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特許7265789栄養処方物を調製および投与するためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】栄養処方物を調製および投与するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 15/00 20060101AFI20230420BHJP
   A23L 33/00 20160101ALN20230420BHJP
   A23L 5/20 20160101ALN20230420BHJP
【FI】
A61J15/00 Z
A23L33/00
A23L5/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020513588
(86)(22)【出願日】2018-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018049852
(87)【国際公開番号】W WO2019051162
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】16/123,629
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/555,876
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514206363
【氏名又は名称】アルクレスタ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファースト, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィドム, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ストーン, アルバート アーチー
(72)【発明者】
【氏名】スフーファールト, ヴィレム ロベルト クラース
(72)【発明者】
【氏名】ファン フリート, ミヒエル クリスティアン アレキサンダー
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/066372(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105087157(CN,A)
【文献】特開昭51-047005(JP,A)
【文献】特開平01-252259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 15/00
A23L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスであって、前記デバイスが、
1またはそれを超えるチャンバと;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに含有される固定化リパーゼと;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに含有されるフィトステロール処理賦形剤と;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに流体接続された入口であって、前記入口が前記1またはそれを超えるチャンバの1つに栄養処方物を受け入れるように構成されている、入口と;
栄養処方物が前記1またはそれを超えるチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口と
を含み、前記フィトステロール処理賦形剤が、前記栄養処方物中の一部のフィトステロールを除去または変換するように構成されており、
前記1またはそれを超えるチャンバが少なくとも2つのチャンバを含み、前記少なくとも2つのチャンバが互いに流体接続されており、前記固定化リパーゼが前記少なくとも2つのチャンバのうちの第1のチャンバ内に含有され、前記フィトステロール処理賦形剤が前記少なくとも2つのチャンバの第2のチャンバ内に含有されているか;または
前記1またはそれを超えるチャンバが第1のチャンバおよび第2のチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記第1のチャンバ内に含有され、前記第2のチャンバがフィトステロール収集リザーバであるか;または
前記1またはそれを超えるチャンバが1つのチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記1つのチャンバ内に含有されている、デバイス。
【請求項2】
前記1またはそれを超えるチャンバが少なくとも2つのチャンバを含み、前記少なくとも2つのチャンバが互いに流体接続されており、前記固定化リパーゼが前記少なくとも2つのチャンバのうちの第1のチャンバ内に含有され、前記フィトステロール処理賦形剤が前記少なくとも2つのチャンバのうちの第2のチャンバ内に含有されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2のチャンバに流体接続された第3のチャンバをさらに含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記1またはそれを超えるチャンバが1つのチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記1つのチャンバ内に含有されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記1またはそれを超えるチャンバが、第1のチャンバおよび第2のチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記第1のチャンバ内に含有され、前記第2のチャンバがフィトステロール収集リザーバである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記出口に結合されているコネクタであって、前記コネクタが前記出口を非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントの一方と接続するように構成されているコネクタをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスであって、前記デバイスが、
栄養処方物の供給源に流体接続するように構成された第1のチャンバと;
前記第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバと;
前記第1のチャンバ内に含有され、前記栄養処方物が前記第1のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置している固定化リパーゼと;
前記第2のチャンバ内に含有され、前記栄養処方物が前記第2のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置しているフィトステロール処理賦形剤と;
前記栄養処方物が前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口と
を含み、前記フィトステロール処理賦形剤が、前記栄養処方物中の一部のフィトステロールを除去または変換するように構成されている、デバイス。
【請求項9】
前記出口が、非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントに接続されるように構成されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第2のチャンバに流体接続された第3のチャンバをさらに含む、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンである、請求項に記載のデバイス。
【請求項12】
デバイスであって、前記デバイスが、
チャンバと;
栄養処方物を前記チャンバに受け入れるように構成されている入口と;
前記栄養処方物が前記チャンバを出ることができるように構成されている出口と;
前記チャンバ内に含有されるフィトステロール処理賦形剤と
を含み、前記フィトステロール処理賦形剤が、前記栄養処方物中の一部のフィトステロールを除去または変換するように構成されており、
前記デバイスが前記チャンバ内に含有される固定化リパーゼをさらに含むか;または
前記チャンバが第1のチャンバであり、前記デバイスが前記第1のチャンバと流体接続されている第2のチャンバをさらに含み、前記第2のチャンバが固定化リパーゼを含有する、デバイス。
【請求項13】
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記固定化リパーゼが、前記チャンバ内に含有され、前記デバイスが前記チャンバ内に含有される酸化防止剤をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
1またはそれを超える導管またはコネクタを介して前記チャンバに流体接続された非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記チャンバが第1のチャンバであり、前記デバイスが前記第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバをさらに含み、前記第2のチャンバが固定化リパーゼを含有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項17】
ィトステロール収集リザーバをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年9月8日出願の米国特許仮出願第62/555,876号からの優先権の利益を主張する2018年9月6日出願の仮特許出願でない米国特許出願第16/123,629号からの優先権の利益を主張し、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示の実施形態は、栄養処方物を調製および投与するためのデバイスおよび方法、そして、より詳細には、加水分解された脂質の非経口投与、栄養処方物中のフィトステロールを処理すること、および/または一部または全部のフィトステロールが抽出された栄養処方物(例えば、脂質エマルジョン)の投与のためのデバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
未熟児は、未熟な胃腸(GI)系で生まれ得る。結果として、そのような乳児は、適切な栄養を受け取るために、1つまたはそれを超える栄養処方物で提供され得る特定の形態の栄養物を必要とし得る。
【0004】
未熟児は、多くの場合、生後数時間以内に非経口栄養物(PN)が投与される。乳児のGI系がプライムし始める間に小量のPNが投与されることがある。乳児がより多くの量を許容し始めると、PNから引き離し、通常、例えば、母乳(MoM)、ドナー母乳(DM)、乳児用調製粉乳(IF)、追加の栄養強化剤、および/またはこれらの組合せをはじめとする、1またはそれを超える栄養処方物からなる経口または経腸栄養に移行させてよい。
【0005】
しかし、一部の乳児は、未熟、不完全、または奇形のGI系、外科的処置、GI感染または炎症、クローン病、腸のねじれ、またはその他の原因により、経腸的に処方物を消費できない場合がある。結果として、乳児は、非経口的に提供される栄養を必要とする場合があるか、または、より長時間にわたって栄養処方物を補充され、非経口的に提供される必要がある場合がある。
【0006】
さらに、多くの成人、例えば、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、GI感染、炎症、または奇形、クローン病、外科的処置(例えば、術後イレウス)、手術に起因する短腸症状群、粘膜炎、移植片対宿主病、ストーマ、運動障害症候群、または十分に機能しない胃腸管をもたらすか、腸休息を必要とするその他の医学的障害を有する成人は、非経口栄養を必要とする場合がある。
【0007】
静注用脂肪乳剤(IVFE)は、PNに依存する個体、例えば経腸栄養処方物を受け入れることができない成人被験者および未熟児などに栄養サポートを提供するために使用されている。特に、PNに依存する患者のIVFEは、必須脂肪酸(EFA)の重要な供給源であり、EFA欠乏症の予防に必要な場合がある。大豆油(SO)ベースのIVFEが、米国の市場で入手可能な一般的なIVFEである。市場のIVFEの例としては、Liposyn(登録商標)II、Liposyn(登録商標)III、Lipofundin(登録商標)MCT、Lipofundin(登録商標)N、Structolipid(登録商標)、Intralipid(登録商標)、Ivelip(登録商標)、ClinOleic(登録商標)、およびSMOF(登録商標)が挙げられる。その他のIFVEは、ヤシ油またはココナッツ油、オリーブ油、および卵黄リン脂質に基づいている。新生児集中治療室でのPN栄養にこれらの乳剤を使用することは一般的に推奨されていないが、実際に使用されている。
【0008】
PNは、未熟児、子供、および成人の進行性肝疾患のリスクを同様に伴う。データは、非経口SOの成分が、PNを投与されている人々のPN関連胆汁うっ滞(PNAC)および非経口栄養関連肝機能障害(PNALD)の病因に関連していることを示している。特にPNALDは、PN処方の一部として1g/kg/日よりも多くのSOベースのIVFEの使用に関連している。結果として、植物ベースの油を使用するPN用の脂質乳剤には、その使用がPNALDを引き起こし得、死に至る可能性があることを示す黒枠警告が含まれている。脂質乳剤製品のPNALDに関する黒枠警告は数十年にわたって定位置にあり、PNALDに関連するリスクは少なくとも1980年から知られている(例えば、LEVENE MI、WIGGLESWORTH JS、DESAI R:PULMONARY FAT ACCUMULATION AFTER INTRALIPID(登録商標)INFUSION IN THE PRETERM INFANT.LANCET 1980;2(8199):815-8参照)。PNALDの正確な病因は不明であるが、脂質の高摂取、高用量のリノール酸(SOに含まれる)、フィトステロールの高摂取、極端に短い消化管、経腸栄養の使用の欠如、腸肝循環の破壊、および/または再発性敗血症を含む、多因子病因に起因する可能性がある。具体的には、エビデンスは、SOベースの脂質乳剤中の高い血漿フィトステロール濃度と、PNACおよびPNALDの発症および重症度との関連を示唆している。特に脂質乳剤の非経口投与中、フィトステロールの血漿レベルは、経腸投与中よりも何倍も高いことがある。
【0009】
フィトステロール、または植物ステロールは、植物の細胞膜に見出される分子のファミリーであり、そこでフィトステロールはヒトのコレステロールと同様に重要な役割を果たす。ヒトの食事で最も一般的なフィトステロールは、カンペステロール、シトステロール、およびスチグマステロールである。それらは、ステロール側鎖のC24位にいくつかの置換を含むことを除いて、コレステロールと構造的に類似している。図1Aはコレステロールの化学組成を示す。図1Bはシトステロールを示し、図1Cはカンペステロールを示し、図1Dはスチグマステロールを示す。
【0010】
IVFEの使用に関連する体内のフィトステロールの蓄積は、経腸栄養を受けるGI系の保護機構のバイパスによって引き起こされ得る。経腸栄養供給条件下では、腸および肝臓のABCG5/G8輸送体によるフィトステロールの除去が起こる。食事性フィトステロールは、腸のABCG5/G8輸送体によって腸管腔に排出され、経口摂取フィトステロールの95%超の血流への侵入を防ぐ。消化管に吸収された小量のフィトステロールは、次に、肝臓のABCG5/G8輸送体によって、体内で産生された胆汁に排出される。しかし、フィトステロールを含有する脂質乳剤のPN投与の間、フィトステロールが血流に直接侵入すると、人々が経腸的に栄養素を受け取る場合に通常達成可能であるよりもはるかに高い血中フィトステロールレベルをもたらす場合がある。このことは、肝臓での排泄の限界に起因して、肝臓でフィトステロールの毒性の蓄積を引き起こし得る。この問題を克服するために現在利用可能な戦略には、投与される非経口大豆油の用量を減らすこと、および/または非経口大豆油を代替の非経口脂質乳剤で置き換えることが含まれる。魚油にはフィトステロールが含まれていないため、魚ベースのIVFEを使用してもよいし、植物ベースの油と組み合わせて使用してもよい。したがって、魚油を使用すると、被験者に送達されるフィトステロールの量が削減され得る。
【0011】
大豆油の使用を減らす試みとして、大豆油をココナッツまたはパーム油で置き換えた脂質乳剤が開発された。この種類の市販の製剤は、例えば、大豆油として50%の長鎖トリグリセリドおよび50%の中鎖トリグリセリドを含有する。別の脂質製剤は、オリーブ油および大豆油の使用に基づいている。オリーブ油はオレイン酸が豊富で、オメガ-6長鎖多価不飽和酸が少ない。下の表1は、IVFEのステロール組成を要約する。
【表1】
ソース:Xuら、Steroidal Compounds in Commercial Parenteral Lipid Emulsions、Nutrients 4(8)、904-921、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0012】
長鎖脂肪酸はヒトの健康と発育に重要である。多くの長鎖脂肪酸はトリグリセリドとして消費され、トリグリセリドでは3つの長鎖脂肪酸がエステル結合を介してグリセロール分子に結合している。体による長鎖トリグリセリド(LCT)の吸収には、まずリパーゼ(例えば膵臓リパーゼ)および胆汁酸塩の酵素作用が必要であり、これらは加水分解によりトリグリセリドを消化し、トリグリセリドをモノグリセリドと2つの遊離脂肪酸に分解する。トリグリセリド、ジグリセリド、およびモノグリセリドと遊離脂肪酸の混合物からなる消化産物は、他の脂溶性の食事内容物(脂溶性ビタミンやコレステロールなど)および胆汁酸塩と一緒になって、水様の十二指腸内容物中で混合ミセルを形成する。分解されると、モノグリセリドおよび遊離脂肪酸は、例えば空腸の領域で、腸細胞、すなわち小腸の内側を覆う上皮細胞によって吸収され得る。これらのミセルの内容物(しかし胆汁酸塩ではない)は腸細胞に入り、そこで再合成されてトリグリセリドになり、カイロミクロンにパッケージされ、乳び管(腸のリンパ系の毛細血管)に放出される。中鎖トリグリセリド(MCT)は血流に直接吸収される。
【0013】
膵外分泌機能は、未熟児の出生時に十分に発達していない場合があるため、未熟児は、トリグリセリドを分解するために必要な、十分な量の酵素リパーゼを欠いている場合がある。出生時に、母親は胆汁酸塩刺激リパーゼ(BSSL)と呼ばれる「オンボードリパーゼ」を提供する。これは、カルボキシルエステルリパーゼまたは胆汁酸塩依存性リパーゼとしても知られ、母乳を通じて乳児に提供される。これは不十分な内因性産生を部分的に補うかもしれないが、BSSLの産生は適切な脂肪吸収をサポートするには不十分であるかもしれない。その上、母乳中の脂肪の大部分はパルミチン酸の形であり(n-16)、これはMCTである。したがって、母乳は、例えば、膜構造、機能、および神経、網膜、およびその他の組織の発達に非常に重要なドコサヘキサエン酸(DHA、22:6 n-3)およびアラキドン酸(ARA 20:4 n-6)を含むものなど、十分なLCTを欠いている場合がある。ドナー乳では、低温殺菌プロセス中に、存在していたリパーゼが高熱にさらされることにより不活性化されることがあり、したがってLCT脂肪は容易に分解されない。結果として、乳児はこれらの大きなLCTを吸収できず、腸粘膜を刺激し、限局性炎症を起こすため、栄養不耐性に苦しむことがある。LCTをより効率的に処理および吸収する能力は、全体的な栄養吸収の向上、したがって成長の向上をもたらし得る。
少なくとも上記の理由のために、様々な吸収不良機能障害に苦しむ人々は、長期間にわたって経腸的に栄養処方物を受け入れることができない可能性がある。さらに、そのような機能障害に苦しむ人々は、加水分解によってLCTおよび他の形態の脂肪を適切に消化することができず、健康を維持するために必要な脂肪酸の吸収が抑制される可能性がある。乳児、子供、または成人被験者の例示的な機能障害としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:膵臓の分泌不全(compromised pancreatic output)、急性および慢性膵炎、膵臓癌、膵機能不全、嚢胞性線維症、脳性麻痺、クローン病、過敏性腸症状群、慢性的な異常上皮(chronically abnormal epithelium)、アミロイドーシス、セリアック病、虚血、放射線腸炎、熱帯性スプルー、ホイップル病、不適切な胃内容物の撹拌(inadequate gastric mixing)、急速排出、またはその両方、ビルロートII法胃切除術、胃結腸瘻、胃腸吻合術、不十分な消化剤、胆道閉塞および胆汁うっ滞、肝硬変、慢性膵炎、コレスチラミンに誘発される胆汁酸の喪失、嚢胞性線維症、ラクターゼ欠乏症、膵臓癌、膵切除術、スクラーゼ-イソマルターゼ欠損、異常環境、糖尿病に続発する異常な運動性、強皮症、甲状腺機能低下症、または甲状腺機能亢進症、ブラインドループ(胆汁酸塩の脱共役)に起因する細菌の異常増殖、小腸の憩室、ゾリンジャー・エリソン症状群(低十二指腸pH)、急性異常上皮、急性腸感染症、アルコール、ネオマイシン、輸送障害、無ベータリポタンパク血症、アジソン病、リンパ腫または結核に起因する乳頭の閉塞、内因性因子欠乏症(悪性貧血など)、リンパ管拡張症、肥満症のための空回腸バイパス、短腸症候群、腸不全、HIVまたは火傷に続発する腹壁破裂、または他の状態。さらに、PNを必要とする患者は、栄養処方物中のフィトステロールに関連する合併症のリスクが増加している可能性がある。その他の人々は、追加の栄養補助食品を必要とするまたは求める可能性がある。これらおよびその他の問題に対処するために改善が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】LEVENE MI、WIGGLESWORTH JS、DESAI R:PULMONARY FAT ACCUMULATION AFTER INTRALIPID(登録商標)INFUSION IN THE PRETERM INFANT.LANCET 1980;2(8199):815-8
【文献】Xuら、Steroidal Compounds in Commercial Parenteral Lipid Emulsions、Nutrients 4(8)、904-921
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
要旨
本開示の例示的な実施形態は、1またはそれを超えるチャンバを有するデバイスに向けられ得る。1またはそれを超えるチャンバは、固定化リパーゼおよびフィトステロール処理賦形剤を含有してよい。また、デバイスには、1またはそれを超えるチャンバの1つに流体接続された入口が含められてよく、該入口は、1またはそれを超えるチャンバの1つに栄養処方物を受け入れるように構成されている。デバイスには、栄養処方物が1またはそれを超えるチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口がさらに含められてよい。
【0016】
デバイスの様々な実施形態には、1またはそれを超える以下の特徴が含まれてよい:1またはそれを超えるチャンバは、少なくとも2つのチャンバを含み得、少なくとも2つのチャンバは互いに流体接続され得る;固定化リパーゼは、少なくとも2つのチャンバの第1のチャンバ内に含有され得、フィトステロール処理賦形剤は少なくとも2つのチャンバの第2のチャンバ内に含有され得る;第3のチャンバは第2のチャンバと流体接続され得る;フィトステロール処理賦形剤は、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素の1つであり得る;1またはそれを超えるチャンバは1つのチャンバを含み得、固定化リパーゼおよびフィトステロール処理賦形剤は両方とも1つのチャンバ内に含有され得る;1またはそれを超えるチャンバは第1のチャンバおよび第2のチャンバを含み得、固定化リパーゼおよびフィトステロール処理賦形剤は両方とも第1のチャンバ内に含有され得、第2のチャンバはフィトステロール収集リザーバであり得る;さらに、コネクタは出口に結合され得、コネクタは出口を非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントの一方と接続するように構成され得る。
【0017】
その他の例示的な実施形態では、デバイスには、栄養処方物の供給源に流体接続するように構成された第1のチャンバと、第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバが含まれてよい。デバイスには、第1のチャンバ内に含まれ、栄養処方物が第1のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置している固定化リパーゼと、第2のチャンバ内に含まれ、栄養処方物が第2のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置しているフィトステロール処理賦形剤も含まれてよい。デバイスには、栄養処方物が第1のチャンバおよび第2のチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口がさらに含められてよい。
【0018】
デバイスの様々な実施形態には、1またはそれを超える以下の特徴が含まれてよい:出口は、非経口供給アタッチメント、または経腸供給アタッチメントに接続されるように構成され得る;第3のチャンバは、第2のチャンバに流体接続され得る;さらに、フィトステロール処理賦形剤は、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素のうちの1つであり得る。
【0019】
その他の例示的な実施形態では、デバイスには、チャンバ、栄養処方物をチャンバに受け入れるように構成された入口、栄養処方物がチャンバから出ることを可能にするように構成された出口、およびチャンバ内に含まれるフィトステロール処理賦形剤が含まれてよい。
【0020】
デバイスの様々な実施形態には、1またはそれを超える以下の特徴が含まれてよい:フィトステロール処理賦形剤は、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素のうちの1つであり得る;フィトステロール処理賦形剤は、フィトステロールをコレステロールに生物変換するように構成された酵素であり得る;酸化防止剤または固定化リパーゼの少なくとも1つは、チャンバ内に含有され得る;非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントは、1またはそれを超える導管またはコネクタを介してチャンバに流体接続され得る;チャンバは第1のチャンバであってよく、デバイスは第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバをさらに含み得る;第2のチャンバはフィトステロール収集リザーバであり得る;そして、第2のチャンバは固定化リパーゼを含み得る。
【0021】
その他の例示的な実施形態では、フィトステロールを除去する方法には、シクロデキストリンと、フィトステロールを含有する栄養処方物とを混合するステップと、シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを形成するために、シクロデキストリンをフィトステロールと結合させるストップと、シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを栄養処方物から除去するステップが含まれてよい。
【0022】
デバイスの様々な実施形態には、1またはそれを超える以下の特徴が含まれてよい:シクロデキストリンは遊離シクロデキストリンを含み得、方法は(i)シクロデキストリンと栄養処方物とを混合するステップの前に遊離シクロデキストリンを栄養処方物に加えるステップ、および(ii)シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを除去するステップの前にシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを沈殿させるステップをさらに含み得る;シクロデキストリンは、固体マトリックスに固定化されたシクロデキストリンを含み得、方法は、シクロデキストリンと栄養処方物とを混合するステップの前に、固定化されたシクロデキストリンを栄養処方物に加えるステップをさらに含み得る;シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを栄養処方物から除去するステップは、固体マトリックスを栄養処方物から除去することを含み得る;シクロデキストリンと、フィトステロールを含有する栄養処方物とを混合するステップ、またはシクロデキストリンをフィトステロールと結合させるステップの少なくとも1つは、栄養処方物を撹拌することおよび/または栄養処方物を加熱することを含み得る;フィトステロールを栄養処方物から分離するステップは、濾過、遠心分離、または水簸の少なくとも1つを含み得る;ならびに、シクロデキストリンと、フィトステロールを含有する栄養処方物とを混合するステップは、過飽和シクロデキストリン溶液を作成することを含み得る。
【0023】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はともに、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される特徴を限定するものではない。本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、またはそれらの他の変形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、またはデバイスが、それらの要素のみを含むのではなく、明示的にリストされていないかまたはそのようなプロセス、方法、物品、またはデバイスに固有のその他の要素を含み得るように、非排他的包含を網羅することを意図している。さらに、用語「例示的な」は、本明細書において「理想」よりも「例」の意味で使用される。本明細書に開示または特許請求されているすべての数値(すべての開示される値、限界、および範囲を含む)は、開示される数値から+/-10%の変動を有し得る(他の変動が明記されない限り)ことに留意する必要があろう。その上、特許請求の範囲において、値、限界、および/または範囲とは、値、限界、および/または範囲+/-10%を意味する。さらに、一部の実施形態は乳児の使用に関して考察されているが、デバイスの実施形態は、高齢者、成人、子供、および乳児を含むすべての年齢の被験者に使用され得ることが企図される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
デバイスであって、
1またはそれを超えるチャンバと;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに含有される固定化リパーゼと;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに含有されるフィトステロール処理賦形剤と;
前記1またはそれを超えるチャンバの1つに流体接続された入口であって、前記入口が前記1またはそれを超えるチャンバの1つに栄養処方物を受け入れるように構成されている、入口と;
栄養処方物が前記1またはそれを超えるチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口と
を含むデバイス。
(項目2)
前記1またはそれを超えるチャンバが少なくとも2つのチャンバを含み、前記少なくとも2つのチャンバが互いに流体接続されている、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記固定化リパーゼが前記少なくとも2つのチャンバのうちの第1のチャンバ内に含有され、前記フィトステロール処理賦形剤が前記少なくとも2つのチャンバの第2のチャンバ内に含有されている、項目2に記載のデバイス。
(項目4)
前記第2のチャンバに流体接続された第3のチャンバをさらに含む、項目3に記載のデバイス。
(項目5)
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素のうちの1つである、項目1に記載のデバイス。
(項目6)
前記1またはそれを超えるチャンバが1つのチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記1つのチャンバ内に含有されている、項目1に記載のデバイス。
(項目7)
前記1またはそれを超えるチャンバが、第1のチャンバおよび第2のチャンバを含み、前記固定化リパーゼと前記フィトステロール処理賦形剤がともに前記第1のチャンバ内に含有され、前記第2のチャンバがフィトステロール収集リザーバである、項目1に記載のデバイス。
(項目8)
前記出口に結合されているコネクタであって、前記コネクタが前記出口を非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントの一方と接続するように構成されているコネクタをさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目9)
デバイスであって、
栄養処方物の供給源に流体接続するように構成された第1のチャンバと;
前記第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバと;
前記第1のチャンバ内に含有され、前記栄養処方物が前記第1のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置している固定化リパーゼと;
前記第2のチャンバ内に含有され、前記栄養処方物が前記第2のチャンバ内で受け取られると流れる流路内に位置しているフィトステロール処理賦形剤と;
前記栄養処方物が前記第1のチャンバおよび前記第2のチャンバを通過した後に流れるように構成されている出口と
を含むデバイス。
(項目10)
前記出口が、非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントに接続されるように構成されている、項目9に記載のデバイス。
(項目11)
前記第2のチャンバに流体接続された第3のチャンバをさらに含む、項目9に記載のデバイス。
(項目12)
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素のうちの1つである、項目9に記載のデバイス。
(項目13)
デバイスであって、
チャンバと;
栄養処方物を前記チャンバに受け入れるように構成されている入口と;
前記栄養処方物が前記チャンバを出ることができるように構成されている出口と;
前記チャンバ内に含有されるフィトステロール処理賦形剤と
を含むデバイス。
(項目14)
前記フィトステロール処理賦形剤が、シクロデキストリンまたはフィトステロール代謝酵素のうちの1つである、項目13に記載のデバイス。
(項目15)
前記フィトステロール処理賦形剤が、フィトステロールをコレステロールに生物変換するように構成された酵素である、項目13に記載のデバイス。
(項目16)
前記チャンバ内に含有される酸化防止剤または固定化リパーゼの少なくとも1つをさらに含む、項目13に記載のデバイス。
(項目17)
1またはそれを超える導管またはコネクタを介して前記チャンバに流体接続された非経口供給アタッチメントまたは経腸供給アタッチメントをさらに含む、項目13に記載のデバイス。
(項目18)
前記チャンバが第1のチャンバであり、前記デバイスが前記第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバをさらに含む、項目13に記載のデバイス。
(項目19)
前記第2のチャンバがフィトステロール収集リザーバである、項目18に記載のデバイス。
(項目20)
前記第2のチャンバが固定化リパーゼを含有する、項目18に記載のデバイス。
(項目21)
フィトステロールを除去する方法であって、
シクロデキストリンと、前記フィトステロールを含有する栄養処方物とを混合するステップと;
シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを形成するために、前記シクロデキストリンを前記フィトステロールと結合させるステップと;
前記シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを前記栄養処方物から除去するステップと
を含む方法。
(項目22)
前記シクロデキストリンが遊離シクロデキストリンを含み、前記方法が(i)前記シクロデキストリンと前記栄養処方物とを混合するステップの前に遊離シクロデキストリンを前記栄養処方物に加えるステップと、(ii)前記シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを除去するステップの前に前記シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを沈殿させるステップとをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記シクロデキストリンが、固体マトリックスに固定化されたシクロデキストリンを含み、前記方法が、前記シクロデキストリンと前記栄養処方物とを混合するステップの前に、前記固定化されたシクロデキストリンを前記栄養処方物に加えるステップをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを前記栄養処方物から除去するステップが、前記固体マトリックスを前記栄養処方物から除去することを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記シクロデキストリンと、フィトステロールを含有する前記栄養処方物とを混合するステップ、または前記シクロデキストリンを前記フィトステロールと結合させるステップの少なくとも1つが、前記栄養処方物を撹拌することおよび/または前記栄養処方物を加熱することを含む、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記フィトステロールを前記栄養処方物から分離するステップが、濾過、遠心分離、または水簸の少なくとも1つを含む、項目21に記載の方法。
(項目27)
前記シクロデキストリンと、フィトステロールを含有する前記栄養処方物とを混合するステップが、過飽和シクロデキストリン溶液を作成することを含む、項目21に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、開示される実施形態を示し、説明とともに、開示される実施形態の原理を説明するのに役立つ。本明細書には多くの態様および実施形態が記載されている。当業者は、特定の態様または実施形態の特徴を、本開示で説明される他の態様または実施形態のいずれかまたはすべての特徴と併せて使用してよいことを容易に認識するであろう。図面中:
【0025】
図1A図1Aは、コレステロールの化学構造を示す図である。
【0026】
図1B図1Bは、シトステロールの化学構造を示す図である。
【0027】
図1C図1Cは、カンペステロールの化学構造を示す図である。
【0028】
図1D図1Dは、スチグマステロールの化学構造を示す図である。
【0029】
図2図2は、本開示の実施形態による、栄養処方物を処理するための例示的なデバイスを概略的な形態で示す図である。
【0030】
図3A図3Aは、α-シクロデキストリンの化学構造を示す図である。
【0031】
図3B図3Bは、β-シクロデキストリンの化学構造を示す図である。
【0032】
図3C図3Cは、γ-シクロデキストリンの化学構造を示す図である。
【0033】
図4図4は、様々な生物の代謝系を介したメバロン酸のシトステロールおよびコレステロールへの生物変換を概略的に示す図である。
【0034】
図5図5は、本開示の実施形態による、栄養処方物を調製および投与するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【0035】
図6A図6Aは、本開示の実施形態による、遊離シクロデキストリンが遊離フィトステロールに結合している混合槽を示す図である。
【0036】
図6B図6Bは、濾過により図6Aの混合槽からの結合したシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートの除去を示す図である。
【0037】
図6C図6Cは、遠心分離により図6Aの混合槽からの結合したシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートの除去を示す図である。
【0038】
図7図7は、本開示の実施形態による、バルク栄養処方物を調製する例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
ここで、以下に説明され、添付の図面に示される本開示の例示的な実施形態を詳細に参照する。可能な限り、同じまたは類似の部分を指すために、同じ参照番号が図面全体にわたって使用される。
【0040】
実施形態の追加の目的および利点は、一部は以下の説明に記載され、一部は説明から明らかとなるか、または実施形態の実践により習得され得る。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はともに、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものでないことは当然理解される。
【0041】
本開示の態様は、栄養処方物(例えば、非経口供給用の脂質乳剤)中の脂質を加水分解するためのデバイスおよび方法、栄養処方物中のフィトステロールを処理する(例えば、抽出するまたは変換する)ためのデバイスおよび方法、ならびにそのような栄養処方物を非経口的にまたは経腸的に投与するためのデバイスを参照して説明されている。本開示の実施形態は、非経口栄養(PN)処方物を参照して説明され得るが、本開示の実施形態は、多様な栄養処方物(例えば、経腸栄養処方物、母乳、ドナー乳、あらゆる種類の栄養補給乳(supplemented milk)など)に適用可能であり得ることが理解されるであろう。
【0042】
本明細書で使用される用語「栄養処方物」には、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、水、ミネラル、および/またはビタミンを含有する複合混合物が含まれ得る。これには、特別に処方され加工された液体食品;経口摂取またはチューブによる(非経口的または経腸的な)栄養供給による、人の部分的または排他的栄養供給に使用される液体;治療的または医学的必要性のために、通常の食品または特定の栄養素を摂取、消化、吸収、または代謝する能力が制限されているかまたは損なわれている人の食事管理に使用される液体;医学的に決定された栄養要件を満たす液体;および、食事管理および通常の食事の変更だけでは被験者に提供することができない栄養素を被験者に届けるように設計された液体が含まれ得る。
【0043】
一部の実施形態では、栄養処方物は、医師の監督下の被験者に送達されてもよいし、積極的かつ継続的な医師の監督を受ける人のみを対象としてもよいし、監視下または監視なしのいずれかで、家庭での使用のために被験者に送達されてもよい。栄養処方物は、乾燥粉末として包装された後、溶媒と混合されて溶液を形成し得るか、または、液体栄養処方物、飲料、またはアルコール飲料として包装され得る。一部の実施形態では、栄養処方物は、市販のものであってもよいし、栄養供給の前に医療専門家によって準備されてもよい。一部の実施形態では、栄養処方物は、薬物および/または栄養処方物を必要とする被験者のために処方された少なくとも1つの薬物を含んでもよいし、または栄養処方物自体が処方された薬物であってもよい。栄養処方物は、低温殺菌されていようといまいと、ヒトの乳の完全または部分的な代用品としての乳児および/または幼児用調乳であってもよいし、ドナー乳、または母乳(乳児自身の母親または他の母親の乳)であってもよい。
【0044】
栄養処方物には、少なくとも1つの脂肪が、短鎖トリグリセリド(SCT)、MCT、およびLCTなどのトリグリセリドの形態で、含まれていても含まれていなくてもよい。栄養処方物には、静脈内脂肪/脂質乳剤(IVFE)が含まれてよい。一部の実施形態では、栄養処方物は、水、マルトデキストリン、タンパク質、加水分解タンパク質、アミノ酸、ペプチド、SCT、MCT、ジグリセリド、モノグリセリド、トウモロコシデンプン、魚油、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、オリーブ油(油は精製されていてもいなくてもよい)、水溶性繊維、レシチン、塩化マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム、グアーガム、リン酸カルシウム、塩、塩化コリン、リン酸、クエン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、タウリン、酸化マグネシウム、硫酸亜鉛、塩化カリウム、ナイアシンアミド、硫酸第一鉄、パントテン酸カルシウム、硫酸マンガン、塩酸ピリドキシン、硫酸銅、一硝酸チアミン、β-カロテン、リボフラビン、パルミチン酸ビタミン、葉酸、ビオチン、セレン酸ナトリウム、塩化クロム、ヨウ化カリウム、モリブデン酸ナトリウム、可溶性繊維、フルクトオリゴ糖、プロバイオティクス、クエン酸、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、およびビタミンB12から選択される少なくとも1つの栄養素をさらに含み得る。例示的な栄養処方物およびシステムは、現在は米国特許第9,668,942号である、2014年8月14日出願の米国特許出願公開第14/378,856号、に記載されており、これらは参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0045】
本明細書において使用される、用語「非経口栄養処方物」、「PN処方物」、または「PN」には、非経口投与を意図した任意の栄養処方物が含まれ得る。
【0046】
一部の態様では、例示的なPN処方物は、植物油、例えば大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、オリーブ油、魚油、オキアミ油、植物油と非植物油の両方の組み合わせに基づくIVFEであるか、それを含有するか、またはそれを補充したものであってよく、1またはそれを超える油は精製されていてもされていなくてもよい。そのような植物油は、それぞれ図1B、1C、および1Dに示されている、シトステロール、カンペステロール、またはスチグマステロールなどのフィトステロールの濃縮物を含んでもよい。
【0047】
本明細書において使用される、栄養処方物またはPN処方物に関して「処理」という用語は、処方物を被験者に投与する前に、1またはそれを超える多様な方法で処方物を変更することを指し得る。「処理」とは、例えば、栄養処方物内の脂質の加水分解、栄養処方物からのフィトステロールの除去、栄養処方物中のコレステロールまたは他の代謝産物へのフィトステロールの変換、またはそれらの組み合わせを指すことがある。「処理」とは、処方物の補強など、栄養処方物に対するその他の変更もさすことがある。
【0048】
本開示の一部の実施形態は、栄養処方物を経腸的に受け取ることができない被験者に、例えば、そのような被験者が吸収することができる脂肪酸の濃度を増加させるために、トリグリセリドが(例えば、モノグリセリドおよび遊離脂肪酸に)加水分解された栄養処方物を非経口投与するためのデバイスおよび方法、ならびに非経口または経腸投与のための栄養処方物中のフィトステロールの量および/または濃度を減少させるためのデバイスおよび方法に関し得る。したがって、本開示の実施形態は、例えば、非経口栄養処方物中の吸収性栄養素の量を増加させ、そのような栄養処方物を非経口的に送達し、そのような栄養処方物を経腸的に送達し、かつ/または栄養処方物中のフィトステロールの濃度を低下させて、肝臓障害、例えばPNALD、PNAC、およびその他の障害などのリスクを低下させるためのデバイスおよび方法に関する。
【0049】
例示的なデバイスには、栄養処方物を受け入れるための容器、栄養処方物中の脂質を加水分解するために栄養処方物を通過させることができる、固定化リパーゼを含有するチャンバ、および栄養処方物を非経口的に送達するための非経口供給システムが含まれてよい。一部の実施形態では、栄養処方物は、非経口処方物であってよく、一部の実施形態では、栄養処方物は、栄養処方物の別個の供給源を補充することを目的とする脂質供給源であってよい。
【0050】
さらなる例示的なデバイスには、栄養処方物中のフィトステロールを変換または除去するために栄養処方物が通過することができるフィトステロール処理チャンバが含まれてよい。一部の実施形態では、例示的なデバイスは、栄養処方物の別個の供給源に、かつ/または、栄養処方物を被験者に送達するための非経口または経腸供給システムに、流体接続されてよい。例示的なデバイスを用いて、栄養処方物を非経口的にまたは経腸的に送達することができる。
【0051】
一部の実施形態では、例示的なデバイスは、栄養処方物が両方のチャンバを通過することができるように、固定化リパーゼを含有するチャンバとフィトステロール処理チャンバの両方を含んでよい。例示的なデバイスのさらなる実施形態では、固定化リパーゼを含有するチャンバは、フィトステロール処理チャンバであってもよく、その結果、栄養処方物をチャンバに通すと、両方のチャンバがトリグリセリドを加水分解し、栄養処方物中のフィトステロールを除去または変換する。それらを含むことのできる例示的なデバイスおよび例示的なシステムは、以下でさらに説明される。
【0052】
図2は、例えば静脈内チューブを介して、栄養処方物210を被験者に提供するための例示的な供給システム200を示す。システム200は、所与の構成および構成要素を有するとして本明細書に記載されているが、システム200の変形形態も可能であることは当業者には明らかであろう。例えば、システム200の任意の部分は、異なる構成または順序で配置されることができるか、あるいは完全に省略されてもよい。
【0053】
システム200には、導管204を介して処方物処理デバイス250に流体接続された、栄養処方物210の供給源202が含まれてよい。処方物処理デバイス250は、コネクタ263を介して導管262に流体接続されていてよい。導管262は、例えば、コネクタ265を介して針264に流体接続されて(例えば、取り外し可能に接続されて)いてよい。針264および/または導管262は、被験者への投与のために構成され得る。一部の実施形態では、導管262は、コネクタ265を含めずに針264に直接接続されてよく、かつ/またはコネクタ263を含めずに処方物処理デバイス250に直接接続されてよい。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、ポイントオブケアデバイスであってもバルク処理デバイスであってもよい。
【0054】
処方物処理デバイス250には、供給源202から流れる栄養処方物210を処理するための1またはそれを超えるチャンバ252、254、256が含まれてよい。加水分解チャンバ252は、栄養処方物210がチューブ204から流れるときに栄養処方物210中の脂質を加水分解するように構成され得る。フィトステロール処理チャンバ254は、導管253を介して加水分解チャンバ252に流体接続されていてよい。フィトステロール処理チャンバ254は、導管255を介してフィトステロール収集リザーバ256に流体接続されていてもよい。出口導管257は、フィトステロール処理チャンバ254を処方物処理デバイス250からの出口に接続することができ、そこでコネクタ263は処方物処理デバイス250の出口導管257を導管262に接続することができ、それを通って栄養処方物210は被験者へ流れることができる。
【0055】
システム200は、非経口供給システムであってよい。一部の実施形態では、システム200の一部またはすべての部分は、例えば政府の規制機関によって医療用途に承認されてもよい。一部の実施形態では、システム200の部分は、互いに着脱可能であり得る;例えば、供給源202は導管204から着脱可能であり得、導管204は、処方物処理デバイス250から着脱可能であり得、処方物処理デバイス250は、導管262から着脱可能であり得、導管262は針264から着脱可能であり得る。一部の実施形態では、システム200は、栄養処方物210が、システム200を、供給源202から導管262まで通過して、例えば被験者に入ることが可能になるように構成されてよい。
【0056】
一部の実施形態では、システム200は、システム200を通る栄養処方物210の流れを促進するためのポンプ、例えば蠕動ポンプ、エラストマーポンプ、マルチチャンネルポンプ、シリンジポンプ、および/またはスマートポンプなどを装備していてもよい。他の実施形態では、栄養処方物210は、重力、毛管作用、または例えば膨張可能なバルーンまたはシリンジピストンを介して栄養処方物210に加えられる圧力下で、システム200を通過することが可能であり得る。重力を使用して栄養処方物210の流れを促進する場合、栄養処方物210の供給源202の相対的な配置により、重力のみの影響下で、栄養処方物210がシステム200を通過して流れることが可能になり得る。例えば、栄養処方物210の供給源202は、図2に示されるように、導管204の上方、デバイス250の上方、かつ/または被験者の上方に設置されてよい。さらなる実施形態では、ポンプ輸送、重力、圧力、および/または毛管作用の組合せにより、栄養処方物210はシステム200を通過することができる。
【0057】
一部の実施形態では、システム200の一部または全ての部分を滅菌することができる。一部の実施形態では、システム200は、非経口栄養かまたは経腸栄養のいずれかを提供するように構成され得る。例えば、針264は、経腸栄養に適したチューブ、ポート、またはその他のアタッチメントと交換可能であり得る。
【0058】
システム200の部分およびその構成要素の例示的な実施形態は、2016年10月12日出願の米国特許出願公開第15/291,530号、および、現在は米国特許第9,668,942号である2014年8月14日出願の米国特許出願公開第14/378,856号に記載され得、これらは両方ともその全文が参照により本明細書に組み込まれる。本開示では、システム200は、特に、栄養処方物中の脂質を加水分解すること、栄養処方物からフィトステロールを除去すること、または栄養処方物内のフィトステロールを変換すること、および/またはそのような処方の被験者へ送達することに適することが企図される。
【0059】
供給源202は、栄養処方物を供給するのに適したどんな供給源であってもよい。例えば、供給源202は、栄養処方物を含有する、静脈内もしくは経腸栄養バッグ、バイアル、シリンジ、または任意のその他の適した容器などの容器であってもよい。供給源202は、シングルユースの供給源(例えば使い捨て容器など)であってもよいし、マルチユースの供給源(例えば再密封可能な、かつ/または滅菌可能な容器など)であってもよい。供給源202は、システム200の他の要素から着脱可能であってもなくてもよい。一部の実施形態では、供給源202は、滅菌済みかまたは滅菌可能な容器であり得る。一部の実施形態では、供給源202には、調製済みの栄養処方物、例えば栄養処方物210などが予め充填されていてもよい。一部の実施形態では、供給源202は、閉鎖され密封された構成で提供されてもよく、被験者に栄養処方物210を投与する少し前に開封されてもよい。
【0060】
一部の実施形態では、ユーザー(例えば、医療提供者、患者、患者の保護者、薬剤師、または他のユーザー)が、供給源202を使用前に導管204および/または処方物処理デバイス250に取り付けてもよい。例えば、ユーザーは、望ましい栄養処方物210を含有する、予め充填された供給源202を選択し、使用のために供給源202を導管204に取り付けることができる。一部の実施形態では、供給源202は予め充填されていてよく、ユーザーは、例えば被験者のニーズに応じて、異なる種類の栄養処方物または栄養処方物の組み合わせから選択することができ、かつ/または異なる量の栄養処方物から選択することができる。そのような実施形態では、供給源202は、導管204または処方物処理デバイス250への取り付けの前に開封されるか、または、供給源202を導管204または処方物処理デバイス250に取り付ける動作によりシールを破る(例えば、シールを穿孔、穿刺、移動、または他の方法で開く)ことのできる密封された開口部を有し得る。
【0061】
一部の実施形態では、弁またはその他の機械的構造物を使用して、使用前の供給源202中の栄養処方物210を維持し、かつ/または供給源202から出て処方物処理デバイス250に入る栄養処方物210の流れを制御することができる。さらに他の実施形態では、ユーザーは、使用前および/または使用中に、望ましい種類の栄養処方物、栄養処方物の組み合わせ、および/または望ましい量の栄養処方物で供給源202を充填してよい。一部の実施形態では、供給源202は、使用前および/または使用中に、混合、攪拌、加熱、冷却、または他の方法でプライムされてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、複数の供給源202が導管204および/または処方物処理デバイス250に供給され得る。例えば、第1の供給源には、粉末形態の栄養処方物が含まれてよく、第2の供給源には、粉末の栄養処方物と混合される液体が含まれてよい。さらなる実施形態では、第1の供給源には、液体の栄養処方物が含まれてよく、第2の供給源には栄養処方物サプリメント、例えば脂肪酸サプリメント(例えば、IVFE)などが含まれてよい。
【0063】
栄養処方物210は、本明細書で前述したように、任意の栄養処方物または栄養処方物の組み合わせであってよい。一部の実施形態では、栄養処方物210は液体の形態であってよい。一部の実施形態では、栄養処方物210には、トリグリセリド、フィトステロール、またはトリグリセリドとフィトステロールの両方が含まれてよい。一部の実施形態では、栄養処方物210はPN処方物であってよい。一部の実施形態では、栄養処方物210は、IVFEであるか、またはIVFEを含んでよい。一部の実施形態では、栄養処方物210は粉末の形態であってよく、導管204に入る前に液体と組み合わされてよい。
【0064】
栄養処方物210には、1またはそれを超える、例えば、短鎖、中鎖、または長鎖脂肪酸、例えば、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(「LC-PUFA」)トリグリセリドが含まれてよい。栄養処方物210中の例示的な脂肪(例えば、脂質)には、天然または構造脂質、あるいはドコサヘキサエン酸(「DHA」)、エイコサペンタエン酸(「EPA」)、α-リノレン酸(「ALA」)、アラキドン酸(「ARA」または「AA」)、および/またはリノール酸(「LA」)などのオメガ-3またはオメガ-6脂肪酸が含まれ得る。一部の実施形態では、栄養処方物210は、植物源由来の油または油抽出物、例えば1またはそれを超える大豆油、ヤシ油もしくはココナッツ油、またはオリーブ油、または任意の適した油を含み得る。一部の実施形態では、栄養処方物210は、海洋源由来の油または油抽出物、例えば1またはそれを超える魚油またはオキアミ油、または任意の適した油を含み得る。一部の実施形態では、栄養処方物210は、例えば別の栄養処方物を補足するように構成された脂質源であってもよい。
【0065】
栄養処方物210は、任意の適した方法で処方物処理デバイス250を通って流れてよい。一部の実施形態では、システム200は、処方物処理デバイス250を通して栄養処方物210を重力供給してよく、処方物処理デバイス250では栄養処方物210中の脂質が加水分解され得、次いで、加水分解された脂質を有する栄養処方物210は、重力を受けて導管262に流入し得る。一部の実施形態では、栄養処方物210は、圧力下で供給源202に保存され得る。
【0066】
一部の実施形態では、供給源202または供給源202の一部は変形可能であり得る。ユーザーは、供給源202を絞って、栄養処方物210を供給源202から処方物処理デバイス250の中に送り込んでよい。供給源202または供給源202の一部は、例えば、圧力差によって動かされ、流れが供給源202を空にするときに変形することがある。一部の実施形態では、電動圧縮ローラーまたは他の機械デバイスが含まれてよく、所定の速度でまたは所定の時間にわたって制御された方法で供給源202を圧縮してよい。一部の実施形態では、ポンプ、例えば、連続または蠕動ポンプ(手動で操作されるかまたは電子式であり得る)を処方物処理デバイス250に含めるか、または供給源202に取り付けて、供給源202から栄養処方物210を促すことができる。他の実施形態では、負圧の供給源を処方物処理デバイス250の1またはそれを超えるチャンバに接続して真空を作り出し、そこに栄養処方物210の流れを引き込むことができる。
【0067】
供給源202を空にすることを促進するために、供給源202には、弁またはその他の流量制御デバイスが含まれてよく、かつ/あるいは栄養処方物210が供給源210を空にするときに圧力を均一にするための空気放出が含まれてよい。一部の実施形態では、供給源202には、どれだけの栄養処方物210が処方物処理デバイス250に放出されたか、および/またはどれだけの栄養処方物210が供給源202に残っているかをユーザーが観察できるように、測定ラインが含まれてよい。一部の実施形態では、シリンジまたは他の送達デバイスは、システム200の使用前および/または使用中のいずれかで栄養処方物210を供給源202に供給することができ、次に栄養処方物210は処方物処理デバイス250に流れ込むことができる。一部の実施形態では、振動モーターを、処方物処理デバイス250および/または供給源202に含めるかまたは取り付けて、処方物処理デバイス250および/または供給源202を振動させ、栄養処方物210および/または処方物処理デバイス250の1またはそれを超えるチャンバを撹拌し、かつ/あるいは処方物処理デバイス250の1またはそれを超えるチャンバを通る栄養処方物210の流れを支援することができる。
【0068】
導管204は、栄養処方物210を供給源202から処方物処理デバイス250に運ぶのに適したいずれの導管であってもよい。導管204は、例えば、医療用チューブであり得る。導管204は、ルアーロック接続、ねじ山、突起、溝、変形可能または拡張可能な構造、および/または、栄養処方物210を供給源202からデバイス250に運ぶための要素を接続するのに適した任意のその他の機構によるなど、当技術分野で公知の任意のコネクタを使用して、供給源202と処方物処理デバイス250を接続することができる。当技術分野で公知の適したコネクタの1つは、ENFit(登録商標)コネクタ(GEDSA)である。一部の実施形態では、導管204は存在しなくてもよく、供給源202は、適した接続手段を介して処方物処理デバイス250に直接接続してもよい。
【0069】
処方物処理デバイス250は、1またはそれを超えるチャンバ、ポンプ、および/または栄養処方物210などの栄養処方物を処理するための導管を含有するデバイスであってよい。処方物処理デバイス250内でのチャンバおよび/または導管の組合せにより、栄養処方物210が導管204を介して処方物処理デバイス250に入り、導管257を介して出ることが可能になる。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、単一のデバイスであってよい。他の実施形態では、処方物処理デバイス250には、一連のデバイスが含まれてよく、その各々にはチャンバ、ポンプ、および/または導管が含まれ得る。例えば、処方物処理デバイス250は、栄養処方物210が、チャンバ252、254を連続して(例えば、最初にチャンバ252、次にチャンバ254、またはその逆に)通過することができるように、直列に配列され、導管、弁によって接続されるかまたは互いに直接に接続された、加水分解チャンバ252およびフィトステロール処理チャンバ254を含む単一のデバイスであり得る。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、様々な方法で(例えば、栄養処方物中の脂肪を加水分解し、フィトステロールを除去または変換することにより)栄養処方物を処理するように構成された1つのチャンバのみを含んでよい。一部の実施形態では、異なるチャンバを1つのデバイスに組み込むのではなく、処方物処理デバイス250は、任意の順序で配置され得るかまたは個別に使用され得る一連の別々のデバイスで構成されてよく、各個別のデバイスは独自のチャンバを含んでよい。
【0070】
図2では、加水分解チャンバ252はフィトステロール処理チャンバ254の「上流に」あると示されているが、一部の実施形態ではこの位置決めを逆にして、栄養処方物が供給源202から最初にフィトステロール処理チャンバ254に流れ、次に加水分解チャンバ252に入るようにしてもよい。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250には、加水分解チャンバ252のみ、またはフィトステロール処理チャンバ254のみが含まれてもよい。処方物処理デバイス250内の各チャンバに多様な構成が可能であることは、当業者に当然理解される。
【0071】
一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、処方物処理デバイス250のパーツを取り外し、交換し、および/または洗浄することができるように開閉可能であってよい。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、処方物処理デバイス250内の要素がユーザーに見えるように、完全にまたは部分的に透明なプラスチックまたはガラスで作製されていてもよい。一部の例では、これによりユーザーは、例えば外観検査によって、適切な流れが確実に処方物処理デバイス250を通るようにすることができる。他の実施形態では、処方物処理デバイス250は不透明であってよい。
【0072】
一部の実施形態では、処方物処理デバイス250は、入口フィルタおよび出口フィルタの一方または両方を含んでよい。一部の実施形態では、処方物処理デバイス250内の各チャンバは、同様にまたは代わりに、各チャンバの成分を含有するのを助けるため、かつ/または各チャンバの成分を互いに分離するために、入口フィルタおよび出口フィルタの一方または両方を含むことができる。入口フィルタおよび出口フィルタは、粒子(またはリパーゼまたは他の酵素を固定化することができる他の構造)が処方物処理デバイス250内のチャンバから出ることを防ぐことができる。さらにまたは代替的に、フィルタは、異物が処方物処理デバイス250内のチャンバ、供給源202、および/または導管262に入るのを防ぐことができる。入口および/または出口フィルタは、処方物処理デバイス250および/または各チャンバ252、254、256の内部または外部に位置していてよい。
【0073】
加水分解チャンバ252は、栄養処方物210が加水分解チャンバ252を通過するときに栄養処方物210中の脂肪、例えば、トリグリセリドを加水分解するように構成され得る。加水分解チャンバ252は、例えば共有結合またはイオン結合を介して、または吸収によって、リパーゼを固定化することができる複数の粒子または他の構造を含んでよい。一部の実施形態では、リパーゼは、加水分解チャンバ252内の1またはそれを超える壁および/またはフィルタに固定化してもよいし、固相マトリックスに固定化してもよいし、加水分解チャンバ252内で遊離(固定化しない)していてもよい。栄養処方物210が加水分解チャンバ252およびその中の構造(含まれる場合)を流れるとき、固定化リパーゼは、LC-PUFAを含むトリグリセリド(含まれている場合)を含む栄養処方物210中の脂肪およびトリグリセリドを加水分解し、それらをモノグリセリドおよび遊離脂肪酸に分解する。次に、加水分解脂質を含有する栄養処方物210は、加水分解チャンバ252から流出し得、一方、リパーゼは、加水分解チャンバ252内にとどまり得、例えば、加水分解チャンバ252内の粒子または他の構造に結合する。脂肪の加水分解デバイスの例は、2016年10月12日出願の米国特許出願公開第15/291,530号、および、現在は米国特許第9,668,942号である2014年8月14日出願の米国特許出願公開第14/378,856号に開示されており、これらは両方ともその全文が参照により組み込まれる。
【0074】
加水分解チャンバ252の粒子は、実質的に球形のビーズとして形成され得る。他の実施形態では、粒子は、ランダムな形状または不規則な粒子であってもよいし、楕円形、長円形、ドーナツ形、角柱、多角形、細長、または任意の他の適した形状であってもよい。粒子は、滑らかな表面またはテクスチャー加工された表面を有していてもよく、かつ/またはその表面積を増加または減少させるように成形されていてもよい。それらは、各々実質的に同じ形状および/または表面を有してもよく、または2またはそれを超える異なる形状および/または表面の組み合わせを有してもよい、個々の粒子で形成され得る。それらは、任意の適切な材料で形成されてよく、リパーゼは、任意の適切な方法で、例えば吸着、イオン結合、共有結合、架橋、カプセル化、および/または捕捉により粒子に固定化することができる。リパーゼは、栄養処方物210が加水分解チャンバ252を通って流れるときにリパーゼが栄養処方物210と流体接触するように、加水分解チャンバ252内に見られる粒子上または粒子中に固定化されてもよい。
【0075】
一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、加水分解チャンバ252内の要素がユーザーに見えるように、完全にまたは部分的に透明なプラスチックまたはガラスで作製されていてもよい。一部の例では、これによりユーザーは、例えば外観検査によって、適切な流れが確実に加水分解チャンバ252を通るようにすることができる。他の実施形態では、加水分解チャンバ252は不透明であってよく、任意の適した材料で作製されてよい。
【0076】
粒子(またはリパーゼを固定化することができる他の構造)は、加水分解チャンバ252内または加水分解チャンバ252上の入口フィルタと出口フィルタの間に位置してよい。そのようなフィルタは、栄養処方物210が処方物処理デバイス250を通って流れるときに粒子を加水分解チャンバ252内に保持することができる。一部の実施形態では、栄養処方物210が処方物処理デバイス250を通って流れるとき、フィルタの孔開口部は、栄養処方物210中の脂肪の乳化および分解を助け得る。
【0077】
一部の実施形態では、リパーゼは、入口および/または出口フィルタの使用を必ずしも必要としない非粒子構造、例えばモノリシック担体に固定化されてもよい。担体は、フィルタを使用しなくても、加水分解チャンバ252に残るか、または加水分解チャンバ252の一部になることがある。例えば、そのような担体は大きすぎて、加水分解チャンバ252の入口および/または出口を通らないことがあり、加水分解チャンバ252に取り付けるかまたはその他の方法で繋ぎ止めてもよく、かつ/または加水分解チャンバ252の一部として形成されてもよい。
【0078】
本明細書に開示されるシステムおよび方法に含まれるリパーゼは、トリグリセリドの3つすべての結合を切断してもよいし、トリグリセリドの3つの結合のうち2つ、すなわちsn-1およびsn-3の位置で切断し、sn-2モノグリセリドを残してもよい。例示的なリパーゼは、動物、植物、および多くの天然のまたは遺伝子操作された微生物から得ることができる。一部の実施形態では、リパーゼには、1またはそれを超える、例えば、Chromobacterium viscosum、Pseudomonas fluorescens、Burcholderia cepacia、Thermomyces lanuginosus、Candida rugosa、Pseudomonas cepacia、Bacillus subtilis、またはRhizopus oryzaeリパーゼ、または任意の他の適した野生型もしくは組換えリパーゼまたはそれらの組み合わせが含まれてよい。
【0079】
本明細書には粒子が記載されているが、リパーゼは任意の適した方法で加水分解チャンバ252に固定化されてよいことが理解される。例えば、リパーゼは、ビーズ、ロッド、繊維、シート、モノリス、加水分解チャンバ252の一部から伸びる突起、または他の適した構造など、加水分解チャンバ252の内部に位置している構造内に固定化または含有され得る。一部の実施形態では、リパーゼは、加水分解チャンバ252の壁に固定化されるかまたは壁の中に含有されてよく、および/または処方物処理デバイス250に含まれる1またはそれを超えるフィルタに固定化されてよい。
【0080】
また、一部の実施形態では、リパーゼは固定化されなくてもよく、加水分解チャンバ252内または加水分解チャンバ252の一部内に単に含有されていてもよいことも企図される。一部のそのような実施形態では、1またはそれを超えるフィルタは、加水分解チャンバ252および/または処方物処理デバイス250内に遊離する(すなわち、固定化されていない)リパーゼを保持することができる。
【0081】
一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、滅菌済みかまたは滅菌可能な容器であり得る。一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、粒子および/またはリパーゼで予め充填されていてよい。一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、閉鎖され密封された構成で提供されてもよく、処方物処理デバイス250内での設置の少し前に開封されてもよい。一部の実施形態では、ユーザー(例えば、医療提供者、患者、患者の保護者、薬剤師、または他のユーザー)が、使用前に加水分解チャンバ252を処方物処理デバイス250の中に挿入および/または設置してもよい。一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、予め充填されていてよい。他の実施形態では、ユーザーは、加水分解チャンバ252を所望の種類および/または量の粒子および/またはリパーゼで充填してよい。一部の実施形態では、加水分解チャンバ252は、使用後に取り外し可能および使い捨て可能であり得、かつ/あるいは、再使用され得るように、洗浄され、滅菌され、粒子および/またはリパーゼで再充填されるように構成され得る。他の実施形態では、加水分解チャンバ252は、処方物処理デバイス250内に恒久的に収容されていてもよい。
【0082】
また、一部の実施形態では、処方物処理デバイス250には、加水分解チャンバ252のみが含まれてよい(すなわち、フィトステロール処理チャンバ254またはそれに付随するリザーバを含まない)ことも企図される。そのような実施形態では、処方物処理デバイス250は、前加水分解された脂肪を含有する非経口栄養処方物を、非経口投与を介して被験者に送達するように構成され得る。
【0083】
フィトステロール処理チャンバ254は、栄養処方物210中のフィトステロールを除去または変換するように構成されてよい。
【0084】
フィトステロール処理チャンバ254がフィトステロールを除去するように構成されている実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254には、フィトステロールを栄養処方物から除去するために1またはそれを超える公知のステロール結合分子が含まれてよい。ステロール結合分子は、固相マトリックスの一部であってよい。例えば、フィトステロール処理チャンバ254には、1またはそれを超えるステロール結合分子、例えばシクロデキストリンなどが含まれてよい。シクロデキストリン(シクロアミロースとも呼ばれる)は、環構造(環状オリゴ糖とも呼ばれる)で一緒に結合した糖分子で構成される化合物のファミリーである。シクロデキストリンは、酵素変換により、例えばデンプンから生成され得る。図3A図3Cは、3つの一般的なシクロデキストリン、6員のα-シクロデキストリン(図3A)、7員のβ-シクロデキストリン(図3B)、および8員のγ-シクロデキストリン(図3C)の化学構造を示す。β-シクロデキストリンとメチル-β-シクロデキストリン(MβCD)はどちらも培養細胞からコレステロールを除去し、メチル化型MβCDのほうがβ-シクロデキストリンよりも効率的である。
【0085】
水溶性MβCDは、コレステロールと可溶性包接錯体を形成し、それにより水溶液への溶解度を高めることができる。MβCDは、コレステロールを減らした製品の調製に使用され得る。つまり、かさ高く疎水性のコレステロール分子は、シクロデキストリン環の内部に留まるようになり、これはその後除去され得る。この機構(MβCDまたは任意の他の適したシクロデキストリンを使用)を使用して、フィトステロール処理チャンバ254内部のフィトステロールを除去することができる。一部の実施形態では、シクロデキストリンは、フィトステロール処理チャンバ254に存在し得、その後、ある量の栄養処方物210がフィトステロール処理チャンバ254を通過すると、フィトステロール処理チャンバ254は撹拌され、シクロデキストリンとフィトステロールへの結合を促進し得る。結合したシクロデキストリン-フィトステロール錯体は、その後、例えば、フィトステロールが減少した栄養処方物210の上清を錯体から分離することによるか、またはシクロデキストリン-フィトステロール錯体を濾過してフィトステロール収集リザーバ256に入れることにより、除去することができる。他の実施形態では、シクロデキストリン-フィトステロール錯体は、フィトステロール処理チャンバ254内に残っていてもよく、一方、フィトステロールが減少した栄養処方物210は、フィトステロール収集リザーバ256から濾過されてもよい。
【0086】
フィトステロール処理チャンバ254が、例えば生物変換経路を使用して、フィトステロールをコレステロールに変換するように構成されている実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254には、合併症および/または副作用、例えば肝臓の合併症の発症を引き起こす可能性が低いと思われる、毒性の低い化合物または非毒性化合物にフィトステロールを生物変換することが公知の1またはそれを超える酵素が含まれてよい。例えば、フィトステロール処理チャンバ254には、フィトステロールをコレステロールに生物変換するための1またはそれを超える酵素が含まれてよい。一部の昆虫および微生物はそのような酵素を産生することがある。ヒトと同様に、コレステロールは多数の微生物および昆虫の細胞膜の重要な構造成分である。しかし、これらの生物には、メバロン酸などの基本的な生物学的化合物からコレステロールを合成するために必要な代謝経路および対応する酵素がない。しかし、これらの生物は、植物に一般的に見られるフィトステロールを摂取し、コレステロールとフィトステロールの構造的な違いを説明する重要な炭素原子であるC24の酵素的脱アルキル化によって、フィトステロールをコレステロールに変換する能力を有する酵素を持っている。図4に示すように、例えば、哺乳動物は、重要な生物学的化合物であるメバロン酸をコレステロールに変換することが知られているが、植物はそれをシトステロールとして公知のフィトステロールに変換する。昆虫はこのシトステロールを消費し、特定の酵素を使用してそれをコレステロールに変換することができる。例えば、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる、W.H.Lingら、Dietary phytosterols:a review of metabolism,benefits,and side effects,LIFE SCIENCES 57(3):195-206(1995)を参照されたい。
【0087】
そのため、フィトステロール処理チャンバ254には、例えば、固体マトリックス、粒子、または酵素が結合することができ、栄養処方物210がそれを通って流れることができるその他の構造に結合した酵素が含まれてよい。酵素は、栄養処方物210中のフィトステロールをコレステロールに代謝することができる。一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254中の酵素は、結合していなくてもよく、浮遊していてもよい。酵素(固定化または遊離)は、フィトステロール処理チャンバ254を通って流れる栄養処方物210の流路に沿って配置されてよい。そのような実施形態では、フィトステロールは栄養処方物210から除去される代わりに代謝される場合があるため、フィトステロール収集リザーバ256は必要ではないかもしれない。その他の態様では、1またはそれを超える代謝産物を栄養処方物から除去するため、かつ/または代謝されていないフィトステロールを栄養処方物から除去するために、収集リザーバ256が含められてよい。
【0088】
一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、シクロデキストリンとフィトステロール代謝剤の両方を含むことができ、その結果、フィトステロールは、コレステロールに代謝されるか、シクロデキストリンによって収集されるか、またはその両方になる。このように、一部のフィトステロール分子がシクロデキストリンに結合していない場合、それらはコレステロールに変換され得る、または、一部のフィトステロール分子がコレステロールに変換されていない場合、それらはシクロデキストリンに結合する。一部の実施形態では、2つのフィトステロール処理チャンバ254が含められてよく、例えば、1つのチャンバがフィトステロールを代謝し、1つのチャンバがフィトステロールを除去してもよい。
【0089】
一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254には、追加の賦形剤が含まれてよい。例えば、栄養処方物210が加水分解チャンバ252を通過した後に、栄養処方物210に存在する遊離脂肪酸およびモノグリセリドの酸化を防止または低減するために、クエン酸、トコフェロール、またはその他の抗酸化剤賦形剤が存在してよい。
【0090】
一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、例えば、吸着、電気泳動、静電分離、抽出、フィールドフロー分画、イオン分離、濾過、遠心分離、重量分析分離、クロマトグラフィー、結晶化、および/またはフィトステロールの除去のためのその他の技術を使用して、および/または本明細書に開示される技術のいずれかを単独でまたは組み合わせて使用して、フィトステロールを除去することができる。
【0091】
一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、フィトステロール処理チャンバ254内の要素がユーザーに見えるように、完全にまたは部分的に透明なプラスチックまたはガラスで作製されていてもよい。一部の例では、これによりユーザーは、例えば外観検査によって、適切な流れが確実にフィトステロール処理チャンバ254を通るようにすることができる。他の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は不透明であってよく、任意の適した材料で作製されてよい。
【0092】
一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、滅菌済みかまたは滅菌可能な容器であり得る。一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、フィトステロール処理賦形剤(例えば、シクロデキストリン、変換酵素、抗酸化剤など)で予め充填されていてもよい。一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、閉鎖され密封された構成で提供されてもよく、処方物処理デバイス250内での設置の前に開封されてもよい。一部の実施形態では、ユーザー(例えば、医療提供者、患者、患者の保護者、薬剤師、または他のユーザー)が、使用前にフィトステロール処理チャンバ254を処方物処理デバイス250の中に挿入および/または設置してもよい。一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、予め充填されていてよい。他の実施形態では、ユーザーは、フィトステロール処理チャンバ254を所望の種類または量のフィトステロール処理賦形剤で充填してよい。一部の実施形態では、フィトステロール処理チャンバ254は、使用後に取り外し可能および使い捨て可能であり得、かつ/あるいは、フィトステロール処理チャンバ254を再使用することができるように、洗浄され、滅菌され、1またはそれを超えるフィトステロール処理賦形剤で再充填されるように構成され得る。
【0093】
フィトステロール収集リザーバ256は、例えば、フィトステロール処理チャンバ254内の栄養処方物から除去されたフィトステロールを収集するように構成されたチャンバであってよい。フィトステロール収集リザーバ256は、栄養処方物210から除去されたフィトステロールの効率的な収集を可能にするように配置されてよい。例えば、一部の実施形態では、フィトステロール収集リザーバ256は、処方物処理デバイス250内のフィトステロール処理チャンバ254の下方に位置してよい。他の実施形態では、フィトステロール収集リザーバ256は、フィトステロール処理チャンバ254の側面または他の場所に配置されてよい。フィトステロール収集リザーバ256は、フィトステロール処理チャンバ254に直接接続されてもよいし、1またはそれを超える導管255を介して接続されてもよい。
【0094】
一部の実施形態では、フィトステロール収集リザーバ256は、滅菌済みかまたは滅菌可能な容器であり得る。一部の実施形態では、フィトステロール収集リザーバ256は、閉鎖され密封された構成で提供されてもよく、処方物処理デバイス250内での設置の前に開封されてもよい。一部の実施形態では、ユーザー(例えば、医療提供者、患者、患者の保護者、薬剤師、または他のユーザー)が、使用前にフィトステロール収集リザーバ256を処方物処理デバイス250の中に挿入および/または設置してもよい。一部の実施形態では、フィトステロール収集リザーバ256は、使用後に(例えば、フィトステロールを収集した後に)取り外し可能および使い捨て可能であり得、かつ/あるいは、再使用され得るように、空にされ、洗浄され、滅菌されるように構成され得る。弁または他の適した流量制御デバイスを、1またはそれを超えるフィトステロール収集リザーバ256、フィトステロール処理チャンバ254、および/または導管255に含めて、フィトステロール収集リザーバ256からフィトステロール処理チャンバ254への逆流を防止または低減することができる。
【0095】
処方物処理デバイス250は、栄養処方物210が、フィトステロール処理チャンバ254を通過する前に加水分解チャンバ252を通過することができる構成で示されているが、代替実施形態では、栄養処方物210が加水分解チャンバ252を通過する前にフィトステロール処理チャンバ254を通過することができるようにチャンバを配置してもよい。あるいは、処方物処理デバイスには、加水分解チャンバ252のみ、フィトステロール処理チャンバ254のみ、または加水分解チャンバ252とフィトステロール処理チャンバ254の両方の機能を実行できる単一のチャンバが含まれてよい。
【0096】
導管253、255、257は、処方物処理デバイス250内のチャンバへ、および/またはそのチャンバから、栄養処方物210および/またはその一部を運搬するのに適した、いかなる種類の導管であってもよい。導管253、255、257は、例えば、医療用チューブであり得る。導管253、255、257は、ルアーロック接続、ねじ山、突起、溝、変形可能または拡張可能な構造、および/または、栄養処方物210および/またはその一部を運ぶための要素を接続するのに適した任意のその他の機構によるなど、当技術分野で公知の任意の手段によって、隣接するチャンバおよび/または導管204またはコネクタ263に接続することができる。一部の実施形態では、1またはそれを超える導管253、255、257は存在しなくてもよく、例えば、構造を互いに直接接続してもよい。さらに、1またはそれを超えるチャンバ252、254、256、および/または導管253、255、257には、所定の方向への流れを促進し、かつ/または処方物処理デバイス250を通る流れの速度を制御するための弁または他の適した流量制御デバイスが含まれてよい。
【0097】
コネクタ263は、処方物処理デバイス250の導管257を導管262に接続するのに適した、当技術分野で公知の任意の種類のコネクタであってよい。コネクタ263には、例えば、ルアーロック接続、ねじ山、突起、溝、変形可能または拡張可能な構造、および/または任意のその他の適した機構が含まれ得る。当技術分野で公知の適したコネクタの1つは、ENFit(登録商標)コネクタ(GEDSA)である。一部の実施形態では、導管263は存在しなくてもよく、処方物処理デバイス250は適した接続手段を介して導管262に直接接続してもよい。一部の実施形態では、コネクタ263には、弁またはその他の流体の流量制御機構も含まれてよい。
【0098】
導管262は、例えば、栄養チューブであり得る。一部の実施形態では、導管262は、栄養処方物210を、例えば、外頸静脈または内頸静脈、鎖骨下静脈および腋窩静脈、大腿静脈、腕の静脈、脚の静脈、または頭皮の静脈を通って被験者の血流に供給するための非経口栄養チューブであってよい。導管262およびシステム200は、そのような実施形態では、標準的な非経口栄養プロセスに合わせて使用されてよい。他の実施形態では、導管262は、栄養処方物210を、例えば、被験者の鼻、口、胃、または腹部を通って被験者の消化管に供給するための、経腸栄養チューブ、例えば、胃、経鼻胃、経鼻十二指腸、経鼻空腸、胃瘻造設、胃空腸吻合、空腸瘻造設、経皮内視鏡胃瘻造設(PEG)チューブ、または経空腸栄養チューブであり得る。そのような場合、導管262およびシステム200は、標準的な経腸栄養法に従って使用することができる。他の実施形態では、導管262は、受容容器への導管であり得、受容容器において、栄養処方物210は、処方物処理デバイス250によって処理された後に収集され得る。
【0099】
コネクタ265は、非経口栄養に適した方法で導管262を針264に接続するか、あるいは、栄養処方物を処方物処理デバイス250から被験者または受容容器に運ぶために、導管262を他のチューブまたはデバイス(図示せず)に接続するように構成され得る。コネクタ265には、例えば、ルアーロック接続、ねじ山、突起、溝、変形可能または拡張可能な構造、および/または任意のその他の適した機構が含まれ得る。一部の実施形態では、コネクタ265には、弁またはその他の流体の流量制御機構も含まれてよい。
【0100】
針264は、例えば、PNを提供するために、導管262へのアクセスポイントを被験者に提供するのに適した任意の針であってよい。したがって、針264は、当技術分野で公知の非経口栄養に適した任意の針であってよい。一部の実施形態では、例えば、針264は針付カニューレデバイスの一部であり得る。
【0101】
システム200およびその変形形態の使用は、いくつかの有益な効果を有し得る。例えば、フィトステロールの除去、または毒性がないか、毒性が低い化合物へのフィトステロールの変換は、PNに関連する肝臓の合併症を発症する被験者の尤度を低下させ得る。システム200の使用は、一部の態様では、被験者がPNを受け取ることができる時間を増加させ、かつ/またはPNを受け取るのに適格な被験者の数を増加させることができる。さらに、脂肪吸収率を高めるために必要なPN処方物の量は減らせる可能性があり、それにより、例えば限定されるものではないが、タンパク質およびビタミンなどのその他の栄養素と同様に、身体による重要な脂肪酸のより効率的な吸収につながる可能性がある。また、システム200の使用により、PNに要する時間を短縮することもできる。それは、事前に加水分解された脂肪を投与すると、脂肪摂取の改善および栄養状態の改善がより短時間でもたらされる可能性があり、それにより経腸栄養または経口栄養へのより早い移行が可能になるためである。
【0102】
さらに、システム200の使用は、栄養処方物の栄養素の密度の増加に起因して、被験者に提供される栄養処方物の量は(例えば、非経口的に)比較的低く保ちながら、被験者によって得られる総カロリーおよび/またはエネルギーの数を増加させる可能性がある。例えば、加水分解された脂質を含む少量の栄養処方物と同じ栄養量を得るために、より多量の栄養処方物を提供する必要があり得る。
【0103】
図5は、例えば、例示的なシステム200を使用して栄養処方物を調製および投与するための例示的な方法をフローチャートの形で示す。当業者は、図5に示される方法の1またはそれを超えるステップが省略され得るか、または図5に示される順序に一致せずに実行され得ることを認識するであろう。図5に示されるステップの前、最中、または後に、他のステップを実行してもよい。
【0104】
ステップ502によれば、栄養処方物の容器は、処方物処理デバイス250に接続され得る。容器は、例えば、例えば導管204を介して、例えば処方物処理デバイス250に接続され得る供給源202であり得る。栄養処方物は、例えば、栄養処方物210であってよい。前述のように、容器は、当技術分野で公知の任意の適した方法で処方物処理デバイスに接続され得る。
【0105】
また、前述したように、処方物処理デバイスに接続される前または接続中に、多様な方法(例えば、混合、撹拌、加熱、冷却など)で栄養処方物を調製またはブライムすることができる。
【0106】
ステップ502に続いて、方法はステップ504またはステップ506のいずれかに進むことができる。例えば、処方物処理デバイスは、脂質加水分解チャンバを含んでも含まなくてもよい。
【0107】
ステップ504によれば、栄養処方物は、脂質加水分解チャンバに通され得る。脂質加水分解チャンバは、例えば、加水分解チャンバ252であってよい。栄養処方物中の脂質(例えば、トリグリセリド)が(例えば、遊離脂肪酸およびモノグリセリドに)加水分解されるように、栄養処方物は、脂質加水分解チャンバ(例えば、加水分解チャンバ252)に通され得る。栄養処方物は、例えば、本明細書で前述した任意の方法で(例えば、重力、圧力差、ポンプ輸送または真空力、毛管作用などを使用して)脂質加水分解チャンバに通され得る。これらのステップは、例えばシステム200に関して、本明細書で前述した方法のいずれかで実行されてよい。
【0108】
ステップ504に続いて、プロセスはステップ506またはステップ508のいずれかに進むことができる。例えば、処方物処理デバイスは、フィトステロール処理チャンバを含んでも含まなくてもよい。
【0109】
ステップ506によれば、栄養処方物は、フィトステロール処理チャンバに通され得る。フィトステロール処理チャンバは、例えば、フィトステロール処理チャンバ256であってよい。栄養処方物がフィトステロール処理チャンバを通過するときに、栄養処方物中のフィトステロールは、変換(例えば、コレステロールに生物変換)され得るか、または除去(例えば、シクロデキストリンに結合して除去)され得るか、またはその両方が行われ得る。これらのステップは、例えばシステム200に関して、本明細書で前述した方法のいずれかで実行されてよい。
【0110】
ステップ508によれば、栄養処方物は、非経口的、経腸的、または経口的に投与され得る。例えば、栄養処方物(例えば、栄養処方物210)は、被験者への非経口投与のために、導管(例えば、導管262)を通って適したアタッチメント(例えば、針264)に通され得る。他の実施形態では、アタッチメントは、経腸栄養に適したポート、チューブ、またはその他のデバイスであり得る。他の実施形態では、アタッチメントは、経口栄養に適したボトル、乳首、またはその他のデバイスであり得る。さらなる実施形態では、栄養処方物は投与されなくてもよく、代わりに、例えばボトル、バイアル、ビーカー、チューブ、バッグ、またはその他の容器に保存されてよい。
【0111】
一部の実施形態では、ステップ508は、例えば、処方物処理デバイスがバルク栄養処方物を調製するために使用され、その後に被験者に投与される場合、遅延され得る。
【0112】
ステップ504は、(両方のステップが実行される実施形態では)ステップ506の前に行われるように示されているが、ステップ506は、一部の実施形態では、ステップ504より先に行われ得ることが企図される。また、ステップ504および506を同時に(例えば、処方物処理デバイスがリパーゼとフィトステロール処理賦形剤の両方を含むチャンバを含む実施形態で)実行され得ることも企図される。
【0113】
上記の実施形態の多くは、フィトステロールの除去のためのポイントオブケアデバイスをはじめとするデバイスに関するものであるが、後で被験者に投与される栄養処方物の保存の前に、フィトステロールがバルク栄養処方物から除去され得ることも企図される。そのような実施形態によるフィトステロールの除去は、栄養処方物の中に含まれる脂肪の加水分解の有無にかかわらず起こり得る。
【0114】
例えば、容器には栄養処方物のバルク供給が含まれる場合がある。図6Aは、栄養処方物610を含有する例示的なバルク混合槽601を示す。遊離(すなわち、未結合)シクロデキストリン604または不活性で不溶性のマトリックスに固定化されたシクロデキストリンをバルク混合槽601の栄養処方物610に添加するか、または栄養処方物610をバルク混合槽601に既に存在するシクロデキストリン604に添加することができる。例えば、栄養処方物を人に投与する前に、遊離および/または未結合シクロデキストリン604をIVFE栄養処方物のバルク供給に直接加えてよい。別の例では、遊離および/または未結合のシクロデキストリン604を、本開示によるデバイスのようなデバイスを使用して栄養処方物の加水分解の前に、かつ/または本明細書に開示されるデバイスによってバルク栄養処方物が加水分解された後に、IVFE栄養処方物のバルク供給に直接加えてよい。シクロデキストリン604は、栄養処方物610をデバイス(例えば、上記のデバイス250)に通さずに槽601内の栄養処方物610中のフィトステロール605を除去するために、バルク栄養処方物610に加えられてよい。
【0115】
そのステップが図7に示され、その構成要素が図6Aに概略的に示されている、例示的なバルク処理方法700では、フィトステロール605を含有する栄養処方物610は、未結合シクロデキストリン604と混合され得る(図7のステップ702)。混合物を加熱(例えば、0~100℃に、例えば、20℃~80℃、40~60℃、または50~55℃に)および/または撹拌して、シクロデキストリン604の栄養処方物610への溶解を促進し、過飽和シクロデキストリンの溶液を作成してもよい。栄養処方物610中の遊離フィトステロール605とシクロデキストリン604との結合を促進するために、溶液を撹拌してシクロデキストリン604を栄養処方物610と混合してもよい(図7のステップ704)。溶液の加熱および/または撹拌は、同時にまたは順次に、例えば、30分間まで、1時間まで、5時間まで、または一晩(例えば、7~10時間または6~12時間)またはそれを超えて、実施されてよい。
【0116】
加熱および/または撹拌に続いて、シクロデキストリン604と栄養処方物610の溶液を冷却し(例えば、100℃~0℃に、例えば、80℃~20℃、または60℃~20℃に)、シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを過飽和溶液から沈殿させてよい(図7のステップ706)。冷却は、能動的に(例えば、冷蔵により)または受動的に(例えば、溶液を室温にすることにより)達成され得る。これにより、フィトステロールおよび/またはフィトステロールが結合しているシクロデキストリンの除去が促進され得る(図7のステップ708)。例えば、沈殿したフィトステロールコンジュゲートは、適した分離方法、例えば、遠心分離、濾過、水簸、および/または適した吸着剤(例えば、ポリマー樹脂)への吸着により除去することができる。図6Bは、栄養処方物610からシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを分離するためのフィルタ611の使用を示し、図6Cは、遠心分離後に栄養処方物610から分離されたシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを示す。
【0117】
一部の実施形態では、シクロデキストリン604は、固体マトリックス、例えば、1またはそれを超える不溶性のポリマービーズ、ロッド、フィルタ、スクリーン、シート、またはその他の適した不溶性構造に固定化され得る。固定化されたシクロデキストリン604およびそれらが結合している構造は、バルク量の栄養処方物610に加えられてよい(図7のステップ702)。固定化されたシクロデキストリン604と栄養処方物610の混合物を加熱(例えば、0~100℃に、例えば、20℃~50℃)および/または撹拌して、シクロデキストリン604の溶解を促進し、過飽和シクロデキストリン溶液を作成してもよい。栄養処方物610中の遊離フィトステロール605とシクロデキストリン604との結合を促進するために、溶液を撹拌してシクロデキストリン604を栄養処方物610と混合してもよい(図7のステップ704)。
【0118】
あるいは、過飽和溶液を作成せず、加熱および/または撹拌を行って、シクロデキストリン604とフィトステロール605との結合を促進し、一方でシクロデキストリン604を(溶液に溶解するのではなく)不溶性マトリックスに固定化されたままにしてもよい。加熱および/または撹拌は、同時にまたは順次に、例えば、30分間まで、1時間まで、5時間まで、または一晩(例えば、7~10時間または6~12時間)またはそれを超えて、実施されてよい。一部の実施形態では、フィトステロール605はシクロデキストリン604に結合し、その結果フィトステロール605とシクロデキストリン604の両方が1つまたは複数の固体マトリックスに固定化され得る、一方、一部の実施形態では、シクロデキストリン604は、フィトステロール605またはその組み合わせと結合すると、1つまたは複数の固体マトリックスから開放され得る(図7のステップ704)
【0119】
一部の実施形態では、加熱および撹拌の後に、混合物は冷却されてよい(例えば、100~0℃に、例えば80~20℃または50~20℃に)。シクロデキストリン604がフィトステロール605と結合する際に固定化された1つまたは複数の固体マトリックスから分離した場合、冷却によりシクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートを溶液から沈殿させることができる(図7のステップ706)。冷却は、能動的に(例えば、冷蔵により)または受動的に(例えば、溶液を室温にすることにより)達成され得る。これにより、フィトステロール605および/またはフィトステロール605が結合しているシクロデキストリン604の除去が促進され得る。一部の態様では、例えば、シクロデキストリン604が、フィトステロール605との結合の際に1つまたは複数の固体マトリックスに固定化されたままである場合、固体マトリックスの除去により、栄養処方物610からシクロデキストリン604およびフィトステロール605を除去することが可能になり(図7のステップ710)、冷却は、実行される場合とされない場合がある。固定化および/または遊離シクロデキストリン-フィトステロールコンジュゲートの除去は、適した分離方法、例えば、遠心分離、濾過、水簸および/または固体マトリックスの除去を介して達成され得る。したがって、上記の例示的な方法は、シクロデキストリンを使用して、栄養処方物からフィトステロールのバルク除去を可能にし得る。
【0120】
図7は、バルク栄養処方物を調製するための例示的な方法をフローチャートの形で示す。当業者は、図7に示される方法の1またはそれを超えるステップが省略され得るか、または図7に示される順序に一致せずに実行され得ることを認識するであろう。図7に示されるステップの前、最中、または後に、他のステップを実行してもよい。加えて、いくつかのステップは互いに代替的に実行されてもよく(例えば、ステップ706および710)、代替ステップ706および710は両方が実行されてもよく(例えば、一部のシクロデキストリンがフィトステロールへの結合のときに固定化されたままになり、一方、一部のシクロデキストリンがフィトステロールへの結合のときに遊離する場合)、かつ/または図7のステップは複数回繰り返されてもよい。一部の態様では、ステップ710で十分な量のフィトステロールが栄養処方物から除去さる場合、ステップ708は省略されてよい。
【0121】
一部の態様では、バルク栄養処方物および/または被験者に投与された栄養処方物から分離されたフィトステロールまたはシクロデキストリンの一方または両方が再使用され得る。例えば、除去されたシクロデキストリンは、その後、栄養処方物の新しいバッチからフィトステロールを除去するために再使用され得る。一部の態様では、除去されたフィトステロールは、例えばマーガリンおよび/または乳製品のコレステロールを置き換えるために、他の食品に使用され得る。一部の態様では、除去されたフィトステロールは、それ自体で、または1またはそれを超える薬物と組み合わせて栄養成分として再使用され得る。
【0122】
フィトステロールのバルク除去の後、栄養処方物は被験者に投与されず、代わりに、例えば、ボトル、バイアル、ビーカー、チューブ、バッグ、またはその他の容器に保存されてよい。本明細書に記載される例示的な方法は、図2に関連して説明されるデバイス250とは別に使用されてもよいし、デバイス250の使用前に使用されてもよい。図7の方法に従って除去されたフィトステロールの初回通過であるバルク栄養処方物は、患者への投与の前にデバイス250を通過してもしなくてもよい。
【0123】
本開示の原理は、特定の用途の実例となる態様を参照して本明細書に記載されているが、本開示はそれに限定されない。当業者および本明細書において提供される教示を利用する者は、すべて本明細書に記載される態様の範囲内にある、さらなる修正、適用、態様、および同等物の置換を認識するであろう。したがって、本開示は、前述の記載に制限されるとみなされるべきではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7