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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】触覚センサ及び荷重解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019123853
(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公開番号】P2021009110
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】寒川 雅之
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-68988(JP,A)
【文献】特開2007-218906(JP,A)
【文献】特開2006-78429(JP,A)
【文献】特開2014-134543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、並びに、前記基板の上方に設けられた第1カンチレバー及び第2カンチレバーを有するセンサ素子と、
前記センサ素子を上方から覆うとともに、前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する弾性体と、
を備え、前記弾性体に付加された荷重を前記センサ素子で検出する触覚センサであって、
前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーは、所定の軸線方向に沿って配置されるとともに、前記軸線方向における位置が互いに異なり、
前記弾性体は、上方から見て前記センサ素子よりも大きく、
前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する封止部と、
前記封止部よりも上方に位置し、検出対象の物体が接触する接触部と、を有し、
前記接触部は、前記封止部よりも硬さが小さい、
触覚センサ。
【請求項2】
基板、並びに、前記基板の上方に設けられた第1カンチレバー及び第2カンチレバーを有するセンサ素子と、前記センサ素子を上方から覆うとともに前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する弾性体と、を備え、前記弾性体に付加された荷重を前記センサ素子で検出する触覚センサであって、前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーが所定の軸線方向に沿って配置されるとともに前記軸線方向における位置が互いに異なり、前記弾性体が上方から見て前記センサ素子よりも大きい触覚センサと、
前記第1カンチレバーに基づく第1出力値、及び、前記第2カンチレバーに基づく第2出力値を前記センサ素子から取得し、前記第1出力値と前記第2出力値の比である出力比を求める制御手段と、
前記第1出力値及び前記第2出力値に対する前記軸線方向における荷重付加位置の特性を示す特性情報を予め記憶する記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、求めた前記出力比と、前記特性情報とに基づいて、前記軸線方向における前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーの間隔よりも広い範囲で前記荷重付加位置を特定可能である、
荷重解析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、特定した前記荷重付加位置と、前記特性情報とに基づいて、特定した前記荷重付加位置において付加された荷重を求める、
請求項に記載の荷重解析装置。
【請求項4】
前記出力比として、前記第1出力値及び前記第2出力値の一方を他方で除算した値を第1出力比とし、前記第1出力比の逆数を第2出力比とした場合、
前記制御手段は、前記第1出力比が予め前記記憶手段に記憶された設定範囲外の場合、前記第2出力比に基づいて前記荷重付加位置を特定する、
請求項又はに記載の荷重解析装置。
【請求項5】
前記第1カンチレバーの先端と、前記第2カンチレバーの先端とは、同じ方向に向いている、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載の荷重解析装置。
【請求項6】
前記弾性体は、
前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する封止部と、
前記封止部よりも上方に位置し、検出対象の物体が接触する接触部と、を有し、
前記接触部は、前記封止部よりも硬さが小さい、
請求項2乃至5のいずれか1項に記載の荷重解析装置。
【請求項7】
前記第1カンチレバーの先端と、前記第2カンチレバーの先端とは、同じ方向に向いている、
請求項1に記載の触覚センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚センサ及びこれを備える荷重解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)プロセスで作製した微小なカンチレバーを有する触覚センサが知られている。例えば、特許文献1には、3つ以上のカンチレバーを含むセンサ素子と、センサ素子を被覆する弾性材料とを有する触覚センサが、基板上に複数配列されて構成された触覚センサアレイが開示されている。特許文献1に開示された触覚センサは、複数のカンチレバーの各々に対応した出力値に基づいて、弾性材料に付加される圧力や剪断力を検出可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5504391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された構造のように触覚センサをアレイ状に配置するか否かにかかわらず、従来の触覚センサの構造では、ある一点での荷重を得たい場合には、カンチレバーの直上に付加された荷重を求めることになる。つまり、求めたい荷重の付加範囲が広くなればなる程、必要なカンチレバーの数が増大してしまう。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、付加された荷重を少数のカンチレバーで解析することができる触覚センサ及びこれを備える荷重解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る触覚センサは、
基板、並びに、前記基板の上方に設けられた第1カンチレバー及び第2カンチレバーを有するセンサ素子と、
前記センサ素子を上方から覆うとともに、前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する弾性体と、
を備え、前記弾性体に付加された荷重を前記センサ素子で検出する触覚センサであって、
前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーは、所定の軸線方向に沿って配置されるとともに、前記軸線方向における位置が互いに異なり、
前記弾性体は、上方から見て前記センサ素子よりも大きく、
前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する封止部と、
前記封止部よりも上方に位置し、検出対象の物体が接触する接触部と、を有し、
前記接触部は、前記封止部よりも硬さが小さい。
【0007】
前記第1カンチレバーの先端と、前記第2カンチレバーの先端とは、同じ方向に向いていてもよい。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る荷重解析装置は、
基板、並びに、前記基板の上方に設けられた第1カンチレバー及び第2カンチレバーを有するセンサ素子と、前記センサ素子を上方から覆うとともに前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーを封止する弾性体と、を備え、前記弾性体に付加された荷重を前記センサ素子で検出する触覚センサであって、前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーが所定の軸線方向に沿って配置されるとともに前記軸線方向における位置が互いに異なり、前記弾性体が上方から見て前記センサ素子よりも大きい触覚センサと、
前記第1カンチレバーに基づく第1出力値、及び、前記第2カンチレバーに基づく第2出力値を前記センサ素子から取得し、前記第1出力値と前記第2出力値の比である出力比を求める制御手段と、
前記第1出力値及び前記第2出力値に対する前記軸線方向における荷重付加位置の特性を示す特性情報を予め記憶する記憶手段と、を備え、
前記制御手段は、求めた前記出力比と、前記特性情報とに基づいて、前記軸線方向における前記第1カンチレバー及び前記第2カンチレバーの間隔よりも広い範囲で前記荷重付加位置を特定可能である。
【0011】
前記制御手段は、特定した前記荷重付加位置と、前記特性情報とに基づいて、特定した前記荷重付加位置において付加された荷重を求めてもよい。
【0012】
前記出力比として、前記第1出力値及び前記第2出力値の一方を他方で除算した値を第1出力比とし、前記第1出力比の逆数を第2出力比とした場合、
前記制御手段は、前記第1出力比が予め前記記憶手段に記憶された設定範囲外の場合、前記第2出力比に基づいて前記荷重付加位置を特定してもよい。
前記荷重解析装置において、前記第1カンチレバーの先端と、前記第2カンチレバーの先端とは、同じ方向に向いていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、付加された荷重を少数のカンチレバーで解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る触覚センサの概略平面図を含む、荷重解析装置の構成図である。
図2図1に示すA-A線での触覚センサの概略断面図である。
図3】触覚センサの部分断面図である。
図4】荷重解析処理の一例を示すフローチャートである。
図5】(a)は、1つのカンチレバーに対応した出力値の位置依存性を示すグラフの図であり、(b)は、当該出力値の荷重依存性を示すグラフの図である。
図6】第1カンチレバー及び第2カンチレバーの各々に対応した出力値の位置依存性を示すグラフの図である。
図7】(a)及び(b)は、出力比とX方向における位置との関係を示すグラフの図である。
図8】(a)は、変形例1に係る触覚センサの概略断面図であり、(b)は、変形例2に係る触覚センサの概略平面図である。
図9】変形例1に係る弾性体を説明するための図であり、1つのカンチレバーに対応した出力値の位置依存性を示すグラフの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(全体構成)
本実施形態に係る荷重解析装置1は、図1に示すように、触覚センサ100と、制御装置200と、を備える。以下では、図中に示す、互いに直交するX、Y、Z軸を用いて構成を適宜説明する。各軸方向において、矢印が向く方向を正(+)の方向とする。X軸及びY軸は、後述する基板10の主面(図3における上面)と平行に設定され、Z軸は、当該主面と垂直に設定されている。
【0017】
触覚センサ100は、図1図3に示すように、センサ素子20と、センサ素子20を上方から覆う弾性体30と、を備える。センサ素子20は、図3に示すように、基板10及び基板10上に積層された後述の各層を含む。例えば、センサ素子20は、図1に示すように、平面視で矩形状をなす。図1に破線で示すように、弾性体30は、上方(+Z方向)から見てセンサ素子20よりも大きい。例えば、弾性体30は、平面視で矩形状に形成されている。
【0018】
センサ素子20は、開口H1及び開口H2を有するフレーム21と、開口H1内に位置する第1カンチレバーC1と、開口H2内に位置する第2カンチレバーC2と、を備える。第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2は、それぞれ、X方向に長尺の平板状に形成されている。第1カンチレバーC1は、一端が開口H1の端部に固定され、他端(先端)が+X方向に延びている。第2カンチレバーC2は、一端が開口H2の端部に固定され、他端(先端)が+X方向に延びている。第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2は、各々の長手方向がX方向に沿って配置されるとともに、X方向における位置が互いに異なるように配置されている。
【0019】
この実施形態では、一例として、第1カンチレバーC1と第2カンチレバーC2は、Z方向から見て、同じ軸線(X軸と平行な軸線)上に設けられていると共に、その長さ及び大きさが同じに設定されている。第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2の各々は、X方向の長さが、例えば0.3mmに設定されている。
【0020】
フレーム21は、具体的には、図3に示すように、基板10上に各層が積層されて構成されている。当該各層は、基板10に近いほうから順に、絶縁層11、シリコン(Si)層12、抵抗層13、及び金属層14を有する。第1カンチレバーC1は、このように形成されるフレーム21の各層のうち、開口H1内に突出するシリコン層12及び抵抗層13から構成されている。なお、図示しないが、第2カンチレバーC2も同様に、開口H2内に突出するシリコン層12及び抵抗層13から構成される。また、抵抗層13は、ピエゾ抵抗効果を利用した半導体ひずみゲージにおける抵抗体として構成されてもよいし、等方性導体を用いた金属ひずみゲージ(例えば、ニッケル・クロム合金や銅・ニッケル系合金からなる箔型又は線型ひずみゲージ)における抵抗体として構成されてもよい。
【0021】
基板10には、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2の各々の抵抗の変化量をアナログ電圧に変換するブリッジ回路や、デジタル信号の出力値を制御装置200へ供給する出力回路などが実装されている。この出力回路は、例えば、ブリッジ回路の出力電圧を増幅する増幅器や、増幅器の出力電圧をデジタル信号の出力値に変換するADC(Analog to Digital Converter)を備える。基板10は、金属層14を介して、抵抗層13と電気的に接続されている。具体的に、基板10のADCからは、第1カンチレバーC1の変形に基づく出力値Sと、第2カンチレバーC2の変形に基づく出力値Sとが制御装置200に供給される。なお、以下では、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を区別なく、カンチレバーCと総称し、カンチレバーCの変形に基づく出力値を出力値Sと呼ぶ場合がある。
【0022】
弾性体30は、例えばエラストマーからなり、センサ素子20を上方から覆って設けられている。弾性体30は、図1に示すように、上方(+Z方向)から見てセンサ素子20よりも大きい。弾性体30は、図2に示すように、開口H1及び開口H2の各々の中にも充填されており、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を封止している。つまり、第1カンチレバーC1の上面及び下面を含む外面は、弾性体30と当接している。同様に、第2カンチレバーC2の上面及び下面を含む外面は、弾性体30と当接している。弾性体30の上面は、検出対象の物体2が接触する接触面30aとして機能する。接触面30aは、例えば、XY平面と平行に設定されている。接触面30aから物体2が接触面30aに接触することにより、触覚センサ100に荷重が付加される。
【0023】
制御装置200は、センサ素子20の基板10と電気的に接続され、基板10から供給される出力値Sに基づいて触覚センサ100に付加された荷重を解析する。制御装置200は、例えばマイクロコンピュータから構成され、記憶部201と、制御部202とを有する。記憶部201は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。記憶部201のROM内には、各々後述するが、荷重解析処理を実行するための動作プログラム、位置特性データD、設定範囲T、比例定数k等のデータが格納されている。制御部202は、CPU(Central Processing Unit)等から構成され、記憶部201に格納されている動作プログラムを実行して、荷重解析処理を実行する。
【0024】
ここで、触覚センサ100の接触面30aに検出対象の物体2が接触し、カンチレバーCが変形すると、カンチレバーCの抵抗が変化する。この抵抗の変化量が、前述のブリッジ回路及び増幅器により電圧の変化として検出される。さらに、増幅器によって出力電圧がADCによりデジタル信号の出力値Sに変換される。制御部202は、この出力値S(具体的には、第1カンチレバーC1に対応する出力値Sと、第2カンチレバーC2に対応する出力値S)を取得し、取得した出力値Sに基づいて触覚センサ100に付加された荷重を解析する。
【0025】
(製造方法)
次に、触覚センサ100の製造方法の一例について説明する。
まず、SOI(Silicon On Insulator)基板を用意する。SOI基板は、例えば、基板10、絶縁層11及びシリコン層12を有する。具体的に、SOI基板は、Siからなる基板10上に酸化シリコン(SiO)からなる絶縁層11(埋め込み酸化膜)を形成し、さらに、絶縁層11上にSiからなるシリコン層12を形成することにより得られる。
【0026】
続いて、シリコン層12上に不純物(例えばホウ素)をドーピングしてシリコン層12の一部をN型又はP型半導体とした抵抗層13を形成する。なお、抵抗層13は、前述の通り、金属ひずみゲージにおける抵抗体として形成されてもよい。そして、形成した抵抗層13上に、フォトリソグラフィと、蒸着又はスパッタリングとにより金属層14のパターンを形成する。その後、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、シリコン層12及び抵抗層13の不要部分を除去する。当該不要部分は、後に第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を構成する部分における絶縁層11よりも上の部分に相当する。
【0027】
続いて、エッチングにより絶縁層11の不要部分を除去する。当該不要部分は、後に第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を構成する部分と、基板10との間の隙間部分に相当する。ここまでの工程によってセンサ素子20が形成される。つまり、開口H1及び開口H2を有するフレーム21と、第1カンチレバーC1と、第2カンチレバーC2とが形成される。
【0028】
続いて、基板10上に例えばエラストマーからなる弾性樹脂を、当該弾性樹脂で絶縁層11、シリコン層12、抵抗層13及び金属層14を埋設するように塗布し、硬化させることにより、弾性体30を形成する。エラストマーとしては、例えば、PDMS(polydimethylsiloxane)樹脂を使用することができるが、その構成は任意であり、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等を用いることができる。以上の工程により、触覚センサ100を製造することができる。
【0029】
(荷重解析手法)
続いて、後述の荷重解析処理の理解を容易にするため、本実施形態に係る荷重解析手法について説明する。弾性体30の接触面30aから、-Y方向への荷重w(垂直荷重)が触覚センサ100に付加される場合を考える。
【0030】
1つのカンチレバーCからの出力値S[ppm]は、図5(a),(b)に示すように、X方向の位置x[mm]と、荷重w[N]とに依存する。すなわち、S=f(x,w)と表せる。なお、グラフ縦軸の「抵抗変化」は、出力値Sに対応する。また、出力値S[ppm]は、基板10のADCから制御部202が取得するデジタル信号の出力値と同義、又は対応する値である。
ここで、出力値Sの位置xに対する依存性と、出力値Sの荷重wに対する依存性とが独立しているものと見做せば、近似して、S=f(x)f(w)と変形することができる。また、図5(b)に示すように、荷重wに対する出力値Sの依存性は、線形を示しているため、f(x)=kw(kは比例定数)と表すことができる。
【0031】
以上により、出力値Sは、S=kwf(x)と表すことができる。第1カンチレバーC1に基づく出力値をSとし、第2カンチレバーC2に基づく出力値Sとすれば、上述の通り、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2のX方向の長さや、両者を覆う弾性体30は同様であるため、荷重wに対する出力値S,Sの依存性も同様と見做せる。したがって、S=kwf(x)、S=kwf(x)と表すことができる。
これらの比は、S/S=f(x)/f(x)となり、位置xにのみ依存する。したがって、f(x)、f(x)を実験やシミュレーションによって予め測定しておけば、位置xを特定することができる。
【0032】
本実施形態では、一例として、第1カンチレバーC1と第2カンチレバーC2のX方向における間隔Pを、図5(a)における出力値Sが正のピークをとる位置と、負のピークをとる位置との間隔の半分(P=1.3mm)に設定した。この場合の出力値S,Sの位置xの依存性は、図6のようになる。また、図6に示す結果から求めた、出力比S/S(以下、第1出力比と呼ぶ)と位置xとの関係は、図7(a)のようになり、出力比S/S(以下、第2出力比と呼ぶ)と位置xとの関係は、図7(b)のようになる。ここで、間隔Pは、図2に示すように、例えば、第1カンチレバーC1のX方向における中心位置と、第2カンチレバーC2のX方向における中心位置との間隔である。なお、本実施形態のように、第1カンチレバーC1と第2カンチレバーC2とが、同じ向き(+X方向)に向いている場合は、第1カンチレバーC1の先端と、第2カンチレバーC2の先端との間隔として捉えることもできる。
【0033】
第1カンチレバーC1と第2カンチレバーC2とのX方向における間隔Pを、P=1.3mmに設定した場合、垂直荷重が付加された位置xの検出可能範囲Q(図2参照)は、図7(a),(b)を参照して分かるように、x=-5mmからx=6mmまでの、約11mmとなる。したがって、弾性体30の接触面30aは、そのX方向における長さが検出可能範囲Qよりも長く設定されている。なお、検出可能範囲Qは、図6に示す、位置xに依存して変化する出力値S,Sを示すグラフにおいて、任意の位置xに対して出力値S,Sの双方が存在する範囲に対応する。この検出可能範囲Qは、間隔Pや、第1及び第2カンチレバーC1,C2や弾性体30の特性に応じて定まるが、前述の設定(P=1.3mm)では、間隔Pの約8.5倍(Q/P≒8.5)の長さに亘る範囲となる。
以上を考慮すると、弾性体30のX方向における長さは、間隔Pの少なくとも5倍以上あることが好ましい。さらに、弾性体30のX方向における長さは、間隔Pの8倍以上や間隔Pの8.5倍以上であることがより好ましい。
【0034】
以上のように測定及び算出可能な、図6に示す、出力値Sと位置xの関係を表すデータ(以下、第1関係データD1と呼ぶ。)や、出力値Sと位置xの関係を表すデータ(以下、第2関係データD2と呼ぶ。)を予め記憶部201に記憶しておく。併せて、図7(a)に示す第1出力比と位置xの関係を表すデータ(以下、第1出力比データR1と呼ぶ。)と、図7(b)に示す第2出力比と位置xの関係を表すデータ(以下、第2出力比データR2と呼ぶ。)を予め記憶部201に記憶しておく。制御部202は、これらのデータと、触覚センサ100から取得した出力値S,Sに基づき、X方向における垂直荷重の付加位置(位置x)を特定(推定)する。
【0035】
また、位置xが特定できれば、f(x),f(x)は、第1及び第2関係データD1,D2によって既知であるため、特定した位置xにおける荷重wは、w=S/{kf(x)}もしくはw=S/{kf(x)}から求める(推定する)ことができる。
【0036】
この実施形態では、記憶部201に予め記憶された位置特性データDは、第1関係データD1、第2関係データD2、第1出力比データR1および第2出力比データR2を含んで構成されている。なお、制御部202は、記憶部201に記憶された第1関係データD1及び第2関係データD2から、第1出力比データR1及び第2出力比データR2を算出することができるため、記憶部201に予め記憶される位置特性データDは、少なくとも第1関係データD1及び第2関係データD2を含んでいればよい。
【0037】
なお、第1,第2関係データD1,D2は、図6のグラフを近似した関数を表す数式のデータであってもよいし、出力値と特定対象の位置xとが対応して構成されたテーブルデータであってもよい。同様に、第1,第2出力比データR1,R2は、図7(a),(b)のグラフを近似した関数を表す数式のデータであってもよいし、出力比と特定対象の位置xとが対応して構成されたテーブルデータであってもよい。以下、制御部202が記憶部201に記憶された動作プログラムに従って実行する荷重解析処理について、図4を参照して説明する。
【0038】
(荷重解析処理)
荷重解析処理において、まず、制御部202は、触覚センサ100から出力値S及び出力値Sを取得する(ステップA1)。続いて、制御部202は、第1出力比S/Sを算出する(ステップA2)。
【0039】
続いて、制御部202は、算出した第1出力比S/Sが、予め定められた設定範囲T内であるか否かを判別する(ステップA3)。設定範囲Tは、図7(a)に示すように、位置xに対して緩やかに変化する出力比の範囲(つまり、算出した第1出力比S/S基づき、良好に位置xを特定可能な範囲)して予め実験等により定められ、記憶部201のROM内に記憶されている。
制御部202は、算出した第1出力比S/Sが設定範囲T内である場合(ステップA3;Yes)、記憶部201に記憶された第1出力比データR1を用い、算出した第1出力比S/Sに対応する位置xを特定する(ステップA4)。つまり、図7(a)において、算出した第1出力比S/Sに対応する位置xを特定する。なお、図7(a)に示すように、算出した第1出力比S/Sの値に対応する位置xは2つあるが、制御部202は、ステップA1で取得した出力値Sが正の値であるか負の値であるかに応じて、適切な位置xを特定可能である。
【0040】
一方、算出した第1出力比S/Sが設定範囲T外である場合(ステップA3;No)、位置xに対して出力比の変化が急峻であるか、第1出力比の分母であるSが0となり特異点が生じていると言えるため、第1出力比データR1を用いて良好に位置xを特定することが困難である。
したがって、この場合、制御部202は、第2出力比S/Sを算出し(ステップA5)、記憶部201に記憶された第2出力比データR2を用い、算出した第2出力比S/Sに対応する位置xを特定する(ステップA6)。つまり、図7(b)において、算出した第2出力比S/Sに対応する位置xを特定する。なお、図7(b)に示すように、算出した第2出力比S/Sの値に対応する位置xは2つあるが、制御部202は、ステップA1で取得した出力値Sが正の値であるか負の値であるかに応じて、適切な位置xを特定可能である。
【0041】
なお、図7(a)と図7(b)とを比較して分かるように、第1出力比S/Sに基づいて位置xの特定が困難な箇所(例えば、x=-1付近や、x=5付近)は、第2出力比S/Sに基づいて位置xを良好に特定可能な箇所となっている。この逆も同様である。
【0042】
ステップA4又はA6で位置xを特定すると、制御部202は、特定した位置xと、出力値S及び第1関係データD1(もしくは、出力値S及び第2関係データD2)に基づき、特定した位置xにおける荷重wを求める(ステップA7)。前述のように、荷重wは、w=S/{kf(x)}もしくはw=S/{kf(x)}から求めることができる。以上が荷重解析処理である。
【0043】
以上に説明した触覚センサ100は、例えば、ロボットハンド部分での対象物体との力学的関係を検出するセンサとして用いられる。但し、触覚センサ100は、ロボットハンドに用いられるものに限られず、工具や道具に設けられ、人間の部位(例えば、手や足)の接触を検出するものであってもよい。
【0044】
本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変形(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。以下に変形の一例を説明する。
【0045】
(変形例1)
弾性体は、上方から見てセンサ素子20よりも大きければ、上記実施形態の形状に限られず、形状を適宜変更することができる。一例として、図8(a)に、上記実施形態とは異なる形状の弾性体30Mを有する、変形例1に係る触覚センサ101を示す。変形例1に係る弾性体30Mは、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を封止する封止部31と、封止部31よりも上方に位置し、検出対象の物体2が接触する接触部32と、を有する。
接触部32は、下方(-Z方向)に向かって開口する、断面略U字状に形成されている。例えば、接触部32は、下方に向かって開口する四角筒状に形成されており、その内部空間内に封止部31及びセンサ素子20が位置している。接触部32の上面は、検出対象の物体2が接触する接触面30aとして機能する。接触面30aは、例えば、XY平面と平行に設定されている。変形例1に係る弾性体30Mにおいても、その接触面30aは、X方向における長さが検出可能範囲Q(図2参照)よりも長く設定されている。
封止部31は、一例として、Z方向から見てセンサ素子20と、概ね同じ大きさで立方体状に形成されている。封止部31は、上端部が接触部32と接続され、下端部において第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を封止している。封止部31の側面には、X方向に凹む溝31aが形成されている。この溝31aによって封止部31は、X方向に弾性変形し易くなる。これにより、接触部32に荷重を付加した場合における、当該荷重に対する位置xの依存性を顕著にすることが可能となる。
【0046】
また、接触部32の硬さ(硬度)は、封止部31の硬さよりも小さく設定されるのが好ましい。ここで、図9に接触部32の硬さを変えた場合における、1つのカンチレバーに対応した出力値のX方向の位置x[mm]に対する依存性を示す。「四角」のプロットによるグラフ(グラフ3)は、接触部32の硬さが「15」である場合を示しており、「丸」のプロットによるグラフ(グラフ4)は、接触部32の硬さが「7」である場合を示している。なお、グラフ3及びグラフ4共に、封止部31の硬さは「15」に設定した。また、硬さは、「JIS K 6253」に準拠したデュロメータで計測したものである。グラフ3とグラフ4とを比較して分かるように、接触部32の硬さが小さいほうが、位置xに対する出力値S(縦軸の抵抗変化に対応)の変化量を稼ぐことができるため、前述の荷重解析処理によって、良好に位置xの特定や、特定した位置xにおける垂直荷重を求めることができる。
【0047】
なお、前述した手法で良好に荷重を解析することができる限りにおいては、弾性体30Mにおける封止部31及び接触部32の各々の硬さを同じに設定してもよい。また、図2に示す実施形態に係る弾性体30において、検出対象の物体2が接触する接触部の硬さを、第1及び第2カンチレバーC1,C2を封止する封止部の硬さよりも小さく設定してもよい。
つまり、センサ素子20を上方から覆う弾性体は、上方から見てセンサ素子20よりも大きく、そのX方向における長さが検出可能範囲Qよりも長ければ、形状の変更や、硬さが異なる部分の有無は、目的に応じて任意である。
【0048】
(変形例2)
以上の実施形態では、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2の各々の先端が同じ方向(+X方向)に向いている例を示したが、これに限られない。図8(b)に示す、変形例2に係る触覚センサ102のように、互いの先端が逆向きとなる第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を有するセンサ素子20Mを備えていてもよい。図8(b)に示す例では、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2が、センサ素子20Mに形成された開口H内に位置する。第1カンチレバーC1は、一端が開口Hの端部に固定され、他端(先端)が+X方向に延びている。第2カンチレバーC2は、一端が開口Hの端部に固定され、他端(先端)が第1カンチレバーC1とは逆の-X方向に延びている。また、図8(b)に示すように、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2は、各々の長手方向がX方向に沿っていれば、Y方向における位置がずれていてもよい。
つまり、図6及び図7を参照して説明したように、出力比の位置xに対する依存性を予め実験等により求めることができ、算出した出力比に基づいて位置xを特定することができれば、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2の配置は任意である。具体的には、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2は、所定の軸線方向(本例ではX方向)に沿って配置されるとともに、間隔P(P>0)を空けて、当該軸線方向における位置が互いに異なっていればよい。
【0049】
(他の変形例)
以上では、説明の理解を容易にするため、一対のカンチレバーCをX方向に沿って配置した例を示したが、これに加えて、X方向と交差する方向(好ましくは、Y方向)に沿う一対のカンチレバーCをセンサ素子20に設けても良いことは、言うまでもない。例えば、Y方向に沿う一対のカンチレバーCをさらに設けた場合、Y方向においても前述の荷重解析処理を実行することにより、X方向における荷重の付加位置、及び当該位置における荷重だけでなく、Y方向における荷重の付加位置、及び当該位置における荷重を求めることができる。この場合は、弾性体30の接触面30aは、そのY方向における長さも、Y方向における検出可能範囲よりも長く設定される。
このようにすれば、所定の軸線方向における荷重の付加位置や当該位置での荷重の大きさだけでなく、XY平面に亘る垂直荷重(Z方向の荷重)の分布や、Z方向の圧力や、XY面に沿った剪断力など、種々の応力を解析することができる。
【0050】
以上では、カンチレバーC(第1カンチレバーC1,第2カンチレバーC2)がX方向に長尺の平板状に形成されている例を説明したが、その形状や大きさは任意である。例えば、カンチレバーCは、平面視で三角形状に形成されていてもよい。また、カンチレバーCは、XY平面に対して傾斜した形状であってもよい。また、前述の荷重解析処理を実行することにより、所定の軸線方向における荷重の付加位置及び当該位置における荷重の大きさを求めることができる限りにおいては、第1カンチレバーC1と第2カンチレバーC2との大きさや形状が異なっていてもよい。また、以上では、カンチレバーCが固定端から自由端(先端)に向かって長尺に形成されている例を説明したが、これに限られない。カンチレバーCは、固定端から自由端に向かう長さ(例えばX方向の長さ)よりも、その幅(例えばY方向の長さ)が大きくてもよい。
【0051】
以上では、弾性体30,30Mの接触面30aがXY平面と平行に設定されている例を説明したが、これに限られない。前述の荷重解析処理を実行することにより、所定の軸線方向における荷重の付加位置及び当該位置における荷重の大きさを求めることができる限りにおいては、接触面30aは、曲面や、隆起した部分を含んでいてもよい。
【0052】
以上では、所定の軸線方向(例えばX方向)における垂直荷重(Z方向の荷重)の大きさを算出する例を示したが、算出対象の荷重は、Z軸に対して斜めに加わる荷重であってもよい。算出対象の荷重に対する位置xの依存性を、図6に示すように予め実験等により求めることができれば、算出対象の荷重の付加方向は任意である。
【0053】
以上の荷重解析処理では、第1出力比S/Sが設定範囲T外である場合に、第2出力比S/Sを求める例を説明したが、第2出力比S/Sが設定範囲外である場合に、第1出力比S/Sを求めてもよいことは勿論である。この場合の設定範囲は、図7(b)に基づいて定めればよい。
【0054】
センサ素子20は、少なくとも第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を含み、SOI基板から製造されるものであれば良い。以上の例では、基板10に形成されるものとした各種回路(ブリッジ回路や、増幅器及びADCを含む出力回路)の少なくとも一部は、基板10の外部に設けられていてもよい。例えば、センサ素子20は、前述の製造方法を経て、一体(例えば1つのチップ状)に形成されたものであればよく、このようなセンサ素子20を上方から覆う弾性体30は、上方から見てセンサ素子20よりも大きければよい。変形例1に係る弾性体30Mや、変形例2に係るセンサ素子20Mについても同様である。
【0055】
(1)以上に説明した触覚センサ100(触覚センサ101,102も同様。以下略。)は、センサ素子20(センサ素子20Mも同様。以下略。)と、弾性体30(弾性体30Mも同様。以下略。)とを備え、弾性体30に付加された荷重(例えば、Z方向の荷重)をセンサ素子20で検出する。センサ素子20は、基板10、並びに、基板10の上方に設けられた第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を有する。弾性体30は、センサ素子20を上方から覆うとともに、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を封止する。第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2は、所定の軸線方向(例えばX方向)に沿って配置されるとともに、前記軸線方向における位置が互いに異なる。また、弾性体30は、上方から見てセンサ素子20よりも大きい。なお、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2が所定の軸線方向(例えばX方向)に沿って配置されるとは、第1カンチレバーC1の固定端から自由端(先端)に向かう方向と、第2カンチレバーC2の固定端から自由端(先端)に向かう方向とが、当該軸線方向に沿っている態様であればよく、図2図8(a)に示すように、第1カンチレバーC1の先端と第2カンチレバーC2の先端とが同じ方向に向く態様と、図8(b)に示すように、第1カンチレバーC1の先端と第2カンチレバーC2の先端とが互いに逆方向に向く態様を含むことは勿論である。
【0056】
上記(1)の構成によれば、弾性体30におけるカンチレバーCの直上以外の離れた箇所に接触した場合でも、弾性体30の横変形や曲げ変形によりカンチレバーCに力が伝達される。これにより、図6に示すように、カンチレバーCの出力値に軸線方向における位置の依存性を与えることができる。したがって、前述の荷重解析手法により、カンチレバーCの長さや間隔Pに比べて、広範な検出可能範囲Qにおける荷重を解析することができる。つまり、荷重を検出したい範囲におけるカンチレバーCの数を低減することができ、付加された荷重を少数のカンチレバーCで解析することができる。カンチレバーCの数を低減することができれば、センサ素子20に形成する配線の複雑化、及びセンサ素子20の大型化を抑制することができ、さらには、計測時の消費電力や発熱も低減することが可能である。
また、例えば、ロボットハンドにより物体を把持する時の接触状態を計測する時に、従来であれば多数のセンサの設置が必要であるため設置場所や配線の取回しに問題があったが、以上に説明した構成によれば、できるだけ少ないセンサの設置で済み、設置の自由度が飛躍的に上がる。
【0057】
(2)また、第1カンチレバーC1の先端と、第2カンチレバーC2の先端とは、同じ方向に向いていてもよい。
(3)また、弾性体30の前記軸線方向(例えばX方向)における長さは、前記軸線方向における第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2の間隔Pの5倍以上であってもよい。さらに、弾性体30の前記軸線方向における長さは、間隔Pの8倍以上や間隔Pの8.5倍以上であることがより好ましい。
(4)特に、変形例1で説明した弾性体30Mは、第1カンチレバーC1及び第2カンチレバーC2を封止する封止部31と、封止部31よりも上方に位置し、検出対象の物体2が接触する接触部32と、を有する。そして、接触部32は、封止部31よりも硬さが小さい。
【0058】
(5)以上に説明した荷重解析装置1は、触覚センサ100と、制御手段(例えば制御部202)と、記憶手段(例えば記憶部201)とを備える。制御手段は、第1出力値(出力値S)及び第2出力値(出力値S)をセンサ素子20から取得し、第1出力値と第2出力値の比である出力比を求める。記憶手段は、第1出力値及び第2出力値に対する前記軸線方向における荷重付加位置(位置x)の特性を示す位置特性データD(特性情報の一例)を予め記憶する。制御手段は、求めた出力比と、位置特性データDとに基づいて、前述の間隔Pよりも広い範囲(検出可能範囲Q)で荷重付加位置(位置x)を特定可能である。
【0059】
(6)具体的に、制御手段は、特定した荷重付加位置(位置x)と、位置特性データDとに基づいて、特定した荷重付加位置(位置x)において付加された荷重wを求める。
(7)また、第1出力値及び第2出力値の一方を他方で除算した値を第1出力比とし、第1出力比の逆数を第2出力比とした場合、制御手段は、第1出力比が予め記憶手段に記憶された設定範囲T外の場合、第2出力比に基づいて荷重付加位置を特定する。
【0060】
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【符号の説明】
【0061】
1…荷重解析装置、2…物体
100,101,102…触覚センサ
10…基板、11…絶縁層、12…シリコン層、13…抵抗層、14…金属層
20,20M…センサ素子
21…フレーム、H1,H2,H…開口
C…カンチレバー(C1…第1カンチレバー、C2…第2カンチレバー)
30,30M…弾性体、30a…接触面
200…制御装置、201…記憶部、202…制御部
D…位置特性データ、T…設定範囲
P…間隔、Q…検出可能範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9