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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 13/02 20060101AFI20230420BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20230420BHJP
   C04B 14/16 20060101ALI20230420BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20230420BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20230420BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B28B13/02
C04B28/14
C04B14/16
C04B16/02 Z
C04B24/38 D
C04B14/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019089143
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183087
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519318786
【氏名又は名称】高千穂シラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 千恵子
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-055764(JP,A)
【文献】特開2003-192427(JP,A)
【文献】特開昭56-088858(JP,A)
【文献】特開昭50-133223(JP,A)
【文献】特開昭58-036992(JP,A)
【文献】特開昭58-194508(JP,A)
【文献】特開2011-046002(JP,A)
【文献】特開2008-068625(JP,A)
【文献】特開平02-252646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 13/00 - 13/06
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
45.0wt%(Mass%)~65.0wt%の石膏と、20.0wt%~30.0wt%のシラスと、8.0wt%~12.0wt%のパミスと、1.0wt%~10.0wt%の木節粘土と、0.1wt%~10.0wt%の顔料と、0.05wt%~0.30wt%のコットンパウダーと、0.01wt%~0.20wt%の非イオン性の水溶性のセルロースエーテルとの合計が100wt%となるように、前記石膏と前記シラスと前記パミスと前記木節粘土と前記顔料と前記コットンパウダーと前記非イオン性の水溶性のセルロースエーテルとを計量する第1の計量工程と、
前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルを合せた質量が65.0wt%~85.0wt%になり、成形材料の質量が0.2wt%~0.7wt%になり、水の質量が19.0wt%~30.0wt%になるとともに、前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルを合せた質量と、前記成形材料の質量と、前記水の質量との合計が100wt%になるように、前記成形材料と前記水とを計量する第2の計量工程と、
前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルと、前記第2の計量工程で計量された成形材料と、前記第2の計量工程で計量された水とを混ぜ合わせる混合工程と、
前記混合工程で混合された混合物を型に入れる型入れ工程と、
前記型入れ工程で型入れされた混合物を固化する固化工程と、
前記固化工程で固化した混合物を前記型から取り外すことで成形品を得る脱型工程と、
を有することを特徴とする成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品の成形方法であって、
前記型入れ工程は、
前記型のキャビティの表面に前記混合工程で混合された混合物を、所定の厚さで設ける前期型入れ工程と、
前記前期型入れ工程で設けた混合物の空気抜きをする前期空気抜き工程と、
前記前期空気抜き工程での空気抜きがされた後、前記型のキャビティ内に前記混合工程で混合された混合物を設ける後期型入れ工程と、
前記後期型入れ工程で設けた混合物の空気抜きをする後期空気抜き工程と、
を有することを特徴とする成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の成形品の成形方法であって、
前記各空気抜き工程は、
前記型のキャビティ内に前記混合工程で混合された混合物を設けた後、前記型をタップすることで、前記混合工程で混合された混合物の表面に気泡を浮かせる気泡浮かせ工程と、
前記気泡浮かせ工程で生じた気泡を排除する気泡排除工程と、
を有することを特徴とする成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の成形品の成形方法であって、
前記型の表面の一部には平面状の部位が形成されており、前記型のキャビティは、前記平面状の部位に囲まれた態様で前記平面状の部位から凹んでおり、
前記後期空気抜き工程での空気抜きがされた状態では、前記混合工程で混合された混合物が前記型のキャビティ内の総てに設けられているとともに、前記平面状の部位よりも僅かに盛り上がっており、
前記型入れ工程は、前記後期空気抜き工程後に、平面状の部位を有する蓋材の前記平面状の部位が前記型の前記平面状の部位に接するとともに前記型のキャビティを囲むようにして、前記蓋材を前記型に設ける蓋材設置工程を有することを特徴とする成形品の成形方法。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の成形品の成形方法であって、
前記前期型入れ工程は、前記型のキャビティの表面に筆を用いて前記混合工程で混合された混合物を塗ることでなされることを特徴とする成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シラスを用いた成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シラスを用いた建築用壁材として、たとえば特許文献1、特許文献2に記載されているものが知られている。上記壁材は、シラスと結合材と粘土材とスサ類を適宜の割合で調合し、この調合したものに水を加えて混練し、この混練したものを下地に塗布することで製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-62053号公報
【文献】特開2001-354875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シラスを用いた成形品は、優れた調湿性や消臭性等を備えている。そこで、シラスを用いた成形品を、壁材以外にも使用することが考えられる。たとえば、シラスを用いた成形品を、コースター等の食器やオブジェとして使用することが考えられる。
【0005】
しかしながら、従来の壁材と同様な配合で食器やオブジェを成形すると、スサ等が混入されていることで表面がざらつき使用感が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シラスを用いた成形品の成形方法において、表面のざらつきを無くすことで使用感が良好になる成形品の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、45.0wt%(Mass%)~65.0wt%の石膏と、20.0wt%~30.0wt%のシラスと、8.0wt%~12.0wt%のパミスと、1.0wt%~10.0wt%の木節粘土と、0.1wt%~10.0wt%の顔料と、0.05wt%~0.30wt%のコットンパウダーと、0.01wt%~0.20wt%の非イオン性の水溶性のセルロースエーテルとの合計が100wt%となるように、前記石膏と前記シラスと前記パミスと前記木節粘土と前記顔料と前記コットンパウダーと前記非イオン性の水溶性のセルロースエーテルとを計量する第1の計量工程と、前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルを合せた質量が65.0wt%~85.0wt%になり、成形材料の質量が0.2wt%~0.7wt%になり、水の質量が19.0wt%~30.0wt%になるとともに、前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルを合せた質量と、前記成形材料の質量と、前記水の質量との合計が100wt%になるように、前記成形材料と前記水とを計量する第2の計量工程と、前記第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーと非イオン性の水溶性のセルロースエーテルと、前記第2の計量工程で計量された成形材料と、前記第2の計量工程で計量された水とを混ぜ合わせる混合工程と、前記混合工程で混合された混合物を型に入れる型入れ工程と、前記型入れ工程で型入れされた混合物を固化する固化工程と、前記固化工程で固化した混合物を前記型から取り外すことで成形品を得る脱型工程とを有する成形品の成形方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成形品の成形方法であって、前記型入れ工程は、前記型のキャビティの表面に前記混合工程で混合された混合物を、所定の厚さで設ける前期型入れ工程と、前記前期型入れ工程で設けた混合物の空気抜きをする前期空気抜き工程と、前記前期空気抜き工程での空気抜きがされた後、前記型のキャビティ内に前記混合工程で混合された混合物を設ける後期型入れ工程と、前記後期型入れ工程で設けた混合物の空気抜きをする後期空気抜き工程とを有する成形品の成形方法である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の成形品の成形方法であって、前記各空気抜き工程は、前記型のキャビティ内に前記混合工程で混合された混合物を設けた後、前記型をタップすることで、前記混合工程で混合された混合物の表面に気泡を浮かせる気泡浮かせ工程と、前記気泡浮かせ工程で生じた気泡を排除する気泡排除工程とを有する成形品の成形方法である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の成形品の成形方法であって、前記型の表面の一部には平面状の部位が形成されており、前記型のキャビティは、前記平面状の部位に囲まれた態様で前記平面状の部位から凹んでおり、前記後期空気抜き工程での空気抜きがされた状態では、前記混合工程で混合された混合物が前記型のキャビティ内の総てに設けられているとともに、前記平面状の部位よりも僅かに盛り上がっており、前記型入れ工程は、前記後期空気抜き工程後に、平面状の部位を有する蓋材の前記平面状の部位が前記型の前記平面状の部位に接するとともに前記型のキャビティを囲むようにして、前記蓋材を前記型に設ける蓋材設置工程を有する成形品の成形方法である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の成形品の成形方法であって、前記前期型入れ工程は、前記型のキャビティの表面に筆を用いて前記混合工程で混合された混合物を塗ることでなされる成形品の成形方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面のざらつきを無くすことで使用感が良好になる成形品の成形方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る成形品の成形方法で得られたコースターを示す図であり、(b)は(a)におけるIB矢視図であり、(c)は(a)におけるIC-IC断面を示す図であり、(d)は(a)におけるID-ID断面を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係るコースターの成形方法を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るコースターの成形方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る成形品の成形方法で得られたコースター1を図1に示す。なお、本件明細書では、成形品としてコースター1を例として掲げているが、コースター以外の食器やオブジェ(たとえば室内に設置されるオブジェ)や日用品等を成形品として掲げることができる。
【0015】
コースター1は、矩形な平板状に形成されており、一対の凹部3とロゴマーク5とが設けられている。一対の凹部3が設けられていることで、コースター1が箸おきとして使用しやすくなっている。すなわち、箸の先端部を一対の凹部3の間の部位7と一対の凹部3の内の一方の凹部3の上側に配置し、箸の基端部がコースター1の外に出るように配置すれば、箸を斜めに延びてしかも転がることなくコースター1に置くことができるようになっている。ロゴマーク5は、たとえば、僅かに凹んで形成されている。
【0016】
本発明の実施形態に係るコースター1の成形方法(製造方法)は、図2で示すように、第1の計量工程、第2の計量工程(S1)と混合工程(S3)と型入れ工程(S5、S7、S9、S11、S13、S15)と固化工程(硬化工程;S17)と脱型工程(離型工程;S19)とを有する。なお、詳しくは後述するが、ステップS19では、必要に応じて、みみ取りも行う。
【0017】
第1の計量工程(S1)では、石膏(乾燥している石膏)とシラス(乾燥しているシラス)とパミス(乾燥しているパミス)と木節粘土(乾燥している木節粘土)と顔料(乾燥している顔料)とコットンパウダー(乾燥しているコットンパウダー)とメトローズ(登録商標;乾燥しているメトローズ)とを計量する。
【0018】
また、第1の計量工程(S1)では、45.0wt%(Mass%)~65.0wt%の石膏と、20.0wt%~30.0wt%のシラスと、8.0wt%~12.0wt%のパミスと、1.0wt%~10.0wt%の木節粘土と、0.1wt%~10.0wt%の顔料と、0.05wt%~0.30wt%のコットンパウダーと、0.01wt%~0.20wt%のメトローズと、不可避不純物との合計が100wt%となるように、石膏、シラス、パミス、木節粘土、顔料、コットンパウダー、メトローズをそれぞれ計量する。
【0019】
ここで、シラスやパミス等について説明する。
【0020】
シラスは、九州の一部の地域に堆積している火砕流噴出物のうち、主に約27000年前の姶良(あいら)カルデラ(現在の錦江湾奥部)の噴火によって発生した入戸火砕流を起源とする、白色~灰白色で砂状のものをいう。鹿児島湾周辺では、シラスの堆積層の厚さが数10m~200mになっており、埋蔵量は、750億mと見積もられている。
【0021】
シラスは、一般的な土壌に比べて固結性が弱く、透水性が高い。シラスは産地により多少の差はあるが、火山ガラスを主成分として(70%程度)、長石、石英を含んでいる。また、磁鉄鉱や紫蘇輝石なども含んでいる。また、天然ガラス岩は、ガラス中の水の含有率によって黒曜岩、真珠岩、松脂岩に分類されるが、シラス中の火山ガラスは3wt%の水分を含み、その量は真珠岩に相当する。化学組成においても、真珠岩に近い値を示す。ガラス分については、熱重量分析によって、非晶質特有の網目構造を形成していると考えられる。シラスの化学組成は、平均するとケイ酸を約70%、アルミナを約14%含み、その他、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、鉄酸化物を含む。
【0022】
パミス(軽石)は、火山砕屑物の一種であり浮石ともいう。パミスは、多孔質になっており、見かけ比重が水より小さく、淡色を呈している。また、パミスは、安山岩質、石英安山岩質、流紋岩質のガラス質火山岩の一種で、マグマが冷却するときに、その中のガスが急に逃げことで多孔質になったものである。
【0023】
木節粘土は、愛知県瀬戸市周辺、三重県島ヶ原地方、岐阜県多治見市周辺などに発達する新第三紀末の亜炭層、および福島県と茨城県にまたがる常磐炭田の古第三紀の炭層などに密接に伴って産出する粘土である。耐火物原料および陶磁器原料として古くから利用されている。
【0024】
コットンパウダーは、短い(たとえば200μm以下)綿の繊維が大量に集まったことで生成されている。メトローズは、天然に存在するセルロース(パルプ)を原料とし、苛性ソーダで処理した後、塩化メチル、酸化プロピレンまたは酸化エチレンなどのエーテル化剤と反応させて得られる非イオン性の水溶性のセルロースエーテルである。
【0025】
第2の計量工程(S1)では、成形材料(乾燥している成形材料)と水とを計量する。なお、成形材料としてたとえばアラビアガムを用い、水としてたとえば水道水を用いる。
【0026】
さらに説明すると、第2の計量工程(S1)では、第1の計量工程(S1)で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズとを合せた質量(合計質量)が65.0wt%~85.0wt%になり、成形材料の質量が0.2wt%~0.7wt%になり、水の質量が14.0wt%~35.0wt%になるとともに、第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズを合せた質量と、前記成形材料の質量と、前記水の質量と、不可避不純物との合計が100wt%になるように、成形材料と水とを計量する。
【0027】
混合工程(S3)では、第1の計量工程(S1)で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズと、第2の計量工程(S1)で計量された成形材料と水とを混ぜ合わせて練る(混錬する)。
【0028】
なお、混合工程(S3)での混合される前の状態では、第1の計量工程(S1)で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズと第2の計量工程(S1)で計量された成形材料とのそれぞれは粉状になっている。たとえば、第1の計量工程では、粉状の石膏と粉状のシラスと粉状のパミスと粉状の木節粘土と粉状の顔料と粉状のコットンパウダーと粉状のメトローズとを計量するようになっている。また、第2の計量工程では、粉状の成形材料を計量するようになっている。
【0029】
さらに説明すると、混合工程(S3)での混合される前の状態では、たとえば、シラスは最大粒径が200μmである粒状(粉状)になっており、パミスは粒径が60μm~200μmである粒状(粉状)になっており、木節粘土やメトローズは最大粒径が300μmである粒状(粉状)になっており、コットンパウダーを構成している繊維の長さは500μm以下になっており、顔料や石膏は最大粒径が200μmである粒状(粉状)になっている。
【0030】
なお、木節粘土、シラス等は、たとえば、篩にかけることで、上述した粒径のものを得ることができる。
【0031】
さらに、木節粘土はこの産出箇所によって色の濃淡があるが、本発明の実施形態に係る成形品の成形方法では、顔料の色を消さないようにするために、木節粘土の中に濃い色付きの塊や粒子が存在する場合、これらの色の濃いものは除去し、白色に近い色のものを使用する。
【0032】
たとえば、マンセル色表示系において、彩度が「4」以上もしくは明度が「4」以上である木節粘土の塊や粒子は前もって除去され、成形品の材料として使用しないようにしている。同様にして、他の材料も色の濃いものは除去している。
【0033】
また、混合工程(S3)で石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズと成形材料と水とを合せて良く練ることで、粘土を水で柔らかくしたような所定の粘度の半流動体状の混合物が形成される。
【0034】
型入れ工程(S5、S7、S9、S11、S13、S15)では、混合工程(S3)で混合された混合物(成形品の材料)を成形するために、混合工程(S3)で混合された混合物を型9に入れる(図3(a)、(b)参照)。型9は、たとえば、シリコンゴム等の弾性を備えた材料で構成されている。
【0035】
固化工程(S17)では、型入れ工程(S5、S7、S9、S11、S13、S15)で型入れされた混合物(成形品の材料)を固化する(硬化させる)。脱型工程(S19)では、固化工程(S17)で固化した混合物を型9から取り外すことでコースター1を得る。
【0036】
さらに説明すると、型9にはキャビティ(凹部)11が形成されている。型入れ工程は、前期型入れ工程(1回目の型入れ;S5)と前期空気抜き工程(1回目の空気抜き;S7)と後期型入れ工程(2回目の型入れ;S9)と後期空気抜き工程(1回目の空気抜き;S11)とを経てなされる。
【0037】
前期型入れ工程(S5)では、型9のキャビティ11の表面(たとえば表面の全面)に混合工程(S3)で混合された混合物を、所定の厚さで設ける(図3(a)参照)。前期型入れ工程(S5)をした後は、図3(a)で示すように、型9のキャビティ11内の全体が混合工程(S3)で混合された混合物で満たされておらず、型9のキャビティ内には、混合工程(S3)で混合された混合物がさらに入る凹部13が存在している。
【0038】
前期空気抜き工程(S7)では、前期型入れ工程(S5)で設けた混合物の空気抜きをする。
【0039】
後期型入れ工程(S9)では、前期空気抜き工程(S7)での空気抜きがされた後、型9のキャビティ11内に混合工程(S3)で混合された混合物を設ける(図3(b)参照)。
【0040】
後期空気抜き工程(S11)では、後期型入れ工程(S9)で設けた混合物の空気抜きをする。
【0041】
なお、後期型入れ工程(S9)と後期空気抜き工程(S11)とをこの複数回繰り返す場合がある(S13)。すなわち、前期型入れ工程(S5)、前期空気抜き(S7)後に残っている凹部13を、複数回にわけて混合物で満たす場合がある。
【0042】
各空気抜き工程(前期空気抜き工程(S7)、後期空気抜き工程(S11))は、気泡浮かせ工程と気泡排除工程とを経てなされる。
【0043】
気泡浮かせ工程では、型9のキャビティ11内に混合工程(S3)で混合された混合物を設けた後、型9をたとえば手動でタップすることで、混合工程(S3)で混合された混合物の表面に気泡を浮かせる。
【0044】
型9のタップは、混合工程(S3)で混合された混合物が重力でこぼれないように型9のキャビティ11を上にし、型9の下部(平面状の下面の少なくとも一部)を作業台等の被当接物に複数回ぶつけて型9に軽い衝撃を加えることでなされる。なお、型9に振動を与えることで、気泡浮かせ工程をしてもよい。
【0045】
気泡浮かせ工程によって、混合工程(S3)で混合された混合物があたかも液状化したような様相を呈し、混合工程(S3)で混合された混合物内に存在していた気泡が、混合工程(S3)で混合された混合物の表面に浮き出て現れる。
【0046】
気泡排除工程では、気泡浮かせ工程で生じた気泡を排除する。たとえば。気泡排除工程では、棒状に形成され先端が尖っている竹串等で、気泡浮かせ工程で浮いている気泡をつつき、気泡を破壊する。
【0047】
ところで、図3(a)等で示すように、型9の表面の一部には平面状の部位(上面)15が形成されており、型9のキャビティ11は、環状の平面状の部位15に囲まれた態様で平面状の部位15から凹んでいる。
【0048】
後期空気抜き工程(S11)での空気抜きがされた状態では、混合工程(S3)で混合された混合物が型9のキャビティ11内の総てに(キャビティ11の空間の総てを隙間なく満たすように)設けられている(図3(b)参照)とともに、平面状部位15から僅かに盛り上がっている。なお、図3(b)では、混合工程(S3)で混合された混合物の上面と平面状の部位15の平面とがお互いに一致している(同一平面上に位置している)が、実際には、混合物の上面は平面状部位15よりも僅かに盛り上がっている(図3(b)の二点鎖線17を参照)。
【0049】
また、型入れ工程は、蓋材設置工程(キャビティ閉工程;S15)を有する。蓋材設置工程(S15)では、後期空気抜き工程(S11)後に、平面状の部位19を有する蓋材21の平面が型9の平面状の部位15に接するとともに型9のキャビティ11を囲むようにして、蓋材21を型9に設ける(図3(c)参照)。
【0050】
なお、図3(c)では、平面状の部位15の一部であってキャビティ11を囲むようにしてキャビティ11に隣接している部位23で、型9と蓋材21とがお互いに接触しているが、図3(b)の二点鎖線17で示すように、混合工程(S3)で混合された混合物が僅かに盛り上がっているので、実際には、部位23では、部位15と蓋材21との間に薄い膜状の混合物が存在している。
【0051】
また、前期型入れ工程(S5)では、混合工程(S3)で混合された混合物を泡立てないようにして、型9のキャビティ11の表面に筆を用いて混合工程(S3)で混合された混合物を塗る。
【0052】
なお、前期型入れ工程(S5)では、型9のキャビティ11の表面の全面に筆を用いて混合工程で混合された混合物を塗るようにしているが、型9のキャビティ11の隅部(気泡が残りやすい部位である隅部)25に気泡が残らないようにするために、少なくとも型9のキャビティ11の隅部25に、筆を用いて混合工程(S3)で混合された混合物を塗り、型9のキャビティ11の他の表面部位では、たとえばヘラを用いて、混合工程(S3)で混合された混合物を塗ってもよい。
【0053】
また、前期型入れ工程(S5)では、まず、隅部25とロゴマーク5に対応して凸になっている部位とこの周囲に混合工程(S3)で混合された混合物を塗ってから、型9のキャビティ11の他の表面部位に混合工程(S3)で混合された混合物を塗る。
【0054】
すなわち、コースター1の表面のロゴマーク(たとえば、コースター1の平面状の表面から僅かに凹んでいるロゴマーク)5が設けられていることで、型9のキャビティ11にロゴマーク5を成形する部位(たとえば、キャビティの平面状の表面から僅かに凸になっている部位)が形成されている場合には、凸になっている部位に隅部が形成されているので、凸になっている部位とこの周囲にも筆を用いて混合工程(3)で混合された混合物を塗る。
【0055】
また、後期型入れ工程(S9)では、たとえばヘラを用いて、型9のキャビティ11内であってキャビティ11に混合工程(S3)で混合された混合物を設ける。後期型入れ工程(S9)で型9のキャビティ11内に入れられた混合物は、この入れられた直後、キャビティ11の中央部で盛り上がっている。後期型入れ工程(S9)では、キャビティ11の中央部に混合物を入れた後、後期空気抜き工程(S11)で型9をタップすることで、キャビティ11の中央部に入れられた混合物の均しと空気抜きを同時にする。
【0056】
固化工程(S17)で固化し脱型工程(S19)で型9から離した状態では、図3(d)で示すように、コースター1にミミ27が存在している。上述したように図3(c)で示す部位23のところに薄膜状の混合物が存在していたからである。
【0057】
そこで、ミミ27を除去し(S19)、続いて、常温で1回目の乾燥をする(1回目の養生をさせる;S21)。
【0058】
続いて、バリ取りを行い(S23)、常温で2回目の乾燥をし(2回目の養生をさせ;S25)、コースター1の吸水テストを行う(S27)。なお、脱型工程(S19)をした後、型9の洗浄をする(S29)。
【0059】
ここで、コースター1の成形方法についてさらに説明する。
【0060】
準備段階として、シリコン型9、蓋材であるアクリル板(たとえば透明アクリル板)21に汚れが無いことを確認する。材料の付着等の汚れがあった場合は、筆でやさしく入念に水洗いし、ペーパータオルで水分を完全にふき取る。
【0061】
混合工程(S3)では、まず、各計量工程(S1)で計量されたもの(水を除く)をかき混ぜる。続いて、このかき混ぜたもの(粉)に、第2の計量工程(S1)で計量された水を入れ、粉と水が混ざり切る様に数分間撹拌するとともに練る。
【0062】
前期型入れ工程(S5)では、練った材料を、上述したように、シリコン型9のロゴマーク5に対応する部位と隅部25に気泡が残らないように、筆を立てて、泡立てないように塗る。ロゴマーク5の部分は少し厚めにして、型9全体に、0.5mm~2mm程度の厚さで塗る。前期型入れ工程(S5)は、混合工程(S3)の終了後すぐに行うことが望ましい。
【0063】
前期空気抜き工程(S7)では、型9の手前の左右の両端を持って、型9で適宜の回数タップをすることで空気を抜く。続いて、型9を回し、4つの全ての辺で適宜の回数タップをする。気泡が出ていたら、竹串で気泡を引っかくように割る。この後、適宜の回数タップをすることで混合物の表面を均す。前期空気抜き工程(S7)は前期型入れ工程(S5)の終了後すぐに行うことが望ましい。
【0064】
後期型入れ工程(S9)では、混合工程(S3)で得られた混合物を再度適宜の時間撹拌してから、すぐに、混合物を型9のキャビティ11に入れる。また、後期型入れ工程(S9)や後期空気抜き工程(S11)では、混合工程(S3)で得られた混合物を、複数回(たとえば2回)に分けて、型9のキャビティ11に入れて空気抜きをする。
【0065】
後期型入れ工程(S9)の1回目の混合物の型入れでは、混合物を型9のキャビティ11の半分程度、空気が入らないようにキャビティ11の中央付近に入れる。後期型入れ工程(S9)の1回目の空気抜きでは、型9の手前の左右の両端を持って、型9で適宜の回数(前期空気抜き工程(S7)よりも多い所定の回数)タップをすることで空気を抜く。続いて、型9を回し、4つの全ての辺で適宜の回数(前期空気抜き工程(S7)よりも多い所定の回数)タップをする。気泡が出ていたら、竹串で気泡を引っかくように割る。この後、適宜の回数タップをすることで混合物の表面を均す。後期型入れ工程(S9)の1回目の空気抜きは、後期型入れ工程(S9)の1回目の型入れの終了後すぐに行うことが望ましい。
【0066】
後期型入れ工程(S9)の2回目の混合物の型入れでは、混合物を型9のキャビティ11の上面まで、空気が入らないようにキャビティ11に入れる。後期型入れ工程(S9)の2回目の空気抜きでも、型9の手前の左右の両端を持って、型9で適宜の回数(前期空気抜き工程(S7)よりも多い所定の回数)タップをすることで空気を抜く。続いて、型9を回し、4つの全ての辺で適宜の回数(前期空気抜き工程(S7)よりも多い所定の回数)タップをする。気泡が出ていたら、竹串で気泡を引っかくように割る。この後、適宜の回数タップをすることで混合物の表面を均す。後期型入れ工程(S9)の2回目の混合物の型入れは、後期型入れ工程(S9)の1回目の空気抜きの終了後すぐに行うことが望ましい。また、後期型入れ工程(S9)の2回目の空気抜きは、後期型入れ工程(S9)の2回目の型入れの終了後すぐに行うことが望ましい。
【0067】
蓋材設置工程(S15)では、図3(b)に二点鎖線17で示すように、混合物が少し盛り上がっているので、アクリル板21を端から少しずつ空気が入らないように型9の部位15に張り付ける。このときに空気が残っているのであれば、アクリル板21を前後左右に少し動かし空気を抜く。気泡が見えなくなったら、アクリル板21をシリコン型9に密着させるように、アクリル板21とシリコン型9と端を押え付ける。
【0068】
コースター1の成形方法によれば、石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズと成形材料と水とを混ぜ合わせ、この混ぜ合せた混合物(成形品の材料)を型9に入れて固化させ、固化したものを型9から取り外すことでコースター1を得ており、コースター1の材料として、スサ、骨材を使用していないので、コースター1の表面のざらつきを無くすことができ、使用感が良好になる。
【0069】
また、コースター1の成形方法によれば、木節粘土の最大粒径を300μmにしている等、コースター1の材料の粒径を小さくしているので、これによっても、コースター1の表面のざらつきを無くすことができる。
【0070】
また、コースター1の成形方法によれば、色の濃い木節粘土の粒子を使用していないので、顔料の色が木節粘土等によって邪魔されず、色をきれいに出すことができる。
【0071】
さらに、コースター1の成形方法によれば、シラスを用いているので、従来の壁材と同様に消臭性や調湿性等を得ることができる。
【0072】
また、コースター1の成形方法によれば、型入れ工程が、前期型入れ工程(S5)と前期空気抜き工程(S7)と後期型入れ工程(S9)と後期空気抜き工程(S11)とによってなされるので、型9のキャビティ11の表面と混合物(コースター1)との間に空隙が形成されることが防止され、内部に気泡が入り込んでおらず表面にも気泡の痕跡が形成されていないコースター1を得ることができる。これにより、コースター1の強度の低下が防止され、コースター1の見栄えが悪化することが防止され表面のざらつきを無くすことができる。
【0073】
また、コースター1の成形方法によれば、空気抜き工程(S7、S11)が、型9をタップすることで気泡を浮かせる気泡浮かせ工程と、竹串等で気泡を破壊する気泡排除工程とでなされるので、特殊な装置や器具を用いることなく、コースター1における気泡の発生を防止することができる。
【0074】
また、コースター1の成形方法によれば、後期空気抜き工程(S11)での空気抜きがされた状態では、混合工程(S3)で混合された混合物(成形品の材料)が型9のキャビティ11内の総てに設けられているとともに型9の平面状部位15から僅かに盛り上がっており、型入れ工程が、後期空気抜き工程(S11)後に蓋材21の平面状の部位19が型9の平面状の部位15に接するとともに型9のキャビティ11を囲むようにして蓋材21を型9に設ける蓋材設置工程をなされるので、型9のキャビティ11の空間に隙間なく成形品の材料を充填してこの充填された成形品の材料を固化させることができ、複数のコースター1を製造するときに、コースター1の蓋材21に対向して部位が混合物不足で凹むことがなくなり、形状のばらつきが無いコースター1を容易に得ることができる。
【0075】
また、コースター1の成形方法によれば、型入れ工程が、型9のキャビティ11の表面に筆を用いて成形品の材料を塗ることでなされるので、キャビティ11の表面とコースター1との間に空隙が形成されることを一層確実に防止することができ、特に、キャビティ11の隅部25に空隙が形成されることを確実に防止することができ、表面(特に角部)に空隙や気泡の痕跡が形成されていないコースター1を得ることができる。
【0076】
ところで、第1の計量工程(S1)において、好ましくは、石膏等の割合を次に示すようにすることができる。すなわち、53.0wt%~58.0wt%の石膏、24.0wt%~27.0wt%のシラス、9.0wt%~11.0wt%のパミス、4.0wt%~6.0wt%の木節粘土、0.50wt%~7.0wt%の顔料、0.09wt%~0.14wt%のコットンパウダー、0.05wt%~0.07wt%のメトローズとすることができる。この場合において、第2の計量工程(S1)で、好ましくは、第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズとを合せた質量が70.0wt%~80.0wt%になり、成形材料の質量が0.3wt%~0.5wt%、水の質量が19.0wt%~30.0wt%となるようにすることができる。
【0077】
さらに、1つ目の具体例では、第1の計量工程(S1)が、57.07wt%の石膏、26.67wt%のシラス、10.38wt%のパミス、5.19wt%の木節粘土、0.50wt%の顔料、0.13wt%のコットンパウダー、0.06wt%のメトローズとなる。この場合において、第2の計量工程(S1)で、第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズとを合せた質量が74.72wt%であるとすると、成形材料の質量が0.37wt%になり、水の質量が24.91wt%になる。
【0078】
2つ目の具体例では、第1の計量工程(S1)が、55.14wt%の石膏、25.77wt%のシラス、10.03wt%のパミス、5.01wt%の木節粘土、3.86wt%の顔料、0.13wt%のコットンパウダー、0.06wt%のメトローズとなる。この場合において、第2の計量工程(S1)で、第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズとを合せた質量が74.72wt%であるとすると、成形材料の質量が0.37wt%になり、水の質量が24.91wt%になる。
【0079】
3つ目の具体例では、第1の計量工程(S1)が、53.96wt%の石膏、24.83wt%のシラス、9.81wt%のパミス、4.91wt%の木節粘土、6.33wt%の顔料、0.10wt%のコットンパウダー、0.06wt%のメトローズとなる。この場合において、第2の計量工程(S1)で、第1の計量工程で計量された石膏とシラスとパミスと木節粘土と顔料とコットンパウダーとメトローズとを合せた質量が74.72wt%であるとすると、成形材料の質量が0.37wt%になり、水の質量が24.91wt%になる。
【0080】
なお、上記説明では、型9が1つの塊になっているが、成形品1の形状等に応じて、型9が複数の部材に分割されている構成であってもよい。この場合、当然のことではあるが、複数の部材を組付けた状態で型9が使用される。
【符号の説明】
【0081】
1 成形品(コースター)
9 型
11 キャビティ
15 型の平面状の部位
19 蓋材の平面状の部位
21 蓋材
S1 第1の計量工程、第2の計量工程
S3 混合工程
S5 前期型入れ工程
S7 前期空気抜き工程
S9 後期型入れ工程
S11 後期空気抜き工程
S15 蓋材設置工程
S17 固化工程
S19 脱型工程
図1
図2
図3