(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 19/04 20060101AFI20230420BHJP
F16L 33/22 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
F16L19/04
F16L33/22
(21)【出願番号】P 2018237036
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-086979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0245776(US,A1)
【文献】特開2014-219060(JP,A)
【文献】特開2009-063090(JP,A)
【文献】特開2016-017543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/04
F16L 33/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ内に挿入されるインナーリング部を含み、前記インナーリング部を介して前記チューブとの間で流体を流通させる継手本体と、
前記チューブ内に挿入された前記インナーリング部を囲んだ状態で前記継手本体と締結されるユニオンナットと
を備えている管継手であって、
前記ユニオンナットの内周面は、
前記ユニオンナットが前記継手本体と締結される際に前記チューブを前記インナーリング部の外周面に押し付けるように構成されている
押圧部と、
前記
押圧部の中を前記ユニオンナットの周方向に伸び、かつ径方向内方に開口して
前記押圧部を
前記ユニオンナットが前記継手本体と締結される際に前記チューブの外周面の一部と接する少なくとも2つの突出部
に分けており、前記ユニオンナットが前記継手本体と締結される際に
、軸方向では前記少なくとも2つの突出部の間に、径方向では前記チューブ
の外周面との間に
、空間を確保するように構成されている少なくとも1本の環状溝と
を含み、
前記インナーリング部の外周面は、前記ユニオンナットの
押圧部によって前記チューブが押し付けられる範囲では軸方向の全長にわたって前記チューブの内周面に接触するように構成されて
おり、
前記ユニオンナットが前記継手本体と締結される際、前記少なくとも2つの突出部が前記チューブの外周面を前記インナーリング部に向けて径方向内方に押圧することにより、前記インナーリング部の外周面と前記チューブの内周面との間では、前記少なくとも2つの突出部と軸方向において対応する少なくとも2つの箇所に、シールの確実性を高めるためのシール箇所が形成される
ことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記インナーリング部は、
前記チューブ内に挿入される側の端である軸方向一方端と、
前記軸方向一方端から反対側の端へ向かうにつれて径方向外方へ膨らんでおり、前記チューブ内に挿入されると前記チューブを拡径させる膨出部と
を有し、
前記膨出部は、
径が最も大きい頂部と、
前記軸方向一方端と前記頂部との間で前記インナーリング部の軸方向に対して斜めに広がっている斜面と
を含み、
前記ユニオンナットの
押圧部は前記ユニオンナットの軸方向に対して傾斜しており、前記ユニオンナットが前記継手本体と締結される際に前記チューブを前記膨出部の斜面に押し付けるように構成されている、
請求項1に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のような管接続装置(管継手)が知られている。この管接続装置は、チューブと接続される継手本体と、ユニオンナットとを備えている。
【0003】
前記管接続装置においては、前記ユニオンナットの締込みにより、前記ユニオンナットの押え内周部が前記チューブの径変化部を前記継手本体の嵌合筒部の先窄まりの外周拡径面に押し付けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の管接続装置においては、上述のユニオンナットの締込みの結果、継手本体とこれに接続されたチューブとの間をシールすることができる。しかし、前記継手本体と前記チューブとを確実にシールすることができるというシールの安全性をこれまで以上に向上させるためには、管接続装置のシール性能のさらなる改善が求められている。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、管継手のシール性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
チューブ内にインナーリング部が挿入された状態で前記チューブと接続される継手本体と、
前記インナーリング部の径方向外方において前記継手本体と締結され、前記インナーリング部を前記チューブを介して押圧する押圧部が設けられた締結部材と、を備え、
前記押圧部には、径方向内方に開口する凹部が前記インナーリング部の周方向に沿うように設けられている、管継手である。
【0008】
この構成によれば、前記継手本体が前記チューブと接続された場合に、複数に区画する凹部が押圧部に設けられることから、押圧部がチューブを介してインナーリング部を複数個所で押圧することができる。よって、シールの安全性(確実性)を高めることができ、前記管継手のシール性能を向上させることができる。
【0009】
本発明の別の態様によれば、
前記締結部材は、前記継手本体に設けられたネジ部と噛み合うネジ部を備え、
前記押圧部は、前記締結部材のネジ部が前記継手本体のネジ部と噛み合った状態で前記継手本体のネジ部に対して離間する。
【0010】
この構成によれば、前記締結部材のネジ部を前記継手本体のネジ部に噛み合せるために、前記締結部材の回転操作を行った場合であっても、前記押圧部が前記継手本体のネジ部に接触することを回避することが可能となる。よって、前記押圧部と前記継手本体のネジ部との接触により締付トルクが増大することを防止できる。
【0011】
本発明の更なる態様によれば、
前記凹部は、環状溝に形成されている。
【0012】
この構成によれば、凹部が環状に形成されるので、前記インナーリング部の周方向全周にわたってシールすることができる。したがって、シールの安全性(確実性)を高め、前記管継手のシール性能を向上することができる。
【0013】
本発明のまた別の態様によれば、
前記凹部は、前記締結部材の軸方向において所定間隔ごとに複数設けられている
【0014】
この構成によれば、前記凹部が1つ設けられる場合に比べて多くのシール箇所を軸方向に沿って形成することが可能となる。したがって、前記管継手のシール性能をより向上させることができる。
【0015】
本発明のまた別の態様によれば、
前記締結部材が、前記継手本体との締結時に前記インナーリング部を前記チューブを介して軸方向に押圧する、前記押圧部とは別の第2の押圧部を有する。
【0016】
この構成によれば、前記第2の押圧部が、前記チューブを介して前記インナーリング部を軸方向に押圧するので、これら両者の間をシールすることができる。そのため、前記押圧部による径方向の押圧力に加え、前記第2の押圧部による軸方向の押圧力が生じるので、管継手からチューブが抜けることを防止し、シールの安全性(確実性)をより高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、管継手のシール性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の断面図である。
【
図3】
図1の管継手における締結部材の断面図である。
【
図5】
図3の締結部材の押圧部による押圧状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る管継手1の全体構成について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る管継手1の断面図である。
図2は、
図1の一部拡大図である。なお、
図1は、管継手1にチューブ3の長手方向の一端部5がつながれている状態を示している。
【0021】
以下の説明においては、
図1を見た場合の紙面の左側(後述の締結部材9側)を軸方向一方側とし、
図1を見た場合の紙面の右側(後述の継手本体7側)を軸方向他方側とする。
【0022】
管継手1は、例えば、半導体、液晶または有機ELの製造装置内、各種プラントの配管、医療・医薬分野の配管等において使用される複数の配管等を接続する部材である。なお、管継手1は、上記の分野や用途以外にも用いることができる。管継手1は、チューブ3とつながれるとともに、チューブ3とは別のチューブまたはタンク等の部材とつながれるように構成されている。
【0023】
ここで、チューブ3は、可撓性を有するものである。チューブ3は、本実施形態においては、フッ素樹脂材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA))等の樹脂材料を用いて製造されている。
【0024】
図1、
図2に示すように、管継手1は、継手本体7と、締結部材9とを備えている。管継手1は、本実施形態においては、フッ素樹脂材料等の樹脂材料を用いて製造されている。なお、本実施形態において樹脂材料は、フッ素樹脂を一例として説明するが、これに限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド等の種々の樹脂を使用可能であり、使用分野や用途、チューブ3の材質等に応じて適宜変更可能である。
【0025】
継手本体7は、チューブ3内にインナーリング部11が挿入された状態でチューブ3と接続されるように構成されている。本実施形態において、継手本体7は、インナーリング部11と、本体部13とを有している。
【0026】
インナーリング部11は、チューブ3の長手方向の一端部5(以下、単に端部5ともいう。)の内径および外径を拡大させるようにこの端部5に挿入(本実施形態においては圧入)される。
【0027】
インナーリング部11は、継手本体7の軸方向一方側に配置されている。インナーリング部11は、本体部13に設けられている。インナーリング部11は、本実施形態においては、本体部13と一体に構成されている。
【0028】
詳しくは、インナーリング部11は、円筒状に形成されている。インナーリング部11は、本体部13の軸方向一方側の端部に、軸方向一方へ突出するように設けられている。
【0029】
インナーリング部11は、その軸方向一方側の端部を除いて、略一定の外径を有しており、チューブ3の内径と略同一寸法の内径を有している。
【0030】
インナーリング部11の軸方向一方側の端部には、テーパ状の外周面15が設けられている。外周面15は、インナーリング部11の軸方向他方側から軸方向一方側へ向かって径が漸次縮小する。
【0031】
本体部13は、継手本体7において、インナーリング部11の軸方向他方側に配置されている。本体部13は、筒部17を有している。
【0032】
筒部17は、インナーリング部11と連通されている。すなわち、筒部17は、インナーリング部11によりチューブ3と接続されており、当該チューブ3およびインナーリング部11の内部を流体が流動可能とされる。筒部17は、インナーリング部11と同軸上に配置されている。
【0033】
筒部17は、インナーリング部11の内径と略同一寸法の内径を有している。筒部17は、その軸方向一方側の端部において、インナーリング部11の外径よりも大きい外径を有している。
【0034】
筒部17の軸方向一方側の端部の外周部には、雄ネジ部19が軸方向に沿って設けられている。雄ネジ部19は、インナーリング部11よりも径方向外方に配置されている。
【0035】
筒部17には、環状に形成される壁部21が設けられている。壁部21は、雄ネジ部19とインナーリング部11との間に形成され、インナーリング部11の軸方向他方側の端部から径方向外側に立ち上がる部分である。壁部21は、所定の径方向幅を有している。
【0036】
すなわち、壁部21は、インナーリング部11の軸方向他方側の端部と雄ネジ部19の軸方向一報側の端部とを繋ぎ、径方向に隆起する部分であって、インナーリング部11の径方向外方に形成される空間に面する。。
【0037】
締結部材9は、インナーリング部11の径方向外方において継手本体7と締結される。締結部材9は、継手本体7への締結時にインナーリング部11をチューブ3を介して径方向に押圧する押圧部23を有している。
【0038】
本実施形態において、締結部材9は、筒状に形成されている。そして、締結部材9は、チューブ3の外側に嵌め込み(外嵌)可能に構成されている。締結部材9は、チューブ3に外嵌された状態でその長手方向に(軸方向に沿って)移動することができる。
【0039】
締結部材9は、第1筒状体25と、第2筒状体27とを有している。本実施形態において、締結部材9は、継手本体7における筒部21に対応するユニオンナットとされている。なお、締結部材9は、後述するように、少なくとも押圧部23を有しており、当該押圧部23がインナーリング部11を押圧する構成であれば、ユニオンナットに限定されるものではない。
【0040】
第1筒状体25は、締結部材9の軸方向一方側に配置されている。第1筒状体25は、チューブ3に外嵌されており、チューブ3の長手方向に移動することができるように構成されている。
【0041】
第1筒状体25は、チューブ3の外径よりも若干大きい内径を有している。第1筒状体25は、継手本体7のインナーリング部11の外径よりも小さい内径を有している。
【0042】
第2筒状体27は、締結部材9の軸方向他方側であって、第1筒状体25の軸方向他方側の端部に設けられている。本実施形態において、第2筒状体27の内周側には、押圧部23を有している。
【0043】
第2筒状体27は、継手本体7における筒部17の軸方向一方側の端部を内部に嵌め込む(内嵌する)ことができる。第2筒状体27は、その軸方向他方側の内周側に、雌ネジ部29を有している。
【0044】
雌ネジ部29は、筒部17の雄ネジ部19に対応するように形成されている。雌ネジ部29は、第2筒状体27が筒部17の軸方向一方側の端部を内嵌する場合に、筒部17の雄ネジ部19に締め付けられる。
【0045】
以上の構成により、チューブ3の端部5の内径および外径を拡大させつつこのチューブ3の端部5にインナーリング部11を圧入し、その状態で第2筒状体27を筒部17の軸方向一方側の端部に対して軸方向他方へ螺進させ、雄ねじ部19と雌ネジ部29とを締め付けることによって締結部材9を継手本体7に締結することが可能となる。
【0046】
そして、締結部材9と継手本体7との締結時には、締結部材9の押圧部23をチューブ3の端部5を介して押圧して、即ち押圧部23によりチューブ3の端部5をインナーリング部11に押し付けて、チューブ3の端部5がインナーリング部11に圧接された状態を維持することが可能となる。
【0047】
結果、締結部材9を継手本体7に締結することによって、チューブ3を継手本体7と接続することができる。また、管継手1において、継手本体7のインナーリング部11とこれに接続されたチューブ3の端部5との間をシールすることができる。
【0048】
次に、特に、管継手1の締結部材9の構成について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0049】
図3は、締結部材9の断面図である。
図4は、
図3の一部拡大図である。
【0050】
図1、
図2、
図3、
図4に示すように、この締結部材9の押圧部23には、径方向内方に開口する凹部50・52が、締結部材9の周方向に沿うように形成されている。
【0051】
詳しくは、押圧部23は、締結部材9の内周側に少なくとも1つ設けられる。本実施形態において、押圧部23は、締結部材9の第2筒状体27の内周側に1つ設けられている。
【0052】
押圧部23は、第2筒状体27において、雌ネジ部29よりも締結部材9の締結方向手前側(軸方向一方側)に配置されている。すなわち、押圧部23は、軸方向において、雌ネジ部29と第1筒状体25との間に配置されている。
【0053】
ここで、締結部材9の締結方向とは、軸方向他方側を指し、
図1における矢印56の方向である。そして、締結部材9の締結方向手前側とは、軸方向一方側である。締結部材9の締結方向奥側とは、軸方向他方側である。
【0054】
本実施形態において、押圧部23は、締結部材9が継手本体7に締結された状態(締結部材9の雌ネジ部29が継手本体7の雄ネジ部19と噛み合った状態)で、雄ネジ部19(壁部21)に対して締結部材9の締結方向に離間するようになっている。
【0055】
すなわち、押圧部23は、締結部材9の雌ネジ部29が継手本体7の雄ネジ部19に対して噛み合う最中および噛み合いが完了した際に、継手本体7における壁部21と接触しないように所定の距離を隔てて対向した状態を保つようになっている。
【0056】
押圧部23の軸方向幅W1は、締結部材9が継手本体7に締結された状態において、押圧部23と壁部21(雄ネジ部19の軸方向一方側)との軸方向幅W2よりも小さく設定されている(
図2参照)。これにより、締結部材9が継手本体7に締結されても、押圧部23と継手本体7の壁部21との接触を防止することができる。
【0057】
特に、
図3、
図4に示すように、押圧部23は、第2筒状体27の内周部46に径方向内方へ突出するように設けられている。押圧部23は、最も径方向内方に位置する頂部が第1筒状体25の内周部48よりも径方向外方に位置するように形成されている。
【0058】
そして、押圧部23は、継手本体7への締結部材9の締結時に押圧部23の頂部でインナーリング部11をチューブ3の端部5の一部を介して径方向内方へ押圧する。
【0059】
押圧部23は、本実施形態においては円環状に形成されている。押圧部23は、第2筒状体37の内周部においてその略全周にわたって延在し、その頂部がチューブ3の端部5と接触し、インナーリング部11に押し付ける。
【0060】
締結部材9の第2筒状体27における1つの押圧部23には、2つの凹部50・52が締結部材9(押圧部23)の周方向に設けられている。
【0061】
詳しくは、各凹部50・52は、押圧部23の頂部側で径方向内方に開口しつつ、押圧部23の頂部から径方向内方に向かって所定の深さを有するように凹んだ状態に形成されている。
【0062】
各凹部50・52は、軸方向に所定間隔を隔てた状態で設けられている。凹部50・52は、押圧部23に所定の間隔で形成されることにより、押圧部23を3つの突出部62・64・66を有する状態に画定する。つまり、押圧部23は、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって、突出部62、凹部50、突出部64、凹部52、突出部66により形成される。
【0063】
ここで、
図4に示すように、各突出部62・64・66は、その頂部72・74・76の形状が断面視で径方向内方へ凸となる曲面とされている。なお、頂部72・74・76の形状は、曲面に代えて、断面視で軸方向に直線状に延びる面としてもよい。
【0064】
各突出部62・64・66の頂部72・74・76が、押圧部23の頂部をなす。そして、
図5に示すように、各頂部72・74・76は、インナーリング部11が挿入されたチューブ3の端部5と接する。
【0065】
また、本実施形態において各凹部50・52は、環状溝に形成されている。換言すれば、各凹部50・52は、押圧部23の締結部材9の周方向に連続する(全周にわたって延在する)ように形成されている。
【0066】
凹部50は、軸方向において、押圧部23の一部を円環状の突出部62と円環状の突出部64とに分けている。凹部52は、軸方向において、押圧部23の一部を円環状の突出部64と円環状の突出部66とに分けている。
【0067】
ここで、凹部50の軸方向の幅、および、凹部50の径方向の長さ(深さ)は、それぞれ、締結部材9の押圧部23が所定の強度を保つ等の条件を満たすように適宜設定され得る。
【0068】
このような構成により、締結部材9を継手本体7に締結したとき(締結部材9の雌ネジ部29を継手本体7の雄ネジ部19に噛み合せたとき)、締結部材9の押圧部23により、インナーリング部11が圧入されたチューブ3の端部5をインナーリング部11側に押し付けることが可能となる。
【0069】
詳しくは、
図5に示すように、押圧部23の各突出部62・64・66の頂部72・74・76をチューブ3の端部5の一部に1つの押圧部23よりも軸方向幅が狭い範囲で接触させ、その状態でこれらの頂部72・74・76によりチューブ3の端部5の一部をインナーリング部11に向けて押圧することが可能となる。
【0070】
したがって、継手本体7がチューブ3と接続された場合に、締結部材9の押圧部23の複数個所によりチューブ3の端部5の対応箇所をインナーリング部11に向けて径方向内方に押圧して、インナーリング部11(継手本体7)とチューブ3との間をシールすることが可能となる。
【0071】
そのため、インナーリング部11とチューブ3の端部5との間にシール箇所を増やすことができる。よって、シールの安全性(確実性)を高めることができる。結果、管継手1のシール性能を向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態においては、締結部材9を継手本体7に締結する際(締結部材9の雌ネジ部29を継手本体7の雄ネジ部19に噛み合せる際)、押圧部23と継手本体7の雄ネジ部19(壁部21)とを軸方向に離間させた状態を保つようになっている。
【0073】
したがって、締結部材9の雌ネジ部29を継手本体7の雄ネジ部19に噛み合せるために、締結部材9の回転操作を行うときに、押圧部23が継手本体7の雄ネジ部19(壁部21)に接触することを回避することが可能となる。よって、押圧部23と継手本体7の雄ネジ部19との接触により、締結部材9の回転操作時にその回転操作に要する力(締付トルク)が増大することを防止できる。
【0074】
また、本実施形態においては、各凹部50・52が環状溝に形成されているので、周方向に延びる押圧部23における突出部62・64・66の各々の頂部72・74・76によりチューブ3の端部5の一部をインナーリング部11に向けて径方向内方に押圧して、これら両者の間を締結部材9(インナーリング部11)の周方向全周にわたってシールすることができる。すなわち、各凹部50・52が1つの押圧部23を複数の突出部62・64・66に区画し、当該突出部62・64・66がチューブ3を介してインナーリング部11を押圧するので、シールを複数個所とすることができる。したがって、シールの安全性(確実性)の向上を図ることができる。
【0075】
さらに、本実施形態においては、押圧部23の各凹部50・52が締結部材9の軸方向において所定間隔ごとに複数設けられているので、凹部が1つ設けられる場合に比べて多くのシール箇所を軸方向に沿って形成することが可能となる。したがって、管継手1のシール性能をより向上させることができる。
【0076】
なお、本発明における凹部は、本実施形態においては押圧部23に設けられた2つの凹部50・52としているが、これに限定するものではなく、少なくとも1つ設けられるものである。本発明における凹部の数は、任意に設定され得る。
【0077】
また、本発明における凹部は、本実施形態においては環状溝に形成された単一の凹部50(52)としているが、これに限定するものではなく、例えば、
図6に示すような、インナーリング部11の周方向に沿うように断続的に設けられた複数の凹部80A・80B・80C・80D・・・(82A・82B・82C・82D・・・)としてもよい。
【0078】
また、本実施形態においては、締結部材9が、第2の押圧部102を有している。この第2の押圧部102は、継手本体7との締結時にインナーリング部11をチューブ3を介して軸方向に押圧するものであり、継手本体7との締結時にインナーリング部11を径方向に押圧する押圧部23とは別のものである。
【0079】
詳しくは、第2の押圧部102は、押圧部23よりも締結部材9の締結方向手前側(軸方向一方側)に配置されている。第2の押圧部102は、第1筒状体25の内周部48において、軸方向一方側の端部に位置する円環状の角部である。
【0080】
そして、第2の押圧部102は、継手本体7への締結部材9の締結時にチューブ3の端部5の一部に接して、これをインナーリング部11のテーパ外周面15に向けて軸方向一方側へ押圧する。
【0081】
このような構成により、第2の押圧部102によりチューブ3の端部5の一部をインナーリング部11に向けて軸方向一方に押圧して、これら両者の間をシールすることができる。そのため、インナーリング部11とチューブ3の端部5との間に押圧部23によるものとは異なるシール箇所を更に増やして、管継手1に対するチューブ3の抜け止めを図り、シールの安全性(確実性)を高めることができる。
【0082】
また、本発明における継手本体は、本実施形態においては一体に構成された(単一部材からなる)インナーリング部11と本体部13とを有する継手本体7としているが、これに限定するものではなく、例えば、
図7に示すような、互いに別体に構成されたインナーリング部91と本体部93とを有する継手本体95としてもよい。
【0083】
このように継手本体95が採用される場合には、インナーリング部91と本体部93との間がシールされる構成とされる。そして、押圧部23が第1筒状体25の内周部に設けられる。押圧部23は、インナーリング部91が挿入されたチューブ3の端部5を介して、インナーリング部91を径方向内方および軸方向他方に向けて押圧することができるように構成される。
【0084】
なお、上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態および変形形態をとり得ることは明らかである。したがって、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0085】
1 管継手
3 チューブ
7 継手本体
9 締結部材
11 インナーリング部
19 雄ネジ部(継手本体のネジ部)
23 押圧部
29 雌ネジ部(締結部材のネジ部)
50 凹部
52 凹部
102 第2の押圧部