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特許7265860高内相W/O型乳化組成物及びこれを利用した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】高内相W/O型乳化組成物及びこれを利用した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230420BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20230420BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230420BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20230420BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20230420BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230420BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q19/00
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/67
A61K8/60
A61K8/9728
A61K8/92
A61Q1/00
A61K8/99
A61K8/98
A61K8/9789
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018227945
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020090454
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 敏充
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸岳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅彦
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033149(JP,A)
【文献】特開2014-047158(JP,A)
【文献】特開2018-095588(JP,A)
【文献】特開2017-048144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)乳化剤と、(B)油と 、(C)水と、(D)水溶性有効成分とを含み、水相の占める割合が74質量%以上であるW/O型乳化組成物であって、前記(A)乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、前記(D)水溶性有効成分が、微生物発酵産物、ヒアルロン酸及び/又はその塩、植物抽出物、グリチルリチン酸及び/又はその塩、及びアスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体からなる群から選ばれた1種又は2種以上であって、該(D)水溶性有効成分の含有量が乾燥固形分換算で0.02質量%以上5.0質量%以下であり、前記組成物は、更に(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことにより、該組成物の乳化状態が安定化されていることを特徴とする高内相W/O型乳化組成物。
【請求項2】
(A)乳化剤と、(B)油と 、(C)水と、(D)水溶性有効成分とを含み、水相の占める割合が74質量%以上であるW/O型乳化組成物であって、前記(A)乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、前記(D)水溶性有効成分が、微生物発酵産物、植物抽出物、グリチルリチン酸及び/又はその塩、及びアスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体からなる群から選ばれた1種又は2種以上であって、該(D)水溶性有効成分の含有量が乾燥固形分換算で0.01質量%以上5.0質量%以下であり、前記組成物は、更に(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことにより、該組成物の乳化状態が安定化されていることを特徴とする高内相W/O型乳化組成物。
【請求項3】
前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールは、炭素数2~6のモノアルコール、炭素数2~6の多価アルコール、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、請求項1又は2記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項4】
前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールは、エタノール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含む、請求項1又は2記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項5】
前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールを組成物全量中に3質量%以上40質量%以下含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項6】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが親油性のものである、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項7】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、不飽和脂肪酸及び/又は分岐脂肪酸を残基に有するものである、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項8】
前記組成物は、油ゲル化剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物 。
【請求項9】
化粧料の形態である、請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の高内相W/O型乳化組成物を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料等への応用に適した乳化組成物に関し、より詳細には、油相に水相が分散してなるW/O型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乳化剤と油と水とを含む乳化組成物であって、分散相の割合が高いものは高内相乳化組成物と呼ばれている(特許文献1参照)。高内相乳化組成物のメリットとしては、油相に水相が分散してなるW/O型の乳化化粧料として、さっぱりとした使用感と高い保湿効果の両立が得られる点が挙げられる。一方、そのデメリットとしては、乳化状態を維持するのが難しく、経時安定性が低いことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭57-81827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの研究によると、高内相W/O型乳化組成物に乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用すると、みずみずしさやしっとり感の使用感に優れていた。しかしながら、これに更に、乳酸菌発酵エキス等の水溶性有効成分を配合しようとした場合、水溶性有効成分を配合しない場合に比べて、乳化状態の安定性が悪くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用し、乳酸菌発酵エキス等の水溶性有効成分を配合する場合であっても、乳化状態を安定に維持することができるようにした、高内相W/O型乳化組成物及びこれを利用した化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1は、(A)乳化剤と、(B)油と 、(C)水と、(D)水溶性有効成分とを含み、水相の占める割合が70質量%以上であるW/O型乳化組成物であって、前記(A)乳化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含み、前記組成物は、更に(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことを特徴とする高内相W/O型乳化組成物を提供するものである。
【0008】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物によれば、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用しているので、みずみずしさやしっとり感の使用感に優れている。そして、水溶性有効成分を配合しても、モノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことにより、高内相W/O型の乳化状態が安定に維持される。
【0009】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールは、炭素数2~6のモノアルコール、炭素数2~6の多価アルコール、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0010】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールは、エタノール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群から選ばれた1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0011】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(E)モノアルコール及び/又は多価アルコールを組成物全量中に3.0質量%以上40質量%以下含有することが好ましい。
【0012】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが親油性のものであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが、不飽和脂肪酸及び/又は分岐脂肪酸を残基に有するものであることが好ましい。
【0014】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記組成物は、油ゲル化剤を含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(D)水溶性有効成分が、微生物発酵産物、ヒアルロン酸及び/又はその塩、植物抽出物、グリチルリチン酸及び/又はその塩、及びアスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体からなる群から選ばれた1種又は2種以上であることが好ましい。これによれば、水溶性有効成分が微生物発酵産物であれば、これに含まれるアミノ酸等の成分が、水溶性有効成分がヒアルロン酸及び/又はその塩であれば、そのヒアルロン酸及び/又はその塩が、水溶性有効成分が植物抽出物であれば、これに含まれるフラボノイド、ポリフェノール等の成分が、水溶性有効成分がグリチルリチン酸及び/又はその塩であれば、そのグリチルリチン酸及び/又はその塩が、水溶性有効成分がアスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体であれば、そのアスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体が、それぞれ、皮膚に対して有効に作用効果を与える物質として寄与し得る。
【0016】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、前記(D)水溶性有効成分の含有量が、該水溶性有効成分の乾燥固形分換算で0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物においては、該組成物は化粧料の形態であることが好ましい。これによれば、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、優れた使用感と、水溶性有効成分による作用効果の両立を企図した化粧料を提供することができる。
【0018】
一方、本発明の第2は、上記の高内相W/O型乳化組成物を含む化粧料を提供するものである。
【0019】
本発明に係る化粧料によれば、上記の高内相W/O型乳化組成物を含むので、これにより、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、優れた使用感と、水溶性有効成分による作用効果の両立を企図した化粧料を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物によれば、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用したので、みずみずしさやしっとり感のある使用感に優れている。そして、モノアルコール及び/又は多価アルコールを含むことにより、水溶性有効成分を配合しても、高内相W/O型の乳化状態が安定に維持される。よって、これにより、乳化状態の安定性に支障のない、優れたW/O型乳化化粧料を提供することができる。そして、優れた使用感と、水溶性有効成分による作用効果の両立を企図した化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、
成分(A)として乳化剤を、
成分(B)として油を、
成分(C)として水を、
成分(D)として水溶性有効成分を、
成分(E)としてモノアルコール及び/又は多価アルコールを含有し、水相からなる分散相の占める割合が70質量%以上である。
【0022】
ここで、一般に乳化組成物の乳化状態として、油相中に水相が分散してなるW/O型の乳化状態を形成しているかどうかは、当業者に周知の方法により、例えば、試験管に入れた水に乳化物を滴下し、分散しなければW/O型の乳化状態であると判定することができる(希釈法)。また、例えば、乳化物にテスターの電極部分を接触させ電気伝導度を測定することによりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(電気伝導度法)。更に、例えば、水溶性または油溶性色素を添加し、顕微鏡像によりW/O型の乳化状態であることを確認することができる(色素法)。
【0023】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、水相からなる分散相の占める割合が70質量%以上99質量%以下であることが好ましく、74質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、74質量%以上90質量%以下であることが最も好ましい。水相からなる分散相の占める割合が上記範囲未満であると、例えば、さっぱりとした使用感や高い保湿効果等、高内相W/O型乳化組成物に特徴的な性質が得られなくなる場合があるので好ましくない。
【0024】
成分(A)の乳化剤としては、少なくともポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる。乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを使用すると、高内相W/O型乳化組成物に特徴的な性質とともに、みずみずしさやしっとり感の使用感に優れている。なお、ここで乳化剤とは、水と油を乳化させる機能性を有する物質一般を指し、例えば、界面活性剤と称される場合であっても、そのような機能性を有する限り、本発明の乳化剤として使用可能である。
【0025】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、一般に化粧料等に使用可能なものであればよく、特に制限はない。例えば、そのグリセリン構成部におけるグリセリンの平均重合度が1~10、より好ましくは5~10であってよい。また、例えば、その脂肪酸エステル構成部における脂肪酸の炭素数が10~24、より好ましくは18~22であってよい。更に、例えば、そのグリセリン構成部におけるグリセリン単位(モノグリセリン)当たりの、その脂肪酸エステル構成部における脂肪酸の分子数が、0.3以上、より典型的には0.5以上であってよい。
【0026】
更に、皮膚と化粧料の親和性の観点からは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは親油性のものを用いることが好ましく、その場合、親油度の指標となるHLB値としては、8以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は、乳化剤を構成する分子の親油度/親水度のバランスによって算出される数値であり、乳化剤の性質を示す指標として当業者に周知の指標である(例えば、野々村美宗著「化粧品 医薬部外品 医薬品のための界面化学 基礎から応用まで」発行所:フレグランスジャーナル社、出版日:平成27年10月10日、第35-38頁参照)。また、市場に流通する乳化剤の多くは、その乳化剤に固有のHLB値とともに流通している。よって、そのような流通過程の表示に基づいて、上記HLB値が好ましいかどうかの判断をなし得る。
【0027】
更に、高内相W/O型乳化組成物の安定性の観点からは、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸及び/又は分岐脂肪酸を残基に有するものであることが好ましい。この場合、不飽和脂肪酸としては、ポリリシノレイン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、パルミトオレイン酸、エルカ酸、リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、マカダミアナッツ脂肪酸等が挙げられる。分岐脂肪酸としては、イソステアリン酸、ネオペンタン酸等が挙げられる。その不飽和脂肪酸及び/又は分岐脂肪酸としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルの1分子中に単一種類を有するものであってもよく、複数種類を有するものであってもよい。すなわち、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、その脂肪酸エステル構成部における脂肪酸として、不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の残基を有するものであることが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の残基を有するものであって、直鎖状飽和脂肪酸のみを残基に有するものではないことがより好ましく、不飽和脂肪酸及び分岐脂肪酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上の残基のみを有するものであることが更により好ましい。
【0028】
本発明に用いるポリグリセリン脂肪酸エステルを、更に具体的に例示するとすれば、例えば、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-3、オレイン酸ポリグリセリル-4、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、デカマカダミアナッツ脂肪酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。
【0029】
成分(A)の乳化剤として、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルは、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
成分(A)の乳化剤としては、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルに属するもの以外にも、他の乳化剤を適宜併用してもよい。他の乳化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な乳化剤を適宜選択して使用すればよいが、例えば、ショ糖、(モノ)グリセリン、ソルビタン、オキシエチレン等を親水部として有する脂肪酸エステルなどが挙げられる。高内相W/O型乳化組成物の乳化状態の安定性の観点からは、その脂肪酸エステル構成部における脂肪酸が不飽和脂肪酸である乳化剤が好ましい。例えば不飽和脂肪酸としてオレイン酸やエルカ酸などが挙げられ、なかでも、オレイン酸スクロース、エルカ酸スクロース等を用いるのが好ましい。また、使用感、安定性および乳化組成物の粘性の観点より、その脂肪酸エステル構成部における脂肪酸が飽和脂肪酸であるパルミチン酸やステアリン酸である乳化剤を併用してもよい。なかでもパルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース等を用いるのが好ましい。
【0031】
成分(A)の乳化剤として、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルに属するもの以外の他の乳化剤は、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
ただし、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルによる、みずみずしさやしっとり感を呈する使用感を得る観点からは、成分(A)の乳化剤の全量中に、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルに属するもの以外の乳化剤の含有量は、含まない、または0質量%超50質量%以下であることが好ましく、含まない、または0質量%超25質量%以下であることがより好ましく、含まない、または0質量%超10質量%以下であることが更により好ましい。また、場合によっては、含まれないことが最も好ましい。
【0033】
成分(A)の含有量(乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルに属するもの以外のものを含む場合には、ポリグリセリン脂肪酸エステルに属するものと、それ以外のものとの合計量として)としては、成分(B)~(E)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる乳化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲を外れると、安定な高内相W/O型乳化組成物を調製できなくなる場合があるので好ましくない。また、上記したポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量としては、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。上記範囲未満であると、安定な高内相W/O型乳化組成物を調製できなくなる場合があるので好ましくない。また、上記範囲を超えると、みずみずしさやしっとり感を呈する使用感を得る効果が得られない場合があるので好ましくない。
【0034】
成分(B)の油としては、一般に化粧料等に使用可能な油を適宜選択して使用すればよく、特に制限はないが、例えば、高内相W/O型乳化組成物を調製する観点からは、その調製温度(例えば80℃)で液体状となる油を用いることが好ましい。また、低粘で肌に塗布しやすい乳化液体状の化粧料とする観点からは、常温(25℃)で液体状となる油を用いることが好ましい。
【0035】
具体的には、例えば、脂肪酸類とアルコール類とをエステル結合してなるエステル油である。エステル油としては、例えば、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸2-オクチルドデシル、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-エチルヘキサン酸ジグリセリド、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等が好ましい。
【0036】
また、例えば、炭化水素系の非エステル油である。非エステル油としては、例えば、ミネラルオイル(流動パラフィン)、スクワラン、スクワレン、セレシン等が挙げられる。低粘性及び安定性の観点からは、ミネラルオイル、スクワラン等が好ましい。
【0037】
また、例えば、シリコーン系のシリコーン油である。シリコーン油としては、例えば、ジフェニルシロキシトリメチコン、ジメチコン(ジメチルポリシロキサン)、フェニルトリメチコン、シクロペンタンシロキサン等が挙げられる。メイクなじみや、2種以上の油を使用する場合の他の油相成分との相溶性の観点からは、ジフェニルシロキシトリメチコン、シクロペンタンシロキサン等が好ましい。
【0038】
また、例えば、植物油である。植物油としては、例えば、ホホバ油、オリーブ油、マカダミアナッツ油、ツバキ油、アボガド油、ローズヒップ油、ククイナッツ油、ヘーゼルナッツ油、メドウフォーム油等が挙げられる。安定性の観点からは、マカダミアナッツ油、メドウフォーム油等が好ましい。
【0039】
成分(B)の油として、上記した油は、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
成分(B)の油としては、高内相W/O型乳化組成物を調製する温度(例えば80℃)で液体状となる油、もしくは常温(25℃)で液体状となる油に属するもの以外にも、他の油を適宜併用してもよい。他の油としては、一般に化粧料等に使用可能な乳化剤を適宜選択して使用すればよいが、例えば、化粧料の使用感を調整するとの観点から、例えば、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)などの半固形油や、ステアリン酸バチル、ベヘニルアルコール、蜜蝋、コレステロールなどの固形油等が挙げられる。
【0041】
上記した他の油は、成分(B)の油として、その1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
ただし、高内相W/O型乳化組成物の調製温度(例えば80℃)で液体状のものを用いる観点、もしくは低粘で肌に塗布しやすい乳化液体状の化粧料とする観点からは、成分(B)の油の全量中に、上記した他の油の含有量は、含まない、または0質量%超50質量%以下であることが好ましく、含まない、または0質量%超25質量%以下であることがより好ましく、含まない、または0質量%超10質量%以下であることが更により好ましい。また、場合によっては、含まれないことが最も好ましい。
【0043】
成分(B)の含有量(上記した他の油を含む場合や2種類以上の油を含む場合には、それらの合計量として)としては、成分(A)、及び(C)~(E)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる油の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。上記範囲を超えると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる場合がある。また、上記範囲未満であると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる場合がある。
【0044】
成分(C)の水としては、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、RO水、滅菌処理水等、一般に化粧料等に使用可能なものを適宜用いればよく、特に制限はない。
【0045】
成分(C)の含有量としては、成分(A)、(B)、(D)、及び(E)の配合量や他の原料の配合量との関係等によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に20質量%以上96質量%以下であることが好ましく、30質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、30%質量%以上90質量%以下が特に好ましい。上記範囲未満であると、水相からなる分散相の占有比を維持し難くなる場合がある。また、上記範囲を超えると、W/O型の乳化状態を維持し難くなる場合がある。
【0046】
成分(D)の水溶性有効成分としては、一般に化粧料等に使用可能な水溶性有効成分を適宜選択して使用すればよく、特に制限はない。例えば、下記に示すような水溶性有効成分が好ましく例示される。ただし、これらに限られず、皮膚に対してなんらかの有効性を与える物質として寄与し得る任意の成分であってよい。なお、本明細書において成分(D)について「水溶性」とは、高内相W/O型乳化組成物の水相からなる分散相によく溶解又は分散して、少なくともその水相からなる分散相中に実質量で存在し得る性質を有する成分であることを意味するものである。
【0047】
(微生物発酵産物)
一般に化粧料等に配合される成分を乳酸菌(ビフィズス菌を含む)や酵母で発酵させた培養物、培養上清、その培養物及び/又は培養上清から水もしくは含水アルコール等により抽出した抽出物等が挙げられる。例えば、特公平02-040643号公報に記載されているような乳酸菌/牛乳発酵液、特許第4512265号公報に記載されているような乳酸菌/牛乳発酵液、特許第3795011号公報に記載されているような乳酸桿菌/アロエベラ発酵液、特許第3184114号公報に記載されているような豆乳/ビフィズス菌発酵液、特開2017-212894号公報に記載されているような乳成分含有培地の乳酸菌培養物をクリベロマイセス・マキシアヌスで発酵させた培養物、WO2016/117489公報に記載されているような乳成分含有培地の乳酸菌培養物をウィッカーハモマイセス・ピジュペリで発酵させた培養物等が挙げられる。微生物発酵産物は、これに含まれるアミノ酸等の成分が、皮膚に対して保湿作用などの有効性を与える物質として化粧料に用いられる。
【0048】
(ヒアルロン酸及び/又はその塩)
微生物の発酵物やニワトリのトサカから抽出した抽出物等が挙げられる。具体的には、例えば、特公平4-6356号公報に記載されているようなグルコース含有培地をストレプトコッカスで発酵させた培養物等が挙げられる。ヒアルロン酸及び/又はその塩は、皮膚に対して保湿作用の有効性や良好な使用感を与える物質として化粧料に用いられる。
【0049】
(植物抽出物)
昆布、ワカメ、モズク等の海藻類、チンピ、ヨモギ、エイジツ、ゲットウ、サクラ、シャクヤク、ツボクサ、ボダイジュ、特開2002-179581号公報又は特開2014-2184677号公報に記載されているような水丁香等の植物類を、水もしくはアルコール等により抽出した抽出物等が挙げられる。植物抽出物は、これに含まれるフラボノイド、ポリフェノール等の成分が、皮膚に対して保湿作用、抗酸化作用等の有効性を与える物質として化粧料に用いられる。
【0050】
(グリチルリチン酸及び/又はその塩)
カンゾウから抽出した物質に対して、酸加水分解を行って得られたもの等が挙げられる。グリチルリチン酸及び/又はその塩としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等が挙げられる。グリチルリチン酸及び/又はその塩は、皮膚に対して抗炎症作用等の有効性を与える物質として化粧料に用いられる。
【0051】
(アスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体)
グルコースや発酵で得られた物質を原料にして、合成により得られた物質を結晶析出したもの、更にこれを合成や発酵により化学修飾した誘導体等が挙げられる。アスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸硫酸2ナトリウム、ラウリル3-グリセリルアスコルビン酸等が挙げられる。アスコルビン酸、その塩及び/又はその誘導体は、美白作用、真皮コラーゲン合成促進作用、抗酸化作用等の有効性を皮膚に対して与える物質として化粧料に用いられている。
【0052】
成分(D)は、水溶性有効成分として、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0053】
成分(D)の含有量としては、成分(A)~(C)、及び(E)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる水溶性有効成分の種類や配合目的によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に乾燥固形分換算で0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましく、0.02質量%以上2.0質量%以下であることが更により好ましい。上記範囲未満であると、当該水溶性有効成分を配合したことによる作用効果を得難くなる場合がある。また、上記範囲を超えると、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態を安定に維持し難くなる場合がある。
【0054】
成分(E)のモノアルコール及び/又は多価アルコールとしては、一般に化粧料等に使用可能なものを適宜選択して使用すればよいが、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態の安定化の観点からは、例えば、炭素数2~6のモノアルコール、炭素数2~6の多価アルコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル等を用いることが好ましい。炭素数2~6のモノアルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。なかでも、エタノール、イソプロパノール等を用いることがより好ましい。炭素数2~6の多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール等が挙げられる。なかでも、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール等を用いることがより好ましい。
【0055】
成分(E)は、モノアルコール及び/又は多価アルコールとして、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
成分(E)の含有量としては、成分(A)~(D)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いるモノアルコール及び/又は多価アルコールの種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中に3.0質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以上15質量%以下であることが更により好ましい。この範囲を外れると、安定な高内相W/O型乳化組成物を調製できなくなる場合がある。
【0057】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物には、その乳化状態のより一層の安定化のためには、油ゲル化剤を含有せしめてもよい。
【0058】
油ゲル化剤としては、一般に化粧料等に使用可能な油ゲル化剤を適宜選択して使用すればよく、特に制限はない。例えば、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖と脂肪酸のエステル、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、バチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコールや有機変性粘度鉱物等が挙げられる。なかでも、デキストリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等を用いることが好ましく、より具体的には、パルミチン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ベヘン酸グリセリル等を用いることが好ましい。
【0059】
油ゲル化剤は、1種類のものを単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
油ゲル化剤の含有量としては、成分(A)~(E)の配合量や他の原料の配合量との関係もあり、また、用いる油ゲル化剤の種類によっても一概ではないが、典型的には、例えば、組成物全量中におよそ0.05質量%以上程度含有せしめれば、安定な高内相W/O型乳化組成物の形成に寄与し得る。好ましくは0.1質量%以上であり、0.1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることが更により好ましい。上記範囲未満であると、高内相W/O型乳化組成物の乳化状態を安定化する効果に乏しくなる。また、上記範囲を超えて含有せしめても、その含有量に応じて乳化状態を安定化する効果に乏しく、かえって、安定な高内相W/O型乳化組成物の形成を妨げる場合がある。
【0061】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物には、上記した成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に化粧料等に配合される成分、例えば、有機酸類、塩類、防腐剤、香料、色素等を何れも配合することができる。また、増粘のための増粘剤を配合してもよい。
【0062】
また、化粧料の使用感を調整するとの観点から、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ケイ酸(Al/Mg)、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル重合体等の水系増粘剤を適宜配合してもよい。
【0063】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、通常、当業者に周知の調製方法のとおり、成分(B)の油を主体とし、油によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させてなる油性原料と、成分(C)の水を主体とし、水によく溶解し又は分散させることができる原料を混合もしくは分散させてなる水性原料とを調製しておき、必要とあらば、適当な温度条件下、例えば室温~80℃にて、油性原料に水性原料を少量ずつ添加しながら分散させることにより調製することができる。一旦乳化状態を形成した後は、例えば室温等に冷却してもよい。なお、上記した油ゲル化剤は、一般に油に親和性を有する場合が多いので、このような調製の際には、油性原料に混合もしくは分散させることが好ましい。また、成分(A)としてポリグリセリン脂肪酸エステルとして親油性のものを用いる場合も、同様に、油性原料に混合もしくは分散させることが好ましい。一方、成分(D)の水溶性有効成分や成分(E)のモノアルコール及び/又は多価アルコールは、一般に水に親和性を有する場合が多いので、このような調製の際には、水性原料に混合もしくは分散させることが好ましい。
【0064】
本発明に係る高内相W/O型乳化組成物は、それをそのまま化粧料として用いてもよく、あるいは化粧料の原料として化粧料の製造工程で配合するようにして用いてもよい。具体的には、例えば、乳液、クリーム、クレンジング、マッサージ、サンスクリーン、化粧下地、クリームファンデーション等の形態の化粧料あるいはその原料として、好適に用いられる。なお、ここでいう化粧料は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律で定義されている医薬品、医薬部外品、化粧品を含む。
【実施例
【0065】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0066】
[試験例1]
表1、2に示す配合で、水相からなる分散相の占める割合が85質量%である高内相W/O型乳化組成物の調製を試みた。具体的には、油相及び水相の各原料を秤量後、それぞれ80℃にて溶解・混合させ、80℃にて油相に水相を少量ずつ添加しながらディスパーミキサー(商品名「スリーワンモータBlh600」(撹拌翼φ40mm)、新東科学株式会社製)により、撹拌翼回転速度700rpmで分散させた後、35℃まで冷却した。
【0067】
なお、水溶性有効成分のうち「乳酸菌発酵液(ミルク)」は、乳成分含有培地をストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2084株(FERM BP-10879)で発酵させ、その発酵物を遠心分離および限外濾過して得られた上清(分画分子量20,000Da以下)からなる発酵液(固形分濃度2.0質量%)である。また、「乳酸菌発酵液(アロエ)」は、アロエベラ抽出物をラクトバチルス・プランタラム(ATCC 14917株)で発酵させた、発酵液(固形分濃度2.87質量%)である。また、「酵母発酵液」は、上記「乳酸菌発酵液(ミルク)」にグルコースを添加した培地をウィッカーハモマイセス・ピジュペリYIT8095(NBRC1290)で発酵させ、その発酵物を遠心分離および限外濾過して得られた上清(分画分子量20,000Da以下)からなる発酵液(固形分濃度1.97質量%)である。また、「ヒアルロン酸Na液」はヒアルロン酸ナトリウムを0.6質量%になるように水に溶解させた水溶液である。
【0068】
上記のようにして得られた調製物について、5℃、25℃、40℃、及び50℃の各温度条件下において、調製物が油相と水相に分離せずに乳化状態を保つかどうか目視にて1~5日間観察し、下記評価基準に従い、その安定性を評価した。
(安定性評価基準)
○:良好(見た目の分離なし)
△:やや不良(一部に分離がみられる)
×:不良(見た目の分離が顕著に認められる)
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
その結果、水溶性有効成分を配合しない参考調製例に対する調製例1-1~調製例1-5の結果にみられるように、高内相W/O型乳化組成物に各種の水溶性有効成分を配合した場合、いずれも安定性が悪かった。これに対し、更に多価アルコールである1,3-ブチレングリコールを配合すると、調製例1-6~調製例1-19の結果にみられるように、その安定性が顕著に改善した。なお、ここでいう安定性の改善の判断は、化粧料等として利用される場合には、通常様々な温度帯に保管され、また、長時間保管されることが想定されることから、試験した保管条件で得られた結果を総合的に判断した。すなわち、少なくとも1つ以上の保管条件で安定性が改善されていることをもって、安定性が改善されていると判断した。
【0072】
[試験例2]
表3に示す配合で、試験例1と同様にして、水相からなる分散相の占める割合が85質量%である高内相W/O型乳化組成物を調製し、その乳化状態の安定性を評価した。
【0073】
【表3】
【0074】
その結果、調製例2-2~調製例2-5の結果にみられるように、モノアルコールであるエタノール(調製例2-3)や、多価アルコールであるジプロピレングリコール(調製例2-4)やポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(調製例2-5)でも、上記試験例1でも示された1,3-ブチレングリコール(調製例2-2)と同様にして、それらを配合しない調製例2-1の高内相W/O型乳化組成物と比べて、水溶性有効成分(乳酸菌発酵液(ミルク))を配合したことによる不安定性が改善することが明らかとなった。
【0075】
[試験例3]
表4-1、4-2に示す配合で、試験例1と同様にして、水相からなる分散相の占める割合が85質量%である高内相W/O型乳化組成物を調製し、その乳化状態の安定性を評価した。
【0076】
【表4-1】
【0077】
【表4-2】
【0078】
その結果、調製例3-2~調製例3-8の結果にみられるように、この配合例では、1,3-ブチレングリコールを3~40質量%の含有量で含有させたとき、これを配合しない調製例3-1の高内相W/O型乳化組成物と比べたときの安定性を改善できることが明らかとなった。
【0079】
[試験例4]
表5に示す配合で、試験例1と同様にして、水相からなる分散相の占める割合が85質量%である高内相W/O型乳化組成物を調製し、その乳化状態の安定性を評価した。
【0080】
【表5】
【0081】
その結果、乳化剤として、上記試験例1~3に使用したポリリシノレイン酸ポリグリセリル-5に代えて、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10を使用した場合も、多価アルコールである1,3-ブチレングリコールを配合することによって、水溶性有効成分(乳酸菌発酵液(ミルク))を配合したことによる不安定性が改善することが明らかとなった。