(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】コンクリート製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 21/32 20060101AFI20230420BHJP
C04B 28/26 20060101ALI20230420BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230420BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
B28B21/32
C04B28/26
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
(21)【出願番号】P 2019032612
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】原田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】西崎 丈能
(72)【発明者】
【氏名】大西 俊輔
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0125272(US,A1)
【文献】特開平10-218644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B
C04B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製品を製造する方法であって、
ケイ素およびアルミニウムを主成分とする粉体とアルカリ溶液と骨材とをコンクリート材料として用いてコンクリートを製造する際のコンクリートの軟度を示す値が所定の値以下となるように該コンクリート材料中の水分量を調整する段階と、
回転する中空円筒形の型枠の遠心加速度を所定の範囲内の加速度に調整する段階と、
前記水分量に調整されたコンクリート材料を用いて製造された前記コンクリートを前記型枠内に打ち込み、遠心成形する段階とを含
み、
前記アルカリ溶液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと、水ガラスまたはケイ酸カリウムとの化合物の水溶液であり、前記水酸化ナトリウムまたは前記水酸化カリウムと、前記水ガラスまたは前記ケイ酸カリウムとの混合比は、体積比で1:2~1:3であり、前記骨材は、前記粉体の質量に対して2~5倍の量が添加され、前記アルカリ溶液は、前記粉体の質量に対して35~60%の量が添加され、
前記水分量を調整する段階では、前記コンクリートの軟度を示す値としてのスランプが3cm以下になるように前記水分量を調整し、
前記遠心加速度を調整する段階では、前記遠心加速度を2~6Gに調整する、コンクリート製品の製造方法。
【請求項2】
前記粉体と前記アルカリ溶液を混練して糊状物を製造する段階と、
遠心成形される前記コンクリートの内側に前記糊状物を打ち込み、遠心成形する段階とを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水分量を調整する段階では、前記アルカリ溶液の量を調整する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
遠心成形後、加熱養生する段階をさらに含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製品を遠心成形により製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、主原料が石灰石であり、焼成時に、地球温暖化の問題となる二酸化炭素を排出することから、コンクリート製品の製造において、セメントを使用しないコンクリートが用いられるようになってきている。セメントを使用しないコンクリートとしては、ケイ素やアルミニウムを主成分とする粉体とアルカリ溶液とを使用したコンクリートが知られている。
【0003】
コンクリート製品には、遠心成形により製造されるヒューム管等の遠心成形体があるが、遠心成形体の製造において、高炉水砕スラグ粉末とアルカリ刺激剤とを用いたコンクリートを使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコンクリートでは、ケイフッ化金属を凝結調節剤として添加しなければ、セメントを使用する普通ポルトランドセメントと同等の凝結性状を有し、耐酸性に優れたコンクリートを得ることができないという問題があった。
【0006】
セメントを使用しないコンクリートは、セメントを使用するコンクリートに比較して、粘性が高い等の特性があるため、型枠に流し込み、バイブレータ等で振動を加えることにより製造するのが一般的であり、上記の特別な凝結調節剤を使用せずに、遠心成形により製品を製造したという実績は見られない。
【0007】
そこで、特別な添加剤を使用することなく、セメントを使用しないコンクリートを用いてコンクリート製品を遠心成形により製造する方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、ケイ素およびアルミニウムを主成分とする粉体とアルカリ溶液と骨材とをコンクリート材料として用い、そのコンクリート材料中の水分量がコンクリートの軟度を示す値(スランプ)が所定の値以下になるように調整し、回転する型枠の遠心加速度を所定の範囲内の加速度に調整して遠心成形することにより、成形後に型枠から落下することはなく、骨材が厚さ方向にほぼ均一に存在し、内面がほぼ平滑で、ひび割れも発生しないことを見出した。
【0009】
本発明は、上記のことを見出すことによりなされたものであり、上記課題は、本発明のコンクリート製品の製造方法を提供することにより解決することができる。
【0010】
すなわち、コンクリート製品の製造方法は、ケイ素およびアルミニウムを主成分とする粉体とアルカリ溶液と骨材とをコンクリート材料として用いてコンクリートを製造する際のコンクリートの軟度を示す値が所定の値以下となるように該コンクリート材料中の水分量を調整する段階と、回転する中空円筒形の型枠の遠心加速度を所定の範囲内の加速度に調整する段階と、水分量に調整されたコンクリート材料を用いて製造されたコンクリートを型枠内に打ち込み、遠心成形する段階とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特別な添加剤を使用することなく、セメントを使用しないコンクリートを用いてコンクリート製品を遠心成形により製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図6】試験1の型枠の回転を停止したときの様子を示した図。
【
図7】試験2で遠心成形した製品と断面の状況を示した図。
【
図8】スランプ0cmのときのコンクリートの状態を説明する図。
【
図9】試験3で遠心成形した製品の断面の状況を示した図。
【
図10】試験3で遠心成形した製品の内面を示した図。
【
図11】試験4で遠心成形した製品の内面を示した図。
【
図12】各遠心加速度に対する脱型直後の内面のひび割れ本数を示した図。
【
図13】各遠心加速度に対する骨材の偏りを示した図。
【
図14】各遠心加速度での製品の断面の状況を示した図。
【
図16】ジオポリマーコンクリートを用いてコンクリート製品を製造する流れの一例を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の方法で使用されるコンクリートは、セメントを使用しないコンクリートで、ケイ素およびアルミニウムを主成分とする粉体とアルカリ溶液とを使用したコンクリート(以下、ジオポリマーコンクリートと呼ぶ。)である。ケイ素およびアルミニウムを主成分とする粉体としては、フィラーが挙げられ、フィラーとしては、火力発電所において微粉炭を燃焼する際に副生物として得られるフライアッシュを挙げることができる。フライアッシュの主成分は、SiO2、Al2O3、Ca等である。
【0014】
フィラーとしては、そのほか、高炉で銑鉄を生成する際に同時に生成される高炉スラグ微粉末が挙げられる。高炉スラグ微粉末の主成分は、CaO、SiO2、Al2O3、MgOである。また、高炉から溶融状態で取り出されたスラグを大量の水等で急冷した高炉水砕スラグ、空冷や適度の散水により徐冷した高炉徐冷スラグ、高炉で精製した鉄を鋼にする製鋼工程から生成される製鋼スラグ等も挙げられる。
【0015】
高炉水砕スラグは、主にガラス質の砂状のスラグで、高炉徐冷スラグは、結晶質の塊状のスラグで、製鋼スラグは、岩石状のスラグである。高炉水砕スラグは、高炉スラグと同様、その主成分は、CaO、SiO2、Al2O3、MgOである。製鋼スラグの主成分は、CaO、SiO2、FeO、MgO、MnOである。粉体は、主成分としてケイ素およびアルミニウムを含むものであれば、これらの材料に限定されるものではなく、都市ゴミ灰溶融スラグ等であってもよい。また、粉体としては、上記に挙げたものを2以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと、水ガラスまたはケイ酸カリウムとの化合物の水溶液等を挙げることができる。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと水ガラスまたはケイ酸カリウムとの混合比は、水ガラスまたはケイ酸カリウムの混合割合が高いと、混練直後から流動性が大きく低下し、安定した可使性を得ることができなくなる。このため、この混合比は、体積比で1:2~1:3程度が好ましい。
【0017】
アルカリ溶液は、フィラーの質量に対して任意の質量で添加することができるが、液相の割合が高いと圧縮強度や曲げ強度が低下することから、これらの強度を考慮して添加量を決定することができる。一例として、アルカリ溶液は、フィラーの質量に対して35%~60%とすることができる。
【0018】
骨材は、セメントを使用するコンクリート(以下、セメントコンクリートと呼ぶ。)を製造するために一般に用いられる砂、砂利、砕石等とすることができる。骨材は、例えば、フィラーの質量に対して2~5倍とすることができる。
【0019】
混練は、フィラー、アルカリ溶液、骨材を撹拌混合することにより行われ、バッチ式や連続式等の各種ミキサーによって行うことができる。
【0020】
このようにして製造された、まだ固まっていないコンクリート(生コンクリート)は、
図1に示すような遠心成形装置内に打ち込まれる。
図1(a)は、遠心成形装置の正面図で、
図1(b)は、矢線A-Aで切断した断面図である。
【0021】
遠心成形装置は、中空円筒を形成し、ボルトおよびナット等により連結される鋼製の2つの半円筒部材10a、10bと、2つの半円筒部材10a、10bを連結して形成された型枠10の長さ方向の両端に取り付けられる2つの鋼製で円盤状の側板11とを含む。また遠心成形装置は、側板11と隣接し、型枠10を載置するとともに型枠10を一定の方向に回転させる鋼製の駆動輪12および従動輪13と、駆動輪12を駆動し、回転させる電動機(モータ)14とを含む。モータ14と、駆動輪12とは、駆動輪12に設けられる歯車の各歯と噛み合う鎖状物(チェーン)15により接続され、チェーン15を介してモータ14の動力を駆動輪12に伝達する。
【0022】
生コンクリートは、駆動輪12および従動輪13上に載置され、駆動輪12により回転している型枠10の内部の、断面が円形の中空部分に打ち込まれる。生コンクリートは、矢線Bに示す型枠10の長さ方向に均等に打ち込まれ、型枠10の回転により遠心力が作用し、中空円筒形に成形される。
【0023】
遠心成形後、型枠10は、クレーン等により駆動輪12および従動輪13の上から持ち上げられ、養生室へ移動される。養生室では、型枠10ごと蒸気養生される。これにより、コンクリートは、強度を発現し、硬化する。その後、型枠10を構成する2つの半円筒部材10a、10bを1つずつ取り外す。そして、自然養生、外圧試験、水密試験、コンクリート圧縮試験等を行い、コンクリート製品の1つであるヒューム管が製造される。
【0024】
遠心成形により製造されるコンクリート製品は、ヒューム管に限られるものではなく、コンクリート製の杭や電柱等であってもよい。また、遠心成形には、遠心成形装置の型枠10内に鉄筋籠を配置し、鉄筋籠を埋設するようにジオポリマーコンクリートを遠心成形してもよい。
【0025】
従来、ジオポリマーコンクリートでコンクリート製品を製造する場合、スランプフローが40~60cm程度のものを使用している。スランプフローは、円錐形の枠にコンクリートを詰め、枠を持ち上げて取り去ったときの直径の広がりを示す値である。スランプフローは、コンクリートの軟度を示す値であるが、同じように軟度を示す値としては、スランプがある。スランプは、円錐形の枠を取り去ったときのコンクリートの頂部が何cm低くなったかを示す値である。
【0026】
また、セメントコンクリートで遠心成形する場合、型枠10の回転速度は、遠心加速度で15~20Gが一般的である。1Gは、重力加速度の大きさである。
【0027】
そこで、同じような成形条件で、ジオポリマーコンクリートを遠心成形し、コンクリート製品を製造することができるか、製造できない場合、どのような条件なら可能であるかを検証するための試験を行った。
図2に、試験に用いた材料を示す。ジオポリマーコンクリートを製造するため、フィラーとして、フライアッシュと高炉スラグ微粉末とを使用し、アルカリ溶液として、水ガラスと水酸化ナトリウムの化合物の水溶液(アルカリシリカ溶液)を使用した。アルカリシリカ溶液の密度は、1.40g/cm
3となるように上記化合物の濃度を調整した。なお、
図2中、「F.M.」は、骨材の粗さを示す粗粒率である。吸水率は、表面が乾燥状態の骨材に含まれる全水分量の、内部まで乾燥した状態の骨材の質量に対する割合を百分率で示したものある。
【0028】
図3に、各材料の配合割合を示す。この配合割合は、1層(外)が、スランプ0cmのときのジオポリマーコンクリートの配合割合である。2層(内)が、アルカリシリカ溶液、高炉スラグ微粉末、フライアッシュを混練して得られる糊状物(ペースト)の配合割合である。BFS置換率は、フィラーの全部をFAとし、FAの一部をBFSで置換したときのフィラーの質量に対するBFSの質量の割合を百分率で示したもので、GPW/Pは、フィラーの質量に対するGPWの質量の割合を百分率で示したものである。
【0029】
フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、海砂、砂岩砕石を、
図3に示した1層(外)の配合に従って計量した材料をまず2つ用意した。材料は、混練前日から混練直前まで20℃の養生室にて保管した。また、混練直前までに、スランプに応じて量を変えたアルカリシリカ溶液も2つ用意した。スランプは、アルカリシリカ溶液の量により調整することができる。ここでは、アルカリシリカ溶液の量を変えてスランプを調整しているが、これに限られるものではなく、フィラーとアルカリ溶液と骨材の配合割合等を変えてスランプを調整してもよい。
【0030】
混練には、強制二軸ミキサーを使用した。まず、粉体であるフィラー(FAとBFS)と細骨材を投入し、30秒間空練りした。次に、ミキサーにアルカリシリカ溶液を入れ、1分間練り混ぜた。最後に、ミキサーに粗骨材を投入し、2分間練り混ぜた。
【0031】
このようにして製造されたジオポリマーコンクリートを遠心成形装置に打ち込み、遠心成形を行った。
図4に、試験の概要とその結果を示す。試験1では、スランプフローを従来のジオポリマーコンクリートでコンクリート製品を製造する際に採用される50cmとし、遠心加速度は、15~20Gとすると分離することが容易に想像できるため、5Gとし、回転時間は、硬化時間を考慮して2時間とした。試験2では、上記の50cmでは硬化に時間がかかることから、スランプを6cmとし、遠心加速度は、従来のセメントコンクリートで遠心成形する際に採用される加速度と同じ18Gとし、回転時間は、硬化時間を考慮して1時間30分とした。
【0032】
試験1では、
図5に示すように、型枠10の回転中は遠心力によりジオポリマーコンクリート16が型枠10の内面に均等に広がり、一定の厚さの中空円筒形の管を形成している。しかしながら、型枠10の回転を停止すると、
図6に示すように、ジオポリマーコンクリート16が軟らかすぎるため、型枠10の内面上部のジオポリマーコンクリート16が落下し、中空円筒形の管を形成することができない、すなわち遠心成形することができないことが分かった。
【0033】
一方、試験2では、スランプを小さくした関係で、
図7(a)に示すように、型枠10の回転を停止し、脱型しても、一定の厚さの中空円筒形の形状を保持できることが分かった。しかしながら、遠心加速度が18Gという高速回転では、ジオポリマーコンクリート16が、骨材を含むコンクリート層20と、骨材を含まないペースト層21とに分離し、約15mmの比較的厚いペースト層21が形成されることが分かった。
【0034】
ペースト層21は、水分を多く含み、強度および耐酸性が低いことから、内側に厚いペースト層21を有するコンクリート製品は、耐酸性が必要とされる下水路等に使用することは難しい。
【0035】
これらのことから、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、海砂、砂岩砕石を、
図3に示した1層(外)の配合に従って計量した材料を用意し、スランプを所定の値として3cm以下の0cmに設定した。スランプを0cmにするため、アルカリシリカ溶液の量を調整した。
【0036】
ここで、スランプが0cmとは、
図8に示すように、型枠を取り去っても、型枠の形状を維持し、形状の変化がない状態を示す。ここでは、スランプを0cmとした例を示すが、3cmまでの間であれば、ほぼ0cmと同様の結果を得ることができる。
【0037】
試験3では、遠心加速度が18Gでは速すぎ、材料の分離が見られることから、6Gとし、また、回転時間も、水分が少なく、硬化時間が短く、硬化し始めるまでの時間(可使時間)が約27~28分であることから、20分間として遠心成形を行った。
【0038】
試験3では、
図9に示すように、型枠10の回転を停止し、脱型しても、一定の厚さの中空円筒形の形状を保持でき、また、ペースト層21も5mm程度と薄いことから、下水道等に使用しても問題がない程度に、強度および耐酸性が向上することが分かった。
【0039】
試験3で成形されたコンクリート製品は、
図10に示すように、中空の内面22に多少の凹凸23が見られた。凹凸23は、コンクリート製品がヒューム管等の管で、内部を水等の液体が流れる場合、液体の流れの抵抗となり、性能上の問題が生じる。
【0040】
そこで、試験4では、別途、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末を、
図3に示した2層(内)の配合に従って計量した材料を用意し、同様に混練してジオポリマーペーストを作成した。最初に、試験3と同様の配合で作成したジオポリマーコンクリートを打ち込み、ある程度遠心成形を行った後、その内側に作成したジオポリマーペーストを打ち込み、遠心成形を行った。
【0041】
試験4は、試験3と同様、一定の厚さの中空円筒形の形状を保持でき、ペースト層21も薄く、強度および耐酸性が向上し、さらには
図11に示すように、内面22に凹凸が見られなくなり、内面22が平滑になった。また、内面22には、ひび割れも見られなかった。
【0042】
以上のように、内面22をより平滑にするためにジオポリマーペーストも使用し、打込み層数を2回にすることができるが、打込み層数はジオポリマーコンクリートのみの1回でも充分に製品として利用することは可能である。
【0043】
上記の例では、試験3で遠心加速度を6Gとしているが、遠心加速度が6G以外でも同様の効果が得られるかどうかを確認するため、遠心加速度を3G、5G、7G、10Gに変えて遠心成形を行った。
【0044】
遠心成形を行った結果は、
図12に示すように、内面22のひび割れは、遠心加速度が3G、5Gでは、0本であり、上記でも説明したように、6Gでも0本であったが、7Gになると11本見られ、10Gになると21本に増加した。ひび割れは、水密性、気密性、強度等の低下につながり、また、製品の変形にもつながることから、ひび割れが発生しない成形条件が望ましい。
【0045】
また、骨材の偏りは、成形された管の内側12.5mmと外側12.5mmで各領域面積に対する骨材の面積の割合を見てみると、
図13(a)に示すように、5Gのときにほぼ均等で、5Gから離れるにつれて内側12.5mmの内側部分24や外側12.5mmの外側部分25に偏りが生じた。3Gでは、骨材の偏りが約10%であるが、7Gでは15%と大きくなった。
【0046】
そのときの断面の様子を、
図13(b)~(d)に示す。3Gでは、偏りがあるといっても、見た目にはほぼ均等で、7G、10Gと大きくなるにつれて、骨材26に明らかな偏りが生じた。
【0047】
また、内面22の状態を、
図14(a)~(d)に示す。
図14(a)、(b)に示すように、3G、5Gでは、内面22に、面積は広く浅い凹部27が存在するが、概ね平滑な曲面となった。7G、10Gも、
図14(c)、(d)に示すように、小孔28が形成されたが、概ね平滑な曲面となった。
【0048】
図15に、以上の結果をまとめる。内面22の平滑性は、いずれの遠心加速度においても概ね良好であるが、7Gより大きくなると、ひび割れが発生し、ペースト厚さが厚くなり、法線方向(厚さ方向)への骨材に偏りが生じている。ここには6Gの結果は示されていないが、6Gまでであれば、ひび割れの発生はなく、ペースト厚さも6mm程度と薄く、法線方向への骨材の偏りも生じない。
【0049】
一方、ここには遠心加速度が3Gより小さい場合の結果は示されていないが、2Gより小さくなると、回転速度が遅く、コンクリートが広がりにくくなるため、遠心成形を行うことができなくなる。
【0050】
以上の結果から、遠心加速度は2~6Gの範囲内とすべきであることが分かった。よって、スランプを3cm以下になるようにアルカリシリカ溶液の量を調整し、遠心加速度を2~6Gに調整し、ジオポリマーコンクリートを打ち込み、遠心成形することで、内面22が平滑で、ひび割れが発生することなく、ペースト厚さも薄く、法線方向への骨材の偏りもほとんどないヒューム管等のコンクリート製品を、ジオポリマーコンクリートにより製造することができる。
【0051】
図16に、ジオポリマーコンクリートを用いてコンクリート製品を製造する流れを示す。ステップ1600から開始し、ステップ1601では、
図3に示した材料中の水分量を、スランプが所定の値以下となるように調整する。水分量は、コンクリート材料中のアルカリ溶液の量により調整することができる。そして、ステップ1602で、ミキサーに材料を投入し、ステップ1603で、材料を混練する。
【0052】
ステップ1604では、型枠10を一定方向に回転させ、回転加速度が2~6Gの範囲内の加速度に調整する。ステップ1605で、製造したジオポリマーコンクリートを型枠10内に打ち込み、ステップ1606で、遠心成形を行う。
【0053】
ステップ1607では、型枠10ごと養生室に移動し、蒸気養生等の加熱養生を行う。ステップ1608では、脱型し、必要に応じて自然養生し、必要な試験を行い、ステップ1609でコンクリート製品の製造を完了する。
【0054】
ジオポリマーペーストを打ち込む場合は、ステップ1606でジオポリマーコンクリートの遠心成形を行っている間に、上記水分量に調整した、ジオポリマーコンクリートを作るときと同一配合のアルカリ溶液とフィラーとをミキサーに入れ、混練してジオポリマーペーストを作る。ここでは、同一配合を一例として挙げているが、これに限定されるものではない。そして、ジオポリマーコンクリートをある程度遠心成形した後にジオポリマーペーストを打ち込み、同様に遠心成形する。その後、ステップ1607の蒸気養生を行う。
【0055】
このように遠心成形が可能になったことで、環境に優しく、耐酸性に優れたジオポリマーコンクリートの使用機会が増え、特に耐酸性が問題となる下水路への活用が可能になる。
【0056】
これまで本発明のコンクリート製品の製造方法を上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
10…型枠
10a、10b…半円筒部材
11…側板
12…駆動輪
13…従動輪
14…モータ
15…チェーン
16…ジオポリマーコンクリート
20…コンクリート層
21…ペースト層
22…内面
23…凹凸
24…内側部分
25…外側部分
26…骨材
27…凹部
28…小孔