(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
F24C3/12 G
(21)【出願番号】P 2019075541
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
(72)【発明者】
【氏名】谷野 涼
(72)【発明者】
【氏名】森岡 智子
(72)【発明者】
【氏名】徳永 昌之
(72)【発明者】
【氏名】竹野 沙方里
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353911(JP,A)
【文献】特開2006-064276(JP,A)
【文献】特開2000-046340(JP,A)
【文献】特開2008-300256(JP,A)
【文献】特開平08-247465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱するコンロバーナと、前記調理容器の温度を検出する温度検出部と、前記コンロバーナの火力を調節する火力調節部と、運転を制御する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記コンロバーナを点火用火力にて燃焼させる加熱開始後における前記温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になることに基づいて、水もの調理であると判別する調理種別判別処理を実行するように構成されたガスコンロであって、
前記運転制御部が、
前記加熱開始後における前記検出温度の上昇勾配又は前記加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間に基づいて、水もの用加熱容量を推定する水もの用容量判別処理を実行するように構成され、且つ、
前記調理種別判別処理にて前記水もの調理であると判別した場合において、前記水もの用容量判別処理にて推定された前記水もの用加熱容量に基づいて
前記平衡状態を検出してからの水もの用目標加熱時間を設定する水もの用運転条件設定処理、及び、前記水もの用目標加熱時間に達すると前記コンロバーナを消火する水もの調理用制御処理を順次実行するように構成されているガスコンロ。
【請求項2】
前記運転制御部が、前記水もの用容量判別処理において、前記上昇勾配又は前記経過時間と前記加熱開始時に前記温度検出部にて検出される初期温度とに基づいて前記水もの用加熱容量を推定するように構成されている請求項1に記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記運転制御部が、前記水もの用容量判別処理において、前記水もの用加熱容量を
湯沸かしと推定する多容量と
煮物調理と推定する少容量との2段階に推定し、且つ、前記水もの用運転条件設定処理において、前記水もの用目標加熱時間として、前記水もの用加熱容量
が多容量のときには前記水もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、水もの用長時間と水もの用短時間とを設定するように構成されている請求項1又は2に記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記運転制御部が、前記水もの調理用制御処理において、前記コンロバーナの火力を前記点火用火力よりも低い水もの用目標火力に調節するように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載のガスコンロ。
【請求項5】
前記運転制御部が、
前記加熱開始後の設定時間範囲における前記検出温度の油もの用上昇勾配に基づいて、油もの用加熱容量を推定する油もの用容量判別処理を実行し、かつ、前記調理種別判別処理
において、前記検出温度が前記平衡状態にならない場合には、油もの調理と判別するように構成され、且つ、
前記調理種別判別処理にて前記油もの調理を判別した場合において、その後の加熱調理における目標加熱形態として、前記検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御形態を設定し、かつ、前記油もの用容量判別処理にて推定された前記油もの用加熱容量に基づいて油もの用目標加熱時間を定める油もの用運転条件設定処理、及び、前記目標加熱温度に維持すべく前記火力調節部を制御しかつ前記油もの用目標加熱時間に達すると前記コンロバーナを消火する油もの調理用制御処理を実行するように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載のガスコンロ。
【請求項6】
前記運転制御部が、前記油もの用容量判別処理において、前記油もの用上昇勾配と前記
加熱開始時に前記温度検出部にて検出される初期温度とに基づいて前記油もの用加熱容量を推定するように構成されている請求項5に記載のガスコンロ。
【請求項7】
前記運転制御部が、前記油もの用容量判別処理において、前記油もの用加熱容量を多容量と少容量との2段階に推定し、且つ、前記油もの用運転条件設定処理において、前記油もの用目標加熱時間として、前記油もの用加熱容量
が多容量のときには前記油もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、油もの用長時間と油もの用短時間とを設定するように構成されている請求項5又は6に記載のガスコンロ。
【請求項8】
前記調理種別判別処理にて判別された調理種別が前記水もの調理であるか前記油もの調理であるかを表示する調理種別表示部と、
前記水もの調理であると判別された場合において前記水もの用目標加熱時間を表示し、かつ、前記油もの調理であると判別された場合において前記油もの用目標加熱時間を表示する時間表示部と、
前記油もの調理であると判別された場合において前記目標加熱温度を表示する温度表示部と、が設けられている請求項5~7のいずれか1項に記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器を加熱するコンロバーナと、前記調理容器の温度を検出する温度検出部と、前記コンロバーナの火力を調節する火力調節部と、運転を制御する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、加熱調理中における前記温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になることに基づいて、水もの調理であると判別する調理種別判別処理を実行するように構成されたガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるガスコンロの従来例として、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別した場合において、水もの調理としての煮もの調理において焦げつきを判断する水もの用のカット温度(消火温度)を設定して、温度検出部の検出温度が水もの用のカット温度(消火温度)に達すると、コンロバーナの燃焼を停止するように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
つまり、煮もの調理においては、焦げ付きが生じる前の適当なタイミングにて、使用者がコンロバーナの燃焼を停止する必要があるが、使用者が調理中であることを忘れる等に起因して、適当なタイミングにて、コンロバーナの燃焼を停止できないことが生じた場合には、検出温度がカット温度(消火温度)に達すると、コンロバーナの燃焼を停止するようにして、焦げ付きの発生を防止している。
【0004】
ちなみに、特許文献1においては、調理種別判別処理において、加熱調理中における前記温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態にならない場合には、油もの調理と判断して、油もの調理における発火を防止する油もの用のカット温度(消火温度)を設定して、温度検出部の検出温度が油もの用のカット温度(消火温度)に達すると、コンロバーナの燃焼を停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガスコンロにおいては、水もの調理としての煮もの調理において焦げつきと判断する水もの用のカット温度(消火温度)を設定して、温度検出部の検出温度が水もの用のカット温度(消火温度)に達すると、コンロバーナの燃焼を停止するものであるから、煮ものの焦げ付きを適切に回避できない虞があった。
つまり、煮もの調理においては、焦げ付きが生じる前のタイミングにて、コンロバーナの燃焼を停止する必要があるが、温度検出部の検出温度が水もの用のカット温度(消火温度)に達することにより、コンロバーナの燃焼を停止させても、煮ものに多少の焦げ付きが生じる虞があり、改善が望まれるものであった。
【0007】
また、水もの調理としては、湯沸しがあるが、従来では、使用者が湯沸し中であることを忘れる等に起因して、コンロバーナの燃焼を停止できないことが生じた場合には、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、水もの調理としての煮もの調理を、焦げつきを発生することなく良好に行え、また、水もの調理としての湯沸しにおいて、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されることを回避できるガスコンロを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスコンロは、調理容器を加熱するコンロバーナと、前記調理容器の温度を検出する温度検出部と、前記コンロバーナの火力を調節する火力調節部と、運転を制御する運転制御部と、が設けられ、
前記運転制御部が、前記コンロバーナを点火用火力にて燃焼させる加熱開始後における前記温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になることに基づいて、水もの調理であると判別する調理種別判別処理を実行するように構成されたものであって、その特徴構成は、
前記運転制御部が、
前記加熱開始後における前記検出温度の上昇勾配又は前記加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間に基づいて、水もの用加熱容量を推定する水もの用容量判別処理を実行するように構成され、且つ、
前記調理種別判別処理にて前記水もの調理であると判別した場合において、前記水もの用容量判別処理にて推定された前記水もの用加熱容量に基づいて前記平衡状態を検出してからの水もの用目標加熱時間を設定する水もの用運転条件設定処理、及び、その後の加熱継続時間が前記水もの用目標加熱時間に達すると前記コンロバーナを消火する水もの調理用制御処理を順次実行するように構成されている点にある。
【0010】
すわわち、運転制御部が、水もの用容量判別処理を実行して、加熱対象の水もの用加熱容量を推定することになる。
つまり、加熱開始後における温度検出部の検出温度の上昇勾配は、水もの用加熱容量が大きいほど小さな勾配となる傾向になるものであるから、加熱開始後における温度検出部の検出温度の上昇勾配に基づいて、水もの用加熱容量が推定される。
また、加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間は、加熱対象の水もの用加熱容量が大きいほど長時間となる傾向になるものであるから、加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間に基づいて、水もの用加熱容量が推定される。
ちなみに、一般に、煮もの調理における水もの用加熱容量は、やかん等に収納した湯水を加熱する湯沸しにおける水もの用加熱容量に較べて小さくなる傾向であるから、水もの用加熱容量が大きい場合には、湯沸しであると推定でき、水もの用加熱容量が小さい場合には、煮もの調理であると推定できる。
【0011】
そして、運転制御部が、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別した場合において、水もの用容量判別処理にて推定された水もの用加熱容量に基づいて、水もの用目標加熱時間を定める水もの用運転条件設定処理を実行することになる。
つまり、水もの調理において温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になった後における水もの用目標加熱時間が、水もの用容量判別処理にて推定された加熱容量に基づいて設定される。
【0012】
具体的には、水もの用加熱容量が湯沸しよりも小さな傾向となる煮もの調理である場合には、湯沸しよりも少ない加熱調理時間で済む傾向となるものであるから、水もの用目標加熱時間として、水もの用加熱容量が大きな場合における水もの用目標加熱時間を、水もの用加熱容量が小さな場合における水もの用目標加熱時間よりも長くする状態で、水もの用目標加熱時間を設定することができる。
【0013】
運転制御部が、水もの用運転条件設定処理を実行した後において、その後の加熱継続時間が水もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナを消火する水もの調理用制御処理を実行することによって、水もの用加熱容量が小さな傾向となる煮もの調理を、煮ものが焦げ付く前にコンロバーナを消火する形態で良好に行え、また、水もの用加熱容量が大きな傾向となる湯沸しを、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されることを回避しながら行うことができる。
【0014】
要するに、本発明のガスコンロの特徴構成によれば、水もの調理としての煮もの調理を、焦げつきを発生することなく良好に行え、また、水もの調理としての湯沸しにおいて、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されることを回避できる。
【0015】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記水もの用容量判別処理において、前記上昇勾配又は前記経過時間と前記加熱開始時に前記温度検出部にて検出される初期温度とに基づいて前記水もの用加熱容量を推定するように構成されている点にある。
【0016】
すなわち、加熱開始後における温度検出部の検出温度の上昇勾配は、加熱開始時に温度検出部にて検出される初期温度が低いほど大きくなる傾向となる。
また、加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間は、加熱開始時に温度検出部にて検出される初期温度が低いほど長くなる傾向となる。
そこで、運転制御部が、水もの用容量判別処理において、加熱開始後における温度検出部の検出温度の上昇勾配又は加熱開始から設定基準温度に達するまでの経過時間と、加熱開始時に温度検出部にて検出される初期温度に基づいて水もの用加熱容量を推定することにより、初期温度の変化に拘わらず、水もの用加熱容量を適切に推定できることになる。
【0017】
つまり、例えば、水もの調理としの湯沸しを開始する場合には、全く加熱していない湯水を加熱する場合や、一旦加熱した後に加熱を中断した湯水を再度加熱する場合等に応じて、加熱開始時の初期温度が変化することがあるが、このように初期温度が変化しても、加熱容量を適切に推定できることになる。
【0018】
要するに、本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、加熱開始時の初期温度の変化に拘わらず、水もの用加熱容量を適切に推定できる。
【0019】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記水もの用容量判別処理において、前記水もの用加熱容量を湯沸かしと推定する多容量と煮物調理と推定する少容量との2段階に推定し、且つ、前記水もの用運転条件設定処理において、前記水もの用目標加熱時間として、前記水もの用加熱容量が多容量のときには前記水もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、水もの用長時間と水もの用短時間とを設定するように構成されている点にある。
【0020】
すなわち、水もの用容量判別処理において、水もの用加熱容量が多容量と少容量との2段階に推定され、そして、水もの用運転条件設定処理において、水もの用目標加熱時間として、水もの用加熱容量が多容量のときには水もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、水もの用長時間と水もの用短時間とが設定されることになる。
【0021】
このように、水もの用加熱容量が多容量と少容量との2段階に推定されて、水もの用目標加熱時間が、水もの用長時間と水もの用短時間との2段階に設定されるものであるから、水もの用加熱容量が多容量である湯沸しを水もの用長時間に亘って継続する形態で良好に行え、また、水もの用加熱容量が少容量である煮もの調理を、水もの用短時間に亘って継続する形態で良好に行えることになる。
【0022】
要するに、本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、水もの用加熱容量が多容量である湯沸し及び水もの加熱容量が少容量である煮もの調理を良好に行える。
【0023】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記水もの調理用制御処理において、前記コンロバーナの火力を前記点火用火力よりも低い水もの用目標火力に調節するように構成されている点にある。
【0024】
すなわち、運転制御部が、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別した場合において、その後の加熱調理における水もの用目標火力を、点火用火力よりも低い火力に調節して、点火用火力よりも低い水もの用目標火力にて加熱調理が継続される。
つまり、加熱開始からのコンロバーナの火力は、点火用火力にて燃焼を継続する状態に維持されることになるが、温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になった後におけるコンロバーナの火力が、点火用火力よりも低い水もの用目標火力に調節されることになる。
【0025】
このように、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別した後の加熱調理における水もの用目標火力が、点火用火力よりも低い火力に調節されるから、水もの調理としての煮もの調理を行う場合において、焦げつきの発生を一層適切に回避できる。
【0026】
要するに、本発明のコンロバーナの更なる特徴構成によれば、水もの調理としての煮もの調理における焦げつきの発生を一層適切に回避できる。
【0027】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、
前記加熱開始後の設定時間範囲における前記検出温度の油もの用上昇勾配に基づいて、油もの用加熱容量を推定する油もの用容量判別処理を実行し、かつ、前記調理種別判別処理において、前記検出温度が前記平衡状態にならない場合には、油もの調理と判別するように構成され、且つ、
前記調理種別判別処理にて前記油もの調理を判別した場合において、その後の加熱調理における目標加熱形態として、前記検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御形態を設定し、かつ、前記油もの用容量判別処理にて推定された前記油もの用加熱容量に基づいて油もの用目標加熱時間を定める油もの用運転条件設定処理、及び、前記目標加熱温度に維持すべく前記火力調節部を制御しかつ前記油もの用目標加熱時間に達すると前記コンロバーナを消火する油もの調理用制御処理を順次実行するように構成されている点にある。
【0028】
すなわち、運転制御部が、調理種別判別処理において、温度検出部の検出温度が平衡状態にならない場合には、油もの調理と判別し、そして、その後の加熱調理における目標加熱形態として、温度検出部の検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御形態を設定し、かつ、油もの用容量判別処理にて推定された油もの用加熱容量に基づいて、その後の加熱調理における油もの用目標加熱時間を定める油もの用運転条件設定処理を実行する。
【0029】
つまり、加熱開始からのコンロバーナの火力は、点火用火力にて燃焼を継続する状態に維持されることになるが、温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態にならない油もの調理のときには、揚げもの調理や炒めもの調理を行うに適した目標加熱温度に維持するようにコンロバーナの燃焼を調整することが望まれるものとなる。
そして、温度検出部の検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御形態が設定されるから、揚げもの調理や炒めもの調理において、異常な高温状態になることを回避しながら、揚げもの調理や炒めもの調理を良好に行うことができる。
【0030】
また、油もの調理において、温度検出部の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態にならないと判断された後における油もの用加熱時間が、油もの用容量判別処理にて推定された油もの用加熱容量に基づいて設定される。つまり、加熱容量が揚げもの調理よりも小さな傾向となる炒め物調理や空焚きである場合には、揚げもの調理よりも少ない時間で済む傾向となるものであるから、油もの用目標加熱時間として、油もの用加熱容量が大きな場合における油もの用目標加熱時間を、油もの用加熱容量が小さな場合における油もの用目標加熱時間よりも長くする状態で、油もの用目標加熱時間を設定することができる。
【0031】
運転制御部が、油もの用運転条件設定処理を実行した後において、目標加熱温度に維持すべく火力調節部を制御しかつ油もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナを消火する油もの調理用制御処理を実行することによって、油もの用加熱容量が小さな傾向となる炒めもの調理を、調理物が焦げ付く前にコンロバーナを消火する形態で良好に行え、また、油もの用加熱容量が大きな傾向となる揚げもの調理を、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されることを回避しながら行うことができる。
ちなみに、油もの用加熱容量が小さな傾向となる場合としては、空焚きが考えられるが、このような空焚きの場合には、油もの用目標加熱時間を短く設定することにより、調理容器が異常加熱される前にコンロバーナを消火させることができる。
【0032】
要するに本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、油もの調理としての炒めもの調理を、焦げつきを発生することなく良好に行え、また、油もの調理としての揚げもの調理において、コンロバーナが不必要に長く燃焼を継続されることを回避できる。
【0033】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記油もの用容量判別処理において、前記油もの用上昇勾配と前記加熱開始時に前記温度検出部にて検出される初期温度とに基づいて前記油もの用加熱容量を推定するように構成されている点にある。
【0034】
すなわち、加熱開始後における温度検出部の検出温度の油もの用上昇勾配は、加熱開始時に温度検出部にて検出される初期温度が低いほど大きくなる傾向となる。
そこで、運転制御部が、油もの用容量判別処理において、加熱開始後の設定時間範囲における温度検出部の検出温度の油もの用上昇勾配と、加熱開始時に温度検出部にて検出される初期温度に基づいて油もの用加熱容量を推定することにより、初期温度の変化に拘わらず、油もの用加熱容量を適切に推定できることになる。
【0035】
つまり、例えば、油もの調理としての揚げもの調理を開始する場合には、全く加熱していない油を加熱する場合や、一旦加熱した後に加熱を中断した油を再度加熱する場合等に応じて、加熱開始時の初期温度が変化することがあるが、このように初期温度が変化しても、油もの用加熱容量を適切に推定できることになる。
【0036】
要するに、本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、加熱開始時の初期温度の変化に拘わらず、油もの用加熱容量を適切に推定できる。
【0037】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記運転制御部が、前記油もの用容量判別処理において、前記油もの用加熱容量を多容量と少容量との2段階に推定し、且つ、前記油もの用運転条件設定処理において、前記油もの用目標加熱時間として、前記油もの用加熱容量が多容量のときには前記油もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、油もの用長時間と油もの用短時間とを設定するように構成されている点にある。
【0038】
すなわち、油もの用容量判別処理において、油もの用加熱容量が多容量と少容量との2段階に推定され、そして、油もの用運転条件設定処理において、油もの用目標加熱時間として、油もの用加熱容量が多容量のときには油もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、油もの用長時間と油もの用短時間とが設定されることになる。
【0039】
このように、油もの用加熱容量が多容量と少容量との2段階に推定されて、油もの用目標加熱時間が、油もの用長時間と油もの用短時間との2段階に設定されるものであるから、油もの用加熱容量が多容量である揚げもの調理を油もの用長時間に亘って継続する形態で良好に行え、また、油もの用加熱容量が少容量である炒めもの調理を、油もの用短時間に亘って継続する形態で良好に行えることになる。
ちなみに、油もの用加熱容量が小さな空焚きについても、コンロバーナの加熱が油もの用短時間に亘って継続されるだけになるので、調理容器の異常加熱を回避できる。
【0040】
要するに、本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、油もの用加熱容量が多容量である揚げもの調理及び油もの用加熱容量が少容量である炒めもの調理を良好に行える。
【0041】
本発明のガスコンロの更なる特徴構成は、前記調理種別判別処理にて判別された調理種別が前記水もの調理であるか前記油もの調理であるかを表示する調理種別表示部と、
前記水もの調理であると判別された場合において前記水もの用目標加熱時間を表示し、かつ、前記油もの調理であると判別された場合において前記油もの用目標加熱時間を表示する時間表示部と、
前記油もの調理であると判別された場合において前記目標加熱温度を表示する温度表示部と、が設けられている点にある。
【0042】
すなわち、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別された場合には、調理種別表示部にて、水もの調理であることが表示され、加えて、時間表示部にて、水もの用目標加熱時間が表示されることになる。
また、調理種別判別処理にて油もの調理であると判別された場合には、調理種別表示部にて、油もの調理であることが表示され、加えて、時間表示部にて、油もの用目標加熱時間が表示され、さらに、温度表示部にて、目標加熱温度が表示されることになる。
【0043】
このように、加熱調理中の調理内容が、水もの調理であるか、油もの調理であるかが表示され、加えて、水もの用目標時間や油もの用目標時間が表示され、さらに、油もの調理である場合には目標加熱温度が表示されるから、使用者は、現在実行されている加熱調理中の調理内容を認識できることになる。
【0044】
そして、使用者は、表示されている調理内容が間違っている場合には、コンロバーナの燃焼を停止して加熱調理を停止する処理を行うことができ、また、表示されている調理内容が正しいとしても、水もの用目標加熱時間や油もの用目標加熱時間が適正でないときには、その時間を調整することができ、さらには、目標加熱温度が適正でないときには、その温度を調整することができ、その結果、水もの調理や油もの調理を一層適正に行うことができるものとなる。
【0045】
要するに本発明のガスコンロの更なる特徴構成によれば、水もの調理や油もの調理を一層適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図3】自動判別調理処理を示すフローチャートである。
【
図4】水もの調理における検出温度の変化の一例を示す図である。
【
図5】油もの調理における検出温度の変化の一例を示す図である。
【
図6】初期温度と上昇勾配と水量との関係を示すグラフである。
【
図7】初期温度と90℃までの経過時間と水量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ガスコンロの全体構成)
図1は、ビルトイン式やテーブル式のガスコンロGCに備えられるコンロバーナ1を例示するものであって、鍋やフライパン等の調理容器Jが五徳2に載置され、コンロバーナ1が五徳2に載置された調理容器Jを加熱するように構成されている。
【0048】
コンロバーナ1は、円筒状のバーナ本体部1Aと、そのバーナ本体部1Aに接続されるバーナ混合管部1Bとを備え、バーナ本体部1Aには、周方向に沿って炎孔が形成されている。
そして、燃料ガスが噴射ノズル3からバーナ混合管部1Bに噴射されることにより、一次空気がバーナ混合管部1Bに導入され、燃料ガスと一次空気との混合ガスが炎孔から噴出されて一次燃焼し、かつ、その一次燃焼により、バーナ本体部1Aの周囲の空気が二次空気として導入されて二次燃焼するように構成されている。
【0049】
燃料ガスを噴射ノズル3に供給するガス供給路4には、燃料ガスの供給を断続する元ガス弁5、及び、ステッピングモータ6Mの駆動によって燃料ガスの流量を調整して加熱量(火力)を調整するためのガス量調整弁6(火力調節部の一例)が設けられている。
尚、ガス量調整弁6の開度を検出する回転角センサ6sの検出情報が、後述する運転制御部Hに入力されるように構成されている。
【0050】
コンロバーナ1の中央部には、五徳2に載置された調理容器Jの底壁に接触して調理容器Jの温度を検出する温度センサ7(温度検出部の一例)が設けられ、この温度センサ7の検出温度が、後述する運転制御部Hに入力されている。
また、コンロバーナ1に対して、点火プラグP、及び、熱電対を用いて構成される着火センサRが装備されている。
【0051】
コンロバーナ1の運転を制御する運転制御部Hが設けられて、この運転制御部Hが、元ガス弁5の開閉操作、ガス量調整弁6の開度調整操作、及び、点火プラグPの点火作動を制御しながら、コンロバーナ1の点火処理を実行や消火処理を実行し、かつ、火力調整処理を実行するように構成されている。
【0052】
コンロバーナ1の点火指令及び消火指令を指令する点消火指令部8、及び、自動調理モードを指令する設定操作部Qが設けられている。
そして、運転制御部Hが、設定操作部Qにて自動調理モードが設定されている状態で、点消火指令部8にて点火指令が指令された場合には、その設定されている自動調理モードを行う自動調理運転処理を実行するように構成されている。
また、運転制御部Hが、設定操作部Qにて自動調理モードが設定されていない状態で、点消火指令部8にて点火指令が指令された場合には、調理モードを判別しながら調理運転を行う自動判別調理処理を実行するように構成されている。
【0053】
つまり、運転制御部Hが、自動調理モードが設定された状態で点消火指令部8にて点火指令が指令されると、元ガス弁5、ガス量調整弁6を操作して、コンロバーナ1に対して点火火力(例えば、2550kcal/h)に相当する燃料ガスを供給する状態とし、加えて、着火センサRにて着火が検出されるまで、点火プラグPを作動させる点火処理を実行し、その後、設定された自動調理モードを実行することになる。
尚、自動調理モードの加熱調理を中断する等の目的により、点消火指令部8にて消火指令が指令されると、元ガス弁5を閉状態に操作して、コンロバーナ1を消火させる消火処理を実行することになる。
【0054】
又、運転制御部Hが、自動調理モードが設定されない状態で点消火指令部8にて点火指令が指令されると、上記点火処理を実行し、その後、自動判別調理処理を実行するための各種処理を実行することになり、その詳細は後述する。
ちなみに、自動判別調理処理における加熱調理を中断する等の目的により、点消火指令部8にて消火指令が指令されると、上述の消火処理を実行することになる。
【0055】
(設定操作部の詳細)
設定操作部Qは、自動調理モードとして、煮ものモード、湯沸しモード、温度設定モードを設定できるように構成されている。
ちなみに、煮ものモード及び湯沸しモードは、水もの調理に相当することになり、温度設定モードは、揚げもの調理等を行う油もの調理に相当する。
【0056】
つまり、設定操作部Qには、煮ものモード、湯沸しモード、温度設定モードを押操作するごとに切換え選択するメニュースイッチ10、及び、調理モード表示部11として、煮ものモードが選択されると点灯する煮ものランプ11a、湯沸しモードが選択されると点灯する湯沸しランプ11b、温度設定モードが選択されると点灯する温度設定ランプ11cが設けられており、メニュースイッチ10の操作により、煮ものモード、湯沸しモード、温度設定モードを選択できるように構成されている。
【0057】
また、設定操作部Qには、設定された設定温度(目標加熱温度)を表示する温度表示部12tと設定された設定時間(目標加熱時間)を表示する時間表示部12hとを上下に並べる形態で備える表示部12、増減スイッチ13、当該増減スイッチ13により設定温度(目標加熱温度)を変更設定する状態と設定時間(目標加熱時間)を変更設定する状態とを切替える切替えスイッチ14が設けられ、さらには、設定された各種の情報を取り消す取消スイッチ15が設けられている。
【0058】
(煮ものモードの詳細)
煮ものモードは、コンロバーナ1を点火用火力にて燃焼させて加熱を開始し、その加熱開始後において、温度センサ7の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になると、ガス量調整弁6を操作して、コンロバーナ1の火力を弱火力(例えば、300~400kcal/h)に調整するようにし、火力調整後、設定操作部Qにて設定された設定時間(例えば、10分程度)が経過すると、コンロバーナ1を消火する処理を順次実行するモードである。
【0059】
ちなみに、上述の沸騰に対応する平衡状態の検出は、沸騰判定域(例えば、97℃から130℃の間の温度域)において、温度センサ7の検出温度の上昇速度が設定値以下となる状態が設定時間(例えば、10~30秒)継続すると、沸騰に対応する平衡状態であると判定するように構成されている。
【0060】
(湯沸しモードの詳細)
湯沸しモードは、コンロバーナ1を点火用火力にて燃焼させて加熱を開始し、その加熱開始後において、温度センサ7の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になると、ガス量調整弁6を操作して、コンロバーナ1の火力を弱火力(例えば、300~400kcal/h)に調整するようにし、火力調整後、設定操作部Qにて設定された設定時間(例えば、5分程度)が経過すると、コンロバーナ1を消火する処理を順次実行するモードである。
ちなみに、湯沸しモードにおいて、設定操作部Qにて設定時間が設定されていない場合には、沸騰に対応する平衡状態になると、コンロバーナ1を直ちに消火することになる。
【0061】
(温度設定モードの詳細)
温度設定モードは、コンロバーナ1を点火用火力にて燃焼させて加熱を開始し、その加熱開始後において、温度センサ7の検出温度が設定操作部Qにて設定された設定温度(例えば、140~230℃)になると、ガス量調整弁6を操作して、温度センサ7の検出温度を設定温度(目標加熱温度)に維持する温調制御を実行し、かつ、設定操作部Qにて設定された設定時間(例えば、5分程度)が経過すると、コンロバーナ1を消火する処理を順次実行するモードである。
【0062】
ちなみに、温度センサ7の検出温度を設定温度(目標加熱温度)に維持する温調制御としては、温度センサ7の検出温度が設定温度(目標加熱温度)になると、コンロバーナ1の火力を弱火力(例えば、300~400kcal/h)にし、その後、温度センサ7の検出温度が設定温度(目標加熱温度)より設定値低下して再点火温度(例えば、設定温度-5℃)になると、点火火力(例えば、2550kcal/h)に相当する火力に復帰させる制御として設定されている(
図5参照)。
【0063】
ちなみに、
図5に示す如く、温度センサ7の検出温度が設定温度(目標加熱温度)になって、コンロバーナ1の火力を弱火力にしても、温度センサ7の検出温度が設定温度(目標加熱温度)を超えて上昇してから再点火温度に下降することになるため、調理容器Jは、平均的には概ね設定温度(目標加熱温度)に加熱された状態に維持されることになる。
【0064】
(自動判別調理処理の詳細)
運転制御部Hが、コンロバーナ1を点火用火力にて燃焼させて加熱を開始し、その加熱開始後における温度センサ7の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になると、その平衡状態になることに基づいて、水もの調理であると判別する調理種別判別処理を実行するように構成されている。
【0065】
ちなみに、沸騰に対応する平衡状態の検出は、上述の如く、沸騰判定域(例えば、97℃から130℃の間の温度域)において、温度センサ7の検出温度の上昇速度が設定値以下となる状態が設定時間(例えば、10~30秒)継続すると、沸騰に対応する平衡状態であると判定するように構成されている(
図4参照)。
【0066】
また、運転制御部Hが、加熱開始後における温度センサ7の検出温度の上昇勾配に基づいて水もの用加熱容量を推定する水もの用容量判別処理を実行するように構成されている。
本実施形態においては、上昇勾配(水もの用上昇勾配)として、加熱開始から60秒経過するまでの温度勾配を検出するように構成されている。
【0067】
また、本実施形態においては、水もの用容量判別処理において、上昇勾配(水もの用上昇勾配)と加熱開始時に温度センサ7にて検出される初期温度とに基づいて水もの用加熱容量を推定するように構成されている。
つまり、
図6は、口径が20cmの鍋に、1リットル、1.5リットル、2リットルの水量を入れた状態において、初期温度を変化させながら、上昇勾配を計測した結果の近似式を示すグラフであるが、このグラフに示されるように、上昇勾配(水もの用上昇勾配)は、水量の変化と初期温度の変化によって変化することになる。
【0068】
したがって、運転制御部Hは、
図6の実験結果を記憶しておき、計測した上昇勾配と初期温度とに基づいて、水もの用加熱容量としての水量を判別するように構成されている。
尚、実験結果の記憶としては、上昇勾配と初期温度と水もの用加熱容量との関係を示すデータを記憶してもよいが、水もの用上昇勾配と初期温度と水もの用加熱容量との関係を示す近似式を記憶してもよい。
【0069】
本実施形態においては、水もの用容量判別処理において、水もの用加熱容量を多容量と少容量との2段階に推定するように構成されている。
つまり、計測した上昇勾配が、
図6における水量が1.5リットルの場合の線における計測した初期温度に対応する上昇勾配よりも大きいときには、水もの用加熱容量が少容量と推定し、且つ、計測した上昇勾配が、
図6における水量が1.5リットルの場合の線における計測した初期温度に対応する上昇勾配以下であるときには、水もの用加熱容量が多容量と推定するように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、水もの用加熱容量が多容量であると推定したときには、湯沸しであると推定し、水もの用加熱容量が少容量であると推定したときには、煮もの調理であると推定するように構成されている。
【0070】
また、運転制御部Hが、調理種別判別処理にて水もの調理であると判別した場合において、水もの用容量判別処理にて推定された水もの用加熱容量に基づいて水もの用目標加熱時間を設定する水もの用運転条件設定処理、及び、その後の加熱調理におけるコンロバーナの火力を点火用火力よりも低い水もの用目標火力にすべくガス量調整弁6を操作し、その後の加熱時間が水もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナ1を消火する水もの調理用制御処理を順次実行するように構成されている。
【0071】
本実施形態においては、水もの用目標火力として、弱火力(例えば、300~400kcal/h)が設定され、また、水もの用目標加熱時間として、水もの用加熱容量が多容量のときには水もの用加熱容量が少容量のときよりも長い時間にする形態で、水もの用長時間(例えば、10分)と水もの用短時間(例えば、5分)とを設定するように構成されている。
【0072】
つまり、
図4に示すように、運転制御部Hが、平衡状態を検出して水もの調理であると判別すると、コンロバーナ1の火力を点火用火力よりも低い水もの用目標火力に調整し、その後、水もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナ1を消火するように構成されている。
尚、水もの調理用制御処理の実行中において、温度センサ7の検出温度が、煮ものが焦げ付く虞がある水もの用消火温度(例えば、190℃)になると、運転制御部Hが、コンロバーナ1を消火する強制消火処理を実行するように構成されている。
【0073】
また、運転制御部Hが、加熱開始後の設定時間範囲における温度センサ7の検出温度の油もの用上昇勾配に基づいて、油もの用加熱容量を推定する油もの用容量判別処理を実行し、かつ、調理種別判別処理において、温度センサ7の検出温度が平衡状態にならない場合には、油もの調理と判別するように構成されている。
ちなみに、調理種別判別処理において、温度センサ7の検出温度が沸騰判定域(例えば、97℃から130℃の間の温度域)の上限温度を超えると、平衡状態にならない油もの調理と判別するように構成されている(
図5参照)。
【0074】
油もの用上昇勾配を計測するための加熱開始後の設定時間範囲は、本実施形態においては、加熱開始後の40秒から60秒の間に相当する範囲である。
また、油もの用上昇勾配は、水もの用上昇勾配と同様に、油もの用加熱容量の変化に加えて初期温度によって変化することになるため、油もの用容量判別処理において、油もの用上昇勾配と加熱開始時に温度センサ7にて検出される初期温度とに基づいて油もの用加熱容量を推定するように構成されている。
【0075】
つまり、図示は省略するが、口径が20cmの鍋に、異なる量の油を入れた状態において、初期温度を変化させながら、油もの用上昇勾配を計測したところ、油もの用上昇勾配は水もの用上昇勾配よりも大きな勾配となり、且つ、油量が大きいほど油もの用上昇勾配が小さくなることが分かった。
【0076】
したがって、運転制御部Hは、油もの用上昇勾配の実験結果を記憶しておき、計測した油もの用上昇勾配と初期温度とに基づいて、油もの用加熱容量としての油量を判別するように構成されている。尚、実験結果の記憶としては、油もの用上昇勾配と初期温度と油もの用加熱容量との関係を示すデータを記憶してもよいが、油もの用上昇勾配と初期温度と油もの用加熱容量との関係を示す近似式を記憶してもよい。
【0077】
ちなみに、本実施形態においては、油もの用容量判別処理において、油もの用加熱容量を多容量と少容量との2段階に推定するように構成されている。
つまり、計測した油もの上昇勾配が、油量が平均的な量である場合における上昇勾配と初期温度との関係を示す基準線における計測した初期温度に対応する油もの上昇勾配よりも大きいときには、油もの用加熱容量が少容量と推定し、且つ、計測した油もの上昇勾配が、油量が平均的な量である場合における上昇勾配と初期温度との関係を示す基準線における計測した初期温度に対応する油もの上昇勾配以下であるときには、油もの用加熱容量が多容量と推定するように構成されている。
【0078】
また、運転制御部Hが、調理種別判別処理にて油もの調理を判別した場合において、その後の加熱調理における目標加熱形態として、検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御形態を設定し、かつ、油もの用容量判別処理にて推定された油もの用加熱容量に基づいて油もの用目標加熱時間を定める油もの用運転条件設定処理、及び、目標加熱温度に維持すべく火力調節部を制御しかつ油もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナを消火する油もの調理用制御処理を実行するように構成されている。
【0079】
本実施形態においては、温調制御における目標加熱温度を、油もの調理を行うときに設定される温度範囲(例えば、例えば、140~230℃)の下限側の温度(例えば、140℃)を設定するように構成されている。
ちなみに、温調制御の具体内容は、上述した通り、温度センサ7の検出温度が目標加熱温度になると、コンロバーナ1の火力を弱火力(例えば、300~400kcal/h)にし、その後、温度センサ7の検出温度が目標加熱温度より設定値低下して再点火温度(例えば、設定温度-5℃)になると、点火火力(例えば、2550kcal/h)に相当する火力に復帰させる制御として設定されている。
【0080】
また、油もの用目標加熱時間として、油もの用加熱容量が多容量のときには油もの用加熱容量が少容量よりも長い時間とする形態で、油もの用長時間(例えば、10分)と油もの用短時間(例えば、5分)とを設定するように構成されている。
【0081】
つまり、
図5に示すように、運転制御部Hが、平衡状態を検出しない油もの調理であると判別すると、検出温度を目標加熱温度に維持する温調制御を実行し、その後、水もの用目標加熱時間に達するとコンロバーナ1を消火するように構成されている。
また、油もの調理用制御処理の実行中において、温度センサ7の検出温度が、発火する危険性がある油もの用消火温度(例えば、250℃)になると、コンロバーナ1を消火する強制消火処理を実行するように構成されている。
【0082】
(自動判別調理処理の表示について)
設定操作部Qにおける調理モード表示部11が、調理種別判別処理にて判別された調理種別が前記水もの調理であるか油もの調理であるかを表示する調理種別表示部として機能するように構成されている。
つまり、水もの用加熱容量が多容量である湯沸しであると推定したときには、湯沸しランプ11bが点灯し、水もの用加熱容量が少容量である煮もの調理であると推定したときには、煮ものランプ11aが点灯し、油もの調理であるときには、温度設定ランプ11cが点灯するように構成されている。
【0083】
また、設定操作部Qにおける時間表示部12hが、水もの調理であると判別された場合において水もの用目標加熱時間を表示し、かつ、油もの調理であると判別された場合において油もの用目標加熱時間を表示する時間表示部として機能するように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、時間表示部12hにて表示されている水もの用目標加熱時間及び油もの用目標加熱時間を、増減スイッチ13の操作によって、変更設定できるように構成されている。
【0084】
また、設定操作部Qにおける温度表示部12tが、前記油もの調理であると判別された場合において目標加熱温度を表示する温度表示部として機能するように構成されている。
ちなみに、本実施形態においては、温度表示部12tにて表示されている目標加熱温度を、増減スイッチ13の操作によって、変更設定できるように構成されている。
【0085】
(運転制御部の制御作動の詳細)
次に、運転制御部Hの制御作動をフローチャートに基づいて説明する。
図2に示すように、先ず、点火指令が指令されたか否かを判別し(#1)、点火指令が指令されないときには、点火指令が指令されるまで待機する。
【0086】
#1にて、点火指令が指令されたと判別した場合には、点火処理を実行し(#2)、続いて、調理モードが指令されているか否かを判別する(#3)。
#3にて、調理モードが指令されていると判別したときには、調理モードが煮ものモードであるか否かを判別し(#4)、煮ものモードである場合には、煮ものモードに対応する煮もの処理を実行する(#5)。
【0087】
#4にて、調理モードが煮ものモードでないと判別したときには、続いて、調理モードが湯沸しモードであるか否かを判別し(#6)、湯沸しモードである場合には、湯沸しモードに対応する湯沸し処理を実行する(#7)。
#6にて、調理モードが湯沸しモードでないと判別した場合には、調理モードが温度設定モードであるとして、温度設定モードに対応する温調処理を実行する(#8)。
【0088】
#3にて、調理モードが指令されていないと判別したときには、自動判別調理処理を実行することになる(#9)。
この自動判別調理処理は、
図3に示すように、先ず、容量判別処理を実行することになる(#11)。この容量判別処理においては、上述した水もの用容量判別処理と油もの用容量判別処理とを行うことになる。
【0089】
その後、温度センサ7の検出温度が水分の沸騰に対応する平衡状態になったか否かを判別し(#12)、平衡状態になっていないと判別したときには、温度センサ7の検出温度が沸騰判定域であるか否かを判別し(#13)、沸騰判定域である場合には、#12の処理を繰り返すことになる。
【0090】
#12にて、平衡状態になっていると判別したときには、水もの調理であるとして、水もの用運転条件設定処理を実行し(#14)、続いて、水もの調理用制御処理を実行する(#15)。
【0091】
#13にて、沸騰判定域でないと判別したときには、油もの調理であるとして、油もの用運転条件設定処理を実行し(#16)、続いて、油もの調理用制御処理を実行する(#17)。
【0092】
〔別実施形態〕
次に、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態では、水もの用容量判別処理において、加熱開始後における温度センサ7の検出温度の上昇勾配として、加熱開始から60秒経過するまでの温度勾配を検出する場合を例示したが、例えば、加熱開始から50秒経過するまでの温度勾配を検出する、又は、加熱開始から70秒経過するまでの温度勾配を検出する等、上昇勾配を検出する具体構成は各種変更できる。
【0093】
(2)上記実施形態では、水もの用容量判別処理において、加熱開始後における温度センサ7の検出温度の上昇勾配を計測して、水もの用加熱容量を推定する場合を例示したが、これに代えて、加熱開始から設定基準温度(例えば、90℃)に達するまでの経過時間を計測して、この経過時間に基づいて、水もの用加熱容量を求めるようにしてもよい。
【0094】
つまり、口径が20cmの鍋に入れる水量及び初期温度を変化させながら、加熱開始から設定基準温度(例えば、90℃)に達するまでの経過時間を計測したところ、
図7に示す実験結果を得た。
この実験結果から分かるように、初期温度と、加熱開始から設定基準温度(例えば、90℃)に達するまでの経過時間とから、水もの用加熱容量(水量)を推定できる。
【0095】
(3)上記実施形態においては、温調制御において、コンロバーナ1の火力を点火火力に相当する火力と弱火力とに切換える場合を例示したが、コンロバーナ1を点火火力に相当する火力で燃焼させる状態とコンロバーナ1を消火させる状態とに切換える形態、つまり、コンロバーナ1を間欠的に燃焼させる形態で温調させるようにしてもよい。
【0096】
(4)上記実施形態においては、調理種別判別処理において水もの調理であると判別した場合において、その後の加熱調理におけるコンロバーナ1の火力を、点火火力よりも低い弱火力に調整する場合を例示したが、水もの調理であると判別した場合において、その後の加熱調理におけるコンロバーナ1の火力としては、点火火力に相当する火力に維持させるようにする等、各種火力に設定することができる。
【0097】
(5)上記実施形態においては、水もの用目標加熱時間を、水もの用長時間と水もの用短時間との2段階に設定する場合を例示したが、水もの用加熱容量に応じて無段階や3段以上の複数段階に設定する形態で実施してもよい。
【0098】
(6)上記実施形態においては、油もの用目標加熱時間を、油もの用長時間と油もの用短時間との2段階に設定する場合を例示したが、油もの用加熱容量に応じて無段階や3段以上の複数段階に設定する形態で実施してもよい。
【0099】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 コンロバーナ
6 火力調節部
7 温度検出部
11 調理種別表示部
12h 時間表示部
12t 温度表示部
H 運転制御部
J 調理容器