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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】位置検出システム及び位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/74 20060101AFI20230420BHJP
   G01S 7/36 20060101ALI20230420BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20230420BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
G01S13/74
G01S7/36
G01S5/02 Z
E05B49/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019044817
(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公開番号】P2020148538
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-08-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古賀 健一
(72)【発明者】
【氏名】森 恵
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹也
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴浩
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-195840(JP,A)
【文献】特表2011-515990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231498(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0059235(US,A1)
【文献】特開2016-038332(JP,A)
【文献】特開2012-056343(JP,A)
【文献】特開2009-150872(JP,A)
【文献】特開2014-227647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00-5/14
G01S 7/00-7/42
G01S 11/00-13/95
E05B 49/00-49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信機及び第2通信機の位置関係を検出するにあたり、これらの一方から他方に向けて電波を送信し、前記電波の返信を受けるまでの前記電波の送受信に係る測定値を求める測定部を備え、
前記測定部は、前記第1通信機から前記第2通信機に電波を送信して、その返信を前記第1通信機で受信する第1通信と、前記第2通信機から前記第1通信機に電波を送信し、その返信を前記第2通信機で受信する第2通信とから、電波の送受信に係る前記測定値を求めるものであり、
前記第1通信機及び前記第2通信機の一方から他方に送信された電波と、送信されるべき理想波とを基に、前記第1通信機及び前記第2通信機の少なくとも一方のクロック誤差が要因のずれ量を求め、前記ずれ量を基に前記測定値を補正する補正部を備え、
前記補正部によって補正された前記測定値を基に、前記第1通信機及び前記第2通信機の位置関係の正否を判定する正否判定部を備え、
前記正否判定部は、前記第1通信における電波の周波数誤差と、前記第2通信における電波の周波数誤差との整合性から、前記第1通信機及び前記第2通信機の位置関係の正否を判定する位置検出システム。
【請求項2】
前記測定部は、前記測定値として、前記電波の伝搬時間を測定する
請求項1に記載の位置検出システム。
【請求項3】
第1通信機及び第2通信機の位置関係を検出するにあたり、これらの一方から他方に向けて電波を送信し、前記電波の返信を受けるまでの前記電波の送受信に係る測定値を測定部によって求める位置検出方法であって、
前記第1通信機から前記第2通信機に電波を送信して、その返信を前記第1通信機で受信する第1通信と、前記第2通信機から前記第1通信機に電波を送信し、その返信を前記第2通信機で受信する第2通信とから、電波の送受信に係る前記測定値を、前記測定部によって求めることと、
補正部によって、前記第1通信機及び前記第2通信機の一方から他方に送信された電波と、送信されるべき理想波とを基に、前記第1通信機及び前記第2通信機の少なくとも一方のクロック誤差が要因のずれ量を求め、前記ずれ量を基に前記測定値を補正することと、
正否判定部によって、前記補正部によって補正された前記測定値を基に、前記第1通信機及び前記第2通信機の位置関係の正否を判定することと、を備え、
前記正否判定部によって、前記第1通信における電波の周波数誤差と、前記第2通信における電波の周波数誤差との整合性から、前記第1通信機及び前記第2通信機の位置関係の正否を判定する位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1通信機及び第2通信機の位置関係を検出する位置検出システム及び位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端末及びその操作対象の間で電波の通信を行ってこれらの間の距離を測定し、測定した距離の正否を判定する位置検出システムが周知である(特許文献1等参照)。位置検出システムは、例えば端末及びその操作対象の間の距離に準じた測定値を求めた際、この測定値が閾値未満であると判定した場合、例えば2者間の間で無線により実行されたID照合の成立を許容する。これにより、操作対象から遠く離れた端末を中継器等で繋ぐ不正通信が試みられたとしても、これを検出してID照合を不正に成立に移行させずに済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-227647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の位置検出システムでは、不正通信の検出の更なる精度向上が望まれていた。
本発明の目的は、不正通信の検出精度を向上可能にした位置検出システム及び位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決する位置検出システムは、第1通信機及び第2通信機の位置関係を検出するにあたり、これらの一方から他方に向けて電波を送信し、前記電波の返信を受けるまでの前記電波の送受信に係る測定値を求める測定部を備え、前記測定部は、前記第1通信機から前記第2通信機に電波を送信して、その返信を前記第1通信機で受信する第1通信と、前記第2通信機から前記第1通信機に電波を送信し、その返信を前記第2通信機で受信する第2通信とから、電波の送受信に係る前記測定値を求める。
【0006】
前記問題点を解決する位置検出方法は、第1通信機及び第2通信機の位置関係を検出するにあたり、これらの一方から他方に向けて電波を送信し、前記電波の返信を受けるまでの前記電波の送受信に係る測定値を測定部によって求める方法であって、前記第1通信機から前記第2通信機に電波を送信して、その返信を前記第1通信機で受信する通信と、前記第2通信機から前記第1通信機に電波を送信し、その返信を前記第2通信機で受信する通信とから、電波の送受信に係る前記測定値を、前記測定部によって求める。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不正通信の検出精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の位置検出システムの構成図。
図2】第1通信の通信シーケンス図。
図3】第2通信機でクロック誤差が発生した場合の通信シーケンス図。
図4】第2通信の通信シーケンス図。
図5】中継器を使用した不正通信の通信シーケンス図。
図6】第2実施形態の位置関係の判定手法を示す説明図。
図7】第3実施形態の位置検出システムの構成図。
図8】第1通信の通信シーケンス図。
図9】第2通信の通信シーケンス図。
図10】別例の通信シーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、位置検出システム及び位置検出方法の第1実施形態を図1図5に従って説明する。
【0010】
図1に示すように、端末1の操作対象2である車両3は、端末1との通信を介して車両3及び端末1の間の位置関係を検出する位置検出システム4を備える。本例の位置検出システム4は、車両3及び端末1の間の位置検出通信を通じて2者間の距離を測定し、その測定値Dxを基に互いの位置関係を判定する。車両3に位置検出システム4を搭載するのは、車両3から遠く離れた場所に位置する端末1を、例えば中継器等で不正に車両3に繋げて、不正に通信されてしまうのを防止するためである。
【0011】
車両3は、車両3の動作を管理するシステム制御部5を備える。システム制御部5は、例えばCPU、ROM及びRAM等の各種デバイスから構築される。位置検出システム4は、システム制御部5によって動作が制御される。また、本例のシステム制御部5は、例えば車両3の電子キーシステムの動作を制御するものとしてもよい。電子キーシステムは、例えば端末1としての電子キーと無線によるキーIDの照合を行い、このID照合が成立する場合に、車載されたドアロック装置やエンジン装置の動作を許可又は実行する。
【0012】
端末1は、端末1の作動を制御する端末制御部6を備える。端末制御部6は、例えば端末1が電子キーの場合、自身のメモリに登録されたキーIDの正否をシステム制御部5との間で無線を通じて認証するID照合を実行する。
【0013】
位置検出システム4は、車両3側において位置検出の動作を実行する第1通信機10と、端末1側において位置検出の動作を実行する第2通信機11とを備える。第1通信機10は、端末1の第2通信機11が車両3のどの位置にあっても位置検出通信が確立するように、車体に複数設けられている。第1通信機10及び第2通信機11は、例えばUWB(Ultra Wide Band)帯の電波を送受信して、2者間の位置を測定する。本例の場合、第1通信機10が位置検出通信の主となるアンカーであり、第2通信機11が位置検出通信の従となるタグである。測距通信の電波にUWB電波を使用すれば、高い分解能で第1通信機10及び第2通信機11の間の距離を測定することができる。
【0014】
第1通信機10は、測距通信の動作を制御する通信制御部12と、UWB電波を送受信するアンテナ13とを備える。通信制御部12には、各々の第1通信機10の固有のID情報として、識別ID(図示略)がメモリ等に書き込み保存されている。第1通信機10は、例えば有線を通じてシステム制御部5に接続されている。
【0015】
第2通信機11は、測距通信の動作を制御する通信制御部14と、UWB電波を送受信するアンテナ15とを備える。通信制御部14には、第2通信機11の固有のID情報として、識別ID(図示略)がメモリ等に書き込み保存されている。第2通信機11は、端末制御部6に接続され、端末制御部6によって動作が制御される。
【0016】
位置検出システム4は、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係に準じた測定値Dxを求める測定部18を備える。本例の測定部18は、第1通信機10の通信制御部12に設けられた第1測定部18aと、第2通信機11の通信制御部14に設けられた第2測定部18bとを備える。測定部18は、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係を検出するにあたり、これらの一方から他方に向けて、測距のための電波としてUWB電波を送信し、その電波の返信を受けるまでの電波の送受信に係る測定値Dxを求める。また、本例の測定部18は、第1通信機10から第2通信機11に測距のための電波を送信して、その返信を第1通信機10で受信する通信(以降、第1通信と記す)と、第2通信機11から第1通信機10に測距のための電波を送信し、その返信を第2通信機11で受信する通信(以降、第2通信と記す)とから、電波の送受信に係る測定値Dxを求める。
【0017】
位置検出システム4は、測定部18によって求められた測定値Dxを補正する補正部19を備える。本例の補正部19は、第1通信機10の通信制御部12に設けられた第1補正部19aと、第2通信機11の通信制御部14に設けられた第2補正部19bとを備える。本例の補正部19は、第1通信機10及び第2通信機11の一方から他方に送信された電波と、送信されるべき理想波とを基に、第1通信機10及び第2通信機11の少なくとも一方のクロック誤差が要因のずれ量ΔKを求める。ずれ量ΔKは、例えば送信されるUWB電波の周波数誤差Δfであることが好ましい。また、理想波は、クロック誤差が生じていない場合に送信される電波であることが好ましい。そして、補正部19は、このずれ量ΔKを基に測定値Dxを補正する。
【0018】
位置検出システム4は、測定値Dxを基に第1通信機10及び第2通信機11の位置関係の正否を判定する正否判定部20を備える。正否判定部20は、第1通信機10の通信制御部12に設けられている。本例の正否判定部20は、補正部19によって補正された測定値Dxを基に、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係の正否を判定する。正否判定部20は、測定値Dxと閾値Dkとを比較することで位置関係の正否を判定し、測定値Dxが閾値Dk未満となる場合に、位置関係を「正」と判定し、測定値Dxが閾値Dk以上となる場合に、位置関係を「否」と判定する。以上の位置検出通信及び位置関係判定の一連の処理は、各々の第1通信機10と第2通信機11との間で各々実行される。
【0019】
次に、図2図5を用いて、本実施形態の位置検出システム4の作用及び効果について説明する。
図2に示すように、第1通信機10の第1測定部18aは、自身が主となって測距通信を開始する旨を通知するUWB電波として、測距リクエストSreqをアンテナ13から送信することにより、測距のための第1通信を開始する。測距リクエストSreqは、例えば測距を開始すべき指令を含んだUWB電波である。また、第1測定部18aは、例えば通信制御部12に設けられたCPUのタイマ等を用いて、測距リクエストSreqを送信したときの時刻である送信時刻ta1を記憶する。
【0020】
第2通信機11の第2測定部18bは、第1通信機10から送信された測距リクエストSreqをアンテナ15で受信すると、測距リクエストSreqに対する応答のUWB電波として、測距応答Srepをアンテナ15から送信する。測距応答Srepは、例えば測距リクエストSreqを正しく受信したことを通知する情報を含んだ電波である。第2測定部18bは、測距リクエストSreqを受信してから、返信処理の動作に係る時間(以降、返信処理時間t2と記す)の経過後に、測距応答Srepを第1通信機10に送信する。返信処理時間t2は、予め設定された固有の時間長に設定されている。
【0021】
第1測定部18aは、第2通信機11から送信された測距応答Srepをアンテナ13で受信すると、例えば第1通信機10に設けられたCPUのタイマ等を用いて、測距応答Srepを受信したときの時刻である受信時刻ta2を確認する。ここで、第1測定部18aは、返信処理時間の「t2」を予め把握している。よって、第1測定部18aは、この受信時刻ta2と送信時刻ta1との間の時間である「t1」を算出し、把握済みの返信処理時間t2を用いて、測定値Dxとして、UWB電波の伝搬時間である「tp1」を算出する。本例の場合、伝搬時間tp1は、t1からt2を引くこと(tp1=t1-t2)による算出される。
【0022】
ここで、図3に示すように、例えば第2通信機11のCPUのクロック誤差が要因で、返信処理時間t2が事前に取り決めた値よりも誤差時間Δt短くなった場合を想定する。この場合、伝搬時間tp1も誤差時間Δtだけ短くなってしまう。従って、「(t1-Δt)-t2=tp1-Δt」となり、伝搬時間tp1が正規の値よりも短く算出されてしまうことになる。よって、中継器を使用した通信が行われた場合に、不正通信を検出することができない可能性に繋がる。
【0023】
これを踏まえ、伝搬時間tp1は、第1補正部19aによって補正される。本例の場合、第1補正部19aは、第2通信機11から実際に受信した測距応答Srepと、予め把握している測距応答Srepの理想波との周波数の差分を求め、この差分、すなわち周波数誤差Δfを、ずれ量ΔKとして測定する。
【0024】
ここで、例えば測距応答Srepの周波数を「f」とした場合、「f+Δf」と「t2-Δt」には、反比例する関係がある。このため、第1補正部19aは、周波数誤差Δfを測定することで誤差時間Δtを把握することができるので、この周波数誤差Δfを用いて、伝搬時間tp1を補正する。こうして、第2通信機11側のクロック誤差に影響を受けない正確な伝搬時間tp1を求めることができる。
【0025】
続いて、図4に示すように、第2通信機11の第2測定部18bは、自身が主となって測距通信を開始する旨を通知するUWB電波として、測距リクエストSreqをアンテナ15から送信することにより、測距のための第2通信を開始する。測距リクエストSreqは、第1通信のときに送信されるものと同様である。また、第2測定部18bは、例えば第2通信機11に設けられたCPUのタイマ等を用いて、測距リクエストSreqを送信したときの時刻である送信時刻ta3を記憶する。
【0026】
第1通信機10の第1測定部18aは、第2通信機11から送信された測距リクエストSreqをアンテナ13で受信すると、測距リクエストSreqに対する応答のUWB電波として、測距応答Srepをアンテナ13から送信する。測距応答Srepは、第1通信のときに送信されるものと同様である。第1測定部18aは、測距リクエストSreqを受信してから、返信処理の動作に係る時間(以降、返信処理時間t4と記す)の経過後に、測距応答Srepを第2通信機11に送信する。
【0027】
第2測定部18bは、第1通信機10から送信された測距応答Srepをアンテナ15で受信すると、例えば第2通信機11に設けられたCPUのタイマ等を用いて、測距応答Srepを受信したときの時刻である受信時刻ta4を確認する。ここで、第2測定部18bは、返信処理時間の「t4」を予め把握している。よって、第2測定部18bは、この受信時刻ta4と送信時刻ta3との間の時間である「t3」を算出し、把握済みの返信処理時間t4を用いて、UWB電波の伝搬時間である「tp2」を算出する。本例の場合、伝搬時間tp2は、t3からt4を引くこと(tp2=t3-t4)による算出される。
【0028】
ここで、例えば第1通信機10のCPUのクロック誤差が要因で、返信処理時間t4が事前に取り決めた値よりも誤差時間Δt短くなった場合を想定する。この場合、伝搬時間tp2も誤差時間Δtだけ短くなってしまう。従って、「(t3-Δt)-t4=tp2-Δt」となり、伝搬時間tp2が正規値よりも短く算出されてしまうことになる。よって、中継器を使用した通信が行われた場合に、不正通信を検出することができない可能性がある。
【0029】
これを踏まえ、伝搬時間tp2は、第2補正部19bによって補正される。本例の場合、第2補正部19bは、第1通信機10から実際に受信した測距応答Srepと、予め把握している測距応答Srepの理想波との周波数の差分を求め、この差分、すなわち周波数誤差Δfを、ずれ量ΔKとして測定する。
【0030】
ここで、例えば測距応答Srepの周波数を「f」とした場合、「f+Δf」と「t4-Δt」には、反比例する関係がある。このため、第2補正部19bは、周波数誤差Δfを測定することで誤差時間Δtを把握することができるので、この周波数誤差Δfを用いて、伝搬時間tp2を補正する。こうして、第1通信機10側のクロック誤差に影響を受けない正確な伝搬時間tp2を求めることができる。
【0031】
伝搬時間tp2の情報は、第2通信機11から無線を通じて第1通信機10に送信される。すなわち、伝搬時間tp2の値が、第2通信機11から第1通信機10に通知される。なお、伝搬時間tp2の値は、例えば測距のUWB通信の通信網を介して通知されてもよいし、UWB通信以外の他の通信網、例えば車両3及び端末1に電子キーシステムが設けられている場合、この電子キーシステムの通信網を介して送信されてもよい。
【0032】
正否判定部20は、補正部19によって補正された測定値Dxとしての伝搬時間tp1,tp2を基に、通信の正否を判定する。このとき、正否判定部20は、伝搬時間tp1,tp2と閾値Dkとを比較する処理を行い、これら伝搬時間tp1,tp2のうち少なくとも一方が閾値Dk以上となる場合、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係を不正と判定する。これにより、例えば中継器等を用いて通信が不正に試みられたとしても、このときの通信を不正通信として判定して、確立に移行させずに済む。
【0033】
ところで、図5に示すように、例えば第1通信において、中継器を用いた不正通信が試みられ、測距応答Srepの周波数が変換値「Δf’」分だけ変えられてしまうと、僅かに低い周波数「f+Δf-Δf’」となってしまう。このとき、第1通信機10は、返信処理時間t2を、「t2-Δt+Δt’」という長めの値で認識してしまう。よって、測定される伝搬時間tp1が短く算出され、中継器による不正通信が成立してしまう可能性があった。
【0034】
ここで、第2通信機11から第1通信機10に送信される測距応答Srepが周波数変換される不正通信が行われた場合、第1通信時は周波数変換の行為が行われるものの、第2通信時は周波数変換が成されないとすると、第1通信時に測定された伝搬時間tp1と、第2通信時に測定された伝搬時間tp2とが一致しない。よって、これら伝搬時間tp1,tp2の一致性を確認すれば、第2通信機11から第1通信機10に送信される測距応答Srepが周波数変換されてしまう攻撃に対しての対処が可能となる。
【0035】
正否判定部20は、伝搬時間tp1,tp2が一致又は近似値をとる場合、伝搬時間tp1,tp2がともに閾値Dk以下となっていれば、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係を「正」と判定する。このため、例えば車両3及び端末1の間で、端末1をキーとした無線によるID照合が成立している場合、このID成立が有効に移行される。よって、車両3の車両ドアの施解錠操作が実行又は許可されたり、車両3のエンジン始動操作が許可されたりする。
【0036】
一方、正否判定部20は、伝搬時間tp1,tp2が一致又は近似値をとらない場合、伝搬時間tp1,tp2と閾値Dkとの比較結果に拘わらず、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係を「否」と判定する。このため、第2通信機11から第1通信機10に送信される測距応答Srepが周波数変換されてしまう攻撃が行われたとしても、このときの通信を不正通信と判定し、確立に移行させずに済む。よって、位置検出通信のセキュリティ性を確保することが可能となる。
【0037】
以上、本例によれば、第1通信及び第2通信の双方で測定値Dxを求めるので、両方の通信経路において不正通信か否かを確認することが可能となる。よって、不正通信の検出精度を向上することができる。
【0038】
第1測定部18a及び第2測定部18bは、測定値Dxとして、電波の伝搬時間tp1,tp2を測定する。よって、第1通信機10及び第2通信機11の通信から測定された電波の伝搬時間tp1,tp2から、精度よく位置関係を検出することができる。
【0039】
位置検出システム4に補正部19を設け、第1通信機10及び第2通信機11の各々におけるクロック誤差が要因のずれ量ΔKとして周波数誤差Δfを求め、この周波数誤差Δfを基に測定値Dxを補正する。よって、測定値Dxを最適化することが可能となるので、位置関係を検出するにあたっての精度確保に一層有利となる。
【0040】
位置検出システム4に正否判定部20を設け、補正部19によって補正された測定値Dxを基に、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係の正否を判定する。よって、補正後の測定値Dxを基に位置関係の正否を判定することが可能となるので、位置正否の判定を精度よく行うことができる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6に従って説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に対し、位置関係の判定手法を変更した実施例である。よって、第1実施形態と同一部分には同じ符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0042】
図6に示すように、正否判定部20は、第1通信で測定された測定値Dxと、第2通信で測定された測定値Dxとを基に計算値Drを求め、この計算値Drから位置関係の正否を判定する。本例の場合、計算値Drは、第1通信で測定された伝搬時間tp1と、第2通信で測定された伝搬時間tp2との平均値Dr1(=(tp1+tp2)/2)であることが好ましい。
【0043】
本例の場合、正否判定部20は、伝搬時間tp1,tp2を取得すると、これらの平均値Dr1を算出する。そして、正否判定部20は、この平均値Dr1と、所定の閾値Dkとを比較することにより、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係の正否を判定する。このとき、正否判定部20は、平均値Dr1が閾値Dk未満となれば、位置関係を「正」と判定し、平均値Dr1が閾値Dk以上となれば、位置関係を「否」と判定する。なお、本例の閾値Dkは、比較相手が伝搬時間tp1,tp2の平均であるので、第1実施形態とは異なる値に設定されることが好ましい。
【0044】
以上、本例によれば、正否判定部20は、第1通信で測定された伝搬時間tp1と、第2通信で測定された伝搬時間tp2との平均値Dr1を求め、この平均値Dr1から位置関係の正否を判定する。このため、第1通信及び第2通信の一方で、周波数変換による不正通信が行われても、平均値Dr1から通信の正否を確認するようにすれば、この不正通信を検出することが可能となる。よって、位置関係の正否の判定精度を確保するのに一層有利となる。
【0045】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図7図9に従って説明する。なお、第3実施形態も第1実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0046】
図7に示すように、本例の正否判定部20は、第1通信機10の通信制御部12に設けられた第1正否判定部20aと、第2通信機11の通信制御部14に設けられた第2正否判定部20bとを備える。
【0047】
図8に示すように、第1正否判定部20aは、第1通信機10→第2通信機11→第1通信機10の経路をとる第1通信における電波の周波数誤差Δf(以降、第1周波数誤差Δf1と記す)を取得する。この第1周波数誤差Δf1は、第1通信機10の第1補正部19aによって算出される。本例の場合、第1補正部19aは、第2通信機11から第1通信機10に送信される測距応答Srepについて、予め把握している周波数と、実際に計測した周波数との差分を求めることにより、第1通信における電波の第1周波数誤差Δf1を算出する。
【0048】
続いて、図9に示すように、第2正否判定部20bは、第2通信機11→第1通信機10→第2通信機11の経路の経路をとる第2通信における電波の周波数誤差Δf(以降、第2周波数誤差Δf2と記す)を取得する。この第2周波数誤差Δf2は、第2通信機11の第2補正部19bによって算出される。本例の場合、第2補正部19bは、第1通信機10から第2通信機11に送信される測距応答Srepについて、予め把握している周波数と、実際に計測した周波数との差分を求めることにより、第2通信における電波の第2周波数誤差Δf2を算出する。
【0049】
ここで、例えば第1通信及び第2通信の両方において、測距応答Srepを相手に返信する際に、中継器等により低い周波数に周波数変換された場合を想定する。この場合、第1通信時に求められる伝搬時間tp1と、第2通信時に求められる伝搬時間tp2とが一致してしまい、不正通信を検出することができない可能性がある。
【0050】
そこで、本例の正否判定部20は、第1通信における第1周波数誤差Δf1と、第2通信における第2周波数誤差Δf2との整合性から、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係の正否を判定する。すなわち、正否判定部20は、第1通信機10及び第2通信機11のうちどちらの周波数が低い又は高いかという整合性を確認することにより、位置関係の正否を判定する。
【0051】
ここで、例えば第1通信の測距応答Srepが中継器等によって低い周波数に変換されてしまった場合、第1正否判定部20aは、第1通信機10よりも第2通信機11の方が、第1周波数誤差Δf1だけ周波数が低いと認識する。一方、例えば第2通信の測距応答Srepが中継器等によって低い周波数に変換されてしまった場合、第2正否判定部20bは、第2通信機11よりも第1通信機10の方が、第2周波数誤差Δf2だけ周波数が低いと認識する。
【0052】
このように、本例の場合、第1通信機10及び第2通信機11の両方とも、自身よりも相手側の方が、周波数が低いと認識するため、認識に矛盾が生じることとなる。従って、正否判定部20は、周波数誤差Δfの整合性に矛盾が生じると認識した場合、第1通信機10及び第2通信機11の位置関係を「否」と判定する。このため、第1通信及び第2通信の両方で、周波数変換による不正通信が行われても、各々通信の周波数誤差の整合性がとれていないことを把握することにより、この不正通信を検出することが可能となる。よって、位置判定の正否の精度確保を確保するのに一層有利となる。
【0053】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
[測定部18について]
図10に示すように、第1通信機10及び第2通信機11の間でUWB電波を往復させた後、UWB電波をもう一度、相手側に送信して、この一連の通信から測定値Dxを求めてもよい。このように、通信を3メッセージ方式した場合、位置検出の判定を精度よく行うのに一層有利となる。
【0054】
・各実施形態において、測定部18は、第1通信機10や第2通信機11に設けられることに限定されず、例えばシステム制御部5や端末制御部6に設けられてもよい。
・各実施形態において、測定値Dxの測定手法は、タイマ等を用いて時刻を確認する手法に限定されず、例えば電波の位相等から測定値Dxを抽出する手法としてもよい。
【0055】
[測定値Dxについて]
・各実施形態において、測定値Dxは、伝搬時間tp1,tp2に限定されず、例えば電波を受信した際の受信信号強度でもよい。
【0056】
・各実施形態において、測定値Dxは、伝搬時間tp1,tp2に限定されず、位置関係を確認できるパラメータであればよい。
[第1通信機10について]
・各実施形態において、第1通信機10は、システム制御部5に組み込まれた構成としてもよい。
【0057】
・各実施形態において、第1通信機10は、車両3に対して後付けされるものとしてもよい。
・各実施形態において、第1通信機10は、車両3に設けられることに限定されず、種々の装置や機器に搭載されてもよい。
【0058】
[第2通信機11について]
・各実施形態において、第2通信機11は、端末1の端末制御部6に組み込まれた構成としてもよい。
【0059】
・各実施形態において、第2通信機11は、高機能携帯電話に予め搭載されたものとしてもよい。
[正否判定部20について]
・各実施形態において、正否判定部20は、例えば端末1側に設けられてもよい。
【0060】
・各実施形態において、正否判定部20は、システム制御部5や端末制御部6に設けられてもよい。
[補正部19について]
・各実施形態において、補正部19は、電波の周波数ずれから誤差を検出するものに限定されず、周波数以外のパラメータを用いて誤差を検出することもできる。
【0061】
・各実施形態において、ずれ量ΔKは、周波数誤差Δfに限定されず、他のパラメータとしてもよい。
・各実施形態において、位置検出システム4から補正部19を省略してもよい。
【0062】
[計算値Drについて]
・第2実施形態において、計算値Drは、例えば加重平均としてもよい。
・第2実施形態において、計算値Drは、平均値Dr1に限定されず、例えばこれらの合計値としてもよい。
【0063】
・第2実施形態において、計算値Drは、第1通信及び第2通信の双方で求まる測定値Dxを利用したパラメータであればよい。
[周波数誤差の整合性について]
・第3実施形態において、周波数誤差の整合性とは、例えば電波の単位時間当たりのパルス数が一致するか否かを確認することも含む。
【0064】
・第3実施形態において、周波数誤差の整合性とは、例えば電波のパルスの時間幅の一致性を確認することも含む。
[位置検出システム4について]
・第1実施形態において、正否判定部20を端末1に設け、測定値の妥当性を端末1側で判定してもよい。
【0065】
・各実施形態において、第2通信機11から第1通信機10に電波を送信して位置検出を行ってもよい。
・各実施形態において、位置検出システム4は、第1通信機10が車体に複数搭載されている場合、各第1通信機10と各々通信して、距離を測定することが好ましい。この場合、これら各距離を確認することで、位置関係が妥当か否かを判定することが好ましい。
【0066】
・各実施形態において、位置測定は、UWB通信を用いた形式に限定されず、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を用いた形式でもよい。この場合、ブルートゥース通信で送信される電波のチャネルごとに電波の受信信号強度を測定し、これら受信信号強度から、2者間の位置関係を判定してもよい。
【0067】
・各実施形態において、位置検出通信は、スマート通信とは別のタイミングで実施されることに限らず、同時としてもよい。
・各実施形態において、位置検出通信は、例えば第1通信機10及び第2通信機11の一方からのみUWB電波を送信し、物体に反射して送信元に戻ってくるUWB電波の伝搬時間から、位置を測定してもよい。
【0068】
・各実施形態において、位置関係の判定手法は、UWB通信の電波を用いた方式の場合、例えば電波の送受信に要する時間から推定する方式、電波の到来方向から推定する方式などがある。また、ブルートゥース通信の電波を用いた方式の場合、例えば伝搬特性から推定する方式、電波の受信信号強度から推定する方式、電波の送受信に要する時間から推定する方式、電波の到来方向から推定する方式、アレーアンテナを用いた方式などがある。
【0069】
・各実施形態において、複数の第1通信機10のうち、特定の1つをマスタとし、他の複数をスレーブの位置付けとしてもよい。この場合、スレーブ位置付けの第1通信機10は、マスタ位置づけの第1通信機10を介してシステム制御部5と通信する動作をとってもよい。
【0070】
[電子キーシステムについて]
・各実施形態において、電子キーシステムは、スマート照合システム、ワイヤレスキーシステム、イモビライザーシステムのいずれでもよい。
【0071】
・各実施形態において、電子キーシステムで使用する電波の周波数は、LF(Low Frequency)帯やUHF(Ultra High Frequency)帯に限定されず、他の周波数を使用してもよい。
【0072】
・各実施形態において、電子キーシステムは、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)、RFID(Radio Frequency IDentification)等の近距離無線通信、赤外線などを使用した通信でもよい。
【0073】
・各実施形態において、電子キーシステムは、位置検出システム4が共用された構成としてもよい。この場合、UWB通信で端末1の照合をしつつ、位置検出の通信及び判定も実施する。
【0074】
[その他]
・各実施形態において、端末1は、電子キーや高機能携帯電話に限定されず、操作対象2のキーとなり得るものであればよい。
【0075】
・各実施形態において、操作対象2は、車両3に限定されず、種々の装置や機器が適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…端末、2…操作対象、3…車両、4…位置検出システム、10…第1通信機、11…第2通信機、18…測定部、19…補正部、20…正否判定部、Dx…測定値、tp1,tp2…伝搬時間、ΔK…ずれ量、Dr…計算値、Δf1,Δf2…周波数誤差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10