(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】減衰領域を備えた光学素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/43 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G02B6/43
(21)【出願番号】P 2023513130
(86)(22)【出願日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2022027075
【審査請求日】2023-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】堀切 宏則
(72)【発明者】
【氏名】両角 海里
(72)【発明者】
【氏名】槇 宣志
(72)【発明者】
【氏名】善光 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 孝弘
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-35531(JP,A)
【文献】特開2004-317912(JP,A)
【文献】特表2018-533033(JP,A)
【文献】特開2005-10442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0259423(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0075071(US,A1)
【文献】特表2009-505118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
G02B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と該光源からの光を受け取る受光素子とを光学的に結合するように、該光源に対向するように構成された入射レンズ面と該受光素子に対向するように構成された出射レンズ面とを備え、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の減衰領域を備えた光学素子であって、該入射レンズ面及び該出射レンズ面以外の追加のレンズ面及び該追加のレンズ面用の別の光源の位置決め面をさらに備え、該追加のレンズ面は、該追加のレンズ面の光軸と該位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の
経路上に位置するように構成された光学素子。
【請求項2】
該減衰領域は材料の光学的性質が変化した領域である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該出射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に備わる請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに平行であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に備わる請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに平行であり、該追加のレンズ面は該出射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
該位置決め面は該追加のレンズ面が備わる該光学素子の面と平行である請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
該入射レンズ面から入り、該光学素子内を進行する光がほぼコリメートされた光ビームであるように構成された請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
多芯光ファイバ用の光学素子であって、同じ方向にそれぞれ一列に配置された複数の入射レンズ面、複数の出射レンズ、複数の追加のレンズ面及び該複数の追加のレンズ面用の複数の光源の共通の位置決め面を備え、一つの入射レンズ面、一つの出射レンズ面及び一つの追加のレンズ面は一つの組を形成し、それぞれの組において、入射レンズ面、出射レンズ面及び追加のレンズ面は該同じ方向の座標に関し同じ値を有するように配置され、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の減衰領域を備え、該追加のレンズ面は、該追加のレンズ面の光軸と該共通の位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路上またはその近傍に位置するように構成された請求項1に記載の光学素子。
【請求項11】
光源と該光源からの光を受け取る受光素子とを光学的に結合するように構成され、内部に減衰領域を備えた光学素子の製造方法であって、
該光源に対向するように構成された入射レンズ面、該受光素子に対向するように構成された出射レンズ面及び該入射レンズ面及び該出射レンズ面以外の追加のレンズ面を備えた光学素子を製造するステップと、
該入射レンズ面から光を入射させて該出射レンズ面から射出する光の強度を観測しながら該追加のレンズ面からレーザ光を入射して該光学素子の内部に該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光に対する所望の透過率を実現する減衰領域を形成するステップと、を含む光学素子の製造方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の光学素子の製造方法であって、該光学素子が多芯光ファイバ用の光学素子であって、同じ方向にそれぞれ一列に配置された複数の入射レンズ面、複数の出射レンズ及び複数の追加のレンズ面を備え、一つの入射レンズ面、一つの出射レンズ面及び一つの追加のレンズ面は一つの組を形成し、それぞれの組において、入射レンズ面、出射レンズ面及び追加のレンズ面は該同じ方向の座標に関し同じ値を有するように配置された光学素子である光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減衰領域を備えた光学素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の分野において光源として機能する発光素子と受光素子とを光学的に結合する光学素子(光モジュール)が使用されている。このような光学素子を使用する際に、安全性及び規格の観点から、所望の透過率が実現されるように通過する光量を減少させることが要求される場合がある。所望の透過率が実現されるように、光の通過する面に光減衰用の膜を備えた光学素子(特許文献1)、内部において光を拡散させる形状を備えた光学素子(特許文献2)などが開発されている。
【0003】
しかし、膜を備えた光学素子を製造するには工数及びコストが増加する。また、内部において光を拡散させる形状を備えた光学素子の場合には、拡散された光によるノイズが増加する可能性がある。また、いずれの方法の場合も広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現するのは容易ではない。
【0004】
このように、光源として機能する発光素子と受光素子とを光学的に結合する光学素子であって、簡単に製造することができ、所望の透過率を高い精度で実現する光学素子及びその製造方法は開発されていない。そこで、光源として機能する発光素子と受光素子とを光学的に結合する光学素子であって、簡単に製造することができ、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現する光学素子及びその製造方法に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-119063
【文献】特開2008-145678
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、光源として機能する発光素子と受光素子とを光学的に結合する光学素子であって、簡単に製造することができ、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現する光学素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の光学素子は、光源と該光源からの光を受け取る受光素子とを光学的に結合するように、該光源に対向するように構成された入射レンズ面と該受光素子に対向するように構成された出射レンズ面とを備え、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路に減衰領域を備えた光学素子である。該光学素子は、該入射レンズ面及び該出射レンズ面以外の追加のレンズ面及び該追加のレンズ面用の別の光源の位置決め面をさらに備え、該追加のレンズ面は、該追加のレンズ面の光軸と該位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路上またはその近傍に位置するように構成されている。
【0008】
減衰領域とは入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光ビームの経路において他の部分と比較して大きな光の減衰を生じさせる領域を指す。レーザ光による減衰領域の形成については後で説明する。レンズ面の光軸とはレンズ面の頂点を通りレンズ面に垂直な直線を指す。該追加のレンズ面の光軸と該位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路上またはその近傍に位置するとは、後で説明するように該共役点に集光される加工用レーザ光によって該共役点の周囲の材料の光学的な性質が変化し、結果として、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路上に減衰領域が形成されるような位置に該共役点が位置することを意味する。
【0009】
本態様の光学素子の減衰領域は、該入射レンズ面から光を入射させて該出射レンズ面から射出する光の強度を観測しながら該追加のレンズ面からレーザ光を入射して形成するので簡単に製造することができ、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現することができる。
【0010】
本発明の第1の態様の第1の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該出射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる。
【0011】
本実施形態において、該追加のレンズ面は該出射レンズ面と同じ光学素子の面上にあるので、両方のレンズ面の成形用の金型部品を一体的に加工することができ、両方のレンズ面の面間位置精度を向上させることができる。また、一つのフェルールを加工用光ファイバ及び通信用光ファイバに使用できるので、フェルールの位置決め用の構造も少ない。このため、製造コストを低くできる。さらに、フェルールの位置決め用の構造を両方のレンズ面と同じ光学素子の面上に備えることにより、両方のレンズ面及び上記の位置決め用の構造の成形用の金型部品を一体的に加工することができるので、加工用光ファイバ及び通信用光ファイバの心合わせ精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の第1の態様の第2の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる。
【0013】
本実施形態において、該追加のレンズ面は該入射レンズ面と同じ光学素子の面上にあるので、両方のレンズ面の成形用の金型部品を一体的に加工することができ、両方のレンズ面の面間位置精度を向上させることができる。また、減衰領域作成時の透過率測定用の通信用光源に光ファイバを使用するので該通信用光源の位置決めが容易である。
【0014】
本発明の第1の態様の第3の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに垂直であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に備わる。
【0015】
本実施形態において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に該追加のレンズ面を備えることによって、光学素子の厚さ(高さ)を小さくすることができる。
【0016】
本発明の第1の態様の第4の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに平行であり、該追加のレンズ面は該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に備わる。
【0017】
本実施形態によれば、光学素子の下面と垂直、すなわち通信用光源の基板面と垂直な方向に延伸する光ファイバに対応することができる。また、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面及び該出射レンズ面が備わる該光学素子の面以外の該光学素子の面に該追加のレンズ面を備えることによって、基板における該光学素子の占める面積を小さくすることができる。
【0018】
本発明の第1の態様の第5の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面が備わる該光学素子の面と該出射レンズ面が備わる該光学素子の面とが互いに平行であり、該追加のレンズ面は該出射レンズ面が備わる該光学素子の面に備わる。
【0019】
本実施形態によれば、光学素子の下面と垂直、すなわち通信用光源の基板面と垂直な方向に延伸する光ファイバに対応することができる。また、光学素子の厚さ(高さ)を小さくすることができる。
【0020】
本発明の第1の態様の第6の実施形態の光学素子において、該位置決め面は該追加のレンズ面が備わる該光学素子の面と平行である。
【0021】
本発明の第1の態様の第7の実施形態の光学素子において、該入射レンズ面から入り、該光学素子内を進行する光がほぼコリメートされた光ビームであるように構成されている。
【0022】
本実施形態によれば、ほぼコリメートされた光ビームの経路の減衰領域を形成するので、透過率の調整が容易でありより高い精度の透過率を有する光学素子が得られる。
【0023】
本発明の第1の態様の第8の実施形態の光学素子は、多芯光ファイバ用の光学素子であって、同じ方向にそれぞれ一列に配置された複数の入射レンズ面、複数の出射レンズ、複数の追加のレンズ面及び該複数の追加のレンズ面用の複数の光源の共通の位置決め面を備え、一つの入射レンズ面、一つの出射レンズ面及び一つの追加のレンズ面は一つの組を形成し、それぞれの組において、入射レンズ面、出射レンズ面及び追加のレンズ面は該同じ方向の座標に関し同じ値を有するように配置され、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の減衰領域を備え、該追加のレンズ面は、該追加のレンズ面の光軸と該共通の位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光の経路上またはその近傍に位置するように構成されている。
【0024】
本実施形態によれば、多芯光ファイバ用の光学素子において広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現することができる。
【0025】
本発明の第2の態様の光学素子の製造方法は、光源と該光源からの光を受け取る受光素子とを光学的に結合するように構成され、内部に減衰領域を備えた光学素子の製造方法であって、該光源に対向するように構成された入射レンズ面、該受光素子に対向するように構成された出射レンズ面及び該入射レンズ面及び該出射レンズ面以外の追加のレンズ面を備えた光学素子を製造するステップと、該入射レンズ面から光を入射させて該出射レンズ面から射出する光の強度を観測しながら該追加のレンズ面からレーザ光を入射して該光学素子の内部に該入射レンズ面から入射して該出射レンズ面に到達する光に対する所望の透過率の減衰領域を形成するステップと、を含む。
【0026】
本態様の光学素子の製造方法において、減衰領域は、該入射レンズ面から光を入射させて該出射レンズ面から射出する光の強度を観測しながら該追加のレンズ面からレーザ光を入射して形成するので簡単に製造することができ、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現することができる。
【0027】
本発明の第2の態様の第1の実施形態の光学素子の製造方法において、該光学素子が多芯光ファイバ用の光学素子であって、同じ方向にそれぞれ一列に配置された複数の入射レンズ面、複数の出射レンズ及び複数の追加のレンズ面を備え、一つの入射レンズ面、一つの出射レンズ面及び一つの追加のレンズ面は一つの組を形成し、それぞれの組において、入射レンズ面、出射レンズ面及び追加のレンズ面は該同じ方向の座標に関し同じ値を有するように配置された光学素子である。
【0028】
本実施形態によれば、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現した多芯光ファイバ用の光学素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】光学素子内に減衰領域を形成するためのシステムの構成を示す図である。
【
図2】光学素子の製造方法を説明するための流れ図である。
【
図3】実施例1の光学素子の上方からの透視図である。
【
図4】実施例1の光学素子の下方からの透視図である。
【
図5】フェルールを装着した実施例1の光学素子の上面図である。
【
図10】光学素子の、入射レンズ面から入射して出射レンズ面に到達する光線の経路を示す図である。
【
図11】実施例2の光学素子の上方からの透視図である。
【
図12】実施例2の光学素子の下方からの透視図である。
【
図13】フェルールを装着した実施例2の光学素子の上面図である。
【
図18】光学素子の、入射レンズ面から入射して出射レンズ面に到達する光線の経路を示す図である。
【
図19】実施例3の光学素子の上方からの透視図である。
【
図20】実施例3の光学素子の下方からの透視図である。
【
図21】2個のフェルールを装着した実施例3の光学素子の上面図である。
【
図24】2個のフェルールを装着した実施例3の光学素子の側面図である。
【
図25】実施例4の光学素子の上方からの透視図である。
【
図26】実施例4の光学素子の下方からの透視図である。
【
図27】フェルールを装着した実施例3の光学素子の上面図である。
【
図30】2個のフェルールを装着した実施例4光学素子の側面図である。
【
図31】実施例5の光学素子の上方からの透視図である。
【
図32】実施例5の光学素子の下方からの透視図である。
【
図33】2個のフェルールを装着した実施例5の光学素子の平面断面図である。
【
図35】2個のフェルールを装着した実施例5の光学素子の側面断面図である。
【
図37】2個のフェルールを装着した実施例5の光学素子の上面図である。
【
図38】2個のフェルールを装着した実施例5の光学素子の側面図である。
【
図39】実施例6の光学素子の上方からの透視図である。
【
図40】実施例6の光学素子の下方からの透視図である。
【
図44】2個のフェルールを装着した実施例6の光学素子の上面図である。
【
図49】2個のフェルールを装着した実施例6の光学素子の上面図である。
【
図50】実施例7の光学素子の上方からの透視図である。
【
図51】実施例7の光学素子の下方からの透視図である。
【
図55】フェルールを装着した実施例7の光学素子の側面図である。
【
図60】フェルールを装着した実施例7の光学素子の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の光学素子100は、光源及び受光素子を光学的に結合するように構成されている。光学素子100が送信用に使用される場合には、一例として、光源はVCSEL(Vertical
Cavity Surface Emitting LASER、垂直共振器面発光レーザ)などの半導体光学素子であ
り、受光素子は光ファイバである。光学素子100が受信用に使用される場合には、一例として、光源は光ファイバであり、受光素子はフォトダイオードなどの半導体光学素子である。
【0031】
図9は、本発明の一実施形態の光学素子100の、入射レンズ面111及び出射レンズ面131の中心軸を含む断面図である。
【0032】
図10は、光学素子100の、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光線の経路を示す図である。
【0033】
図9及び
図10は後で説明する実施例1に関するものである。
図9及び
図10において光源410から放出された光は光学素子100の面110上に備わる入射レンズ面111によってほぼコリメートされたビームとされ光学素子100の内部を進行する。ほぼコリメートされたビームは光学素子100の面120によって反射された後、光学素子100の面130上に備わる出射レンズ面131に到達する。ほぼコリメートされたビームは出射レンズ面131によって通信用光ファイバ310の端面に集光される。このようにして光学素子100によって光源410と通信用光ファイバ310とが光学的に結合される。
【0034】
光学素子100の面130上にはレーザ加工用の追加のレンズ面LLPが備わる。追加のレンズ面LLPには加工用光ファイバ320からレーザ光が入射される。追加のレンズ面LLPは、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光線の経路上またはその近傍に加工用光ファイバ320から受け取ったレーザ光を集光するように構成されている。通信用光ファイバ310及び加工用光ファイバ320は、フェルール(光コネクタ)200によってそれぞれ出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPに位置合わせされる。
【0035】
図1は、光学素子100内に減衰領域を形成するためのシステムの構成を示す図である。減衰領域とは入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光ビームの経路において他の部分と比較して大きな減衰を生じさせる領域を指す。光学素子100の材料はPEI(ポリエーテルイミド)、PI(ポリイミド)及びPESU(PES)(ポリエーテ
ルサルフォン)などのプラスチックであるのが好ましい。光学素子100の入射レンズ面111にはVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER、垂直共振器面発光レーザ)
などの通信用光源410が光学的に接続される。光学素子100の出射レンズ面131には光ファイバ310を介して光パワーメータなどのセンサ500が光学的に接続され、光学素子100の加工用の追加のレンズ面LLPには光ファイバ320を介して加工用光源420が光学的に接続される。加工用光源420はファイバレーザ、超短パルス光レーザなどである。一例として、ファイバレーザの出力は、20kWから70kWの範囲である。光ファイバ310及び光ファイバ320は、光コネクタ200によってそれぞれ出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPに位置合わせされる。センサ500の出力はプロセッサ600の入力に接続され、プロセッサ600の出力はコントローラ700の入力に接続され、コントローラ700の出力は通信用光源410及び加工用光源420に接続される。プロセッサ600はセンサ500の出力に基づいて加工用光源420の出力などの指示をコントローラ700へ送り、コントローラ700はプロセッサ600の指示に基づいて通信用光源410及び加工用光源420の出力を制御するように構成されている。
【0036】
図2は、光学素子100の製造方法を説明するための流れ図である。
【0037】
図2のステップS1010において、光源に対向するように構成された入射レンズ面111、受光素子に対向するように構成された出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPを備えた光学素子を製造する。
【0038】
図2のステップS1020において、光学素子内に減衰領域を形成する。具体的に、入射レンズ面111から光を入射させ出射レンズ面131から射出する光の強度をセンサ500によって観測しながら追加のレンズ面LLPから光ファイバ320を介してレーザ光を入射させる。追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点の周囲では、レーザ光によって材料の屈折率が変化し、または材料の吸収率が増加する。材料の光学的な性質が変化した上記の領域と、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光の経路と、が重なると、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131へ進行する光の一部が散乱または吸収され、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光は減少する。このようにして入射レンズ面111へ入射して出射レンズ面131から射出する光に対する減衰領域が形成される。追加のレンズ面LLPからのレーザ光の照射中に、入射レンズ面111から光を入射させて出射レンズ面131から射出する光の強度をセンサ500によって観測し、その観測値に基づいてプロセッサ600によってレーザ光の強度及び照射時間の少なくとも一方を、コントローラ700を介して制御することによって、追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点の周囲に、入射レンズ面111へ入射して出射レンズ面131から射出する光に対する所望の透過率を実現する減衰領域を形成することができる。
【0039】
光学素子100が多芯光ファイバの一括接続用のものである場合には、1本の通信用光ファイバに対応する入射レンズ面111、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPの組ごとに制御を実施してもよい。あるいは一つの出射レンズ面131から射出する光の強度をセンサ500によって観測し、その観測値に基づいて複数または全ての追加のレンズ面LLPから入射するレーザ光のパワーを制御してもよい。
【0040】
一般的には、
図10に示すように、追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点の位置を、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光の主光線、すなわち入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上とするのが好ましい。その理由は、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する通信用の光ビームの進行方向に垂直な断面における光強度分布のピークとなる位置を中心に減衰領域を形成することによって、追加のレンズ面LLPから入射する加工用レーザ光の集光点の意図しない変化の影響を小さくできるからである。他方、所望の大きな値の透過率の減衰領域を実現するために上記の経路から離れた位置に追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点を位置させることもできる。
【0041】
このようにレーザ光の強度、レーザ光の照射時間及び追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点の位置を適切に定めることによって0%から100%の範囲の任意の透過率を実現する減衰領域を形成することができる。通常、光通信において所望される透過率は、90%から25.5%(出射側の光強度と入射側の光強度の比は-0.5dBから-6.0dB)の範囲である。
【0042】
以下において本発明の実施例を説明する。全ての実施例において対応する構成部分には同じ符号を使用する。実施例の光学素子の材料はポリエーテルイミド(PEI)であり、850ナノメータの波長の光に対する屈折率は1.638である。
【0043】
実施例1
実施例1の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0044】
図3は、実施例1の光学素子100の上方からの透視図である。
【0045】
光学素子100の一側面には12個の追加のレンズ面LLP及び12個の出射レンズ面131がそれぞれ一列に配置されている。二つの列は互いに平行である。追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の追加
のレンズ面LLPの中心間間隔及び隣接する2個の出射レンズ面131の中心間間隔は250マイクロメータである。一つの追加のレンズ面LLP及び一つの出射レンズ面131は
一つの組を形成し、上記の列方向の座標に関し、上記の組の追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131は同じ値を有するように配置される。一つの組のレンズ面LLP及び出射レンズ面131の中心間間隔は500マイクロメータである。
【0046】
図4は、実施例1の光学素子100の下方からの透視図である。
【0047】
光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111が一列に配置されている。入射レンズ面111の列は、追加のレンズ面LLPの列及び出射レンズ面131の列と平行である。入射レンズ面111の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の入射レン
ズ面111の中心間間隔は250マイクロメータである。一つの入射レンズ面111、一つ
の出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0048】
図5は、フェルール200を装着した実施例1の光学素子100の上面図である。
【0049】
【0050】
【0051】
図8は、
図6のCで示す図分の拡大図である。
図8に示すように、フェルール200は、光学素子100のフェルール勘合用ピン150をフェルール200の凹部にはめ込むことによって光学素子100に装着される。
【0052】
図9は、
図7のDで示す図分の拡大図である。
図9に示す入射レンズ面111、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPは、一つの組に属する。入射レンズ面111は光源410から光ビームを受け取る。出射レンズ面131は光ビームを通信用光ファイバ310の端面に集光する。追加のレンズ面LLPは加工用光ファイバ320からレーザ光を受け取る。通信用光ファイバ310及び加工用光ファイバ320は、位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131が備わる光学素子の面130と平行である。
【0053】
図10は、光学素子100の、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光線の経路を示す図である。入射レンズ面111から入射する光線及び追加のレンズ面LLPから入射するレーザ光線はともに面120によって全反射される。出射レンズ面131の頂点に到達する光線に沿った出射レンズ面131及び面120間の距離は、追加のレンズ面LLPの頂点を通り面120に到達する光線に沿った追加のレンズ面LLP及び面120間の距離よりも大きい。面120は、入射レンズ面111の頂点を通り面120に到達する光線の経路及び面120で反射された後に出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路のそれぞれに対して45度傾斜している。
【0054】
図10に示すように、追加のレンズ面LLPは、追加のレンズ面LLPから入射したレーザ光を入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上の点に集光する。追加のレンズ面LLPに関し、追加のレンズ面LLPの光軸と位置決め面140を含む平面(面140と同一の平面)との交点の共役点は入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上である。
【0055】
表1は、入射レンズ面111及び出射レンズ面131によって構成される通信用の光学系のデータを示す表である。
【表1】
【0056】
入射レンズ面111及び出射レンズ面131の形状は非球面であり、それぞれのサグ量、すなわちレンズ面の頂点とレンズ面上の点との間の光軸方向の距離は以下の式で表せる。ここで光軸は、入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路である。
【数1】
ここで
c:曲率(曲率半径の逆数)
r:光軸からの距離
k:コーニック定数
である。cはレンズ面の形状が物体側に凸の場合に正となり、レンズ面の形状が像側に凸の場合に負となるように定める。
【0057】
表1において、曲率半径及びコーニック定数のデータは入射レンズ面111及び出射レンズ面131に関するものであり、直径のデータは光源、入射レンズ面111及び出射レンズ面131に関するものである。
【0058】
表1において、光源の「面間距離」は光源と入射レンズ面111との間の光軸に沿った距離であり、入射レンズ面111の「面間距離」は入射レンズ面111と全反射面120との間の光軸に沿った距離であり、全反射面120の「面間距離」は全反射面120と出射レンズ面131との間の光軸に沿った距離であり、出射レンズ面131の「面間距離」は出射レンズ面131と通信用光ファイバ310との間の光軸に沿った距離である。
【0059】
表2は、追加のレンズ面LLPによって構成される減衰領域形成用の光学系のデータを示す表である。
【表2】
【0060】
追加のレンズ面LLPの形状は非球面であり、サグ量は上記の式(1)で表せる。追加のレンズ面LLPの光学系において光軸は追加のレンズ面LLPの頂点及び加工用光ファイバ320の端面中心を通る光線である。
【0061】
表2において、曲率半径、コーニック定数及び焦点距離は追加のレンズ面LLPに関するデータであり、直径のデータは光源及び追加のレンズ面LLPに関するデータである。
【0062】
表2において、光源の「面間距離」はレーザ光用の光ファイバ320と追加のレンズ面LLPとの間の光軸に沿った距離であり、追加のレンズ面LLPの「面間距離」は追加のレンズ面LLPと全反射面120との間の光軸に沿った距離であり、全反射面120の「面間距離」は全反射面120と追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点との間の光軸に沿った距離である。
【0063】
実施例2
実施例2の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0064】
図11は、実施例2の光学素子100の上方からの透視図である。
【0065】
光学素子100の一側面には12個の出射レンズ面131及び12個の追加のレンズ面LLPがそれぞれ一列に配置されている。二つの列は互いに平行である。出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPの直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の出射
レンズ面131の中心間間隔及び隣接する2個の追加のレンズ面LLPの中心間間隔は250マイクロメータである。一つの追加のレンズ面LLP及び一つの出射レンズ面131は
一つの組を形成し、上記の列方向の座標に関し、上記の組の追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131は同じ値を有するように配置される。一つの組の属する出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPの中心間間隔は500マイクロメータである。
【0066】
図12は、実施例2の光学素子100の下方からの透視図である。
【0067】
光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111が一列に配置されている。入射レンズ面111の列は、追加のレンズ面LLPの列及び出射レンズ面131の列と平行である。入射レンズ面111の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の入射レン
ズ面111の中心間間隔は250マイクロメータである。一つの入射レンズ面111、一つ
の出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0068】
図13は、フェルール200を装着した実施例2の光学素子100の上面図である。
【0069】
【0070】
【0071】
図16は、
図14のCで示す図分の拡大図である。
図16に示すように、フェルール200は、光学素子100のフェルール勘合用ピン150をフェルール200の凹部にはめ込むことによって光学素子100に装着される。
【0072】
図17は、
図15のDで示す図分の拡大図である。
図17に示す入射レンズ面111、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPは、一つの組に属するものである。入射レンズ面111は光源410から光ビームを受け取る。出射レンズ面131は光ビームを通信用光ファイバ310の端面に集光する。追加のレンズ面LLPは加工用光ファイバ320からレーザ光を受け取る。通信用光ファイバ310及び加工用光ファイバ320は、位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131が備わる光学素子の面130と平行である。
【0073】
図18は、光学素子100の、入射レンズ面111から入射して出射レンズ面131に到達する光線の経路を示す図である。入射レンズ面111から入射する光線は面120によって全反射される。出射レンズ面131の頂点に到達する光線に沿った出射レンズ面131及び面120間の距離は、追加のレンズ面LLPの頂点を通り面120へ向かって進行する光線に沿った追加のレンズ面LLP及び面120間の距離よりも小さい。面120は、入射レンズ面111の頂点を通り面120に到達する光線の経路及び面120で反射された後に出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路のそれぞれに対して45度傾斜している。
【0074】
入射レンズ面111及び出射レンズ面131によって構成される通信用の光学系のデータは実施例1のものと同じである。
【0075】
図18に示すように、追加のレンズ面LLPは、追加のレンズ面LLPから入射したレーザ光を入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上の点に集光する。追加のレンズ面LLPに関し、追加のレンズ面LLPの光軸と位置決め面140を含む平面(面140と同一の平面)との交点の共役点は入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上である。
【0076】
表3は、追加のレンズ面LLPによって構成される減衰領域形成用の光学系のデータを示す表である。
【表3】
【0077】
追加のレンズ面LLPの形状は非球面であり、サグ量は上記の式(1)で表せる。追加のレンズ面LLPの光学系において光軸は追加のレンズ面LLPの頂点及び加工用光ファイバ320の端面中心を通る光線である。
【0078】
表3において曲率半径、コーニック定数及び焦点距離のデータは追加のレンズ面LLPに関するデータであり、直径のデータは光源及び追加のレンズ面LLPに関するデータである。
【0079】
表3において、光源の「面間距離」はレーザ光源と追加のレンズ面LLPとの間の光軸に沿った距離であり、追加のレンズ面LLPの「面間距離」は追加のレンズ面LLPと追加のレンズ面LLPがレーザ光を集光する点との間の光軸に沿った距離である。
【0080】
実施例3
実施例3の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0081】
図19は、実施例3の光学素子100の上方からの透視図である。
【0082】
光学素子100の一側面には12個の出射レンズ面131が一列に配置されている。出射レンズ面131の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の出射レンズ面13
1の中心間間隔は250マイクロメータである。光学素子100の上面には12個の追加の
レンズ面LLPが出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。レンズ面LLPの直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の追加のレンズ面
LLPの中心間間隔は250マイクロメータである。
【0083】
図20は、実施例3の光学素子100の下方からの透視図である。
【0084】
光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111が出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。入射レンズ面111の直径は250マイクロ
メータであり、隣接する2個の入射レンズ面111の中心間間隔は250マイクロメータで
ある。一つの入射レンズ面111、一つの出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0085】
図21は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例3の光学素子100の上面図である。
【0086】
図22は、
図21のA-A断面を示す図である。
図22に示すように、フェルール200は、その凹部に光学素子100の勘合用ピン150をはめ込むことによって光学素子100に装着され、フェルール220は、その凹部に、光学素子100の凹部にはめ込んだ別個の部品であるフェルール勘合用ピン250をはめ込むことによって光学素子100に装着される。
【0087】
図23は、
図21のB-B断面を示す図である。
図23に示す入射レンズ面111、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPは、一つの組に属するものである。入射レンズ面111は光源410から光ビームを受け取る。出射レンズ面131は光ビームを通信用光ファイバ310の端面に集光する。追加のレンズ面LLPは加工用光ファイバ320からレーザ光を受け取る。加工用光ファイバ320は、位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、追加のレンズ面LLPが備わる光学素子の面と平行である。
【0088】
入射レンズ面111及び出射レンズ面131によって構成される通信用の光学系は実施例1のものと同じである。追加のレンズ面LLPは、追加のレンズ面LLPから入射したレーザ光を入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上の点に集光する。
【0089】
図24は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例3の光学素子100の側面図である。
【0090】
実施例4
実施例4の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0091】
図25は、実施例4の光学素子100の上方からの透視図である。
【0092】
光学素子100の一側面には12個の出射レンズ面131が水平方向の一列に配置されている。出射レンズ面131の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の出射レ
ンズ面131の中心間間隔は250マイクロメータである。
【0093】
図26は、実施例4の光学素子100の下方からの透視図である。
【0094】
光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111及び12個の追加のレンズ面LLPがそれぞれ出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。入射レンズ面111及び追加のレンズ面LLPの直径は250マイクロメータであり、隣
接する2個の入射レンズ面111の中心間間隔及び隣接する2個の追加のレンズ面LLPの中心間間隔は250マイクロメータである。一つの追加のレンズ面LLP及び一つの出射
レンズ面131は一つの組を形成し、上記の列方向の座標に関し、上記の組の追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131は同じ値を有するように配置される。一つの組に属するレンズ面LLP及び出射レンズ面131の中心間間隔は500マイクロメータである。一
つの入射レンズ面111、一つの出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0095】
図27は、フェルール200を装着した実施例3の光学素子100の上面図である。
【0096】
図28は、
図27のA-A断面を示す図である。
図28に示すように、フェルール200は、その凹部に光学素子100の勘合用ピン150をはめ込むことによって光学素子100に装着され、フェルール220は、その凹部に、光学素子100の凹部にはめ込んだ別個の部品であるフェルール勘合用ピン250をはめ込むことによって光学素子100に装着される。
【0097】
図29は、
図27のB-B断面を示す図である。
図29に示す入射レンズ面111、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPは、一つの組に属するものである。入射レンズ面111は光源として機能する光ファイバ305から光ビームを受け取る。出射レンズ面131は光ビームを通信用光ファイバ310の端面に集光する。追加のレンズ面LLPは加工用光ファイバ320からレーザ光を受け取る。光ファイバ305及び加工用光ファイバ320は、位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、入射レンズ面111及び追加のレンズ面LLPが備わる光学素子の面110と平行である。
【0098】
入射レンズ面111及び出射レンズ面131によって構成される通信用の光学系は実施例1のものと同じである。追加のレンズ面LLPは、追加のレンズ面LLPから入射したレーザ光を入射レンズ面111の頂点及び出射レンズ面131の頂点を通る光線の経路上の点に集光する。
【0099】
図30は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例4の光学素子100の側面図である。
【0100】
実施例5
実施例5の光学素子100は単芯ファイバの接続用のものであり、単芯ファイバ用のLCフェルールと共に使用される。
【0101】
図31は、実施例5の光学素子100の上方からの透視図である。
【0102】
光学素子100の一つの側面には円筒形状の突起部があり、この突起部の位置は円筒の中心軸が出射レンズ面131の頂点を通るように構成されている。円筒に通信用光ファイバ310のフェルールを嵌合させる。また、光学素子100の上記の側面と直交する他の側面には断面が円形の穴である受け口があり、この受け口の位置は断面が円形の穴の中心軸が追加のレンズ面LLPの頂点を通るように構成されている。穴に加工用光ファイバ320のフェルールを嵌合させる。
【0103】
図32は、実施例5の光学素子100の下方からの透視図である。
【0104】
光学素子100の下面には入射レンズ面111が備わる。
【0105】
図33は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例5の光学素子100の平面断面図である。
【0106】
図34は、
図33のA-A断面を示す図である。
図34において、光学素子100の側面の円筒形状の突起部160の円筒にフェルール200をはめ込むことによって通信用光ファイバ310が出射レンズ面131に位置合わせされる。光源410からの光は入射レンズ面111から入射し、光学素子100内を進行し全反射面120で反射された後、出射レンズ面131によって通信用光ファイバ310の端面に集光される。入射レンズ面111及び出射レンズ面131の直径は250マイクロメータであり、入射レンズ面111及
び出射レンズ面131によって構成される通信用の光学系は実施例1のものと同じである。
【0107】
図35は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例5の光学素子100の側面断面図である。
【0108】
図36は、
図35のB-B断面を示す図である。
図36において、光学素子100の側面の円筒形状の突起部の円筒にフェルール200がはめ込まれ、光学素子100の側面の穴にフェルール220がはめ込まれている。フェルール200のはめ込みによって通信用光ファイバ310が出射レンズ面131に位置合わせされ、フェルール220のはめ込みによって加工光ファイバ320が追加のレンズ面LLPに位置合わせされている。フェルール220の端面は光学素子100の位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、追加のレンズ面LLPが備わる光学素子の面と平行である。
【0109】
図37は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例5の光学素子100の上面図である。
【0110】
図38は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例5の光学素子100の側面図である。
【0111】
実施例6
実施例6の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0112】
図39は、実施例6の光学素子100の上方からの透視図である。
【0113】
図40は、実施例6の光学素子100の下方からの透視図である。
【0114】
図41は、実施例6の光学素子100の上面図である。光学素子100の上面には12個の出射レンズ面131が水平方向の一列に配置されている。出射レンズ面131の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の出射レンズ面131の中心間間隔は250マイクロメータである。
【0115】
図42は、実施例6の光学素子100の側面図である。光学素子100の一つの側面には12個の追加のレンズ面LLPが出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。追加のレンズ面LLPの直径は250マイクロメータであり、隣接す
る2個の追加のレンズ面LLPの中心間間隔は250マイクロメータである。
【0116】
図43は、実施例6の光学素子100の下面図である。光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111が出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。入射レンズ面111の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の入
射レンズ面111の中心間間隔は250マイクロメータである。一つの入射レンズ面111
、一つの出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0117】
図44は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例6の光学素子100の上面図である。
【0118】
【0119】
【0120】
図47は、
図45のCで示す図分の拡大図である。
図47に示すように、フェルール200は光学素子100に備わるフェルール勘合用ピン150によって光学素子100に装着され、フェルール220は、別個の部品であるフェルール勘合用ピン250によって光学素子100に装着される。
【0121】
図48は、
図46のEで示す図分の拡大図である。
図48に示すように、フェルール200の装着によって通信用光ファイバ310が出射レンズ面131に位置合わせされ、フェルール220の装着によって加工光ファイバ320が追加のレンズ面LLPに位置合わせされている。フェルール220の端面は光学素子100の位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、追加のレンズ面LLPが備わる光学素子の面と平行である。光源410からの光は入射レンズ面111から入射し、光学素子100内を進行した後、出射レンズ面131によって通信用光ファイバ310の端面に集光される。加工用光ファイバ320からの光は追加のレンズ面LLPによって、入射レンズ面111から入射して光学素子100内を進行する光の経路上の点に集光される。
【0122】
図49は、フェルール200及びフェルール220を装着した実施例6の光学素子100の上面図である。
【0123】
実施例7
実施例7の光学素子100は多芯光ファイバの一括接続用のものであり、一括接続に使用されるMTフェルール(Mechanically Transferable Ferrule)と共に使用される。
【0124】
図50は、実施例7の光学素子100の上方からの透視図である。
【0125】
図51は、実施例7の光学素子100の下方からの透視図である。
【0126】
図52は、実施例7の光学素子100の上面図である。光学素子100の上面には12個の出射レンズ面131及び12個の追加のレンズ面LLPがそれぞれ一列に配置されている。二つの列は平行である。出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPの直径は250マイクロメータである。隣接する2個の出射レンズ面131の中心間間隔は250マイクロメータであり、隣接する2個の追加のレンズ面LLPの中心間間隔は250マイクロメータ
である。一つの追加のレンズ面LLP及び一つの出射レンズ面131は一つの組を形成し、上記の列方向の座標に関し、上記の組の追加のレンズ面LLP及び出射レンズ面131は同じ値を有するように配置される。一つの組のレンズ面LLP及び出射レンズ面131の中心間間隔は500マイクロメータである。
【0127】
図53は、実施例7の光学素子100の側面図である。
【0128】
図54は、実施例7の光学素子100の下面図である。光学素子100の下面には12個の入射レンズ面111が出射レンズ面131の上記の列と平行になるように一列に配置されている。入射レンズ面111の直径は250マイクロメータであり、隣接する2個の入
射レンズ面111の中心間間隔は250マイクロメータである。一つの入射レンズ面111
、一つの出射レンズ面131及び一つの追加のレンズ面LLPは一つの組を形成し、上記の列の方向に定めた座標に関し、一つの組の3個のレンズ面は同じ値を有するように配置され、一つの組の入射レンズ面111及び出射レンズ面131は通信用の光学系を構成し、一つの組の追加のレンズ面LLPは上記の通信用の光学系の減衰領域形成用の光学系を構成する。
【0129】
図55は、フェルール200を装着した実施例7の光学素子100の側面図である。
【0130】
【0131】
図57は、
図55のB-B断面を示す図である。
図57に示すように、フェルール200は光学素子100に備わるフェルール勘合用ピンによって光学素子100に装着される。
【0132】
図58は、
図56のCで示す図分の拡大図である。
図58に示すように、フェルール200の装着によって通信用光ファイバ310が出射レンズ面131に位置合わせされ、加工光ファイバ320が追加のレンズ面LLPに位置合わせされている。フェルール220の端面は光学素子100の位置決め面140によって位置決めされる。位置決め面140は、出射レンズ面131及び追加のレンズ面LLPが備わる光学素子の面と平行である。光源410からの光は入射レンズ面111から入射し、光学素子100内を進行した後、出射レンズ面131によって通信用光ファイバ310の端面に集光される。加工用光ファイバ320からの光は追加のレンズ面LLPを通過した後、面120によって反射され、入射レンズ面111から入射して光学素子100内を進行する光の経路上の点に集光される。
【0133】
図59は、
図57のDで示す図分の拡大図である。
図59に示すように、フェルール200は光学素子100に備わるフェルール勘合用ピン150によって光学素子100に装着される。
【0134】
図60は、フェルール200を装着した実施例7の光学素子100の透視図である。
【0135】
各実施例の光学素子の特徴
表4は、各実施例の光学素子の特徴を示す表である。
【表4】
【0136】
実施例1及び2の光学素子において、加工用の追加のレンズ面は出射レンズ面と同じ光学素子の面上にある。したがって、両方のレンズ面の成形用の金型部品を一体的に加工することができ、両方のレンズ面の面間位置精度を向上させることができる。また、一つのフェルールを加工用光ファイバ及び通信用光ファイバに使用できるので、フェルールの位置決め用の構造も少ない。このため、製造コストを低くできる。
【0137】
実施例3の光学素子において、加工用の追加のレンズ面は光学素子の側面ではなく光学素子の上面に配置されるので光学素子の厚さ(高さ)を小さくすることができる。
【0138】
実施例4の光学素子において、加工用の追加のレンズ面は入射レンズ面と同じ光学素子の面上にある。したがって、両方のレンズ面の成形用の金型部品を一体的に加工することができ、両方のレンズ面の面間位置精度を向上させることができる。また、減衰領域作成時の透過率測定用の通信用光源に光ファイバを使用するので上記の光源の位置決めが容易である。
【0139】
実施例5の光学素子において、減衰領域作成用のレーザ光の経路は、光学素子の下面と平行、すなわち通信用光源の基板面と平行であり、通信用の光の経路と直交する。したがって、意図しない反射光が通信用の光の経路に入り透過率測定の精度が悪くなる可能性を低くすることができる。また、LCフェルールのような単芯光ファイバ用のフェルールに対応した光学素子の厚さ(高さ)を小さくすることができる。
【0140】
実施例6及び7の光学素子において、光学素子の下面と垂直、すなわち通信用光源の基板面と垂直な方向に延伸する光ファイバに対応することができる。
【要約】
光源として機能する発光素子と受光素子とを光学的に結合する光学素子であって、簡単に製造することができ、広い範囲の所望の透過率を高い精度で実現する光学素子を提供する。光源と該光源からの光を受け取る受光素子とを光学的に結合するように、該光源に対向するように構成された入射レンズ面(111)と該受光素子に対向するように構成された出射レンズ面(131)とを備え、該入射レンズ面(111)から入射して該出射レンズ面(131)に到達する光の減衰領域を備えた光学素子であって、該入射レンズ面(111)及び該出射レンズ面(131)以外の追加のレンズ面(LLP)及び該追加のレンズ面(LLP)用の別の光源の位置決め面をさらに備え、該追加のレンズ面(LLP)は、該追加のレンズ面(LLP)の光軸と該位置決め面を含む平面との交点の共役点が、該入射レンズ面(111)から入射して該出射レンズ面(131)に到達する光の経路上またはその近傍に位置するように構成されている。