(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】二重構造容器
(51)【国際特許分類】
B65D 77/06 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
B65D77/06 H
B65D77/06 L
(21)【出願番号】P 2019054865
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】葛西 知宏
(72)【発明者】
【氏名】成川 美子
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-022951(JP,U)
【文献】特開2012-071882(JP,A)
【文献】特開2003-321038(JP,A)
【文献】特開2016-022980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/06
B65D 1/02
B65D 47/32
B65D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒容器と外筒容器の内部に収容された内袋容器とから成る二重構造容器において、
前記外筒容器は、外筒首部と、該外筒首部に連なり且つ延伸成形された胴部とを有しており、
前記内袋容器は、内袋首部と、該内袋首部に連なり且つ延伸成形された袋状部とを有しており、
前記内袋の袋状部の外面と外筒容器の胴部内面との間の空間に空気を導入し且つ該空間から空気を排出するための空気路が形成される構造を有しており、
前記空気路は、前記外筒首部の内面、該外筒首部の上端面および該外筒首部の外面に沿って存在するものであり、
前記内袋首部の外面には、下方部分に、前記外筒首部の内面との嵌合固定用リング状突起が設けられており、該リング状突起は、空気路形成用切欠きを有して
おり、該切欠きを通して、前記空気路が前記内袋の袋状部の外面と外筒容器の胴部内面との間の空間に連通しており、
前記内袋首部の上端には、該リング状突起よりも小径の小フランジが水平方向外方に延びており、
該小フランジは、前記外筒首部の上端を覆っておらず、
前記内袋容器が前記外筒容器に収容されている状態において、該内袋首部のリング状突起が、前記外筒首部の内面に嵌合固定されていることを特徴とする二重構造容器。
【請求項2】
前記外筒首部の内面の上端部は、該二重構造容器に装着されるキャップに形成されている空気弁が接触する接触面と
なっている請求項1に記載の二重構造容器。
【請求項3】
前記空気弁が接触する面が、前記外筒首部の内面上端から内方に向かって傾斜降下している傾斜面である請求項2に記載の二重構造容器。
【請求項4】
前記外筒首部の外面上部には、キャップを打栓嵌合するためのアンダーカットが設けられており、該アンダーカットには、前記空気路を形成する切欠きが形成されている請求項1~3の何れかに記載の二重構造容器。
【請求項5】
前記外筒首部の内面には、前記リング状突起との係合により、該外筒首部内での内袋首部の軸方向位置を規制する段差が設けられている請求項1~4の何れかに記載の二重構造容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒容器と、該外筒容器内に挿入されて保持された内袋容器とからなる二重構造容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内袋容器と外筒容器とからなる二重構造を有している二重構造容器は、例えばエアレスボトルとして、醤油等の調味液が収容される容器として実用されている。かかるエアレスボトルは、逆止弁付のキャップと組み合わせで使用されるものであり、外筒容器であるボトルの胴部壁を外部からスクイズして凹ませることにより、内袋容器に充填されている内容液がキャップに形成されている注出路から排出され、ボトルの胴部壁の押圧を停止することにより内容液の排出を終了させると、逆止弁の作用により、空気は内袋容器には導入されず、キャップの注出路とは異なる流路を通って、内袋容器と外筒容器との間の空間に導入されることとなる。これにより、内袋容器は、内容液が排出された分だけ収縮することとなり、内容液を排出する毎に、内袋容器が収縮していく。このような方法により内容液が排出されるエアレスボトルでは、内容液を小出しできると共に、内容液が充填されている内袋容器への空気の侵入が有効に防止されるため、内容液の酸化劣化を有効に回避でき、内容液の鮮度を長期間にわたって保持できるという利点がある。
【0003】
従って、二重構造容器では、上記のような空気の流通を確保するために、一般に、外筒容器の首部の壁を貫通する導入口が設けられており、さらに、外筒容器の首部に装着されるキャップの筒状側壁(スカート部)には、その内面に、上下に揺動する弁体が設けられ、この弁体により、上記導入口を通して空気の流通が制御されるように構成される(例えば、特許文献1参照)。
従って、上記のような二重構造容器では、後加工により、空気導入口を形成する必要があり、生産性が低いという問題がある。
【0004】
また、二重構造容器に装着されるキャップは、一般に、螺子係合により装着されるが(例えば、特許文献2)、このような方式では、外筒容器の首部(或いは内筒容器の首部)の外面に、キャップを装着するための螺条が必要となり、その分、外筒容器や内袋容器のハイトが高くなってしまい、結果的に樹脂量が多く、また、容器重量も重くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-2198号公報
【文献】特開2017-222141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、外筒容器の首部に空気導入口を形成することなく、極めてシンプルな形態で、外筒容器と内袋容器との間の空間に空気の出し入れを行う空気路の形成に適した構造の二重構造容器を提供することにある。
本発明の他の目的は、打栓嵌合によりキャップを装着するのに適した形態の二重構造容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、外筒容器と外筒容器の内部に収容された内袋容器とから成る二重構造容器において、
前記外筒容器は、外筒首部と、該外筒首部に連なり且つ延伸成形された胴部とを有しており、
前記内袋容器は、内袋首部と、該内袋首部に連なり且つ延伸成形された袋状部とを有しており、
前記内袋の袋状部の外面と外筒容器の胴部内面との間の空間に空気を導入し且つ該空間から空気を排出するための空気路が形成される構造を有しており、
前記空気路は、前記外筒首部の内面、該外筒首部の上端面および該外筒首部の外面に沿って存在するものであり、
前記内袋首部の外面には、下方部分に、前記外筒首部の内面との嵌合固定用リング状突起が設けられており、該リング状突起は、空気路形成用切欠きを有しており、該切欠きを通して、前記空気路が前記内袋の袋状部の外面と外筒容器の胴部内面との間の空間に連通しており、
前記内袋首部の上端には、該リング状突起よりも小径の小フランジが水平方向外方に延びており、該小フランジは、前記外筒首部の上端を覆っておらず、
前記内袋容器が前記外筒容器に収容されている状態において、該内袋首部のリング状突起が、前記外筒首部の内面に嵌合固定されていることを特徴とする二重構造容器が提供される。
【0008】
本発明の二重構造容器においては、以下の態様を好適に採用することができる。
(1)前記外筒首部の内面の上端部は、該二重構造容器に装着されるキャップに形成されている空気弁が接触する接触面となっていること。
(2)前記空気弁が接触する面が、前記外筒首部の内面上端から内方に向かって傾斜降下している傾斜面であること。
(3)前記外筒首部の外面上部には、キャップを打栓嵌合するためのアンダーカットが設けられており、該アンダーカットには、前記空気路を形成する切欠きが形成されていること。
(4)前記内袋首部の外面には、前記外筒首部の内面との嵌合固定用リング状突起が設けられており、該リング状突起には、前記空気路を形成する切欠きが形成されていること。
(5)前記外筒首部の内面には、前記リング状突起との係合により、該外筒首部内での内袋首部の軸方向位置を規制する段差が設けられていること。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二重構造容器では、内袋首部の上端外面には、水平方向外方に延びている小フランジが形成されており、この小フランジを利用して、内袋形成用のプリフォームを外筒容器用プリフォーム内への押し込み(打栓)が行われ、内袋首部の外面下方に設けられている嵌合固定用リング状突起が外筒首部の内面に嵌合することにより、内袋用プリフォームが外筒プリフォーム内に安定に保持され、この状態で、延伸ブロー成形を行うことにより製造される。このようにして製造される二重構造容器において、嵌合固定用リングには、空気路形成用の切欠きが設けられていると同時に、内袋首部の外面上端に設けられている小フランジは、上記の嵌合固定用リング状突起よりも小径に設定されている。このため、外筒首部内に収容されている内袋首部の小フランジは、外筒首部の上端面を覆うような構造となっておらず、外筒首部の上端部分と内袋首部の上端との間には空隙が形成されている。即ち、内袋首部のリング状突起よりも上方部分には、外筒首部の内面に沿ってストレートな空間が形成されており、この空間は、リング状突起に形成されている空気路形成用切欠きを通して、内袋容器の袋状部と外筒容器の胴部との間の空間(作用空間)に連通するものとなっている。従って、外筒首部の内面に沿って形成されているストレートな空間を、作用空間に空気を導入するための空気路として利用できる構造となっている。本発明では、このストレートな空間を空気路として利用できるため、外筒首部に空気導入口を形成する必要がなく、これが本発明の最大の利点である。
【0010】
例えば、本発明の二重構造容器では、外筒首部の上端面が内袋首部の小フランジにより覆われていないため、外筒首部の上端部分の内面を、この容器に装着されるキャップが有している空気弁と接触する面とすることができ、このような構造とすることにより、外筒首部の内面、該内面上端部分の接触面、該外筒首部の上端面および該外筒首部の外面に沿って空気路が形成され、外筒首部に空気導入口を形成することなく、内袋の袋状部の外面と外筒容器の胴部内面との間の空間(作用空間)に空気を導入し、及び該空間から空気を排出することが可能となる。
【0011】
また、上記の接触面は、所謂ストレートな直胴面となっていてもよいが、この部分を傾斜面とすることにより、この二重構造容器の構造は、この容器(外筒容器)へのキャップの装着を打栓(即ち、押し込みによる嵌合)により行うのに適したものとなる。即ち、空気路を通しての空気の出し入れを制御する空気弁は、外筒首部の内面の上端部分に形成されている傾斜面に当接させればよく、打栓による空気弁の破損等を有効に回避することができるからである。従って、この態様は、二重構造容器のハイトや重量を極力低減させることができ、製造コストの点で極めて有利である。
【0012】
また、上記のような接触面を設ける代わりに、外筒首部と内袋首部とを覆うように装着されるキャップの頂板部に弁を設けておくことにより、外筒首部と内袋首部との間に形成されている上記のストレートな空間を空気路として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の二重構造容器において、好適な形態の要部をキャップの一部と共に拡大して示す側断面図。
【
図3】
図2の二重構造容器における外筒首部の概略斜視図。
【
図4】
図2の二重構造容器における内袋首部の概略斜視図。
【
図5】外筒容器内に内袋容器が嵌合固定されている状態での首部の部分を示す斜視図。
【
図6】本発明の二重構造容器の成形に使用されるプリフォームを示す図。
【
図7】本発明の二重構造容器にキャップが装着されている状態の首部を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
先ず、本発明の二重構造容器の概略構造について、簡単に説明しておく。
この二重構造容器の概略構造を示す
図1を参照して、全体として1で示す二重構造容器は、ボトル形状の外筒容器3と、醤油等の内容液が収容される内袋容器5とからなり、
図1から理解されるように、外筒容器3の内部に、内袋容器5が挿入されて保持されている。
【0015】
外筒容器3は、首部(外筒首部)11と、外筒首部11に連なっており且つ下方に向かって拡径している肩部13と、肩部13に連なっている胴部15を有しており、胴部15の下端は、底部17により閉じられている。このような外筒首部11の外面には、サポートリング19が形成されており、このサポートリング19よりも上方部分にキャップが嵌合固定される。
また、内袋容器5は、首部(内袋首部)21と、この内袋首部21に連なり膨らんだ形態の袋状部23とからなっている。
【0016】
上記のような外筒容器3及び内袋容器5は、これに限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどに代表されるブロー成形可能な熱可塑性樹脂を用いて成形される。
【0017】
上記のような二重構造容器1において、外筒容器3の胴部15は、通常、若干凹んだ形態を有しており、この凹んだ部分(スクイズ領域)を押圧(スクイズ)することにより、胴部15が大きく凹み、これに伴って、内袋容器5の袋状部23が押圧され、これにより、この袋状部23に収容されている内容液が排出される。内容液が排出されると、内容液の減量に応じて袋状部23が収縮するが、外筒容器3の胴部15は、その弾性により原形に復帰し、両者の間に空隙(作用空間Z)が形成されることとなる。
【0018】
ところで、上記のような排出操作を繰り返し行っていくとき、内容液の排出量に応じて、袋状部23は、より大きく収縮していく。従って、胴部15のスクイズに際して、前述した作用空間Z内の空気が排出されてしまうと、収縮した袋状部23内の内容液を排出するためには、外筒容器3の胴部15をより強く押圧して大きく変形させなければならなくなり、最終的には、内容物の排出を行うことができなくなってしまう。従って、胴部15を押圧して内容液を排出する際には、作用空間Z内の空気が排出されず、作用空間Zに空気を存在させ、空気層を介して袋状部23が押圧されることが必要である。
また、内容液が排出されると、内容液が排出された分だけ袋状部23の容積が減り、一方、外筒容器3の胴部15は凹んだ状態から復帰するため、作用空間Z内は負圧の状態となる。従って、内容液の排出後には、作用空間Z内に空気を導入し、作用空間Z内を常圧に戻す必要がある。負圧のままのときは、胴部15の原形復帰がスムーズに行われないばかりか、次に、胴部15を押圧して内容液の排出を行う場合、胴部15を大きく凹ませなければならず、内容液の排出を効果的に行うことが困難となってしまうからである。
【0019】
従って、上記の作用空間Zからの空気の排出が防止され、また、この空間Zには、適宜空気が導入されることが求められる。本発明の二重構造容器1は、このような要求を満足する弁機能を容易に形成することができる。
【0020】
尚、上記の構造の二重構造容器1は、内袋容器用プリフォームが外筒容器用プリフォームの内部に挿入保持されているスタックプリフォームを用いての延伸ブロー成形により製造されるものであり、外筒容器3では、肩部13、胴部15及び底部17がブロー延伸により薄肉化された部分であり、内袋容器5では、袋状部23がブロー延伸により薄肉化された部分である。即ち、成形直後の状態では、内袋容器5の袋状部23は、外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17に密着した状態にあり、上記の作用空間Zは、閉じられた状態にある。
【0021】
前述した
図1と共に
図2~5を参照して、外筒容器3の首部(外筒首部)11の上端部分の外面には、アンダーカット31が形成されており、このアンダーカット31との係合を利用してキャップ100が装着され、安定に保持される。また、外筒首部11の内面から上端面及び外面にそって、作用空間Zから外部にかけての空気路X(
図2参照)が形成されるように、このアンダーカット31は一部切り欠かれており、空気路形成用スリット31aが形成されている。
図3から理解されるように、このスリット31aは、空気が流通し易いように、二股の逆V字形状を有している。このようなスリット31aの数・および形状は特に制限されないが、キャップ100との係合力が損なわれない程度の範囲で複数箇所に設けることが、作用空間Zへの空気の出し入れをスムーズに行う上で好適である。
【0022】
外筒首部11の内面の上端には、内方に向かって傾斜した傾斜面33が形成されている。この傾斜面33が、以下に述べるキャップ100が有する空気弁Aとの接触面となっており、この空気弁Aの接触及び離脱を利用して、作用空間Z内への空気の導入を行い、さらには、作用空間Z内からの空気の排出を阻止する弁機能を確保することができる。
【0023】
また、外筒首部11の内面(上記傾斜面33よりも下方の部分)には、内方に突出した段差35が形成されている。この段差35は、内袋首部21の外筒首部11内での位置を安定にするために形成されているものである。
【0024】
さらに、上記の外筒首部11の内面には、好適には、上記の傾斜面33の下端から、上記段差35の近傍まで、直線状に延びている浅い溝(打栓案内用溝)37が、一定間隔で多数形成される。このような溝37を設けることにより、内袋首部21を外筒首部11内に押し込むときに、斜めの状態で挿入されてしまうなどの不都合(所謂斜め嵌合)を有効に防止することができる。
【0025】
一方、上記の外筒首部11内に位置している内袋容器5の首部(内袋首部21)の外面上端には、外方に突出した小フランジ41が形成されている。この小フランジ41は、ブロー成形前の段階で、内袋用のプリフォームを外筒用プリフォーム内に挿入する際に、所定の治具による把持等を行うために形成されているものである。さらに、この小フランジ41には、凹部41aが複数箇所に形成されている。即ち、このような凹部41aを形成することにより、内袋用プリフォームを外筒プリフォームに嵌合固定してスタックプリフォームの組み立てなどを行うためのホルダの装着や取り外しを容易に行うことができるからである。例えば、上記の凹部41aに対応する切欠きを設けておき、このホルダ内に内袋用プリフォームの首部を挿入し、該ホルダを90度回転させれば、内袋プリフォームは、該ホルダに安定に保持され、その搬送、打栓による外筒プリフォーム内への嵌合固定などによりスタックプリフォームを安定に保持することができ、さらにはブロー成形も行うことができ、操作終了後は、該ホルダ90度回転することにより、ホルダを速やかに取り外すことが可能となる。
【0026】
さらに、内袋首部21の外面には、上記小フランジ41の下方に、嵌合固定用のリング状突起43が設けられているが、この小フランジ41は、このリング状突起43よりも小径に形成されている。即ち、このリング状突起43の外径は、外筒首部11の内径に匹敵する大きさを有しており、内袋首部21を外筒首部11内に挿入した時、このリング状突起43の外面が外筒首部11の内面に密着し、ガタツキなく、安定に嵌合保持される。また、このとき、リング状突起43が、外筒首部11に形成されている段差35と係合することにより、内袋首部21が深く挿入されないように、位置決めされることとなる。
また、小フランジ41は、このリング状突起43よりも小径に形成されているため、内袋首部21が外筒首部11内に嵌合固定された状態において、内袋首部11の上端の小フランジ41は、外筒首部11の上端面を覆っておらず、リング状突起43の上部には、外筒首部11の内面に沿ってストレートな空間Yが上部空間に直接連通している(
図2参照)。しかも、リング状突起43には切欠き43aが形成されており、前述した作用空間Zと、上記のストレートな空間Y外筒首部11と内袋首部21との間の空間が連通するように構成されている。従って、このストレートな空間Yを通して、作用空間Zから外部にかけての空気路Xを形成することが可能となっている。
【0027】
上述した構造を有する本発明の二重構造容器1は、
図2に示されているように、全体として100で示すキャップが装着されて使用に供される。
図2において、このキャップ100の概略構造が示されているが、内袋容器5内に収容されている内容物の排出は許容するが、内袋容器5内への空気の流入を阻止する逆止弁は省略されており、また、このキャップ100に設けられている上蓋が省略されている。かかるキャップ100は、外筒容器3の首部11に装着されるものであり、省略されている逆止弁とは別に、空気弁Aが設けられており、そのキャップ100の筒状側壁の外面には、前述した外筒首部11に形成されているアンダーカット31と係合する周状突起Bが形成されており、筒状側壁121に連なり且つ水平方向に延びている頂板部には、筒状側壁とは間隔をおいて下方に延びているインナーリングCが設けられている。
図2から理解されるように、上記の空気弁Aは、キャップ軸方向下方に延びている環状フラップ片であり、内外に揺動可能となっており、上記の筒状側壁とインナーリングCとの間の位置において、頂板部から下方に延びており、その下端は外筒首部11の内面上端に形成されている傾斜面33に当接している。
【0028】
このようなキャップ100において、インナーリングCの外面は、内袋容器5の首部21の内面に密着しており、これにより、内袋容器5のシール性が確保される構造となっている。また、筒状側壁の内面に形成されている周状突起Bには、図示されていないが、一部に切欠きが形成されており、作用空間Zから外部にかけて形成される空気路Xが遮断されないように構成されている。
【0029】
本発明において、このキャップ100を二重構造容器1(外筒容器3の首部11)に装着したとき、この空気弁A(フラップ片)とキャップ100の筒状側壁との間の空間に、外筒容器3の首部11の上端部分が入り込んだ状態となっている。即ち、前述したように、小フランジ41が筒首部11の上端面を覆っておらず、リング状突起43の上部には、外筒首部11の内面に沿ってストレートな空間Yが形成されているため、このような空気弁Aが入り込んだ状態とすることができるわけである。
【0030】
即ち、上記の空気弁Aの内面側に内袋容器5の首部21が位置しており、この空気弁Aが揺動して外方側に傾いたときに、空気弁Aの下端が外筒容器3の首部11の内面(傾斜面33)に当接するようになっている。
【0031】
上記のようなキャップ100が装着されている二重構造容器1において、常態においては、上記の空気弁Aと傾斜面33との接触により、作用空間Zと外部とを連通する空気路Xは遮断されている。この状態でキャップ100の上蓋を開け、二重構造容器1を傾け、外筒容器3の胴部15(
図1におけるスクイズ領域)をスクイズして凹ませたとき、内袋容器5の袋状部23も凹み、これにより、内袋容器5内の内容液は、キャップ100に形成されている逆止弁(
図2では省略)を通して外部に排出される。このとき、胴部15の凹みにより、作用空間Z内の圧力は上昇するが、この圧力上昇によって空気弁Aは、外方に撓み、傾斜面33に強く押し付けられるため、空気路Xは開放されず、作用空間Z内の空気が外部に流れることは無い。尚、常態において、空気弁Aと傾斜面33とが離れた状態にあったとしても、スクイズしたとき、作用空間Z内の内圧が急激に上昇するので、この空気弁Aは外方に撓んで傾斜面33と接触することになるので、やはり、スクイズ時に作用空間Z内の空気が外部に流れることは無い。
【0032】
一方、胴部15のスクイズを停止すると、キャップ100に設けられている逆止弁は閉じ、内袋容器5内に外部から空気が流入することはないが、スクイズにより凹んだ外筒容器3の胴部15は、原形に復帰する。従って、内袋容器5の袋状部23は、内容液が排出された分だけ収縮するが、外筒容器3の胴部15の原形復帰により、作用空間Zは、負圧となる。この結果、傾斜面33に当接していた空気弁Aは内方に撓み、空気弁Aと傾斜面33との間に空隙が生じ、この結果として、空気路Xが開放され、外部から作用空間Z内に空気が流入することとなる。このため、次に外筒容器3の胴部15をスクイズしたとき、作用空間Zに空気が存在し、内袋容器5の袋状部23と外筒容器3の胴部15との間に空気層が存在することとなり、先の内容液の排出により収縮している袋状部23は速やかに押圧され、前回のスクイズと同様、内容液が速やかに排出されることとなる。
例えば、スクイズ停止後に作用空間Z内に空気が流入しないときには、袋状部23が収縮しているため、内容液を排出するためには、胴部15を強く押圧して大きく凹ませることが必要となってしまい、最終的には、内容液の排出を行うことができなくなってしまう。本発明の二重構造容器1では、このような不都合が、空気弁Aと当接する傾斜面33の形成により、有効に解決されている。
【0033】
尚、上述した説明においては、空気弁Aが接触する空気弁接触面が傾斜面33となっている例を示したが、このような傾斜面とせず、通常のストレートな直胴面を空気弁接触面として利用することもできる。即ち、環状フラップ片からなる空気弁Aは、スクイズ時に外方に撓んで外筒首部11の内面と接触するため、空気の排出を有効に防止することができるからである。
しかし、空気弁接触面が直胴面との場合は、キャップ100を打栓により装着する際に空気弁Aの変形等を生じ易くなるため、キャップ100を打栓により装着するという観点からは、空気弁接触面は、上記のような傾斜面33とすることが好適である。
また、環境温度変化(温度上昇)により、作用空間Z内の圧力が上昇したときのガス抜きを効果的に行うことができるという点でも、空気弁接触面は、
図2に示されているように、傾斜面33とすることが好適である。即ち、空気弁接触面がストレートな直立面であると、このような温度上昇により内圧が上昇した時、空気弁Aが該直立面に接触するため、作用空間Zからのガス抜きは行われない。このため、キャップ100の上蓋を開けたとき、内容液が排出されてしまうことがある。しかしながら、空気弁接触面を傾斜面33としておけば、例えば、空気弁A(環状のフラップ片)の外面(傾斜面33と当接する側の面)に、高さ方向に延びている線状溝を少なくとも1本形成しておくことにより、ガス抜きを有効に行うことができ、上蓋を開けたときの内容液の排出を有効に防止することができる。環境温度の変化程度の内圧上昇では、空気弁Aの外方の撓みが小さいため、空気弁Aに形成されている溝を通してガス抜きが行われるためである。勿論、スクイズ時には、作用空間Zの内圧が大きく上昇し、空気弁Aが大きく外方に撓むため、このような溝を通しての空気の排出は生じることが無い。
【0034】
上述した構造を有する本発明の二重構造容器1は、先にも簡単に述べたが、所謂スタックプリフォーム法により製造される。
このようなプリフォームの形態の一例を
図6に示した。
【0035】
図6を参照して、外筒容器3を形成するためのプリフォーム(外筒プリフォーム)51は、全体として試験管形状を有しており、上部が、前述した形態の外筒首部11となっており、この外筒首部11に連なっている管状部53が延伸成形部となっている(
図6(a)参照)。
【0036】
即ち、外筒プリフォーム51の外筒首部11は、前述したように、その外面には、サポートリング19及びアンダーカット31が形成され、このアンダーカット31には、空気路Xを確保するための切欠き31aが形成されている。また、この外筒首部11の内面には、上端に傾斜面33が形成され、その下方には、段差35が形成されている。さらに、必要により、傾斜面33と段差35との間の領域には、溝37が形成されている。尚、作図上、切欠き31a及び溝37は、省略されている。
また、管状部53は、延伸成形される部分であり、ブロー成形されることにより、前述した外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17となる部分が賦形される。
【0037】
また、内袋容器5を形成するための内袋プリフォーム61も、全体として試験管形状を有しており、上部が、前述した形態の内袋首部21となっており、この内袋首部21に連なっている管状部63が延伸成形部となっている(
図6(b)参照)。
【0038】
即ち、内袋プリフォーム61の内袋首部21は、前述したように、その外面には、上端に小フランジ41、及びその下方にリング状突起43が設けられており、管状部63は、延伸成形される部分であり、ブロー成形されることにより、前述した袋状部23となる部分が賦形される。
尚、図では、小フランジ41に形成されている切欠き41a及びリング状突起43に形成されている切欠き43aは、作図上、何れも省略されている。
【0039】
上記のような内袋プリフォーム61及び外筒プリフォーム51は、何れも、前述したブロー成形に適した熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂)を用いての射出成形により成形され、内袋プリフォーム61を外筒プリフォーム51内に挿入してスタックプリフォーム71が組み立てられる(
図6(c)参照)。このスタックプリフォーム71は、外筒首部11内に内袋首部21が入り込んでいる部分が、非延伸領域αであり、この領域αの下方の部分が延伸領域βとなる。即ち、このスタックプリフォーム71において、非延伸領域αの形態は、前述した
図2及び
図5で示されている形態となる。
【0040】
上記のような形態のスタックプリフォーム71を所定の延伸成形温度に加熱してブロー成形型内に配置し、圧縮エア等のブロー流体をスタックプリフォーム71内(内袋プリフォーム61内)に吹き込むことにより、ブロー成形が行われる。即ち、内袋プリフォーム61の管状部63は、外筒プリフォーム51の管状部53を膨張により押し広げながら延伸され、この結果、外筒プリフォーム51の管状部53は、成形型の形態に応じて、肩部13、胴部15及び底部17の形態に賦形される。一方、内袋プリフォーム61の管状部63は、この外筒容器3の肩部13、胴部15及び底部17の内面に密着した袋状部23の形態に賦形され、かくして本発明の二重構造容器1が製造される。
【0041】
尚、
図6(c)に示されているスタックプリフォーム71においては、内袋プリフォーム61が完全に外筒プリフォーム51内に挿入され、外筒プリフォーム51の上端と内袋プリフォーム61の上端と同一面上に位置するように組み立てられているが、このような形態に限定されるものではなく、例えば、内袋プリフォーム61の上端(即ち、内袋首部21の上端の小フランジ41)が、外筒プリフォーム51の上端(即ち、外袋首部11の上端)よりも突出した状態で存在するような形態とすることもできる。
この場合には、内袋プリフォーム61の上端の小フランジ41と外筒首部11の上端との間の空間に治具を挿入した状態でブロー成形を行い、ブロー成形後、治具を引き抜き、突出している内袋首部21の上端を外筒首部11内に押し込む(打栓)ことにより、
図2及び
図5に示された形態とすることができる。スタックプリフォーム71をこのような形態とすることは、成形後に、内袋容器5の袋状部23と外筒容器3の肩部13との間に空隙を形成することができるため、最初に内容液の排出を行う際、作用空間Z内への空気の導入を速やかに行うことができるという利点がある。
【0042】
上記のように作製された二重構造容器1は、内袋容器5内に内容液を充填した後、キャップを装着することにより使用に供される。
尚、この二重構造容器1に装着されるキャップとしては、原理的には、螺子係合により外筒首部11に装着される所謂螺子キャップを使用することもできる。この場合には、外筒首部11の外面に、キャップ係合用螺条を設け、この螺条に、空気路Xを確保するためのスリットが形成されることとなる。
【0043】
しかしながら、本発明の二重構造容器1では、外筒首部11に形成されている傾斜面33にキャップに形成されている空気弁A(具体的には環状フラップ片)を当接させることが必要であり、このような空気弁Aは、
図2から理解されるように、空気弁Aの内方に内袋首部21が位置するようになる。従って、内袋容器5の密封を確保するために、インナーリングCなどの部材を用いる必要となる。このような構造を確保するという点で、本発明の二重構造容器1に適用されるキャップは、打栓タイプのキャップであることが好適である。このような打栓式のキャップを適用することにより、外筒首部11や内袋首部21のハイトを低くすることができ、製造コストの点でも有利となる。
【0044】
前述した
図2では、打栓式キャップ100の概略構造が示されているが、
図7に、本発明の二重構造容器1に装着された打栓式キャップ100の代表的な構造を示した。
【0045】
図7において、二重構造容器1の外筒首部21に打栓により装着されるキャップは、
図2と同様、100で示されており、空気弁A、外筒首部11の外面に形成されているアンダーカット31と係合する係合突起B及び内袋首部21の内面に密着しているインナーリングCを備えている。
【0046】
かかるキャップ100は、全体として110で示すキャップ本体と、キャップ本体110内に保持されている中栓111及び逆止弁113とから構成されている。
【0047】
キャップ本体110は、前述した外筒容器3の首部11に装着される筒状側壁121と、筒状側壁121にヒンジ連結されている上蓋123とを有している。
【0048】
上記の筒状側壁121の上端には、その内部空間を閉じるように延びている頂板部125が一体に形成されている。
また、特に限定されるものではないが、この筒状側壁121には、上方から下方に延びているスリット127が形成されており、これにより二重壁構造となっている。このような二重壁構造により、使用済のキャップ100を、格別の器具を用いずに、二重構造容器1から容易に引き剥がすことが可能となっており、分別廃棄性が高められている。
【0049】
また、上記の筒状側壁121の内面に、外筒首部11のアンダーカット31と係合する係合突起Bが形成されている。この係合突起Bには、空気路Xを確保するための切欠きが形成されているのは、先に説明したとおりである。
【0050】
上記の筒状側壁121の上端から内方に延びている頂板部125の下面には、筒状側壁121とは間隔おいて、下方に延びているインナーリングCが形成されており、このインナーリングCが、内袋首部21の内面に密着することにより、内袋容器5のシール性が確保される。
【0051】
また、頂板部125の下面の外周縁から筒状側壁121の内面の上端部にかけて、補助突起133が形成されており、この補助突起133が、外筒首部11の上端面から外面にかけて密着することにより、このキャップ本体110(筒状側壁121)が、ガタツクことなく、しっかりと外筒首部11に固定される。尚、この補助突起133にも、空気路Xを確保するために、切欠きが形成されているのは言うまでもない。
【0052】
さらに、頂板部125の下面において、インナーリングCよりも外方側に、空気弁Aとして機能する環状垂下フラップ片が設けられている。この空気弁Aが、前述した外筒首部11の上端内面に形成されている傾斜面33と係合することにより、外筒首部11の内面に沿って形成されているストレートな空間Yを作用空間Zに通じる空気路として利用することができ、このような空気路Xを通して作用空間Zへの空気の出し入れが行われるわけである。
従って、上記のような空気弁Aを設ける代わりに、上記の頂板部125に開口を形成し、この開口を開け閉めし得る形態の空気弁を設ける構造とすることもできる。頂板部125に形成される開口が、前述したストレートな空間Yに連通しているからである。
【0053】
上述した頂板部125の下面には、インナーリングCで囲まれる領域に、中栓111を保持するための中栓保持用リング137(以下、単にリングと呼ぶことがある)が設けられている。このリング137内に中栓111が収容されるが、収容された中栓111が脱落せずにしっかりと保持されるように、このリング137は、下方に向かってやや縮径した形状を有しており、且つリング137の内面下端には、突起139が形成されている。さらに、リング137の内方側の頂板部125の下面には、やはり中栓111を安定に保持するために周状小突起141が形成されている。
【0054】
一方、頂板部125の上面には、周縁部分に、背の低い上蓋係合用突起143が形成され、これにより、上蓋123を閉じたとき、上蓋123がしっかりと保持される。
【0055】
また、頂板部125の上面の中心部分には、内容液注出用案内筒145が立設されている。
この案内筒145は、筒状側壁121内の中空空間と連通しており、内袋容器5から排出される内容液の注出路となる。
【0056】
前記した筒状側壁121の上端部分或いは頂板部125の外周縁には、ヒンジバンド147により上蓋123が旋回可能に連結されている。
この上蓋123は、天板部151と天板部151の外周縁に連なるスカート部153とから構成されている。
【0057】
上記の上蓋123において、スカート部153の内面には、係合用凹部155が形成されており、上蓋123を旋回して閉じたとき、この凹部155が前述した上蓋係合用突起143と係合し、これにより、上蓋123の閉蓋状態が安定に保持される。また、スカート部153の外面には、ヒンジバンド147とは反対側の位置に開封用タブ157が設けられている。これにより、このタブ157を持って、上蓋123の開栓操作を容易に行うことができる。
【0058】
天板部151の内面(
図7において、上側の面)には、背の高い緩衝用突起159が周状に形成されている。上蓋123を閉じたとき、この緩衝用突起159の先端が頂板部125の上面に当接するように形成されている。即ち、上蓋123が閉じられている状態において、偶発的に大きな垂直荷重が加わったとき、この緩衝用突起159により応力が緩和され、上蓋123等の破損が防止されるものである。
【0059】
また、天板部151の中央部分には、逆止弁113を賦勢するためのポール161が立設されている。
このポール161は、上蓋123を閉じたとき、中栓保持用リング137内に収容されている中栓111に保持されている逆止弁113を押圧賦勢するための部材である。従って、上蓋123を閉じたとき、このポール161は、内容液注出用案内筒145内に侵入し、逆止弁113に当接することとなる。従って、案内筒145の上端は、ヒンジバンド147側の背が低く形成されている。また、ポール161は、付け根部側が比較的大径に形成され、先端部側が小径に形成された形態を有しており、これに伴い、案内筒145の内面の上方部分には、内方に突出した内方突起145aが設けられている。即ち、上蓋123を閉じたとき、案内筒145内に侵入したポール161は、大径の付け根部側が内方突起145aとの嵌合によりしっかりと固定され、ポール161の小径の先端部側が位置決めされ、一定位置で逆止弁113に当接し、逆止弁113を賦勢するように構成されている。
【0060】
さらに、天板部151の内面には、上記のポール161を取り囲み、且つ上蓋123を閉じたとき、案内筒145を取り囲むような位置に、小さな保護リング163が設けられている。これにより、内容液がポール161やその周辺部に付着した場合、上蓋123を開放したとき、天板部151の内面全体に内容液が濡れ広がらないようにすることができる。また、同様の目的で、ポール161の周辺部には、小さな溝165が設けられている。
【0061】
さらに、キャップ本体110に設けられている中栓保持用リング137内には、中栓111が収容されるが、この中栓111は、案内筒145の内部と内袋容器5の内部とを連通させる開口170が中央部分に形成されている。即ち、この開口170を通って、内袋容器5内の内容液は案内筒145内に流れ、案内筒145から排出されることとなる。
【0062】
上記のような中栓111は、筒状基部171と、筒状基部171の内面の下端から上方に向かって延びている周状傾斜フランジ173と、周状傾斜フランジ173の先端から降下して延びている降下壁175と、降下壁175の下端から内方に突出している水平フランジ177とから形成されており、この水平フランジ177で囲まれている空間が、前述した開口170となっている。このような中栓111の形態は、以下に述べる逆止弁113を安定に保持するために形成されたものである。
【0063】
即ち、内袋容器5内に収容されている内容液を排出するためには、上記の開口170が開放された状態になければならないが、排出をしない状態では、空気が内袋容器5内に流入するのを防止するために、この開口170を閉じておく必要がある。空気が流入すると、内容液の排出により収縮した袋状部23が膨らんでしまい、その後の内容液の排出に支障を来すこととなるからである。また、内容液の排出に際して案内筒145の内面に付着した内容液が内袋容器5内に戻るのを防止し、内袋容器5内の内容液の品質を保持する上でも、内容液の排出後は、速やかに開口170が閉じられることが望まれる。このような機能を確保するために、逆止弁113が使用される。
【0064】
かかる逆止弁113は、円形であり且つ若干上方に膨らんだドーム形状の弁体181を有しており、この弁体181は、環状支持部材183から延びている複数のストラップ185により上下動可能に保持されている。この環状支持部材183は、中栓保持用リング137の内部に嵌め込まれて固定され、また、弁体181は、開口170を閉じるように、降下壁175の内部に挿入された状態にあり、この弁体181が上昇すると、開口170が開放され、開口170を通して内容液が排出されることとなる。この場合、弁体181は、複数のストラップ185により保持されているため、開口170を通った内容液は、ストラップ185の間隙を通って案内筒145内に流れることとなる。また、上蓋123を閉じたときには、前述したポール161が弁体181をしっかりと押付けるため、この降下壁175内に弁体181が嵌め込まれた状態となり、開口170が弁体181によりしっかりと閉じられた状態となる。
【0065】
即ち、上蓋123を開けた状態で二重構造容器1を傾け、外筒容器3の胴部15(スクイズ領域)を押圧することにより、内袋容器5の袋状部23が押圧され、このときの内圧上昇により弁体181が持ち上げられ、上記のように開口170を通して内容液が排出される。また、胴部15のスクイズを停止すると、ストラップ185の弾性により弁体181は、開口170を閉じる位置に戻り、さらに、上蓋123を閉じることにより、この弁体181は、降下壁175の内部にがっちりと保持されることとなる。
【0066】
尚、上述した中栓111及び逆止弁113のキャップ本体110内への組み込みは、例えば、中栓111内に逆止弁113を組み込んだ後、この組立体を、キャップ本体110の中栓保持用リング137内に押し込むにより行われる。これにより、逆止弁113を収容保持している中栓111は、その筒状基部171が、リング137の下端の突起139と上方の周状小突起141との間にしっかりと挟持される。この状態で、上蓋123を閉じた状態で、該キャップ100を、内容物が充填されている二重構造容器1に被せて打栓することにより、このキャップ100が装着される。
【0067】
ところで、上蓋123を開放し、外筒容器3の胴部15を押圧することにより、逆止弁113の弁体181を押し上げて内容液を排出するとき、外筒容器3の内面と内袋容器3との間の作用空間Zから空気が排出するのを防止し、内容液排出後には、作用空間Zに空気を導入し、作用空間Zを常圧に戻すことが必要となる。本発明では、このような機能を確保するために、前述した空気弁A(環状垂下フラップ片)が、外筒首部11の内面に上端に形成されている傾斜面33に当接するように設けられているわけである。
【0068】
尚、上述したキャップ本体110、中栓111及び逆止弁113は、何れも、オレフィン系樹脂、例えば、低、中或いは高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどを用いての射出成形、圧縮成形等により製造される。
【0069】
このようなキャップ100が装着された二重構造容器1は、内容液を小出しすることができ、しかも空気との接触による酸化劣化を防止し、長期にわたって内容液の品質を保持することができるため、醤油等の調味液が収容される容器として好適に使用される。
【符号の説明】
【0070】
1:二重構造容器
3:外筒容器
5:内袋容器
11:外筒首部
13:肩部
15:胴部
21:内袋首部
23:袋状部
31:アンダーカット
33:傾斜面
35:段差
43:嵌合固定用リング状突起
100:キャップ
X:空気路
Y:ストレートな空間
Z:作用空間
A:キャップの空気弁