IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 651M
H01L21/304 648L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019012311
(22)【出願日】2019-01-28
(65)【公開番号】P2020120077
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 勤
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
(72)【発明者】
【氏名】吉原 直彦
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-112652(JP,A)
【文献】特開2009-110985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)水平状態で保持された基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成する工程と、
b)前記基板を加熱して、前記基板の上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成する工程と、
c)第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させ、前記液膜中の異物を除去する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
基板を処理する基板処理方法であって、
a)水平状態で保持された基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成する工程と、
b)前記基板を加熱して、前記基板の上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成する工程と、
c)第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去する工程と、
d)前記c)工程の後に、前記基板の上面を全体に亘って覆う前記第2処理液の液膜を形成する工程と、
e)前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に蒸気層を形成する工程と、
f)前記蒸気層上の前記液膜の中央部に向けてガスを噴射することにより、前記液膜の前記中央部に穴を形成する工程と、
g)前記穴に向けてガスを噴射することにより、前記穴を径方向外方へと広げて前記液膜を前記基板上から除去する工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基板処理方法であって、
前記b)工程が、
前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に前記蒸気層を形成することを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記c)工程において、前記基板の加熱がOFF状態であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記c)工程において、前記基板を回転することにより前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記a)工程において用いられる前記第1処理液と、前記c)工程において用いられる前記第2処理液が同であることを特徴とする基板処理方法
【請求項7】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記基板の周囲を囲む円筒状の第1側壁部と、前記第1側壁部の上端から前記第1側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の第1天蓋部または前記第1側壁部の上端から前記第1側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の第1天蓋部とを有する第1ガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、さらに、前記第1側壁部よりも径方向内側にて前記基板の周囲を囲む円筒状の第2側壁部と、前記第1天蓋部よりも下側において前記第2側壁部の上端から前記第2側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の第2天蓋部または前記第2側壁部の上端から前記第2側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の第2天蓋部とを有する第2ガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、
前記基板処理方法が、
h)前記g)工程と並行して、前記第1ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記第1天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側、かつ、前記第2天蓋部から上方に離間した位置に配置する工程と、
i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記第1天蓋部と、前記第1天蓋部から下方に離間した前記第2天蓋部との間の空間であるガード排気空間を継続的に排気する工程と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記基板の周囲を囲む円筒状の側壁部と、前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の天蓋部または前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の天蓋部とを有するガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、
前記基板処理方法が、
h)前記g)工程と並行して、前記ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側において、前記天蓋部の内周縁と前記基板の前記上面との間の上下方向の距離が4mm未満となる位置に配置する工程と、
i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間を継続的に排気する工程と、
をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項9】
請求項に記載の基板処理方法であって、
前記基板の周囲を囲む円筒状の側壁部と、前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の天蓋部または前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の天蓋部とを有するガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、
前記基板処理方法が、
h)前記g)工程と並行して、前記ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側に配置する工程と、
i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間を継続的に排気する工程と、
をさらに備え、
前記i)工程が、前記h)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間からの排気流量を増大させることを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
基板を処理する基板処理装置であって、
水平状態で保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記処理液供給部により前記基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成し、その後、前記処理液供給部により第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させ、前記液膜中の異物を除去する制御部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
基板を処理する基板処理装置であって、
水平状態で保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板を加熱する加熱部と、
前記基板の上面に向けてガスを噴射するガス噴射部と、
前記処理液供給部により前記基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成し、その後、前記処理液供給部により第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去する制御部と、
を備え、
前記制御部は、さらに、前記液膜を除去した後に、前記基板の上面を全体に亘って覆う前記第2処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に蒸気層を形成し、前記ガス噴射部により前記蒸気層上の前記液膜の中央部に向けてガスを噴射することにより、前記液膜の前記中央部に穴を形成し、前記穴に向けてガスをさらに噴射することにより、前記穴を径方向外方へと広げて前記液膜を前記基板上から除去することを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造では、半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して様々な種類の処理液を利用して処理を行う基板処理装置が用いられている。例えば、表面上にレジストのパターンが形成された基板にエッチング液を供給することにより、基板の表面に対してエッチングが行われる。エッチング後の基板にはリンス液が供給され、基板上のエッチング液が除去される。そして、基板を高速に回転することにより、基板の乾燥が行われる。
【0003】
また、特許文献1では、基板上のパターンの倒壊を抑制しつつ基板を乾燥させる乾燥処理が開示されている。当該乾燥処理では、基板上のリンス液を有機溶剤に置換し、その後、基板を加熱することにより、基板の上面と有機溶剤の液膜との間に有機溶剤の蒸気層が形成される。そして、窒素ガスを噴射して液膜に穴を形成し、さらに穴を広げることにより、有機溶剤の液膜が除去される。特許文献2では、上記乾燥処理において液膜の穴を広げる際に、窒素ガスの流量を大きくすることにより、液膜を良好に除去する手法が開示されている。特許文献3では、上記乾燥処理において液膜の穴を広げる際に、基板の上面に向かって窒素ガスを噴射するとともに、基板の上面と平行にかつ放射状にガスを噴射することにより、上面にミスト等が付着することを抑制する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-112652号公報
【文献】特開2016-136599号公報
【文献】特開2016-162847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記乾燥処理では、基板の加熱により上面と処理液の液膜との間に処理液の蒸気層を形成する際に、基板の上面に付着した異物が処理液の液膜に取り込まれて、液膜と共に浮遊することが、本願発明者により確認されている。しかしながら、上記特許文献1ないし3のように、液膜の穴を広げて液膜を除去する場合、液膜に取り込まれた異物の一部が上面に残留してしまう。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、蒸気層の形成に伴って処理液の液膜に取り込まれた異物を、基板の上面から適切に除去することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)水平状態で保持された基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成する工程と、b)前記基板を加熱して、前記基板の上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成する工程と、c)第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させ、前記液膜中の異物を除去する工程とを備える。
請求項2に記載の発明は、基板を処理する基板処理方法であって、a)水平状態で保持された基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成する工程と、b)前記基板を加熱して、前記基板の上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成する工程と、c)第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去する工程と、d)前記c)工程の後に、前記基板の上面を全体に亘って覆う前記第2処理液の液膜を形成する工程と、e)前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に蒸気層を形成する工程と、f)前記蒸気層上の前記液膜の中央部に向けてガスを噴射することにより、前記液膜の前記中央部に穴を形成する工程と、g)前記穴に向けてガスを噴射することにより、前記穴を径方向外方へと広げて前記液膜を前記基板上から除去する工程とを備える。
【0008】
請求項に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理方法であって、前記b)工程が、前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に前記蒸気層を形成する。
【0009】
請求項に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、前記c)工程において、前記基板の加熱がOFF状態である。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理方法であって、前記c)工程において、前記基板を回転することにより前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させる
【0011】
請求項に記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1つに記載の基板処理方法であって、前記a)工程において用いられる前記第1処理液と、前記c)工程において用いられる前記第2処理液が同である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項に記載の基板処理方法であって、前記基板の周囲を囲む円筒状の第1側壁部と、前記第1側壁部の上端から前記第1側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の第1天蓋部または前記第1側壁部の上端から前記第1側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の第1天蓋部とを有する第1ガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、さらに、前記第1側壁部よりも径方向内側にて前記基板の周囲を囲む円筒状の第2側壁部と、前記第1天蓋部よりも下側において前記第2側壁部の上端から前記第2側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の第2天蓋部または前記第2側壁部の上端から前記第2側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の第2天蓋部とを有する第2ガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、前記基板処理方法が、h)前記g)工程と並行して、前記第1ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記第1天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側、かつ、前記第2天蓋部から上方に離間した位置に配置する工程と、i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記第1天蓋部と、前記第1天蓋部から下方に離間した前記第2天蓋部との間の空間であるガード排気空間を継続的に排気する工程とをさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項に記載の基板処理方法であって、前記基板の周囲を囲む円筒状の側壁部と、前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の天蓋部または前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の天蓋部とを有するガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、前記基板処理方法が、h)前記g)工程と並行して、前記ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側において、前記天蓋部の内周縁と前記基板の前記上面との間の上下方向の距離が4mm未満となる位置に配置する工程と、i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間を継続的に排気する工程とをさらに備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項に記載の基板処理方法であって、前記基板の周囲を囲む円筒状の側壁部と、前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ上方に延びる円環板状の天蓋部または前記側壁部の上端から前記側壁部の径方向内方かつ水平に延びる円環板状の天蓋部とを有するガード部が、前記基板の径方向外側に配置され、前記基板処理方法が、h)前記g)工程と並行して、前記ガード部を前記基板に対して相対的に下方に移動させ、前記天蓋部を、前記基板の前記上面よりも下側に配置する工程と、i)前記e)ないしh)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間を継続的に排気する工程とをさらに備え、前記i)工程が、前記h)工程と並行して、前記ガード部の径方向内側の空間からの排気流量を増大させる。
【0016】
請求項10に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、水平状態で保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板を加熱する加熱部と、前記処理液供給部により前記基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成し、その後、前記処理液供給部により第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去するとともに、前記蒸気層を消滅させ、前記液膜中の異物を除去する制御部とを備える。
請求項11に記載の発明は、基板を処理する基板処理装置であって、水平状態で保持された基板の上面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板を加熱する加熱部と、前記基板の上面に向けてガスを噴射するガス噴射部と、前記処理液供給部により前記基板の上面に第1処理液を供給して、前記基板の上面全体を覆う前記第1処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記上面上の前記第1処理液の前記液膜と前記上面との間に前記第1処理液の蒸気層を形成し、その後、前記処理液供給部により第2処理液を前記基板の上面に供給することにより、前記上面から前記第1処理液の前記液膜を除去する制御部とを備え、前記制御部は、さらに、前記液膜を除去した後に、前記基板の上面を全体に亘って覆う前記第2処理液の液膜を形成し、前記加熱部により前記基板を加熱して、前記液膜の前記基板の上面に接する部分を気化させることにより、前記上面と前記液膜との間に蒸気層を形成し、前記ガス噴射部により前記蒸気層上の前記液膜の中央部に向けてガスを噴射することにより、前記液膜の前記中央部に穴を形成し、前記穴に向けてガスをさらに噴射することにより、前記穴を径方向外方へと広げて前記液膜を前記基板上から除去する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蒸気層の形成に伴って第1処理液の液膜に取り込まれた異物を、基板の上面から適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基板処理装置の構成を示す図である。
図2A】基板を処理する流れを示す図である。
図2B】基板を処理する流れを示す図である。
図3A】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図3B】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図3C】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図4】処理中の基板の上面を模式的に示す図である。
図5A】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図5B】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図5C】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図5D】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図6】処理中の基板の上面を模式的に示す図である。
図7A】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図7B】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図7C】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図7D】基板処理装置の動作を説明するための図である。
図8】比較例の処理中の基板の上面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、円板状の基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板保持回転部21と、気液供給部3と、加熱部4と、カップ部6と、排気部71と、制御部11とを備える。制御部11は、例えばCPU等を備えたコンピュータであり、基板処理装置1の全体制御を担う。
【0020】
基板保持回転部21は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする円板状のベース部211を備える。ベース部211の上面には、複数の(例えば、3以上の)チャックピン212が設けられる。複数のチャックピン212は、中心軸J1を中心とする円周上において、周方向に等間隔に配置される。各チャックピン212は、モータおよび伝達機構を有するピン駆動機構(図示省略)により中心軸J1に平行な軸を中心として回動可能である。チャックピン212の先端には支持部213が設けられる。複数のチャックピン212における複数の支持部213は、ベース部211の上方において基板9の外周縁部を下方から支持する。ベース部211の上面は、基板9の下方を向く主面92(以下、「下面92」という。)と平行であり、両者は隙間を空けて互いに対向する。
【0021】
各支持部213上には上方に突出する把持部が設けられる。ピン駆動機構が、各チャックピン212を一の方向に回動することにより、複数の支持部213上の把持部が、基板9の外周端面に押し付けられる。これにより、複数の把持部により基板9が水平状態で把持(保持)された状態(以下、「基板把持状態」という。)となる。基板把持状態では、基板9の中心は、中心軸J1上に位置する。基板把持状態において、ピン駆動機構が、各チャックピン212を上記方向とは反対方向に回動することにより、複数の把持部が基板9の外周端面から離間した状態(以下、「把持解除状態」という。)となる。把持解除状態では、基板9の外周縁部が複数の支持部213により下方から支持される。
【0022】
基板保持回転部21は、シャフト部221と、基板回転機構22と、ケーシング23とをさらに備える。シャフト部221は、中心軸J1を中心とする棒状であり、シャフト部221の上端がベース部211の下面の中央に固定される。基板回転機構22はモータを有する。基板回転機構22がシャフト部221の下端部を回転することにより、ベース部211が基板9と共に中心軸J1を中心として回転する。ケーシング23は、略円筒状であり、シャフト部221および基板回転機構22の周囲を囲む。
【0023】
加熱部4は、ヒータ41と、ヒータ昇降機構42とを備える。ヒータ41は、中心軸J1を中心とする円板状であり、複数のチャックピン212に支持された基板9とベース部211との間に配置される。ヒータ41は、基板9の下面92側に位置する。ヒータ41は、例えば、ニクロム線等の抵抗発熱体を有するホットプレートである。一例では、基板処理装置1の稼働中、ヒータ41が常時通電されており、一定温度で加熱される。ヒータ41は、抵抗発熱体以外の熱源を利用するものであってもよく、基板処理装置1の稼働中において、ヒータ41のON/OFFが切り換えられてもよい。ヒータのON/OFFが切換えられる例としてLEDを加熱部とすることができる。ヒータにLEDを用いると、電流をONにすると速やかにヒータが加熱される。また電流をOFFにするとヒータがすみやかに冷却される。そのまま、ホットプレートのように常時通電させなくてもよい。また、後述する昇降工程がなくてもよい。ヒータ41の上面は、基板9の下面92のほぼ全体に亘って広がり、下面92に直接的に対向する。ヒータ41の上面は、基板9の下面92とほぼ平行である。図1のヒータ41は、ヒータ上部411と、ヒータ下部412とを備える。ヒータ上部411は、基板9の下面92に対向する円板状である。ヒータ下部412は、ヒータ上部411よりも直径が小さい円板状であり、ヒータ上部411の下側に連続する。
【0024】
ヒータ41の下面(ヒータ下部412の下面)の中央には、中心軸J1を中心とする昇降軸421の上端が固定される。ベース部211およびシャフト部221には、上下方向に延びる中空部が中心軸J1上に設けられており、当該中空部内に昇降軸421が配置される。昇降軸421は、シャフト部221の下端よりも下方まで延びる。シャフト部221の下方において、昇降軸421の下端部がヒータ昇降機構42に接続される。
【0025】
ヒータ昇降機構42は、昇降軸421を介してヒータ41を支持する。ヒータ昇降機構42は、例えば、モータおよびボールねじを備え、モータの駆動により昇降軸421を上下方向に移動する。本処理例では、ヒータ41の上面が複数の支持部213よりも上方に位置する上位置と、ヒータ41の下面がベース部211に近接する下位置とに、ヒータ41が選択的に配置される。下位置に配置されたヒータ41の上面は、複数の支持部213よりも下方に位置する。ヒータ昇降機構42は、上位置と下位置との間における任意の位置にヒータ41を配置可能であってよい。
【0026】
把持解除状態において、ヒータ41が下位置から上位置に移動することにより、複数の支持部213からヒータ41の上面に基板9が受け渡される(後述の図5A参照)。これにより、ヒータ41が基板9の下面92に接触し、基板9がヒータ41により支持されつつ下面92がほぼ均一に加熱される。また、ヒータ41が上位置から下位置に移動することにより、ヒータ41の上面から複数の支持部213に基板9が受け渡される。これにより、ヒータ41が基板9の下面92から離間し、基板9が複数の支持部213により支持される。ヒータ41を下位置に配置した状態では、基板9の下面92はほとんど加熱されない。以下の説明では、ヒータ41が下位置に配置されることにより、基板9の加熱がOFF状態になるものとする。
【0027】
なお、ヒータ41の上面に複数の微小突起が設けられ、ヒータ41が上位置に配置された状態で、基板9が複数の微小突起により支持されてもよい。この場合も、基板9がヒータ41により支持されていると捉えることができる。また、複数の把持部により基板9が把持されたままで(すなわち、基板把持状態において)、上位置に配置されたヒータ41が基板9の下面92に接触または近接してもよい。上位置に配置されたヒータ41が基板9の下面92に接触または近接することにより、基板9がヒータ41により加熱される。
【0028】
カップ部6は、内側ガード部61と、外側ガード部62と、最外周壁部63と、液回収部64と、カップ底部65と、ガード昇降機構66とを備える。内側ガード部61、外側ガード部62および最外周壁部63は、中心軸J1から径方向外方に向かって順に設けられる。後述するように、内側ガード部61および外側ガード部62は、上下方向に移動可能であり、外側ガード部62は、移動可能な最外のガード部である。
【0029】
内側ガード部61は、内側側壁部611と、内側天蓋部612と、液案内部613とを備える。内側側壁部611は、中心軸J1を中心とする円筒状であり、ベース部211の周囲を囲む。内側天蓋部612は、内側側壁部611の上端から径方向内方かつ上方に延びる円環板状である。内側天蓋部612の内周縁は、中心軸J1を中心とする円形であり、複数のチャックピン212に近接する。液案内部613の上部は、内側側壁部611の内周面から径方向内方かつ下方に延びる円環板状である。液案内部613の下部は、中心軸J1を中心とする円筒状であり、当該上部から連続する。
【0030】
外側ガード部62は、外側側壁部621と、外側天蓋部622とを備える。外側側壁部621は、中心軸J1を中心とする円筒状であり、内側側壁部611の周囲を囲む。上下方向に沿って見た場合、外側側壁部621は、内側側壁部611よりも径方向外側にて基板9の周囲を囲む。換言すると、内側側壁部611は、外側側壁部621よりも径方向内側にて基板9の周囲を囲む。外側天蓋部622は、外側側壁部621の上端から径方向内方かつ上方に延びる円環板状である。外側天蓋部622の内周縁は、中心軸J1を中心とする円形であり、複数のチャックピン212に近接する。外側天蓋部622は、内側天蓋部612よりも上側に位置する。上下方向に沿って見た場合に、外側天蓋部622の内周縁は、外側天蓋部622よりも下側に位置する内側天蓋部612の内周縁とほぼ重なる。すなわち、外側天蓋部622の内周縁の直径は、内側天蓋部612の内周縁の直径とほぼ同じである。図1のカップ部6では、外側天蓋部622の内周縁が外側ガード部62の上端であり、内側天蓋部612の内周縁が内側ガード部61の上端である。
【0031】
カップ底部65は、ケーシング23から径方向外方に向かって広がる環状板部である。カップ底部65には、排出管(図示省略)が設けられ、排出管を介してカップ底部65上における液体が外部に排出される。最外周壁部63は、中心軸J1を中心とする円筒状であり、カップ底部65の外周縁から上方に延びる。最外周壁部63は、外側側壁部621の周囲を囲む。最外周壁部63の上端には、排気リング631が設けられる。排気リング631は、最外周壁部63から径方向内方に向かって広がる環状板部である。排気リング631の内周縁の直径は、外側側壁部621の直径よりも僅かに大きい。排気リング631の内周縁は、隙間を空けて外側側壁部621と対向する。排気リング631の内周縁と外側側壁部621との間には、中心軸J1を中心とする環状の間隙69(以下、「最外排気間隙69」という。)が形成される。最外周壁部63には、カップ底部65の近傍において排気口632が設けられる。後述するように、排気口632には、排気部71が接続される。
【0032】
液回収部64は、内側円筒部641と、環状底部642と、外側円筒部643とを備える。内側円筒部641および外側円筒部643は、中心軸J1を中心とする円筒状である。内側円筒部641は、ケーシング23の外周面に固定される。環状底部642は、内側円筒部641の下端から径方向外方に向かって広がる環状板部である。外側円筒部643は、環状底部642の外周縁から上方に延びる。環状底部642には、排出管(図示省略)が設けられ、排出管を介して環状底部642上における液体が外部に排出される。内側ガード部61における液案内部613の下部は、内側円筒部641と外側円筒部643との間に配置される。
【0033】
ガード昇降機構66は、例えば、モータおよびボールねじを備え、内側ガード部61および外側ガード部62のそれぞれを上下方向に移動する。例えば、内側ガード部61は、所定の上位置と下位置との間の任意の位置に配置可能であり、外側ガード部62も、所定の上位置と下位置との間の任意の位置に配置可能である。基板処理装置1に対する基板9の搬入搬出時には、図1に示すように、内側ガード部61が下位置に配置され、外側ガード部62も下位置に配置される。これにより、内側ガード部61の上端、および、外側ガード部62の上端が、複数の支持部213および基板9よりも下方に配置され、外部の搬送機構と干渉することが防止される。
【0034】
外側ガード部62の上端を基板9よりも上方に配置し、内側ガード部61の上端を基板9よりも下方に配置した状態では(後述の図3B参照)、外側ガード部62が基板9に対して径方向に直接的に対向する。この状態では、基板9から飛散する液体は、外側ガード部62の内周面で受けられ、当該内周面および内側ガード部61の外周面を介してカップ底部65へと導かれる。外側ガード部62の上端を基板9よりも上方に配置し、内側ガード部61の上端も基板9よりも上方に配置した状態では(後述の図3A参照)、内側ガード部61が基板9に対して径方向に直接的に対向する。この状態では、基板9から飛散する液体は、内側ガード部61の内周面で受けられ、液案内部613を介して液回収部64へと導かれる。
【0035】
図1の排気部71は、例えばポンプおよび排気管を有し、最外周壁部63の排気口632に接続される。排気部71は、最外周壁部63の内部の気体を外部に排出する。内側ガード部61の内側の空間は、液案内部613の下部と、液回収部64の内側円筒部641および外側円筒部643との間の隙間を介して排気口632に連通する。内側ガード部61の内側天蓋部612と、外側ガード部62の外側天蓋部622との間の空間68(以下、「ガード排気空間68」という。)は、内側側壁部611と外側側壁部621との間の隙間を介して排気口632に連通する。排気リング631の内周縁と外側ガード部62との間の最外排気間隙69は、外側側壁部621と最外周壁部63との間の隙間を介して排気口632に連通する。排気部71では、内側ガード部61の内側、ガード排気空間68および最外排気間隙69を介して、基板9周囲の雰囲気を排気することが可能である。また、排気部71では、排気管に設けられるダンパの調整、または、ポンプの出力の調整等により、排気流量を変更することが可能である。
【0036】
気液供給部3は、第1ノズル31と、第2ノズル32と、第3ノズル33とを備える。後述するように、気液供給部3は、第1ないし第3ノズル31~33を介して基板9の上方を向く主面91(以下、「上面91」という。)に処理液を供給する処理液供給部である。また、気液供給部3は、第3ノズル33を介して基板9の上面91に向けてガスを噴射するガス噴射部でもある。
【0037】
第1ノズル31は、開閉弁312を介して薬液供給源311に接続される。第1ノズル31は、モータおよびアームを有するノズル移動機構(図示省略)により、基板9の上面91の中央部に対向する対向位置と、基板9に対して径方向外方に離れた待機位置とに選択的に配置される。薬液供給源311が第1ノズル31に薬液を供給することにより、第1ノズル31から下方に向かって薬液が吐出される。薬液は、例えばフッ酸、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)等である。
【0038】
第2ノズル32は、開閉弁322を介してリンス液供給源321に接続される。第2ノズル32は、例えば、第1ノズル31と同じアームに支持されており、上記ノズル移動機構により、基板9の上面91の中央部に対向する対向位置と、基板9に対して径方向外方に離れた待機位置とに選択的に配置される。リンス液供給源321が第2ノズル32にリンス液を供給することにより、第2ノズル32から下方に向かってリンス液が吐出される。リンス液は、例えば純水(DeIonized Water)である。純水以外のリンス液が用いられてもよい。また、第1ノズル31および第2ノズル32の移動が、個別のノズル移動機構により行われてもよい。
【0039】
第3ノズル33は、開閉弁332を介して有機溶剤供給源331に接続される。第3ノズル33は、モータおよびアームを有する他のノズル移動機構(図示省略)により、基板9の上面91の中央部に対向する対向位置と、基板9に対して径方向外方に離れた待機位置とに選択的に配置される。有機溶剤供給源331が第3ノズル33に有機溶剤を供給することにより、第3ノズル33から下方に向かって有機溶剤が吐出される。好ましい有機溶剤は、リンス液よりも表面張力が低く、例えばIPA(イソプロピルアルコール)である。IPA以外の有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、ハイドロフルオロエーテル等)が用いられてもよい。
【0040】
第3ノズル33には、さらに、開閉弁342および流量調整弁343を介して不活性ガス供給源341が接続される。第3ノズル33では、例えば、処理液(有機溶剤)の吐出口の周囲に、ガス噴射口が設けられる。不活性ガス供給源341が第3ノズル33に不活性ガスを供給することにより、第3ノズル33から下方に向かって不活性ガスが噴射される。第3ノズル33では、流量調整弁343により不活性ガスの噴射流量が高精度に調整可能である。不活性ガスは、例えば窒素ガスである。窒素ガス以外の不活性ガスが用いられてもよい。また、基板9上に形成された膜やパターンの種類等によっては、不活性ガス以外の種類のガス(例えば、乾燥空気)が用いられてもよい。第3ノズル33では、径方向外方に向かってガスを噴射するガス噴射口が追加されてもよい。
【0041】
図2Aおよび図2Bは、基板処理装置1が基板9を処理する流れを示す図である。以下の説明における基板処理装置1の動作は、原則として制御部11の制御により行われる。図1の基板処理装置1では、排気部71が駆動され、最外周壁部63の内部が、予め設定された通常排気流量で排気される(ステップS11)。なお、基板処理装置1の稼働中、排気部71が常時駆動されていてもよい。
【0042】
内側ガード部61が下位置に配置され、外側ガード部62も下位置に配置された状態で、外部の搬送機構により基板9が搬入され、複数の支持部213上に載置される(ステップS12)。各チャックピン212が回転し、支持部213上の把持部が基板9の外周端面に押し付けられる。これにより、複数の把持部により基板9が把持された基板把持状態が形成される。その後、基板回転機構22により所定の回転速度での基板9の回転が開始される。このとき、ヒータ41は下位置に配置されており、基板9の加熱はOFF状態である。
【0043】
カップ部6では、ガード昇降機構66により、内側ガード部61および外側ガード部62が上方に移動し、図3Aに示すように、内側ガード部61が基板9に対して径方向に直接的に対向する。また、ノズル移動機構により、第1ノズル31および第2ノズル32が、基板9の上面91の中央部に対向する対向位置に配置される。開閉弁312を開いて、薬液供給源311が第1ノズル31に薬液を供給することにより、第1ノズル31から上面91の中央部に薬液が供給される(ステップS13)。上面91では、基板9の回転による遠心力により薬液が基板9の外周縁に向かって広がり、上面91の全体に薬液が供給される。基板9の外周縁から飛散する薬液は、内側ガード部61の内周面により受けられ、液回収部64において回収される(後述のリンス液の供給時において同様)。なお、第1ノズル31からの薬液の吐出は、連続的であっても、断続的であってもよい。後述する第2ノズル32からのリンス液の吐出、第3ノズル33からの有機溶剤の吐出、および、第3ノズル33からの不活性ガスの噴出において同様である。
【0044】
薬液の供給が所定時間継続されると、薬液の供給が停止される。続いて、開閉弁322を開いて、リンス液供給源321が第2ノズル32にリンス液を供給することにより、第2ノズル32から上面91の中央部近傍にリンス液が供給される(ステップS14)。上面91では、基板9の回転によりリンス液が基板9の外周縁に向かって広がり、上面91の全体にリンス液が供給される。リンス液の供給により、上面91に付着する薬液が除去される。リンス液の供給は所定時間継続され、その後、停止される。
【0045】
続いて、内側ガード部61が下方に移動し、図3Bに示すように、外側ガード部62が基板9に対して径方向に直接的に対向する。また、第1ノズル31および第2ノズル32が、基板9に対して径方向外方に離れた待機位置に移動するとともに、第3ノズル33が基板9の上面91の中央部に対向する対向位置に配置される。開閉弁332を開いて、有機溶剤供給源331が第3ノズル33に有機溶剤を供給することにより、第3ノズル33から上面91の中央部に有機溶剤が供給される。このとき、基板9は第1回転速度で回転する。上面91では、遠心力により有機溶剤が基板9の外周縁に向かって広がり、上面91の全体に有機溶剤が供給される。すなわち、上面91に付着するリンス液が有機溶剤に置換される。基板9の外周縁から飛散する有機溶剤は、外側ガード部62の内周面により受けられ、カップ底部65において回収される。なお、第2ノズル32からのリンス液の供給停止後、第3ノズル33からの有機溶剤の供給開始までの間に、上面91が乾燥することを避けるため、図示省略の純水ノズルから、上面91に純水が供給されてもよい。
【0046】
有機溶剤の供給開始から所定時間が経過すると、基板回転機構22により基板9の回転速度が段階的に低減される。本処理例では、基板9の回転速度が、第1回転速度よりも小さい第2回転速度に低減され、第2回転速度での基板9の回転が所定時間継続された後、基板9の回転が停止される。基板9の回転停止後、第3ノズル33からの有機溶剤(第1処理液)の吐出が停止される。これにより、水平状態で保持された基板9の上面91上に、図3Cに示すように有機溶剤の液膜81(有機溶剤のパドル)が形成される(ステップS15)。有機溶剤の液膜81は、基板9の上面91を全体に亘って覆う、すなわち、上面91の全体に亘る液膜81が形成される。ここでは、有機溶剤の液膜81は、基板9の回転が停止した状態で上面91に残留する有機溶剤の塊である。
【0047】
図4は、基板9の上面91を模式的に示す図である。図4の最も左側に示すように、基板9の上面91には、所定のパターンが形成されており、当該パターンは、例えば直立する多数のパターン要素93を含む。有機溶剤の液膜81の厚さは、パターン要素93の高さよりも十分に大きく、パターン要素93の全体が有機溶剤の液膜81に含まれる(覆われる)。
【0048】
続いて、各チャックピン212が回転し、複数の把持部が基板9の外周端面から離間した把持解除状態が形成される。把持解除状態では、複数の支持部213により基板9が下方から支持される。そして、ヒータ昇降機構42により、ヒータ41が下位置から上位置に移動することにより、図5Aに示すように、複数の支持部213からヒータ41の上面に基板9が受け渡される。これにより、ヒータ41が基板9の下面92に接触し、基板9がヒータ41により水平状態で支持されつつ、下面92がほぼ均一に、かつ、急激に加熱される。
【0049】
基板9は、ヒータ41により有機溶剤の沸点以上の温度(例えば、180~220℃)に加熱される。有機溶剤の液膜81は、基板9の上面91から熱を受けることにより、上面91との界面において液膜81の一部(すなわち、上面91に接する部分)が気化する。このように、基板9を下面92側から加熱することにより、図4の左から2番目に示すように、上面91と有機溶剤の液膜81との間に有機溶剤の蒸気層82が形成される(ステップS16)。蒸気層82の存在により、上面91の全体に亘って液膜81が上面91から浮遊する。このとき、パターン要素93および基板9の上面91に付着した異物89(例えば、ポリマー等の不要物)が、有機溶剤の液膜81に取り込まれ、液膜81と共に上面91から浮遊する。例えば、蒸気層82の厚さは、パターン要素93の高さよりも大きく、パターン要素93のほぼ全体が蒸気層82に含まれる。
【0050】
基板処理装置1では、ヒータ41が上位置に配置された後、基板9の加熱を継続すべき加熱時間が実験等により予め得られている。当該加熱時間が経過すると、ヒータ41が上位置から下位置に移動することにより、図5Bに示すように、ヒータ41の上面から複数の支持部213に基板9が受け渡される。これにより、ヒータ41による基板9の加熱がOFF状態となる。ヒータ41による基板9の加熱を上記加熱時間に制限することにより、有機溶剤の液膜81の気化が過度に進行し、液膜81に穴が発生することを防止または抑制することが可能となる。なお、OFF状態では、ヒータ41の輻射熱により有機溶剤の沸点よりも低い温度に基板9が加熱されてもよい。その後、複数の支持部213では、把持部が基板9の外周端面に押し付けられ、基板把持状態が形成される。
【0051】
続いて、図5Cに示すように、第3ノズル33から基板9の上面91の中央部に新たな有機溶剤が供給される。これにより、図4の左から3番目に示すように、有機溶剤の蒸気層82が消滅し、パターン要素93の全体が有機溶剤に含まれる。また、有機溶剤の供給開始後、基板回転機構22による基板9の回転が開始(再開)され、基板9が第3回転速度で回転する。異物89を含む有機溶剤(すなわち、異物が溶解または浮遊した有機溶剤の液膜81)は遠心力により基板9の外周縁から飛散し、図4の最も右側に示すように、異物89が上面91から除去される(ステップS17)。基板9から飛散する有機溶剤は、外側ガード部62の内周面により受けられ、カップ底部65において回収される。以上のように、新たな有機溶剤(第2処理液)の供給により、異物89を含む液膜81が除去され、上面91の全体が新たな有機溶剤により覆われる(すなわち、異物89を含む液膜81および蒸気層82が新たな有機溶剤に置換される。)。
【0052】
本処理例では、第3ノズル33から常温の有機溶剤が吐出されるが、加熱された有機溶剤が吐出されてもよい。この場合、異物89が新たな有機溶剤に取り込まれやすくなり、異物89をより効率よく上面91から除去することが可能となる。また、ステップS17では、第3ノズル33が基板9の上面91に沿って移動しつつ、新たな有機溶剤が吐出されてもよい。
【0053】
有機溶剤の供給開始から所定時間が経過すると、基板回転機構22により基板9の回転速度が段階的に低減される。本処理例では、基板9の回転速度が、第3回転速度よりも小さい第4回転速度に低減され、第4回転速度での基板9の回転が所定時間継続された後、基板9の回転が停止される。基板9の回転停止後、第3ノズル33からの有機溶剤の吐出が停止される。これにより、図5Dに示すように、基板9の上面91を全体に亘って覆う有機溶剤の液膜81a(有機溶剤のパドル)が再度形成される(ステップS18)。図6の最も左側に示すように、有機溶剤の液膜81aの厚さは、パターン要素93の高さよりも十分に大きく、パターン要素93の全体が有機溶剤の液膜81aに含まれる。
【0054】
把持解除状態が形成された後、ヒータ41が下位置から上位置に移動することにより、図7Aに示すように、複数の支持部213からヒータ41の上面に基板9が受け渡される。これにより、基板9がヒータ41により水平状態で支持されるとともに、基板9の下面92がヒータ41により急激に加熱される。基板9は、有機溶剤の沸点以上の温度となる。有機溶剤の液膜81aは、基板9の上面91から熱を受けることにより、上面91との界面において液膜81aの一部(すなわち、上面91に接する部分)が気化する。その結果、図6の左から2番目に示すように、上面91と有機溶剤の液膜81aとの間に有機溶剤の蒸気層82aが形成される(ステップS19)。このとき、パターン要素93および基板9の上面91に異物(上記ステップS17で除去されなかった異物)が残存する場合には、当該異物が、有機溶剤の液膜81aに取り込まれ、液膜81aと共に上面91から浮遊する。例えば、蒸気層82aの厚さは、パターン要素93の高さよりも大きく、パターン要素93の全体が蒸気層82aに含まれる。
【0055】
基板処理装置1では、上面91の全体に亘って蒸気層82aを形成するのに要する加熱時間が予め得られている。当該加熱時間が経過すると、開閉弁342を開いて、不活性ガス供給源341が第3ノズル33に不活性ガスを供給することにより、図7Bに示すように、第3ノズル33から液膜81aの中央部(上面91の中央部)に向かって不活性ガスが、第1流量で噴射される。これにより、図6の左から3番目に示すように、液膜81aの中央部において液膜81aを貫通する穴83が形成される(ステップS20)。
【0056】
このとき、ヒータ41による基板9の加熱も継続されており、図6の最も右側に示すように、穴83が径方向外方へと広がる、すなわち、穴83の直径が次第に大きくなる。また、流量調整弁343では、不活性ガスの流量が漸次(ここでは、段階的に)増大される。すなわち、第3ノズル33では、第1流量よりも大きい第2流量で穴83に向けて不活性ガスが噴射され、その後、第2流量よりも大きい第3流量で穴83に向けて不活性ガスが噴射される。これにより、図7Cに示すように、液膜81aに形成された穴83が径方向外方へとさらに広がる。換言すると、環状に連続した液膜81aの内径が漸次大きくなる。なお、不活性ガスの流量の増大に伴って、ノズル移動機構により、第3ノズル33の上下方向の位置が変更されてもよい(例えば、基板9の上面91に近づけられる。)。
【0057】
カップ部6では、不活性ガスの流量の増大に並行して、ガード昇降機構66により、外側ガード部62が下方に移動する。これにより、図7Dに示すように、外側天蓋部622が、基板9の上面91よりも下側であり、かつ、内側天蓋部612から上方に離間した位置に配置される(ステップS21)。図7Dの例では、上記位置は、径方向において外側天蓋部622の内周縁がヒータ上部411の側面に対向する位置であり、以下、上記位置を「ヒータ上部対向位置」という。外側天蓋部622をヒータ上部対向位置に配置することにより、外側天蓋部622の内周縁とヒータ上部411の側面との間に、環状間隙67が形成される。
【0058】
ヒータ上部対向位置は、外側天蓋部622の内周縁と基板9の上面91との間の上下方向の距離が、例えば4mm未満となる位置であり、好ましくは1~3mmとなる位置である。図7Dの例では、内側天蓋部612の内周縁が、ヒータ41の上面の外周縁から下方に延びる側面よりも下側に配置される、詳細には、径方向においてヒータ下部412の側面と対向する位置に配置される。これにより、環状間隙67を介した排気において、圧力損失が大きくなることを抑制することが可能となる。図7Dの状態では、外側天蓋部622と、外側天蓋部622から下方に離間した内側天蓋部612との間のガード排気空間68の幅(上下方向の幅)が、有機溶剤の供給時における幅(図5C参照)よりも小さくなる。
【0059】
既述のように、排気部71では、最外周壁部63の内部が排気されており、内側ガード部61の内側、ガード排気空間68および最外排気間隙69を介して、基板9周囲の雰囲気が排気される。詳細には、外側天蓋部622の内周縁が、ヒータ上部対向位置に配置されることにより、図7D中に矢印A1で示すように、上下方向において基板9に近い位置で(上記環状間隙67を介して)、基板9の周囲が排気される。これにより、第3ノズル33から噴出された不活性ガスが、基板9の上面91近傍を上面91に沿って流れやすくなり、液膜81aの穴83を適切に広げることが可能となる。また、基板9の外周縁近傍における、ミスト状またはガス状の異物を含む雰囲気(図7D中に抽象的に示す雰囲気F)を効率よく吸引するとともに、外周縁近傍における有機溶剤を上面91から効率よく除去することが可能となる。
【0060】
また、ガード排気空間68の幅が比較的小さいことにより、図7D中に矢印A2で示すように、基板9の外周縁から斜め下方へと有機溶剤を引き込んで、上面91上の有機溶剤をより効率よく除去することが可能となる。さらに、図7D中に矢印A3で示すように、外側ガード部62の周囲に設けられた最外排気間隙69を介して、最外排気間隙69の上方の空間の排気も行われる。このとき、外側天蓋部622の全体が、基板9の上面91よりも下側に配置されることにより、最外排気間隙69からの排気の影響により、有機溶剤や異物等が基板9よりも上側の空間に広がることを抑制することが可能となる。排気部71(図1参照)では、不活性ガスの流量の増大に合わせて、排気流量が既述の通常排気流量から増大されるため、基板9周囲の雰囲気に含まれるミスト状またはガス状の異物が、基板9の上面91に付着して上面91が汚染されることがより確実に防止または抑制される。
【0061】
基板処理装置1では、不活性ガスの噴射が継続されることにより、液膜81aの穴83が基板9の外周縁まで広がり、液膜81aが上面91から除去される(ステップS22)。既述のように、不活性ガスの噴射に並行して、排気部71により最外周壁部63の内部が排気されることにより、基板9の外周縁近傍における液膜81aの除去が促進される。
【0062】
その後、ヒータ41が上位置から下位置に移動することにより、ヒータ41の上面から複数の支持部213に基板9が受け渡される。また、ヒータ41による基板9の加熱がOFF状態となる。複数の支持部213では、把持部が基板9の外周端面に押し付けられ、基板把持状態が形成される。また、外側ガード部62が上方に移動し、外側ガード部62が基板9に対して径方向に直接的に対向する(図5D参照)。そして、基板回転機構22が基板9およびベース部211を回転することにより、ベース部211および複数のチャックピン212に付着した有機溶剤が除去される、すなわち、ベース部211等が乾燥される(ステップS23)。このとき、基板9の上面91に対する不活性ガスの噴射が、ステップS20から継続されることにより、ベース部211等から飛散した有機溶剤が、カップ部6で跳ね返って基板9の上面91に付着することが防止または抑制される。
【0063】
基板9およびベース部211の回転は所定時間継続された後、停止される。第3ノズル33からの不活性ガスの噴射も停止され、第3ノズル33が待機位置へと移動する。また、内側ガード部61が下位置に配置され、外側ガード部62も下位置に配置される。そして、複数の把持部が基板9の外周端面から離間した後(把持解除状態)、外部の搬送機構により基板9が基板処理装置1の外部に搬出される(ステップS24)。その後、排気部71が停止される(ステップS25)。既述のように、基板処理装置1の稼働中、排気部71が常時駆動されていてもよい。以上により、基板処理装置1における基板9の処理が完了する。
【0064】
ここで、図2Aおよび図2BにおけるステップS17~S19を省略した比較例の処理について説明する。比較例の処理では、図8の最も左側に示すように、基板9の上面91と有機溶剤の液膜81(異物89を含む液膜81、すなわち、異物89が溶解または浮遊した有機溶剤の液膜81)との間に有機溶剤の蒸気層82が形成されると(ステップS16)、図8の左から2番目に示すように、液膜81の中央部に向けて不活性ガスを噴射することにより、液膜81の中央部において液膜81を貫通する穴83が形成される(ステップS20)。そして、穴83に向けて不活性ガスの噴射を継続することにより、穴83が径方向外方に広がり、液膜81が基板9上から除去される(ステップS22)。この場合、図8の最も右側に示すように、液膜81に取り込まれた異物89の一部が、液膜81の除去(上面91の乾燥)の際に、パターン要素93等に付着して上面91に残留してしまう。
【0065】
これに対し、基板処理装置1では、基板9の上面91と有機溶剤の液膜81との間に有機溶剤の蒸気層82を形成した後(ステップS15,S16)、新たな有機溶剤を上面91に供給することにより、上面91から有機溶剤の液膜81が除去される(ステップS17)。これにより、蒸気層82の形成に伴って有機溶剤の液膜81に取り込まれた異物89を、液膜81と共に基板9の上面91から適切に除去することができる。また、新たな有機溶剤の供給と共に、基板9を回転することにより、異物89を含む液膜81を上面91から効率よく除去することができる。なお、第3ノズル33から基板9上に供給される新たな有機溶剤の流量等によっては、基板9の回転が省略されてもよい。
【0066】
ところで、ステップS17において、基板9の上面91に新たな有機溶剤を供給する際に、ヒータ41による基板9の加熱を継続する(すなわち、基板9の加熱をOFF状態としない)ことも考えられる。しかしながら、この場合、有機溶剤の温度によっては、第3ノズル33から有機溶剤が直接供給される基板9の中央部が比較的低温となり、基板9の外周部が高温となるため、基板9が反ってしまい、上面91の全体において有機溶剤を保持することが困難となる。換言すると、上面91の一部の領域において有機溶剤が存在しない状態となり、有機溶剤の表面張力の影響によりパターン要素93が倒壊する可能性がある。したがって、上面91に有機溶剤を供給する際に、パターン要素93の倒壊をより確実に防止または抑制するには、基板9の加熱がOFF状態であることが好ましい(有機溶剤の液膜81,81aを形成するステップS15,S18において同様)。なお、ステップS17において基板9に供給される新たな有機溶剤が比較的高温である場合には、基板9の反りは抑制されるため、ヒータ41による基板9の加熱を継続しても上記問題は生じない。
【0067】
上記基板処理では、新たな有機溶剤の供給による液膜81の除去(ステップS17)の後、当該新たな有機溶剤の液膜81aが形成され(ステップS18)、基板9の下面92側からの加熱により、上面91と液膜81aとの間に蒸気層82aが形成される(ステップS19)。そして、不活性ガスの噴射により、液膜81aの中央部に穴83が形成され(ステップS20)、不活性ガスの更なる噴射により、穴83が径方向外方へと広げられて液膜81aが除去される(ステップS22)。これにより、基板9の上面91上の異物をさらに除去するとともに、乾燥処理において有機溶剤の表面張力の影響によりパターン要素93が倒壊することを防止または抑制することができる。また、新たな有機溶剤の供給(有機溶剤の液膜81の除去)に連続して当該有機溶剤の液膜81aが形成されることにより、異物89の除去に係るステップS15~S17の処理と、上記乾燥処理とを効率よく行うことができる。
【0068】
基板処理装置1では、液膜81aの加熱による蒸気層82aの形成から、液膜81aの除去が完了するまでの間、すなわち、ステップS19~S22に並行して、外側ガード部62の径方向内側の空間が継続的に排気される(ガード排気空間68も同様)。また、蒸気層82aの形成よりも前に、外側ガード部62が、基板9の径方向外側において基板9と径方向に対向する位置に配置される。これにより、蒸気層82aの形成の際に発生する有機溶剤の雰囲気を、基板9の周囲から適切に排気することができ、有機溶剤の雰囲気に含まれる、ミスト状またはガス状の異物が基板9に付着することを防止または抑制することができる。
【0069】
また、液膜81aの穴83を広げる際に(すなわち、ステップS22に並行して)、外側ガード部62が下方に移動し、外側天蓋部622が、基板9の上面91よりも下側であるヒータ上部対向位置に配置される(ステップS21)。これにより、上下方向において基板9に近い位置で基板9の周囲を排気し、ミスト状またはガス状の異物が基板9に付着することをさらに防止または抑制することができる。さらに、ステップS19よりも前に、内側ガード部61が、基板9の径方向外側において基板9よりも下側に配置されており、ステップS21において、外側天蓋部622が、内側ガード部61の内側天蓋部612から上方に離間した位置に配置される。これにより、基板9の外周縁から斜め下方へと有機溶剤を引き込んで、上面91上の有機溶剤を効率よく除去することが可能となる。その結果、有機溶剤の液膜81aを除去する際に、液膜81aの残渣の抑制と、異物の付着の抑制とを両立することが実現される。
【0070】
上記基板処理では、有機溶剤の液膜81aの除去において(すなわち、ステップS22に並行して)、排気部71により外側ガード部62の径方向内側の空間からの排気流量が増大される。これにより、基板9の外周縁近傍における雰囲気をより確実に排気することができ、当該雰囲気に含まれるミスト状またはガス状の異物が基板9に付着することをさらに防止または抑制することができる。
【0071】
上記基板処理装置1および基板処理方法では様々な変形が可能である。
【0072】
上記実施の形態では、基板9の上面91を全体に亘って覆う有機溶剤の液膜81を形成し、上面91と液膜81との間に、およそ上面91の全体に亘る蒸気層82を形成することにより、上面91の全体における異物の剥離を一括して行うことが可能であるが、基板処理装置1の設計によっては、上面91の一部において蒸気層82が形成されてもよい。
【0073】
上記ステップS15~S17、すなわち、有機溶剤の液膜81の形成、有機溶剤の蒸気層82の形成、および、新たな有機溶剤による液膜81の除去は、繰り返し行われてもよい。これにより、基板9の上面91に付着した異物を、より確実に除去することが可能となる。また、上記ステップS15~S17の処理は、基板9の乾燥に係る上記ステップS18~S22から独立して行われてもよい。換言すると、基板9の上面91に付着した異物を適切に除去することが可能な上記ステップS15~S17の処理は、例えば、薬液処理等の前工程として行うことも可能である。
【0074】
上記実施の形態では、液膜81の形成に用いられる有機溶剤と、液膜81の除去に用いられる新たな有機溶剤とが同種であるが、当該有機溶剤と当該新たな有機溶剤とが異なる種類であってもよい。換言すると、液膜81の形成に用いられる第1処理液と、液膜81の除去に用いられる第2処理液とが異なる種類であってもよい。以上のように、基板処理装置1では、水平状態で保持された基板9の上面91に第1処理液を供給して、上面91全体を覆う第1処理液の液膜が形成される。また、基板9を加熱して、上面91上の第1処理液の液膜と上面91との間に第1処理液の蒸気層が形成される。そして、第2処理液を基板9の上面91に供給することにより、上面91から第1処理液の液膜が除去される。これにより、蒸気層の形成に伴って第1処理液の液膜に取り込まれた異物を、基板9の上面91から適切に除去することができる。基板処理装置1では、第1処理液として、有機溶剤以外の処理液(例えば、純水等)が利用されてもよい。液膜81を除去するという観点では、第2処理液は有機溶剤に限定されない。さらに、ステップS18の処理は第2処理液と異なる種類の有機溶媒であってもよい。また、ステップS17とステップS18で使用する有機溶媒は異なる種類であってもよい。
【0075】
加熱部4において、ヒータ41の形状は適宜変更されてもよい。また、加熱部4では、ランプを用いたヒータ等を設けることも可能である。ヒータの構造によっては、ヒータ自体のON/OFFにより、基板9の加熱のON状態とOFF状態とが切り替えられてもよい。加熱部4は、必ずしも基板9の真下に配置される必要はなく、基板9の斜め下に配置されてもよい。また、基板9の加熱により、処理液(第1処理液または第2処理液)の液膜と上面91との間に蒸気層が形成可能であるならば、加熱部4は基板9の下面92側以外に上方、側方に配置されてもよい。
【0076】
内側ガード部61において、内側天蓋部612が、内側側壁部611の上端から径方向内方かつ水平に延びる円環板状であってもよい。同様に、外側ガード部62において、外側天蓋部622が、外側側壁部621の上端から径方向内方かつ水平に延びる円環板状であってもよい。
【0077】
ステップS21では、基板9を支持するヒータ41が上方に移動することにより、外側天蓋部622がヒータ上部対向位置に配置されてもよい。このように、ステップS21では、外側ガード部62が、基板9に対して相対的に下方に移動すればよい。
【0078】
基板処理装置1において処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。また、基板の形状は、円板状以外であってもよい。
【0079】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0080】
1 基板処理装置
3 気液供給部
4 加熱部
9 基板
11 制御部
61 内側ガード部
62 外側ガード部
68 ガード排気空間
81,81a 液膜
82,82a 蒸気層
83 (液膜の)穴
91 (基板の)上面
92 (基板の)下面
611 内側側壁部
612 内側天蓋部
621 外側側壁部
622 外側天蓋部
S11~S25 ステップ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8