(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】解析プログラム、解析装置、及び解析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20230420BHJP
【FI】
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2019011400
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100133570
【氏名又は名称】▲徳▼永 民雄
(72)【発明者】
【氏名】伊東 利雄
【審査官】後藤 昂彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-027683(JP,A)
【文献】特開2016-031629(JP,A)
【文献】特開2015-097019(JP,A)
【文献】特開2014-160456(JP,A)
【文献】特開2005-208791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成し、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間
内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、
計算された勾配の各説明変数に対応する成分に基づいて、前記説明変数空間を複数の領域に分割し、
前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させるための解析プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記計算された勾配の各説明変数に対応する成分と閾値とを比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分が前記閾値よりも大きいか否かを示す情報であることを特徴とする請求項
1記載の解析プログラム。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記計算された勾配の各説明変数に対応する成分を比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分の大小関係を示す情報であることを特徴とする請求項
1記載の解析プログラム。
【請求項4】
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成する分析部と、
前記回帰関数を記憶する記憶部と、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間
内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分に基づいて、前記説明変数空間を複数の領域に分割し、前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する分割部と、
を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行される解析方法であって、
前記コンピュータが、
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成し、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間
内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、
計算された勾配の各説明変数に対応する成分に基づいて、前記説明変数空間を複数の領域に分割し、
前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する、
ことを特徴とする解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析プログラム、解析装置、及び解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動輸送機器(Electric Vehicle,EV)のように、空間内を運動する運動体は、その運動に関して様々な物理的影響を複合的に受ける(例えば、非特許文献1及び非特許文献2を参照)。運動体の運動に影響を与える複数の物理的要素を説明変数及び目的変数として用いることで、目的変数が表す物理的要素を推定する回帰モデルを構築することができる。
【0003】
複数の説明変数が目的変数に対してどのくらい複合的に影響を与えるかを示す影響度を評価する指標として、平均絶対誤差率(Mean Absolute Percentage Error,MAPE)が知られている。回帰モデルに対するMAPEの計算方法は、以下の通りである。
(P1)解析者は、説明変数X=(x1,x2,...,xm)及び目的変数yについて、学習データ(XLt,yLt)(t=1,2,...,q)及び検証データ(XVj,yVj)(j=1,2,...,n)を用意する。m、q、及びnは、2以上の整数であり、(XLt,yLt)及び(XVj,yVj)は、(X,y)の観測値である。
(P2)解析者は、学習データ(XLt,yLt)を用いて教師あり学習を実施することで、回帰モデルy=f(X)を生成する。
(P3)解析者は、検証データyVjと、回帰モデルによる推定値yj=f(XVj)とを用いて、次式によりMAPEを計算する。
【0004】
【数1】
手順(P1)のXV1~XVnとして、特定の説明変数xi(i=1,2,...,m)の値を変化させ、その他の説明変数xiの値を固定したn個のXVjを用いて、目的変数yに対する特定の説明変数xiのMAPEを求めることで、影響度を示すことができる。この場合、MAPEが小さい説明変数xiほど、目的変数yに対する影響度が大きくなる。
【0005】
また、目的変数に対して複合的に影響を与える複数の説明変数を評価し、最適な説明変数を選択する方法として、ステップワイズ法(変数減少法)が知られている(例えば、非特許文献2を参照)。ステップワイズ法の手順は、以下の通りである。
(P11)解析者は、説明変数X=(x1,x2,...,xm)及び目的変数yについて、学習データ(XLt,yLt)(t=1,2,...,q)及び検証データ(XVj,yVj)(j=1,2,...,n)を用意する。
(P12)解析者は、学習データ(XLt,yLt)を用いて教師あり学習を実施することで、回帰モデルy=f(X)を生成する。
(P13)解析者は、赤池の情報量規準(Akaike's Information Criterion,AIC)(例えば、非特許文献3を参照)の値が減少するように、1つずつ説明変数を除去していき、どの説明変数を除去してもAICの値が増加する場合、説明変数の除去を停止する。
【0006】
重回帰のような線形モデルに対し、非線形モデルとしてk近傍交叉カーネルを用いた回帰も知られている(例えば、非特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】“FOMMと富士通、新たなモビリティ社会の実現に向けた協業を開始”、[online]、富士通プレスリリース、2018年3月22日、[平成31年1月7日検索]、インターネット<URL:http://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/03/22.html>
【文献】“AICを使った変数選択”、[online]、PukiWiki、[平成31年1月7日検索]、インターネット<URL:http://hnami.or.tv/d/index.php?AIC%A4%F2%BB%C8%A4%C3%A4%BF%CA%D1%BF%F4%C1%AA%C2%F2>
【文献】“赤池の情報量規準(AIC)の計算方法”、[online]、統計WEB、[平成31年1月7日検索]、インターネット<URL:https://bellcurve.jp/statistics/blog/15754.html>
【文献】濱田他,“e-バギング:情報幾何的に双対なバギングの提案とその応用 k-近傍交叉カーネルを用いたNadaraya-Watson回帰への適用”,信学技報,vol.115,no.112,IBISML2015-23,pp.187-194,2015年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のMAPEに基づく評価方法又はステップワイズ法では、運動体の運動に関する目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定することが困難である。
【0009】
なお、かかる問題は、EVの運動を解析する場合に限らず、他の運動体の運動を解析する場合においても生ずるものである。
【0010】
1つの側面において、本発明は、運動体の運動に関する目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの案では、解析プログラムは、以下の処理をコンピュータに実行させる。
(1)コンピュータは、運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成する。
(2)コンピュータは、回帰関数を用いて、複数の説明変数を含む説明変数空間を複数の領域に分割する。
(3)コンピュータは、複数の領域それぞれについて、目的変数に対する複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、運動体の運動に関する目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】説明変数の第1の組み合わせを示す図である。
【
図2】説明変数の第2の組み合わせを示す図である。
【
図3】不必要な説明変数が異なる領域を示す図である。
【
図6】解析装置の第1の具体例を示す機能的構成図である。
【
図10】勾配ベクトルに対する閾値を示す図である。
【
図14】推定精度が高いモデルと推定精度が低いモデルを示す図である。
【
図16】解析装置の第2の具体例を示す機能的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。
【0015】
運動体の運動に大きな影響を与える物理的要素は、運動体の状態に応じて変化するため、その状態に応じて、説明変数として用いる物理的要素を選択することが望ましい。一例として、運動体がEVであり、目的変数がバッテリのSOC(State of Charge)である場合について説明する。SOCは、充電状態又は充電率と呼ばれることもある。
【0016】
EVは、ガソリン車と違って、SOCを回復させる機能を持っており、SOCが回復すると走行可能距離が延びる。そこで、SOCに対して影響を与える説明変数と、SOCを減少又は増加させる説明変数の値の範囲について説明する。
【0017】
図1は、EVの運動を記述する説明変数の第1の組み合わせを示している。
図1の横軸は、路面の勾配を表す説明変数x1に対応し、縦軸は、EVの速度を表す説明変数x2に対応する。x1が正の場合、路面は上り坂であり、x1が負の場合、路面は下り坂である。x2は、単位時間当たりの走行距離を表していてもよい。m>2である場合、図示しない他の説明変数も用いられる。したがって、X=(x1,x2,...,xm)が表す説明変数空間は、m次元空間である。
【0018】
x1及びx2が表す平面内の領域101~領域103は、SOCに影響を与える領域を表す。領域101は、バッテリの電力消費量が大きく、SOCが減少する領域を表し、領域102は、バッテリの充電量が大きく、SOCが増加する領域を表す。領域103は、電力消費量及び充電量がともに小さく、SOCがほとんど変化しない領域を表す。
【0019】
このうち、領域103内では、x1及びx2がSOCに影響を与えないため、SOCを記述する説明変数として、x1及びx2は不必要である。領域101~領域103以外の領域はグレーゾーンであり、明確な切れ目は存在しない。
【0020】
図2は、EVの運動を記述する説明変数の第2の組み合わせを示している。
図2の横軸は、路面の勾配を表す説明変数x1に対応し、縦軸は、EVの後方から前方へ向かって吹く風の風速を表す説明変数x2に対応する。
【0021】
x1及びx2が表す平面内の領域201内では、SOCに対する風速の影響が、SOCに対する勾配の影響よりも大きく、領域202内では、SOCに対する勾配の影響が、SOCに対する風速の影響よりも大きい。このように、説明変数空間内の領域によって、各説明変数のSOCに対する影響の大小関係が異なる。領域201及び領域202以外の領域はグレーゾーンであり、明確な切れ目は存在しない。
【0022】
運動体の運動に関する目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定する方法として、説明変数空間内の領域毎に説明変数を列挙する処理と、説明変数空間内の領域毎に不必要な説明変数を除去する処理とが挙げられる。
【0023】
説明変数を列挙する処理では、説明変数空間を、説明変数の影響度の順序が互いに異なる領域に分割して、領域毎に、影響度の大きな順に説明変数を列挙することが望ましい。しかしながら、従来のMAPEに基づく評価方法又はステップワイズ法では、x1~xmのうち、どの説明変数がどの領域において影響度が大きいかが不明であり、各領域における説明変数の影響度の順序も不明である。したがって、説明変数空間を領域に分割して、領域毎に、影響度の大きな順に説明変数を列挙することは困難である。
【0024】
不必要な説明変数を除去する処理では、説明変数空間を、目的変数の推定において不必要な説明変数が互いに異なる領域に分割して、領域毎に、不必要な説明変数を選択して除去することが望ましい。しかしながら、従来のMAPEに基づく評価方法では、どの説明変数が不必要であるかが不明なため、説明変数空間を領域に分割して、領域毎に、不必要な説明変数を除去することは困難である。
【0025】
また、ステップワイズ法では、説明変数空間全体において、どの説明変数が不必要であるかが分かったとしても、説明変数空間を領域に分割して、領域毎に、不必要な説明変数を除去することは困難である。
【0026】
図3は、不必要な説明変数が異なる領域の例を示している。
図3の横軸は説明変数x1に対応し、縦軸は説明変数x2に対応する。領域301では、目的変数に対してx2が影響を与えないため、x2は不必要な説明変数である。一方、領域302では、目的変数に対してx1が影響を与えないため、x1は不必要な説明変数である。しかしながら、ステップワイズ法では、領域301及び領域302を見つけることが難しく、結果として、いずれの領域においても説明変数は省略されない。
【0027】
図4は、実施形態の解析装置の機能的構成例を示している。
図4の解析装置401は、記憶部411、分析部412、及び分割部413を含む。
【0028】
図5は、
図4の解析装置401が行う解析処理の例を示すフローチャートである。まず、分析部412は、運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数421を生成し、回帰関数421を記憶部411に格納する(ステップ501)。記憶部411は、回帰関数421を記憶する。
【0029】
次に、分割部413は、回帰関数421を用いて、複数の説明変数を含む説明変数空間を複数の領域に分割し(ステップ502)、複数の領域それぞれについて、目的変数に対する複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する(ステップ503)。
【0030】
図4の解析装置401によれば、運動体の運動に関する目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定することができる。
【0031】
図6は、
図4の解析装置401の第1の具体例を示している。
図6の解析装置601は、記憶部611、分析部612、分割部613、推定部614、及び出力部615を含む。記憶部611、分析部612、及び分割部613は、
図4の記憶部411、分析部412、及び分割部413にそれぞれ対応する。例えば、解析装置601は、クラウド上に設けられたサーバ等の情報処理装置であってもよい。
【0032】
記憶部611は、運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値621を記憶する。運動体は、EV、自動車、航空機、ロボット等であってもよい。EVには、電気自動車、電動アシスト自転車、電動スクーター等が含まれる。
【0033】
例えば、運動体がEVである場合、物理的要素として、EVの速度、EVの走行距離、バッテリの電圧、バッテリの出力電流、バッテリのSOC、風速、風向、路面の勾配等が用いられる。
分析部612は、観測値621を学習データとして用いて、教師あり学習により回帰分析を実施することで、回帰モデルの回帰関数622を生成し、回帰関数622を記憶部611に格納する。複数の物理的要素のうちいずれか1つが、回帰関数622の目的変数yとして用いられ、残りの物理的要素が説明変数X=(x1,x2,...,xm)として用いられる。回帰関数622は、
図4の回帰関数421に対応する。
【0034】
例えば、運動体がEVである場合、目的変数はSOCであってもよい。この場合、説明変数は、EVの速度及び路面の勾配であってもよく、路面の勾配及び風速であってもよい。
【0035】
分割部613は、回帰関数622の複数の説明変数を含む説明変数空間を、複数の領域に分割し、領域毎に、目的変数に対する各説明変数の寄与に関する寄与情報623を生成して、寄与情報623を記憶部611に格納する。各領域は、説明変数空間の一部分に対応する。
【0036】
推定部614は、寄与情報623に基づいて、領域毎に、目的変数に対する寄与が大きな説明変数を選択し、選択された説明変数のみを用いて、領域毎の回帰関数624を生成し、回帰関数624を記憶部611に格納する。そして、推定部614は、回帰関数624を用いて、各領域における目的変数の値を推定し、推定値を生成する。出力部615は、推定部614が生成した推定値を出力する。
【0037】
回帰関数622としては、1回微分可能であり、かつ、微分後の導関数が連続である関数が用いられる。例えば、分析部612は、非特許文献5に記載されたk近傍交叉カーネル回帰を実施することで、このような回帰関数622を生成することができる。
【0038】
k近傍交叉カーネル回帰は、複数の(k)近傍に対する、多変量ガウス密度から作成されるカーネルを用いた回帰分析である。k近傍交叉カーネル回帰によれば、観測値621に密又は疎の部分がある場合であっても、適切な高次元のカーネル回帰関数(f:X∈Rm→y∈R)を作成し、サンプル点のフィッティングを行うことができる。作成されたカーネル回帰関数は、無限回微分可能である。
【0039】
分割部613は、回帰関数622の勾配を計算し、計算された勾配に基づいて、説明変数空間を複数の領域に分割する。回帰関数f(X)の勾配ベクトルdfは、次式により計算される。
【0040】
【数2】
式(2)の右辺のdxi(i=1,2,...,m)は、dfのxi成分を表す。
【0041】
図7は、m=2の場合の勾配ベクトルdfの例を示している。この場合、説明変数空間は、x1及びx2が表す平面である。dx1及びdx2は、dfのx1成分及びx2成分をそれぞれ表し、|df|は、目的変数yの変化量を表す。
【0042】
図8は、
図7の回帰関数f(X)に対する複数の勾配ベクトルdfの例を示している。勾配ベクトル801~勾配ベクトル805は、説明変数空間内の各点において、目的変数yの値が最も変化する方向を示している。各勾配ベクトルのxi成分は、xiが表す物理的要素が目的変数yに与える影響度を表している。
【0043】
例えば、勾配ベクトル801及び勾配ベクトル802のx2成分は0であるため、これらの勾配ベクトルに対応する説明変数空間内の領域では、x1のみが目的変数yに影響を与え、x2は目的変数yに影響を与えないことが分かる。また、勾配ベクトル804及び勾配ベクトル805のx1成分は0であるため、これらの勾配ベクトルに対応する領域では、x2のみが目的変数yに影響を与え、x1は目的変数yに影響を与えない。
【0044】
一方、勾配ベクトル803のx1成分及びx2成分は、いずれも0ではないため、勾配ベクトル803に対応する領域では、x1成分及びx2成分の両方が目的変数yに影響を与える。
【0045】
このように、目的変数yの値が最も変化する方向の勾配ベクトルdfを計算することで、目的変数yに対するxiの局所的な影響度を求めることができ、説明変数空間を、各説明変数の影響度が互いに異なる複数の領域に分割することが可能になる。
【0046】
図9は、
図7の回帰関数f(X)の定義域の例を示している。回帰関数f(X)の定義域としては、説明変数空間全体を用いることができるが、観測値621が存在しない領域又は観測値621が少ない領域では、生成された回帰関数f(X)の信頼性が低い。そこで、観測値621が十分に得られた領域Dを定義域として用いて、領域Dのみを分割対象としてもよい。
【0047】
例えば、分割部613は、説明変数空間内の複数の点それぞれにおける回帰関数622の勾配ベクトルdfを計算し、dfのxi成分と閾値とを比較した結果に基づいて、説明変数空間を複数の領域に分割することができる。この場合、寄与情報623は、領域毎に、dfのxi成分が閾値よりも大きいか否かを示す。
【0048】
また、分割部613は、dfの複数のxi成分を互いに比較した結果に基づいて、説明変数空間を複数の領域に分割することもできる。この場合、寄与情報623は、領域毎に、複数のxi成分の大小関係を示す。
【0049】
図10は、
図7の勾配ベクトルdfに対する閾値の例を示している。
図10(a)は、
図9の領域Dにおけるdx1の例を示している。曲線1011は、領域D内の曲線1001上におけるdx1の変化を示しており、破線1002及び破線1003は、閾値を示している。曲線1001上の点a~点dのうち、点a~点bの区間では、dx1の大きさが閾値よりも小さい。このため、この区間では、目的変数yに対するx1の影響度が小さく、回帰関数f(X)からx1を省略することができる。
【0050】
図10(b)は、
図9の領域Dにおけるdx2の例を示している。曲線1012は、曲線1001上におけるdx2の変化を示しており、点c~点dの区間では、dx2の大きさが閾値よりも小さい。このため、この区間では、目的変数yに対するx2の影響度が小さく、回帰関数f(X)からx2を省略することができる。
【0051】
図11は、分割部613が行う分割処理の例を示すフローチャートである。この例では、xiの区間[ri,si](i=1,...,m)を用いて、領域Dが次式により表される。
【0052】
D=[r1,s1]×・・・×[rm,sm] (3)
まず、分割部613は、自然数kiを用いて、次式により、領域D内における複数のサンプル点p(u1,...,um)(ui=0,1,...,ki)を生成する(ステップ1101)。
【0053】
【数3】
図12は、m=2の場合のサンプル点p(u1,u2)の例を示している。この例では、D=[r1,s1]×[r2,s2]、k1=4、k2=3であり、20個のサンプル点p(u1,u2)(u1=0~4,u2=0~3)が生成されている。
【0054】
なお、領域Dが式(3)以外の形状である場合でも、同様に、複数のサンプル点を生成することが可能である。また、kiとして十分に大きな自然数を用いることで、領域D内に多数のサンプル点を生成することができる。
【0055】
次に、分割部613は、各サンプル点p(u1,...,um)における回帰関数f(X)の勾配ベクトルdf(p(u1,...,um))を、次式により計算する(ステップ1102)。
【0056】
df(p(u1,...,um))
=(dx1(p(u1,...,um)),...,
dxm(p(u1,...,um))) (5)
次に、分割部613は、正の閾値δを設定し、δを用いて、サンプル点の集合を生成する(ステップ1103)。このとき、分割部613は、各dxi(p(u1,...,um))の絶対値Abs(dxi(p(u1,...,um)))をδと比較し、かつ、Abs(dxi(p(u1,...,um)))を互いに比較することで、サンプル点の集合を生成する。これにより、複数のサンプル点が次のような集合に分類される。
【0057】
A(1,1):Abs(dx1(p(u1,...,um)))~Abs(dxm(p(u1,...,um)))のすべてがδよりも小さいサンプル点の集合
A(1,1)
={p(u1,...,um)|Abs(dx1(p(u1,...,um)))<δ,...,Abs(dxm(p(u1,...,um)))<δ}
A(2,j1):m-1個のAbs(dxi(p(u1,...,um)))がδよりも小さいサンプル点の集合
A(2,j1)
={p(u1,...,um)|Abs(dxj1(p(u1,...,um)))≧δ,Abs(dxh(p(u1,...,um)))<δ(h=1,...,m,h≠j1)}(j1=1,...,m)
A(3,j1,j2):m-2個のAbs(dxi(p(u1,...,um)))がδよりも小さいサンプル点の集合
A(3,j1,j2)
={p(u1,...,um)|Abs(dxj1(p(u1,...,um)))≧δ,Abs(dxj2(p(u1,...,um)))≧δ,Abs(dxh(p(u1,...,um)))<δ(h=1,...,m,h≠j1,j2),Abs(dxj1(p(u1,...,um)))≧Abs(dxj2(p(u1,...,um)))}(j1=1,...,m,j2=1,...,m,(j2≠j1))
A(4,j1,j2,j3)~A(m,j1,...,j(m-1)):m-3個~1個のAbs(dxi(p(u1,...,um)))がδよりも小さいサンプル点の集合(これらの集合も、A(3,j1,j2)と同様にして生成される。)
A(m+1,j1,...,jm):Abs(dx1(p(u1,...,um)))~Abs(dxm(p(u1,...,um)))のすべてがδ以上であるサンプル点の集合
A(m+1,j1,...,jm)
={p(u1,...,um)|Abs(dxj1(p(u1,...,um)))≧δ,...,Abs(dxjm(p(u1,...,um)))≧δ,Abs(dxj1(p(u1,...,um)))≧Abs(dxj2(p(u1,...,um)))≧・・・≧Abs(dxjm(p(u1,...,um)))}(j1=1,...,m,j2=1,...,m,(j2≠j1),...,jm=1,...,m,(jm≠j1,...,j(m-1)))
A(1,1)、A(2,j1)、A(3,j1,j2)、A(4,j1,j2,j3)~A(m,j1,...,j(m-1))、及びA(m+1,j1,...,jm)は、領域D内の複数の領域を表している。
【0058】
次に、分割部613は、各集合が表す領域毎に、寄与情報623を生成する(ステップ1104)。例えば、寄与情報623は、領域毎に、各Abs(dxi(p(u1,...,um)))がδ以上であるか否かを示す情報と、各Abs(dxi(p(u1,...,um)))の大小関係を示す情報とを含む。
【0059】
Abs(dxi(p(u1,...,um)))がδよりも小さいことを示す情報は、その領域内において、回帰関数f(X)からxiを省略できることを示している。したがって、推定部614は、この情報に基づいて、領域毎に不必要なxiを除去し、残りのxiのみを用いて、各領域に適した回帰関数624を生成することができる。
【0060】
また、各Abs(dxi(p(u1,...,um)))の大小関係を示す情報は、その領域内において、目的変数yに対する影響度の大きな順にxiを列挙した順序を示している。したがって、推定部614は、この情報に基づいて、領域毎に、Abs(dxi(p(u1,...,um)))の大きな順にN個(N<m)のxiを選択し、選択されたxiのみを用いて、各領域に適した回帰関数624を生成することができる。
【0061】
図13は、
図9の領域Dを分割した分割結果の例を示している。この例では、領域Dが領域1301~領域1304に分割されている。この場合、以下のような情報を含む寄与情報623が生成される。
【0062】
領域1301:
Abs(dx1(p(u1,...,um)))≧δ
Abs(dx2(p(u1,...,um)))<δ
領域1302:
Abs(dx1(p(u1,...,um)))≧δ
Abs(dx2(p(u1,...,um)))≧δ
Abs(dx1(p(u1,...,um)))≧Abs(dx2(p(u1,...,um)))
領域1303:
Abs(dx1(p(u1,...,um)))≧δ
Abs(dx2(p(u1,...,um)))≧δ
Abs(dx2(p(u1,...,um)))≧Abs(dx1(p(u1,...,um)))
領域1304:
Abs(dx1(p(u1,...,um)))<δ
Abs(dx2(p(u1,...,um)))≧δ
これらの情報から、領域1301ではx2を省略でき、領域1304ではx1を省略できることが分かる。また、領域1302ではx1の方がx2よりも影響度が大きく、領域1303ではx2の方がx1よりも影響度が大きいことが分かる。
【0063】
図6の解析装置601によれば、運動体の運動に関する物理的要素の観測値を用いて回帰関数f(X)を生成し、f(X)の勾配ベクトルdfを計算することで、説明変数空間内の領域毎に、目的変数に影響を与える説明変数を特定することができる。したがって、目的変数に対する物理的要素の影響を、運動体の状態に応じて特定することが可能になる。
【0064】
ところで、精度の高い寄与情報623を得るためには、回帰関数622の推定精度が高いことが望ましい。k近傍交叉カーネル回帰により回帰関数622を生成する場合、k近傍交叉カーネル回帰に適した、推定精度が高いモデルと、k近傍交叉カーネル回帰に適していない、推定精度が低いモデルとが存在する。
【0065】
図14は、推定精度が高いモデルと推定精度が低いモデルの例を示している。横軸は、説明変数Xを表し、縦軸は、目的変数yを表す。
【0066】
図14(a)は、推定精度が高いモデルの例を示している。各点は、(X,y)の観測値を表す。このモデルは、例えば、EV等の運動体の運動を記述するモデルに対応し、Xの観測値が少し変化しても、yの観測値は大きく変化しない。
【0067】
曲線1401は、(X,y)の観測値からk近傍交叉カーネル回帰により生成された回帰関数f(X)を表し、破線1402と破線1403の間隔は、回帰関数f(X)に対するyの観測値のバラツキの幅(分算値)を表している。このモデルでは、観測値のバラツキの幅が小さくなる。
【0068】
図14(b)は、推定精度が低いモデルの例を示している。各点は、(X,y)の観測値を表す。このモデルは、例えば、株価、ブラウン運動による位置推定等のように、目的変数yの値が確率によって定まるモデルに対応し、Xの観測値が少し変化すると、yの観測値が大きく変化する。
【0069】
曲線1411は、(X,y)の観測値からk近傍交叉カーネル回帰により生成された回帰関数f(X)を表し、破線1412と破線1413の間隔は、回帰関数f(X)に対するyの観測値のバラツキの幅を表している。このモデルでは、観測値のバラツキの幅が大きくなる。
【0070】
図15は、
図14に示したモデルにおける複数の回帰関数の例を示している。
図15(a)は、
図14(a)のモデルにおける複数の回帰関数の例を示している。曲線1501は、(X,y)の別の観測値からk近傍交叉カーネル回帰により生成された回帰関数g(X)を表す。
【0071】
このモデルでは、f(X)及びg(X)に対する観測値のバラツキの幅が小さいため、g(X)がf(X)に近似し、g(X)の勾配ベクトルdgも、f(X)の勾配ベクトルdfに近似する。したがって、dgに基づく領域分割の分割結果も、dfに基づく領域分割の分割結果に近似するため、回帰関数の違いによる分割結果のバラツキは小さくなる。分割結果のバラツキが小さい場合、寄与情報623の精度が高くなり、適切な説明変数xiを選択することが可能になる。
【0072】
図15(b)は、
図14(b)のモデルにおける複数の回帰関数の例を示している。曲線1511は、(X,y)の別の観測値からk近傍交叉カーネル回帰により生成された回帰関数g(X)を表す。
【0073】
このモデルでは、f(X)及びg(X)に対する観測値のバラツキの幅が大きいため、g(X)≠f(X)となり、dg≠dfとなる。したがって、dgに基づく領域分割の分割結果も、dfに基づく領域分割の分割結果とは大きく異なるため、回帰関数の違いによる分割結果のバラツキは大きくなる。分割結果のバラツキが大きい場合、寄与情報623の精度が低くなり、適切な説明変数xiを選択することが難しくなる。
【0074】
図16は、
図4の解析装置401の第2の具体例を示している。
図16の解析装置1601は、
図6の解析装置601において、出力部615を制御部1611に置き換えた構成を有する。例えば、解析装置1601は、EV等に搭載された情報処理装置であってもよい。
【0075】
制御部1611は、推定部614が回帰関数624を用いて生成した推定値に基づいて、所望の推定値が得られるような説明変数の目標値を決定する。そして、制御部1611は、その説明変数が表す物理的要素を目標値に近づける制御信号を出力することで、運動体の運動を制御する。
【0076】
例えば、運動体がEVであり、目的変数がSOCであり、制御対象の物理的要素がEVの速度である場合、制御部1611は、所望のSOCが得られるような速度の目標値を決定する。そして、制御部1611は、速度を目標値に近づける制御信号を出力することで、EVの運動を制御する。
【0077】
図4の解析装置401、
図6の解析装置601、及び
図16の解析装置1601の構成は一例に過ぎず、解析装置の用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略又は変更してもよい。例えば、
図6の解析装置601において、回帰関数624を生成する処理が外部の装置によって行われる場合は、推定部614を省略することができる。この場合、出力部615は、推定値の代わりに、寄与情報623を出力してもよい。
【0078】
図5及び
図11のフローチャートは一例に過ぎず、解析装置の構成又は条件に応じて一部の処理を省略又は変更してもよい。例えば、
図11の分割処理において、分割部613は、回帰関数f(X)の勾配ベクトルdfの代わりに、回帰関数f(X)を2回以上微分した結果を用いて、サンプル点の集合を生成してもよい。
【0079】
図1~
図3に示した説明変数空間は一例に過ぎず、説明変数空間は、解析対象の運動体及び物理的要素に応じて変化する。
図7~
図10に示した回帰関数f(X)及び勾配ベクトルdfは一例に過ぎず、回帰関数f(X)及び勾配ベクトルdfは、解析対象の運動体及び物理的要素に応じて変化する。
図12に示したサンプル点は一例に過ぎず、サンプル点は、回帰関数f(X)の定義域に応じて変化する。
図13に示した分割結果は一例に過ぎず、分割結果は、回帰関数f(X)に応じて変化する。
【0080】
図14及び
図15に示したモデルは一例に過ぎず、解析対象のモデルは、解析装置の用途又は条件に応じて変化する。
【0081】
式(1)~式(5)の計算式は一例に過ぎず、解析装置の構成又は条件に応じて別の計算式を用いてもよい。
【0082】
図17は、
図4の解析装置401、
図6の解析装置601、及び
図16の解析装置1601として用いられる情報処理装置(コンピュータ)の構成例を示している。
図17の情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)1701、メモリ1702、入力装置1703、出力装置1704、補助記憶装置1705、媒体駆動装置1706、及びネットワーク接続装置1707を含む。これらの構成要素はバス1708により互いに接続されている。
【0083】
メモリ1702は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリであり、処理に用いられるプログラム及びデータを格納する。メモリ1702は、
図4の記憶部411、
図6の記憶部611、又は
図16の記憶部1611として用いることができる。
【0084】
CPU1701(プロセッサ)は、例えば、メモリ1702を利用してプログラムを実行することにより、
図4の分析部412及び分割部413として動作する。CPU1701は、メモリ1702を利用してプログラムを実行することにより、
図6及び
図16の分析部612、分割部613、及び推定部614としても動作する。CPU1701は、メモリ1702を利用してプログラムを実行することにより、
図16の制御部1611としても動作する。
【0085】
入力装置1703は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス等であり、オペレータ又はユーザからの指示又は情報の入力に用いられる。出力装置1704は、例えば、表示装置、プリンタ、スピーカ等であり、オペレータ又はユーザへの問い合わせ又は指示、及び処理結果の出力に用いられる。処理結果は、寄与情報623であってもよく、推定部614が生成する推定値であってもよい。出力装置1704は、
図6の出力部615として用いることができる。
【0086】
補助記憶装置1705は、例えば、磁気ディスク装置、光ディスク装置、光磁気ディスク装置、テープ装置等である。補助記憶装置1705は、ハードディスクドライブ又はフラッシュメモリであってもよい。情報処理装置は、補助記憶装置1705にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1702にロードして使用することができる。補助記憶装置1705は、
図4の記憶部411、
図6の記憶部611、又は
図16の記憶部1611として用いることができる。
【0087】
媒体駆動装置1706は、可搬型記録媒体1709を駆動し、その記録内容にアクセスする。可搬型記録媒体1709は、メモリデバイス、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク等である。可搬型記録媒体1709は、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等であってもよい。オペレータ又はユーザは、この可搬型記録媒体1709にプログラム及びデータを格納しておき、それらをメモリ1702にロードして使用することができる。
【0088】
このように、処理に用いられるプログラム及びデータを格納するコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、メモリ1702、補助記憶装置1705、又は可搬型記録媒体1709のような、物理的な(非一時的な)記録媒体である。
【0089】
ネットワーク接続装置1707は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続され、通信に伴うデータ変換を行う通信インタフェース回路である。情報処理装置は、プログラム及びデータを外部の装置からネットワーク接続装置1707を介して受信し、それらをメモリ1702にロードして使用することができる。ネットワーク接続装置1707は、
図6の出力部615として用いることができる。
【0090】
なお、情報処理装置が
図17のすべての構成要素を含む必要はなく、用途又は条件に応じて一部の構成要素を省略することも可能である。例えば、オペレータ又はユーザとのインタフェースが不要な場合は、入力装置1703及び出力装置1704を省略してもよい。可搬型記録媒体1709又は通信ネットワークを使用しない場合は、媒体駆動装置1706又はネットワーク接続装置1707を省略してもよい。
【0091】
開示の実施形態とその利点について詳しく説明したが、当業者は、特許請求の範囲に明確に記載した本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、追加、省略をすることができるであろう。
【0092】
図1乃至
図17を参照しながら説明した実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成し、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間を複数の領域に分割し、
前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する、
処理をコンピュータに実行させるための解析プログラム。
(付記2)
前記コンピュータは、前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割することを特徴とする付記1記載の解析プログラム。
(付記3)
前記コンピュータは、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分と閾値とを比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分が前記閾値よりも大きいか否かを示す情報であることを特徴とする付記1又は2記載の解析プログラム。
(付記4)
前記コンピュータは、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分を比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分の大小関係を示す情報であることを特徴とする付記1又は2記載の解析プログラム。
(付記5)
前記運動体は電動輸送機器であり、前記複数の説明変数及び前記目的変数は、前記電動輸送機器の速度、前記電動輸送機器の走行距離、バッテリの電圧、バッテリの出力電流、バッテリの充電状態、風速、風向、又は路面の勾配のうち、いずれかの物理的要素を表すことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の解析プログラム。
(付記6)
前記回帰関数は1回微分可能であり、かつ、微分後の導関数が連続であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の解析プログラム。
(付記7)
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成する分析部と、
前記回帰関数を記憶する記憶部と、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間を複数の領域に分割し、前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する分割部と、
を備えることを特徴とする解析装置。
(付記8)
前記分割部は、前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割することを特徴とする付記7記載の解析装置。
(付記9)
前記分割部は、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分と閾値とを比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分が前記閾値よりも大きいか否かを示す情報であることを特徴とする付記7又は8記載の解析装置。
(付記10)
前記分割部は、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分を比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分の大小関係を示す情報であることを特徴とする付記7又は8記載の解析装置。
(付記11)
コンピュータによって実行される解析方法であって、
前記コンピュータが、
運動体の運動に関する複数の物理的要素それぞれの観測値を用いた回帰分析に基づいて、複数の説明変数と目的変数とを含む回帰関数を生成し、
前記回帰関数を用いて、前記複数の説明変数を含む説明変数空間を複数の領域に分割し、
前記複数の領域それぞれについて、前記目的変数に対する前記複数の説明変数それぞれの寄与に関する寄与情報を生成する、
ことを特徴とする解析方法。
(付記12)
前記コンピュータは、前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割することを特徴とする付記11記載の解析方法。
(付記13)
前記コンピュータは、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分と閾値とを比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分が前記閾値よりも大きいか否かを示す情報であることを特徴とする付記11又は12記載の解析方法。
(付記14)
前記コンピュータは、前記説明変数空間内の複数の点それぞれにおける前記回帰関数の勾配を計算し、計算された勾配の各説明変数に対応する成分を比較した結果に基づいて、前記説明変数空間を前記複数の領域に分割し、
前記寄与情報は、前記複数の領域それぞれについて、前記勾配の各説明変数に対応する成分の大小関係を示す情報であることを特徴とする付記11又は12記載の解析方法。
【符号の説明】
【0093】
101~103、201、202、301、302、1301~1304 領域
401、601、1601 解析装置
411、611 記憶部
412、612 分析部
413、613 分割部
421、622、624 回帰関数
614 推定部
615 出力部
621 観測値
623 寄与情報
801~805 勾配ベクトル
1001、1011、1012、1401、1411、1501、1511 曲線
1002、1003、1402、1403、1412、1413 破線
1611 制御部
1701 CPU
1702 メモリ
1703 入力装置
1704 出力装置
1705 補助記憶装置
1706 媒体駆動装置
1707 ネットワーク接続装置
1708 バス
1709 可搬型記録媒体