(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ及びワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
B25J15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018114080
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】三島 淳司
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055425(JP,A)
【文献】実開昭62-061489(JP,U)
【文献】特開平02-116142(JP,A)
【文献】特開平05-228781(JP,A)
【文献】特開平03-066507(JP,A)
【文献】特開2000-296421(JP,A)
【文献】米国特許第04523100(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-19/02
B23B 39/04
B23Q 11/00
G01N 21/86
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームの終端部に取り付けられた状態でワークに加工を行うエンドエフェクタであって、
ワークに加工を行う工具を保持するための工具保持手段と、
工具保持手段に保持された工具をワークに当接する加工位置へと送る工具送り手段と、
ワークにおける被加工部の近傍を保持するためのワーク保持手段と
を備
え、
工具保持手段とワーク保持手段とが共通のハウジングに支持
されるとともに、
ワーク保持手段が、
ワークにおける、工具保持手段側に当接する第一のクランプ爪と、
ワークにおける、工具保持手段とは反対側に当接する第二のクランプ爪と、
第一のクランプ爪と第二のクランプ爪との双方を近づく向きに移動させることにより、第一のクランプ爪と第二のクランプ爪とでワークがクランプされた状態とするクランプ爪駆動手段と、
ハウジングに対する第二のクランプ爪の位置をロックするブレーキ手段と
を備えたものとされることにより、
工具がワークに加工を施すワーク加工時において、ワークから工具を介して工具保持手段に伝わる加工反力と、工具からワークを介してワーク保持手段に伝わる加工力とが、エンドエフェクタ内で相殺されるようにした
ことを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
第一のクランプ爪に、加工位置へと送られる工具を挿通させるための工具挿通孔が設けられた請求項1記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
第二のクランプ爪における、第一のクランプ爪に対向する側に設けられたエア送出口に対してエアを供給するエア供給手段と、
エア送出口に供給されるエアの圧力を検知するエア圧力検知手段と、
エア圧力検知手段が検知したエアの圧力によって、ワーク保持手段にワークが保持されているか否かを判別するワーク保持判別手段と
を備えた請求項2記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
第一のクランプ爪における工具挿通孔と、第二のクランプ爪におけるエア送出口とが、工具送り手段による工具送り方向で重なる位置に配された請求項3記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載のエンドエフェクタをロボットアームの終端部に取り付けてワークの加工を行うワーク加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームの終端部に取り付けられるエンドエフェクタと、このエンドエフェクタを用いてワークに加工を行うワーク加工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
多関節ロボット(ロボットアーム)に代表される産業用ロボットは、工場の自動化に欠かせない存在となっている。ロボットアームは、人間の腕のように、その終端部(先端部)を高い自由度で三次元的に移動させることができる。ロボットアームは、ワークの移送や姿勢変更等に用いられるほか、ワークに加工を施す際にも用いられる。通常、ロボットアームの終端部には、「エンドエフェクタ」と呼ばれる装置が取り付けられる。
【0003】
このエンドエフェクタは、ロボットアームで行う作業に応じて、別の種類のものに交換される。例えば、ロボットアームでワークの移送や姿勢変更等を行う場合には、グリッパ型や多指ハンド型のエンドエフェクタをロボットアームに取り付け、ロボットアームでワークに穿孔加工を行う場合には、ドリル型のエンドエフェクタをロボットアームに取り付け、ロボットアームでワークにフライス加工を行う場合には、エンドミル型のエンドエフェクタをロボットアームに取り付けるといった具合である。特許文献1の
図1における穿孔装置1や、特許文献2の
図5におけるエンドエフェクタ59は、ドリル型のエンドエフェクタに該当するもの(特許文献1の段落0025及び特許文献2の段落0021を参照。)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-226765号公報
【文献】特開2008-110438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットアームは、その始端部(基端部)と終端部(先端部)との間に複数の関節が介在するため、終端部の移動の自由度が高く、汎用性に優れるという利点を有している。しかし、ロボットアームは、その関節の多さから、機械的な剛性が低いという欠点も有している。このため、ロボットアームの終端部に取り付けたエンドエフェクタでワークに加工を施す場合には、ワークからエンドエフェクタに及ぼされる加工反力(エンドエフェクタがワークに及ぼした加工力の反力)によって、エンドエフェクタの位置がぶれてしまい、加工精度が低下しやすい傾向にある。
【0006】
したがって、ロボットアームに取り付けたエンドエフェクタによって、精度が要求される加工を施す場合には、試験加工を事前に行ってそのときのエンドエフェクタのぶれ具合を調べ、本加工の際には、そのぶれ具合を考慮した加工パラメータに設定しなおす必要がある。ところが、加工反力に起因するエンドエフェクタのぶれ具合は、ワークの形態や材質によって変化する。よって、上記の試験加工は、ワークの種類が切り替わるたびに実行する必要があり、時間と手間を要する。加えて、試験加工は、本加工と同じワークを用いて行う必要があるため、試験加工でワークが消費されるこの手法は、非経済的である。ワークが高価な材料である場合には、特に非経済的になる。
【0007】
この点、上記の特許文献2の
図5におけるエンドエフェクタ59は、同文献の
図1に示されるように、それに装着されたドリル26(工具)でワークW1に穿孔(加工)を行う際に、基台24側(ドリル26側)に設けたドリルブッシュ29を、ワークW1側に設けた位置決めブッシュ35と嵌合させることで、ドリル26の先端に生じる加工反力でドリル26がワークW1から逃げないようにしている(同文献の段落0009を参照。)。
【0008】
しかし、特許文献2の上記の方法では、ワークW1に加工を行うたびに、ドリルブッシュ29と位置決めブッシュ35とを嵌合させる必要がある。このため、加工を繰り返すうちに、ドリルブッシュ29や位置決めブッシュ35に摩耗が生じ、加工精度が低下する虞がある。加えて、特許文献2の上記の方法では、ワークW1における加工する場所ごとに位置決めブッシュ35を設ける必要がある。このため、加工箇所が多い場合には、位置決めブッシュ35も多く設ける必要があるし、それらの加工態様が異なる場合には、その加工態様に応じた複数種類の位置決めブッシュ35を用意しておく必要がある。また、ワークW1が切り替わる場合には、そのワークW1に応じた位置決めブッシュ35を用意しておく必要もある。このため、特許文献2の上記の方法も、経済性に優れているとは言い難い。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、エンドエフェクタに装着された工具に加工反力が加わっても、エンドエフェクタの位置がぶれにくくして、加工精度を維持することができるエンドエフェクタを提供するものである。また、このエンドエフェクタを用いてワークに加工を行うワーク加工方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
ロボットアームの終端部に取り付けられた状態でワークに加工を行うエンドエフェクタであって、
ワークに加工を行う工具を保持するための工具保持手段と、
工具保持手段に保持された工具をワークに当接する加工位置へと送る工具送り手段と、
ワークを保持するためのワーク保持手段と
を備えるとともに、
工具保持手段とワーク保持手段とが共通のハウジングに支持されることにより、
工具がワークに加工を施すワーク加工時において、ワークから工具を介して工具保持手段に伝わる加工反力と、工具からワークを介してワーク保持手段に伝わる加工力とが、エンドエフェクタ内で相殺されるようにした
ことを特徴とするエンドエフェクタ
を提供することによって解決される。
【0011】
本発明のエンドエフェクタにおいては、
ワーク保持手段を、
ワークの一側に当接する第一のクランプ爪と、
ワークの他側に当接する第二のクランプ爪と、
第一のクランプ爪と第二のクランプ爪とを近づく向きに相対的に移動させることにより、第一のクランプ爪と第二のクランプ爪とでワークがクランプされた状態とするクランプ爪駆動手段と、
を備えたものとして、
第一のクランプ爪に、加工位置へと送られる工具を挿通させるための工具挿通孔を設ける
ことも好ましい。
【0012】
このときには、
第二のクランプ爪における、第一のクランプ爪に対向する側に設けられたエア送出口に対してエアを供給するエア供給手段と、
エア送出口に供給されるエアの圧力を検知するエア圧力検知手段と、
エア圧力検知手段が検知したエアの圧力によって、ワーク保持手段にワークが保持されているか否かを判別するワーク保持判別手段と
を備えることが好ましい。
【0013】
またこのときには、第一のクランプ爪における工具挿通孔と、第二のクランプ爪におけるエア送出口とを、工具送り手段による工具送り方向で重なる位置に配することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、エンドエフェクタに、工具保持手段や工具送り手段だけでなく、ワーク保持手段も設けて、工具保持手段とワーク保持手段とを共通のハウジングに支持することによって、ワークから工具を介して工具保持手段に伝わる加工反力と、工具からワークを介してワーク保持手段に伝わる加工力とが、エンドエフェクタ内で相殺されるようにすることが可能になる。上記の加工力と上記の加工反力とは、作用反作用の法則により、逆向きで大きさが等しくなる。このため、ワーク加工時のエンドエフェクタは、加工力や加工反力が及ぼされていない場合と同様の状態であるとみなすことができる。したがって、上記の加工力や上記の加工反力が、エンドエフェクタからロボットアームの終端部に伝わらないようにして、エンドエフェクタの位置のぶれを抑えることが可能になる。よって、ワークの加工精度を維持することが可能になる。
【0015】
また、第一のクランプ爪に、加工位置へと送られる工具を挿通させるための工具挿通孔を設けることによって、ワークにおける工具で加工される部分(被加工部)の周辺を第一のクランプ爪で押さえることが可能になる。このため、ワークが変形しやすい材質である場合でも、ワーク加工時におけるワークの変形を最小限に抑え、加工精度を維持することが可能になる。加えて、ワークが繊維強化複合材である場合には、層間剥離等の加工不良が生じやすいところ、ワークにおける被加工部の周辺を第一のクランプ爪で押さえることによって、このような加工不良がワークに生じにくくすることも可能になる。
【0016】
さらに、第一のクランプ爪における工具挿通孔と、第二のクランプ爪におけるエア送出口とを工具送り方向で重なる位置に配することで、エア供給手段からエア送出口に供給されるエア(ワーク保持手段にワークが保持されているか否かの検出に用いられるエア)を有効に活用することが可能になる。すなわち、工具挿通孔とエア送出口とを、工具送り方向で重なる位置に配すると、工具(ドリル等)による加工(穿孔等)でワークが貫通したとき(ワークに貫通孔が加工されたとき)には、エア送出口に供給されたエアが上記の貫通孔と工具挿通孔とを通じて第一のクランプ爪の外面側に抜けるようになるため、エア送出口に供給されるエアの圧力が低下する。この圧力の低下をエア圧力検知手段で検知するようにすれば、ワークの加工完了を検出することが可能になる。加えて、上記の貫通孔や工具挿通孔を通り抜けるエアによって、工具を冷却することや、工具やワークに付着した加工屑を除去することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ワーク保持手段にワークを保持させる前のエンドエフェクタを示した図である。
【
図2】ワーク保持手段にワークを保持させた後のエンドエフェクタを示した図である。
【
図3】工具がワークに当接したときのエンドエフェクタを示した図である。
【
図4】ワークに貫通孔が加工されたときのエンドエフェクタを示した図である。
【
図5】ワーク保持手段によるワークの保持を解除した後のエンドエフェクタを示した図である。
【
図6】エア供給手段、エア圧力検知手段及びワーク保持判別手段を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.エンドエフェクタの概要
本発明のエンドエフェクタの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、ワーク保持手段40にワーク300を保持させる前のエンドエフェクタ1を示した図である。
図2は、ワーク保持手段40にワーク300を保持させた後のエンドエフェクタ1を示した図である。
図3は、工具100がワーク300に当接したときのエンドエフェクタ1を示した図である。
図4は、ワーク300に貫通孔301が加工されたときのエンドエフェクタ1を示した図である。
図5は、ワーク保持手段40によるワーク300の保持を解除した後のエンドエフェクタ1を示した図である。
図1~
図4においては、エンドエフェクタ1の一部を、工具の軸線L
1を含む平面で切断した断面図で示している。
【0019】
本実施態様のエンドエフェクタ1は、
図1に示すように、ロボットアーム200の終端部(先端部)に取り付けて使用するものとなっており、工具保持手段10と、工具駆動手段20と、工具送り手段30と、ワーク保持手段40と、ハウジング50とを備えたものとなっている。このエンドエフェクタ1は、
図1~5に示す段階を経て、ワーク300に所定の加工を施すものとなっている。
【0020】
すなわち、
[段階1] ロボットアーム200を駆動して、エンドエフェクタ1を
図1に示すワーク300の位置(ワーク保持手段40の第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42との隙間内にワーク300が挿入される位置)に移動させる。
[段階2]
図2に示すように、ワーク保持手段40でワーク300を保持(
図2の例では、ワーク保持手段40における第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とでワーク300を挟持)した状態とする。
[段階3] 工具送り手段30を駆動して工具100をワーク300側に送り、
図3に示すように、工具100をワーク300に当接する位置(加工開始位置)まで移動させる。
[段階4] 工具送り手段30を駆動したままで工具100をワーク300側に押し付けながら、工具駆動手段20を駆動して、ワーク300に所定の加工(
図4の例ではワーク300に貫通孔301を穿孔加工)をする。
[段階5]
図5に示すように、ワーク保持手段40によるワーク300の保持を解除して、ワーク300を取り出す。
という段階を経て、ワーク300に所定の加工を施すものとなっている。
【0021】
以下、本実施態様のエンドエフェクタ1を構成する各部材について、詳しく説明する。
【0022】
2.工具保持手段
工具保持手段10は、エンドエフェクタ1に工具100を保持させるためのものとなっている。本実施態様のエンドエフェクタ1は、工具100としてドリルを保持するものとなっており、ワーク300に貫通孔301(
図5)を加工(穿孔)するものとなっている。工具保持手段10に保持させる工具100の種類は、ドリルに限定されず、エンドミルやドライバー等とすることもできる。工具100をエンドミルとすれば、ワーク300にフライス加工を施すことができるし、工具100をドライバーとすれば、ワーク300にネジ止め加工を施すことができる。このように、工具保持手段10に保持させる工具100は、ワーク300に行う加工に応じて適宜変更することができる。
【0023】
工具保持手段10は、所望の工具100を保持できるのであれば、その具体的な機構は限定されない。工具保持手段10としては、チャック式のものや、螺合式のものや、クランプ式のもの等が例示される。工具100を、ドリルやエンドミルやドライバー等、回転駆動される軸状のものとする場合には、コレットチャックを工具保持手段10として好適に採用することができる。コレットチャックは、軸状の工具100の外周部を大きな面積で把持する構造であるため、軸状の工具100をしっかりと固定することができるだけでなく、工具100の外周部に加わる圧力を分散して工具100を傷つきにくくすることも可能である。本実施態様のエンドエフェクタ1においても、工具保持手段10としてコレットチャックを採用している。
【0024】
3.工具駆動手段
工具駆動手段20は、工具100を駆動するためのものとなっている。既に述べたように、本実施態様のエンドエフェクタ1では、工具100としてドリルを装着するところ、工具駆動手段20は、ドリル100を回転駆動(より厳密には、ドリル100を保持する工具保持手段10を回転駆動)するためのものとなっている。
図3に示すように、ドリル100をワーク300に当接させ、ドリル100をワーク300に押し付けながら工具駆動手段20を駆動すると、ドリル100が回転し、ワーク300に穿孔加工が施される。本実施態様のエンドエフェクタ1のように、工具100を回転駆動する場合には、工具駆動手段20として、ステッピングモータやサーボモータ等のモータを好適に用いることができる。
【0025】
4.工具送り手段
工具送り手段30は、工具保持手段10に保持された工具100をワーク300に当接する加工位置(
図3を参照)へと送るためのものとなっている。すなわち、ロボットアーム200は、エンドエフェクタ1を、
図1に示す位置(ワーク保持手段40でワーク300を保持できる位置)まで移動させるものの、その後、
図2に示すように、ワーク保持手段40がワーク300を保持した状態となるため、エンドエフェクタ1は、ワーク300に対して相対的に動くことができない状態となる。このため、ロボットアーム200を動作させることによっては、ワーク300に対して工具100を相対的に移動させることができない。この点、工具送り手段30は、ワーク保持手段40に対して工具保持手段10を相対的に移動させることによって、工具保持手段10に保持された工具100を加工位置に送るものとなっている。
【0026】
工具送り手段30の具体的な機構は、工具100の種類によっても異なり、特に限定されない。本実施態様のエンドエフェクタ1のように、工具100としてドリルを用いる場合には、ドリル100の先端部をワーク300に対して押し付ける必要がある。このため、工具送り手段30は、工具100をその軸線L1に平行な方向にスライドできる機構のものとされる。このような機構としては、例えば、ボールネジ機構が挙げられる。ボールネジ機構は、大きなトルクを出力することができるだけでなく、位置決め精度が高く、本発明のエンドエフェクタ1における工具送り手段30として好適に用いることができる。本実施態様のエンドエフェクタ1でも、工具送り手段30としてボールネジ機構を採用している。
【0027】
すなわち、
図1に示すように、工具送り手段30を、モータ31と、ネジ軸32と、ナット部材33とで構成している。モータ31は、ステッピングモータやサーボモータ等が用いられる。ネジ軸32は、その外周部にネジ溝が切られている。このネジ軸32は、モータ31が回転駆動されるとその軸線L
2を中心として回転するようになっている。ナット部材33は、その一側(
図1では右端側)をネジ軸32に螺合されており、その他側(
図1では左端側)を工具100側の部材(本実施態様のエンドエフェクタ1においては、工具駆動手段20のケース)に固定されている。
【0028】
このため、モータ31が回転駆動されてネジ軸32が回転すると、ナット部材33がネジ軸32の軸線L2に平行な方向(工具100の軸線L1に平行な方向)にスライドすることにより、工具駆動手段20、工具保持手段10及び工具100が、ナット部材33とともに工具100の軸線L1に平行な方向にスライドするようになっている。ネジ軸32が軸線L2を中心として一方に回転すると、工具100は、ワーク300に近づく向きにスライドし、ネジ軸32が軸線L2を中心として他方に回転すると、工具100は、ワーク300から遠ざかる向きにスライドする。
【0029】
工具駆動手段20の外周部は、ハウジング50に設けられたガイド孔51に挿入された状態となっている。このため、ネジ軸32が軸線L2を中心に回転して、ナット部材33に回転力が加わっても、工具駆動手段20を含む工具100側の部材は、ネジ軸32に共回りしないようになっている。これにより、モータ31及びネジ軸32の回転運動が、工具100の軸線L1に平行な方向の直線運動に変換されるようになっている。
【0030】
ところで、工具100として、エンドミル等を用いることができることについては、既に述べた通りであるが、工具100をエンドミルとした場合、工具100は、軸線L1に平行な方向だけでなく、軸線L1に垂直な方向に移動させる方法もある。
【0031】
5.ワーク保持手段
ワーク保持手段40は、ワーク300を保持するためのものとなっている。本発明のエンドエフェクタ1は、上記の工具保持手段10や工具駆動手段20や工具送り手段30に加えて、このワーク保持手段40もエンドエフェクタ1自身に設けたことを最大の特徴とするものとなっている。これにより、
図3に示すように、工具100でワーク300に加工を施す際(ワーク加工時)に、ワーク300から工具100を介して工具保持手段10に伝わる加工反力F
2と、工具100からワーク300を介してワーク保持手段40に伝わる加工力F
1とを、エンドエフェクタ1内で相殺させることができるようになっている。
【0032】
すなわち、ワーク加工時において、工具保持手段10には、加工反力F
2が加わるため、工具保持手段10は、
図3における紙面上側に移動しようとする。一方、ワーク加工時において、ワーク保持手段40には、加工力F
1が加わるため、ワーク保持手段40は、
図3における紙面下側に移動しようとする。ところが、工具保持手段10とワーク保持手段40とは、ハウジング50等を介して互いに連結された状態となっており、その連結された部分では、加工反力F
2に起因する
図3の紙面上向きの力と、加工力F
1に起因する
図3の紙面下向きの力との双方が加わるようになっている。既に述べたように、加工反力F
2と加工力F
1は、逆向きで大きさが等しくなる。このため、エンドエフェクタ1には、見掛け上、加工反力F
2や加工力F
1が加わっていないとみなすことができる。
【0033】
換言すると、本実施態様のエンドエフェクタ1では、加工反力F2を、エンドエフェクタ1に加わる外力ではなく、エンドエフェクタ1内で加工力F1に相殺される内力とみなすことができる。したがって、工具100をワーク300に対して強い力で押し付けても(加工力F1を強くして加工反力F2が強くなっても)、その加工反力F2がロボットアーム200の終端部には伝わりにくく、ロボットアーム200に撓みや揺れ等が生じにくくなっている。よって、ワーク加工時におけるエンドエフェクタ1の位置のぶれを抑えて、ワーク300を高い加工精度で加工することができるようになっている。加えて、本実施態様のエンドエフェクタ1を用いると、ロボットアーム200の機械的な剛性がそれ程要求されなくなるため、ロボットアーム200を、重量の小さな小型のもので置き換えることもできる。このため、省スペース化を図るだけでなく、ロボットアーム200導入のイニシャルコストを抑えることもできる。
【0034】
ワーク保持手段40の具体的な機構は、ワーク300の形態等によっても異なり、特に限定されない。ワーク保持手段40としては、クランプ式のものや、チャック式のものや、螺合式のもの等が例示される。本実施態様のエンドエフェクタ1においては、
図1に示すように、ワーク保持手段40を、第一のクランプ爪41と、第二のクランプ爪42と、クランプ爪駆動手段43とで構成している。
【0035】
第一のクランプ爪41は、ワーク300の一側(
図1の上側)に当接してワーク300を一側から押さえるものとなっている。第二のクランプ爪42は、ワーク300の他側(
図1の下側)に当接してワーク300を他側から抑えるものとなっている。クランプ爪駆動手段43は、第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とを近づく向きに相対的に移動させることにより、第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とでワーク300がクランプ(挟持)された状態とするものとなっている。
【0036】
ところで、ワーク300が樹脂板や金属薄板である場合には、工具100から加工力を受けたワーク300に撓み等の変形が生じてしまい、加工精度が低下する虞がある。また、ワーク300が繊維強化複合材である場合には、層間剥離等の加工不良が生じる虞がある。このように、変形や加工不良が生じやすいワーク300に加工を施す場合でも、ワーク300の被加工部(工具100で加工される部分)の近傍をワーク保持手段40で均等に保持するようにすれば、上記の不具合が生じにくくすることができる。
【0037】
この点、本実施態様のエンドエフェクタ1では、
図2及び
図3に示すように、第一のクランプ爪41に、加工位置へと送られる工具100を挿通させるための工具挿通孔41aを設けており、ワーク300の被加工部の周囲を第一のクランプ爪41で押さえる(第一のクランプ爪41における工具挿通孔41aの周囲でワーク300を押さえる)ことができるようにしている。これにより、ワーク加工時におけるワーク300の被加工部の変形を最小限に抑えて加工精度を維持するだけでなく、ワーク300に層間剥離等の加工不良が生じないように、ワーク300の被加工部の近傍を均等にしっかりと押さえることが可能となっている。
【0038】
また、本実施態様のエンドエフェクタ1においては、ワーク保持手段40にワーク300が保持されているか否かを判別できるようにするため、以下の構成を採用している。すなわち、
図2に示すように、第二のクランプ爪42における、第一のクランプ爪41に対向する側にエア送出口42aを設けている。このエア送出口42aからは、第二のクランプ爪42の内部に設けられたエア流路42bを流れるエアが送出されるようになっている。エア流路42bを流れるエアは、
図6に示すように、エア供給手段60から供給されるようになっている。エア流路42bには、エア圧力検知手段70が設けられており、エア圧力検知手段70は、ワーク保持判別手段80に接続されている。
図6は、エア供給手段60、エア圧力検知手段70及びワーク保持判別手段80を示したブロック図である。
【0039】
エア供給手段60は、既に述べたように、エア流路42bにエアを供給するためのものとなっている。エア供給手段60としては、コンプレッサ等が例示される。エア供給手段60は、小型で軽量なものであれば、ロボットアーム200の終端部(先端部)にエンドエフェクタ1とともに取り付けることができる。しかし、エア供給手段60の重量が大きい場合には、ロボットアーム200の終端部にかかる重量が大きくなり、ロボットアーム200の関節にかかる負荷が大きくなる虞がある。また、エア供給手段60は、振動を発生しやすいものであるところ、この振動がワーク300の加工精度に悪影響を及ぼす虞もある。
【0040】
このため、エア供給手段60は、ロボットアーム200に取り付けないようにする(ロボットアーム200とは独立した別の箇所に設ける)ことが好ましい。この場合には、エア供給路42bを、エンドエフェクタ1から延長して設けるとともに、その延長した部分を、ゴムチューブ等の可撓性を有する素材で形成し、その可撓性を有する部分を、エア供給手段60に接続するようにすると、エア供給手段60の振動がエンドエフェクタ1やロボットアーム200に伝わらないようにすることができる。エア供給路42bにおける延長した部分は、ロボットアーム200の終端部から垂れ下がった状態に設けると、その垂れ下がった部分がワーク300の加工等の邪魔になる虞があるため、ロボットアーム200に沿わせた状態で取り付けることが好ましい。
【0041】
エア圧力検知手段70は、エア供給路42bを通じてエア送出口42aに供給されるエアの圧力を検知するためのものとなっている。エア圧力検知手段70は、各種のエア用の圧力センサを用いることができる。エア圧力検知手段70が検知したエアの圧力は、ワーク保持判別手段80に入力されるようになっている。
【0042】
ワーク保持判別手段80は、エア圧力検知手段70が検知したエアの圧力から、ワーク保持手段40にワーク300が保持されているか否かを判別するものとなっている。すなわち、
図2に示すように、ワーク保持手段40にワーク300が保持されている場合には、エア送出口42aがワーク300によって塞がれた状態となるため、エア流路42bを流れるエアの圧力は高くなる。一方、
図1に示すように、ワーク保持手段40にワーク300が保持されていない場合には、エア送出口42aがワーク300によって塞がれておらず、エア送出口42aに達したエアは、エア送出口42aから外部へと抜け出ることができる。このため、エア流路42bを流れるエアの圧力は低くなる。
【0043】
したがって、エア流路42bを流れるエアの圧力が所定値よりも低い場合には、ワーク保持手段40にワーク300が保持されていないと判断し、エア流路42bを流れるエアの圧力が所定値よりも高い場合には、ワーク保持手段40にワーク300が保持されていると判断することによって、ワーク保持手段40にワーク300が保持されているか否かを高い精度で判別することができる。ワーク保持判別手段80は、通常、コンピュータ(プログラマブルコントローラやパソコン等)で駆動されるプログラムや、所望の動作を行うように設計された電子回路等で実現される。
【0044】
ただし、
図2に示すように、ワーク保持手段40にワーク300が保持されているにもかかわらず、エア送出口42aとワーク300との隙間からエアが漏れることがあると、ワーク保持の判別制度が低下する。この点、本実施態様のエンドエフェクタ1では、
図2に示すように、第二のクランプ爪42におけるエア送出口42aの周囲に、ゴムやエラストマー等の弾性素材を環状に形成した気密リング42cを取り付けており、エア送出口42aとワーク300との隙間からエアが漏れないようにしている。この気密リング42cは、第二のクランプ爪42でワーク300が傷つかないようにする緩衝材(緩衝リング)としての機能も発揮する。このため、第一のクランプ爪41における工具挿通孔41aの周囲にも、気密リング42c(緩衝リング)と同様の緩衝リング41cを取り付けている。
【0045】
ところで、第二のクランプ爪42に設けたエア送出口42aは、上述したように、ワーク保持手段40におけるワーク300の保持の有無を判別することを目的として設けたものではあるが、このエア送出口42aの配置に工夫を施すことで、エア送出口42aに供給されるエアを別の用途でも有効に活用することが可能になる。具体的には、第二のクランプ爪42におけるエア送出口42aを、
図1に示すように、第一のクランプ爪41における工具挿通孔41aと工具送り方向(軸線L
1の方向)で重なる位置に設けると、エア送出口42aに供給されるエアで、ワーク300に対する加工の完了を検知することや、工具100の冷却することや、工具100やワーク300に付着した加工屑を除去することも可能になる。
【0046】
すなわち、
図3に示すように、ワーク300の加工が完了していないときには、エア送出口42aがワーク300によって塞がれた状態となるため、エア流路42bを流れるエアの圧力は高くなる。一方、
図4に示すように、ワーク300の加工が完了したとき(ワーク300に対する貫通孔301の加工が完了したとき)には、エア送出口42aに達したエアは、ワーク300の貫通孔301や第一のクランプ爪41の工具挿通孔41aを通じて第一のクランプ爪41の外面側へ抜け出るようになる。このため、エア流路42bを流れるエアの圧力は低くなる。
【0047】
したがって、ワーク保持手段40にワーク300が保持された状態で工具送り手段30を駆動して工具100をワーク300に送った後に、エア流路42bを流れるエアの圧力(上記のワーク保持判別で用いたエア圧力検知手段70で検知することができる。)が所定値よりも低くなったときには、ワーク300に対する貫通孔301の加工が完了したと判別することができる。この判別(加工完了判別手段)は、上記のワーク保持判別手段80と同様、通常、コンピュータ(プログラマブルコントローラやパソコン等)で駆動されるプログラムや、所望の動作を行うように設計された電子回路等で実現される。このように、エア送出口42aと工具挿通孔41aとを工具送り方向で重なる位置に設けると、エア送出口42aに供給されるエアで、ワーク300に対する加工の完了を検知することが可能になる。
【0048】
また、ワーク300に対する貫通孔301の加工が完了して、エア送出口42aに達したエアが、ワーク300の貫通孔301や第一のクランプ爪41の工具挿通孔41aを通り抜ける際には、その通り抜けるエアによって、工具100が冷却されるし、工具100やワーク300に付着した加工屑が除去される。このように、エア送出口42aと工具挿通孔41aとを工具送り方向で重なる位置に設けると、エア送出口42aに供給されるエアで、工具100の冷却することや、工具100やワーク300に付着した加工屑を除去することも可能になる。
【0049】
クランプ爪駆動手段43は、所望のワーク300を第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とで挟持できるものであれば、特に限定されない。クランプ爪駆動手段43としては、動かない第一のクランプ爪41に対して第二のクランプ爪42を移動させるものや、動かない第二のクランプ爪42に対して第一のクランプ爪41を移動させるものや、第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42との双方を移動させるもののいずれであってもよい。このように、2つの部材を互いに近づける向きに移動させる機構としては、ピストン機構やリンク機構等が例示される。本実施態様のエンドエフェクタ1において、クランプ爪駆動手段43は、ピストン機構のなかでも2つのピストンを用いる「二重ピストン機構」を用いており、第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42との双方を移動させるものとなっている。
【0050】
具体的には、
図1に示すように、第一のクランプ爪41に直接的又は間接的に固定されて第一のクランプ爪41と一体的に移動するように構成された第一のピストン43aと、第二のクランプ爪42に直接的又は間接的に固定されて第二のクランプ爪42と一体的に移動するように構成された第二のピストン43bとを用いている。第一のピストン43a及び第二のピストン43bは、ハウジング50に設けられたシリンダー部52の内側に収容されており、シリンダー部52の軸線L
3上で同心となるように配されている。第二のピストン43bは、第一のピストン43aの内部を挿通されて、第一のピストン43aから一側(
図1の紙面上側)に突き出た状態に設けられている。
【0051】
第一のピストン43aの一側の端部には、第一フランジ部43a
1が設けられており、第二のピストン43bにおける、第一のピストン43aから一側に突き出た部分には、第二フランジ部43b
1が設けられている。第一フランジ部43a
1は、第一フランジ部43a
1の他側(
図1の紙面下側)に配された第一付勢部材43cによって、一側(
図1の紙面上側)に付勢された状態となっている。一方、第二のピストン43bの第二フランジ部43b
1は、第二フランジ部43b
1の一側(
図1の紙面上側)に配された第二付勢部材43dによって、他側(
図1の紙面下側)に付勢された状態となっている。このため、第一フランジ部43a
1と第二フランジ部43b
1は、互いに近づく向きに付勢された状態となっている。ただし、第一フランジ部43a
1及び第二フランジ部43b
1は、それが最も近づいたときでも、その間に隙間αが形成されるようになっている。
【0052】
このクランプ爪駆動手段43は、
図1に示すように、第一のクランプ爪41及び第二のクランプ爪42がワーク300から離れており、ワーク保持手段40によってワーク300が保持されていない状態から、上記の隙間αにエアを供給して隙間αの圧力を高めることで、第一フランジ部43a
1を、第一付勢部材43cの付勢力に抗って他側(
図1の紙面下側)に移動させるとともに、第二フランジ部43b
1を、第二付勢部材43dの付勢力に抗って一側(
図1の紙面上側)に移動させるものとなっている。これにより、
図2に示すように、第一のクランプ爪41は、他側(
図1の紙面下側)に移動する第一フランジ部43a
1とともに他側に移動して、ワーク300の一側に当接し、第二のクランプ爪42は、一側(
図1の紙面上側)に移動する第二フランジ部43b
1とともに一側に移動して、ワーク300の他側に当接するようになる。このとき、第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とでワーク300が挟持された状態となっている。
【0053】
このように、二重ピストン機構を採用して第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42との双方を移動させてワーク300を挟持することで、ロボットアーム200を駆動してエンドエフェクタ1を移動させ、
図1に示すように、ワーク保持手段40における第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42との隙間にワーク300を位置させる際に、当該隙間におけるどの場所にワーク300が入ったとしても(当該隙間における、第一のクランプ爪41に近い箇所にワーク300が入った場合と、第二のクランプ爪42に近い箇所にワーク300が入った場合のいずれであっても)、ワーク300を、適度な力で無理なく第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とで挟持することが可能になる。
【0054】
第一のクランプ爪41と第二のクランプ爪42とでワーク300が挟持されて、ワーク300の挟持が確認された後、信号やタイマー等により、ブレーキ手段43eが、第一のピストン43a又は第二のピストン43bの位置をロックするようになっている。このように、第一のピストン43a又は第二のピストン43bの位置をロックすることで、第一のクランプ爪41に対して第二のクランプ爪42が相対的に開かないようにし、ワーク加工時に、第一のクランプ爪41及び第二のクランプ爪42によるワーク300の挟持が解除されないようにすることが可能となっている。ブレーキ手段43eは、第一のピストン43a又は第二のピストン43bの位置をロックできるものであれば、特に限定されない。本実施態様のエンドエフェクタ1においては、それにエアを供給すると第二のピストン43bの外周部を把持して第二のピストン43bの位置をロックするシャフトクランパーをブレーキ手段43eとして用いている。
【0055】
以上では、ワーク保持手段40によるワーク300を挟持する方向が、工具送り方向(工具100の軸線L1の方向)に平行である場合を例に挙げて説明した。しかし、ワーク300を挟持する方向は、工具送り方向に平行である必要はない。ワーク300を挟持する方向は、工具送り方向に対して傾斜していてもよいし、工具送り方向に対して垂直であってもよい。この場合、工具100からワーク300に加えられる加工力F1は、第一のクランプ爪41とワーク300との間に生ずる摩擦力や、第二のクランプ爪42とワーク300との間に生ずる摩擦力の形で、ワーク保持手段40に伝わることになる。これらの摩擦力が加工力F1に負けない限り(加工力F1が、第一のクランプ爪41とワーク300との間の最大静止摩擦力や、第二のクランプ爪42とワーク300との間の最大静止摩擦力を超えない限り)、ワーク300はワーク保持手段40に保持された状態を維持し、上述した加工反力F2と加工力F1との相殺作用が奏される。
【0056】
6.ハウジング
ハウジング50は、工具保持手段10、工具駆動手段20及び工具送り手段30で構成される工具100側の部材群(工具側ユニット)と、ワーク保持手段40とを支持するものとなっている。既に述べたように、本発明のエンドエフェクタ1は、ワーク300から工具100を介して工具保持手段10に伝わる加工反力F
2(
図3)と、工具100からワーク300を介してワーク保持手段40に伝わる加工力F
1(
図3)とを、エンドエフェクタ1内で相殺させることにより、加工反力F
2によるワーク300の加工精度の低下を抑えるものであるところ、本実施態様のエンドエフェクタ1では、加工反力F
2が加わる工具側ユニットと、加工力F
1が加わるワーク保持手段40とを、共通のハウジング50で支持することにより、加工反力F
2(
図3)と加工力F
1とがより相殺されやすくしている。
【符号の説明】
【0057】
1 エンドエフェクタ
10 工具保持手段
20 工具駆動手段
30 工具送り手段
31 モータ
32 ネジ軸
33 ナット部材
40 ワーク保持手段
41 第一のクランプ爪
41a 工具挿通孔
41c 緩衝リング
42 第二のクランプ爪
42a エア送出口
42b エア流路
42c 気密リング(緩衝リング)
43 クランプ爪駆動手段
43a 第一のピストン
43a1 第一フランジ部
43b 第二のピストン
43b1 第二フランジ部
43c 第一付勢部材
43d 第二付勢部材
43e ブレーキ手段
50 ハウジング
51 ガイド孔
52 シリンダー部
60 エア供給手段
70 エア圧力検知手段
80 ワーク保持判別手段
100 ドリル(工具)
200 ロボットアーム
300 ワーク
301 貫通孔
F1 加工力
F2 加工反力
L1 工具の軸線
L2 ネジ軸の軸線
L3 シリンダー部の軸線
α 第一フランジ部と第二フランジ部との隙間