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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】バスバー接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/02 20060101AFI20230420BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20230420BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20230420BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20230420BHJP
   H01R 43/04 20060101ALI20230420BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H01B5/02 Z
B23K20/00 350
H01R4/58 C
H01R4/62 A
H01R43/04 Z
H01B13/00 501Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019027557
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020136057
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】311009376
【氏名又は名称】株式会社アスター
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】本郷 武延
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-024242(JP,A)
【文献】特開平04-143085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/02
B23K 20/00
H01R 4/58
H01R 4/62
H01R 43/04
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の金属部材からなるバスバーの端部に第二の金属部材からなる接合部材を押圧により接続するバスバー接合体の製造方法であって、
前記第一の金属部材は、前記バスバーとして機能する領域と、押圧方向に沿う直線領域とを含み、
前記バスバーとして機能する領域は少なくとも帯長手方向の延在方向を変化させる方向変換部を含み、
前記接合部材は所定の機能を有する部品であって押圧方向に沿う直線領域を有し、
それぞれの前記直線領域は押圧長さより長く、それぞれの前記直線領域における端面同士を突合せて冷間圧接により前記押圧長さの分、短縮し、前記方向変換部を除く領域に接合部を形成する、
ことを特徴とするバスバー接合体の製造方法。
【請求項2】
前記第一の金属部材と前記第二の金属部材は異種の金属部材である、
ことを特徴とする請求項1に記載のバスバー接合体の製造方法。
【請求項3】
前記接合部を形成後、圧接により生じたバリを除去する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバスバー接合体の製造方法。
【請求項4】
前記接合部材は、端子である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバスバー接合体の製造方法。
【請求項5】
前記接合部材は、他のバスバーである、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバスバー接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品同士の配線部材としてバスバーが知られている。一例を挙げると、モータを構成するステータ(固定子)を製造する場合、環状のステータコアの内周面に設けられた複数のスロット(ティース)に巻回されたコイルを順次装着し、あるいは、個々のスロットに順次コイル部材(例えば銅線など)を巻回して、複数のコイルを環状に配置する。この場合、コイルは、巻回の両端部(始端部および終端部)が直接的に、あるいは連結部材を介して、ステータコアの円周方向に延在する棒状(弧状)または環状のバスバーに溶接あるいはねじ止めにより接続される(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
このような部品(コイルやバスバーなど)の材料としては一般的には、導電性の高い銅(Cu)や、軽量なアルミニウム(Al)などが採用されることが多い。また、複数の部品を接合する際、部品同士が異種の金属部材となることは一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5904698号公報
【文献】特許第4661849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数の部品を接合する際、部品同士が同種の金属部材である場合と比較して、異種の金属部材の方が接合が容易ではない。
【0006】
具体的に、アルミニウム製の部品(例えば、バスバー)と銅製の部品(例えば、端子)を接合する場合を例示すると、アルミニウムは酸化膜がつきやすく変形もし易いため、はんだ(ロウ付け)による接合や一般的な溶接では、クリープ変形が生じたり、十分な接合強度が得られないなど、特に大電流領域での使用において問題がある。あるいは、溶接でも十分な接合強度を得るためには特殊な方法や装置が必要となるなど、容易には行うことができない。
【0007】
はんだや溶接に代わる接合方法としてはねじ止めがあるが、ねじ止めの場合は、金属同士の直接的な接合と比較して接合部分の抵抗の増大は避けられない。また、特に一方の部品がアルミニウムの場合には、その変形によってねじ止めの接合箇所が緩む問題がる。更に、ねじ止めによる接続は部品点数の増加や、接続工程が煩雑(工数が増加)する問題がある。
【0008】
更に、各種装置の小型化、精密化が進むと当該各種装置を構成する部品の配線構造も省スペース化を図るべく立体的且つ複雑な形状に構成する要望が高まるが、溶接やねじ止めなどでバスバーを接合していく方法では、そのような要望に柔軟に対応することが困難である。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、バスバーとそれとは異なる金属部材の接合部材(端子や他のバスバーなど)を接合する場合において、両者の接続部における抵抗の増加を抑制し、接続状態が良好で、複雑な配線構造であっても容易に実現可能なバスバー接合体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第一の金属部材からなるバスバーの端部に第二の金属部材からなる接合部材を押圧により接続するバスバー接合体の製造方法であって、前記第一の金属部材は、前記バスバーとして機能する領域と、押圧方向に沿う直線領域とを含み、前記バスバーとして機能する領域は少なくとも帯長手方向の延在方向を変化させる方向変換部を含み、前記接合部材は所定の機能を有する部品であって押圧方向に沿う直線領域を有し、それぞれの前記直線領域は押圧長さより長く、それぞれの前記直線領域における端面同士を突合せて冷間圧接により前記押圧長さの分、短縮し、前記方向変換部を除く領域に接合部を形成する、ことを特徴とするバスバー接合体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バスバーとそれとは異なる金属部材の接合部材(端子や他のバスバーなど)を接合する場合において、両者の接続部における抵抗の増加を抑制し、接続状態が良好で、複雑な配線構造であっても容易に実現可能なバスバー接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のバスバー接合体の(A)外観斜視図,(B)外観斜視図、(C)断面図である。
図2】本実施形態のバスバーの(A)正面図,(B)側面図、(C)、(D)外観斜視図である。
図3】本実施形態のバスバーの(A)正面図,(B)正面図、(C)、(D)外観斜視図である。
図4】本実施形態の接合部材(端子)の(A)~(C)正面図,(D)側面図、(E)正面図である。
図5】本実施形態のバスバー接合体の製造方法を示す(A)平面図、(B)側面図、(C)平面図、(D)平面図、(E)側面図、(F)側面図である。
図6】本実施形態のバスバー接合体の製造方法を示す(A)平面図、(B)側面図、(C)平面図、(D)平面図、(E)側面図、(F)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
<バスバー接合体>
図1は、本実施形態のバスバー接合体10の外観斜視図であり、同図(A)および同図(B)はバスバー11の形状が異なる例を示す図であり、同図(C)が同図(A)、同図(B)のX-X線断面図である。本実実施形態のバスバー接合体10は、第一の金属部材13からなるバスバー11と、第二の金属部材14からなる接合部材12を備えている。
【0016】
より詳細に、バスバー接合体10は、バスバー11の端部11E(以下、バスバー端部11Eという。)に接合部材12が圧接されたものである。バスバー11は、少なくとも1つのバスバー端部11Eを有している。図1ではバスバー11はそれぞれ2つのバスバー端部11Eを有し、当該バスバー端部11Eにそれぞれ接合部材12が接続されているバスバー接合体10を例に説明する。また、ここでは、接合部材12がいずれも同様の構成(形状)の端子12である場合を例に説明するが、1つのバスバー11に接合部材12が複数接合する場合、それらが異なる形状であってもよい。また、バスバー端部11Eが複数存在する場合、接合部材12が接合しないバスバー端部11Eが存在してもよい。
【0017】
本実施形態におけるバスバー11は、複数の部品同士を接続する配線部材であり、接合部材12は、端子または他のバスバーである。より詳細に、本実施形態における「端子」とは、或る部品(例えば、コイル)の端部を他の部品に接続する場合、その取り出し部を構成する部品をいい、「バスバー」とは離間した複数の部品同士(例えば、コイルと端子、コイルと他のバスバー、コイルと他の部品、端子と他の端子、バスバーと他のバスバーなど)を接続するため、所定の長さを有する配線部材をいう。
【0018】
バスバー11の部材(第一の金属部材13)は例えば、アルミニウム(Al)である。また、接合部材12の部材(第二の金属部材14)はこの例では第一の金属部材13とは異なる金属であって、例えば銅(Cu)である。
【0019】
また、バスバー11は、例えば帯状の平導体を所望の形状に打ち抜き、および/または曲折さえるなどして構成される。つまり、バスバー11は例えば、帯長手方向の直線部に交差(直交)する方向に切断した場合の切断面(図1(A),同図(B)のX-X線断面)が、同図(C)に示すように幅広面WWと幅狭面WNを有する矩形状(または角丸矩形状)の導体である。
【0020】
図2および図3は、バスバー11の例を示す概要図である。同図(A)はバスバー11の正面図(上面図)であり、同図(B)は側面図であり、同図(C)および同図(D)は斜視図である。また、図3(A)および同図(B)は、バスバー11の正面図(上面図)であり、同図(C)は斜視図である。
【0021】
バスバー11は、接合部材12に接続する一方のバスバー端部11Eと、任意の他の構成(例えば他の接合部材12、端子、バスバー、部品など)と接続する他方のバスバー端部11Eを有する。バスバー端部11Eにはそれぞれ端面TSが露出する。以下、本実施形態のバスバー11は、いずれのバスバー端部11Eにも接合部材12が接合可能であるが、以下の説明では主に、一方のバスバー端部11Eに接合部材12が接合する場合を例示し、その説明の便宜上、接合部材12が接合する一方側をバスバー端部11Eとし、他方側を(他方の)バスバー端部11E´と別称する。
【0022】
バスバー12の形状は任意であるが、例えば、図2(A)に示すように、バスバー端部11E側と他方のバスバー端部11E´側の形状(サイズ)が異なる平導体の帯形状であり、一方のバスバー端部11Eから他方のバスバー端部11E´に至るまで、二次元平面内で1または複数の曲折部11Dを含んで構成されている。また、同図(B)~同図(D)に示すように、バスバー端部11Eから他方のバスバー端部11E´に至るまで、三次元空間内で1または複数の曲折部11Dを含んで構成されてもよく、また、二次元空間内の曲折部11Dと三次元空間内の曲折部11Dとが組合わせて構成されていてもよい。
【0023】
また、同図(C)および同図(D)を参照して、第2端部12Bに予め、他の構成との接続部(端子または係合部)20などが設けられていても良い。同図(C)ではバスバー11と端子20は同じ金属部材(例えば、銅)である場合を例示している。
【0024】
また、同図(D)に示すように、バスバー11の第2端部12Bに予め端子20(接続部材12とは別途の端子)が設けられる場合、バスバー11と端子20は異なる金属部材であってもよい。一例を挙げると、バスバー11は第一の金属部材13(例えば、アルミニウム)であり、端子20は、それとは異なる金属部材(例えば、銅)であってもよい。
【0025】
更に、図3(A)に示すように、バスバー端部11Eの形状が平導体の形状で、他方のバスバー端部11E´が丸線などの異形状であってもよい。また、同図(B)に示すように、曲線部11Fを含んでもよい。また、同図(C)に示すように、バスバー端部11Eの他に複数の端部11B,11Xが存在するように、例えば、二次元平面視においてY字形状や十字形状など、複数方向に曲折する(分岐する)構成であってもよく、この場合、他方のバスバー端部11E´と他の端部11Xの少なくとも何れかに端子20が接続されてもよい。またこれら(図3および図4の少なくともいずれかを組合わせて構成されていてもよい。
【0026】
図2(A)等に示すように、バスバー11は、バスバー端部11Eと他方のバスバー端部11E´とを繋ぐ(その間の)バスバー配線部11Wを含んで構成される。またバスバー配線部11Wは少なくともバスバー直線部11STを含む。ここで、本実施形態のバスバー直線部11STは、バスバー端部11Eに連続し、押圧(圧接)の工程における押圧方向P(白抜き矢印で示す)に沿う直線領域を有しており、当該直線領域の長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長い部位である。また、バスバー配線部11Wはバスバー直線部11STに加えて他のバスバー直線部11ST´を有しても良い。
【0027】
具体的には、バスバー配線部11Wは、バスバー直線部11STのみ(図3(A))、またはバスバー直線部11STおよび他のバスバー直線部11ST´と少なくとも1つの方向変換部TNを含む形状(図2図3(B)、図3(C))、または図3および図4に示す形状の少なくとも何れかの組合せの形状を有する。
【0028】
ここで、方向変換部TNは、帯長手方向の延在方向(電流経路となる方向)を変化させるように曲折(湾曲)した部位である。より詳細には、バスバー配線部11Wが曲折する形状の場合(図2図3(B)、図3(C)),バスバー配線部11Wは、電流経路において異なる方向に延在する2つの直線部(例えば、第一の方向に延在するバスバー直線部11STと、第二の方向に延在する他のバスバー直線部11ST´)と、これらの間に配置された方向変換部TNを少なくとも有している(2つの異なる他の直線部ST´間とこれらの間の方向変換部TNも存在している場合がある)。なお、図3(B)に示す曲線部11Fは、方向変換部TNの一部である。
【0029】
例えば、図3(C)に示すバスバー11の場合、側面視において略T字状となるように、バスバー端部11Eから方向変換部TNを経て他方のバスバー端部11E´と他の端部11Xが分岐するような構成を有しており、図示の下方向に押圧される。このためバスバー端部11Eには、押圧方向Pに沿って、押圧量CPLより長いバスバー直線部11STが設けられている。
【0030】
そして、本実施形態では、接合部材12の端部とバスバー12の第1端部12Aとが、直接突き合わされて接合される。
【0031】
図4を参照して、接合部材12の一例について、接合部材12が端子である場合について説明する。
【0032】
図4は、端子12の例を示す概要図である。同図(A)~同図(C)、同図(E)は端子12の正面図(上面図)であり、同図(D)は側面図である。
【0033】
端子12は、バスバー端部11Eに接続する第1端部12Aと、外部の構成(例えば、電源などに接続する配線部材、他のバスバー、他の部品等)と接続する第2端部12Bを有する。第1端部12Aには端面12ASが露出し、第2端部12Bには端面12BSが露出する。
【0034】
端子12の形状は任意であるが、例えば、同図(A)に示すように、第1端部12Aの形状がバスバー端部11Eと同等の平導体の形状で、第2端部12Bに他の構成との係合部12Cなどが設けられていても良い。また、同図(B)に示すように第1端部12Aの形状がバスバー端部11Eと同等の平導体の形状で、第2端部12Bが丸線あるいは細い(太い)平導体などの異形状であってもよい。また、同図(C)に示すように第1端部12Aから第2端部12Bに至るまで、二次元平面内で1または複数の曲折部12Dを含んで構成されていてもよいし、同図(D)に示すように三次元空間内で1または複数の曲折部12Dを含んで構成されてもよく、同図(E)に示すように曲線部12Eを含んでもよい。またこれら(同図(A)~同図(E)の少なくともいずれかを組合わせて構成されていてもよい。
【0035】
端子12は、第1端部12Aと第2端部12Bとを繋ぐ(その間の)端子配線部12Wを含んで構成される。端子配線部12Wは、例えばバスバー配線部11Wよりも短い。また端子配線部12Wは少なくとも接合部材直線部12STを含む。ここで、本実施形態の接合部材直線部12STは、第1端部12Aに連続し、押圧(圧接)の工程における押圧方向P(白抜き矢印で示す)に沿う直線領域を有しており、当該直線領域の長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長い部位である。また、端子配線部12Wは接合部材直線部12STに加えて他の接合部材直線部12ST´を有しても良い。
【0036】
具体的には、端子配線部12Wは、接合部材直線部12STのみ(図4(A)、同図(B))、または接合部材直線部12STおよび他の接合部材直線部12ST´と少なくとも1つの方向変換部12TN(図4においてドットのハッチングで示す)を含む形状(同図(C)~同図(E))、またはこれら(同図(A)~同図(E)の少なくとも何れかの組合せの形状を有する。
【0037】
方向変換部TNは、帯長手方向の延在方向(電流経路となる方向)を変化させるように曲折(湾曲)した部位である。より詳細には、端子配線部12Wが曲折する形状の場合(例えば同図(C),同図(D)),端子配線部12Wは、電流経路において異なる方向に延在する2つの直線部(例えば、第一の方向に延在する接合部材直線部12STと、第二の方向に延在する他の接合部材直線部12ST´)と、これらの間に配置された方向変換部TNを少なくとも有している(同図(C)および同図(D)では、2つの異なる他の直線部ST´間とこれらの間の方向変換部TNも存在している)。なお、同図(E)に示す曲線部12Eは、方向変換部TNの一部である。
【0038】
そして、本実施形態では、バスバー端部11Eと端子12の第1端部12Aとが、直接突き合わされて接合される。詳細は後述するが、図5に示すようにバスバー端部11Eのバスバー直線部11STにおける端面TSと、接合部材12の第1端部12Aの接合部材直線部12STにおける端面12AS同士を突き合わせて押圧(例えば、冷間圧接)し、接合部16を形成する。
【0039】
ここで、バスバー11の端面TSは、バスバー直線部11STにおいて押圧工程における押圧方向Pに交差(直交)する方向に切断した場合の切断面と平行な終端の面であり、端子12の端面12ASは、接合部材直線部12STにおいて押圧工程における押圧方向Pに交差(直交)する方向に切断した場合の切断面と平行な終端の面である。
【0040】
これにより、図1に示すように、バスバー端部11Eと端子12の第1端部12Aとの圧接による接合部16は、接合後のバスバー接合体10における直線部10ST(バスバー接合体10の方向変換部TNを除く直線部10ST)に形成される。換言すると、接合部16は、バスバー接合体10における方向変換部TN(角部)には含まれない位置に存在する。
【0041】
端子12の第1端部12Aは、その端面12ASが例えば、バスバー端部11Eの形状に合わせた形状(サイズ)に構成される。
【0042】
具体的には、第1端部12A(接合部材直線部12ST)の端面12ASは、バスバー端部11Eのバスバー直線部11STにおける端面TSの形状(この例では平角形状)と略一致するように、矩形状で同等のサイズ(略一致する矩形状)に構成される。一方、第2端部12B(の端面12BS)の形状は接続する配線等の形状に応じて任意に選択される。
【0043】
なお、接合部材12はバスバーでもよく、その場合、当該バスバーは図2および図3に示す構成と同様であり、接合部材12の第1端部12A、その端面12AS、接合部材直線部12STは、それぞれ、バスバー11のバスバー端部11E、その端面TS、バスバー直線部11STに対応する。
【0044】
また、図1において、説明の便宜上、接合部16を実線で明示しているが、冷間圧接の場合、接合部16はバスバー端部11Eの端面TSと第1端部12の端面12ASの位置が外観の目視では認識困難(略視認不可)となる程度に一体的に確実に接合されている。これにより、接合部材12とバスバー11を接着材(固着材、ロウ付けなど)で接続したり、溶接あるいはねじ止めなどにより接続するような構成と比較して、接合部16の安定性を圧倒的に高め、十分な接続強度を得ることができる。
【0045】
また、バスバー11と接合部材12を一体的に(連続的且つ滑らかに)接続できるため、溶接や接着あるいはねじ止めなどで両者を接合する場合と比較して接合部16における抵抗の増加を抑制し、構造の複雑化を回避できる(接合部16を必要最小限の構成にすることができる)。
【0046】
更に、各種装置の小型化、精密化が進むと当該各種装置を構成する部品の配線構造も省スペース化を図るべく立体的且つ複雑な形状に構成する要望が高まる。本実施形態のバスバー接合体10によれば、所望の形状のバスバー11と接合部材(端子や他のバスバー)12とを圧接により接合する(必要に応じて複数回の接合を繰り返す)ことで、接合部16の構成を最小限にしつつ、複雑な形状の配線構造にも柔軟かつ容易に対応可能となる。
【0047】
なお、図1ではバスバー11の両端に接合部材12が接合しているが、例えば、バスバー11の一方の端部(バスバー端部11E)には、コイルなどの部品が接続してもよい。
【0048】
また、図1(B)、図2(D)などに示した、バスバー12と端子20が異なる金属部材の場合、その接合部21も、本実施形態で説明したバスバー11と接合部材12の接合部16と同様に圧接(冷間圧接)で構成される。つまり、バスバー11の他方のバスバー端部11E´の端面TSと端子20のバスバー11側の端面とを突き合わせて(冷間)圧接して両者が接合される。
【0049】
<バスバー接合体の製造方法>
図5および図6を参照して、本実施形態のバスバー接合体10の製造方法について説明する。図5はバスバー11の一方のバスバー端部11Eに接合部材(端子)12を接続してバスバー接合体10を製造する工程を説明する図である。同図(A)が平面図、同図(B)が同図(A)を図示の下方から見た側面図、同図(C)および同図(D)が平面図、同図(E)及び同図(F)が同図(D)を図示の下方向から見た側面図である。
【0050】
まず、図5(A)、同図(B)に示すように所望の形状のバスバー11と端子12を準備する。不図示の接合装置(圧接装置)によってバスバー11と端子12をそれぞれ保持する。
【0051】
既に述べているように、バスバー11(バスバー端部11E)は、押圧方向P(白抜き矢印で示す)に沿う直線領域であってその長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長いバスバー直線部11STを有している。また、端子12は、押圧方向Pに沿う直線領域であってその長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長い接合部材直線部12STを有している。
【0052】
そして同図(C)に示すようにバスバー11のバスバー直線部11STにおける端面TSと、端子12の接合部材直線部12STにおける端面12AS同士を突き合わせ当接させ、同図(D)、同図(E)に示すように、両者を付き合わせた状態でバスバー直線部11STと接合部材直線部12STをそれぞれ所定の圧接量(押圧長さ)CPL分、バスバー直線部11STと接合部材直線部12STの直線の延在方向に沿って互いに押し込み、(冷間)圧接する。
【0053】
つまり、接合前のバスバー11はその押圧方向Pに沿う長さ11LS(同図(C))が、端子12と接合後の(完成状態の)押圧方向Pに沿う長さ11LE(同図(D))より圧接量CPL分長くなるように設定されている。同様に、接合前の端子12は、その押圧方向Pに沿う長さ12LS(同図(C))が、バスバー11と接合後の(完成状態の)押圧方向Pに沿う長さ12LEより圧接量CPL分長くなるように設定されている。
【0054】
このため、既述のとおり、バスバー11のバスバー直線部11STは、圧接量CPLよりも長い直線領域を有するように設定され、端子12の接合部材直線部12STは、圧接量CPLよりも長い直線領域を有するように設定されている。
【0055】
このように、バスバー直線部11STにおける端面TSと、接合部材直線部12STにおける端面12AS同士を突き合わせ押圧し、互いに圧接量CPLの分、短縮させて、バスバー11と端子12の接合部16を形成する。従って、バスバー11と端子12の接合部16も、バスバー接合体10の直線部10ST(方向変換部TN(角部;同図(D)にドットのハッチングで示す)を除く領域)に形成される。換言すると、接合部16は、バスバー接合体の方向変換部TN(角部)には含まれない(同図(D))。
【0056】
また同図(E)に示すように、当該接合部16には押し出しによって押圧方向P(幅広面WW)に対して垂直方向に突出するバリ17が生じる。従って、接合部16の形成後には、そのバリ17を切断や切削などにより除去する(同図(F))。なお、既述のとおり接合部16は実際には視認困難(不能)であるが説明の便宜上実線で示している(以下同様)。
【0057】
図5においてはバスバー11の一方のバスバー端部11Eにのみ端子12を接合する場合を図示しているが、他方のバスバー端部11E´にも接合部材(端子や他のバスバー)12を接合してもよい。その場合、上記と同様に接合部材12とバスバー11を圧接して接合部16を形成するとともにバリ17を除去する。
【0058】
図6は、接合部材12が他のバスバー12である場合のバスバー接合体10の製造方法を示す図であり、図6(A)が平面図、同図(B)が同図(A)を図示の下方から見た側面図、同図(C)および同図(D)が平面図であり、同図(E)および同図(F)が同図(D)を図示の下方向から見た側面図である。
【0059】
まず、図6(A)、同図(B)に示すように所望の形状のバスバー11と他のバスバー12を準備する。不図示の接合装置(圧接装置)によってバスバー11と他のバスバー12をそれぞれ保持する。
【0060】
なお、接合部材12がバスバーの場合、接合部材12の第1端部12A,その端面12AS、接合部材直線部12ST、第2端部12Bはそれぞれ、他のバスバー11(接合部材12と接合されるバスバー11とは別のバスバー11)のバスバー端部11E、その端面TS,バスバー直線部11ST、他のバスバー端部11E´と読み替えることもできる。
【0061】
既に述べているように、バスバー11(バスバー端部11E)は、押圧方向P(白抜き矢印で示す)に沿う直線領域であってその長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長いバスバー直線部11STを有している。また、接合部材(他のバスバー)12は、押圧方向Pに沿う直線領域であってその長さが押圧長さ(圧接量)CPLよりも長い接合部材直線部12STを有している。
【0062】
そして同図(C)に示すようにバスバー11のバスバー直線部11STにおける端面TSと、他のバスバー12の接合部材直線部12STにおける端面12AS同士を突き合わせ当接させ、同図(D)、同図(E)に示すように、両者を付き合わせた状態でバスバー直線部11STと接合部材直線部12STをそれぞれ所定の圧接量(押圧長さ)CPL分、バスバー直線部11STと接合部材直線部12STの直線の延在方向に沿って互いに押し込み、(冷間)圧接する。
【0063】
つまり、接合前のバスバー11はその押圧方向Pに沿う長さ11LS(同図(C))が、他のバスバー12と接合後の(完成状態の)押圧方向Pに沿う長さ11LE(同図(D))より圧接量CPL分長くなるように設定されている。同様に、接合前の他のバスバー12は、その押圧方向Pに沿う長さ12LS(同図(C))が、バスバー11と接合後の(完成状態の)押圧方向Pに沿う長さ12LEより圧接量CPL分長くなるように設定されている。
【0064】
このため、既述のとおり、バスバー11のバスバー直線部11STは、圧接量CPLよりも長い直線領域を有するように設定され、他のバスバー12の接合部材直線部12STは、圧接量CPLよりも長い直線領域を有するように設定されている。
【0065】
このように、バスバー直線部11STにおける端面TSと、接合部材直線部12STにおける端面12AS同士を突き合わせ押圧し、互いに圧接量CPLの分、短縮させて、バスバー11と他のバスバー12の接合部16を形成する。従って、バスバー11と他のバスバー12の接合部16も、バスバー接合体10の直線部10ST(方向変換部TN(角部;同図(D)にドットのハッチングで示す)を除く領域)に形成される。換言すると、接合部16は、バスバー接合体10の方向変換部TN(角部)には含まれない(同図(D))。
【0066】
また同図(E)に示すように、当該接合部16には押し出しによって押圧方向P(幅広面WW)に対して垂直方向に突出するバリ17が生じる。従って、接合部16の形成後には、そのバリ17を切断や切削などにより除去する(同図(F))。なお、既述のとおり接合部16は実際には視認困難(不能)であるが説明の便宜上実線で示している(以下同様)。
【0067】
図6においてはバスバー11の一方のバスバー端部11Eにのみ他のバスバー12を接合する場合を図示しているが、他方のバスバー端部11E´にも接合部材(端子や他のバスバー)12を接合してもよい。その場合、上記と同様に接合部材12とバスバー11を圧接して接合部16を形成するとともにバリ17を除去する。
【0068】
図6の場合、他のバスバー12は、バスバー11と同種の金属部材であってもよいし、異種の金属部材であってもよい。
【0069】
このように本実施形態のバスバー接合体10によれば、バスバー11と接合部材12が異種の金属部材であっても、接合部16の接合強度を高め、接続状態を安定かつ良好にでき、抵抗の増加を抑え、構造の複雑化を回避できる。
【0070】
上記の例では、バスバー11がアルミニウムで、接合部材12が銅である場合を説明したが、バスバー11および接合部材12の金属部材は、非鉄金属系材料など冷間圧接できる金属部材であればよい。具体的には、第一の金属部材13と第二の金属部材14はそれぞれ、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅ニッケル合金、真鍮、亜鉛、銀、銀合金、ニッケル、金、その他合金等の金属部材であってもよく、錫メッキ、銀メッキ、ニッケルメッキを含む部材であってもよい。また、バスバー11(第一の金属部材13)と接合部材12(第二の金属部材14)は同種(同じ)金属部材であってもよい。
【0071】
また、本実施形態のバスバー接合体10に、第一の金属部材13および第二の金属部材14のいずれとも異なる第三の金属部材が含まれていてもよく、その場合、第三の金属部材はその端部の端面を、バスバー11の端面および/または接合部材12の端面に突き合わせて(冷間)圧接されたものであってもよい。
【0072】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、部品同士の接合に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
10 バスバー接合体
10ST 直線部
11 バスバー
11D 曲折部
11E バスバー端部
11F 曲線部
11ST バスバー直線部
11W バスバー配線部
12 接合部材
12W 端子配線部
12E 曲線部
12ST 接合部材直線部
12TN 方向変換部
12W 端子配線部
16 接合部
17 バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6