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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】タイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20230420BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020514468
(86)(22)【出願日】2019-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2019016890
(87)【国際公開番号】W WO2019203359
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2018081379
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018092607
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 修一
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-20807(JP,A)
【文献】特開2014-181958(JP,A)
【文献】特表2013-520667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、
前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、
を備え、
前記駆動システムが、
前記キャリッジを前記路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段と、
前記試験輪を前記所定の速度に対応する回転数で駆動する試験輪駆動手段と、
前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する第1の駆動手段と、
前記第1の駆動手段が発生した動力を前記キャリッジ駆動手段及び前記試験輪駆動手段に分配する動力分配手段と、
を備えた、
タイヤ試験装置。
【請求項2】
前記第1の駆動手段が前記ベース上に設置され、
前記駆動システムが、
前記キャリッジ上に設置された第2の駆動手段と、
前記第1及び前記第2の駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備えた、
請求項1に記載のタイヤ試験装置。
【請求項3】
前記試験輪駆動手段が、
前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、
前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた、
請求項1又は請求項2に記載のタイヤ試験装置。
【請求項4】
試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、
前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、
を備え、
前記駆動システムが、
前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する第1の駆動手段と、
前記第1の駆動手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構と、を備え、
前記第1の巻掛け伝動機構が、
前記第1の駆動手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、
前記キャリッジに保持され、前記試験輪と連結した従動プーリーと、
前記駆動プーリー及び前記従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、
前記第1の巻掛け媒介節が、
前記キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、
前記第1の部分において前記従動プーリーを通り、
前記第2の部分において前記キャリッジに固定された、
タイヤ試験装置。
【請求項5】
前記駆動システムが、
前記第1の巻掛け伝動機構と連結して、該第1の巻掛け伝動機構によって伝達された動力の一部を前記試験輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、
前記従動プーリーが、前記二次動力伝達部の入力軸と結合した、
請求項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項6】
前記駆動システムが、一対の前記第1の駆動手段を備え、
前記第1の巻掛け伝動機構が、前記一対の第1の駆動手段の出力軸とそれぞれ結合した一対の前記駆動プーリーを備え、
前記第1の巻掛け媒介節が、ループを形成し、前記一対の駆動プーリー及び前記従動プーリーに掛け渡された、
請求項又は請求項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項7】
前記第1の巻掛け媒介節が、鋼線の心線を有する歯付ベルトである、
請求項から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項8】
前記第1の巻掛け媒介節が、カーボン心線を有する歯付ベルトである、
請求項から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項9】
前記第1の駆動手段が前記ベース上に設置され、
前記駆動システムが、
前記キャリッジ上に設置された第2の駆動手段と、
前記第1及び前記第2の駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え
請求項から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項10】
前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、
前記試験輪駆動手段が、
前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、
前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた、
請求項から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項11】
試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、
前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、
を備え、
前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、
前記試験輪駆動手段が、
前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、
前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた、
タイヤ試験装置。
【請求項12】
前記回転運動供給手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターを備え、
前記トルク付与手段が、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた、
請求項11に記載のタイヤ試験装置。
【請求項13】
前記トルク付与手段が、前記第1のモーターが発生した動力と前記第2のモーターが発生した動力とを結合する動力結合手段を備えた、
請求項12に記載のタイヤ試験装置。
【請求項14】
前記トルク付与手段が、
前記第2のモーターが取り付けられ、前記第1のモーターが発生した動力により回転駆動される回転フレームと、
前記第2のモーターによって駆動されるシャフトと、を備え、
前記シャフトと前記回転フレームとが同心に配置された、
請求項13に記載のタイヤ試験装置。
【請求項15】
前記トルク付与手段が、前記回転フレームを回転可能に支持する一対の軸受部を備え、
前記回転フレームが、筒状であり、
前記第2のモーターを収容するモーター収容部と、
前記モーター収容部を挟んで軸方向両側に設けられた、前記モーター収容部よりも小径の一対の軸部と、を有し、
前記一対の軸部において、前記一対の軸受部により、回転可能に支持され、
前記軸部の一方が円筒状であり、その中空部を前記シャフトが貫通し、
前記軸部の一方の内周に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設けられた、
請求項14に記載のタイヤ試験装置。
【請求項16】
前記試験輪駆動手段が、
前記回転運動供給手段から供給された動力を伝達する一次動力伝達部と、
前記キャリッジ上に設置され、前記一次動力伝達部と連結して、該一次動力伝達部によって伝達された動力を前記試験輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、
前記一次動力伝達部が第1の巻掛け伝動機構を備え、
前記第1の巻掛け伝動機構が、
前記キャリッジが走行可能な領域を挟んで配置された一対の固定プーリーと、
前記キャリッジに保持された移動プーリーと、
前記一対の固定プーリー及び前記移動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、
前記固定プーリーの少なくとも一つが前記回転運動供給手段の出力軸と結合した駆動プーリーであり、
前記移動プーリーが従動プーリーであり、前記二次動力伝達部の入力軸と結合した、
請求項11から請求項15のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項17】
前記回転運動供給手段が、第1のモーターを備え、
前記トルク付与手段が、
前記第1のモーターが発生した動力により回転駆動される回転フレームと、
前記回転フレームに取り付けられた第2のモーターと、を備え、
前記二次動力伝達部が第2の巻掛け伝動機構を備え、
前記第2の巻掛け伝動機構が、
前記第1の巻掛け伝動機構の前記移動プーリーと結合した駆動プーリーと、
前記トルク付与手段の前記回転フレームと結合した従動プーリーと、
前記第2の巻掛け伝動機構の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第2の巻掛け媒介節と、を備えた、
請求項16に記載のタイヤ試験装置。
【請求項18】
前記二次動力伝達部が、回転可能に支持されたスピンドルを備え、
前記スピンドルが、
その先端部に前記試験輪を同軸に着脱可能に構成され、
前記試験輪に加わる力を検出可能な力センサーを備えた、
請求項16又は請求項17に記載のタイヤ試験装置。
【請求項19】
前記キャリッジが、
メインフレームと、
前記メインフレームに対して、前記路面に垂直な垂直線の回りに旋回可能な旋回フレームと、
前記メインフレームに対して、前記路面に垂直な垂直方向にスライド可能なスライドフレームと、を備え、
前記スピンドルが、前記旋回フレーム及び前記スライドフレームを介して前記メインフレームに支持された、
請求項18に記載のタイヤ試験装置。
【請求項20】
前記キャリッジが、
前記旋回フレームの前記垂直線回りの旋回を案内する曲線ガイドウェイと、
前記スライドフレームの前記垂直方向への移動を案内するリニアガイドウェイと、を備えた、
請求項19に記載のタイヤ試験装置。
【請求項21】
前記キャリッジが、前記スライドフレームを前記垂直方向に移動させて、前記試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備えた、
請求項19又は請求項20に記載のタイヤ試験装置。
【請求項22】
前記キャリッジが、前記旋回フレームを前記垂直線の周りに旋回移動させて、前記路面に対する前記試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整部を備えた、
請求項19から請求項21のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項23】
前記スライドフレームが、前記スピンドルを、該スピンドルの中心線及び前記垂直線の両方と垂直な水平軸の周りに回転可能に支持する、
請求項19から請求項22のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項24】
前記スピンドルを前記水平軸の周りに回転移動させて、前記路面に対する前記試験輪のキャンバーを調整可能なキャンバー調整部を備えた、
請求項23に記載のタイヤ試験装置。
【請求項25】
試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、
前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、
を備え、
前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、
前記試験輪駆動手段が、
前記試験輪を回転駆動する動力を発生する二つの駆動手段と、
前記二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、
前記二つの駆動手段が、
前記ベース上に設置された第1のモーターと、
前記キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む、
タイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能は、路面の状態により影響を受けるため、様々な状態の路面に対して評価を行う必要がある。
【0003】
タイヤの性能を評価する試験には、試験タイヤを例えば専用試験車のホイールリムに装着して実際の路面上を走行させて行う路上試験や室内に設置された試験装置を使用して行う室内試験がある。
【0004】
特開2015-72215号公報(特許文献1)には、タイヤの室内試験に使用される試験装置の例が記載されている。特許文献1に記載の試験装置は、外周面に模擬路面が設けられた回転ドラムを備え、試験タイヤを模擬路面に接地させた状態で、試験タイヤとドラムを回転させて試験を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
室内試験は、路上試験と比較して、試験精度が高く、試験効率も良い。しかしながら、従来の室内試験用の試験装置は、試験時に模擬路面を高速で走行させるため、雨雪や砂利等で覆われた路面状態で試験を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、様々な路面状態の室内試験が可能なタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、路面を有する路面部と、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジを備えたタイヤ試験装置が提供される。
【0008】
本発明の実施形態の一態様によれば、路面を有する路面部と、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、を備え、路面部の少なくとも一部が交換可能な路面ユニットで構成された、タイヤ試験装置が提供される。
【0009】
本発明の実施形態の別の態様によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、駆動システムが、キャリッジを路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段と、試験輪を所定の速度に対応する回転数で駆動する試験輪駆動手段と、キャリッジ及び試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、駆動手段が発生した動力をキャリッジ駆動手段及び試験輪駆動手段に分配する動力分配手段と、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
【0010】
本発明の実施形態の更に別の態様によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、駆動システムが、キャリッジ及び試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、駆動手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構と、を備え、第1の巻掛け伝動機構が、駆動手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、キャリッジに保持され、試験輪と連結した従動プーリーと、駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、第1の巻掛け媒介節が、キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、第1の部分において従動プーリーを通り、第2の部分においてキャリッジに固定された、タイヤ試験装置が提供される。
【0011】
本発明の実施形態の更に別の態様によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、駆動システムが試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、試験輪駆動手段が、キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
【0012】
本発明の実施形態の更に別の態様によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、試験輪を路面に接地させた状態で路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、駆動システムが試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、試験輪駆動手段が、試験輪を回転駆動する動力を発生する二つの駆動手段と、二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、二つの駆動手段が、ベース上に設置された第1のモーターと、キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む、タイヤ試験装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、様々な路面状態の室内試験を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の左側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図4】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図5】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図6】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図7】従動部の断面図である。
図8】トルク発生装置の側断面図である。
図9】スピンドル及びその周辺の構造を示した図である。
図10】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
図11】路面部の横断面図である。
図12】路面部の第1の変形例の横断面図である。
図13】路面部の第2の変形例の横断面図である。
図14】第2の変形例における路面部の荷重検出部付近の横断面図である。
図15】第2の変形例における路面部の荷重検出部付近の平面図である。
図16】第3の変形例における路面部の荷重検出部付近の平面図である。
図17】第3の変形例における路面部の荷重検出部付近の側面図である。
図18】第3の変形例における荷重検出部の正面図である。
図19】第3の変形例における荷重検出部の側面図である。
図20】第3の変形例における荷重検出部の平面図である。
図21】第3の変形例における荷重検出部の可動部を取り外した状態を示す平面図である。
図22図18における領域Eの拡大図である。
図23】第3の変形例におけるタイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する手順を表すフローチャート。
図24】第3の変形例における荷重プロファイル計算の手順を表すフローチャートである。
図25】第3の変形例における荷重検出モジュール及び試験輪の回転軸の配置関係を示す平面図である。
図26】第3の変形例における荷重プロファイルの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。
【0016】
図1~3は、順に、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の正面図、左側面図及び平面図である。また、図4~6は、順に、後述するキャリッジ20及びその周辺の構造を示した正面図、左側面図及び平面図である。なお、図4~6においては、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。
【0017】
なお、図2及び図5において、右から左に向かう方向をX軸方向、紙面に垂直に裏から表に向かう方向をY軸方向、下から上に向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、前後、上下、左右の各方向を、キャリッジの走行方向(X軸正方向)を向いたときの各方向として定義する。すなわち、X軸正方向を前、X軸負方向を後ろ、Y軸正方向を左、Y軸負方向を右、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下という。
【0018】
タイヤ試験装置1は、X軸方向に細長い軌道部10及び路面部60と、軌道部10上をX軸方向に走行可能なキャリッジ20を備えている。図3に示されるように、軌道部10の左部分には、X軸方向における軌道部10の略全長に渡って延びる細長いスペースSp1が設けられている。このスペースSp1に路面部60が収容されている。路面部60の上面には、キャリッジ20に装着された試験タイヤTが接地する路面63a(舗装部63)が設けられている。本実施形態においては、試験条件に応じて路面部60を交換できるように、軌道部10と路面部60とが分離している。なお、軌道部10のベースフレーム11(以下「ベース11」と略記する。)と路面部60のフレーム61とを一体に形成してもよい。
【0019】
キャリッジ20には、試験輪W(試験タイヤTが装着されたホイールリムWr)が取り付けられる。試験の際は、試験輪Wが路面63aに接地した状態でキャリッジ20が走行し、試験タイヤTが路面63a上を転動する。
【0020】
軌道部10は、キャリッジ20のX軸方向への移動を案内する複数(本実施形態では三つ)のリニアガイドウェイ(以下「リニアガイド」と略記する。)13と、キャリッジ20を駆動する機械的動力を発生する一つ以上の駆動部14を備えている。本実施形態では、二対の駆動部14(左側の一対の駆動部14LA、14LBと右側の一対の駆動部14RA、14RB)が、軌道部10のベース11上の四隅付近に設置されている。駆動部14LA及び14RAは軌道部10の後端部に配置され、駆動部14LB及び14RBは軌道部10の前端部に配置されている。
【0021】
図6に示されるように、各駆動部14は、サーボモーター141と、サーボモーター141の出力の回転数を減速するオプションの減速機142を備えている。右側の駆動部14RA及び14RBは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、キャリッジの走行速度に対応する回転数の回転運動を試験輪Wに供給する回転運動供給手段としての役割を兼ね備えている。左側の駆動部14LA及び14LBは、キャリッジ駆動手段としての役割をもっている。
【0022】
本実施形態では、サーボモーター141には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用される。
【0023】
また、タイヤ試験装置1は、左右に各一組のベルト機構50(50L、50R)を備えている。ベルト機構50は、駆動部14が発生する動力をキャリッジ20に伝達して、キャリッジ20をX軸方向に駆動する。各ベルト機構50は、歯付ベルト51と、一対の駆動プーリー52(52A、52B)と、3個の従動プーリー53(53A、53B、53C)を備えている。駆動プーリー52及び従動プーリー53は、いずれも歯付ベルト51と噛み合う歯付プーリーである。
【0024】
歯付ベルト51は、鋼線の心線を有している。なお、歯付ベルト51には、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いモーターを使用してキャリッジ20を高い加速度で駆動する(あるいは、試験輪Wに高い駆動力/制動力を与える)ことが可能になり、タイヤ試験装置1の小型化(あるいは大容量化)が可能になる。
【0025】
右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、回転運動供給手段(駆動部14RA、14RB)から供給された動力を後述する二次動力伝達部に伝達する一次動力伝達部としての役割を兼ね備えている。左側のベルト機構50Lは、キャリッジ駆動手段の役割をもっている。
【0026】
なお、以下の説明において、左右に一対が設けられた構成については、原則として左側の構成について説明し、右側の構成については、角括弧で囲って併記し、重複する説明を省略する。
【0027】
左側[右側]のベルト機構50L[50R]の歯付ベルト51は、一対の駆動プーリー52(52A、52B)と、3個の従動プーリー53(53A、53B、53C)に巻き掛けられている。一対の駆動プーリー52A、52Bは、左側[右側]の一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]の出力軸にそれぞれ結合している。3個の従動プーリー53A、53B、53Cは、後述する左側[右側]の従動部22L[22R]に取り付けられている。
【0028】
また、図5に示されるように、各歯付ベルト51の両端部は、それぞれベルトクランプ54(54A、54B)によりキャリッジ20のメインフレーム21に固定され、各歯付ベルト51はキャリッジ20を介してループを形成している。ベルト機構50の一対の駆動プーリー52A、52B(図2)は、キャリッジ20が走行可能な領域を間に挟んで配置され、ベース11上に保持された(すなわち、重心位置がベース11に対して固定された固定プーリーである。従動プーリー53(図5)は、キャリッジに保持され、キャリッジと共に移動可能な移動プーリーである。
【0029】
本実施形態では、一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]は同位相で駆動される。駆動プーリー52と従動プーリー53の有効径(すなわち、ピッチ円直径)又は歯数は、いずれも同一である。また、左側の駆動部14LA、14LBと右側の駆動部14RA、14RBは、左右逆向きに設置されていて、互いに逆位相で駆動される。駆動部14LA及び14LB[14RA及び14RB]により歯付ベルト51L[51R]を駆動すると、キャリッジ20が歯付ベルト51L[51R]に引っ張られて、X軸方向に駆動される。
【0030】
軌道部10は、複数(本実施形態では三つ)のリニアガイド13(13A、13B、13C)を備えている。各リニアガイド13は、X軸方向に延びる軌道を形成する1本のレール131と、レール131上を走行可能な一つ以上(本実施形態では三つ)のキャリッジ(以下「ランナー132」という。)を備えている。各レール131は、軌道部10のベース11の上面に敷設されている。二つのリニアガイド13A、13Bのレール131は、スペースSp1(すなわち)の左右両端に沿って配置され、残りのリニアガイド13Cのレール131は、ベース11の右端に沿って配置され、それぞれベース11に取り付けられている。また、各ランナー132は、キャリッジ20の下面に取り付けられている。
【0031】
図6に示されるように、キャリッジ20は、メインフレーム21と、ベルト機構50L及び50Rの従動プーリー53をそれぞれ保持する従動部22L及び22Rと、試験タイヤTが装着された試験輪Wを回転可能に保持するスピンドル部28(図4)と、路面63aに対する試験輪Wのアライメント及び荷重を調整可能なアライメント部40と、スピンドル部28のスピンドル280を回転駆動するスピンドル駆動機構20Dを備えている。なお、スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられる車軸である。
【0032】
図7は、右側の従動部22Rの概略構造を示す断面図である。従動部22Rは、フレーム221、3組の軸受222及び3本のシャフト223A~Cを備えている。フレーム221にはY軸方向に延びる三つの貫通穴が開けられていて、シャフト223A~Cは、各貫通穴に嵌め込まれた1組の軸受222によってそれぞれ回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、各シャフト223A~Cが一対の軸受222によって支持されているが、一つ又は三つ以上の複数の軸受222によって各シャフト223A~Cを支持する構成としてもよい。フレーム221の一面から突き出たシャフト223A~Cの一端部には、ベルト機構50Rの従動プーリー53A~Cがそれぞれ取り付けられている。
【0033】
右側の従動部22Rでは、X軸方向中央のシャフト223Bのみが他の2本(223A、223C)よりも長く、シャフト223Bの他端部がフレーム221の他面から突き出ている。シャフト223Bの他端部には、後述するベルト機構23の駆動プーリー231が取り付けられている。すなわち、シャフト223Bを介して、右側のベルト機構50Rとベルト機構23とが連結されている。
【0034】
なお、左側の従動部22Lも、上述した右側の従動部22Rと同様に構成されているが、左右逆向きに配置されている点、及び、3本のシャフト223A~Cがいずれも短く、シャフト223Bの他端部に駆動プーリー231が取り付けられていない点において、右側の従動部22Rとは異なっている。
【0035】
図6に示されるように、スピンドル駆動機構20Dは、ベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を備えている。右側のベルト機構50Rから右側の従動部22Rのシャフト223B(図7)を介してベルト機構23に伝達された動力は、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を介して、スピンドル部28(図4)に伝達され、スピンドル部28に取り付けられた試験輪Wを回転駆動する。すなわち、右側の駆動部14RA、14RBが発生した動力は、一部がキャリッジ20の駆動に使用され、別の一部が試験輪Wの回転駆動に使用される。すなわち、右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動する手段(キャリッジ駆動手段)、試験輪Wを駆動する手段(試験輪駆動手段)及び駆動部14RA、14RBが発生した動力をキャリッジ20の駆動に使用する動力と試験輪Wの駆動に使用する動力とに分配する手段(動力分配手段)を兼ねている。
【0036】
ベルト機構50の歯付ベルト51は、上側の部分51aと下側の部分51bとが、キャリッジ20の走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される。具体的には、キャリッジ20に固定された歯付ベルト51の下側の部分51bが、キャリッジ20と共にキャリッジの走行方向に駆動され、上側の部分51aがキャリッジ20及び下側の部分51bと逆向きに駆動される。また、キャリッジ20に取り付けられた従動プーリー53は、キャリッジ20と逆向きに走行する歯付ベルト51の上側の部分51aに巻き掛けられて、上側の部分51aによって駆動される。なお、従動プーリー53Bに与えられた動力は、ベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24、スライド式等速ジョイント及びスピンドル部28から構成された二次動力伝達部により試験輪Wに伝達され、試験輪Wの駆動に使用される。このようなベルト機構50の構成により、歯付ベルト51によるキャリッジ20と試験輪Wの両方の駆動が可能になっている。
【0037】
本実施形態では、共通の動力伝達装置(すなわち、ベルト機構50R)によって伝達された回転運動を使用してキャリッジ20及び試験輪Wを駆動する構成が採用されている。この構成により、キャリッジ20の走行速度によらず、常にキャリッジ20の走行速度に対応した周速(回転数)で試験輪Wを回転駆動させることが可能になっている。また、本実施形態では、トルク付与装置30の作動量(つまりは、消費電力)を減らすために、トルク付与装置30が作動していないときには、キャリッジ20の走行速度と略同じ周速で試験輪Wが回転駆動されるように構成されている。
【0038】
図8は、トルク付与装置30の側断面図である。トルク付与装置30は、試験輪Wに加えるトルクを発生して、このトルクをベルト機構23によって伝達された回転運動に重ねて出力する。言い換えれば、トルク付与装置30は、ベルト機構23により伝達された回転運動の位相を変化させることにより、試験輪Wにトルクを付与する(すなわち、路面63aと試験輪Wとの間に駆動力又は制動力を与える)ことができる。
【0039】
スピンドル駆動機構20Dにトルク付与装置30を組み込むことにより、回転数を制御するための動力源(駆動部14RA、14RB)とトルクを制御するための動力源(後述するサーボモーター32)とで役割を分担することが可能になる。そして、これにより、より小容量の動力源を使用することが可能になると共に、試験輪Wに加わる回転数及びトルクをより高い精度で制御することが可能になる。また、トルク付与装置30をキャリッジ20に組み込むことにより、ベルト機構50Lに加わるトルクが低減するため、ベルト機構50Lの小型化(例えば、使用する歯付ベルトの本数の削減)や、より耐荷重の低い部材の使用が可能になる。
【0040】
トルク付与装置30は、ハウジング31と、ハウジング31内に設置されたサーボモーター32、減速機33及びシャフト34と、ハウジング31を回転可能に支持する二つの軸受部35及び軸受部36と、スリップリング部37と、スリップリング部37を支持する支柱38と、ロータリーエンコーダー39を備えている。ロータリーエンコーダー39により、ハウジング31の回転数が検出される。
【0041】
本実施形態においては、サーボモーター32には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下、定格出力が7kW乃至37kWの超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用される。
【0042】
ハウジング31は、直径が大きな略円筒状のモーター収容部311及びキャップ部312と、モーター収容部311よりも直径が小さな略円筒状の一対の軸部313及び314を有している。モーター収容部311の一端(図8における左端)には、軸部313が同軸に(すなわち、中心線を共有するように)結合している。また、モーター収容部311の他端(図8における右端)には、キャップ部312を介して、軸部314が同軸に結合している。軸部313は軸受部36により回転可能に支持され、軸部314は軸受部35により回転可能に支持されている。
【0043】
軸部314の先端にはフランジ314aが形成されていて、このフランジ314aにベルト機構23の従動プーリー232が同軸に結合している。また、ベルト機構23の歯付ベルト233が、従動プーリー232と駆動プーリー231(図7)とに巻き掛けられている。ベルト機構23によってハウジング31が回転駆動される。
【0044】
軸部314の内周には軸受315が設けられている。シャフト34は、軸部314の中空部に通され、軸受315によって回転可能に支持されている。シャフト34は、軸部314及び従動プーリー232を貫通し、シャフト34の一端部はキャップ部312内に突出している。また、従動プーリー232の孔232aを貫通したシャフト34の他端部には、ベルト機構24の駆動プーリー241が同軸に結合している。駆動プーリー241には、歯付ベルト243が巻き掛けられている。
【0045】
モーター収容部311の中空部にはサーボモーター32が収容されている。サーボモーター32は、軸321がモーター収容部311と同軸に配置され、モーターケース320(すなわちステーター)が複数のスタッドボルト323によりモーター収容部311に固定されている。サーボモーター32のフランジ322は、連結筒324を介して、減速機33のギヤケース331と結合している。また、減速機33のギヤケース331は、キャップ部312の内フランジ312aに固定されている。
【0046】
サーボモーター32の軸321は、減速機33の入力軸332と接続されている。また、減速機33の出力軸333にはシャフト34が接続されている。サーボモーター32から出力されるトルクは、減速機33によって増幅されて、シャフト34に伝達される。シャフト34からベルト機構24に出力される回転は、ベルト機構23によって駆動されるハウジング31の回転に、サーボモーター32及び減速機33によって作り出されるトルクを重ね合わせたものとなる。すなわち、ハウジング31の軸部314はトルク付与装置30の入力軸であり、シャフト34はトルク付与装置30の出力軸である。トルク付与装置30は、入力軸に伝達された回転運動に、トルク付与装置30が発生したトルクを重ねて、出力軸から出力する。
【0047】
スリップリング部37は、複数対のスリップリング37aとブラシ37b、支持フレーム37c及び連結管37dを備えている。複数のスリップリング37aは、互いに離隔して、連結管37dの外周に嵌め込まれている。
【0048】
連結管37dは、ハウジング31の軸部313と同軸に結合している。また、対応するスリップリング37aの外周面と接触するブラシ37bは、支柱38に取り付けられた支持フレーム37cによって支持されている。サーボモーター32のケーブル325は、軸部313の中空部を通され、スリップリング37aに接続されている。また、ブラシ37bはサーボアンプ32a(図10)に接続されている。すなわち、サーボモーター32とサーボアンプ32aとは、スリップリング部37を介して接続されている。
【0049】
図4及び図6に示されるように、ベルト機構24の歯付ベルト243が巻き掛けられた従動プーリー242は、軸受部262により回転可能に支持されたシャフト261の一端と同軸に結合している。シャフト261の他端はスライド式等速ジョイント25の一端に接続されている。また、スライド式等速ジョイント25の他端は、シャフト263等を介してスピンドル280と連結している。スライド式等速ジョイント25は、作動角(入力軸と出力軸との角度)によらず、回転変動無くスムーズに回転を伝達可能に構成されている。また、スライド式等速ジョイント25は、長さも可変である。
【0050】
スピンドル280は、その角度及び入力軸の位置が可変に、アライメント部40によって支持されている。スピンドル280と軸受部262に保持されたシャフト261とをスライド式等速ジョイント25を介して連結することにより、スピンドル280の角度や位置が変化しても、この変化にスライド式等速ジョイント25が柔軟に追従する。そのため、スピンドル280やシャフト261、263に大きなひずみが加わらず、回転が速度を変えずにスピンドル280へスムーズに伝達する。
【0051】
図5に示されるように、アライメント部40は、一対の旋回フレーム41、一対の曲線ガイドウェイ42(以下「曲線ガイド」と略記する。)、スライドフレーム44及び二対のリニアガイド43を備えている。
【0052】
各旋回フレーム41は、曲線ガイド42を介して、キャリッジ20のメインフレーム21上に載置されている。曲線ガイド42は、メインフレーム21の上面に取り付けられた円弧状のレール421と、レール421上を走行可能な複数(本実施形態では二つ)のキャリッジ422(以下「ランナー422」という。)を備えている。ランナー422は、旋回フレーム41の底面に取り付けられている。一対の曲線ガイド42及び一対の旋回フレーム41は、それぞれ試験輪Wの中心Cを通る鉛直線Vを挟んで、前後に対向して配置されている。また、各曲線ガイド42の曲率中心は、鉛直線V上にある。すなわち、各旋回フレーム41は、曲線ガイド42により、鉛直線Vを中心に旋回可能に支持されている。
【0053】
図4に示されるように、スライドフレーム44は、上から順に、柱部441、連結部442及びフォーク443を有している。柱部441(すなわち、スライドフレーム44の上部)は、その中心線が鉛直線Vと一致するように縦に配置されている。また、フォーク443(すなわち、スライドフレーム44の下部)は、試験輪Wと接触しないように、鉛直線Vから右側(回転軸Ay方向)に後退している。連結部442は、Y軸方向に延び、柱部441の下端部とフォーク443の上端部とを連結している。したがって、スライドフレーム44は、X軸方向から見て、略クランク状に形成されている。
【0054】
図5に示されるように、フォーク443の下部は、前後に分岐している。フォーク443の二つに分岐した下端部には、それぞれ軸受443aが互いに同軸に設けられている。
【0055】
図9は、スピンドル部28及びその周辺の構造を示した図である。スピンドル部28は、スピンドル280の中心軸(回転軸Ay)を左右に向けて、フォーク443の下端部に設けられた一対の軸受443a(図5)の間に配置されている。そして、スピンドル部28は、一対の軸受443aにより、前後に延びる回転軸Cxの周りに回転可能に支持されている。なお、スピンドル280の回転軸Ayやスピンドルケース284の回転軸Cxの方向は、それぞれスピンドル280のアライメントによって変化し、Y軸方向やX軸方向とは必ずしも一致しない。
【0056】
スピンドル部28は、スピンドル280と、スピンドル280を回転可能に支持するスピンドルケース284を備えている。スピンドル280は、胴部281、6分力センサー282及びハブ283を備えている。胴部281は、円柱状の軸である。6分力センサー282は、胴部281の先端に同軸に取り付けられた略円柱状の部材であり、6分力(直交3軸方向の力及び各軸回りのトルク)を検出可能な圧電式の力センサーである。また、ハブ283は、試験輪Wを取り付けるための部材であり、6分力センサー282の先端に同軸に取り付けられている。胴部281、6分力センサー282及びハブ283は、一体に結合して、スピンドル280を形成している。スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられ、試験輪と一体に回転する車軸である。6分力センサー282には、ハブ283を介して試験輪Wが一体に取り付けられるため、6分力センサー282によって試験輪Wに加わる6分力が検出される。
【0057】
スピンドルケース284は、スピンドル280を収容して回転可能に保持する略円筒状の部材である。スピンドルケース284の内周には、軸受285及び一対の軸受286が取り付けられている。スピンドル280は、軸受285及び軸受286によって、回転可能に支持されている。
【0058】
スピンドルケース284の前後の側面には、フォーク443の一対の軸受443a(図5)とそれぞれ回転可能に嵌合する一対の旋回軸287が取り付けられている。すなわち、スピンドル部28は、一対の軸受443aによって、回転軸Cxを中心に回転可能に支持されている。
【0059】
図4に示されるように、アライメント部40は、荷重調整部45、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47を備えている。荷重調整部45は、試験輪Wに加わる荷重を調整するユニットである。スリップ角調整部46は、アライメント部40(直接には旋回フレーム41)を鉛直線Vの周りに回転移動させて、試験輪Wのスリップ角を調整するユニットである。キャンバー調整部47は、スピンドル部28を回転軸Cx(図9)の周りに回転移動させて、試験輪Wのキャンバー角を調整するユニットである。
【0060】
荷重調整部45は、サーボモーター451、運動変換器452及びブラケット453を備えている。また、上述したリニアガイド43も荷重調整部45に含めることができる。サーボモーター451は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。運動変換器452は、サーボモーター451の回転運動を、鉛直に立てられた可動子452aの上下の直線運動に変換する装置である。運動変換器452には、例えば、ラックアンドピニオン機構、かさ歯車等の交差軸と送りねじとを組み合わせた機構又はウォームギヤやねじ歯車等の食い違い軸と送りねじとを組み合わせた機構等が使用される。ブラケット453は、運動変換器452の可動子452aの直下に配置され、座面453aを上に向けて、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0061】
サーボモーター451を駆動して運動変換器452の可動子452aを降下させると、可動子452aの下端がブラケット453の座面453aに当たる。さらにサーボモーター451を駆動すると、可動子452aによってブラケット453を介してスライドフレーム44が鉛直下向きに押される。これにより、アライメント部40に保持された試験輪Wが路面63aに押し当てられ、試験タイヤTと路面63aとの間に、可動子452aの高さ(すなわち、Z軸方向における位置)に応じた荷重が加えられる。試験輪Wに加わる荷重は、スピンドル部28の6分力センサー282(図8)によって検出される。そして、荷重の検出結果が荷重の設定値と一致するようにサーボモーター451の駆動が制御される。
【0062】
図6に示されるように、荷重調整部45の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp2内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。
【0063】
スリップ角調整部46は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられたサーボモーター461と、減速機462と、減速機462の出力軸に結合した駆動歯車463と、駆動歯車463と噛み合う従動歯車464を備えている。駆動歯車463には、例えば平歯車や扇形歯車が使用される。また、従動歯車464は扇形歯車である。なお、スリップ角調整部46のギア機構(駆動歯車463、従動歯車464)には、ウォームギヤ、傘歯車又はねじ歯車等を使用してもよい。サーボモーター461、減速機462及び駆動歯車463は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。また、従動歯車464は、その回転軸が鉛直線Vと一致するように、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0064】
サーボモーター461の回転は、減速機462により減速されて、駆動歯車463を介して従動歯車464に伝達される。そして、従動歯車464及びスライドフレーム44が、鉛直線Vを中心に回転する。これにより、スピンドル部28を介してスライドフレーム44に支持された試験輪Wも鉛直線Vを中心に回転し、試験輪Wのスリップ角が変化する。
【0065】
図6に示されるように、スリップ角調整部46の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp3内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。なお、荷重調整部45が配置されたスペースSp2とスリップ角調整部46が配置されたスペースSp3とは、それぞれ柱部441の左右反対側に設けられた空間である。荷重調整部45とスリップ角調整部46とを異なる空間に設置することにより、組み立てやメンテナンスの効率が向上する。
【0066】
図9に示されるように、キャンバー調整部47は、連結部442の右端に取り付けられた上部アーム471と、上部アーム471により回転可能に支持されたジョイント472と、ジョイント472が取り付けられた全ねじボルト475(以下「スタッド475」という。)と、スタッド475の一端に取り付けられたロッドエンド476と、ピン477によりロッドエンド476と回転可能に連結した下部アーム478を備えている。下部アーム478は、その末端部がスピンドルケース284に固定されている。なお、上部アーム471はスライドフレーム44のフォーク443に取り付けてもよい。
【0067】
上部アーム471は、回転軸Ayと平行(すなわち、鉛直線Vから遠ざかる方向)に延びる平板であり、スピンドルケース284の回転軸Cxと垂直に配置されている。上部アーム471の先端部には、回転軸Cxと平行な旋回軸471aが設けられている。
【0068】
ジョイント472は、スタッド475が挿入される貫通穴が形成された略直方体状の部材である。ジョイント472には、上部アーム471の旋回軸471aと回転可能に嵌合する軸受473が設けられている。すなわち、ジョイント472は、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸471aを中心に回転可能に支持されている。ジョイント472は、スタッド475に嵌められた一対のナット474で挟み込まれて、スタッド475に固定されている。
【0069】
下部アーム478の先端部は、ピン477により、ロッドエンド476の下端部と連結されている。ロッドエンド476と下部アーム478とを連結するピン477も、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸である。すなわち、スライドフレーム44及び上部アーム471(第1リンク)と、スタッド475及びロッドエンド476(第2リンク)と、下部アーム478及びスピンドルケース284(第3リンク)とは、回転軸Cxと平行な三つの旋回軸[旋回軸471a(第1ジョイント)、ピン477(第2ジョイント)及び旋回軸287(第3ジョイント)]を介して、各旋回軸を中心に回転可能に環状に連結され、リンク機構を構成している。
【0070】
スタッド475上のナット474の位置を変えることにより、二つのジョイント(旋回軸471a及びピン477)を結ぶ可変長リンク47Lの長さが変わる。このとき、下部アーム478及びスピンドルケース284が旋回軸287(回転軸Cx)を中心に回転して、スピンドル280及び試験輪Wの回転軸Ayの路面63aに対する傾きが変わる。したがって、スタッド475上のナット474の位置を変えて可変長リンク47Lを伸縮させることにより、キャンバーを調整することができる。可変長リンク47Lを伸ばすとマイナス側にキャンバーが変わり、可変長リンク47Lを縮めるとプラス側にキャンバーが変わる。
【0071】
タイヤ試験装置1は、スピンドル280の回転を減速可能なブレーキシステム27(以下「ブレーキ27」と略記する。)を備えている。ブレーキ27は、スピンドル280に取り付けられたディスクローター271と、下部アーム478に取り付けられたキャリパー272と、キャリパー272に油圧を供給する油圧供給装置276(図10)を備えている。
【0072】
スピンドル280は、アタッチメント273、ディスクローター271及びシャフト263を介して、スピンドル駆動機構20D(図6)のスライド式等速ジョイント25に連結されている。
【0073】
下部アーム478は、その中間部分が上方(すなわち、スピンドル280から離れる方向)に後退したクランク状に形成されている。下部アーム478のスピンドル280から離れた中間部分にブレーキ27のキャリパー272がアタッチメント275を介して取り付けられている。
【0074】
アタッチメント273及びシャフト263は、ディスクローター271の形状に合わせて製作された交換可能な小部材である。また、アタッチメント275は、キャリパー272の形状に合わせて製作された、比較的に交換が容易で安価な小部品である。アタッチメント273、275及びシャフト263を使用することにより、ブレーキ27(ディスクローター271、キャリパー272)の種類を変更する際に、比較的に交換コストが高いスピンドル280やスライド式等速ジョイント25を交換する必要がなくなるため、より低コストでブレーキ27の種類を変更することが可能になる。
【0075】
図10は、タイヤ試験装置1の制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部72、各種計測を行う計測部74及び外部との入出力を行うインターフェース部76を備えている。
【0076】
制御部72には、各駆動部14のサーボモーター141、トルク付与装置30のサーボモーター32、荷重調整部45のサーボモーター451及びスリップ角調整部46のサーボモーター461が、サーボアンプ141a、32a、451a及び461aをそれぞれ介して接続されている。
【0077】
また、制御部72には、ブレーキ27の油圧供給装置276が接続されている。油圧供給装置276は、制御部72からの指令に基づいて所定圧の油圧を発生して、キャリパー272に油圧を供給する。油圧供給装置276は、サーボモーター276bと、サーボモーター276bが出力する回転運動を直線運動に変換する運動変換器276cと、運動変換器276cが出力する直線運動によって駆動されるブレーキマスターシリンダー276dと、制御部72からの指令に基づいてサーボモーター276bに供給される駆動電流を生成するサーボアンプ276aを備えている。
【0078】
制御部72と各サーボアンプ141a、276a、32a、451a及び461aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部72と各サーボアンプとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0079】
計測部74には、プリアンプ282aを介して、6分力センサー282が接続されている。6分力センサー282からの信号は、プリアンプ282aで増幅されたのち、計測部74においてデジタル信号に変換されて計測データが生成される。計測データは制御部72に入力される。また、各サーボモーター141、276b、32、451及び461に内蔵されたロータリーエンコーダーREが検出した位相情報は、各サーボアンプ141a、276a、32a、451a及び461aをそれぞれ介して、制御部72に入力される。
【0080】
インターフェース部76は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0081】
制御部72は、インターフェース部76を介して入力された速度データに基づいて、各駆動部14のサーボモーター141の駆動を同期制御することにより、キャリッジ20を所定の速度で走行させることができる。なお、本実施形態では、4つの駆動部14の全てを同位相で駆動する(厳密には、左側の駆動部14LA、14LBと右側の駆動部14RA、14RBとは逆位相[逆回転]で駆動される)。
【0082】
また、制御部72は、インターフェース部76を介して取得した試験タイヤTに与えるべき前後力(制動力又は駆動力)のデータに基づいてトルク付与装置30のサーボモーター32の駆動を制御することにより、試験タイヤTに所定の前後力を与えることができる。また、制御部72は、前後力データに替えてトルクデータ(又は加速度データ)に基づいてトルク付与装置30を制御することにより、試験輪Wに所定のトルクを与えることもできる。
【0083】
制御部72は、キャリッジ20を所定の走行速度で走行させる(同時に、試験タイヤTを走行速度と略同じ周速で回転させる)駆動部14の制御と、試験タイヤTに前後力(又はトルク)を与えるためのトルク付与装置30の制御とを、同期信号に基づいて、同期して行うことができる。
【0084】
トルク付与装置30に発生させるトルクの波形としては、正弦波、正弦半波(ハーフサイン波)、鋸歯状波(のこぎり波)、三角波、台形波等の基本波形の他、路上試験において計測された前後力(又はトルク)波形、シミュレーション計算によって得られた前後力(又はトルク)波形又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0085】
キャリッジ20の走行速度(又は試験輪Wの回転数)の制御についても、同様に、基本波形の他、路上試験において計測された車輪の回転数の波形、シミュレーション計算によって得られた速度変化の波形、又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0086】
図11は、路面部60の横断面図である。路面部60は、フレーム61と、フレーム61に支持された本体部60aを備えている。本体部60aは、基盤62と、基盤62上に保持された舗装部63を備えている。基盤62の上面には、路面部60の延長方向(すなわち、キャリッジ20の走行方向であるX軸方向)に延びる凹部621が形成されている。舗装部63は、例えば、後述する模擬舗装材料を凹部621に充填して硬化させることにより形成されている。舗装部63の上面には、試験輪Wが接地する路面63aが形成されている。
【0087】
本実施形態では、本体部60aが路面ユニット(路面63aの少なくとも一部を含む交換可能な構造体)である本体部ユニット600aから構成されていて、フレーム61上に着脱可能に取り付けられている。なお、路面ユニットは、本実施形態のように本体部60aをユニット化した形態(「本体部ユニット」という。)に限らず、舗装部63のみをユニット化した形態(「舗装部ユニット」という。)やフレーム61まで含めた路面部60全体をユニット化した形態(「路面部ユニット」という。)とすることもできる。
【0088】
本実施形態の本体部60aは、本体部60aを延長方向において分割した複数の本体部ユニット600aから構成されていて、本体部ユニット600aの単位で交換可能になっている。なお、本体部60a全体を単一の交換可能な路面ユニットとして形成してもよい。
【0089】
本実施形態のように、路面部60を本体部ユニット600a等の路面ユニットから構成することにより、路面ユニットを交換することによって、路面63aの少なくとも一部を交換することが可能になる。
【0090】
例えば、路面部60の延長方向(X軸方向)における中央部の本体部ユニット600aのみを交換して、中央部のみ舗装部63の種類(例えば材質、構造、表面形状等)を変更することができる。また、本体部ユニット600a毎に舗装部63の種類を変えて、例えば、路面部60の延長方向において摩擦係数が変動するようにしてもよい。
【0091】
基盤62の下面には、フレーム61の上面に設けられた凸部612と嵌合する凹部622が設けられている。凸部612と凹部622が嵌合するように本体部ユニット600aをフレーム61の上に載置して、両者をボルトやカムレバー等の固定手段(不図示)により固定することにより、本体部ユニット600aがフレーム61上に着脱可能に取り付けられている。
【0092】
また、本実施形態では、フレーム61も、フレーム61を延長方向において分割した複数のフレームユニット610から形成されていて、フレームユニット610の単位で交換可能になっている。
【0093】
また、本実施形態では、フレームユニット610と本体部ユニット600aとは同じ長さに形成されていて、フレームユニット610に本体部ユニット600aを取り付けた路面部ユニット600の単位で交換することもできる。
【0094】
また、本実施形態では舗装部63は基盤62と一体に形成されているが、舗装部63を基盤62に対して着脱可能な構成としてもよい。例えば、舗装部63を延長方向において分割した複数の舗装部ユニット630から舗装部63を構成し、舗装部ユニット630の単位で舗装部63を交換可能な構成としてもよい。この場合、舗装部ユニット630と基盤ユニット620とを同じ長さに形成し、基盤ユニット620に舗装部ユニット630を取り付けた複合ユニット(言い換えれば、舗装部63を着脱可能にした本体部ユニット600a)の単位で交換可能にしてもよい。また、フレームユニット610、基盤ユニット620及び舗装部ユニット630を組み立てて路面部ユニット600を製作し、路面部ユニット600の単位で交換可能にしてもよい。
【0095】
また、上述したように、本実施形態では、複数の路面部ユニット600が連結して路面部60を形成している。この構成により、路面部ユニット600の追加又は削除により、路面部60の延長又は短縮が可能である。また、複数の路面ユニットを同一構造とすることにより、路面部60を効率的に製造することが可能になる。
【0096】
また、本実施形態では、路面部60と同様に、軌道部10も、延長方向において複数の軌道部ユニット100に分割されている。軌道部ユニット100の追加又は削除により、軌道部10の延長又は短縮も可能である。軌道部ユニット100は、路面部ユニット600と同じ長さに形成されている。そのため、軌道部10と路面部60の長さを揃えることができる。また、軌道部ユニット100と路面部ユニット600を一体化した複合ユニットの単位で、路面部60及び軌道部10の延長、短縮又は一部交換が可能な構成としてもよい。
【0097】
本実施形態の路面部60では、舗装部63として、アスファルト舗装道路を模擬した(すなわち、タイヤの摩耗量等のタイヤに与える影響が実際のアスファルト舗装道路と同程度になる)模擬舗装が形成されている。模擬舗装は、例えば炭化ケイ素やアルミナ等の耐摩耗性に優れたセラミックスを粉砕した(必要に応じて、更に研磨やエッチング等の加工を施した)骨材に、例えばウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を添加した模擬舗装材料を成形して硬化させることによって形成される。このような模擬舗装材料を使用することにより、耐久性に優れ、路面状態が安定した(すなわち試験タイヤTの摩耗量等が安定した)模擬路面が得られる。タイヤの摩耗量は、例えば骨材の粒度や結合剤の添加量等により調整することができる。
【0098】
本実施形態の模擬舗装は単層構造であるが、例えば異なる材料から形成された複数の層が厚さ方向に積層した模擬舗装を使用してもよい。また、例えば骨材の種類や粒度、バインダーの種類や配合量等を調整して、敷石舗装、レンガ舗装又はコンクリート舗装等を模擬した模擬舗装を使用してもよい。
【0099】
また、実際の路面よりもタイヤに与えるダメージが大きく(又は小さく)なるように路面63aを形成してもよい。実際の路面よりもタイヤに与える影響が大きい路面63aを使用することにより、タイヤの加速劣化試験が可能になる。
【0100】
また、舗装部63を実際の舗装材料(例えばアスファルト舗装の表層に使用されるアスファルト混合物)から形成してもよい。また、路面を形成する最表層だけでなく、下層構造まで実際の舗装を再現又は模造した舗装部63を使用してもよい。
【0101】
本実施形態のタイヤ試験装置1は、試験中に路面63aが移動しないため、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば、水、雪、泥水、土、砂、砂利、油又はこれらを模擬したもの等)を路面63a上に撒いた状態で試験を行うことができる。例えば、路面63a上に水を撒いた状態で試験を行うことにより、ウェット制動試験を行うことができる。
【0102】
(第1の変形例)
図12は、路面部60の第1の変形例(路面部60A)の横断面図である。路面部60Aは、基盤62に取り付けられた枠部67を備えている。枠部67は、コーキング等により基盤62と水密に接合され、基盤62と共に槽68を形成する。槽68には、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば水、砂利、土、落ち葉等)が路面63aを覆うように入れられる。槽68を使用することにより、路面63a上に異物を厚く堆積させることが可能になる。なお、本変形例の枠部67は基盤62の上面に取り付けられているが、基盤62の側面に枠部67を取り付けても良い。また、舗装部63の上面に枠部67を取り付けてもよい。
【0103】
また、路面部60Aは、路面63aの温度を調整可能な温度調整手段64を備えている。本変形例の温度調整手段64は、基盤62に埋め込まれた流路64aと、路面63aの温度を検出する温度センサー64bと、温度調整装置64cを有している(図10)。温度センサー64bは、例えば熱電対やサーミスタ等を使用した接触式の温度センサーや赤外線センサー等の非接触式の温度センサーである。温度調整装置64cは、制御部72に接続され、制御部72からの指令に基づいて路面63aの温度を設定温度に調整する。具体的には、温度調整装置64cは、温度センサー64bの検出結果に基づいて熱媒(例えばオイルや不凍液を含有した水)の温度を調整して、この熱媒を流路64aに送出する。温度調整装置により温度が調整された熱媒を流路64aに流すことにより、路面63aを所定の温度に調整することができる。また、路面63aの温度を安定化させると共に熱の利用効率を高めるために、基盤62の表面は断熱材69によって被覆されている。
【0104】
温度調整手段64は、路面63aの温度を低温(例えば-40℃)から高温(例えば80℃)までの広い範囲で調整することができる。槽68に水を溜めて、路面63aの設定温度を氷点下に設定することにより、凍結路面を形成することができる。すなわち、本変形例の路面部60Aを使用することにより、氷上制動試験を行うことができる。また、槽68に雪を入れた状態で、雪上制動試験を行うことができる。
【0105】
流路64aは、路面63aと平行に基盤62内を等間隔で蛇行するように形成されている。また、基盤62は、長さ方向に複数の区画(基盤ユニット620)に区分され、各区画に個別の流路64aが設けられている。この構成により、路面63a全体をより均一な温度に調整することが可能になる。
【0106】
(第2の変形例)
次に、路面部60の第2の変形例(路面部60B)について説明する。路面部60Bには、試験輪Wのタイヤ踏面から路面が受ける荷重分布を検出する荷重検出部65が設けられている。
【0107】
図13は、路面部60Bの横断面図である。また、図14及び図15は、それぞれ路面部60Bの荷重検出部65及びその周辺の横断面図及び平面図である。
【0108】
路面部60Bの基盤62の上面に形成された凹部621の底には、その長さ方向(X軸方向)及び幅方向(Y軸方向)における略中央部に、周囲よりも深い深凹部621a(図14)が形成されている。
【0109】
図14に示されるように、深凹部621aには、舗装部63が充填されておらず、深凹部621a内には、荷重検出部65を構成する複数の荷重検出モジュール650が敷設されている。複数の荷重検出モジュール650は、X軸方向及びY軸方向の2方向に格子点状に配列されている。本変形例では、150個の荷重検出モジュール650が、X軸方向に15列、Y軸方向に10列で、等間隔(例えば、100mm間隔)に配列され、深凹部621aの底に固定されている。なお、深凹部621aの幅(すなわち、荷重検出部65の幅)は、試験タイヤTのトレッド幅よりも十分に広く、試験タイヤTのタイヤ踏面全体が荷重検出部65上に接地できるようになっている。
【0110】
図14に示されるように、荷重検出モジュール650は、圧電式の3分力センサー651の上面に舗装部652を取り付けたものである。3分力センサー651は、中心軸がZ軸方向を向いた円柱状の圧電素子である。舗装部652は、X軸方向及びY軸方向の長さが等しい直方体状の部材である。なお、3分力センサー651及び舗装部652の形状は、他の形状でもよい。例えば、3分力センサー651の形状は直方体状でもよく、舗装部652の形状は円柱状でもよい。また、3分力センサー651と舗装部652の形状は同じでもよい。舗装部652の上面は、Z軸と垂直に配置されて、路面を形成する。
【0111】
本変形例の舗装部652は、舗装部63と同じ材料により、舗装部63と同じ厚さで形成されている。しかし、舗装部652の材料及びサイズは、舗装部63と異なっていても良い。また、舗装部652を設けず、荷重検出モジュール650の上面を路面としてもよい。この場合、荷重検出モジュール650の上面が舗装部63の上面と同じ高さになるように、深凹部621aの深さを定めても良い。
【0112】
3分力センサー651により、各荷重検出モジュール650の路面652aに加わる(すなわち、タイヤ踏面に加わる)以下の3種類の力f、f及びfの時間変化が検出される。
a)半径方向力f
b)接線力f
c)横力f
【0113】
荷重検出部65を使用することにより、試験タイヤTのタイヤ踏面から路面が受ける力(すなわち、タイヤ踏面に加わる力)の分布及びその時間変化を検出することができる。
【0114】
荷重検出部65によって検出された荷重分布(初期荷重プロファイル)に基づいて、各種処理が施されて、最終的な荷重プロファイルデータ(荷重プロファイルの計測値)が生成される。荷重プロファイルの計測結果は、制御システム1aのディスプレイ装置に例えば3次元CG画像により表示され、タイヤ踏面に加わる荷重分布が視覚化される。
【0115】
なお、以下の説明において、荷重検出部65(又は、後述する荷重検出部165)によって検出される荷重分布を検出荷重分布(又は、荷重分布の検出値)といい、検出荷重分布に基づく各種処理によって最終的に得られる荷重分布を計測荷重分布(又は、荷重分布の計測値)という。
【0116】
本変形例では、上記の3種類の力f、f及びfのそれぞれの分布を表す三つのプロファイル画像の画像データが生成され、二つのプロファイル画像が、ディスプレイ装置の画面上に並べられて同時に、又は順次切り替えて表示される。
【0117】
荷重分布の検出は、一定の時間間隔(例えば5ミリ秒間隔)で連続的に、全ての荷重検出モジュール650によって同時に行われる。各荷重検出モジュール650によって測定された荷重は、同じタイミングでスピンドル280の6分力センサー282によって測定された計測データと対応付けられて、制御部72の記憶装置721(又は制御部72に例えばLANを介して接続されたサーバー77)に記録される。
【0118】
本変形例の路面部60Bを備えたタイヤ試験装置1を使用してタイヤ試験を行えば、試験輪W側の6分力センサー282と、路面側の荷重検出部65とにより、試験輪Wと路面に加わる荷重を同時に計測することができるため、従来のタイヤ試験装置では取得できなかった、走行時のタイヤ踏面の挙動に関するより詳細なデータの取得が可能になる。
【0119】
本変形例では、路面部60Bの長さ方向及び幅方向における略中央部のみに荷重検出部65が設けられているが、路面部60Bの全面に荷重検出部65を設けても良い。
【0120】
(第3の変形例)
次に、路面部60の第3の変形例(路面部60C)について説明する。本変形例の路面部60Cにも、試験輪Wのタイヤ踏面から路面が受ける荷重分布を検出する荷重検出部165が設けられている。
【0121】
図16及び図17は、それぞれ路面部60Cの荷重検出部165及びその周辺を示した平面図及び側面図である。また、図18-20は、順に、荷重検出部165の正面図、左側面図及び平面図である。
【0122】
図16及び図17に示されるように、路面部60Cの本体部60aの上面には、Y軸方向に延びる凹部60pが形成されている。荷重検出部165は、凹部60p内に収容され、凹部60pの底面に固定されている。
【0123】
図18-20に示されるように、荷重検出部165は、固定フレーム1658、可動フレーム1659、一対のリニアガイド1653、センサーアレイユニット1650、移動ユニット1655及びセンサー位置検出部1656を備えている。なお、図18において、リニアガイド1653及び後述する固定フレーム1658のレール支持部1658bの図示が省略されている。可動フレーム1659は、一対のリニアガイド1653によって、Y軸方向(すなわち、路面部60Cの幅方向)に移動可能に支持されている。センサーアレイユニット1650は、可動フレーム1659の上面に取り付けられている。センサーアレイユニット1650の詳細は後述する。
【0124】
図21は、荷重検出部165の可動部(すなわち、可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650)を取り外した状態を示した平面図である。
【0125】
図19及び図21に示されるように、固定フレーム1658は、略矩形のベースプレート1658aと、ベースプレート1658aの上面に固定された一対のレール支持部1658bを備えている。一対のレール支持部1658bは、長さ方向をY軸方向に向けて、X軸方向に間隔を空けて並べられている。
【0126】
リニアガイド1653は、Y軸方向に延びるレール1653aと、レール1653a上を走行可能な複数(本変形例では三つ)のキャリッジ1653b(以下「ランナー1653b」という。)を備えている。レール1653aは、レール支持部1658bの上面に取り付けられている。また、ランナー1653bは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。リニアガイド1653によって、可動フレーム1659のY軸方向の移動が案内される。
【0127】
移動ユニット1655は、一対のレール支持部1658b及びリニアガイド1653の間に、配置されている。移動ユニット1655は、モーター1655mとボールねじ機構1655bを備えている。ボールねじ機構1655bは、ボールねじ1655ba、ナット1655bb、軸受部1655bc及び軸受部1655bdを備えている。
【0128】
ボールねじ1655baは、一対の軸受部1655bc及び1655bdによって両端部において回転可能に支持されている。また、ボールねじ1655baの一端は、モーター1655mの軸に接続されている。ボールねじ1655baと噛み合うナット1655bbは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。モーター1655mによってボールねじ1655baを回転させると、ナット1655bbと共に可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650がY軸方向に移動する。すなわち、モーター1655mの回転駆動により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更することができる。
【0129】
図21に示されるように、センサー位置検出部1656は、可動アーム1656a、複数(本変形例では三つ)の近接センサー1656c及びセンサー取付部1656bを備えている。なお、本変形例の可動アーム1656a及びセンサー取付部1656bは、それぞれ板金加工により形成されているが、その他の加工方向(例えば、切削、鋳造、樹脂の射出成型等)により形成されてもよい。可動アーム1656aは、末端が可動フレーム1659に固定されていて、可動フレーム1659と共にY軸方向に移動可能である。センサー取付部1656bは、固定フレーム1658に取り付けられている。
【0130】
複数の近接センサー1656cは、センサー取付部1656bに取り付けられている。また、複数の近接センサー1656cは、検出面1656cfをX軸正方向に向けて、Y軸方向に並べられている。本変形例では、複数の近接センサー1656cは、Y軸方向に等間隔で配置されている。
【0131】
可動アーム1656aの先端部には、近接センサー1656cに近接する近接部1656apが形成されている。本変形例では、可動アーム1656aの先端部をクランク状に折り曲げることにより、近接部1656apが形成されている。近接部1656apは、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfと同じ高さに配置されている。また、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfは、近接部1656apのY軸方向における可動範囲内に間隔を空けて配置されている。
【0132】
図22は、図18において二点鎖線で囲まれた領域Eを拡大した図である。図18及び図22に示されるように、センサーアレイユニット1650は、フレーム1650aと複数(本変形例では150個)の荷重検出モジュール1650mを備えている。フレーム1650aの上面の中央部には、Y軸方向に長い凹部1650apが形成されている。複数の荷重検出モジュール1650mは、凹部1650ap内に収容され、凹部1650apの底面に固定されている。
【0133】
複数の荷重検出モジュール1650mは、X軸方向及びY軸方向の2方向に等間隔に(例えば、略隙間なく)並べられている。本変形例では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。
【0134】
荷重検出モジュール1650mは、3分力センサー1651と、舗装部1652と、ボルト1653を備えている。3分力センサー1651及び舗装部1652は、それぞれ第2変形例の3分力センサー651及び舗装部652と同じ部材である。
【0135】
円柱状の3分力センサー1651の中央には、Z軸方向に貫通する孔1651bが形成されている。また、舗装部1652の中央には、Z軸方向に延びるボルト穴1652bが形成されている。3分力センサー1651の孔1651bに通されて舗装部1652のボルト穴1652bに捻じ込まれたボルト1653によって、荷重検出モジュール1650mは、一体化され、フレーム1650aに固定されている。舗装部1652の上面は、水平に配置されて、路面1652aを形成する。荷重検出モジュール1650mが配列されたX軸及びY軸方向の領域が、センサーアレイユニット1650の検出領域となる。
【0136】
図10に示されるように、移動ユニット1655のモーター1655mは、ドライバ1655aを介して、制御部72に接続されている。3分力センサー1651及びセンサー位置検出部1656の近接センサー1656cは、プリアンプ1651a及びプリアンプ1656caをそれぞれ介して、計測部74に接続されている。なお、図10において、3分力センサー1651、プリアンプ1651a、近接センサー1656c及びプリアンプ1656caは、それぞれ一つのみが図示されている。3分力センサー1651及び近接センサー1656cからの信号は、プリアンプ1651a及び1656caによってそれぞれ増幅された後、計測部74においてデジタル信号に変換される。
【0137】
次に、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更する手順について説明する。センサーアレイユニット1650は、図21に示される初期状態において、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に配置される。例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により、センサーアレイユニット1650を左(Y軸正方向)に移動するよう指示が出されると、制御部72は、センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動するよう、ドライバ1655aに反時計回転の指令を送信する。反時計回転の指令を受け取ったドライバ1655aは、モーター1655mに反時計回転させる駆動電流を供給する。そして、モーター1655mが駆動電流によって反時計回りに駆動されると、モーター1655mの軸と共にボールねじ1655baが反時計回転し、ナット1655bb及び可動フレーム1659と共にセンサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動する。
【0138】
センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動すると、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfから離れて、中央の近接センサー1656cが近接を検出しなくなる。やがて、可動アーム1656aの近接部1656apが左(Y軸正方向側)の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に到達する。このとき、左の近接センサー1656cは、近接を検出し、近接の検出を示す近接信号を出力する。プリアンプ1656caを介して近接信号を受け取った計測部74は、センサーアレイユニット1650が左側の定位置に到達したことを制御部72に通知する。計測部74からの通知を受けた制御部72は、ドライバ1655aに駆動停止の指令を送信する。駆動停止の指令を受け取ったドライバ1655aは、モーター1655mへの駆動電流の供給を中止する。これにより、モーター1655mの軸とボールねじ1655baの回転が停止し、ナット1655bb及びセンサーアレイユニット1650も停止して、センサーアレイユニット1650の移動が完了する。
【0139】
移動ユニット1655を搭載することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のY軸方向における長さLyを短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になる。
【0140】
次に、荷重検出部165を使用して、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法について説明する。図23は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法の手順を表すフローチャートである。
【0141】
タイヤ試験装置1の電源スイッチがONにされると、制御部72は、まず初期化処理S1を行う。図2に示されるように、初期状態において、キャリッジ20は、その可動範囲のX軸負方向における末端付近に設定された初期位置(初期走行位置)PX0に配置される。また、スライドフレーム44(図4)は、その可動範囲の例えば上端付近に設定された初期位置PZ0に配置される。初期位置PZ0において、試験輪Wは路面63aから浮上し、試験輪Wの着脱やアライメント調整が可能になる。また、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47により、それぞれスリップ角及びキャンバーが設定された値に調整される。
【0142】
試験輪Wが路面63aから浮上した状態で、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが初期回転位置θW0に移動して、初期化処理S1が完了する。なお、トルク付与装置30自体の回転位置θは、歯付ベルトを使用したベルト機構50及びベルト機構23によって制御されるため、キャリッジ20の走行位置Pによって決まる回転位置θをとる。トルク付与装置30は、初期状態においては、常に初期回転位置θM0に配置される。
【0143】
初期化処理S1の完了後、例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により試験開始の指示が与えられると(S2:YES)、測定セット数kが1にリセットされ(S3)、試験輪Wは、荷重調整部45によって、降下されて路面63aに接地し、設定された荷重が与えられる(S4)。
【0144】
次に、1回目の測定セットS5が行われる。測定セットS5では、各駆動部14のサーボモーター141が駆動され、キャリッジ20が設定された走行速度で走行すると共に、試験輪Wがキャリッジ20の走行速度と略同じ周速で回転する。また、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wに設定されたトルクが与えられる。
【0145】
測定セットS5において、所定の時間間隔(例えば5ミリ秒間隔)で、荷重検出部165の3分力センサー1651及びスピンドル部28の6分力センサー282によって、路面及び試験輪Wに加わる力がそれぞれ検出される。なお、3分力センサー1651及び6分力センサー282による検出の時間間隔は、試験条件(例えば、キャリッジ20の走行速度や必要な試験精度)に応じて適宜設定される。
【0146】
また、測定セットS5において、キャリッジ20の走行位置P及び試験輪Wの回転位置θが、所定の時間間隔で計算される。キャリッジ20の走行位置Pは、駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーRE(図10)の検出結果、減速機142の減速比及びベルト機構50の駆動プーリー52のピッチ円直径から計算される。なお、キャリッジ20の走行位置Pは、キャリッジ20の走行方向(X軸方向)における試験輪Wの回転軸Ayの位置である。
【0147】
試験輪Wの回転位置θは、トルク付与装置30のロータリーエンコーダー39及びサーボモーター32に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果に基づいて計算される。具体的には、試験輪Wの回転位置θは、サーボモーター32のロータリーエンコーダーREによって検出されるサーボモーター32の軸321の回転位置θ(但し、初期状態における初期回転位置θM0を0[rad]とする。)に減速機33の減速比を乗じたもの(すなわち、シャフト34の回転位置θ)をロータリーエンコーダー39によって検出されるトルク付与装置30のハウジング31の回転位置θに加算することによって計算される。
【0148】
なお、トルク付与装置30からの出力の回転位置θ(例えば、スピンドル280やシャフト261、263の回転位置)を検出するロータリーエンコーダー等の検出手段を設けて、この検出手段によって試験輪Wの回転位置θを直接検出する構成としてもよい。
【0149】
3分力センサー1651及び6分力センサー282の検出結果は、同じタイミングで検出された駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果(すなわち、キャリッジ20の走行位置P)及び試験輪Wの回転位置θの検出結果と対応付けられて、制御部72の記憶装置721(又は、例えばLANを介して制御部72に接続されたサーバー77等、制御部72によってアクセス可能な記憶手段)に保存される。なお、3分力センサー1651による検出結果については、試験輪Wがセンサーアレイユニット1650を通過する期間及びその前後の所定の期間のみを記録する構成としてもよい。これにより、保存されるデータ量を削減することができる。
【0150】
キャリッジ20が走行区間の終端に到達して停止すると、荷重調整部45によって、試験輪Wが路面63aから浮上する高さ(例えば、初期状態と同じ高さ)まで上げられる(S6)。そして、駆動部14が駆動され、キャリッジ20が初期位置PX0へ移動される(S7)。
【0151】
測定セット数kが規定回数nに達するまで、上記の処理S4からS7が繰り返される(S8)。測定セット数kが規定回数nに達していなければ(S8:NO)、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが回転位置θW0+k*Δθに移動する(S9)。すなわち、測定セット数kが一つ増える度に、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θが角度幅Δθずつ変更される。
【0152】
角度幅Δθは、例えば、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC1(すなわち、試験輪Wが距離Lxを転動する際の回転角θC1)以下の値に設定される。例えば、角度幅Δθは、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC2と同じ値又は中心角θC2よりもわずかに小さな値に設定される。
【0153】
また、角度幅Δθを、例えば、2πを規定回数nで割った値に設定してもよい。この場合、n回の測定セットにより、試験輪Wの全周が隈無く測定される。
【0154】
規定回数nの測定セットが完了すると(S8:YES)、次に荷重プロファイル計算S10が行われる。
【0155】
図24は、荷重プロファイル計算S10の手順を表すフローチャートである。荷重プロファイル計算S10は、n回の測定セットS5によって取得された測定結果に基づいて、荷重プロファイルデータを計算する処理である。
【0156】
荷重プロファイルデータは、タイヤに加わる3種類の力(すなわち、半径方向力f、接線力f及び横力f)の値が、路面上の平面座標と対応づけられたデータである。
【0157】
荷重プロファイル計算S10においては、まず、各荷重検出モジュール1650mの座標の計算(S101)が行われる。なお、荷重検出モジュール1650mの上面中央の点の座標が、荷重検出モジュール1650mの座標として定義される。
【0158】
図25は、荷重検出モジュール1650m及び試験輪Wの回転軸Ayの位置関係を示す平面図である。上述したように、本変形例では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。以下の説明において、荷重検出モジュール1650mのX軸方向における列の番号をp、Y軸方向における列の番号をqとし、荷重検出モジュール1650mの配置が正の整数の対[p,q](以下「番地[p,q]」という。)によって表われる。
【0159】
また、荷重プロファイル計算S10においては、(x,y)座標系が使用される。(x,y)座標系は、番地[3,1]に配置された荷重検出モジュール1650mの上面中央を原点とする、(X,Y)座標系と平行な2次元の直交座標系である。すなわち、xy平面は、路面部60Cの路面が配置された平面である。また、本変形例の説明において、固定点を原点とする座標を絶対座標、可動点を原点とする座標を相対座標という。荷重プロファイル計算S10においては、各荷重検出モジュール1650mの絶対座標が計算される。
【0160】
本変形例においては、荷重検出モジュール1650mは、x軸方向及びy軸方向において、それぞれ等間隔δで並べられている。従って、番地[p,q]のxy座標は、次式によって計算される。

x = (p-3)*δ
y = (q-1)*δ
【0161】
次に、試験輪Wの回転軸Ayのx座標(以下「座標xAy」という。)が計算される(S102)。回転軸Ayの座標xAyは、次式によって計算される。

Ay = P - S
但し、
: 試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)のX座標
: センサーアレイユニット1650の位置(y軸)のX座標
【0162】
すなわち、手順S102において、試験輪Wの回転軸Ayの座標が、XY座標系からxy座標系に変換される。
【0163】
次に、試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)を基準とする、荷重検出モジュール1650mの相対位置(相対座標)が計算される(S103)。荷重検出モジュール1650mの相対座標(x,y)は、次式によって計算される。本変形例では、相対位置についての荷重プロファイルが取得される。

= x - xAy
= y
【0164】
次に、全ての測定結果(すなわち、各荷重検出モジュール1650mによって測定された半径方向力f、接線力f及び横力f)を相対座標(x,y)毎に平均することによって、3種類の力f、f及びfの荷重プロファイルデータが算出される(S104)。処理S104においては、回帰分析(例えば、最小二乗法等の曲面フィッティング)によって得られる近似曲面として荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0165】
処理S104において、試験輪Wの回転位置θを考慮して、荷重プロファイルデータを計算してもよい。すなわち、回転位置θ毎に荷重プロファイルデータを計算してもよい。また、この場合、更に試験タイヤTのトレッドパターンの回転軸Ay周りの対称性を含めて荷重プロファイルデータを計算してもよい。具体的には、トレッドパターンの周期において同位相となる回転位置θ毎に荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0166】
また、本変形例では、n回の測定セットにより、試験輪Wの1周分のみについて測定が行われるが、更に測定セットを増やして、複数周分について測定を行ってもよい。また、本変形例では、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θを、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δに対応する試験輪Wの中心角θC2ずつ変更しながら複数回の測定セットが行われるため、荷重プロファイルデータのx軸方向における分解能は荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ程度となる。更に小さな角度(例えば、中心角θC2の1/10)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、x軸方向における実質的な分解能を荷重検出モジュール1650mの配置間隔δよりも細かくすることができる。例えば、中心角θC2の1/m(但し、mは自然数。)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返した場合、x軸方向における実質的な分解能をδ/m程度まで小さくすることができる。
【0167】
本変形例では、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLxが、タイヤ踏面のX軸方向における長さよりも短い。従って、試験輪Wをセンサーアレイユニット1650の上に一度転動させただけでは、タイヤ踏面の全体の荷重分布を取得することができない。
【0168】
そこで、本変形例では、センサーアレイユニット1650上を転動する際の試験輪Wの回転位置θをずらしながら、タイヤ踏面の荷重分布を複数回に分けて計測する方法が採用される。これにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さを短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になる。
【0169】
また、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のy軸位置を所定間隔ずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を小さくすることができる。この場合、移動ユニット1655のモーター1655mには、位置制御が可能なモーター(例えば、サーボモーターやステッピングモーター等)が使用される。例えば、センサーアレイユニット1650のy軸位置を1mmずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を1mm程度まで小さくすることができる。
【0170】
次に、計算された荷重プロファイルが、インターフェース部76のディスプレイ装置に表示される。図26は、荷重プロファイルの表示例である。図26(a)は接線力f図26(b)は横力f図26(c)は半径方向力fの荷重プロファイル画像である。図26に示される荷重プロファイル画像は、各位置(x,y)における力の値を明度に変換したものである。
【0171】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0172】
タイヤ試験装置1は、上記の実施形態では二つのベルト機構50を備えているが、一つ又は三つ以上のベルト機構50を備えていてもよい。
【0173】
ベルト機構50は、上記の実施形態では一対の駆動部14が発生した動力によって駆動されるが、一つ又は三つ以上の駆動部14によって駆動される構成としてもよい。
【0174】
上記の実施形態では、各ベルト機構50、23、24に歯付ベルト及び歯付プーリーが使用されているが、ベルト機構の一つ以上について歯付ベルトに替えて平ベルトやVベルトを使用してもよい。また、ベルト機構に替えて、チェーン伝動機構やワイヤ伝動機構等の他の種類の巻掛け伝動機構や、ボールねじ機構、歯車伝動機構又は油圧機構等の他の種類の動力伝達機構を使用してもよい。
【0175】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する動力と、試験輪W(スピンドル280)を駆動する動力が、共通の駆動部14によって供給され、共通のベルト機構50によって伝達されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、キャリッジ20を駆動する動力と試験輪Wを駆動する動力を、個別の駆動部によって生成し、個別の動力伝達手段(例えば個別のベルト機構)によって伝達する構成としてもよい。この場合、キャリッジ20の走行速度と試験輪Wの周速を合わせるため、キャリッジ駆動用の駆動部と試験輪駆動用の駆動部の駆動を同期制御する必要がある。
【0176】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する機構(キャリッジ駆動手段)と試験輪Wを駆動する機構(試験輪駆動手段)の一部(駆動部14及びベルト機構50)を共通化することにより、シンプルな駆動システム及び制御システムが実現されている。キャリッジ駆動手段と試験輪駆動手段の共通化(特に駆動部14の共通化)は、トルク付与装置30を導入して、試験輪Wの速度制御とトルク制御の動力源を分離することにより、駆動部14が担う付加が低減したことで可能になっている。
【0177】
上記の第3変形例では、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定を可能にしている。しかし、センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段を設けることにより、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更せずに、長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定が可能になる。センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段は、例えば、移動ユニット1655と同様に、位置制御可能なモーターと送りねじ機構(例えば、ボールねじ機構)によって構成することができる。

<概説>
以下、本発明の実施形態を概括する。
・本発明の一実施形態によれば、路面を有する路面部と、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を前記路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、を備え、前記路面部の少なくとも一部が交換可能な路面ユニットで構成された、タイヤ試験装置が提供される。
・上記のタイヤ試験装置において、前記路面部が、基盤と、前記基盤上に設けられ、その表面に前記路面が形成された舗装部と、を備え、前記舗装部の少なくとも一部が、少なくとも一つの前記路面ユニットで構成された構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記路面部が、基盤と、前記基盤上に設けられ、その表面に前記路面が形成された舗装部と、を有する本体部を備え、前記本体部の少なくとも一部が、少なくとも一つの前記路面ユニットで構成された構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記路面部が、前記基盤と共に槽を形成する枠部を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記路面が、実際の道路の路面とは異なる材料により形成された模擬路面である構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムを備え、前記駆動システムが、前記キャリッジを前記路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段と、前記試験輪を前記所定の速度に対応する回転数で駆動する試験輪駆動手段と、前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段が発生した動力を前記キャリッジ駆動手段及び前記試験輪駆動手段に分配する動力分配手段と、を備えた構成としてもよい。
・本発明の一実施形態によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、前記駆動システムが、前記キャリッジを前記路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段と、前記試験輪を前記所定の速度に対応する回転数で駆動する試験輪駆動手段と、前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段が発生した動力を前記キャリッジ駆動手段及び前記試験輪駆動手段に分配する動力分配手段と、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムを備え、前記駆動システムが、前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構と、を備え、前記第1の巻掛け伝動機構が、前記駆動手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、前記キャリッジに保持され、前記試験輪と連結した従動プーリーと、前記駆動プーリー及び前記従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、前記第1の巻掛け媒介節が、前記キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、前記第1の部分において前記従動プーリーを通り、前記第2の部分において前記キャリッジに固定された構成としてもよい。
・本発明の一実施形態によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、前記駆動システムが、前記キャリッジ及び前記試験輪の駆動に使用される動力を発生する駆動手段と、前記駆動手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構と、を備え、前記第1の巻掛け伝動機構が、前記駆動手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、前記キャリッジに保持され、前記試験輪と連結した従動プーリーと、前記駆動プーリー及び前記従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、前記第1の巻掛け媒介節が、前記キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、前記第1の部分において前記従動プーリーを通り、前記第2の部分において前記キャリッジに固定された、タイヤ試験装置が提供される。
・上記のタイヤ試験装置において、前記駆動システムが、前記第1の巻掛け伝動機構と連結して、該第1の巻掛け伝動機構によって伝達された動力の一部を前記駆動輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、前記従動プーリーが、前記二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記駆動システムが、一対の前記駆動手段を備え、前記第1の巻掛け伝動機構が、前記一対の駆動手段の出力軸とそれぞれ結合した一対の前記駆動プーリーを備え、前記第1の巻掛け媒介節が、ループを形成し、前記一対の駆動プーリー及び前記従動プーリーに掛け渡された構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記第1の巻掛け媒介節が、鋼線の心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記第1の巻掛け媒介節が、カーボン心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムを備え、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、前記試験輪を回転駆動する動力を発生する二つの駆動手段と、前記二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、前記二つの駆動手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターと、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪駆動手段が、二つの前記駆動手段と、前記二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、前記二つの駆動手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターと、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、二つの前記駆動手段と、前記二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、前記二つの駆動手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターと、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムを備え、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪駆動手段が、前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた構成としてもよい。
・本発明の一実施形態によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、前記キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、前記回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、前記試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた、タイヤ試験装置が提供される。
・上記のタイヤ試験装置において、前記回転運動供給手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターを備え、前記トルク付与手段が、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記トルク付与手段が、前記第1のモーターが発生した動力と前記第2のモーターが発生した動力とを結合する動力結合手段を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記トルク付与手段が、前記第2のモーターが取り付けられ、前記第1のモーターが発生した動力により回転駆動される回転フレームと、前記第2のモーターによって駆動されるシャフトと、を備え、該シャフトと前記回転フレームとが同心に配置された構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記トルク付与手段が、前記回転フレームを回転可能に支持する一対の軸受部を備え、前記回転フレームが、筒状であり、前記第2のモーターを収容するモーター収容部と、前記モーター収容部を挟んで軸方向両側に設けられた、前記モーター収容部よりも小径の一対の軸部と、を有し、前記一対の軸部において、前記一対の軸受部により、回転可能に支持され、前記軸部の一方が円筒状であり、その中空部を前記シャフトが貫通し、前記軸部の内周に前記シャフトを回転可能に支持する軸受が設けられた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記二次動力伝達部が、前記トルク付与手段によって駆動される第2のシャフトと、前記第2のシャフトを回転可能に支持する軸受と、前記第2のシャフトと前記スピンドルとを連結するスライド式等速ジョイントと、を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪駆動手段が、前記回転運動供給手段から供給された動力を伝達する一次動力伝達部と、前記キャリッジ上に設置され、前記一次動力伝達部と連結して、該一次動力伝達部によって伝達された動力を前記試験輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、前記一次動力伝達部が第1の巻掛け伝動機構を備え、前記第1の巻掛け伝動機構が、前記キャリッジが走行可能な領域を挟んで配置された一対の固定プーリーと、前記キャリッジに保持された移動プーリーと、前記一対の固定プーリー及び前記移動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、前記固定プーリーの少なくとも一つが前記回転運動供給手段の出力軸と結合した駆動プーリーであり、前記移動プーリーが従動プーリーであり、前記二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記二次動力伝達部が第2の巻掛け伝動機構を備え、前記第2の巻掛け伝動機構が、第1の巻掛け伝動機構の前記移動プーリーと結合した駆動プーリーと、前記トルク付与手段の前記回転フレームと結合した従動プーリーと、前記第2の巻掛け伝動機構の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第2の巻掛け媒介節と、を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記二次動力伝達部が、回転可能に支持されたスピンドルを備え、前記スピンドルが、その先端部に前記試験輪を同軸に着脱可能に構成され、前記試験輪に加わる力を検出可能な力センサーを備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記キャリッジが、メインフレームと、前記メインフレームに対して、前記路面に垂直な垂直線の回りに旋回可能な旋回フレームと、前記メインフレームに対して、前記路面に垂直な垂直方向にスライド可能なスライドフレームと、を備え、前記スピンドルが、前記旋回フレーム及び前記スライドフレームを介して前記メインフレームに支持された構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記キャリッジが、前記旋回フレームの前記垂直線回りの旋回を案内する曲線ガイドウェイと、前記スライドフレームの前記垂直方向への移動を案内するリニアガイドウェイと、を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記スライドフレームが、前記スピンドルを、該スピンドルの中心線及び前記垂直線の両方と垂直な水平軸の周りに回転可能に支持する構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記キャリッジが、前記スライドフレームを前記垂直方向に移動させて、前記試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記キャリッジが、前記旋回フレームを前記垂直線の周りに旋回移動させて、前記路面に対する前記試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整部を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記スピンドルを前記水平軸の周りに回転移動させて、前記路面に対する前記試験輪のキャンバーを調整可能なキャンバー調整部を備えた構成としてもよい。
・本発明の一実施形態によれば、試験タイヤを備えた試験輪を回転可能に保持し、前記試験輪を路面に接地させた状態で前記路面に沿ってベース上を走行可能なキャリッジと、前記試験輪及び前記キャリッジを駆動する駆動システムと、を備え、前記駆動システムが前記試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備え、前記試験輪駆動手段が、前記試験輪を回転駆動する動力を発生する二つの駆動手段と、前記二つの駆動手段が発生した動力を結合する動力結合手段と、を備え、前記二つの駆動手段が、前記ベース上に設置された第1のモーターと、前記キャリッジ上に設置された第2のモーターと、を含む、タイヤ試験装置が提供される。
・上記のタイヤ試験装置において、前記路面部の上面に、前記試験輪のタイヤ踏面が受ける荷重分布を検出する荷重検出部が設けられた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記荷重検出部が、前記キャリッジの走行方向及び前記試験輪の軸方向に格子点状に配列された複数の荷重検出モジュールを備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記荷重検出モジュールが、それぞれ3分力センサーを備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記荷重検出部による検出結果に基づいて荷重分布を計測する計測手段を備え、前記計測手段が、前記3分力センサーの検出結果に基づいて、前記タイヤ踏面が受ける半径方向力、接線力及び横力を計算する構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、検出された前記荷重分布を記憶する記憶手段を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記キャリッジの走行方向における前記試験輪の走行位置を取得する手段を備え、前記記憶手段が、前記検出された荷重分布と、該荷重分布が検出された時の前記試験輪の走行位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪の回転位置を取得する手段を備え、前記記憶手段が、前記検出された荷重分布と、該荷重分布が検出された時の前記試験輪の回転位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記記憶手段が、同じタイミングで検出された前記荷重分布と前記試験輪に加わる力とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記試験輪の走行位置を基準とする前記荷重検出モジュールの相対位置を計算する手段を備え、前記相対位置についての荷重分布の計測値が計算される、前記キャリッジを走行させながら前記荷重分布の検出を複数回行い、複数回の前記荷重分布の検出結果を前記相対位置毎に平均することによって、前記荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、回帰分析により前記荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記前記キャリッジの1方向の走行によって前記荷重検出部による1セットの測定が行われ、前記荷重検出部による複数セットの測定の結果に基づいて前記荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記荷重検出部の位置を前記試験輪の軸方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。
・上記のタイヤ試験装置において、前記荷重検出部の位置を前記走行方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。
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