(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】基板乾燥方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 648K
(21)【出願番号】P 2019024815
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 弘明
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 一樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直澄
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠太
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030516(WO,A1)
【文献】特開2017-139279(JP,A)
【文献】特開2010-239013(JP,A)
【文献】特開2007-242956(JP,A)
【文献】特開2015-119168(JP,A)
【文献】特開2011-029455(JP,A)
【文献】特開2008-130835(JP,A)
【文献】特開2015-046443(JP,A)
【文献】特開2002-045805(JP,A)
【文献】特開2013-153062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
B08B 1/00 -13/00
F26B 5/08 - 5/10
B01F 23/40 -23/57
B01F 35/71 -35/88
B01J 4/00 - 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、
少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲を表す設定濃度範囲を確認する設定濃度確認工程と、
前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を原液タンク内に貯留する原液貯留工程と、
前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液
と、前記原液と、を、前記原液タンクの外で
ノズルの方に流動させながら、前記基板に供給する前に混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成工程と、
前記ノズルに向かって乾燥前処理液配管内を流れる前記乾燥前処理液の一部を、前記ノズルの上流で前記乾燥前処理液配管に接続された分岐配管に流入させる流入工程と、
前記分岐配管に流入した前記乾燥前処理液を前記原液タンク内に供給することにより、前記原液タンク内の前記原液における前記昇華性物質の濃度を低下させる補充工程と、
前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成工程と、
前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華工程とを含む、基板乾燥方法。
【請求項2】
前記原液における前記昇華性物質の濃度は、前記原液における前記溶媒の濃度よりも低い、請求項1に記載の基板乾燥方法。
【請求項3】
前記乾燥前処理液における前記希釈液の濃度は、前記乾燥前処理液における前記原液の濃度よりも高い、請求項1または2に記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
前記希釈液は、前記溶媒である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項5】
前記基板乾燥方法は、前記原液および希釈液の混合液である前記乾燥前処理液を前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに吐出させる吐出工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項6】
前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲外である場合、前記原液および希釈液の混合比を変更すると共に、前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を延長する吐出時間延長工程と、をさらに含む、請求項5に記載の基板乾燥方法。
【請求項7】
前記乾燥前処理液が前記基板の前記表面に供給される前に、前記溶媒を前記基板の前記表面に供給する溶媒供給工程と、
前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲を超えている場合、前記溶媒が前記基板の前記表面にある状態で、前記乾燥前処理液を前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに吐出させると共に、前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を短縮する吐出時間短縮工程と、をさらに含む、請求項5に記載の基板乾燥方法。
【請求項8】
前記基板の前記表面に垂直な方向に見たときに前記基板のまわりに配置された筒状のポッドに向けて前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させるプリディスペンス工程と、
前記ポッドに向けて前記ノズルから吐出された前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、
前記ノズルから吐出された前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内であることを確認した後に、前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出工程と、をさらに含む、請求項5に記載の基板乾燥方法。
【請求項9】
前記原液タンク内の前記原液を第1ポンプで前記原液タンクの外に送る第1送液工程と、
前記第1ポンプによって送られた前記原液を含む前記乾燥前処理液を前記ノズルに向けて
前記乾燥前処理液配管に案内させる供給工程と
、をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の基板乾燥方法。
【請求項10】
パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板処理装置であって、
少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲を表す設定濃度範囲を確認する設定濃度確認手段と、
前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を貯留する原液タンクと、
前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液
と、前記原液と、を、前記原液タンクの外で
ノズルの方に流動させながら、前記基板に供給する前に混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成手段と、
前記ノズルに向かって乾燥前処理液配管内を流れる前記乾燥前処理液の一部を、前記ノズルの上流で前記乾燥前処理液配管に接続された分岐配管に流入させる流入手段と、
前記分岐配管に流入した前記乾燥前処理液を前記原液タンク内に供給することにより、前記原液タンク内の前記原液における前記昇華性物質の濃度を低下させる補充手段と、
前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成手段と、
前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華手段とを含む、基板処理装置。
【請求項11】
パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、
通知されたレシピを複数のレシピの中から検索し、見つかった1つのレシピに含まれる設定濃度範囲に相当する、少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲、を確認する設定濃度確認工程と、
前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を原液タンク内に貯留する原液貯留工程と、
前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液を、前記原液タンクの外で前記基板に供給する前に、または、前記基板の前記表面上で、前記原液と混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成工程と、
前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成工程と、
前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華工程とを含む、基板乾燥方法。
【請求項12】
パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板処理装置であって、
通知されたレシピを複数のレシピの中から検索し、見つかった1つのレシピに含まれる設定濃度範囲に相当する、少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲、を確認する設定濃度確認手段と、
前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を貯留する原液タンクと、
前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液を、前記原液タンクの外で前記基板に供給する前に、または、前記基板の前記表面上で、前記原液と混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成手段と、
前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成手段と、
前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華手段とを含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を乾燥させる基板乾燥方法および基板処理装置に関する。基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置や有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置やFPDなどの製造工程では、半導体ウエハやFPD用ガラス基板などの基板に対して必要に応じた処理が行われる。このような処理には、薬液やリンス液などの処理液を基板に供給することが含まれる。処理液が供給された後は、処理液を基板から除去し、基板を乾燥させる。
基板の表面にパターンが形成されている場合、基板を乾燥させるときに、基板に付着している処理液の表面張力に起因する力がパターンに加わり、パターンが倒壊することがある。その対策として、IPA(イソプロピルアルコール)などの表面張力が低い液体を基板に供給したり、パターンに対する液体の接触角を90度に近づける疎水化剤を基板に供給したりする方法が採られる。しかしながら、IPAや疎水化剤を用いたとしても、パターンを倒壊させる倒壊力が零にはならないので、パターンの強度によっては、これらの対策を行ったとしても、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0003】
近年、パターンの倒壊を防止する技術として昇華乾燥が注目されている。たとえば特許文献1には、昇華乾燥を行う基板乾燥方法および基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の昇華乾燥では、昇華性物質の溶液が基板の上面に供給され、基板上のDIWが昇華性物質の溶液に置換される。その後、昇華性物質の溶液から溶媒を蒸発させて、昇華性物質を析出させる。これにより、固体の昇華性物質からなる膜が基板の上面に形成される。その後、基板が加熱される。これにより、基板上の昇華性物質が昇華し、基板から除去される。
【0004】
特許文献1の段落0016には、「溶液の温度を低くすることにより、昇華性物質の濃度が低くても(溶解させる昇華性物質が少量でも)高い飽和度の溶液を供給することができる。」と記載されている。特許文献1の段落0017には、「高濃度の昇華性物質の溶液を供給することが望まれる場合には、循環管路32にヒータを設け、昇華性物質の溶液を比較的高温に維持してもよい。」と記載されている。
【0005】
特許文献1の段落0027には、「DIWが昇華性物質の溶液で置換されてパターン間に昇華性物質の溶液が充填されたら、ウエハWの回転を調整することにより、昇華性物質の溶液の膜厚を調整する。(中略)最終的に所望の膜厚の昇華性物質の膜(固体の膜)が得られるように、昇華性物質の溶液の膜厚を調整する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において昇華性物質の濃度について言及している箇所は、特許文献1の段落0016および0017だけである。基板の表面に形成されたパターンの高さに基づいて昇華性物質の濃度を設定することは、特許文献1に開示されていない。
本願発明者らは、昇華乾燥において、昇華性物質を含む固化膜の厚さは、パターンの倒壊率に大きな影響を及ぼすとの知見を有している。具体的には、固化膜はパターンに対して厚すぎても薄すぎても、パターンの倒壊率が低下する。言い換えると、パターンの倒壊率を低下させる上で、固化膜の厚さには適切な範囲がある。この適切な範囲は、パターンに応じて変化する。たとえば、パターンの高さが変わると、固化膜の適切な厚さも変わる。
【0008】
基板の上面上の昇華性物質の溶液の厚さと昇華性物質の濃度とは、固化膜の厚さに影響を与える要因に含まれる。特許文献1の段落0027に記載されているように、特許文献1では、基板の回転を調整することにより、昇華性物質の溶液の厚さを調整している。しかしながら、基板の回転速度を変更することによって、ミリメートル単位やマイクロメートル単位で昇華性物質の溶液の厚さを精密に変更することは難しい。固化膜の適切な厚さの範囲が狭い場合、昇華性物質の溶液の厚さを精密に制御できないと、適切な厚さの固化膜を形成できない。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、昇華性物質を含む固化膜の厚さを精密に制御でき、パターンの倒壊率を低下させることができる基板乾燥方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板乾燥方法であって、少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲を表す設定濃度範囲を確認する設定濃度確認工程と、前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を原液タンク内に貯留する原液貯留工程と、前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液を、前記原液タンクの外で前記原液と混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成工程と、前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成工程と、前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華工程とを含む、基板乾燥方法を提供する。
【0011】
この構成によれば、昇華性物質と溶媒とを含む原液に溶媒を含む希釈液を混ぜて、乾燥前処理液を作成する。その後、基板上の乾燥前処理液から溶媒を蒸発させて、昇華性物質を含む固化膜を基板の表面に形成する。その後、固化膜を昇華させて、基板の表面から固化膜を除去する。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、倒壊するパターンの数を減らしながら、基板を乾燥させることができる。
【0012】
昇華乾燥において、固化膜はパターンに対して厚すぎても薄すぎても、パターンの倒壊率が低下する。固化膜の厚さには、パターンの高さに応じて変化する最適な範囲がある。乾燥前処理液の濃度、つまり、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度は、固化膜の厚さに影響を与える要因の一つである。乾燥前処理液の濃度を制御すれば、乾燥前処理液の液膜の厚さだけを制御する場合に比べて、固化膜の厚さを精密に制御できる。
【0013】
乾燥前処理液の濃度は、原液および希釈液の混合比に応じて変化する。乾燥前処理液の濃度は、少なくともパターンの高さに基づいて設定された設定濃度範囲内の値に調整されている。したがって、どのような高さのパターンが基板の表面に形成されていても、パターンの倒壊率を低下させることができる。これにより、乾燥後の基板の品質を高めることができる。
【0014】
乾燥前処理液は、基板から離れた位置で作成されてもよいし、基板の表面上で作成されてもよい。つまり、基板から離れた位置で原液および希釈液を混合してもよいし、基板の表面上で原液および希釈液を混合してもよい。原液および希釈液の混合と乾燥前処理液の濃度の調整とは同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。たとえば、基板から離れた位置で原液および希釈液を混合して乾燥前処理液を作成し、その後、基板の表面上で原液または希釈液を乾燥前処理液に混合して、乾燥前処理液の濃度を調整してもよい。
【0015】
昇華性物質の凝固点は、室温以上であってもよいし、室温未満であってもよい。昇華性物質の融液が原液である場合、昇華性物質の凝固点が室温以上であると、原液タンク内の昇華性物質をヒータで加熱し続ける必要がある。このヒータが故障すると、昇華性物質の融液が固体に変化し、原液タンクや配管が昇華性物質の固体で詰まる可能性もある。原液が昇華性物質と溶媒とを含む溶液である場合、昇華性物質の凝固点が室温以上であったとしても、原液タンク内の昇華性物質をヒータで加熱する必要がない。したがって、ヒータを設ける必要がないし、ヒータの故障に伴う問題が発生しない。
【0016】
液体が極めて狭い空間に配置されると、凝固点降下が発生する。半導体ウエハなどの基板では、隣り合う2つのパターンの間隔が狭いので、パターンの間に位置する液体の凝固点が降下してしまう。したがって、隣り合う2つの凸状パターンの間だけでなく、パターンの上方にも液体がある状態で、液体を凝固させるときは、パターンの間に位置する液体の凝固点が、パターンの上方に位置する液体の凝固点よりも低い。
【0017】
パターンの間に位置する液体の凝固点だけが低いと、基板の表面に形成された液膜の表層、つまり、液膜の上面(液面)からパターンの上面までの範囲に位置する液体層が先に凝固し、パターンの間に位置する液体が凝固せずに液体に維持される場合がある。この場合、固体と液体の界面がパターンの近傍に形成され、パターンを倒壊させる倒壊力が発生することがある。パターンの微細化によってパターンがさらに脆弱になると、このような弱い倒壊力でも、パターンが倒壊してしまう。
【0018】
さらに、降下前の凝固点が低い上に凝固点が大幅に降下すると、基板の表面上の液体の温度を極めて低い値まで低下させないと、基板の表面上の液体が凝固しない。乾燥前処理液は、希釈液で希釈された原液であり、昇華性物質と溶媒とを含む。昇華性物質の凝固点は、室温以上であることが好ましく、溶媒の沸点より高いことがさらに好ましい。この場合、降下前の凝固点が高いので、凝固点が大幅に降下したとしても、乾燥前処理液の温度を極めて低い値まで低下させなくても、基板の表面上の乾燥前処理液を凝固させることができる。これにより、基板の処理に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0019】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板乾燥方法に加えてもよい。
前記原液における前記昇華性物質の濃度は、前記原液における前記溶媒の濃度よりも低い。
この構成によれば、昇華性物質の濃度が低い原液を希釈液と混ぜる。つまり、原液における昇華性物質の濃度は、原液における溶媒の濃度よりも低い。原液における昇華性物質の濃度が極めて高い場合、原液の量が少し変わると、乾燥前処理液の濃度が大幅に変わる。昇華性物質の濃度が低い原液を用いれば、乾燥前処理液の濃度を容易に精密に制御できる。これにより、固化膜の厚さを精密に制御できる。
【0020】
前記乾燥前処理液における前記希釈液の濃度は、前記乾燥前処理液における前記原液の濃度よりも高い。
この構成によれば、多量の希釈液を原液と混ぜる。つまり、乾燥前処理液における希釈液の濃度は、乾燥前処理液における原液の濃度よりも高い。原液の変化量が同じであれば、希釈液の濃度が高い場合は、原液の濃度が高い場合と比べて乾燥前処理液の濃度の変化量が小さい。したがって、希釈液の濃度が高い乾燥前処理液を作成することにより、乾燥前処理液の濃度を容易に精密に制御できる。
【0021】
前記希釈液は、前記溶媒である。
この構成によれば、原液に含まれる溶媒と同一名称の溶媒を原液と混ぜる。つまり、昇華性物質を溶媒で希釈した後に、この昇華性物質を溶媒でさらに希釈する。昇華性物質が希釈液に含まれないので、希釈液を貯留する希釈液タンク内で昇華性物質が析出することはない。さらに、昇華性物質が希釈液に含まれないので、希釈液における昇華性物質の濃度を管理する必要がない。
【0022】
前記乾燥前処理液作成工程は、前記原液と前記希釈液とをノズルの方に流動させながら、前記原液および希釈液を混合する流動混合工程を含み、前記基板乾燥方法は、前記原液および希釈液の混合液である前記乾燥前処理液を前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに吐出させる吐出工程をさらに含む。
【0023】
この構成によれば、原液および希釈液をミキシングタンク内で混ぜるのではなく、ノズルの方に流動させながら混合する。すなわち、原液および希釈液は、基板に向けて乾燥前処理液を吐出するノズルの方に下流に流れながら互いに混ざり合う。したがって、乾燥前処理液を作成しながら、ノズルの方に送ることができる。さらに、ミキシングタンクなどの乾燥前処理液を貯留するタンクを設ける必要がないので、基板処理装置を小型化できる。
【0024】
前記基板乾燥方法は、前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲外である場合、前記原液および希釈液の混合比を変更すると共に、前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を延長する吐出時間延長工程と、をさらに含む。
【0025】
この構成によれば、測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外である場合、乾燥前処理液の濃度を設定濃度範囲内の値に近づけるために、原液および希釈液の混合比を変更する。さらに、ノズルに乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を延長する。乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の値で安定するにはある程度の時間がかかる。吐出時間を延長すれば、乾燥前処理液の濃度が安定するまで乾燥前処理液の吐出を継続でき、適切な濃度の乾燥前処理液をノズルに吐出させることができる。
【0026】
前記基板乾燥方法は、前記乾燥前処理液が前記基板の前記表面に供給される前に、前記溶媒を前記基板の前記表面に供給する溶媒供給工程と、前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲を超えている場合、前記溶媒が前記基板の前記表面にある状態で、前記乾燥前処理液を前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに吐出させると共に、前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を短縮する吐出時間短縮工程と、をさらに含む。
【0027】
この構成によれば、測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えている場合、ノズルに乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を短縮する。吐出時間を短縮すると、基板の表面に供給される乾燥前処理液の総量が減少する。ノズルは、溶媒が基板の表面にある状態で乾燥前処理液を吐出する。基板上の溶媒がなくなる前に乾燥前処理液の吐出を停止すれば、乾燥前処理液を基板上の溶媒で希釈でき、乾燥前処理液の濃度を設定濃度範囲内の値まで低下させることができる。これにより、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液を基板の表面に供給できる。
【0028】
前記基板乾燥方法は、前記基板の前記表面に垂直な方向に見たときに前記基板のまわりに配置された筒状のポッドに向けて前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させるプリディスペンス工程と、前記ポッドに向けて前記ノズルから吐出された前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度を測定する濃度測定工程と、前記ノズルから吐出された前記乾燥前処理液における前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内であることを確認した後に、前記基板の前記表面に向けて前記ノズルに前記乾燥前処理液を吐出させる吐出工程と、をさらに含む。
【0029】
この構成によれば、基板ではなく、基板のまわりに配置された筒状のポッドに向けて乾燥前処理液を吐出する。それと同時に、ポッドに向けて吐出された乾燥前処理液における昇華性物質の濃度を測定する。昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内であれば、ポッドではなく、基板に向けて乾燥前処理液を吐出する。これにより、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液を基板の表面に確実に供給できる。
【0030】
前記基板乾燥方法は、前記原液タンク内の前記原液を第1ポンプで前記原液タンクの外に送る第1送液工程と、前記第1ポンプによって送られた前記原液を含む前記乾燥前処理液を前記ノズルに向けて乾燥前処理液配管に案内させる供給工程と、前記ノズルに向かって前記乾燥前処理液配管内を流れる前記乾燥前処理液の一部を、前記ノズルの上流で前記乾燥前処理液配管に接続された分岐配管に流入させる流入工程と、をさらに含む。
【0031】
この構成によれば、原液タンク内の原液を第1ポンプによって原液タンクの外に送り、希釈液と混合する。これにより、乾燥前処理液が作成される。作成された乾燥前処理液は、乾燥前処理液配管内を下流に流れ、ノズルから吐出される。乾燥前処理液の一部は、ノズルから吐出されるのではなく、ノズルの上流で乾燥前処理液配管に接続された分岐配管に流入する。
【0032】
乾燥前処理液の流量の設定値が小さい場合、原液の実際の流量が原液の流量の設定値とは異なると、乾燥前処理液の濃度に大きな影響が生じ得る。その一方で、乾燥前処理液の流量の設定値が大きい場合、原液の実際の流量が原液の流量の設定値とは異なっていても、乾燥前処理液の濃度に生じる影響は、乾燥前処理液の流量の設定値が小さい場合に比べて小さい。乾燥前処理液の一部を分岐配管に流入させれば、乾燥前処理液の流量の設定値を増やすことができる。これにより、乾燥前処理液の濃度を精密に制御できる。
【0033】
さらに、原液タンクから送り出される原液の流量を増やすために、ノズルから吐出される乾燥前処理液の流量を増やすのではなく、乾燥前処理液の一部を分岐配管に流入させる。分岐配管に流入した乾燥前処理液は、基板上の異物で汚染されていない。したがって、分岐配管に流入した乾燥前処理液を他のノズルに吐出させたり、他の用途に用いることができる。
【0034】
前記基板乾燥方法は、前記分岐配管に流入した前記乾燥前処理液を前記原液タンク内に供給することにより、前記原液タンク内の前記原液における前記昇華性物質の濃度を低下させる補充工程をさらに含む。
この構成によれば、ノズルに供給されずに分岐配管に流入した乾燥前処理液を、溶媒を含む補充液として用いる。具体的には、分岐配管に流入した乾燥前処理液を、原液タンク内に供給する。乾燥前処理液は、希釈液によって希釈された原液である。したがって、乾燥前処理液を原液タンク内に供給すると、原液タンク内の原液における昇華性物質の濃度が低下する。
【0035】
溶媒が原液から蒸発すると、原液における昇華性物質の濃度が上昇し、昇華性物質が原液タンク内の原液中で析出するかもしれない。乾燥前処理液を原液タンク内に供給すれば、このような昇華性物質の析出を防止できる。さらに、溶媒を含む補充液を新たに準備するのではなく、分岐配管に流入した乾燥前処理液を補充液として用いるので、溶媒の使用量を減らすことができる。
【0036】
前記乾燥前処理液作成工程は、前記原液と前記希釈液とをミキシングタンク内で混合するタンク内混合工程を含み、前記基板乾燥方法は、前記ミキシングタンク内で混合された前記原液および希釈液の混合液である前記乾燥前処理液を前記基板の前記表面に向けてノズルに吐出させる吐出工程をさらに含む。
【0037】
この構成によれば、原液および希釈液をミキシングタンク内で混合する。したがって、同一濃度の乾燥前処理液を多量に作成することができる。たとえば、1枚の基板に供給される乾燥前処理液の総量の何倍もの乾燥前処理液をミキシングタンク内に作成できる。ミキシングタンク内の乾燥前処理液は、ノズルに供給され、基板の表面に向けて吐出される。したがって、乾燥後の基板の品質を安定させることができる。
【0038】
本発明の他の実施形態は、パターンが形成された基板の表面を乾燥させる基板処理装置であって、少なくとも前記パターンの高さに基づいて設定される昇華性物質の濃度の範囲を表す設定濃度範囲を確認する設定濃度確認手段と、前記昇華性物質と溶媒とを含む原液を貯留する原液タンクと、前記溶媒を含み、前記昇華性物質の濃度が前記原液における前記昇華性物質の濃度よりも低い希釈液を、前記原液タンクの外で前記原液と混合することにより、前記昇華性物質の濃度が前記設定濃度範囲内である乾燥前処理液を作成する乾燥前処理液作成手段と、前記基板の前記表面上の前記乾燥前処理液から前記溶媒を蒸発させることにより、前記昇華性物質を含む固化膜を前記基板の前記表面に形成する固化膜形成手段と、前記固化膜を昇華させることにより、前記基板の前記表面から前記固化膜を除去する昇華手段とを含む、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の基板乾燥方法と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
【
図1B】基板処理装置を側方から見た模式図である。
【
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
【
図3】基板処理装置に備えられた乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
【
図4】第1電動バルブおよび第2電動バルブの鉛直断面を示す模式図である。
【
図5】制御装置のハードウェアを示すブロック図である。
【
図6】未処理の基板を収容したキャリアがロードポートに搬送されてから、キャリア内の全ての基板が処理されるまでの流れを示すフローチャートである。
【
図7】パターンの高さと固化膜の厚さとの関係を説明するための基板の断面図である。
【
図8】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例について説明するための工程図である。
【
図9A】
図8に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図9B】
図8に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図9C】
図8に示す基板の処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
【
図10】乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外であった場合の処置の一例を示すタイムチャートである。
【
図11A】乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えている場合の処置の一例を示すタイムチャートである。
【
図11B】置換液の液膜で覆われた基板の上面に乾燥前処理液が供給されている状態を示す模式図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
【
図13】乾燥前処理液ノズルがポッドに向けて乾燥前処理液を吐出してから、乾燥前処理液ノズルが基板に向けて乾燥前処理液を吐出するまでの流れを示すフローチャートである。
【
図14】乾燥前処理液ノズルの吐出口がポッド内の液体中に配置されている状態を示す断面図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
【
図16】本発明の第4実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニットを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明において、基板処理装置1内の気圧は、特に断りがない限り、基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の気圧(たとえば1気圧またはその近傍の値)に維持されているものとする。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。
図1Bは、基板処理装置1を側方から見た模式図である。
【0041】
図1Aに示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCAを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCAから搬送された基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体で処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCAと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0042】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCAに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1を含み、インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0043】
複数の処理ユニット2は、平面視でセンターロボットCRのまわりに配置された複数のタワーTWを形成している。
図1Aは、4つのタワーTWが形成されている例を示している。センターロボットCRは、いずれのタワーTWにもアクセス可能である。
図1Bに示すように、各タワーTWは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。
【0044】
基板処理装置1は、バルブなどの流体機器を収容する複数(たとえば4つ)の流体ボックスFBを備えている。4つの流体ボックスFBは、それぞれ、4つのタワーTWに対応している。キャビネットCC内の液体は、いずれかの流体ボックスFBを介して、当該流体ボックスFBに対応するタワーTWに含まれる全ての処理ユニット2に供給される。基板処理装置1のキャビネットCCは、基板処理装置1の外壁1aのまわりに配置されていてもよいし、基板処理装置1が設置されるクリーンルームの地下に配置されていてもよい。
【0045】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の内部を水平に見た模式図である。
処理ユニット2は、基板Wに処理液を供給するウェット処理ユニット2wである。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ21とを含む。
【0046】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口5bが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5bを開閉するシャッター7とを含む。FFU6(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁5の上部に設けられた送風口5aの上に配置されている。FFU6は、クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送風口5aからチャンバー4内に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ21の底部に接続された排気ダクト8を通じてチャンバー4から排出される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4内に常時形成される。排気ダクト8に排出される排気の流量は、排気ダクト8内に配置された排気バルブ9の開度に応じて変更される。
【0047】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0048】
処理カップ21は、基板Wから外方に排出された処理液を受け止める複数のガード24と、複数のガード24によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ23と、複数のガード24および複数のカップ23を取り囲む円筒状の外壁部材22とを含む。
図2は、4つのガード24と3つのカップ23とが設けられており、最も外側のカップ23が上から3番目のガード24と一体である例を示している。
【0049】
ガード24は、スピンチャック10を取り囲む円筒部25と、円筒部25の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部26とを含む。複数の天井部26は、上下に重なっており、複数の円筒部25は、同心円状に配置されている。天井部26の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲むガード24の上端24uに相当する。複数のカップ23は、それぞれ、複数の円筒部25の下方に配置されている。カップ23は、ガード24によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0050】
処理ユニット2は、複数のガード24を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード24を位置させる。
図2は、2つのガード24が上位置に配置されており、残り2つのガード24が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード24の上端24uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード24の上端24uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0051】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード24が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液は、基板Wから外方に振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード24の内面に衝突し、このガード24に対応するカップ23に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液がカップ23に集められる。
【0052】
処理ユニット2は、スピンチャック10に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルを含む。複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル35と、基板Wの上面に向けて乾燥前処理液を吐出する乾燥前処理液ノズル39と、基板Wの上面に向けて置換液を吐出する置換液ノズル43とを含む。
【0053】
薬液ノズル31は、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43についても同様である。
図2は、薬液ノズル31、リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43が、スキャンノズルであり、これら4つのノズルにそれぞれ対応する4つのノズル移動ユニットが設けられている例を示している。
【0054】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管32に接続されている。薬液配管32に介装された薬液バルブ33が開かれると、薬液が、薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0055】
図示はしないが、薬液バルブ33は、薬液が通過する環状の弁座が設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、薬液バルブ33を開閉させる。
【0056】
薬液ノズル31は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に薬液ノズル31を移動させるノズル移動ユニット34に接続されている。ノズル移動ユニット34は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に供給される処理位置と、薬液ノズル31が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0057】
リンス液ノズル35は、リンス液ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル35の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル35から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0058】
リンス液ノズル35は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にリンス液ノズル35を移動させるノズル移動ユニット38に接続されている。ノズル移動ユニット38は、リンス液ノズル35から吐出されたリンス液が基板Wの上面に供給される処理位置と、リンス液ノズル35が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でリンス液ノズル35を水平に移動させる。
【0059】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液ノズル39に処理液を案内する乾燥前処理液配管40に接続されている。乾燥前処理液配管40に介装された乾燥前処理液バルブ41が開かれると、乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39の吐出口から下方に連続的に吐出される。同様に、置換液ノズル43は、置換液ノズル43に置換液を案内する置換液配管44に接続されている。置換液配管44に介装された置換液バルブ45が開かれると、置換液が、置換液ノズル43の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0060】
乾燥前処理液は、溶質に相当する昇華性物質と、昇華性物質と溶け合う溶媒と、を含む溶液である。昇華性物質は、常温(室温と同義)または常圧(基板処理装置1内の圧力。たとえば1気圧またはその近傍の値)で液体を経ずに固体から気体に変化する物質であってもよい。
乾燥前処理液の凝固点(1気圧での凝固点。以下同様。)は、室温(たとえば、23℃またはその近傍の値)よりも低い。基板処理装置1は、室温に維持されたクリーンルーム内に配置されている。したがって、乾燥前処理液を加熱しなくても、乾燥前処理液を液体に維持できる。昇華性物質の凝固点は、乾燥前処理液の凝固点よりも高い。昇華性物質の凝固点は、室温よりも高い。室温では、昇華性物質は固体である。昇華性物質の凝固点は、溶媒の沸点より高くてもよい。溶媒の蒸気圧は、昇華性物質の蒸気圧よりも高い。
【0061】
昇華性物質は、たとえば、2-メチル-2-プロパノール(別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール)やシクロヘキサノールなどのアルコール類、フッ化炭化水素化合物、1,3,5-トリオキサン(別名:メタホルムアルデヒド)、樟脳(別名:カンフル、カンファー)、ナフタレン、およびヨウ素のいずれかであってもよいし、これら以外の物質であってもよい。
【0062】
溶媒は、たとえば、純水、IPA、メタノール、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル、1-エトキシ-2-プロパノール)、およびエチレングリコールからなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
以下では、昇華性物質が樟脳であり、溶媒がIPAである例について説明する。樟脳の凝固点は、175~177℃である。樟脳の凝固点は、IPAの沸点よりも高い。IPAの蒸気圧は、樟脳の蒸気圧よりも高い。したがって、IPAは、樟脳よりも蒸発し易い。IPAは、水よりも蒸気圧が高く、水よりも表面張力が低い。IPAは、水よりも分子量が大きい。
【0063】
後述するように、置換液は、リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給され、乾燥前処理液は、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給される。リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合うのであれば、置換液は、どのような液体であってもよい。置換液は、たとえば、IPA(液体)である。置換液は、IPAおよびHFEの混合液であってもよいし、これら以外であってもよい。
【0064】
リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に置換液が供給されると、基板W上の殆どのリンス液は、置換液によって押し流され、基板Wから排出される。残りの微量のリンス液は、置換液に溶け込み、置換液中に拡散する。拡散したリンス液は、置換液と共に基板Wから排出される。したがって、基板W上のリンス液を効率的に置換液に置換できる。同様の理由により、基板W上の置換液を効率的に乾燥前処理液に置換できる。これにより、基板W上の乾燥前処理液に含まれるリンス液を減らすことができる。
【0065】
乾燥前処理液ノズル39は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に乾燥前処理液ノズル39を移動させるノズル移動ユニット42に接続されている。ノズル移動ユニット42は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液が基板Wの上面に供給される処理位置と、乾燥前処理液ノズル39が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で乾燥前処理液ノズル39を水平に移動させる。
【0066】
同様に、置換液ノズル43は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に置換液ノズル43を移動させるノズル移動ユニット46に接続されている。ノズル移動ユニット46は、置換液ノズル43から吐出された置換液が基板Wの上面に供給される処理位置と、置換液ノズル43が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で置換液ノズル43を水平に移動させる。
【0067】
処理ユニット2は、スピンチャック10の上方に配置された遮断部材51を含む。
図2は、遮断部材51が円板状の遮断板である例を示している。遮断部材51は、スピンチャック10の上方に水平に配置された円板部52を含む。遮断部材51は、円板部52の中央部から上方に延びる筒状の支軸53によって水平に支持されている。円板部52の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。円板部52の下面は、遮断部材51の下面51Lに相当する。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面に対向する対向面である。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面と平行であり、基板Wの直径以上の外径を有している。
【0068】
遮断部材51は、遮断部材51を鉛直に昇降させる遮断部材昇降ユニット54に接続されている。遮断部材昇降ユニット54は、上位置(
図2に示す位置)から下位置までの任意の位置に遮断部材51を位置させる。下位置は、薬液ノズル31などのスキャンノズルが基板Wと遮断部材51との間に進入できない高さまで遮断部材51の下面51Lが基板Wの上面に近接する近接位置である。上位置は、スキャンノズルが遮断部材51と基板Wとの間に進入可能な高さまで遮断部材51が退避した離間位置である。
【0069】
複数のノズルは、遮断部材51の下面51Lの中央部で開口する上中央開口61を介して処理液や処理ガスなどの処理流体を下方に吐出する中心ノズル55を含む。中心ノズル55は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。中心ノズル55は、遮断部材51の中央部を上下に貫通する貫通穴内に配置されている。遮断部材51の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて中心ノズル55の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル55は、遮断部材51と共に昇降する。処理流体を吐出する中心ノズル55の吐出口は、遮断部材51の上中央開口61の上方に配置されている。
【0070】
中心ノズル55は、中心ノズル55に不活性ガスを案内する上気体配管56に接続されている。基板処理装置1は、中心ノズル55から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器59を備えていてもよい。上気体配管56に介装された上気体バルブ57が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ58の開度に対応する流量で、不活性ガスが、中心ノズル55の吐出口から下方に連続的に吐出される。中心ノズル55から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0071】
遮断部材51の内周面と中心ノズル55の外周面は、上下に延びる筒状の上気体流路62を形成している。上気体流路62は、不活性ガスを遮断部材51の上中央開口61に導く上気体配管63に接続されている。基板処理装置1は、遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器66を備えていてもよい。上気体配管63に介装された上気体バルブ64が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ65の開度に対応する流量で、不活性ガスが、遮断部材51の上中央開口61から下方に連続的に吐出される。遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0072】
複数のノズルは、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル71を含む。下面ノズル71は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されたノズル円板部と、ノズル円板部から下方に延びるノズル筒状部とを含む。下面ノズル71の吐出口は、ノズル円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック10に保持されているときは、下面ノズル71の吐出口が、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0073】
下面ノズル71は、加熱流体の一例である温水(室温よりも高温の純水)を下面ノズル71に案内する加熱流体配管72に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、加熱流体配管72に介装されたヒータ75によって加熱される。加熱流体配管72に介装された加熱流体バルブ73が開かれると、温水の流量を変更する流量調整バルブ74の開度に対応する流量で、温水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、温水が基板Wの下面に供給される。
【0074】
下面ノズル71は、さらに、冷却流体の一例である冷水(室温よりも低温の純水)を下面ノズル71に案内する冷却流体配管76に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、冷却流体配管76に介装されたクーラー79によって冷却される。冷却流体配管76に介装された冷却流体バルブ77が開かれると、冷水の流量を変更する流量調整バルブ78の開度に対応する流量で、冷水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、冷水が基板Wの下面に供給される。
【0075】
下面ノズル71の外周面とスピンベース12の内周面は、上下に延びる筒状の下気体流路82を形成している。下気体流路82は、スピンベース12の上面12uの中央部で開口する下中央開口81を含む。下気体流路82は、不活性ガスをスピンベース12の下中央開口81に導く下気体配管83に接続されている。基板処理装置1は、スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する下温度調節器86を備えていてもよい。下気体配管83に介装された下気体バルブ84が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ85の開度に対応する流量で、不活性ガスが、スピンベース12の下中央開口81から上方に連続的に吐出される。
【0076】
スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。基板Wがスピンチャック10に保持されているときに、スピンベース12の下中央開口81が窒素ガスを吐出すると、窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされる。
【0077】
次に、乾燥前処理液供給ユニット100について説明する。
図3は、基板処理装置1に備えられた乾燥前処理液供給ユニット100を示す模式図である。
図4は、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の鉛直断面を示す模式図である。
図3では、チャンバー4、流体ボックスFB、およびキャビネットCCを四角または長方形で示している。
図3において四角または長方形内に配置された部材は、チャンバー4、流体ボックスFB、およびキャビネットCCのいずれかに収容されている。たとえば、乾燥前処理液バルブ41は、流体ボックスFB内に配置されている。これは、
図12、
図15、および
図16でも同様である。
【0078】
図3に示すように、乾燥前処理液供給ユニット100は、昇華性物質と溶媒とを含む溶液である原液を貯留する原液タンク101と、原液に含まれる溶媒と同一名称の溶媒である希釈液を貯留する希釈液タンク105とを含む。原液タンク101は、第1個別配管102によって、ミキシングバルブ109の第1個別流路112に接続されている。希釈液タンク105は、第2個別配管106によって、ミキシングバルブ109の第2個別流路113に接続されている。
【0079】
原液タンク101内の原液は、第1個別配管102に介装された第1ポンプ103によってミキシングバルブ109に送られる。原液タンク101からミキシングバルブ109に送られる原液の流量は、第1個別配管102の内部を開閉する第1電動バルブ104によって変更される。同様に、希釈液タンク105内の希釈液は、第2個別配管106に介装された第2ポンプ107によってミキシングバルブ109に送られる。希釈液タンク105からミキシングバルブ109に送られる希釈液の流量は、第2個別配管106の内部を開閉する第2電動バルブ108によって変更される。
【0080】
第1電動バルブ104および第2電動バルブ108は、いずれも、電動ニードルバルブである。第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方は、電動ニードルバルブ以外の電動バルブであってもよい。
図4に示すように、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108は、液体が流れる内部流路131aを形成するバルブボディ131と、内部流路131a内に配置された弁体132とを含む。弁体132は、内部流路131aに設けられた環状の弁座133に接触する環状部132aと、弁座133と同軸の円錐部132bとを含む。
【0081】
第1電動バルブ104および第2電動バルブ108は、さらに、弁体132が弁座133から離れた開位置(実線で示す位置)から弁体132と弁座133との接触により内部流路131aが塞がれる閉位置(二点鎖線で示す位置)までの範囲の任意の位置で弁体132を静止させるバルブアクチュエータ134を含む。バルブアクチュエータ134は、弁体132を弁体132の軸方向に移動させる力を発生する電動モータ135と、電動モータ135の回転を弁体132の軸方向への弁体132の直線運動に変換する運動変換機構136とを含む。弁体132は、電動モータ135の回転に応じて弁体132の軸方向に移動する。電動モータ135の回転角は、制御装置3によって制御される。
【0082】
電動モータ135が正転方向に回転すると弁体132の環状部132aが弁座133に近づく。電動モータ135が逆転方向に回転すると弁体132の環状部132aが弁座133から遠ざかる。弁体132の円錐部132bと弁座133との間の環状の空間の面積は、弁体132の移動に伴って増加または減少する。これにより、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の開度が変更される。また、弁体132が閉位置に配置され、弁体132の環状部132aが弁座133に押し付けられると、内部流路131aが塞がれ、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108が閉じられる。
【0083】
図3に示すように、ミキシングバルブ109は、第1個別流路112および第2個別流路113に加えて、第1個別流路112での液体の逆流を防止する第1チェックバルブ110と、第2個別流路113での液体の逆流を防止する第2チェックバルブ111と、第1個別流路112および第2個別流路113の下流端に接続された集合流路114とを含む。
【0084】
第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の両方が開かれると、原液および希釈液は、ミキシングバルブ109の集合流路114内を下流に流れながら互いに混ざり合う(流動混合工程)。これにより、昇華性物質と溶媒とを含む原液が、原液に含まれる溶媒と同種類の溶媒である希釈液で希釈され、原液および希釈液の混合液である乾燥前処理液が作成される。
【0085】
ミキシングバルブ109の集合流路114は、乾燥前処理液配管40の上流端に接続されている。乾燥前処理液を撹拌するインラインミキサー115は、乾燥前処理液バルブ41の上流で乾燥前処理液配管40に介装されている。インラインミキサー115は、乾燥前処理液配管40に介装されたパイプ115pと、パイプ115p内に配置されており、液体の流通方向に延びる軸線まわりに捩れた撹拌フィン115fとを含む、スタティックミキサーである。原液タンク101および希釈液タンク105から供給された原液および希釈液は、ミキシングバルブ109で混合され、その後、インラインミキサー115でさらに混合される。これにより、昇華性物質および溶媒が均一に混ざり合う。
【0086】
原液における昇華性物質の濃度は、原液における溶媒の濃度よりも低い。乾燥前処理液における希釈液の濃度は、乾燥前処理液における原液の濃度よりも高い。原液における昇華性物質および溶媒の質量比は、たとえば、1:10(昇華性物質:溶媒)である。乾燥前処理液における昇華性物質および溶媒の質量比は、たとえば、1:50~100(昇華性物質:溶媒)である。昇華性物質および溶媒の質量比は、これらに限られない。
【0087】
乾燥前処理液供給ユニット100は、乾燥前処理液配管40から分岐した分岐配管116を含む。分岐配管116の上流端は、乾燥前処理液配管40に接続されている。乾燥前処理液配管40内の一部の乾燥前処理液は、分岐配管116の上流端を通過し、乾燥前処理液ノズル39に供給される(供給工程)。乾燥前処理液配管40内の残りの乾燥前処理液は、分岐配管116の上流端から分岐配管116内に流入する(流入工程)。分岐配管116の下流端は、後述する補充タンク120に接続されている。分岐配管116の下流端は、他の乾燥前処理液配管40に接続されていてもよいし、排液装置に接続されていてもよい。
【0088】
乾燥前処理液供給ユニット100は、乾燥前処理液配管40から分岐配管116に流れる乾燥前処理液の流量を変更する流量調整バルブ118を備えていてもよい。制御装置3は、流量調整バルブ118の開度を変更する。乾燥前処理液配管40から分岐配管116に流れる乾燥前処理液の流量は、流量調整バルブ118の開度に応じて変更される。乾燥前処理液供給ユニット100は、流量調整バルブ118に代えて、直径が分岐配管116の内径よりも小さい孔が形成されたオリフィス板を備えていてもよい。この場合、乾燥前処理液は、オリフィス板の孔の面積に応じた流量で、乾燥前処理液配管40から分岐配管116に流れる。
【0089】
乾燥前処理液供給ユニット100は、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度(以下では、「乾燥前処理液の濃度」ともいう。)を測定する溶液濃度計117を備えている。
図3は、溶液濃度計117が分岐配管116に介装されている例を示している。ミキシングバルブ109の下流であれば、溶液濃度計117は、どこに配置されていてもよい。たとえば、溶液濃度計117をインラインミキサー115の上流または下流に配置してもよいし、乾燥前処理液ノズル39に配置してもよい。もしくは、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液の濃度を、溶液濃度計117に測定させてもよい。たとえば、基板W上の乾燥前処理液の濃度を溶液濃度計117に測定させてもよいし、乾燥前処理液ノズル39と基板Wとの間の空間にある乾燥前処理液の濃度を溶液濃度計117に測定させてもよい。
【0090】
溶液濃度計117は、光学濃度計である。溶液濃度計117は、光学濃度計以外の濃度計であってもよい。制御装置3は、溶液濃度計117の検出値に基づいて、原液および希釈液の混合比、つまり、原液に対する希釈液の割合を変更する。具体的には、制御装置3は、溶液濃度計117の検出値に基づいて第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方の開度を変更する。これにより、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の割合が増加または減少し、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の値に調整される。
【0091】
制御装置3は、単に乾燥前処理液を基板Wに供給するのではなく、基板Wへの乾燥前処理液の供給と並行して、乾燥前処理液の濃度が適切であるかを監視する。必要であれば、原液および希釈液の混合比を調整し、乾燥前処理液の濃度を適切な値に変更する。これにより、昇華性物質の濃度が高精度で管理された乾燥前処理液を基板Wに供給できる。乾燥前処理液の濃度は、固化膜SF(
図7参照)の厚さT1に影響を与える要因の一つである。したがって、固化膜SFの厚さT1を精密に制御できる。
【0092】
乾燥前処理液供給ユニット100は、原液タンク101内に供給される補充液を貯留する補充タンク120を備えていてもよい。補充タンク120は、補充配管121によって原液タンク101に接続されている。補充タンク120内の補充液は、補充配管121に介装された補充ポンプ122によって原液タンク101に送られる。補充液は、昇華性物質と溶媒とを含む溶液である。補充液における昇華性物質の濃度は、原液における昇華性物質の濃度よりも低い。
【0093】
乾燥前処理液供給ユニット100は、補充タンク120内に溶媒を供給する溶媒配管123と、溶媒配管123の内部を開閉する溶媒バルブ124とを備えている。乾燥前処理液供給ユニット100は、さらに、補充タンク120内の補充液を循環させる循環配管125と、補充タンク120内の補充液を循環配管125に送る循環ポンプ126と、循環配管125内の補充液における昇華性物質の濃度を測定する循環濃度計127とを備えている。循環配管125の上流端および下流端は、補充タンク120に接続されている。
【0094】
乾燥前処理液配管40から分岐した分岐配管116の下流端は、補充タンク120に接続されている。乾燥前処理液配管40内を流れる乾燥前処理液は、分岐配管116を介して補充タンク120に供給され、補充タンク120内の補充液と混ざる。乾燥前処理液の濃度は、原液における昇華性物質の濃度よりも低い。補充タンク120内の補充液における昇華性物質は、循環濃度計127によって検出される。補充液における昇華性物質の濃度が基準濃度より高い場合、制御装置3は、溶媒バルブ124を開き、溶媒を補充タンク120内に供給する。これにより、補充液における昇華性物質の濃度が低下し、基準濃度に調整される。
【0095】
原液タンク101内の原液には、昇華性物質と溶媒とが含まれる。溶媒が原液から蒸発すると、原液における昇華性物質の濃度が上昇し、昇華性物質が析出するかもしれない。この場合、第1個別配管102の上流端が昇華性物質の固体で詰まり、原液が第1個別配管102を流れないもしくは殆ど流れなくなる可能性がある。補充タンク120内の補充液を原液タンク101に供給すれば、原液における昇華性物質の濃度を飽和濃度未満に維持することができ、昇華性物質の析出を防止できる(補充工程)。
【0096】
補充タンク120から原液タンク101への補充液の供給は、定期的に行われてもよいし、原液タンク101内の原液が第1個別配管102に送られた回数に応じて行われてもよい。もしくは、原液タンク101内の原液における昇華性物質の濃度を濃度計で測定し、濃度計の検出値に応じて補充タンク120から原液タンク101に補充液を供給してもよい。いずれの場合も、原液タンク101内の原液が補充液で薄まるので、第1個別配管102の上流端が昇華性物質の固体で詰まることを防止できる。
【0097】
図5は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置3eと、リムーバブルメディアRMから情報を読み取る読取装置3fと、ホストコンピュータHC等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0098】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられてもよい。
【0099】
CPU3bは、補助記憶装置3eに記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置3fを通じてリムーバブルメディアRMから補助記憶装置3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータHCなどの外部装置から通信装置3gを通じて補助記憶装置3eに送られたものであってもよい。
【0100】
補助記憶装置3eおよびリムーバブルメディアRMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアRMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアRMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアRMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0101】
補助記憶装置3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0102】
図6は、未処理の基板Wを収容したキャリアCAがロードポートLPに搬送されてから、キャリアCA内の全ての基板Wが処理されるまでの流れを示すフローチャートである。
図7は、パターンP1の高さHpと固化膜SFの厚さT1との関係を説明するための基板Wの断面図である。
図7(a)および
図7(b)は、パターンP1に対して固化膜SFが厚すぎるまたは薄すぎる例を示しており、
図7(c)および
図7(d)は、パターンP1に対して固化膜SFの厚さT1が適切である例を示している。以下では、
図1A、
図5、および
図6を参照する。
図7については適宜参照する。
【0103】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、1枚以上の未処理の基板Wを収容したキャリアCAが、キャリア搬送装置によってロードポートLPの上に置かれる(
図6のステップS1)。その後、キャリアCA内の基板Wに対して適用されるべきレシピの番号が、ホストコンピュータHCから制御装置3に通知される(
図6のステップS2)。制御装置3は、補助記憶装置に記憶されている複数のレシピの中から、ホストコンピュータHCによって通知された番号のレシピを検索し、見つかった1つのレシピを読み込む(
図6のステップS3)。
【0104】
レシピには、設定濃度範囲が含まれる。制御装置3がレシピを読み込むと、制御装置3によって設定濃度範囲が確認される(設定濃度確認工程)。設定濃度範囲は、適切な厚さT1の固化膜SFが形成されるときの乾燥前処理液の濃度の範囲であり、基板Wの表面に形成されたパターンP1に基づいて設定されている。レシピには、設定濃度範囲に加えて、乾燥前処理液ノズル39に吐出させる乾燥前処理液の流量を表す吐出流量が含まれる。制御装置3は、レシピで指定された設定濃度範囲および吐出流量に基づいて第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の開度を決定する。
【0105】
昇華乾燥では、昇華性物質を含む固化膜SFを基板Wの表面に形成し、その後、固化膜SFを昇華させる。
図7(a)および
図7(b)に示すように、固化膜SFはパターンP1に対して厚すぎても薄すぎても、パターンP1の倒壊率が低下する。乾燥前処理液の濃度は、固化膜SFの厚さT1に影響を与える要因の一つである。つまり、乾燥前処理液の液膜の厚さが同じであれば、固化膜SFの厚さT1は、昇華性物質の濃度の上昇に伴って増加する。
【0106】
図7(c)および
図7(d)に示すように、パターンP1の高さHpが変わると、固化膜SFの適切な厚さT1も変わる。パターンP1の高さHpが同じであっても、パターンP1の材質、パターンP1の断面形状、およびパターンP1の分布を含む複数の要因のいずれかが変わると、固化膜SFの適切な厚さT1も変わり得る。したがって、設定濃度範囲は、パターンP1の高さHp等に応じて変化する。パターンP1に対して固化膜SFの厚さT1が適切である場合、埋め込み率((固化膜SFの厚さT1/パターンP1の高さHp)×100)は、たとえば、76を超え、219未満であり、好ましくは、83以上、219未満である。埋め込み率は、この範囲外であってもよい。
【0107】
制御装置3は、ホストコンピュータHCによって指定されたレシピを読み込んだ後、このレシピで指定されている条件にしたがって基板処理装置1に1枚の基板Wを処理させる(
図6のステップS4)。乾燥前処理液を基板Wに供給するときは、乾燥前処理液の濃度がレシピで指定された設定濃度範囲内になるように、第1電動バルブ104(
図3参照)および第2電動バルブ108(
図3参照)の開度が制御装置3によって調整される。これにより、パターンP1に対して適切な厚さT1の固化膜SFが基板Wの表面に形成される。
【0108】
基板処理装置1が1枚の基板Wを処理すると、制御装置3は、ロードポートLP上のキャリアCA内の全ての基板Wが処理されたか否かを確認する(
図6のステップS5)。未処理の基板WがキャリアCA内にある場合(
図6のステップS5でNo)、全ての基板Wが処理されるまで基板Wの処理を繰り返す(
図6のステップS5)。キャリアCA内の全ての基板Wが処理されると(
図6のステップS5でYes)、処理済みの基板Wを収容したキャリアCAが、キャリア搬送装置によってロードポートLPの上から搬送される(
図6のステップS6)。
【0109】
図8は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。
図9A~
図9Cは、
図8に示す基板Wの処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。以下では、
図2および
図8を参照する。
図9A~
図9Cについては適宜参照する。
処理される基板Wは、たとえば、シリコンウエハなどの半導体ウエハである。基板Wの表面は、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。基板Wは、パターン形成面である基板Wの表面にパターンP1(
図9A参照)が形成された基板Wであってもよいし、基板Wの表面にパターンP1が形成されていない基板Wであってもよい。後者の場合、後述する薬液供給工程でパターンP1が形成されてもよい。
【0110】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、チャンバー4内に基板Wを搬入する搬入工程(
図8のステップS11)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、全てのガード24が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(
図1A参照)が、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。
【0111】
次に、上気体バルブ64および下気体バルブ84が開かれ、遮断部材51の上中央開口61およびスピンベース12の下中央開口81が窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wと遮断部材51との間の空間が窒素ガスで満たされる。同様に、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされる。その一方で、ガード昇降ユニット27が少なくとも一つのガード24を下位置から上位置に上昇させる。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される(
図8のステップS12)。これにより、基板Wが液体供給速度で回転する。
【0112】
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(
図8のステップS13)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33が開かれ、薬液ノズル31が薬液の吐出を開始する。薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33が閉じられ、薬液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34が、薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0113】
薬液ノズル31から吐出された薬液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル31が薬液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対する薬液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0114】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(
図8のステップS14)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38が、リンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0115】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の薬液は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0116】
次に、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う置換液を基板Wの上面に供給し、基板W上の純水を置換液に置換する置換液供給工程(
図8のステップS15)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置から処理位置に移動させる。その後、置換液バルブ45が開かれ、置換液ノズル43が置換液の吐出を開始する。置換液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。置換液バルブ45が開かれてから所定時間が経過すると、置換液バルブ45が閉じられ、置換液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット46が、置換液ノズル43を待機位置に移動させる。
【0117】
置換液ノズル43から吐出された置換液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、置換液ノズル43から吐出された置換液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成される。置換液ノズル43が置換液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット46は、基板Wの上面に対する置換液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。また、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成された後、置換液ノズル43に置換液の吐出を停止させながら、基板Wをパドル速度(たとえば、0を超える20rpm以下の速度)で回転させてもよい。
【0118】
次に、乾燥前処理液を基板Wの上面に供給して、乾燥前処理液の液膜を基板W上に形成する乾燥前処理液供給工程(
図8のステップS16)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、乾燥前処理液バルブ41が開かれ、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液の吐出を開始する。乾燥前処理液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。乾燥前処理液バルブ41が開かれてから所定時間が経過すると、乾燥前処理液バルブ41が閉じられ、乾燥前処理液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット42が、乾燥前処理液ノズル39を待機位置に移動させる。
【0119】
乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に衝突した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の置換液は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う乾燥前処理液の液膜が形成される。乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット42は、基板Wの上面に対する乾燥前処理液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、中央部で着液位置を静止させてもよい。
【0120】
次に、基板W上の乾燥前処理液の一部を除去して、基板Wの上面全域が乾燥前処理液の液膜で覆われた状態を維持しながら、基板W上の乾燥前処理液の膜厚(液膜の厚さ)を減少させる膜厚減少工程(
図8のステップS17)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を膜厚減少速度に維持する。膜厚減少速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。基板W上の乾燥前処理液は、乾燥前処理液の吐出が停止された後も、遠心力によって基板Wから外方に排出される。そのため、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚さが減少する。基板W上の乾燥前処理液がある程度排出されると、単位時間当たりの基板Wからの乾燥前処理液の排出量が零または概ね零に減少する。これにより、基板W上の乾燥前処理液の液膜の厚さが基板Wの回転速度に応じた値で安定する。
【0121】
次に、基板W上の乾燥前処理液から溶媒を蒸発させて、昇華性物質を含む固化膜SF(
図9B参照)を基板W上に形成する固化膜形成工程(
図8のステップS18)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を固化膜形成速度に維持する。固化膜形成速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。さらに、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57を開くことに加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。
【0122】
固化膜形成速度での基板Wの回転等が開始されると、乾燥前処理液の蒸発が促進され、基板W上の乾燥前処理液の一部が蒸発する。溶媒の蒸気圧が溶質に相当する昇華性物質の蒸気圧よりも高いので、溶媒は、昇華性物質の蒸発速度よりも大きい蒸発速度で蒸発する。したがって、昇華性物質の濃度が徐々に増加しながら、乾燥前処理液の膜厚が徐々に減少していく。乾燥前処理液の凝固点は、昇華性物質の濃度の上昇に伴って上昇する。
図9Aおよび
図9Bを比較すると分かるように、乾燥前処理液の凝固点が乾燥前処理液の温度に一致すると、乾燥前処理液の凝固が始まり、基板Wの上面全域を覆う凝固体に相当する固化膜SFが形成される。
【0123】
次に、基板W上の固化膜SFを昇華させて、基板Wの上面から除去する昇華工程(
図8のステップS19)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を昇華速度に維持する。昇華速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。さらに、上気体バルブ57が閉じられている場合は、上気体バルブ57を開いて、中心ノズル55に窒素ガスの吐出を開始させる。上気体バルブ57を開くことに加えてまたは代えて、流量調整バルブ65の開度を変更して、遮断部材51の上中央開口61から吐出される窒素ガスの流量を増加させてもよい。昇華速度での基板Wの回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(
図8のステップS20)。
【0124】
昇華速度での基板Wの回転等が開始されると、基板W上の固化膜SFの昇華が始まり、昇華性物質を含む気体が、基板W上の固化膜SFから発生する。固化膜SFから発生した気体(昇華性物質を含む気体)は、基板Wと遮断部材51との間の空間を放射状に流れ、基板Wの上方から排出される。そして、昇華が始まってからある程度の時間が経つと、
図9Cに示すように、全ての固化膜SFが基板Wから除去される。
【0125】
次に、基板Wをチャンバー4から搬出する搬出工程(
図8のステップS21)が行われる。
具体的には、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット27が全てのガード24を下位置まで下降させる。さらに、上気体バルブ64および下気体バルブ84が閉じられ、遮断部材51の上中央開口61とスピンベース12の下中央開口81とが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をチャンバー4内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をチャンバー4の内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがチャンバー4から搬出される。
【0126】
図10は、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外であった場合の処置の一例を示すタイムチャートである。以下では、
図3および
図10を参照する。
乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、乾燥前処理液の濃度は溶液濃度計117によって監視されている。乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外であるとき、制御装置3は、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方の開度を変更し、原液および希釈液の混合比を変更する(時刻T11)。これにより、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内に入る。
【0127】
制御装置3は、原液および希釈液の混合比を変更した後、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の目標濃度で安定するまで、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方の開度を溶液濃度計117に基づいて変更する。
図10は、乾燥前処理液の濃度が、上昇および低下を交互に繰り返した後、目標濃度で安定する例を示している。
【0128】
乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させる吐出時間はレシピで指定されている。乾燥前処理液の濃度が目標濃度で安定する前に吐出時間が終了する場合、制御装置3は、吐出時間を延長する(吐出時間延長工程)。これにより、目標濃度の乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39から吐出され、基板Wの上面全域が目標濃度の乾燥前処理液の液膜で覆われる。
【0129】
このように、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液が最終的に乾燥前処理液ノズル39から吐出されるので、乾燥前処理液の濃度が一時的に設定濃度範囲外であったとしても、適切な厚さT1の固化膜SFを基板Wの上面に形成できる。したがって、倒壊するパターンP1の数を減らしながら、基板Wを乾燥させることができる。
図11Aは、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えている場合の処置の一例を示すタイムチャートである。
図11Bは、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に乾燥前処理液が供給されている状態を示す模式図である。以下では、
図3、
図11Aおよび
図11Bを参照する。
【0130】
図11Aに示すように、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、乾燥前処理液の濃度は溶液濃度計117によって監視されている。乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えているとき、制御装置3は、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の開度を変更せずに、つまり、原液および希釈液の混合比を変更せずに、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を短縮する(吐出時間短縮工程)。したがって、乾燥前処理液ノズル39から吐出される乾燥前処理液の総量が減少する。
【0131】
図11Bに示すように、乾燥前処理液は、置換液の液膜で覆われている基板Wの上面に向けて吐出される。置換液は、乾燥前処理液に含まれる溶媒と同一名称の溶媒である。したがって、乾燥前処理液の吐出が開始されてからある程度の時間が経つまでは、乾燥前処理液と置換液とが基板Wの上面で混ざり合い、乾燥前処理液が置換液で薄められる。乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えていても、乾燥前処理液を置換液で薄めれば、乾燥前処理液の濃度は、設定濃度範囲内の値に近づく。
【0132】
乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えているとき、制御装置3は、乾燥前処理液および置換液の混合液における昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内に入るように、吐出時間を短縮する。これにより、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液が基板Wの上面で作成される。したがって、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えていても、適切な厚さT1の固化膜SFを基板Wの上面に形成できる。
【0133】
以上のように第1実施形態では、昇華性物質と溶媒とを含む原液に溶媒を含む希釈液を混ぜて、乾燥前処理液を作成する。その後、基板W上の乾燥前処理液から溶媒を蒸発させて、昇華性物質を含む固化膜SFを基板Wの表面に形成する。その後、固化膜SFを昇華させて、基板Wの表面から固化膜SFを除去する。したがって、スピンドライなどの従来の乾燥方法に比べて、倒壊するパターンP1の数を減らしながら、基板Wを乾燥させることができる。
【0134】
昇華乾燥において、固化膜SFはパターンP1に対して厚すぎても薄すぎても、パターンP1の倒壊率が低下する。固化膜SFの厚さT1には、パターンP1の高さHpに応じて変化する最適な範囲がある。乾燥前処理液の濃度、つまり、乾燥前処理液における昇華性物質の濃度は、固化膜SFの厚さT1に影響を与える要因の一つである。乾燥前処理液の濃度を制御すれば、乾燥前処理液の液膜の厚さだけを制御する場合に比べて、固化膜SFの厚さT1を精密に制御できる。
【0135】
乾燥前処理液の濃度は、原液および希釈液の混合比に応じて変化する。乾燥前処理液の濃度は、少なくともパターンP1の高さHpに基づいて設定された設定濃度範囲内の値に調整されている。したがって、どのような高さのパターンP1が基板Wの表面に形成されていても、パターンP1の倒壊率を低下させることができる。これにより、乾燥後の基板Wの品質を高めることができる。
【0136】
第1実施形態では、昇華性物質の濃度が低い原液を希釈液と混ぜる。つまり、原液における昇華性物質の濃度は、原液における溶媒の濃度よりも低い。原液における昇華性物質の濃度が極めて高い場合、原液の量が少し変わると、乾燥前処理液の濃度が大幅に変わる。昇華性物質の濃度が低い原液を用いれば、乾燥前処理液の濃度を容易に精密に制御できる。これにより、固化膜SFの厚さT1を精密に制御できる。
【0137】
第1実施形態では、多量の希釈液を原液と混ぜる。つまり、乾燥前処理液における希釈液の濃度は、乾燥前処理液における原液の濃度よりも高い。原液の変化量が同じであれば、希釈液の濃度が高い場合は、原液の濃度が高い場合と比べて乾燥前処理液の濃度の変化量が小さい。したがって、希釈液の濃度が高い乾燥前処理液を作成することにより、乾燥前処理液の濃度を容易に精密に制御できる。
【0138】
第1実施形態では、原液に含まれる溶媒と同一名称の溶媒を原液と混ぜる。つまり、昇華性物質を溶媒で希釈した後に、この昇華性物質を溶媒でさらに希釈する。昇華性物質が希釈液に含まれないので、希釈液を貯留する希釈液タンク105内で昇華性物質が析出することはない。さらに、昇華性物質が希釈液に含まれないので、希釈液における昇華性物質の濃度を管理する必要がない。
【0139】
第1実施形態では、原液および希釈液をミキシングタンク151(
図16参照)内で混ぜるのではなく、ノズルの一例である乾燥前処理液ノズル39の方に流動させながら混合する。すなわち、原液および希釈液は、基板Wに向けて乾燥前処理液を吐出する乾燥前処理液ノズル39の方に下流に流れながら互いに混ざり合う。したがって、乾燥前処理液を作成しながら、乾燥前処理液ノズル39の方に送ることができる。さらに、ミキシングタンク151などの乾燥前処理液を貯留するタンクを設ける必要がないので、基板処理装置1を小型化できる。
【0140】
第1実施形態では、測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外である場合、乾燥前処理液の濃度を設定濃度範囲内の値に近づけるために、原液および希釈液の混合比を変更する。さらに、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を延長する。乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の値で安定するにはある程度の時間がかかる。吐出時間を延長すれば、乾燥前処理液の濃度が安定するまで乾燥前処理液の吐出を継続でき、適切な濃度の乾燥前処理液を乾燥前処理液ノズル39に吐出させることができる。
【0141】
第1実施形態では、測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲を超えている場合、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させる吐出時間を短縮する。乾燥前処理液供給工程(
図8のステップS16)が行われる前には、溶媒供給工程の一例である置換液供給工程(
図8のステップS15)が行われる。したがって、乾燥前処理液ノズル39は、溶媒の一例である置換液が基板Wの表面にある状態で乾燥前処理液を吐出する。
【0142】
吐出時間を短縮すると、基板Wの表面に供給される乾燥前処理液の総量が減少する。基板W上の置換液がなくなる前に乾燥前処理液の吐出を停止すれば、乾燥前処理液を基板W上の置換液で希釈でき、乾燥前処理液の濃度を設定濃度範囲内の値まで低下させることができる。これにより、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液を基板Wの表面に供給できる。
【0143】
第1実施形態では、原液タンク101内の原液を第1ポンプ103によって原液タンク101の外に送り、希釈液と混合する。これにより、乾燥前処理液が作成される。作成された乾燥前処理液は、乾燥前処理液配管40内を下流に流れ、乾燥前処理液ノズル39から吐出される。乾燥前処理液の一部は、乾燥前処理液ノズル39から吐出されるのではなく、乾燥前処理液ノズル39の上流で乾燥前処理液配管40に接続された分岐配管116に流入する。
【0144】
乾燥前処理液の流量の設定値が小さい場合、原液の実際の流量が原液の流量の設定値とは異なると、乾燥前処理液の濃度に大きな影響が生じ得る。その一方で、乾燥前処理液の流量の設定値が大きい場合、原液の実際の流量が原液の流量の設定値とは異なっていても、乾燥前処理液の濃度に生じる影響は、乾燥前処理液の流量の設定値が小さい場合に比べて小さい。乾燥前処理液の一部を分岐配管116に流入させれば、乾燥前処理液の流量の設定値を増やすことができる。これにより、乾燥前処理液の濃度を精密に制御できる。
【0145】
さらに、原液タンク101から送り出される原液の流量を増やすために、乾燥前処理液ノズル39から吐出される乾燥前処理液の流量を増やすのではなく、乾燥前処理液の一部を分岐配管116に流入させる。分岐配管116に流入した乾燥前処理液は、基板W上の異物で汚染されていない。したがって、分岐配管116に流入した乾燥前処理液を他の乾燥前処理液ノズル39に吐出させたり、他の用途に用いることができる。
【0146】
第1実施形態では、乾燥前処理液ノズル39に供給されずに分岐配管116に流入した乾燥前処理液を、溶媒を含む補充液として用いる。具体的には、分岐配管116に流入した乾燥前処理液を、原液タンク101内に供給する。乾燥前処理液は、希釈液によって希釈された原液である。したがって、乾燥前処理液を原液タンク101内に供給すると、原液タンク101内の原液における昇華性物質の濃度が低下する。
【0147】
溶媒が原液から蒸発すると、原液における昇華性物質の濃度が上昇し、昇華性物質が原液タンク101内の原液中で析出するかもしれない。乾燥前処理液を原液タンク101内に供給すれば、このような昇華性物質の析出を防止できる。さらに、溶媒を含む補充液を新たに準備するのではなく、分岐配管116に流入した乾燥前処理液を補充液として用いるので、溶媒の使用量を減らすことができる。
【0148】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第2実施形態の主な相違点は、乾燥前処理液を基板Wに供給する前に、ポッド141に向けて乾燥前処理液を吐出することである。
以下の
図12~
図14において、
図1~
図11Bに示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0149】
図12は、本発明の第2実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニット100を示す模式図である。
図13は、乾燥前処理液ノズル39がポッド141に向けて乾燥前処理液を吐出してから、乾燥前処理液ノズル39が基板Wに向けて乾燥前処理液を吐出するまでの流れを示すフローチャートである。
図14は、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pがポッド141内の液体中に配置されている状態を示す断面図である。
【0150】
図12では、開いているバルブを黒色で塗りつぶしている。たとえば、
図12は、乾燥前処理液バルブ41および第2電動バルブ108が開いており、第1電動バルブ104が閉じていることを示している。これは、
図15でも同様である。
図12に示すように、処理ユニット2は、待機位置に位置する乾燥前処理液ノズル39から吐出された液体を受け止める筒状のポッド141を備えている。ポッド141は、平面視で処理カップ21のまわりに配置されている。ポッド141は、ドレインバルブ143が介装されたドレイン配管142に接続されている。ドレインバルブ144が閉じられているときに、待機位置に位置する乾燥前処理液ノズル39が液体を吐出すると、液体がポッド142内に溜まる。ドレイン配管142は、補充タンク120に接続されている。
【0151】
溶液濃度計117は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液の濃度を測定する。
図12は、溶液濃度計117がドレイン配管142に接続されている例を示している。溶液濃度計117は、ドレイン配管142内の乾燥前処理液の濃度を測定する。溶液濃度計117は、ポッド141内の乾燥前処理液の濃度を測定してもよい。
図13に示すように、制御装置3は、待機位置に位置する乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させながら、溶液濃度計117に乾燥前処理液の濃度を測定させる(時刻T21~時刻T23)。乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、基板Wではなく、ポッド141に供給される(プリディスペンス工程)。ポッド141内の乾燥前処理液は、ドレイン配管142に排出される。溶液濃度計117は、ドレイン配管142に排出された乾燥前処理液の濃度を測定する。ドレイン配管142内の乾燥前処理液は、補充タンク120に回収されてもよいし、回収されなくてもよい。
【0152】
溶液濃度計117によって測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外であった場合、制御装置3は、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方の開度を変更し、原液および希釈液の混合比を変更する(時刻T22)。その後、制御装置3は、乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の目標濃度で安定するまで、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108の少なくとも一方の開度を溶液濃度計117に基づいて変更する。
【0153】
乾燥前処理液の濃度が目標濃度で安定すると、制御装置3は、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液の吐出を停止させる(時刻T23)。その後、制御装置3は、ノズル移動ユニット42に乾燥前処理液ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、制御装置3は、処理位置に位置する乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を吐出させる(時刻T24~時刻T25)。このとき、原液および希釈液の混合比は、乾燥前処理液の濃度が目標濃度で安定した値に設定される。したがって、目標濃度の乾燥前処理液が基板Wの上面に供給される。
【0154】
基板Wへの乾燥前処理液の供給が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液の吐出を停止させる(時刻T25)。その後、制御装置3は、ノズル移動ユニット42に乾燥前処理液ノズル39を処理位置から待機位置に移動させる。乾燥前処理液ノズル39が待機位置に移動した後、制御装置3は、第1電動バルブ104を開かずに、第2電動バルブ108および乾燥前処理液バルブ41を開いてもよい。この場合、希釈液だけが、ミキシングバルブ109を介して乾燥前処理液配管40に供給される。
【0155】
希釈液だけが乾燥前処理液配管40に供給されると、乾燥前処理液配管40内の乾燥前処理液は、希釈液によって乾燥前処理液ノズル39の方に下流に押される。これにより、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40内に残留している乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39から吐出される。その後、希釈液だけが乾燥前処理液ノズル39から吐出される。これにより、昇華性物質の固体が乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pで析出し、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pが昇華性物質の固体で詰まることを防止できる。
【0156】
さらに、残留している乾燥前処理液の排出は、乾燥前処理液ノズル39が処理位置に位置しているときではなく、乾燥前処理液ノズル39が待機位置に位置しているときに行われる。したがって、基板Wがスピンチャック10から搬出される前に、残留している乾燥前処理液の排出を開始できる。加えて、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液および希釈液は、ポッド141に受け止められるので、スピンベース12が乾燥前処理液または希釈液で濡れることを防止できる。
【0157】
なお、基板Wへの乾燥前処理液の供給が終了した後は、
図14に示すように、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pをポッド141内の液体中に配置してもよい。溶媒が含まれるのであれば、ポッド141内の液体は、どのような液体であってもよい。希釈液または乾燥前処理液が、ポッド141内に溜められてもよい。たとえば、基板Wへの乾燥前処理液の供給を開始する前に乾燥前処理液ノズル39に吐出させた乾燥前処理液をポッド141内に溜めてもよい。
【0158】
乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pは、乾燥前処理液ノズル39内に残留している乾燥前処理液を排出した後にポッド141内の液体中に配置されてもよいし、乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39内に残留したままポッド141内の液体中に配置されてもよい。乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pをポッド141内の液体中に配置すれば、乾燥前処理液ノズル39内の液体が空気に触れることはない。したがって、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pで溶媒が蒸発し、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pで昇華性物質が析出することを防止できる。
【0159】
第2実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、基板Wではなく、基板Wのまわりに配置された筒状のポッド141に向けて乾燥前処理液を吐出する。それと同時に、ポッド141に向けて吐出された乾燥前処理液における昇華性物質の濃度を測定する。昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内であることが確認された後、ポッド141ではなく、基板Wに向けて乾燥前処理液を吐出する。これにより、昇華性物質の濃度が設定濃度範囲内である乾燥前処理液を基板Wの表面に確実に供給できる。
【0160】
次に、第3実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第3実施形態の主な相違点は、乾燥前処理液が遮断部材51の下面51Lの中央部から吐出されることである。
以下の
図15において、
図1~
図14に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0161】
図15は、本発明の第3実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニット100を示す模式図である。
第3実施形態では、中心ノズル55(
図2参照)に代えて、乾燥前処理液ノズル39が、遮断部材51の中央部に配置されている。乾燥前処理液ノズル39は、遮断部材51に保持されており、遮断部材51と共に昇降する。乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pは、遮断部材51の下面51Lの中央部で開口する上中央開口61の上方に配置されている。図示はしないが、不活性ガスを案内する上気体配管56(
図2参照)は、乾燥前処理液ノズル39に接続されている。
【0162】
乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出した後は、乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40内に残留する。この場合、制御装置3は、基板Wがスピンチャック10から搬出された後、第1電動バルブ104を開かずに、第2電動バルブ108および乾燥前処理液バルブ41を開く。そのため、希釈液だけが、ミキシングバルブ109を介して乾燥前処理液配管40に供給される。
【0163】
希釈液だけが乾燥前処理液配管40に供給されると、乾燥前処理液配管40内の乾燥前処理液は、希釈液によって乾燥前処理液ノズル39の方に下流に押される。これにより、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40内に残留している乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39から吐出される。溶媒が、乾燥前処理液ノズル39の先端、つまり、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pで乾燥前処理液から蒸発すると、昇華性物質の固体が乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pで析出し、乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pが昇華性物質の固体で詰まることがある。残留している乾燥前処理液を乾燥前処理液ノズル39から除去すれば、このような現象を回避できる。
【0164】
希釈液による乾燥前処理液の除去は、基板Wがスピンチャック10の上にない状態で行われる。そのため、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、基板Wの上面ではなく、スピンベース12の上面12uに供給される。残留している全ての乾燥前処理液が吐出されると、希釈液だけが乾燥前処理液ノズル39から吐出される。希釈液も、スピンベース12の上面12uに供給される。これにより、スピンチャック10上の乾燥前処理液が希釈液で洗い流される。その後、制御装置3は、第2電動バルブ108および乾燥前処理液バルブ41を閉じ、乾燥前処理液配管40への希釈液の供給を停止する。
【0165】
希釈液が乾燥前処理液ノズル39から吐出された後、制御装置3は、スピンチャック10上の希釈液を洗い流すために、純水などのリンス液をスピンベース12の上面12uに供給してもよい。この場合、制御装置3は、乾燥前処理液ノズル39にリンス液を吐出させてもよいし、乾燥前処理液ノズル39以外のノズルにリンス液を吐出させてもよい。また、乾燥前処理液、希釈液、およびリンス液のいずれかがスピンベース12に供給されているとき、制御装置3は、スピンベース12を静止させていてもよいし、回転させていてもよい。
【0166】
希釈液が乾燥前処理液ノズル39から吐出されているときは、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40の内部が希釈液で満たされている。第2電動バルブ108および乾燥前処理液バルブ41が閉じられると、希釈液が乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40内に保持される。したがって、乾燥前処理液配管40への希釈液の供給を停止した後に、少量の希釈液が乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pから落下する可能性がある。これを防止するために、サックバックバルブ144を乾燥前処理液配管40に介装してもよい。
【0167】
サックバックバルブ144が作動しているか否かにかかわらず、液体は乾燥前処理液配管40内を流れる。乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40の内部が希釈液で満たされた状態で制御装置3がサックバックバルブ144を作動させると、乾燥前処理液配管40の内部空間に通じるサックバックバルブ144の内部空間が広がり、乾燥前処理液ノズル39内の希釈液がサックバックバルブ144の方に逆流する。これにより、希釈液の表面(液面)が乾燥前処理液ノズル39の吐出口39pから遠ざかる。
【0168】
希釈液による乾燥前処理液の除去を行っても、微量の乾燥前処理液が乾燥前処理液配管40等に残留する場合がある。この場合、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しない期間が長いと、残留した乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39に移動し、乾燥前処理液ノズル39内の希釈液における昇華性物質の濃度が高まるかもしれない。サックバックバルブ144を作動させて、希釈液の表面を後退させれば、希釈液が蒸発し難くなるので、残留した乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39に移動したとしても、昇華性物質が析出することを防止できる。
【0169】
次に、第4実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第4実施形態の主な相違点は、原液および希釈液をミキシングバルブ109(
図3参照)内で混合するのではなく、ミキシングタンク151内で混合することである。
以下の
図16において、
図1~
図15に示された構成と同等の構成については、
図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0170】
図16は、本発明の第4実施形態に係る乾燥前処理液供給ユニット100を示す模式図である。
乾燥前処理液供給ユニット100は、第1実施形態に係るミキシングバルブ109(
図3参照)に代えて、原液および希釈液を混合するミキシングタンク151を備えている。ミキシングタンク151は、キャビネットCC内に配置されている。第1個別配管102および第2個別配管106の下流端は、ミキシングタンク151に接続されている。原液および希釈液は、ミキシングタンク151の中に供給され、ミキシングタンク151の中で混合される(タンク内混合工程)。これにより、乾燥前処理液が作成される。
【0171】
乾燥前処理液配管40の上流端は、ミキシングタンク151の表面ではなく、ミキシングタンク151の中に配置されている。乾燥前処理液供給ユニット100は、ミキシングタンク151内に気体を供給するガス供給配管152と、ガス供給配管152の内部を開閉するガス供給バルブ153とを含む。ガス供給配管152からミキシングタンク151に供給される気体は、窒素ガスである。空気などの窒素ガス以外の気体が、ガス供給配管152からミキシングタンク151に供給されてもよい。
【0172】
ミキシングタンク151内の乾燥前処理液を乾燥前処理液ノズル39に供給するときは、第1電動バルブ104および第2電動バルブ108を閉じ、ガス供給バルブ153を開く。これにより、気体の一例である窒素ガスが、ガス供給配管152からミキシングタンク151内に供給され、ミキシングタンク151内の気圧が上昇する。ミキシングタンク151内の乾燥前処理液は、ミキシングタンク151内の気圧の上昇により乾燥前処理液配管40内に送られ、乾燥前処理液ノズル39に向かって乾燥前処理液配管40内を流れる。これにより、ミキシングタンク151内の乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39に供給され、乾燥前処理液ノズル39から吐出される。
【0173】
循環配管125の上流端および下流端は、ミキシングタンク151に接続されている。循環配管125内の乾燥前処理液の濃度は、溶液濃度計117によって測定される。溶液濃度計117によって測定された乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲外である場合、制御装置3は、原液および希釈液の少なくとも一方をミキシングタンク151内に供給し、ミキシングタンク151内の乾燥前処理液の濃度を変更する。これにより、ミキシングタンク151内の乾燥前処理液の濃度が設定濃度範囲内の値に維持される。
【0174】
制御装置3は、未処理の基板Wを収容したキャリアCA(
図1A参照)がロードポートLPに搬送された後に、ミキシングタンク151内で乾燥前処理液を作成してもよい。もしくは、制御装置3は、未処理の基板Wを収容したキャリアCAがロードポートLPに搬送される前に、ミキシングタンク151内で乾燥前処理液を作成してもよい。つまり、設定濃度範囲が指定される前に、乾燥前処理液が作成されてもよい。この場合、乾燥前処理液の濃度を任意の一定の値に維持し、設定濃度範囲が指定された後に、乾燥前処理液の濃度を調整すればよい。
【0175】
ミキシングタンク151は、ドレインバルブ155が介装されたドレイン配管154に接続されている。ミキシングタンク151の中で乾燥前処理液を作成するときは、ドレインバルブ155を閉じる。ミキシングタンク151の内部を洗浄するときは、ドレインバルブ155を開き、ミキシングタンク151内の全ての液体をドレイン配管154に排出する。その後、希釈液タンク105内の希釈液をミキシングタンク151の中に供給し、ミキシングタンク151内の汚れと共にドレイン配管154に排出する。これにより、ミキシングタンク151の内部が希釈液で洗浄される。
【0176】
乾燥前処理液供給ユニット100は、ミキシングタンク151を迂回するバイパス配管156と、バイパス配管156の内部を開閉するバイパスバルブ157とを備えていてもよい。バイパス配管156の上流端は、第2ポンプ107の下流で且つ第2電動バルブ108の上流の位置で第2個別配管106に接続されている。バイパス配管156の下流端は、乾燥前処理液バルブ41の下流で乾燥前処理液配管40に接続されている。バイパスバルブ157は常時閉じられている。
【0177】
第2電動バルブ108を閉じ、バイパスバルブ157を開くと、希釈液は、ミキシングタンク151に供給されずに、乾燥前処理液配管40に供給される。これにより、希釈液だけが、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40に供給される。乾燥前処理液配管40内の乾燥前処理液は、希釈液によって乾燥前処理液ノズル39の方に下流に押される。これにより、乾燥前処理液ノズル39および乾燥前処理液配管40内に残留している乾燥前処理液が乾燥前処理液ノズル39から吐出される。
【0178】
第4実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第4実施形態では、原液および希釈液をミキシングタンク151内で混合する。したがって、同一濃度の乾燥前処理液を多量に作成することができる。たとえば、1枚の基板Wに供給される乾燥前処理液の総量の何倍もの乾燥前処理液をミキシングタンク151内に作成できる。ミキシングタンク151内の乾燥前処理液は、乾燥前処理液ノズル39に供給され、基板Wの表面に向けて吐出される。したがって、乾燥後の基板Wの品質を安定させることができる。
【0179】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、原液における昇華性物質の濃度は、原液における溶媒の濃度と等しくてもよいし、原液における溶媒の濃度より高くてもよい。
【0180】
乾燥前処理液における希釈液の濃度は、乾燥前処理液における原液の濃度と等しくてもよいし、乾燥前処理液における原液の濃度より低くてもよい。
希釈液は、溶媒以外の成分を含んでいてもよい。たとえば、希釈液における昇華性物質の濃度が原液における昇華性物質の濃度よりも低ければ、希釈液は、昇華性物質と溶媒とを含んでいてもよい。
【0181】
原液タンク101に供給される補充液は、昇華性物質および溶媒の溶液ではなく、IPAなどの溶媒であってもよい。この場合、溶媒配管123内の補充液を、原液タンク101に直接供給してもよい。
固化膜SFは、ウェット処理ユニット2wとは異なる処理ユニット2で除去されてもよい。固化膜SFを除去する処理ユニット2は、基板処理装置1の一部であってもよいし、基板処理装置1とは異なる基板処理装置の一部であってもよい。つまり、ウェット処理ユニット2wが備えられた基板処理装置1と、固化膜SFを除去する処理ユニット2が備えられた基板処理装置とが、同じ基板処理システムに設けられており、固化膜SFを除去する前に、基板処理装置1から別の基板処理装置に基板Wを搬送してもよい。
【0182】
純水などの基板W上のリンス液を乾燥前処理液で置換できる場合は、基板W上のリンス液を置換液に置換する置換液供給工程を行わずに、乾燥前処理液供給工程を行ってもよい。
第1電動バルブ104に代えて、第1個別配管102の内部を開閉する第1開閉バルブと、第1個別配管102内を流れる液体の流量を変更する第1流量調整バルブとを設けてもよい。同様に、第2電動バルブ108に代えて、第2個別配管106の内部を開閉する第2開閉バルブと、第2個別配管106内を流れる液体の流量を変更する第2流量調整バルブとを設けてもよい。
【0183】
分岐配管116を省略してもよい。この場合、溶液濃度計117は、乾燥前処理液配管40内の乾燥前処理液の濃度を測定してもよい。もしくは、乾燥前処理液ノズル39が基板Wに向けて乾燥前処理液を吐出した後に、乾燥前処理液配管40に残留する乾燥前処理液を分岐配管116に逆流させてもよい。つまり、分岐配管116をサックバック配管として用いてもよい。
【0184】
ミキシングタンク151内の気圧を上昇させるのではなく、ポンプを用いて、ミキシングタンク151内の乾燥前処理液を乾燥前処理液ノズル39に供給してもよい。
遮断部材51は、円板部52に加えて、円板部52の外周部から下方に延びる筒状部を含んでいてもよい。この場合、遮断部材51が下位置に配置されると、スピンチャック10に保持されている基板Wは、円筒部に取り囲まれる。
【0185】
遮断部材51は、スピンチャック10と共に回転軸線A1まわりに回転してもよい。たとえば、遮断部材51が基板Wに接触しないようにスピンベース12上に置かれてもよい。この場合、遮断部材51がスピンベース12に連結されるので、遮断部材51は、スピンベース12と同じ方向に同じ速度で回転する。
遮断部材51が省略されてもよい。ただし、基板Wの下面に純水などの液体を供給する場合は、遮断部材51が設けられていることが好ましい。基板Wの外周面を伝って基板Wの下面から基板Wの上面に回り込んだ液滴や、処理カップ21から内側に跳ね返った液滴を遮断部材51で遮断でき、基板W上の乾燥前処理液に混入する液体を減らすことができるからである。
【0186】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0187】
制御装置3は、設定濃度確認手段の一例である。乾燥前処理液供給ユニット100は、乾燥前処理液作成手段の一例である。スピンチャック10および中心ノズル55は、固化膜形成手段の一例である。スピンチャック10および中心ノズル55は、昇華手段の一例でもある。
【符号の説明】
【0188】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
10 :スピンチャック
39 :乾燥前処理液ノズル
40 :乾燥前処理液配管
55 :中心ノズル
100 :乾燥前処理液供給ユニット
101 :原液タンク
103 :第1ポンプ
105 :希釈液タンク
109 :ミキシングバルブ
116 :分岐配管
117 :溶液濃度計
120 :補充タンク
141 :ポッド
144 :サックバックバルブ
151 :ミキシングタンク
Hp :パターンの高さ
P1 :パターン
SF :固化膜
T1 :固化膜の厚さ
W :基板