068】
すなわち、本実施例では、保持機構7の回転部材15が回動体の回動に連動して軸周りに回転し、回動体が所定の回動位置になる直前で、回転部材15の外面15cから突出する第1ピン17a,17bが筒状壁部11の弾性片27a,27bの内面27cから突出する第2ピン35a,35bにそれぞれ周方向で突き当る。
【0069】
そして、所定のトルク以上で回動体をさらに所定の回動位置へと回動させると、第1ピン17a,17bが第2ピン35a,35bを周方向に押圧して弾性片27a,27bを弾性変形させ、この弾性変形によって第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17b上を摺動しつつ乗り越える。
【0070】
こうして、第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17bを乗り越えると、弾性片27a,27bが自身の弾性力によって元の状態に復帰して、回動体が所定の回動位置に保持されることになる。
【0071】
このとき、第1ピン17a,17bを乗り越えた第2ピン35a,35bは、それぞれ膨出部19bにより第1ピン17a,17bの突出による段差が小さくなっているため、回転部材15への衝突による異音を抑制することができる。
【0072】
特に、本実施例では、膨出部19bが第1ピン17a,17bに対し周方向に近接するにつれて徐々に段差を小さくするスロープ状である。
【0073】
従って、第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17bを乗り越えた直後は、第1ピン17a,17bの突出による段差が最も小さく、第2ピン35a,35bが膨出部19bに当接して異音が抑制され、その後は、膨出部19bに沿って第2ピン35a,b35bが異音なく案内されつつ弾性片27a,27bの復帰を許容する。
【0074】
このため、本実施例では、第2ピン35a,35bの回転部材15への衝突による異音を確実に抑制される。
【0075】
しかも、本実施例では、第2ピン35a,35bの膨出部39bにより第2ピン35a,35bの突出による段差も小さくなっているので、第1ピン17a,17bが弾性片27a,27bに衝突することによる異音も抑制できると共に第2ピン35a,35bが回転部材15に衝突することによる異音をより確実に抑制できる。
【0076】
また、膨出部39bも、膨出部19bと同様、第2ピン35a,35bに対し周方向に近接するにつれて徐々に段差を小さくするスロープ状であるため、第1ピン17a,17bを膨出部39bによって案内することで、第1ピン17a,17bの弾性片27a,27bへの衝突による異音を確実に抑制することができる。結果として、第2ピン35a,35bも案内されるので、第2ピン35a,35bの回転部材15への衝突による異音をより確実に抑制できる。
【0077】
また、本実施例では、第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17bを乗り越える際、弾性片27a,27bの中央部31及び両端部33a,33bの板厚が他の部分に対して増加されているので、弾性片27a,27bの変形のバランスが良くなる。
【0078】
また、弾性片27a,27bの応力が高くなる中央部31及び両端部33a,33bの肉厚を増加することによって、弾性片27a,27bの応力の均等化を図ることができる。
【0079】
かかる弾性片27a,27bの変形時には、ケース3の筒状壁部11も変形するが、筒状壁部11は、弾性片27a,27bの変形方向に伸び、変形方向に交差方向に縮むことになる。この交差方向への縮みは、筒状壁部11と蓋部41との間の隙間G1,G2により許容されるので、弾性片27a,27bは、円滑且つ確実に弾性変形することができる。
【0080】
こうして所定の回動位置に回動体が保持された後は、手動により初期位置側に節度感をもって戻されると、回動体の自重によって初期位置側へと回動し、この回動が回転ダンパー5によって緩やかに行われることになる。
【0081】
回動体を所定の回動位置から初期位置側に戻す際は、所定の回動位置まで回動させた場合と逆側の膨出部19a,39aによって異音の発生が抑制される。
【0082】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例のダンパーユニット1に用いられた保持機構7は、回動軸と連動して軸周りに回転する円柱状の回転部材15と、回転部材15の外面15cに対向して配置された弾性片27a,27bと、回転部材15の外面から突出する第1ピン17a,17bと、回転部材15の外面15cに対向する弾性片27a,27bの内面27cから突出し回転部材15の回転に応じて第1ピン17a,17bを弾性片27a,27bの弾性変形により乗り越える第2ピン35a,35bと、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bに対し回転部材15の周方向における両側に設けられ第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの突出による段差を小さくする膨出部19a,19b及び39a,39bとを備えている。
【0083】
従って、本実施例では、構造を簡素化しつつ回動体を所定の回動位置に保持する保持機構7を実現することができる。
【0084】
しかも、本実施例では、第2ピン35a,35bが第1ピン17a,17bを乗り越えたときに、膨出部19a,19b又は39a,39bにより第1ピン17a,17b又は第2ピン35a,35bの突出による段差が小さくなっているため、第1ピン17a,17b又は第2ピン35a,35bが膨出部19a,19b又は39a,39bに当接することによって第2ピン35a,35bが回転部材15への衝突による異音を抑制することができる。
【0085】
また、本実施例では、膨出部19a,19b及び39a,39bが第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bに対し周方向に近接するにつれて徐々に段差を小さくするスロープ状であるため、異音を確実に抑制することができる。
【0086】
また、本実施例の保持機構7は、回転部材15を内部に収容し回転部材15の外周に位置する筒状壁部11を備え、弾性片27a,27bが筒状壁部11に周方向に沿って設けられた一対のスリット29a,29bにより区画され筒状壁部11に一体の板バネである。
【0087】
従って、本実施例では、より確実に構造を簡素化することができる。
【0088】
第2ピン35a,35bは、板バネである弾性片27a,27bの周方向での中央部31に設けられ、弾性片27a,27bの中央部31及び両端部33a,33bは、他の部分に対して板厚が増加され、膨出部39a,39bは、弾性片27a,27bの中央部31の板厚が増加された部分からなる。
【0089】
従って、弾性片27a,27bは、中央部31及び両端部33a,33bの板厚の増加によって、変形のバランスが良くなり、且つ応力の均等化を図ることができる。しかも、弾性片27a,27bの中央部31及び両端部33a,33bの板厚の増加を利用して膨出部39a,39bを形成することができる。
【0090】
本実施例の保持機構7は、筒状壁部11が断面楕円形であるので、省スペース化を実現することができる。
【0091】
ケース3は、筒状壁部11の開口部11aに取り付けられる蓋部41を備え、筒状壁部11と蓋部41との間には、弾性片27a,27bの変位方向に対する交差方向に隙間G1,G2が設けられている。
【0092】
従って、本実施例では、蓋部41を設けても、隙間G1,G2によって弾性片27a,27bの変形を許容することができる。
【0093】
第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bは、それぞれ回転部材15及び弾性片27a,27bとは別体に形成されると共に回転部材15及び弾性片27a,27bに支持された耐摩耗性のピンである。
【0094】
従って、本実施例では、回動体を繰り返し回動させても、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの摩耗を抑制して、所定の回動位置での回動体の保持を確実に行うことができる。
【0095】
回転部材15及び弾性片27a,27bは、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bを保持する保持凹部15d、37を備え、保持凹部15d、37の少なくとも一部は、膨出部15d、37により区画される。
【0096】
従って、本実施例では、第1ピン17a,17b及び第2ピン35a,35bの一部を膨出部19a,19b,39a,39bで受けることができ、応力の分散性を向上することができる。
【0097】
かかる保持機構7を有するダンパーユニット1は、例えば便座や便座カバー等の回動軸を中心に回動する回動体を所定の回動位置で保持し、且つ回動位置から回動前の初期位置に戻る際の回動体の回動を緩やかに行わせることができる。
【実施例2】
【0098】
図8は、本発明の実施例2に係る保持機構を適用したダンパーユニットの断面図であり、図5に対応した断面を示す。なお、実施例2の基本構造は、実施例1と同一であるため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0099】
本実施例のダンパーユニット1は、保持機構7の第1ピン17a,17bの周方向の両側にのみ膨出部19a,19bを設け、第2ピン35a,35bの周方向の両側の膨出部を省略したものである。その他は、実施例1と同様である。
【0100】
かかる構成の実施例2でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0101】
図9は、本発明の実施例3に係る保持機構を適用したダンパーユニットの断面図であり、図5に対応した断面を示す。なお、実施例3の基本構造は、実施例1と同一であるため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0102】
本実施例のダンパーユニット1は、保持機構7の第2ピン35a,35bの周方向の両側にのみ膨出部39a,39bを設け、第1ピン17a,17bの周方向の両側の膨出部を省略したものである。その他は、実施例1と同様である。
【0103】
かかる構成の実施例3でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例4】
【0104】
図10は、本発明の実施例4に係る保持機構を適用したダンパーユニットの要部断面図である。なお、実施例4の基本構造は、実施例1と同一であるため、対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0105】
本実施例のダンパーユニット1は、保持機構7の膨出部19a,19bの形状を多段の階段状にしたものである。階段状の段数は増減可能であり、増加させるほどスロープに近くなる。また、膨出部19a,19bは、一段とすることも可能である。なお、膨出部39a,39bを階段状にすることも可能である。その他は、実施例1と同様である。
【0106】
かかる構成の実施例4でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0107】
7 保持機構
11 筒状壁部
11a 開口部
15 回転部材
15c 外面
15d,37 保持凹部
17a,17b 第1ピン(被乗越え部)
19a,19b 膨出部
27a,27b 弾性片
27c 内面
29a,29b スリット
31 中央部
33a,33b 両端部
35a,35b 第2ピン(乗越え部)
39a,39b 膨出部
41 蓋部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10