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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】乾式分離方法、及び乾式分離装置
(51)【国際特許分類】
   B07B 4/08 20060101AFI20230420BHJP
   B07B 9/00 20060101ALI20230420BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B07B4/08 B
B07B9/00 Z
B07B1/28 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018232455
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020093213
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】320011155
【氏名又は名称】永田エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】久保 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】麦田 耕介
(72)【発明者】
【氏名】図師 竜也
(72)【発明者】
【氏名】中務 真吾
(72)【発明者】
【氏名】白水 清隆
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 徳昭
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-512552(JP,A)
【文献】特開平10-314675(JP,A)
【文献】特開平07-256213(JP,A)
【文献】特開2000-061398(JP,A)
【文献】特開2004-000820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体によって形成される固気流動層を有する本体と、前記固気流動層内へ分離対象物を投入する投入部と、前記分離対象物を前記本体の内部から前記本体の外部に搬送する搬送部であって、前記本体内の前記固気流動層に部分的に覆われ、前記本体の底部に対して傾斜して設けられた搬送部と、少なくとも前記搬送部を振動する振動部と、分離された浮揚物、又は沈降物を回収する回収部と、を備える乾式分離装置であって、前記搬送部は、底面及び側面を備えるトラフ状であり、かつ、前記搬送部は、下流に向かって上り勾配区間を有し、前記粉体を除去するふるい部を備えることを特徴とする乾式分離装置。
【請求項2】
前記ふるい部は、多孔性材料からなる、請求項1記載の乾式分離装置。
【請求項3】
前記多孔性材料は、パンチング板、及び金網の少なくとも一方を含む、請求項2記載の乾式分離装置。
【請求項4】
前記傾斜は、水平に対して2度以上30度以下の値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項5】
前記振動部により振動する前記搬送部の振動方向と、前記上り勾配区間の傾斜面とのなす角度は、2度以上55度以下の値である、請求項1~4のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項6】
前記振動部の振動数は、3Hz以上30Hz以下の値である、請求項1~5のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項7】
前記分離対象物の一辺の長さは、3mm以上100mm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項8】
前記固気流動層において、前記分離対象物中の浮揚物と、沈降物とを分ける仕切り部を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項9】
前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型である請求項1~8のいずれか1項に記載の乾式分離装置。
【請求項10】
粉体を流動化させた固気流動層へ分離対象物を投入し、前記固気流動層の見掛け密度を利用して分離対象物を分離する乾式分離方法であり、
傾斜して設けられ、かつ振動する搬送部によって、前記固気流動層により分離された浮揚物及び/又は沈降物を、搬送し、前記分離された浮揚物、又は沈降物を回収する乾式分離方法であって、前記搬送部は、底面及び側面を備えるトラフ状であり、かつ、前記搬送部は、前記搬送部の下流に向かって上り勾配区間と、前記粉体を除去するふるい部と、を備えることを特徴とする乾式分離方法。
【請求項11】
前記上り勾配区間の傾斜は、水平に対して2度以上30度以下の値である、請求項10記載の乾式分離方法。
【請求項12】
前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型である請求項10又は11に記載の乾式分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式分離方法、及び乾式分離装置に関し、特に、振動を利用した乾式分離方法、及び乾式分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の素材から構成される工業製品、鉱物資源、さらには、産業廃棄物等においては、種々の異なる成分を含んでいる。このような成分毎の分離は、鉱物資源の精製、資源のリサイクル等を行う上で必要である。
【0003】
現在までのところ、分離方法としては主として、湿式分離法及び乾式分離法が知られている。
【0004】
例えば、乾式分離法として、流動化媒体となる粉体に気体を吹き込んで流動層を形成し、固気流動層内に石炭粒子を投入して流動層の見かけ密度より小さい密度の石炭粒子を浮揚させ、大きい密度の石炭粒子を沈降させて分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
このような乾式分離装置は、「連続式」と「バッチ式」の2つの処理方式に大きく分類できる。処理方式は、分離対象物の性状、要求される処理能力や分離精度など、装置の使用条件に基づいて選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-61398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1を含め従来技術においては、ミックスメタルのような「金属片を多く含む分離対象物」を「大量」に分離する、というニーズには、従来の連続式及びバッチ・連続式はどちらも容易に応えることができなかった。従来の連続式は、金属片の稼働部への噛み込みによる過負荷停止や装置損傷の問題があるため、処理そのものが不可能である。
【0008】
また、従来のバッチ式は、複数台の装置を設置することでしか大量の分離に応えることができない。例えば、処理速度5、000kg/hの大量の分離が要求される場合、バッチ式の処理速度が500kg/hであれば、10台のバッチ式装置を設置することになる。
【0009】
そして、連続式及びバッチ式のどちらの処理方式も、浮揚物と沈降物に付着又は随伴する粉体の除去手段と返送手段を備えた付帯設備が必要となる。
【0010】
そこで、本発明は、金属等も含め分離対象物を連続的に分離することが可能であり、かつ、低コストで、環境に優しい乾式分離方法、及び乾式分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、固気流動層を活用し、連続的に回収できる機構について鋭意検討した結果、本発明の乾式分離装置及び乾式分離方法を見出すに至った。
【0012】
すなわち、本発明の乾式分離装置は、粉体によって形成される固気流動層を有する本体と、前記固気流動層内へ分離対象物を投入する投入部と、前記分離対象物を前記本体の内部から前記本体の外部に搬送する搬送部であって、前記本体内の前記固気流動層に部分的に覆われ、前記本体の底部に対して傾斜して設けられた搬送部と、少なくとも前記搬送部を振動する振動部と、分離された浮揚物、又は沈降物を回収する回収部と、を備える乾式分離装置であって、前記搬送部は、底面及び側面を備えるトラフ状であり、かつ、前記搬送部は、下流に向かって上り勾配区間を有し、前記粉体を除去するふるい部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記ふるい部は、多孔性材料からなることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記多孔性材料は、パンチング板、及び金網の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記傾斜は、水平に対して2度以上30度以下の値であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記振動部により振動する前記搬送部の振動方向と、前記上り勾配区間の傾斜面とのなす角度は、2度以上55度以下の値であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記振動部の振動数は、3Hz以上30Hz以下の値であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記分離対象物の一辺の長さは、3mm以上100mm以下であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層において、前記分離対象物中の浮揚物と、沈降物とを分ける仕切り部を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の乾式分離方法は、粉体を流動化させた固気流動層へ分離対象物を投入し、前記固気流動層の見掛け密度を利用して分離対象物を分離する乾式分離方法であり、
傾斜して設けられ、かつ振動する搬送部によって、前記固気流動層により分離された浮揚物及び/又は沈降物を、搬送し、前記分離された浮揚物、又は沈降物を回収する乾式分離方法であって、前記搬送部は、底面及び側面を備えるトラフ状であり、かつ、前記搬送部は、前記搬送部の下流に向かって上り勾配区間と、前記粉体を除去するふるい部と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記上り勾配区間の傾斜は、水平に対して2度以上30度以下の値であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置コストが安価で、効率が高く、廃液処理や分離後の乾燥工程が不要であって、環境への影響もほとんどないという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、いわゆる乾式分離であるため、水資源の少ないところでも利用することができる。また、本発明によれば、金属片を多く含む分離対象物を大量に分離可能であり、流動化媒体となる粉体の除去手段と返送手段とを備えた従来の付帯設備を省略できるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第一実施例の概略的な全体図を示す。
図2】本発明の第一実施例の概略的な側面図を示す。
図3】本発明の第二実施例の概略的な全体図を示す。
図4】本発明の第二実施例の概略的な側面図を示す。
図5】本発明の第三実施例の概略的な全体図を示す。
図6】本発明の第三実施例の概略的な側面図を示す。
図7】本発明の一実施態様において、分離対象物が斜面を上る仕組みを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の分離の原理について説明すると、以下のようになる。すなわち、粉体を流動化させ、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、言い換えれば固気流動層(以下では、単に流動層ともいう。)を利用し、分離対象物を、主としてその密度によって、分離対象物を分離しようとするものである。
【0032】
まず、固気流動層による分離の概念を以下に説明する。粉体に気体を送り浮遊流動化させた場合、粉体からなる流動層は、液体と同様の挙動を示す。従って、流動層の見掛け密度ρfbは下記の式で表される。
【0033】
ρfb=Wp /Vf =(1-εf )ρp
ここでWp は流動化媒体の粉体重量、Vf は流動化時の体積、εf は流動化時の空隙率、ρp は流動化媒体の粉体密度である。
【0034】
このような見掛け密度ρfbを有する流動層中に密度ρs の分離対象物を混在させたとき、ρs <ρfbの分離対象物成分は流動層上部に浮揚し、ρs >ρfbの当該分離対象物成分は流動層下部に沈降する。そしてρs =ρfbの当該分離対象物成分は流動層中間部を浮遊する。このことを利用して分離対象物の比重選別を行うのである。
【0035】
連続式、及びバッチ式の各処理方式の概要は以下のとおりである。
【0036】
<連続式処理機構の要点>
(1)流動層へ投入された分離対象物は撹拌機によって撹拌され供給される。
(2)供給されたもののうち、浮遊物はスクレーパーコンベヤ方式の浮揚物搬送機によって移動する。移動した浮揚物は回収手段によって回収され、装置外へ排出される。
(3)一方、供給されたものの内、沈降物はネットコンベヤ方式の沈降物搬送機によって、浮揚物とは逆方向へ移動し、装置外へ排出される。
(4)排出された浮揚物と沈降物には流動化媒体となる粉体が付着または随伴している。粉体は振動フルイで除去され、返送装置によって流動層へ返送される。
(5)これらの機構によって分離対象物は浮揚物と沈降物に連続的に分離される。
【0037】
<連続式処理機構の特徴>
・バッチ式に比べて処理能力が高く、大量処理に適している。
・石炭、鉄鉱石等の鉱石、自動車シュレッダーダストや家電シュレッダーダスト中の破砕混合プラスチックなど、あらゆるものを処理できる
・しかしながら、稼働部への噛み込みにより過負荷停止や装置損傷を引き起こすもととなる金属片を多く含む分離対象物、例えば自動車シュレッダーダストなどに由来する破砕混合非鉄金属(ミックスメタル)は処理することができない。
【0038】
<バッチ式処理機構の要点>
(1)分離対象物が選別カゴへ投入され、次いで選別カゴは流動層内部へ下降する。
(2)流動層の中で分離対象物は浮沈分離する。その後、分離手段として分離シャッターを閉じて浮揚物と沈降物に分離した後、選別カゴを排出位置へ移動する。
(3)選別カゴの底部を開いて沈降物を排出し、次いで分離シャッターを開いて浮揚物を排出することによって、浮揚物と沈降物を別々に回収できる。
(4)また、浮揚物の回収手段を分離シャッターを用いた自動方式でなく、多孔性のレードル(網杓子など)を用いてすくって回収する人力回収方式に置き換えることもできる。
(5)排出された浮揚物と沈降物には流動化媒体となる粉体が付着または随伴している。粉体は振動フルイで除去され、返送装置または人力によって流動層へ返送される。
(6)これらの機構によって分離対象物は浮揚物と沈降物に分離される。
【0039】
<バッチ式処理機構の特徴>
・回収装置等の稼働部の影響を受けることなく分離が行われるため、連続式と比べて分離精度が高い。従って、高い分離精度が要求される場合に適している。
・分離対象物が噛み込み難い回収機構であるため、金属が多く含まれる分離対象物の処理が可能である。
・処理能力が比較的小さいため、石炭、鉄鉱石等の鉱石等、特に大量処理が求められる場面には不向きである。(バッチ式連続装置の限界)
【0040】
本発明者らは、上述のような連続式及びバッチ式の利点を保有したまま、大容量の分離対象物を大量に処理することを達成するにはどうするかを検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0041】
すなわち、本発明の乾式分離方法は、粉体によって形成される固気流動層を有する本体と、前記固気流動層内へ分離対象物を投入する投入部と、前記分離対象物を前記本体の内部から前記本体の外部に搬送する搬送部であって、前記本体内の前記固気流動層に部分的に覆われ、前記本体の底部に対して傾斜して設けられた搬送部と、少なくとも前記搬送部を振動する振動部と、を備えることを特徴とする。本発明における前記固気流動層は、少なくとも、分離対象物の浮沈分離を行う作用をなすことができる。前記固気流動層を有する本体は、特に限定されず、粉体を収容でき、固気流動層を形成可能であれば足りる。本発明における前記投入部は、分離対象物を供給することができ、その位置、サイズ等も特に限定されない。本発明において、搬送部は、前記分離対象物を前記本体の内部から前記本体の外部に搬送する搬送部であって、前記本体内の前記固気流動層に部分的に覆われ、前記本体の底部に対して傾斜して設けられていれば足り、特に限定されない。前記本体の底部に対して傾斜して設けることとしたのは、傾斜により、前記粉体と分離対象物とを、首尾よく分離するためである。すなわち、後述する振動部のおかげで、分離対象物は、傾斜を上ることが可能であり、前記流動層の外部に搬送された後は、回収可能となる。
【0042】
分離対象物が斜面を上る仕組みは次の通りである。今、振動面が水平で、振動面と角度α(0度<α<90度)の方向に振動する水平型の振動コンベヤを考える。振動面上の物体は振動によって周期的な力を受け、物体の前方への飛び上がりと着下の繰り返しにより物体は振動面を搬送される。ここに、振動面を水平に対して角度βに傾斜させ、振動面と角度γの方向に振動させる(但し、0度<(β+γ)<90度とし、物体が飛び上がって着下する際に反発が起こらない場合を考える)と、概念的には次式の条件において振動面上の物体は傾斜をより効率的に上ることが可能となる。
Fvsinβ+Fhsinβ > Ff + Gsinβ
ここで、Fvは振動面上の物体に働く鉛直方向の慣性力成分、Fhは水平方向の慣性力成分、Ffは物体に働く摩擦力、Gは重力である(図7を参照)。すなわち、本発明では、慣性力が支配的となる左辺が摩擦力と重力が支配的となる右辺よりも大きくなるように振動と傾斜を設計することで、より効率的に分離対象物は傾斜を上ることが可能である。
【0043】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記搬送部は、底面及び側面を備えるトラフ状であることを特徴とする。ここで、「トラフ」とは、谷、船底や樋のような溝の形状を広く意味するものとするが、特定の溝に限定することを意図しない。上記搬送部において、浮揚した浮揚物、沈降した沈降物を含め分離対象物は、トラフの上り勾配区間を上ることが可能である。
搬送部の底部へ沈降した沈降物は、振動によりトラフ水平区間において水平方向に移動することも可能である。その後、沈降物は、トラフ上り勾配区間を上り、トラフ上り勾配区間において流動層内部から取り出されることができる。
【0044】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記搬送部は、粉体と、分離対象物とをより分離するという観点から、前記粉体を除去するふるい部を備えることを特徴とする。ふるい部は、粉体は通過させることができるが、分離対象物は通過させないものであれば、特に限定されない。ふるい部の目の粗さは、分離する分離対象物によって適宜選択、設計することが可能である。
【0045】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記ふるい部は、多孔性材料からなることを特徴とする。また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記多孔性材料は、パンチング板、及び金網の少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0046】
また、本発明において、当該搬送部は、搬送された浮揚物と当該搬送部の底部へ沈降した沈降物とを装置外の回収箇所へさらに搬送する多孔部を備えるトラフ状の部分を有する振動コンベヤを備えてもよい。
【0047】
ここで、本発明においては、搬送部のみを振動させることができる。搬送部をコンベアやスクリーンとしてもよい。その他の(固気)流動層を装入した容器、空気室、攪拌機浮揚物搬送機等は振動しないこととすることができる。そして、流動層から浮揚物と沈降物を取り出せるよう、振動コンベヤの一部は流動層の内部へ浸るように設計することができる。
【0048】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、分離された対象物を回収する回収部をさらに備えることを特徴とする。分離された対象物を回収する回収部は、分離された浮揚物、又は沈降物を回収することができる限り、特に限定されない。
【0049】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層の内部で浮沈分離された浮揚物と沈降物を前記固気流動層の外部へ搬送する、すなわち前記固気流動層から取り出すという観点から、前記搬送部は、下流に向かって上り勾配区間を有することを特徴する。当該下流に向かって上り勾配区間によって、分離対象物を下流に送り、自重により粉体を首尾よく分離することができる。
【0050】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層から浮揚物と沈降物を確実にかつ速やかに取り出すという観点から前記傾斜は、好ましくは、水平に対して1度以上40度以下の値であり、より好ましくは、2度以上30度以下の値であり、さらに好ましくは、6度以上9度以下の値であることを特徴とする。
【0051】
また、本発明において、前記振動部により振動する前記搬送部の振動方向については、特に限定されない。本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層から浮揚物と沈降物を確実にかつ速やかに取り出すという観点から、前記振動部により振動する前記搬送部の振動方向と、前記上り勾配区間の傾斜面とのなす角度は、好ましくは、1度以上80度以下の値であり、より好ましくは、2度以上55度以下の値であることを特徴とする。
【0052】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層から浮揚物と沈降物を確実にかつ速やかに取り出すという観点から、前記振動部の振動数は、好ましくは、1Hz以上60Hz以下の値、より好ましくは、3Hz以上30Hz以下の値であることを特徴とする。
【0053】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層の内部での浮沈分離を精度良く行うという観点から、前記分離対象物の一辺の長さは、好ましくは、3mm以上150mm以下、より好ましくは、3mm以上100mm以下であることを特徴とする。
【0054】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記固気流動層において、浮揚物と、沈降物とをより確実に分離する、すなわち沈下した沈降物が流動層上部へ移動し、浮揚物へ混ざることをより防止するという観点から、前記分離対象物中の浮揚物と、沈降物とを分ける仕切り部を有することを特徴とする。
【0055】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型であることを特徴とする。前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型の場合、振動部を小型化可能であり、又は独立型の場合には、各々の振動部が必要になるかもしれないが、浮揚物と沈降物とのより精度の高い分離が可能となる。このように、本発明の乾式分離装置において、浮揚物の搬送用の部分と、沈降物の搬送用の部分とが別々に独立した構成であってもよく、両部分が一体の構成であってもよい。
【0056】
なお、本発明において、分離対象物についても特に限定されないが、例えば、金属片、金属片を含むメタルミックス、自動車シュレダーダスト、家電シュレッダーダスト、及びこれら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースを挙げることができる。特に、本発明においては、分離対象物の噛み込みの問題を解決できるため、分離対象物として、金属片、金属片を含むメタルミックスを挙げることができる。なお、分離対象物の浮揚物と沈降物に付着または随伴した流動媒体は、搬送部によって篩い落とされ、装置外への流動媒体の排出を限りなく抑えることができる。
【0057】
また、好ましい実施態様において、固気流動層を形成するための気体の導入を、多孔性材料からなる気体分散板を介して行うことを特徴とする。また、好ましくは、多孔性材料が、パンチング板である。
【0058】
また、本発明においては、固気流動層を形成するための気体の通気性、空塔速度等については常法により特に限定されない。
【0059】
また、本発明において、粉体の種類についても、分離する分離対象物の種類により特に限定されないが、例えば、粉体を、ユニビーズ、ガラスビーズ、ジルコンサンド、ポリスチレン粒子、砂、スチールショット、シリカサンド、アルミナサンド、及びこれら同程度の密度を有する粉体からなる群から選択される少なくとも1種とすることができる。
【0060】
また、本発明において、使用する粉体の平均粒径についても特に限定されないが、粉体の流動化を比較的小さな空塔速度で行うことと、付着性に起因する粉体の凝集を抑制するという観点から、50~700μm、好ましくは、30~500μmとすることができる。
【0061】
なお、本発明の乾式分離装置は、供給された分離対象物を上記流動層内で攪拌する撹拌部をさらに備えてもよい。そして上記搬送部により、流動層の表層に動いてきた浮揚物を水平方向へ搬送するようにしてもよい。
【0062】
次に、本発明の乾式分離方法の一例について説明すれば以下の通りである。本発明の乾式分離方法は、粉体を流動化させた固気流動層へ分離対象物を投入し、前記固気流動層の見掛け密度を利用して分離対象物を分離する乾式分離方法であり、傾斜して設けられ、かつ振動する搬送部によって、前記固気流動層により分離された浮揚物及び沈降物の少なくとも一方を、搬送することを特徴とする。本発明の乾式分離方法において、粉体、固気流動層、搬送部については、上述の本発明の乾式分離装置における説明と同様である。振動する搬送部についても、振動すれば足り、特に限定されない。振動方向等についても、上述の本発明の乾式分離装置における説明と同様であり、適宜説明を参照することができる。
【0063】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記搬送部は、前記搬送部の下流に向かって上り勾配区間を少なくとも備えることを特徴とする。当該下流に向かって上り勾配区間によって、分離対象物を下流に送り、自重により粉体を首尾よく分離することができる。
【0064】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記上り勾配区間の傾斜は、前記固気流動層から浮揚物と沈降物を確実にかつ速やかに取り出すという観点から、好ましくは、水平に対して1度以上40度以下の値であり、2度以上30度以下の値であり、さらに好ましくは、6度以上9度以下の値であることを特徴とする。
【0065】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記搬送部は、前記分離対象物中の浮揚物と沈降物の搬送用に、一体型又は独立型であることを特徴とする。一体型又は独立型等についても、上述の本発明の乾式分離装置における説明と同様であり、適宜説明を参照することができる。
【0066】
次に、本発明の乾式分離装置の実施例を添付図面に基づいて説明する。本発明を実施例により具体的に説明するが、下記実施例に限定して本発明が解釈されることを意図しない。
【実施例
【0067】
図1及び図2は、本発明の第一の実施例を示す。図1において、12は振動トラフ、14はふるい部、20は投入装置(投入部)、50は振動部、60は回収部、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。図2において、13は振動トラフ、14はふるい部(この例では、振動トラフ側面もふるい部を構成している。)、20は投入装置(投入部)、22は原料投入部、40は 空気室(気体室)、42は空気(気体)、50は振動部、60は回収部、62は浮遊物、64は沈下物、70は横送り装置、82は固気流動層の疑似液面、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。
【0068】
分離対象物を、投入装置20から原料投入22する。乾式分離装置100には、疑似液面82の流動層が予め格納されていて、振動トラフ12などの搬送部が部分的に流動層で覆われている。振動トラフ側面13は、搬送部の一部であり、パンチングメタル又は金網などから構成されるふるい部14を備えてもよい。乾式分離装置100の投入装置20の下流に、横送り装置70、振動部50、回収部60が、一例としてこの順で設けられる。
【0069】
また、乾式分離装置100の搬送部の下側には、流動層に向かって気体(空気(気体)42)を流入する空気室(気体室)40を備える。図の空気室40から、空気を噴き上げることにより固気流動層を形成することが可能となっている。空気室40は、複数個の部屋から構成されていて、安定した流動層を形成する。
【0070】
この例では、例えば、浮揚物と沈降物を流動層から取り出せるよう、振動コンベヤのトラフは上り勾配区間を備えている。振動コンベヤの振動の方向は、浮揚物と沈降物が振動の作用のみによってトラフの上り勾配区間を上ることができるように設計される。振動コンベヤのトラフの底面は、全面に渡って多孔性材料からなるものとしてもよい。多孔性材料としては、パンチングメタル、金網などを使用できる。
【0071】
多孔性材料の開孔サイズは、分離対象物は通過せずに流動化媒体となる粉体のみが通過するように設計してもよい。これにより、流動媒体と分離対象物の分離が可能となり、分離産物をあらためてスクリーニングする必要をなくせる。
【0072】
トラフ底面が多孔質材料である目的は例えば2つある。1つは流動層に浸かっているトラフ水平区間が流動化を阻害しないこと。もう1つは、トラフ上り勾配区間で浮揚物と沈降物に付着又は随伴する粉体を除去するためである。
【0073】
振動コンベヤは、浮揚物と沈降物を1台のユニットで同時に搬送可能な2段トラフ構造としてもよい。1段トラフ構造の2台のユニットで浮揚物と沈降物を別々に搬送する構造でもよい。
【0074】
振動コンベヤの振動発生器は、振動モータ又はクランク機構のどちらかを選択してもよい。
【0075】
攪拌機は、分離対象物の性状によっては省略できる。
【0076】
浮揚物搬送機は、スクレーパーコンベヤ、スキンマ、など表層を漂う浮揚物を水平方向へ搬送できればどのような搬送方式でもよいし、分離対象物の性状によっては省略することもできる。例えば、浮沈分離に必要な時間が極めて短い分離対象物を分離する場合、分離区間を極力短くすることができ、この場合は浮揚物搬送機を省略できる。
【0077】
乾式分離装置100において、分離対象物は、例えば次のように処理される。
(1)流動層内へ分離対象物が供給され、必要により、その後攪拌機により分離対象物は撹拌される。
(2)分離対象物は流動層内で浮沈分離する。
(3)流動層の表層(疑似液面82からの層)を漂う、分離対象物の浮揚物は横送り装置70などの浮揚物搬送機によって水平方向へ移動する。
(4)浮揚物は、振動コンベヤなどの振動トラフ12の振動の作用によって流動層内部から取り出される。
(5)搬送部の底部へ沈降した沈降物は、振動コンベヤの振動の作用によりトラフ水平区間において水平方向に移動する。
(6)浮揚物及び沈降物は、搬送部のトラフの上り勾配区間を上る。
(7)分離対象物の浮揚物及び沈降物に付着又は随伴した流動媒体が振動コンベヤによって除去される。
(8)分離対象物は、分離された浮揚物62及び沈下物64として、装置外へ排出される。この例においては、搬送部である振動トラフは、2段トラフ構造になっており、上段は、浮揚物を回収可能であり、下段は、沈降物を回収可能となっている。
【0078】
なお、この実施例において、横送り装置70を二か所設けた構成を示すが、横送り装置70の設置数は、二か所に限定されない。
【0079】
図3は、本発明の第二の実施例の概略的な全体図を示す。12は振動トラフ、14はふるい部、20は投入装置(投入部)、60は回収部、90は浮遊物かき上げ装置、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。すなわち、図3は、本発明の乾式分離装置100の全体を示す。図4は、本発明の第二の実施例の乾式分離装置100の側面を示す。図4において、13は振動トラフ側面、14はふるい部、20は投入装置(投入部)、22は原料投入部、40は空気室(気体室)、42は空気(気体)、50は振動部、62は浮遊物、64は沈下物、70は横送り装置、82は固気流動層の疑似液面、90は浮遊物かき上げ装置、91は仕切り部、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。なお、この例では、ふるい部14は、振動トラフ側面に設けているが、この他振動トラフの底部に設けてもよく、振動トラフの側面のみ、又は振動トラフの底部のみに設けてもよい。
【0080】
まず、分離対象物を、投入装置20から原料投入22する。乾式分離装置100には、疑似液面82の流動層が予め格納されていて、搬送部が部分的に流動層で覆われている。振動トラフ側面13は、搬送部の一部であり、パンチングメタル又は金網などのふるい部14を備えてもよい。乾式分離装置100の投入装置20の下流に、横送り装置70、浮揚物かき上げ装置90、振動部50、回収部60が、一例としてこの順で設けられる。
【0081】
乾式分離装置100の搬送部の下側には、流動層に向かって気体(空気42)を流入する空気室40を備える。
【0082】
乾式分離装置100において、分離対象物は、例えば次のように処理される。
(1)流動層内へ分離対象物が供給され、その後攪拌機により分離対象物は撹拌される。
(2)分離対象物は流動層内で浮沈分離する。横送り装置70などがあれば、分離対象物の回収方向への誘導を容易にする。また、浮揚物かき上げ装置90などによって、浮揚物を回収用の搬送部へ誘導することも可能である。また、仕切り部91は、浮揚物と沈降物との分離をより確実にする。すなわち、沈下した沈降物が流動層上部へ移動し、浮揚物と混ざることをより防止することができる。
(3)流動層の表層(疑似液面82からの層)を漂う、分離対象物の浮揚物は横送り装置70などの浮揚物搬送機によって水平方向へ移動する。
(4)浮揚物は、振動コンベヤなどの振動トラフ12の振動の作用によって流動層内部から取り出される。
(5)搬送部の底部へ沈降した沈降物は、振動コンベヤの振動の作用によりトラフ水平区間において水平方向に移動する。
(6)浮揚物及び沈降物は、搬送部のトラフの上り勾配区間を上る。
(7)分離対象物の浮揚物及び沈降物に付着又は随伴した流動媒体が振動コンベヤによって除去される。
(8)分離対象物は、分離された浮揚物62及び沈下物64として、装置外へ排出される。
【0083】
次に、図5は、本発明の第三の実施例の全体を示し、図6は、第三の実施例の側面を示す。図5において、16は浮遊物搬送コンベヤ、18は沈下物搬送コンベヤ、20は投入装置(投入部)、50は振動部、60は回収部、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。図6において、16は浮遊物搬送コンベヤ(搬送部)、18は沈下物搬送コンベヤ(搬送部)、20は投入装置(投入部)、22は 原料投入部、40は空気室(気体室)、42は空気(気体)、50は振動部、62は浮遊物、64は沈下物、70は横送り装置、100は乾式分離装置を、それぞれ示す。
【0084】
この実施例では、搬送部は、浮揚物搬送コンベヤ16と、沈下物搬送コンベヤ18とを備えた構成である。このように所望の効果の範囲で、浮揚物搬送コンベヤ16と、沈下物搬送コンベヤとは、それぞれ独立した構成としても、一体とした構成としてもよい。なお、一体型の例は、上述した実施例の態様のものである。
【0085】
流動層の表層に動いてきた浮揚物は、横送り装置70の表層に及ぼす作用により、浮揚物搬送コンベヤ16を上る(図6の左方向)。一方、沈降物(沈下物)は、流動層の表層ではなく、底層に沈下してくるものであるから、横送り装置70の作用を受けず、沈下物搬送コンベヤ18を上る(図6の右方向)。図6に示すように、分離された浮揚物62と、沈下物64とのそれぞれに、回収部を設けてもよい。
【0086】
図5及び図6は、振動部50を、浮揚物搬送コンベヤ16と、沈下物搬送コンベヤ18とのそれぞれに設けた例を示すが、分離対象物を分離する効果の範囲で、設置する振動部50の個数は、特に限定されない。
【0087】
ここで、上記の実施例1から実施例3の共通事項は、次のとおりである。
【0088】
粉体を流動化させた固気流動層へ分離対象物を投入し、固気流動層へ分散させた気体を導入し、固気流動層の見掛け密度を利用して分離対象物を分離する乾式分離方装置及び乾式分離方法である。浮揚物と沈降物の搬送と回収は、好ましくは多孔性材料からなるトラフを有した、振動コンベヤ(搬送部)を介する。
【0089】
乾式分離装置100では、振動コンベヤのみが振動する。その他の固気流動層を装入した容器、空気室、攪拌機浮揚物搬送機等は振動しない。そして、流動層から浮揚物と沈降物を取り出せるよう、振動コンベヤの一部は流動層の内部へ浸かっている。
【0090】
好ましくは、振動コンベヤは分離対象物に付着及び随伴した粉体を篩い除去する機能を兼ね備える。そして、振動コンベヤは、浮揚物と沈降物を1台のユニットで同時に搬送可能な2段トラフ構造としてもよい。1段トラフ構造の2台のユニットで浮揚物と沈降物を別々に搬送する構造でもよい。
【0091】
振動コンベヤに用いる多孔性材料は、好ましくは、パンチング板及び金網の少なくとも一方を選択する。例えば、振動コンベヤのトラフの底面は、全面に渡って多孔性材料からなってもよい。トラフ底面が多孔質材料である目的は2つある。1つは流動層に浸かっているトラフ水平区間が流動化を阻害しないこと。もう1つは、トラフ上り勾配区間で浮揚物と沈降物に付着または随伴する粉体を除去するためである。
【0092】
多孔性材料の開孔サイズは、分離対象物は通過せずに流動化媒体となる粉体のみが通過するように設計されるのが、好ましい。より具体的には、パンチング板の打抜き穴は、好ましくはφ2mm以上10mmであり、より好ましくはφ4mmである。金網の目開きは、好ましくは2mm以上10mm以下であり、より好ましくは、4mm□である。これにより、流動媒体と分離対象物との分離が可能となり、分離産物の再スクリーニングが不要となる。
【0093】
搬送部のトラフは、水平区間と上り勾配区間との少なくとも一方を備えることが好ましい。そして、上り勾配区間のトラフの斜面と水平がなす角度は、好ましくは2度以上30度以下であり、より好ましくは6度以上9度以下である。
【0094】
搬送部(振動コンベヤ)の振動方向と勾配区間のトラフの傾斜面がなす角度は好ましくは、2度以上55度以下であり、より好ましくは30度である。なお、振動コンベヤの振動の方向は、浮揚物と沈降物が振動の作用のみによってトラフの上り勾配区間を上ることができるように設計されるのが、好ましい。このように、振動の方向が適切に設計されると、振動の作用のみによって、浮揚部及び沈降物ともに上り勾配区間を上っていくことが可能となる。
【0095】
また、このように、上り勾配区間を有することによって、浮揚物及び沈降物を容易い流動層から容易に取り出すことができる。また、搬送部の一部は流動層の内部へ浸かっているので、浮揚物及び沈降物を容易い流動層から容易に取り出すことができる。
【0096】
搬送部(振動コンベヤ)の振動発生機構は、例えば。振動モータ又はクランクであってもよい。
【0097】
搬送部(振動コンベヤ)の振動数は、好ましくは3Hz以上30Hz以下であり、より好ましくは20Hzである。
【0098】
横送り装置70などの浮揚物搬送機は、スクレーパーコンベヤ、スキンマ、など、(固気)流動層の表層を漂う浮揚物を水平方向へ搬送できればどのような搬送方式でもよいし、分離対象物の性状によっては省略することもできる。例えば、浮沈分離に必要な時間が極めて短い分離対象物を分離する場合、分離区間を極力短くすることができ、この場合は浮揚物搬送機を省略することができる。
【0099】
分離対象物のサイズは、長い辺が、好ましくは3mm以上100mmであり、より好ましくは5mm以上20mm以下である。
【0100】
以上のように、本発明は、例えば、以下の有利な効果を奏するものである。
・回収手段を振動コンベヤ方式にしたことで噛み込みの問題を排除できるため、金属片を多く含むミックスメタルの処理が可能である。また、連続式装置であるため、大量の分離が可能である。また、流動化媒体となる粉体を除去する機能を振動コンベヤが兼ね備えるため、「分離対象物供給→浮沈分離→分離対象物回収→粉体の除去」の一連の操作を本発明の装置のみで完結することができる(粉体の除去・返送のための付帯設備は不要)。
【符号の説明】
【0101】
12 振動トラフ
13 振動トラフ側面
14 ふるい部
16 浮遊物搬送コンベヤ
18 沈下物搬送コンベヤ
20 投入装置(投入部)
22 原料投入部
40 空気室
42 空気
50 振動部
60 回収部
62 浮遊物
64 沈下物
70 横送り装置
82 固気流動層の疑似液面
90 浮遊物かき上げ装置
91 仕切り部
100 乾式分離装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7