(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】転写ユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20230420BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230420BHJP
G03G 15/16 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
G03G21/16 120
G03G15/00 680
G03G21/16 152
G03G15/16
(21)【出願番号】P 2019078378
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 良宏
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018393(JP,A)
【文献】特開2006-091347(JP,A)
【文献】特開2005-114793(JP,A)
【文献】特開2010-020184(JP,A)
【文献】特開2012-047977(JP,A)
【文献】特開2011-107506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して着脱可能に装着され、前記装置本体に設けられた高圧基板から電力供給を受ける転写ユニットであって、
転写ベルト、
ブラック用転写ローラと複数のカラー用転写ローラとを含み、前記転写ベルトの走行方向に並んで配置される複数の転写ローラ、
前記複数の転写ローラの一端部を支持する転写フレーム、および
ブラック用配線部材と複数のカラー用配線部材とを含み、前記装置本体に前記転写ユニットを装着したとき、前記装置本体に設けられた複数の本体側接点端子と前記複数の転写ローラとを電気的に接続する複数の配線部材を備え、
前記複数の配線部材のそれぞれは、前記装置本体に前記転写ユニットを装着したときに対応する前記本体側接点端子と当接するユニット側接点端子を一端部に有し、
前記複数の配線部材は、前記転写フレームに配線され、かつ、前記ユニット側接点端子のそれぞれが前記転写フレームの一端部にまとめて配置され、
前記ブラック用配線部材は、前記複数のカラー用配線部材が配線される面とは異なる前記転写フレームの面に配線され
、
前記複数のカラー用配線部材のそれぞれは、前記転写フレームの同じ面に配線される、転写ユニット。
【請求項2】
装置本体に対して着脱可能に装着され、前記装置本体に設けられた高圧基板から電力供給を受ける転写ユニットであって、
転写ベルト、
ブラック用転写ローラと複数のカラー用転写ローラとを含み、前記転写ベルトの走行方向に並んで配置される複数の転写ローラ、
前記複数の転写ローラの一端部を支持する転写フレーム、および
ブラック用配線部材と複数のカラー用配線部材とを含み、前記装置本体に前記転写ユニットを装着したとき、前記装置本体に設けられた複数の本体側接点端子と前記複数の転写ローラとを電気的に接続する複数の配線部材を備え、
前記複数の配線部材のそれぞれは、前記装置本体に前記転写ユニットを装着したときに対応する前記本体側接点端子と当接するユニット側接点端子を一端部に有し、
前記複数の配線部材は、前記転写フレームに配線され、かつ、前記ユニット側接点端子のそれぞれが前記転写フレームの一端部にまとめて配置され、
前記ブラック用配線部材は、前記複数のカラー用配線部材が配線される面とは異なる前記転写フレームの面に配線され
、
前記転写ユニットは、前記装置本体の前面に形成される開口部から着脱され、
前記複数の転写ローラは、前記装置本体の前後方向に延びるように配置され、
前記転写フレームは、前記複数の転写ローラの前端部を保持する前側フレームである、転写ユニット。
【請求項3】
前記複数のカラー用配線部材のそれぞれは、前記前側フレームの底面に配線され、
前記ブラック用配線部材は、前記前側フレームの前面に配線される、請求項
2記載の転写ユニット。
【請求項4】
前記ユニット側接点端子の周縁部を覆うように前記転写フレームの前記一端部に形成される突出部をさらに備える、請求項1から
3のいずれかに記載の転写ユニット。
【請求項5】
前記転写フレームの前記一端部に設けられ、前記装置本体に対して前記転写ユニットを位置決めする位置決め部をさらに備える、請求項1から
4のいずれかに記載の転写ユニット。
【請求項6】
高圧基板を備える装置本体、および
前記装置本体に対して着脱可能に装着され、前記高圧基板から電力供給を受ける請求項1から
5までのいずれかに記載の転写ユニットを備える、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は転写ユニットおよび画像形成装置に関し、特にたとえば、装置本体に対して着脱可能に装着され、装置本体に設けられた高圧基板から電力供給を受ける、転写ユニットおよびそれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の画像形成装置の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、装置本体内に設けられた高圧電源の接続端子から転写ユニットの被給電ローラ(現像ローラ、帯電ローラおよび一次転写ローラ等)の端部に取り付けられた導電性を有する軸受に給電する給電部材(配線部材)が、装置本体の開口部を開閉可能な給電用面板の面板本体内に収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写ユニットは、一般的に、YMCKの4色に対応する4つの転写ローラを備えており、これら4つの転写ローラは、装置本体に設けられた高圧基板から配線部材を介して電力供給を受ける。ここで、ブラック用転写ローラのみに電圧が印加されるモノクロ印刷時には、カラー用配線部材とブラック用配線部材との間に電位差が生じる。また、複数のカラー用転写ローラは定電圧制御され、ブラック用転写ローラのみ定電流制御されるため、印加部の抵抗値によってはブラック用配線部材の電圧が上昇してしまう。このため、カラー用配線部材とブラック用配線部材と間には、沿面距離(および空間距離)を適切に確保する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、給電用面板の面板本体内に配線部材が収容されるため、配線部材同士の沿面距離を確保することが難しい。特許文献1においては、高圧基板と4つの転写ローラとをそれぞれ連結する配線部材の配置態様は不明であるが、3枚の絶縁プレートを面板本体内に配置したり、配線部材として絶縁被覆電線を用いたりすることで、配線部材同士の短絡を防止していると思われる。しかしこれでは、部品数が多くなり、部材コストもかかる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、転写ユニットおよび画像形成装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、簡単な構成で、配線部材同士の短絡を適切に防止できる、転写ユニットおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、装置本体に対して着脱可能に装着され、装置本体に設けられた高圧基板から電力供給を受ける転写ユニットであって、転写ベルト、ブラック用転写ローラと複数のカラー用転写ローラとを含み、転写ベルトの走行方向に並んで配置される複数の転写ローラ、複数の転写ローラの一端部を支持する転写フレーム、およびブラック用配線部材と複数のカラー用配線部材とを含み、装置本体に転写ユニットを装着したとき、装置本体に設けられた複数の本体側接点端子と複数の転写ローラとを電気的に接続する複数の配線部材を備える。複数の配線部材のそれぞれは、装置本体に転写ユニットを装着したときに対応する本体側接点端子と当接するユニット側接点端子を一端部に有している。これら複数の配線部材は、転写フレームに配線され、かつ、ユニット側接点端子のそれぞれが転写フレームの一端部にまとめて配置される。そして、複数のカラー用配線部材のそれぞれは、転写フレームの同じ面に配線され、ブラック用配線部材は、複数のカラー用配線部材が配線される面とは異なる転写フレームの面に配線される。
【0009】
第1の発明によれば、カラー用配線部材とブラック用配線部材とを転写フレームの異なる面に配置するという簡単な構成で、カラー用配線部材とブラック用配線部材との沿面距離および空間距離を確保できる。したがって、配線部材同士の短絡を適切に防止できる。
また、複数の配線部材を転写フレームに配線すると共に、転写フレームの一端部にユニット側接点端子のそれぞれにまとめて配置するので、転写ユニットにおける配線経路の短縮化を図ることができ、配線部材同士の沿面距離および空間距離も確保し易くなる。また、装置本体における配線経路の短縮化および単純化を図ることもでき、装置本体側の配線を省スペースおよび低コストで実施できる。さらに、配線部材の他端部と転写ローラとの位置関係を各色において同位相とすることができ、中継部材を各色において共通化することできるので、部材コストを低減できる。
【0010】
第2の発明は、装置本体に対して着脱可能に装着され、装置本体に設けられた高圧基板から電力供給を受ける転写ユニットであって、転写ベルト、ブラック用転写ローラと複数のカラー用転写ローラとを含み、転写ベルトの走行方向に並んで配置される複数の転写ローラ、複数の転写ローラの一端部を支持する転写フレーム、およびブラック用配線部材と複数のカラー用配線部材とを含み、装置本体に転写ユニットを装着したとき、装置本体に設けられた複数の本体側接点端子と複数の転写ローラとを電気的に接続する複数の配線部材を備える。複数の配線部材のそれぞれは、装置本体に転写ユニットを装着したときに対応する本体側接点端子と当接するユニット側接点端子を一端部に有している。これら複数の配線部材は、転写フレームに配線され、かつ、ユニット側接点端子のそれぞれが転写フレームの一端部にまとめて配置される。そして、ブラック用配線部材は、複数のカラー用配線部材が配線される面とは異なる転写フレームの面に配線される。さらに、転写ユニットは、装置本体の前面に形成される開口部から着脱され、複数の転写ローラは、装置本体の前後方向に延びるように配置され、転写フレームは、複数の転写ローラの前端部を保持する前側フレームである。
【0011】
第3の発明は、第2の発明に従属し、複数のカラー用配線部材のそれぞれは、前側フレームの底面に配線され、ブラック用配線部材は、前側フレームの前面に配線される。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に従属し、ユニット側接点端子の周縁部覆うように転写フレームの一端部に形成される突出部をさらに備える。
【0013】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に従属し、転写フレームの一端部に設けられ、装置本体に対して転写ユニットを位置決めする位置決め部をさらに備える。
【0014】
第6の発明は、高圧基板を備える装置本体、および装置本体に対して着脱可能に装着され、高圧基板から電力供給を受ける第1から第5までのいずれかの発明に係る転写ユニットを備える、画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、カラー用配線部材とブラック用配線部材とを転写フレームの異なる面に配置するという簡単な構成で、カラー用配線部材とブラック用配線部材との沿面距離および空間距離を確保でき、配線部材同士の短絡を適切に防止できる。
【0016】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の第1実施例である転写ユニットを備える画像形成装置を正面側から見た内部構造を概略的に示す図解図である。
【
図2】画像形成装置の装置本体に対して転写ユニットを装着するときの様子を示す図解図である。
【
図3】転写ベルトを除いた状態の転写ユニットの前側フレーム周辺部分を示す図解図である。
【
図4】前側フレームおよび配線部材を示す正面図である。
【
図5】前側フレームおよび配線部材を示す背面図である。
【
図6】前側フレームおよび配線部材を示す底面図である。
【
図7】前側フレームおよび配線部材の一端部を示す図解図である。
【
図8】配線部材と転写ローラとの接続部分を示す図解図である。
【
図9】配線部材と本体側接点端子との接続部分を示す図解図である。
【
図10】この発明の第2実施例の転写ユニットが備える前側フレームおよび配線部材の一端部を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施例]
図1を参照して、この発明の一実施例である画像形成装置10は、装置本体12と装置本体12に対して着脱可能に装着される転写ユニット42とを備え、電子写真方式によって用紙(記録媒体)にカラー画像またはモノクロ画像を形成する。詳細は後述するように、転写ユニット42は、YMCKの4色に対応する4つの転写ローラ58を備えており、これら4つの転写ローラ58は、装置本体12に設けられた高圧基板から配線部材74を介して電力供給を受ける。
【0019】
先ず、画像形成装置10の構成について概略的に説明する。なお、この第1実施例では、画像形成装置10を操作するユーザの立ち位置に対向する面、つまり操作パネルが設けられる側の面を前面(正面)として画像形成装置10およびその構成部材の前後方向(奥行方向)を規定する。また、画像形成装置10およびその構成部材の左右方向(横方向)は、ユーザから画像形成装置10を見た状態を基準として規定する。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置10は、複写機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有するカラー複合機であって、画像形成部30を備える装置本体12と、その上方に配置される画像読取装置14とを含む。ただし、画像形成装置10は、複写機、ファクシミリおよびプリンタ等のいずれか、またはこれらの少なくとも2つを組み合わせた複合機であってもよい。
【0021】
画像読取装置14は、透明材によって形成される原稿載置台16を備える。原稿載置台16の上方には、ヒンジ等を介して原稿押えカバー18が開閉自在に取り付けられる。この原稿押えカバー18の上面には、原稿供給トレイ20が設けられており、その内部には、ADF(自動原稿送り装置)が設けられる。ADFは、原稿供給トレイ20に載置された原稿を画像読取位置22に対して1枚ずつ自動的に供給し、原稿排出トレイ24に排出する。
【0022】
また、画像読取装置14に内蔵される画像読取部26は、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える。画像読取部26は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度や色度が検出され、原稿表面の画像に基づく画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等が用いられる。
【0023】
画像読取装置14の前面側には、ユーザによる印刷指示等の入力操作を受け付ける操作パネル(図示せず)が設けられる。操作パネルは、タッチパネル付きのディスプレイおよび複数の操作ボタン等を備える。
【0024】
また、装置本体12には、CPUやメモリ等を含む制御部(図示せず)、および画像形成部30が設けられる。制御部は、操作パネルへの入力操作などに応じて、画像形成装置10の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置10に種々の動作を実行させる。
【0025】
画像形成部30は、露光ユニット32、現像器34、感光体ドラム36、クリーナユニット38、帯電器40、転写ユニット(中間転写ユニット)42、2次転写ローラ44および定着ユニット46等を備え、給紙カセット48等から搬送される用紙上に画像を形成し、画像形成済みの用紙を排紙トレイ50に排出する。用紙上に画像を形成するための画像データとしては、画像読取部26で読み取った画像データまたは外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。
【0026】
画像形成装置10において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色のカラー画像に応じたものである。このため、現像器34、感光体ドラム36、クリーナユニット38および帯電器40のそれぞれは、各色に応じた4種類の潜像を形成するように4個ずつ設けられ、これらによって4つの画像ステーションが構成される。4つの画像ステーションは、転写ベルト52の表面の走行方向(周回移動方向)に沿って1列に並んで配置され、転写ベルト52の走行方向における下流側から、つまり2次転写ローラ44に近い側から、ブラック用、シアン用、マゼンタ用およびイエロー用の順に配置される。ただし、各色の配置順は、適宜変更可能である。
【0027】
なお、符号に与えた添え字K、C、MおよびYは、いずれの色用に設けられた要素であるかを示すためのものであり、添え字K、C、MおよびYのそれぞれは、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのそれぞれを示す。ただし、各部位の説明において、いずれの色用であるかの区別を特に要する場合を除き、添え字K、C、MおよびYは適宜省略して総括的に説明する。
【0028】
感光体ドラム36は、導電性を有する円筒状の基体の表面に感光層が形成された像担持体であり、その回転軸が装置本体12の前後方向に延びるように配置される。帯電器40は、この感光体ドラム36の表面を所定の電位に帯電させる部材である。また、露光ユニット32は、レーザ出射部および反射ミラー等を備えたレーザスキャニングユニット(LSU)として構成され、帯電された感光体ドラム36の表面を露光することによって、画像データに応じた静電潜像を感光体ドラム36の表面に形成する。現像器34は、感光体ドラム36の表面に形成された静電潜像を4色(YMCK)のトナーによって顕像化するものである。また、クリーナユニット38は、現像および画像転写後における感光体ドラム36の表面に残留したトナーを除去する。
【0029】
転写ユニット42は、転写ベルト(中間転写ベルト)52、駆動ローラ54、従動ローラ56および4色に対応する4つの転写ローラ(中間転写ローラ)58等を備え、感光体ドラム36の上方に配置される。
【0030】
転写ベルト52は、可撓性を有する無端状のベルトであって、駆動ローラ54および従動ローラ56等の複数のローラによって張架されて、その表面(外周面)が感光体ドラム36の表面に当接するように配置される。そして、転写ベルト52は、駆動ローラ54の回転駆動に伴い、所定方向に周回移動する。
【0031】
転写ローラ58は、転写ベルト52を挟んで各感光体ドラム36と対向する位置のそれぞれに配置される。すなわち、4つの転写ローラ58は、転写ベルト52の走行方向に並んで配置され、各転写ローラ58の回転軸は、装置本体12の前後方向に延びる。画像形成時には、転写ローラ58に所定の電圧が印加されることによって、感光体ドラム36と転写ベルト52との間に転写電界が形成される。そして、この転写電界の作用により、各感光体ドラム36の外周面に形成されたトナー像が、周回移動する転写ベルト52の外周面に順次転写される。
【0032】
このような転写ユニット42は、装置本体12の前面に形成された開口部60(
図2参照)から転写ユニット収容部に着脱可能に装着される。詳細は後述するように、転写ユニット42を装置本体12に装着したとき、転写ユニット42に設けられた4色に対応する4つのユニット側接点端子(入力端子)78のそれぞれが、装置本体12に設けられた4つの本体側接点端子(出力端子)70のそれぞれと電気的に接続される。
【0033】
2次転写ローラ44は、駆動ローラ54の近傍において転写ベルト52を押圧するように設けられる。画像形成時には、2次転写ローラ44に所定の電圧が印加されることによって、転写ベルト52と2次転写ローラ44との間に転写電界が形成される。そして、この転写電界の作用により、転写ベルト52と2次転写ローラ44との間の転写ニップ部を用紙が通過する間に、転写ベルト52の外周面に形成されたトナー像が用紙に転写される。
【0034】
定着ユニット46は、ヒートローラおよび加圧ローラを備え、2次転写ローラ44の上方に配置される。ヒートローラは、所定の定着温度となるように設定されており、ヒートローラと加圧ローラとの間のニップ域を用紙が通過することによって、用紙に転写されたトナー像が溶融、混合および圧接されて、用紙に対してトナー像が熱定着される。
【0035】
また、装置本体12内には、給紙カセット48等から搬送される用紙をレジストローラ64、2次転写ローラ44および定着ユニット46を経由させて排紙トレイ50に送るための第1用紙搬送路L1が形成される。また、用紙に対して両面印刷を行う際に、片面印刷が終了して定着ユニット46を通過した後の用紙を、2次転写ローラ44の用紙搬送方向の上流側において第1用紙搬送路L1に戻すための第2用紙搬送路L2が形成される。この第1用紙搬送路L1および第2用紙搬送路L2には、用紙に対して補助的に推進力を与えるための複数の搬送ローラ66が適宜設けられる。
【0036】
さらに、装置本体12の左側部には、基板ユニット62が着脱可能に設けられる。基板ユニット62は、図示しない高圧基板およびこれを収容する筐体を備える。高圧基板は、商用電源からの電力供給を受けて、帯電、現像および転写時に必要な所定の電圧を各部位に出力するものである。この第1実施例では、高圧基板は、4つの転写ローラ58のそれぞれに所定の電圧を印加するための4つの出力端子(図示せず)を有しており、これら4つの出力端子は、配線部材を介して4つの本体側接点端子70のそれぞれと電気的に接続される。
【0037】
なお、カラー用転写ローラ58Y,M,Cに電圧を印加する高圧基板の3つの出力端子は、同一トランスから並列分岐されており、高圧基板は、カラー用転写ローラ58Y,M,Cのそれぞれに対して定電圧制御された電圧を印加する。一方、ブラック用転写ローラ58Kは単独で別トランスに接続されており、高圧基板は、ブラック用転写ローラ58Kに対して定電流制御された電圧を印加する。
【0038】
続いて、
図2~
図9を参照して、装置本体12に設けられた本体側接点端子70と転写ローラ58とを電気的に接続するための配線構造について説明する。
【0039】
図2に示すように、高圧基板を備える基板ユニット62は、装置本体12の左側部に装着される。また、高圧基板に繋がる4つの本体側接点端子70は、装置本体12の前面側左端部(開口部60の左側縁部)にまとめて設けられ、上側からYMCKの順で上下方向に直線状に並んで露出する。本体側接点端子70は、軸方向に伸縮可能な圧縮コイルばね部を有し、その先端部が前方に突出するように、有底円筒状の端子保持部88(
図9参照)内に伸縮可能に保持される。この本体側接点端子70は、ユニット側接点端子78と接触したときに、圧縮コイルばね部が軸方向に圧縮されることで、ユニット側接点端子78に対する付勢力を発生させる。
【0040】
図3~
図7に示すように、転写ユニット42は、ブラック用転写ローラ58Kとカラー用転写ローラ58Y,M,Cとを含む4つの転写ローラ58を備える。これら転写ローラ58の前端部は、前側フレーム72によって支持され、後端部は、図示しない後側フレームによって支持される。前側フレーム72および後側フレームは、電気絶縁性を有する合成樹脂によって形成され、4つの転写ローラ58を回転可能および変位可能に支持する。
【0041】
そして、この第1実施例では、転写ユニット42の前側フレーム72に、本体側接点端子70のそれぞれと転写ローラ58のそれぞれとを接続する4つの配線部材74がまとめて配線される。すなわち、第1実施例において、複数の転写ローラ58の一端部を支持する合成樹脂製の転写フレームは、前側フレーム72のことであり、この前側フレーム72に4つの配線部材74をそれぞれ保持する配線保持部76(
図7参照)が形成される。
【0042】
配線部材74のそれぞれは、導電性を有する1本の線材を変形加工することによって形成される。線材としては、ステンレス鋼線、硬鋼線、ピアノ線、およびオイルテンパー線などのばね鋼線材を用いるとよい。
【0043】
各配線部材74の一端部には、装置本体12に転写ユニット42を装着したときに、対応する本体側接点端子70と当接するユニット側接点端子78が形成される。ユニット側接点端子78のそれぞれは、U字状に形成され、前側フレーム72の一端部にまとめて配置される。具体的には、ユニット側接点端子78のそれぞれは、4つの本体側接点端子70のそれぞれと対応するように、前側フレーム72の背面側左端部に配置され、上側からYMCKの順で上下方向に直線状に並んで露出する。
【0044】
また、各配線部材74は、前側フレーム72の一端部(ユニット側接点端子78)から対応する転写ローラ58の近傍位置まで延びる。そして、
図8からよく分かるように、各配線部材74の他端部(中継端子80)は、U字状に形成されて、中継スプリング82および導電アーム84等の中継部材を介して転写ローラ58の軸に接続される。
【0045】
そして、この第1実施例では、3つのカラー用配線部材74Y,M,Cのそれぞれは、主として前側フレーム72の底面に並列に配線される。具体的には、カラー用配線部材74Y,M,Cは、前側フレーム72の背面側左端部に配置される一端部から右斜め下方向に延びて前側フレーム72の底面側に回り込み、そのまま前側フレーム72の底面側を通って対応するカラー用転写ローラ58Y,M,Cの近傍位置まで延びる。そして、その先において、他端部が前側フレーム72の背面側に回り込んで中継スプリング82と電気的に接続される。
【0046】
一方、ブラック用配線部材74Kは、主として前側フレーム72の前面に配線される。具体的には、前側フレーム72の背面側左端部に配置される一端部から前側フレーム72の前面側に回り込み、そのまま前側フレーム72の前面側を通ってカラー用転写ローラ58Mを超える位置まで延びる。そして、その先において、前側フレーム72の背面側に回り込んでブラック用転写ローラ58Kの近傍位置まで延び、他端部が中継スプリング82と電気的に接続される。
【0047】
このような転写ユニット42において、前側フレーム72には、装置本体12と比較して、他の高圧部品およびアース部品があまり設けられない。すなわち、前側フレーム72には、配線経路の制約が少なく、比較的自由に配線部材74を配線できる。このため、この第1実施例のように前側フレーム72に配線部材74を配線することによって、配線経路の短縮化を図ることができ、配線部材74同士の沿面距離および空間距離も確保し易くなる。
【0048】
また、前側フレーム72に配線部材74を配線することによって、配線部材74の他端部(中継端子80)と転写ローラ58との位置関係を各色において同位相とすることができる。したがって、中継スプリング82および導電アーム84等の中継部材を各色において共通化することできるので、部材コストを低減できる。
【0049】
さらに、ユニット側接点端子78を前側フレーム72の一端部にまとめて配置し、これらに対応する4つの本体側接点端子70を高圧基板の近くにまとめて配置することで、装置本体12における配線経路の短縮化および単純化を図ることができる。すなわち、装置本体12側の配線も省スペースおよび低コストで実施できる。
【0050】
さらにまた、カラー用配線部材74Y,M,Cのそれぞれを前側フレーム72の底面に配線し、ブラック用配線部材74Kを前側フレーム72の前面に配線する、すなわち、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間に転写フレーム72の樹脂壁を介在させることによって、これらの間に適切に沿面距離を確保することができる。したがって、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間の短絡を適切に防止できる。また、スペースに余裕のある前側フレーム72の底面にカラー用配線部材74Y,M,Cを近接配線することで、他アース接続部品との沿面距離も確保し易くなる。
【0051】
図4~
図7に戻って、この第1実施例では、前側フレーム72には、少なくともカラー用配線部材74Y,M,Cが並行配線される部分において、カラー用配線部材74Y,M,C間にリブ(隔壁)86が形成される。すなわち、この第1実施例では、同電位であるため大きな沿面距離が必要のないカラー用配線部材74Y,M,C間においても、リブ86を形成することでカラー用配線部材74Y,M,C間の短絡をより確実に防止するようにしている。
【0052】
また、前側フレーム72の背面側左端部には、ユニット側接点端子78の周縁部から後方に向かって突出する略円筒状の突出部90が形成される。
図9に示すように、装置本体12に転写ユニット42を装着したときには、この突出部90が装置本体12に形成された端子保持部88とオーバーラップして、端子保持部88の先端部を囲い込む。これによって、各色の本体側接点端子70とユニット側接点端子78との接点同士の沿面距離が適切に確保され、隣り合う接点間での短絡が確実に防止される。
【0053】
さらに、前側フレーム72の左端部(具体的にはユニット側接点端子78の配置位置の左隣り)には、位置決め孔92と、締結ねじ94が取り付けられるねじ取付孔96とが上下方向に並んで形成される。位置決め孔92は、装置本体12に形成される図示しない位置決めボスと嵌め合わされることで、装置本体12に対して転写ユニット42を位置決めするための部位(位置決め部)である。ただし、前側フレーム72側に位置決めボスが形成されてもよい。また、締結ねじ94は、装置本体12に対して転写ユニット42を固定するための固定部材である。
【0054】
このように、位置決めボスおよび位置決め孔92に近い位置に本体側接点端子70およびユニット側接点端子78を4色集中配置することによって、各接点端子同士の位置関係を安定させることができる。また、締結ねじ94に近い位置に本体側接点端子70およびユニット側接点端子78を4色集中配置することによって、前側フレーム72は、本体側接点端子70からの加圧による撓み等に強くなり、転写ユニット42の姿勢を安定させることができる。
【0055】
以上のように、この第1実施例によれば、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとを前側フレーム72の異なる面に配置するという簡単な構成で、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの沿面距離および空間距離を確保でき、配線部材74同士の短絡を適切に防止できる。
【0056】
また、この第1実施例によれば、複数の配線部材74を前側フレーム72に配線すると共に、前側フレーム72の一端部にユニット側接点端子78をまとめて配置するので、転写ユニット42における配線経路の短縮化を図ることができ、配線部材74同士の沿面距離および空間距離も確保し易くなる。また、装置本体12における配線経路の短縮化および単純化を図ることもでき、装置本体12側の配線を省スペースおよび低コストで実施できる。さらに、配線部材74の他端部と転写ローラ58との位置関係を各色において同位相とすることができ、中継部材を各色において共通化することできるので、部材コストを低減できる。
【0057】
[第2実施例]
次に、
図10を参照して、この発明の第2実施例である転写ユニット42について説明する。この第2実施例では、カラー用配線部材74Y,M,Cおよびブラック用配線部材74Kを配線する前側フレーム72の面が上述の第1実施例と異なる。それ以外は第1実施例と同じであるので、重複する説明は省略する。重複する説明を省略することは、他の実施例においても同様である。
【0058】
図10に示すように、この第2実施例では、3つのカラー用配線部材74Y,M,Cのそれぞれは、主として前側フレーム72の前面に配線される。一方、ブラック用配線部材74Kは、主として前側フレーム72の底面に配線される。また、ユニット側接点端子78のそれぞれは、前側フレーム72の背面側左端部において、上側からKCMYの順で上下方向に直線状に並んで配置される。
【0059】
この第2実施例においても、第1実施例と同様の作用効果を奏し、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間に適切に沿面距離を確保することができ、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間の短絡を適切に防止できる。
【0060】
[第3実施例]
図示は省略するが、第3実施例では、3つのカラー用配線部材74Y,M,Cのそれぞれは、主として前側フレーム72の底面に配線される。一方、ブラック用配線部材74Kは、主として前側フレーム72の上面に配線される。また、ユニット側接点端子78のそれぞれは、前側フレーム72の背面側左端部において、上側からKCMYの順で上下方向に直線状に並んで配置される。
【0061】
この第3実施例によれば、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間により適切に沿面距離を確保することができ、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間の短絡を適切に防止できる。
【0062】
[第4実施例]
図示は省略するが、第4実施例では、3つのカラー用配線部材74Y,M,Cのそれぞれは、主として前側フレーム72の前面に配線される。一方、ブラック用配線部材74Kは、主として前側フレーム72の上面に配線される。また、ユニット側接点端子78のそれぞれは、前側フレーム72の背面側左端部において、上側からKCMYの順で上下方向に直線状に並んで配置される。
【0063】
この第4実施例においても、第3実施例と同様の作用効果を奏し、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間により適切に沿面距離を確保することができ、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとの間の短絡を適切に防止できる。
【0064】
なお、上述の各実施例では、前側フレーム72に各配線部材74を配線するようにしたが、後側フレームに各配線部材74を配線することもできる。つまり、この発明における複数の転写ローラ58の一端部を支持する合成樹脂製の転写フレームは、後側フレームであってもよい。後側フレームに各配線部材74を配線する場合にも、ユニット側接点端子78のそれぞれが後側フレームの一端部にまとめて配置されると共に、カラー用配線部材74Y,M,Cとブラック用配線部材74Kとは後側フレームの異なる面に配置される。たとえば、カラー用配線部材74Y,M,Cは主として後側フレームの底面に配線され、ブラック用配線部材74Kは主として後側フレームの背面に配線される。
【0065】
後側フレームには、装置本体12と比較して、他の高圧部品およびアース部品があまり設けられない。このため、後側フレームに配線部材74を配線することによって、前側フレーム72の場合と同様に、配線経路の短縮化を図ることができ、配線部材74同士の沿面距離および空間距離も確保し易くなる。ただし、本体側接点端子70とユニット側接点端子78との位置決めのし易さ等を考慮すると、前側フレーム72に各配線部材74を配線する方が好ましい。
【0066】
なお、上で挙げた具体的な数値および部品形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 …画像形成装置
12 …装置本体
14 …画像読取装置
30 …画像形成部
42 …転写ユニット
62 …基板ユニット
70 …本体側接点端子
72 …前側フレーム(転写フレーム)
74 …配線部材
78 …ユニット側接点端子