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特許7265838コンバータ装置、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】コンバータ装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230420BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 F
H02M3/155 W
H02M7/06 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017253633
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019122073
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】相場 謙一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
(72)【発明者】
【氏名】林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎一
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山澤 宏
【審判官】中村 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-103077(JP,A)
【文献】特許第6871835(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00- 3/44
H02M 7/42- 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、
前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、
前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、
前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、
前記リアクトルの第2端子第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子と、
前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部が検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、
を備えるコンバータ装置。
【請求項2】
前記電圧検出部は、
前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出し、
前記制御信号生成部は、
前記電圧検出部が前記整流後の電圧波形を検出する期間に、検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記整流後の電圧波形を検出する期間に続く前記整流後の電圧波形が0となる期間に前記スイッチング素子に出力する、
請求項1に記載のコンバータ装置。
【請求項3】
流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、前記リアクトルの第2端子第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子とを備えるコンバータ装置による制御方法であって、
前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出することと、
検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較することと、
前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成することと、
を含むコンバータ装置による制御方法。
【請求項4】
流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、前記リアクトルの第2端子第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子とを備えるコンバータ装置のコンピュータに、
前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出することと、
検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較することと、
前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバータ装置は、さまざまな分野で利用されている。特許文献1には、コンバータ装置を空気調和機に適用し、装置の小型化及び簡素化を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-150622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているモータ駆動装置では、コンバータ装置におけるリアクトルには、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れる。そのため、特許文献1に記載されているモータ駆動装置においては、電源電圧の歪みによって、入力電流の歪みが大きくなってしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されているようなコンバータ装置におけるリアクトルのように、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れるコンバータ装置において、電源電圧の歪みによって生じる入力電流の歪みを低減することのできる技術が求められていた。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することのできるコンバータ装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、コンバータ装置は、交流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、前記リアクトルの第2端子に第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子と、前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部が検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備える
【0009】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様におけるコンバータ装置において、前記電圧検出部は、前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出し、前記制御信号生成部は、前記電圧検出部が前記整流後の電圧波形を検出する期間に、検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記制御信号を生成し、生成した前記制御信号を前記整流後の電圧波形を検出する期間に続く前記整流後の電圧波形が0となる期間に前記スイッチング素子に出力するものであってもよい。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、コンバータ装置による制御方法は、交流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、前記リアクトルの第2端子に第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子と、を備えるコンバータ装置による制御方法であって、前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出することと、検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較することと、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成することと、を含む
【0011】
本発明の第4の態様によれば、プログラムは、交流電源が出力する単一周波数成分に対する高調波成分を含む交流電圧を直流電圧に整流する整流回路と、前記整流回路の出力に第1端子が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの第2端子にアノードが接続されるダイオードと、前記ダイオードのカソードに第1端子が接続され、前記整流回路の基準電位となる端子に第2端子が接続されるキャパシタと、前記リアクトルの第2端子に第1端子が接続され、第2端子が前記整流回路の基準電位となる端子に接続され、第3端子に印加される制御信号に応じてオン状態とオフ状態とで切り替わることにより前記キャパシタへ流れる電流を制御するスイッチング素子と、を備えるコンバータ装置のコンピュータに、前記交流電源が出力する前記交流電圧の電圧波形、または前記交流電源が出力する前記交流電圧の整流後の半波の電圧波形を検出することと、検出した前記電圧波形の絶対値を取った波形と、基準となる所定の基準電圧波形である三角波の波形とを比較することと、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、前記三角波の波形が前記絶対値を取った波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成することにより前記スイッチング素子のオン状態とオフ状態との切り替わりを制御する制御信号を生成することと、を実行させる
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によるコンバータ装置、制御方法及びプログラムによれば、リアクトルの両端の差電圧に応じた電流が流れるコンバータ装置において、電源電圧の歪みによって生じる入力電流の歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態によるモータ駆動装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態によるコンバータ制御部の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態におけるスイッチング信号の生成を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態におけるスイッチング信号の生成を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態によるコンバータ装置の処理フローを示す図である。
図6】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
本発明の一実施形態によるモータ駆動装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるモータ駆動装置1の構成を示す図である。モータ駆動装置1は、交流電源4からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を三相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。モータ駆動装置1は、図1に示すように、コンバータ装置2と、インバータ装置3と、を備える。
【0015】
コンバータ装置2は、交流電源4からの交流電力を直流電力に変換してインバータ装置3に出力する装置である。コンバータ装置2は、整流回路5と、スイッチング回路10aと、スイッチング回路10bと、平滑コンデンサ12と、コンバータ制御部15と、電圧検出部30と、を備える。
整流回路5は、入力端子と、入力側の基準端子と、出力端子と、出力側の基準端子と、を備える。入力側の基準端子の電位は、入力端子における電位の基準となる電位である。出力側の基準端子の電位は、出力端子における電位の基準となる電位である。整流回路5は、交流電源4より入力された交流電力を直流電力に変換し、スイッチング回路10aと、スイッチング回路10bとに出力する。
【0016】
スイッチング回路10aは、平滑コンデンサ12に流れる電流を流し、インバータ装置3に入力される電圧を生成する。スイッチング回路10aは、リアクトル6aと、ダイオード7aと、スイッチング素子8aと、を備える。
【0017】
リアクトル6aは、第1端子と、第2端子と、を備える。
ダイオード7aは、アノード端子と、カソード端子と、を備える。
スイッチング素子8aは、第1端子と、第2端子と、第3端子と、を備える。スイッチング素子8aは、第1端子が受ける信号に応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第2端子から第3端子に流れる電流を制御し、スイッチング回路10aに流れる電流の値を変化させる。スイッチング素子8aとしては、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が挙げられる。スイッチング素子8aが例えばnMOSトランジスタである場合、スイッチング素子8aの第1端子はゲート端子であり、第2端子はソース端子であり、第3端子はドレイン端子である。
【0018】
スイッチング回路10bは、スイッチング回路10aと同様に、平滑コンデンサ12に電流を流し、インバータ装置3に入力される電圧を生成する。スイッチング回路10bは、リアクトル6bと、ダイオード7bと、スイッチング素子8bと、を備える。
【0019】
リアクトル6bは、第1端子と、第2端子と、を備える。
ダイオード7bは、アノード端子と、カソード端子と、を備える。
スイッチング素子8bは、スイッチング素子8aと同様に、第1端子と、第2端子と、第3端子と、を備える。スイッチング素子8bは、第1端子が受ける信号に応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第2端子から第3端子に流れる電流を制御し、スイッチング回路10bに流れる電流の値を変化させる。スイッチング素子8bとしては、電界効果トランジスタ、IGBT等が挙げられる。スイッチング素子8bが例えばnMOSトランジスタである場合、スイッチング素子8bの第1端子はゲート端子であり、第2端子はソース端子であり、第3端子はドレイン端子である。
【0020】
平滑コンデンサ12は、第1端子と、第2端子と、を備える。平滑コンデンサ12は、スイッチング回路10aとスイッチング回路10bの両方から電流を受ける。つまり、インバータ装置3に入力される電圧は、スイッチング回路10aとスイッチング回路10bの両方から平滑コンデンサ12に流れる電流値の総和によって決定される。
【0021】
電圧検出部30は、第1入力端子と、第2入力端子と、出力端子と、を備える。電圧検出部30は、交流電源4が整流回路5へ入力する入力電圧を検出する。電圧検出部30は、検出した入力電圧の情報をコンバータ制御部15に与える。
コンバータ制御部15は、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、を備える。コンバータ制御部15は、第1入力端子を介して、電圧検出部30から入力電圧の情報を受け、入力電圧波形を観測する。コンバータ制御部15は、第1出力端子を介してスイッチング回路10aを制御する。また、コンバータ制御部15は、第2出力端子を介して10bを制御する。
【0022】
交流電源4は、出力端子と、基準端子と、を備える。交流電源4は、コンバータ装置2に交流電力を供給する。
【0023】
ゼロクロス検出部17は、第1入力端子と、第2入力端子と、出力端子と、を備える。ゼロクロス検出部17は、第1入力端子と、第2入力端子とを介して、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス点は、交流電源4が出力する電圧がゼロボルトを交差する時刻を示し、その時刻がモータ駆動装置1の処理において基準の時刻となる。ゼロクロス検出部17は、セロクロス点の情報を含むゼロクロス信号を生成する。ゼロクロス検出部17は、出力端子を介してゼロクロス信号をコンバータ制御部15に出力する。
【0024】
インバータ装置3は、コンバータ装置2から出力された直流電力を三相交流電力に変換して圧縮機モータ20に出力する装置である。インバータ装置3は、ブリッジ回路18と、インバータ制御部19と、を備える。
ブリッジ回路18は、図1に示すように、入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、第3出力端子と、基準端子と、を備える。基準端子の電位は、入力端子、第1出力端子、第2出力端子及び第3出力端子のそれぞれにおける電位の基準となる電位である。ブリッジ回路18は、スイッチング素子181、182、183、184、185、186を備える。ブリッジ回路18は、スイッチング素子181と182、スイッチング素子183と184、スイッチング素子185と186のそれぞれが対を成して構成される。スイッチング素子181~186のそれぞれは、第1端子と、第2端子と、第3端子と、を備える。スイッチング素子181~186のそれぞれは、第1端子が受ける信号に応じて、オン状態となる期間とオフ状態となる期間とが切り替わることにより、第2端子から第3端子に流れる電流を制御し、圧縮機モータ20を駆動する三相交流電力を生成し、生成した三相交流電力を圧縮機モータ20に出力する。スイッチング素子181、182、183、184、185、186としては、パワー電界効果トランジスタ、IGBT等が挙げられる。
【0025】
インバータ制御部19は、第1出力端子と、第2出力端子と、第3出力端子と、第4出力端子と、第5出力端子と、第6出力端子と、を備える。インバータ制御部19の第1出力端子は、スイッチング素子181のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子181の第1端子に出力するための端子である。インバータ制御部19の第2出力端子は、スイッチング素子182のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子182の第1端子に出力するための端子である。インバータ制御部19の第3出力端子は、スイッチング素子183のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子183の第1端子に出力するための端子である。インバータ制御部19の第4出力端子は、スイッチング素子184のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子184の第1端子に出力するための端子である。インバータ制御部19の第5出力端子は、スイッチング素子185のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子185の第1端子に出力するための端子である。インバータ制御部19の第6出力端子は、スイッチング素子186のオン状態となる期間とオフ状態となる期間とを切り替えるゲート駆動信号をスイッチング素子186の第1端子に出力するための端子である。なお、図1では、インバータ制御部19の第1~第6出力端子を省略して示している。また、図1では、インバータ制御部19の第1~第6出力端子からブリッジ回路18に出力されるゲート駆動信号をまとめてゲート駆動信号Spwmと示している。インバータ制御部19は、ブリッジ回路18におけるスイッチング素子の開閉を制御する。インバータ制御部19は、例えば、図示していない上位装置から入力される要求回転数指令に基づいて、スイッチング素子181~186のゲート駆動信号Spwmを生成する。インバータ制御部19は、第1~第6出力端子を介して、ゲート駆動信号Spwmをブリッジ回路18に与える。なお、インバータ制御の具体的な手法の例としては、ベクトル制御、センサレスベクトル制御、V/F(Variable Frequency)制御、過変調制御、1パルス制御などが挙げられる。
【0026】
整流回路5の入力端子は、交流電源4の出力端子と、ゼロクロス検出部17の第1入力端子と、電圧検出部30の第1入力端子とに接続される。整流回路5の入力側の基準端子は、交流電源4の基準端子と、ゼロクロス検出部17の第2入力端子と、電圧検出部30の第2入力端子とに接続される。整流回路5の出力端子は、リアクトル6aの第1端子と、リアクトル6bの第1端子とに接続される。整流回路5の出力側の基準端子は、スイッチング素子8aの第3端子と、スイッチング素子8bの第3端子と、平滑コンデンサ12の第2端子と、インバータ装置3の基準端子(スイッチング素子182、184、186それぞれの第3端子)とに接続される。
リアクトル6aの第2端子は、ダイオード7aのアノード端子と、スイッチング素子8aの第2端子とに接続される。リアクトル6bの第2端子は、ダイオード7bのアノード端子と、スイッチング素子8bの第2端子とに接続される。
ダイオード7aのカソード端子は、ダイオード7bのカソード端子と、平滑コンデンサ12の第1端子と、インバータ装置3の入力端子(スイッチング素子181、183、185それぞれの第2端子)とに接続される。
スイッチング素子8aの第1端子は、コンバータ制御部15の第1出力端子に接続される。スイッチング素子8bの第1端子は、コンバータ制御部15の第2出力端子に接続される。
コンバータ制御部15の第1端子は、電圧検出部30の出力端子に接続される。コンバータ制御部15の第2端子は、ゼロクロス検出部17の出力端子に接続される。
スイッチング素子181の第1端子は、インバータ制御部19の第1出力端子に接続される。スイッチング素子182の第1端子は、インバータ制御部19の第2出力端子に接続される。スイッチング素子183の第1端子は、インバータ制御部19の第3出力端子に接続される。スイッチング素子184の第1端子は、インバータ制御部19の第4出力端子に接続される。スイッチング素子185の第1端子は、インバータ制御部19の第5出力端子に接続される。スイッチング素子186の第1端子は、インバータ制御部19の第6出力端子に接続される。
スイッチング素子181の第3端子は、スイッチング素子182の第2端子と、圧縮機モータ20の第1端子とに接続される。スイッチング素子183の第3端子は、スイッチング素子184の第2端子と、圧縮機モータ20の第2端子とに接続される。スイッチング素子185の第3端子は、スイッチング素子186の第2端子と、圧縮機モータ20の第1端子とに接続される。
【0027】
なお、する。インバータ制御部19が、上記のようなブリッジ回路18におけるスイッチング素子の開閉を制御する際に、特許文献1に記載されているように、直流電圧検出部、及び、モータ電流検出部が設けられてもよい。
直流電圧検出部は、ブリッジ回路18の入力直流電圧Vdcを検出する検出部である。
モータ電流検出部は、圧縮機モータ20に流れる各相電流iu、iv、iwを検出する検出部である。モータ電流検出部は、これらの検出値Vdc、iu、iv、iwをインバータ制御部19に入力する。なお、モータ電流検出部は、ブリッジ回路18と平滑コンデンサ12の間の負極側電力線に流れる電流を検出し、この検出信号から各相電流iu、iv、iwを取得するものであってもよい。
【0028】
図2は、コンバータ制御部15の機能ブロック図である。
コンバータ制御部15は、図2に示すように、波形観測部21、制御信号生成部22、記憶部23を備える。
【0029】
波形観測部21は、ゼロクロス検出部17が検出した交流電源4のゼロクロス点を示すゼロクロス信号をゼロクロス検出部17から受ける。波形観測部21は、電圧検出部30から入力電圧波形を受ける。波形観測部21は、ゼロクロス点を基準として、入力電圧波形を観測する。
【0030】
制御信号生成部22は、スイッチング回路10aを制御するための第1スイッチング信号Sg1、及び、スイッチング回路10bを制御するための第2スイッチング信号Sg2を生成する。
具体的には、制御信号生成部22は、図3(a)、(c)に示すように、所定の三角波を生成する。所定の三角波は、入力電圧波形から制御信号を生成する際の基準となる波形の信号である。そして、制御信号生成部22は、三角波と入力電圧波形とを比較し、その比較結果に基づいて、図3(b)、(d)に示すようなスイッチング素子8aを制御する第1スイッチング信号Sg1及びスイッチング素子8bを制御する第2スイッチング信号Sg2を生成する。
具体的には、制御信号生成部22は、例えば、図4(a)に示す交流電源4の基本波に3次高調波歪みが重畳された入力電圧波形について、図4(b)に示すように絶対値をとり、その絶対値を基準波形(三角波)と比較し、基準波形が入力電圧波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成し、基準波形が入力電圧波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成する。制御信号生成部22は、このように入力電流歪みの原因となる入力電圧の歪みが含まれている入力電圧波形を用いて第1スイッチング信号Sg1及び第2スイッチング信号Sg2を生成している。そのため、第1スイッチング信号Sg1及び第2スイッチング信号Sg2には、入力電流歪みについての情報が反映されている。制御信号生成部22は、第1スイッチング信号Sg1でスイッチング素子8aを制御し、第2スイッチング信号Sg2でスイッチング素子8bを制御することにより、入力電流における歪みを打ち消すことができる。
なお、ここで示した入力電圧波形の例は、交流電源4の基本波に3次高調波歪みが重畳された場合を示したが、実際には、5次高調波、7次高調波、9次高調波などの高調波歪みが複雑に重畳され時々刻々と変化する。なお、図3に示した交流電源4の基本波に3次高調波歪みが重畳された波形は、3次高調波歪み成分が多い極端な例であり、一般的には、基本波に対する3次高調波歪み成分の割合はこの例よりも少ない。したがって、入力電圧波形は、図3に示す波形に比べて基本波のみの場合に近い波形となる。
記憶部23は、コンバータ制御部15が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
【0031】
次に、本発明の一実施形態によるモータ駆動装置1の処理について説明する。
ここでは、図5に示すコンバータ装置2の処理フローについて説明する。
なお、図5に示すコンバータ装置2の処理は、入力電流が流れているときに行う処理である。
【0032】
ゼロクロス検出部17は、第1入力端子と、第2入力端子とを介して、交流電源4が出力する電圧のゼロクロス点を検出する(ステップS1)。ゼロクロス検出部17は、ゼロクロス点の情報を含むゼロクロス信号を生成する(ステップS2)。ゼロクロス検出部17は、出力端子を介してゼロクロス信号をコンバータ制御部15に出力する。
【0033】
波形観測部21は、ゼロクロス検出部17からゼロクロス信号を受ける。波形観測部21は、受けたゼロクロス信号からゼロクロス点を特定する(ステップS3)。波形観測部21は、電圧検出部30から入力電圧を受ける(ステップS4)。波形観測部21は、ゼロクロス点を基準に受けた入力電圧波形を観測する。波形観測部21は、観測した入力電圧波形を制御信号生成部22に出力する。このとき、波形観測部21が制御信号生成部22に出力する入力電圧波形には、ゼロクロス点の情報が含まれている。
【0034】
制御信号生成部22は、基準波形となる所定の三角波を生成する(ステップS5)。制御信号生成部22は、波形観測部21から入力電圧波形を受ける。制御信号生成部22は、入力電圧波形に含まれるゼロクロス点を基準に生成した三角波と入力電圧波形のタイミングを合わせて、入力電圧波形と三角波とを比較する(ステップS6)。制御信号生成部22は、その比較結果に基づいて、スイッチング素子8aを制御する第1スイッチング信号Sg1及びスイッチング素子8bを制御する第2スイッチング信号Sg2を生成する(ステップS7)。具体的には、制御信号生成部22は、三角波が入力電圧波形よりも大きい場合にHighレベルのスイッチング信号を生成する。また、制御信号生成部22は、三角波が入力電圧波形以下の場合にLowレベルのスイッチング信号を生成する。
制御信号生成部22は、生成した第1スイッチング信号Sg1をスイッチング素子8aに出力する。また、制御信号生成部22は、生成した第2スイッチング素子Sg2をスイッチング素子8bに出力する。
スイッチング素子8aは、第1スイッチング信号Sg1に応じてオン状態またはオフ状態となる。また、スイッチング素子8bは、第2スイッチング信号Sg2に応じてオン状態またはオフ状態となる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態によるモータ駆動装置1について説明した。
本発明の一実施形態によるモータ駆動装置1において、制御信号生成部22(制御部)は、交流電源4から整流回路に供給される入力電圧波形と、基準波形となる三角波とを比較する。制御信号生成部22は、その比較結果に基づいて、第1スイッチング信号及び第2スイッチング信号を生成する。
入力電流歪みは、入力電圧波形の歪みが原因となって生じる。そのため、制御信号生成部22は、入力電圧波形を用いることで、入力電流歪みについての情報が反映された第1スイッチング信号及び第2スイッチング信号を、入力電圧波形と基準波形となる三角波との比較結果に応じて直ちに生成することができる。
【0036】
なお、本発明の一実施形態では、電圧検出部30は、入力電圧波形として整流回路5の入力における電圧波形を検出した例を示した。しかしながら、本発明の別の実施形態では、電圧検出部30は、入力電圧波形として整流回路5の出力において電圧波形を検出するものであってもよい。電圧検出部30が、入力電圧波形として整流回路5の出力において電圧波形を検出する場合には、入力電圧波形は、半波波形となる。この場合、制御信号生成部22は、例えば、半波波形を検出する期間に生成したスイッチング信号を入力電圧波形を検出しない期間にも繰り返し適用すればよい。
【0037】
なお、本発明の別の実施形態では、例えば、波形観測部21が入力電圧波形について、FFT(Fast Fourier Transform)演算などを行い、入力電圧信号を周波数成分ごとに分解した上で、入力電流歪みの補正の対象とする周波数成分の信号のみを合成した信号を制御信号生成部22に出力する。そして、制御信号生成部22は、入力電流歪みの補正の対象とする周波数成分の信号のみを合成した信号についてスイッチング信号を生成してもよい。
また、波形観測部21が入力電圧波形について、FFT(Fast Fourier Transform)演算などを行い、周波数成分ごとに分解した入力電圧信号を歪み補正以外の処理に有効利用するものであってもよい。
【0038】
なお、本発明の一実施形態では、交流電源4を単相の電源として例を示したが、本発明の別の実施形態では交流電源4は三相の電源であってもよい。
【0039】
なお、本発明の各実施形態における記憶部23、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部23、その他の記憶部は、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0040】
なお、本発明の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
【0041】
本発明の実施形態における記憶部23や記憶装置(レジスタ、ラッチを含む)のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部23や記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0042】
本発明の実施形態について説明したが、上述のコンバータ制御部15、インバータ制御部19、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ50は、図6に示すように、CPU60、メインメモリ70、ストレージ80、インターフェース90を備える。
例えば、上述のコンバータ制御部15、インバータ制御部19、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ50に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ80に記憶されている。CPU60は、プログラムをストレージ80から読み出してメインメモリ70に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU60は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ70に確保する。
【0043】
ストレージ80の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ80は、コンピュータ50のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース90または通信回線を介してコンピュータ50に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ50に配信される場合、配信を受けたコンピュータ50が当該プログラムをメインメモリ70に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ80は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0044】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、発明の範囲を限定しない。これらの実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・モータ駆動装置
2・・・コンバータ装置
3・・・インバータ装置
4・・・交流電源
5・・・整流回路
6a、6b・・・リアクトル
7a、7b・・・ダイオード
8a、8b・・・スイッチング素子
10a、10b・・・スイッチング回路
12・・・平滑コンデンサ
15・・・コンバータ制御部
17・・・ゼロクロス検出部
21・・・波形観測部
22・・・制御信号生成部
23・・・記憶部
30・・・電圧検出部
50・・・コンピュータ
60・・・CPU
70・・・メインメモリ
80・・・ストレージ
90・・・インターフェース
Lp・・・正極母線
図1
図2
図3
図4
図5
図6