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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/365 20180101AFI20230420BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20230420BHJP
   F21S 41/19 20180101ALI20230420BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20230420BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20230420BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20230420BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230420BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20230420BHJP
【FI】
F21S41/365
F21S41/33
F21S41/19
F21S41/663
F21S41/143
F21W102:135
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019081103
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020177864
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】芥川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】秋山 良昭
(72)【発明者】
【氏名】関口 達也
(72)【発明者】
【氏名】大野 克司
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-181314(JP,A)
【文献】特開2018-037361(JP,A)
【文献】特開2008-041557(JP,A)
【文献】特開2010-170811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/365
F21S 41/33
F21S 41/19
F21S 41/663
F21S 41/143
F21W 102/135
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に向けてロービームとハイビームとを切り替え自在に照射する車両用前照灯であって、
前記ロービームとなる光を出射するロービーム用光源及び前記ハイビームとなる光を出射するハイビーム用光源を含む光源ユニットと、
前記光源ユニットの前方に配置されて、前記光源ユニットから出射された光を前記光源ユニットの周囲に向けて反射する第1のリフレクタと、
前記光源ユニットの周囲に配置されて、前記第1のリフレクタで反射された光を前記車両の前方に向けて反射する第2のリフレクタとを備え、
前記第1のリフレクタは、前記ロービーム用光源から出射される光の光軸を挟んで上下対称に配置される一対の回転楕円反射面を含み、
前記第2のリフレクタは、回転放物系反射面を含み、
前記回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面に位置し、
前記回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに一致した位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面のうち、一方の回転楕円反射面の第1焦点と、他方の回転楕円反射面の第1焦点とが、前記ロービーム用光源の発光面における中心を挟んだ幅方向の両側にあり、
前記一方の回転楕円反射面の第2焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第2焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記一方の回転楕円反射面の第2焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第2焦点とが、互いに重なった位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに重なった位置にあることを特徴とする請求項に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記ロービーム用光源の発光面は、矩形状を有し、
前記一方の回転楕円反射面の第1焦点と、他方の回転楕円反射面の第1焦点とが、前記ロービーム用光源の発光面における上側の両端角部にあることを特徴とする請求項又はに記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記第1のリフレクタは、前記一対の回転楕円反射面の間に配置された中央の回転楕円反射面を含み、
前記中央の回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面における前記一方の回転楕円反射面の第1焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第1焦点との間にあり、
前記中央の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記ロービーム用光源の発光面は、矩形状を有し、
前記中央の回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面における上側の中央端部にあることを特徴とする請求項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記回転楕円反射面は、前記ロービーム用光源から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線を挟んで左右対称に分割された反射領域を含むことを特徴とする請求項の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記第1のリフレクタは、前記反射領域により反射された光を前記第2のリフレクタに向けて通過させる一対の貫通孔を有することを特徴とする請求項に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記第2のリフレクタは、前記光源ユニットを挟んだ幅方向の両側に左右対称に配置されていることを特徴とする請求項の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記第2のリフレクタは、前記回転放物系反射面に入射した光を前記車両の幅方向に拡散しながら反射する光拡散形状を有することを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
前記光源ユニットは、前記第1のリフレクタ及び前記第2のリフレクタが収容された灯体の背面側に設けられた取付孔から前記灯体の内側に挿入された状態で、前記取付孔の周囲に着脱自在に取り付けられるカプラー付ソケットにより構成されていることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
前記カプラー付ソケットは、前記ロービーム用光源及び前記ハイビーム用光源の各光源が実装された第1の基板と、前記各光源を駆動する駆動回路が設けられた第2の基板と、前記各光源が発する熱を放熱させる放熱部が設けられた第1の筐体と、前記第1の基板及び前記第2の基板と電気的に接続されるコネクタ部が設けられた第2の筐体とを備えることを特徴とする請求項10に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動二輪車や自動三輪車などの鞍乗型車両がある。鞍乗型車両の前側中央部に搭載される車両用前照灯(ヘッドランプ)では、自動四輪車と同様に、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するすれ違い用ビーム(ロービーム)と、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成する走行用ビーム(ハイビーム)とを、それぞれ車両の前方(車両進行方向)に向けて切り替え自在に照射する。
【0003】
このような鞍乗型車両に搭載される車両用前照灯は、前面が開口したハウジングと、ハウジングの開口を覆うレンズカバーとにより構成される灯体の内側に、ロービーム用光源及びハイビーム用光源と、リフレクタとを配置し、それぞれの光源から出射された光をリフレクタにより反射しながら、車両の前方に向けて照射する構成となっている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-171710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した鞍乗型車両に搭載される車両用前照灯では、ロービーム用光源とハイビーム用光源とを灯体の内側に別々に配置し、それぞれの光源に合わせて配置されたリフレクタによって、それぞれ異なる位置からロービームとハイビームとを車両の前方に向けて照射する構成となっている。
【0006】
また、リフレクタは、その前方を除く光源の周囲を囲むように、光源の中心(発光点)を焦点とする回転放物系反射面により構成されている。これにより、リフレクタは、光源から出射された光を車両の前方に向けて上下方向においてコリメートしながら反射している。
【0007】
しかしながら、従来の車両用前照灯では、光源から出射された光のうち、リフレクタの反射面に入射する光は50%程度である。一方、残りの光はリフレクタに入射することなく、リフレクタの前面側から外部へと漏れ出す光となっている。このため、光源から出射された光の利用効率が悪くなっている。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、光の利用効率が高い車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 車両の前方に向けてロービームとハイビームとを切り替え自在に照射する車両用前照灯であって、
少なくとも前記ロービームとなる光を出射するロービーム用光源及び前記ハイビームとなる光を出射するハイビーム用光源を含む光源ユニットと、
前記光源ユニットの前方に配置されて、前記光源ユニットから出射された光を前記光源ユニットの周囲に向けて反射する第1のリフレクタと、
前記光源ユニットの周囲に配置されて、前記第1のリフレクタで反射された光を前記車両の前方に向けて反射する第2のリフレクタとを備え、
前記第1のリフレクタは、前記ロービーム用光源から出射される光の光軸を挟んで上下対称に配置される一対の回転楕円反射面を含み、
前記第2のリフレクタは、回転放物系反射面を含み、
前記回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面に位置し、
前記回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに一致した位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面のうち、一方の回転楕円反射面の第1焦点と、他方の回転楕円反射面の第1焦点とが、前記ロービーム用光源の発光面における中心を挟んだ幅方向の両側にあり、
前記一方の回転楕円反射面の第2焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第2焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあることを特徴とする車両用前照灯
〕 前記一方の回転楕円反射面の第2焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第2焦点とが、互いに重なった位置にあり、
前記一対の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに重なった位置にあることを特徴とする前記〔〕に記載の車両用前照灯。
〕 前記ロービーム用光源の発光面は、矩形状を有し、
前記一方の回転楕円反射面の第1焦点と、他方の回転楕円反射面の第1焦点とが、前記ロービーム用光源の発光面における上側の両端角部にあることを特徴とする前記〔〕又は〔〕に記載の車両用前照灯
〕 前記第1のリフレクタは、前記一対の回転楕円反射面の間に配置された中央の回転楕円反射面を含み、
前記中央の回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面における前記一方の回転楕円反射面の第1焦点と、前記他方の回転楕円反射面の第1焦点との間にあり、
前記中央の回転楕円反射面の第2焦点と、前記回転放物系反射面の焦点とが、互いに前後方向及び上下方向において一致した位置にあることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用前照灯。
〕 前記ロービーム用光源の発光面は、矩形状を有し、
前記中央の回転楕円反射面の第1焦点が、前記ロービーム用光源の発光面における上側の中央端部にあることを特徴とする前記〔〕に記載の車両用前照灯。
〕 前記回転楕円反射面は、前記ロービーム用光源から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線を挟んで左右対称に分割された反射領域を含むことを特徴とする前記〔〕~〔〕の何れか一項に記載の車両用前照灯。
〕 前記第1のリフレクタは、前記反射領域により反射された光を前記第2のリフレクタに向けて通過させる一対の貫通孔を有することを特徴とする前記〔〕に記載の車両用前照灯。
〕 前記第2のリフレクタは、前記光源ユニットを挟んだ幅方向の両側に左右対称に配置されていることを特徴とする前記〔〕~〔〕の何れか一項に記載の車両用前照灯。
〕 前記第2のリフレクタは、前記回転放物系反射面に入射した光を前記車両の幅方向に拡散しながら反射する光拡散形状を有することを特徴とする前記〔1〕~〔〕の何れか一項に記載の車両用前照灯。
10〕 前記光源ユニットは、前記第1のリフレクタ及び前記第2のリフレクタが収容された灯体の背面側に設けられた取付孔から前記灯体の内側に挿入された状態で、前記取付孔の周囲に着脱自在に取り付けられるカプラー付ソケットにより構成されていることを特徴とする前記〔1〕~〔〕の何れか一項に記載の車両用前照灯。
〔11〕 前記カプラー付ソケットは、前記ロービーム用光源及び前記ハイビーム用光源の各光源が実装された第1の基板と、前記各光源を駆動する駆動回路が設けられた第2の基板と、前記各光源が発する熱を放熱させる放熱部が設けられた第1の筐体と、前記第1の基板及び前記第2の基板と電気的に接続されるコネクタ部が設けられた第2の筐体とを備えることを特徴とする前記〔10〕に記載の車両用前照灯。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、光の利用効率が高い車両用前照灯を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の第1の実施形態に係る車両用前照灯の構成を示す正面図である。
図2図1中に示す線分A-Aによる車両用前照灯の断面図である。
図3図1に示す車両用前照灯が備える光源ユニットの構成を示す断面図である。
図4図1に示す車両用前照灯が備える第1のリフレクタ及び光源ユニットを示す透視斜視図である。
図5】第1のリフレクタを構成する一対の回転楕円反射面の第1焦点と、光源ユニットを構成するロービーム用光源及びハイビーム用光源の発光面との位置を示す平面図である。
図6】第1のリフレクタを構成する回転楕円反射面の4つの反射領域により反射された光の光源像と、これらの光源像を合成した光源像とを示す模式図である。
図7】比較対象となる第1のリフレクタ及び光源ユニットを示す透視斜視図である。
図8図7に示す第1のリフレクタを構成する回転楕円反射面の第1焦点と、光源ユニットを構成するロービーム用光源及びハイビーム用光源の発光面との位置を示す平面図である。
図9図7に示す第1のリフレクタを用いた場合の光の光源像を示す模式図である。
図10】本実施形態の第2の実施形態に係る車両用前照灯の構成を示す正面図である。
図11図10中に示す線分C-Cによる車両用前照灯の断面図である。
図12図10に示す車両用前照灯が備える第1のリフレクタ及び光源ユニットを示す透視斜視図である。
図13】第1のリフレクタを構成する一対の回転楕円反射面及び中央の回転楕円反射面の第1焦点と、光源ユニットを構成するロービーム用光源及びハイビーム用光源の発光面との位置を示す平面図である。
図14】第1のリフレクタを構成する一対の回転楕円反射面及び中央の回転楕円反射面により反射された光の光源像と、これらの光源像を合成した光源像とを示す模式図である。
図15】比較対象となる第1のリフレクタを示す透視斜視図である。
図16図15に示す第1のリフレクタを構成する回転楕円反射面の第1焦点と、光源ユニットを構成するロービーム用光源及びハイビーム用光源の発光面との位置を示す平面図である。
図17図15に示す第1のリフレクタを用いた場合の光の光源像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1図5に示す車両用前照灯1Aについて説明する。
なお、図1は、車両用前照灯1Aの構成を示す正面図である。図2は、図1中に示す線分A-Aによる車両用前照灯1Aの断面図である。図3は、車両用前照灯1Aが備える光源ユニット5の構成を示す断面図である。図4は、車両用前照灯1Aが備える第1のリフレクタ6及び光源ユニット5を示す透視斜視図である。図5は、第1のリフレクタ6を構成する一対の回転楕円反射面6a,6bの第1焦点F1a,F1bと、光源ユニット5を構成するロービーム用光源8及びハイビーム用光源9の発光面8a,9aとの位置を示す平面図である。
【0014】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用前照灯1Aの前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両用前照灯1Aの左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用前照灯1Aの上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0015】
本実施形態の車両用前照灯1Aは、例えば、自動二輪車や自動三輪車などの鞍乗型車両(図示せず。)の前側中央部に搭載される鞍乗型車両用灯具のうち、車両の前方に向けてロービームとハイビームとを切り替え自在に照射するヘッドランプに本発明を適用したものである。
【0016】
なお、以下の説明において、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用前照灯1Aを正面(車両前方)から見たときのそれぞれの方向を意味するものとする。
【0017】
本実施形態の車両用前照灯1Aは、図1及び図2に示すように、前面が開口したハウジング2と、このハウジング2の開口を覆う透明なレンズカバー3とにより構成される灯体4を備えている。なお、灯体4の形状については、鞍乗型車両のデザイン等に合わせて、適宜変更することが可能である。
【0018】
鞍乗型車両用灯具1は、この灯体4の内側に、光源ユニット5と、第1のリフレクタ6と、第2のリフレクタ7とを備えている。
【0019】
光源ユニット5は、図2に示すように、ロービーム用光源8とハイビーム用光源9とを搭載したカプラー付ソケットであり、灯体4の背面側に設けられた取付孔10に着脱自在に取り付けられている。
【0020】
具体的に、この光源ユニット5は、取付孔10に対する抜け止めとなる複数の爪部11を有し、その前面側を取付孔10に嵌め込みながら周方向に回転させることで、その外周に取り付けられたリング状のパッキン(Oリング)12を介して取付孔10の周囲に着脱自在に取り付けられている。
【0021】
これにより、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、灯体4に対して光源ユニット5が交換(取替)可能に取り付けられている。したがって、例えばロービーム用光源8やハイビーム用光源9に不具合等が生じた場合でも、光源ユニット5のみを交換すればよい。
【0022】
本実施形態の車両用前照灯1Aでは、このようなカプラー付ソケットを構成する光源ユニット5を備えることで、メンテナンス等における作業性を向上させると共に、メンテナンス等にかかるコストを低減することが可能である。
【0023】
光源ユニット5は、図3に示すように、ロービーム用及びハイビーム用光源8,9が実装された第1の基板13と、各光源8,9を駆動する駆動回路14が設けられた第2の基板15と、各光源8,9が発する熱を放熱させる放熱部16が設けられた第1の筐体17と、第1の基板13及び第2の基板14と電気的に接続されるコネクタ部18が設けられた第2の筐体19とを備えている。
【0024】
ロービーム用及びハイビーム用光源8,9は、例えば白色光を発するLEDからなる。また、LEDには、車両照明用の高出力(高輝度)タイプのもの(例えばSMD LEDなど。)を使用することができる。
【0025】
ロービーム用光源8は、矩形状(本実施形態では横長の長方形状)の発光面8aを有して、第1の基板13の前面側に実装されている。ロービーム用光源8は、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するすれ違い用ビーム(ロービーム)となる光を車両の前方に向かって放射状に出射する。
【0026】
ハイビーム用光源9は、矩形状(本実施形態では横長の長方形状)の発光面9aを有して、第1の基板13の前面側に実装されている。また、ハイビーム用光源9は、ロービーム用光源8よりも上方に配置されている。ハイビーム用光源9は、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成する走行用ビーム(ハイビーム)となる光を車両の前方に向かって放射状に出射する。
【0027】
なお、ロービーム用及びハイビーム用光源8,9については、光を放射状に出射するものであればよく、上述したLEDの他にも、例えばレーザーダイオード(LD)などの発光素子を用いることも可能である。また、ロービーム用及びハイビーム用光源8,9が発する光の色については、上述した白色光に限らず、例えば黄色光などに変更することも可能である。
【0028】
第1の基板13は、矩形平板状のプリント配線基板(PWB)であり、絶縁基板の一面(表面)にロービーム用及びハイビーム用光源8,9と電気的に接続される配線(図示せず。)が設けられた片面配線基板からなる。
【0029】
第1の基板13には、厚み方向に貫通する複数の第1の孔部13aが設けられている。第1の孔部13aは、後述するコネクタ部18のリード端子18aが挿入される部分であり、この第1の孔部13aの周囲には、上述した各光源8,9と電気的に接続される配線の一部を形成するランド(図示せず。)が設けられている。
【0030】
第2の基板15は、第1の基板13よりも大きい矩形平板状のプリント回路基板(PCB)であり、上述したPWBに駆動回路14を構成する実装部品(図示せず。)が実装された構造を有している。第2の基板15は、絶縁基板の少なくとも一面(表面)又は両面(表面及び裏面)に実装部品と電気的に接続される配線(図示せず。)が設けられた片面又は両面配線基板からなる。
【0031】
第2の基板15には、厚み方向に貫通する複数の第2の孔部15aが設けられている。第2の孔部15aは、後述するコネクタ部18のリード端子18aが挿入される部分であり、この第2の孔部15aの周囲には、上述した駆動回路14を構成する実装部品と電気的に接続される配線の一部を形成するランド(図示せず。)が設けられている。
【0032】
第1の筐体17は、略円形平板状の前壁部17aと、前壁部17aの前面側及び背面側の周囲を囲む略円筒状の周壁部17bと、周壁部17bの背面側から径径方向に突出された略円環平板状の拡径部17cと、拡径部17cの背面側の周囲を囲む略円筒状の延長部17dとを有している。また、拡径部17cの背面には、四隅が丸みを帯びた略矩形筒状の嵌合凸部17eが突出して設けられている。複数の爪部11は、周壁部17bの外周から突出して設けられている。パッキン12は、拡径部17cの外周に取り付けられている。
【0033】
放熱部16は、各光源8,9が発する熱を外部に効率良く放熱させるため、第1の筐体17の少なくとも一部又は全部において、熱電導性の高い金属材料や樹脂材料、これらの複合材料などを用いることによって構成されている。すなわち、放熱部16は、第1の筐体17に放熱部材(ヒートシンク)を取り付けられた構成や、第1の筐体17自体を放熱部材(ヒートシンク)とした構成とすることが可能である。
【0034】
第1の筐体17には、前壁部17aを貫通する複数の第3の孔部17fが設けられている。第3の孔部17fは、後述するコネクタ部18のリード端子18aを非接触な状態で貫通させるため、第1の孔部13aよりも大きな径を有している。なお、第3の孔部17fについては、必ずしもリード端子18aの数に合わせて設ける必要はなく、複数のリード端子18aを非接触な状態で貫通させる1つの孔部(開口部)として形成することも可能である。
【0035】
第2の筐体19は、四隅が丸みを帯びた略矩形平板状の後壁部19aと、後壁部19aの背面側に位置して四隅が丸みを帯びた略矩形筒状のソケット部19bと有している。また、後壁部19aの前面には、四隅が丸みを帯びた略矩形枠状の嵌合凹部19cが設けられている。
【0036】
また、第2の筐体19は、後壁部19aの前面から突出された台座部19dを有している。台座部19dは、後壁部19aの中央部に位置して、後壁部19aの前面よりも一段高くなる平面視で円形状の段差面を形成している。また、台座部19dの中央部には、円柱状の突起部19eが突出して設けられている。一方、第2の基板15の中央部には、この突起部19eを貫通させる第4の孔部15bが設けられている。
【0037】
コネクタ部18は、ソケット部19bの内側に複数のリード端子18aを有している。各リード端子18aは、後壁部19aを前後方向に貫通した状態で、第2の筐体19に一体に取り付けられている。また、複数のリード端子18aは、後壁部19aの前面側において相対的に長くなるリード端子19aと、後壁部9aの前面側において相対的に短くなるリード端子19aとを有している。
【0038】
以上のような構成を有する光源ユニット5において、第2の基板15は、第4の孔部15bに突起部19eを貫通させた状態で、この突起部19eの先端を熱カシメすることによって、台座部19dの段差面上に取り付けられている。
【0039】
また、第2の基板15は、各第2の孔部15aにリード端子18aをそれぞれ貫通させた状態で、各第2の孔部15aの周囲にあるランドと、リード端子18aとをはんだにより固定することによって、リード端子18aと電気的に接続されている。
【0040】
これにより、第2の筐体19の前面側に第2の基板15が取り付けられた状態となっている。この状態から、第2の筐体19の前面側に設けられた嵌合凹部19cに、第1の筐体17の背面側に設けられた嵌合凸部17eが嵌合された状態で、嵌合凹部19cに注入された接着剤Sによって、嵌合凹部19cに嵌合された嵌合凸部17eが全周に亘って固定されている。
【0041】
これにより、第1の筐体17の背面側と第2の筐体19の前面側とが一体に取り付けられた状態となっている。また、この状態において、第2の基板15は、第1の筐体17の周壁部17bとは非接触な状態で、前壁部17aの背面と空間を隔てて対向して配置されている。また、各第3の孔部14aは、上述した長い方のリード端子18aを非接触な状態で貫通させている。
【0042】
この状態から、第1の基板13は、熱伝導性の高い接着剤(図示せず。)を用いて、前壁部17aの前面に取り付けられている。また、第1の基板13は、前壁部17aが金属などの導電性材料からなる場合、第1の筐体17とは電気的に絶縁された状態で取り付けられる。
【0043】
また、第1の基板13は、各第1の孔部13aに長い方のリード端子18aをそれぞれ貫通させた状態で、各第1の孔部13aの周囲にあるランドと、長い方のリード端子18aとをはんだにより固定することによって、長い方のリード端子19aと電気的に接続されている。
【0044】
これにより、複数のリード端子19aのうち、長い方のリード端子19aは、第1の基板13及び第2の基板15に設けられた配線のうち、各光源8,9及び駆動回路14に給電するための給電線及び接地線と電気的に接続されている。一方、短い方のリード端子19aは、第2の基板15に設けられた配線のうち、駆動回路14に制御信号を伝送するための制御線と電気的に接続されている。
【0045】
第1のリフレクタ6は、図1図2図4及び図5に示すように、光源ユニット5の前方に配置されて、光源ユニット5から出射された光Lを光源ユニット5の周囲に向けて反射する。具体的に、この第1のリフレクタ6は、ロービーム用光源8から出射される光の光軸を挟んで左右対称となる一対の回転楕円反射面6a,6bを有している。
【0046】
一対の回転楕円反射面6a,6bは、その下方を除く光源ユニット5の周囲を囲むように、2つの焦点を持つ楕円線の一部を回転させることによって得られる凹面状の反射面である。
【0047】
一対の回転楕円反射面6a,6bのうち、一方の回転楕円反射面6aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面6bの第1焦点F1bとは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける中心を挟んだ幅方向の両側に位置している。具体的に、一方の回転楕円反射面6aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面6bの第1焦点F1bとは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の両端角部に位置している。
【0048】
また、一対の回転楕円反射面6a,6bは、ロービーム用光源8から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線に対して直交する左右方向の分割線を挟んで4つの反射領域61a,62a,61b,62bに分割されている。
【0049】
具体的に、一方の回転楕円反射面6aは、上下方向において第1の反射領域61aと第2の反射領域62aとに分割されている。他方の回転楕円反射面6bは、上下方向において第3の反射領域61bと第4の反射領域62bとに分割されている。また、第1の反射領域61aと第3の反射領域61bとは、左右対称に配置されている。同様に、第2の反射領域62aと第4の反射領域62bとは、左右対称に配置されている。
【0050】
但し、第1の反射領域61aと第2の反射領域62aとは、左右で逆側に配置されている。また、第3の反射領域61bと第4の反射領域62bとは、左右で逆側に配置されている。すなわち、焦点F1a,F1bが一致している同一の回転楕円反射面6a,6bの一部である第1の反射領域61aと第2の反射領域62aと(及び第1の反射領域61aと第2の反射領域62aとは異なる位置の第1焦点F1a,F1bを有する回転楕円反射面6a,6bの一部である第3の反射領域61bと第4の反射領域62bと)は、上下方向の中心線と左右方向の分割線との交点を挟んで斜めに位置している。
【0051】
4つの反射領域61a,62a,61b,62bのうち、上側の第2の反射領域62a及び第4の反射領域62bには、ロービーム用光源8から出射される光の光軸に対して光線角度が大きくなる光が入射する。
【0052】
第1のリフレクタ6において、一方の回転楕円反射面6a(第1及び第2の反射領域61a,62a)の第2焦点F2aと、他方の回転楕円反射面6b(第3及び第4の反射領域61b,62b)の第2焦点F2bとは、互いに一致した位置にある。
【0053】
これにより、第1のリフレクタ6は、一対の回転楕円反射面6a,6bに入射した光Lを互いに一致した第2焦点F2a,F2bに向けて集光しながら、下方の第2のリフレクタ7に向けて反射する。
【0054】
第2のリフレクタ7は、図1及び図2に示すように、光源ユニット5の周囲に配置されて、第1のリフレクタ6で反射された光Lを車両の前方に向けて反射する。具体的に、この第2のリフレクタ7は、光源ユニット5の下方に配置されている。また、第2のリフレクタ7は、第1のリフレクタ1の一対の回転楕円放物面6a,6bと向かい合う回転放物系反射面7aを有している。
【0055】
なお、第2のリフレクタ7については、上述した光源ユニット5の下方に配置された構成に限らず、光源ユニット5の上方に配置した構成とすることも可能である。その場合、第1のリフレクタ6は、上方の第2のリフレクタ7に向けて反射する構成とすればよい。
【0056】
回転放物系反射面7aは、互いに一致した回転楕円反射面6a,6bの第2焦点F2a,F2bを焦点F3とする放物線の一部を回転させることによって得られる凹面状の反射面である。すなわち、この回転放物系反射面7aの焦点F3と、一対の回転楕円反射面6a,6bの第2焦点F2a,F2bとは、互いに一致した位置にある。
【0057】
これにより、第2のリフレクタ7は、回転放物系反射面7aに入射した光Lを車両の前方に向けて上下方向においてコリメートしながら反射する。
【0058】
また、第2のリフレクタ7は、回転放物系反射面7aに入射した光Lを車両の幅方向に拡散しながら反射する光拡散形状を有している。具体的に、この第2のリフレクタ7は、回転放物系反射面7aを複数の反射領域に分割するマルチリフレクタ形状とすることによって、各反射領域に入射した光の反射方向を制御し、この回転放物系反射面7aに入射した光Lを車両の幅方向に拡散しながら反射することが可能となっている。
【0059】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用前照灯1Aでは、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、ロービーム用光源8から出射される光を第1のリフレクタ6及び第2のリフレクタ7により反射しながら、車両の前方に向けて照射する。これにより、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0060】
一方、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、走行用ビーム(ハイーム)として、ハイビーム用光源9から出射される光を第1のリフレクタ6及び第2のリフレクタ7により反射しながら、車両の前方に向けて照射する。これにより、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0061】
本実施形態の車両用前照灯1Aでは、上述したロービーム用及びハイビーム用光源8,9とを搭載したカプラー付ソケットを構成する光源ユニット5を備えることで、部品点数の削減を図るだけでなく、灯体4をよりコンパクトに設計することが可能である。
【0062】
また、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、上述した光源ユニット5から出射された光Lを第1のリフレクタ6の一対の回転楕円反射面6a,6b(第1~第4の反射領域61a,62a,61b,62b)により第2のリフレクタ7に向けて効率良く反射し、この光Lを第2のリフレクタ7の回転楕円放物面7aにより車両の前方に向けて効率良く反射することができる。これにより、光源ユニット5から出射された光Lの利用効率を高めることが可能である。
【0063】
また、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、上述した一方の回転楕円反射面6aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面6bの第1焦点F1bとを、ロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の両端角部に位置させることで、シェードを用いることなく、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成することが可能である。
【0064】
ここで、第1のリフレクタ6を構成する回転楕円反射面6a,6bの4つの反射領域61a,62a,61b,62bにより反射された光の光源像と、これらの光源像を合成した光源像とを図6(a)~(e)に示す。
【0065】
なお、図6(a)は、第2の反射領域62aにより反射された光の光源像及び一方の回転楕円反射面6aの第1焦点F1aを示す模式図である。図6(b)は、第4の反射領域62bにより反射された光の光源像及び他方の回転楕円反射面6bの第1焦点F1bを示す模式図である。図6(c)は、第1の反射領域61aにより反射された光の光源像及び一方の回転楕円反射面6aの第1焦点F1aを示す模式図である。図6(d)は、第3の反射領域61bにより反射された光の光源像及び他方の回転楕円反射面6bの第1焦点F1bを示す模式図である。図6(e)は、図6(a)~(d)に示す光源像を合成した光源像である。
【0066】
一方、比較対象として、図7に示す第1のリフレクタ60を用いた場合の光の光源像について、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0067】
なお、図7は、比較対象となる第1のリフレクタ60及び光源ユニット5を示す透視斜視図である。図8は、第1のリフレクタ60を構成する回転楕円反射面60aの第1焦点F1と、光源ユニット5を構成するロービーム用光源8及びハイビーム用光源9の発光面8a,9aとの位置を示す平面図である。図9は、第1のリフレクタ60により反射された光の光源像を示す模式図である。
【0068】
比較対象となる第1のリフレクタ60は、図8に示すように、ロービーム用光源8の中心(発光面8aの中央部)を第1焦点F1とし、回転放物系反射面7aの焦点F3を第2焦点(図示せず。)とする回転楕円反射面60aを有している。
【0069】
第1のリフレクタ60を用いた場合、上述した第1のリフレクタ6を用いた場合と同様に、光源ユニット5から出射された光Lの利用効率を高めることが可能である。一方、回転楕円反射面60aにより反射された光の光源像は、図9中の囲み部分Bに示すように、光源像の上部にグレアとなる光が発生することがある。
【0070】
これに対して、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、図6(a)~(e)に示すように、4つの反射領域61a,62a,61b,62bにより反射された光の光源像を合成することによって、グレアの発生を防ぎつつ、良好なカットオフラインを含む光源像(ロービーム用配光パターン)を形成することが可能である。
【0071】
なお、本実施形態では、上述した回転楕円反射面6a,6bの第2焦点F2a,F2bと回転放物系反射面7aの焦点F3とが重なるように、前後方向・左右方向・上下方向の全ての方向において互いの焦点F2a,F2b及び焦点F3を一致させた構成となっているが、これら3つの焦点F2a,F2及び焦点F3は、左右方向(Y軸軸方向)において配光が離反しない程度に、左右方向にずらして配置された構成であってもよい。例えば、焦点F2a,F2bが左右方向において焦点F3を挟むような位置に配置された構成であってよい。この場合も、良好なカットオフラインを形成するため、第2焦点F2a,F2bと焦点F3とは、前後方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)において互いに一致した配置とすればよい。
【0072】
以上のように、本実施形態の車両用前照灯1Aでは、光源ユニット5から出射される光Lの利用効率が高く、なお且つ、部品点数の削減及び構造の簡素化を図ることによって、灯体4の更なる小型化を図ることが可能である。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば図10図13に示す車両用前照灯1Bについて説明する。
なお、図10は、車両用前照灯1Bの構成を示す正面図である。図11は、図10中に示す線分C-Cによる車両用前照灯1Bの断面図である。図12は、車両用前照灯1Bが備える第1のリフレクタ21及び光源ユニット5を示す透視斜視図である。図13は、第1のリフレクタ21を構成する一対の回転楕円反射面21a,21b及び中央の回転楕円反射面21cの第1焦点F1a,F1b,F1cと、光源ユニット5を構成するロービーム用光源8及びハイビーム用光源9の発光面8a,9aとの位置を示す平面図である。また、以下の説明では、上記車両用前照灯1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0074】
本実施形態の車両用前照灯1Bは、図10及び図11に示すように、灯体4(図示せず。)の内側に、光源ユニット5と、第1のリフレクタ21と、一対の第2のリフレクタ22とを備えている。
【0075】
第1のリフレクタ21は、図10図13に示すように、光源ユニット5の前方に配置されて、光源ユニット5から出射された光Lを光源ユニット5の周囲に向けて反射する。具体的に、この第1のリフレクタ21は、ロービーム用光源8から出射される光の光軸を挟んで上下対称となる一対の回転楕円反射面21a,21bと、一対の回転楕円反射面21a,21bの間に配置された中央の回転楕円反射面21cとを有している。
【0076】
一対の回転楕円反射面21a,21bは、光源ユニット5の上側及び下側の周囲を囲むように、2つの焦点を持つ楕円線の一部を回転させることによって得られる凹面状の反射面である。
【0077】
一対の回転楕円反射面21a,21bのうち、一方の回転楕円反射面21aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面21bの第1焦点F1bとは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける中心を挟んだ幅方向の両側に位置している。具体的に、一方の回転楕円反射面21aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面21bの第1焦点F1bとは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の両端角部に位置している。
【0078】
また、一対の回転楕円反射面21a,21bは、それぞれロービーム用光源8から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線を挟んで左右対称となる一対の反射領域211a,212a,211b,212bに分割されている。具体的に、一方の回転楕円反射面21aは、左右対称となる一対の第1の反射領域211aと第2の反射領域212aとに分割されている。他方の回転楕円反射面21bは、左右対称となる一対の第3の反射領域211bと第4の反射領域212bとに分割されている。
【0079】
これにより、第1のリフレクタ21は、左右方向の一方側に位置する第1の反射領域211a及び第3の反射領域211bに入射した光Lを集光しながら、左右方向の他方側に位置する第2のリフレクタ22に向けて反射する。また、第1のリフレクタ21は、左右方向の他方側に位置する第2の反射領域212a及び第4の反射領域212bに入射した光Lを集光しながら、左右方向の一方側に位置する第2のリフレクタ22に向けて反射する。
【0080】
中央の回転楕円反射面21cは、一対の回転楕円反射面21a,21bの間で2つの焦点を持つ楕円線の一部を回転させることによって得られる凹面状の反射面である。
【0081】
中央の回転楕円反射面21cの第1焦点F1cは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける一方の回転楕円反射面21aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面21bの第1焦点F1bとの間に位置している。具体的に、中央の回転楕円反射面の第1焦点F1cは、ロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の中央端部に位置している。
【0082】
また、中央の回転楕円反射面21cは、ロービーム用光源8から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線を挟んで左右対称となる一対の反射領域211c,212cに分割されている。具体的に、中央の回転楕円反射面21cは、左右対称となる一対の第5の反射領域211cと第6の反射領域212cとに分割されている。
【0083】
これにより、第1のリフレクタ21は、左右方向の一方側に位置する第5の反射領域211cに入射した光Lを集光しながら、左右方向の他方側に位置する第2のリフレクタ22に向けて反射する。また、第1のリフレクタ21は、左右方向の他方側に位置する第6の反射領域212cに入射した光Lを集光しながら、左右方向の一方側に位置する第2のリフレクタ22に向けて反射する。
【0084】
第1のリフレクタ21において、一方の回転楕円反射面21a(第1及び第2の反射領域211a,212a)の第2焦点F2aと、他方の回転楕円反射面21b(第3及び第4の反射領域211b,212b)の第2焦点F2bと、中央の回転楕円反射面21c(第5及び第6の反射領域211c,212c)の第2焦点F2cとは、互いに一致した位置にある。
【0085】
これにより、第1のリフレクタ21は、一対の回転楕円反射面21a,21b及び中央の回転楕円反射面21cに入射した光Lを互いに一致した第2焦点F2a,F2b,F2cに向けて集光しながら、一対の第2のリフレクタ22に向けて反射する。
【0086】
また、第1のリフレクタ21は、一対の回転楕円反射面21a,21b及び中央の回転楕円反射面21c(第1~第6の反射領域211a,212a,211b,212b、211c,212c)により反射された光Lを第2のリフレクタ22に向けて通過させる一対の貫通孔23a,23bを有している。
【0087】
一対の貫通孔23a,23bは、中央の回転楕円反射面21cの左右両側に設けられている。第1の反射領域211aの第2焦点F2a、第3の反射領域211bの第2焦点F2b及び第5の反射領域211bの第2焦点F2cは、一方の貫通孔23aの内側に位置している。これに対して、第2の反射領域212aの第2焦点F2a、第4の反射領域212bの第2焦点F2b及び第6の反射領域212cの第2焦点F2cは、他方の貫通孔23bの内側に位置している。
【0088】
この場合、一対の回転楕円反射面21a,21b(第1~第6の反射領域211a,212a,211b,212b,211c,212c)により集光しながら反射される光Lの瞳径を一対貫通孔23a,23bを通過する位置で小さくすることができる。これにより、中央の回転楕円反射面21cに形成される一対貫通孔23a,23bの口径を小さくすることが可能である。
【0089】
一対の第2のリフレクタ22は、図10及び図11に示すように、光源ユニット5を挟んだ幅方向の両側に左右対称に配置されている。第2のリフレクタ22は、第1のリフレクタ6で反射された光Lを車両の前方に向けて反射する。具体的に、一対の第2のリフレクタ22は、一対の貫通孔23a,23bと向かい合う回転放物系反射面22aを有している。
【0090】
回転放物系反射面22aは、互いに一致した回転楕円反射面21a,21b,21cの第2焦点F2a,F2b,F2cを焦点F3とする放物線の一部を回転させることによって得られる凹面状の反射面である。すなわち、この回転放物系反射面22aの焦点F3と、回転楕円反射面21a,21b,21cの第2焦点F2a,F2b,F2cとは、貫通孔23a,23bの内側において、互いに一致した位置にある。
【0091】
具体的に、一対の第2のリフレクタ22のうち、一方のリフレクタ22における回転放物系反射面22aの焦点F3と、第1、第3及び第5の反射領域211a,211b,211cの第2焦点F2a,F2b,F2cとは、一方の貫通孔23aの内側において、互いに一致した位置にある。これに対して、他方のリフレクタ22における回転放物系反射面22aの焦点F3と、第2、第4及び第6の反射領域212a,212b,212cの第2焦点F2a,F2b,F2cとは、他方の貫通孔23bの内側において、互いに一致した位置にある。
【0092】
これにより、一対の第2のリフレクタ22は、それぞれの回転放物系反射面22aに入射した光Lを車両の前方に向けて上下方向においてコリメートしながら反射する。
【0093】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用前照灯1Bでは、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、ロービーム用光源8から出射される光を第1のリフレクタ21及び一対の第2のリフレクタ22により反射しながら、車両の前方に向けて照射する。これにより、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0094】
一方、本実施形態の車両用前照灯1Bでは、走行用ビーム(ハイーム)として、ハイビーム用光源9から出射される光を第1のリフレクタ21及び一対の第2のリフレクタ22により反射しながら、車両の前方に向けて照射する。これにより、ロービーム用配光パターンの上方にハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0095】
本実施形態の車両用前照灯1Bでは、上述したロービーム用及びハイビーム用光源8,9とを搭載したカプラー付ソケットを構成する光源ユニット5を備えることで、部品点数の削減を図るだけでなく、灯体4をよりコンパクトに設計することが可能である。
【0096】
また、本実施形態の車両用前照灯1Bでは、上述した光源ユニット5から出射された光Lを第1のリフレクタ21の一対の回転楕円反射面21a,22b及び中央の回転楕円反射面21c(第1~第6の反射領域211a,212a,211b,212b,211c,212c)により一対の第2のリフレクタ22に向けて効率良く反射し、この光Lを第2のリフレクタ21の回転楕円放物面22aにより車両の前方に向けて効率良く反射することができる。これにより、光源ユニット5から出射された光Lの利用効率を高めることが可能である。
【0097】
また、本実施形態の車両用前照灯1Bでは、上述した一方の回転楕円反射面21aの第1焦点F1aと、他方の回転楕円反射面21bの第1焦点F1bとを、ロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の両端角部に位置させると共に、中央の回転楕円反射面21cの第1焦点F1cをロービーム用光源8の発光面8aにおける上側の中央端部に位置させることで、シェードを用いることなく、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成することが可能である。
【0098】
ここで、第1のリフレクタ21を構成する一対の回転楕円反射面21a,21b及び中央の回転楕円反射面21cにより反射された光の光源像と、これらの光源像を合成した光源像とを図14(a)~(d)に示す。
【0099】
なお、図14(a)は、一方の回転楕円反射面21aにより反射された光の光源像を示す模式図である。図14(b)は、中央の回転楕円反射面21cにより反射された光の光源像を示す模式図である。図14(c)は、他方の回転楕円反射面21bにより反射された光の光源像を示す模式図である。図14(d)は、図14(a)~(c)に示す光源像を合成した光源像である。
【0100】
一方、比較対象として、図15に示す第1のリフレクタ210を用いた場合の光の光源像について、図16及び図17を参照しながら説明する。
【0101】
なお、図15は、比較対象となる第1のリフレクタ210及び光源ユニット5を示す透視斜視図である。図16は、第1のリフレクタ210を構成する回転楕円反射面210aの第1焦点F1と、光源ユニット5を構成するロービーム用光源8及びハイビーム用光源9の発光面8a,9aとの位置を示す平面図である。図17は、第1のリフレクタ210により反射された光の光源像を示す模式図である。
【0102】
比較対象となる第1のリフレクタ210は、図16に示すように、ロービーム用光源8の中心(発光面8aの中央部)を第1焦点F1とし、回転放物系反射面22aの焦点F3を第2焦点(図示せず。)とする回転楕円反射面210aを有している。また、回転楕円反射面210aは、ロービーム用光源8から出射される光の光軸を通る上下方向の中心線を挟んで左右対称となる一対の反射領域210b,210cに分割されている。
【0103】
第1のリフレクタ210を用いた場合、上述した第1のリフレクタ21を用いた場合と同様に、光源ユニット5から出射された光Lの利用効率を高めることが可能である。一方、回転楕円反射面210aにより反射された光の光源像は、図17中の囲み部分Dに示すように、光源像の上部にグレアとなる光が発生することがある。
【0104】
これに対して、本実施形態の車両用前照灯1Bでは、図14(a)~(d)に示すように、一対の回転楕円反射面21a,21b及び中央の回転楕円反射面21cにより反射された光の光源像を合成することによって、グレアの発生を防ぎつつ、良好なカットオフラインを含む光源像(ロービーム用配光パターン)を形成することが可能である。
【0105】
なお、本実施形態では、上述した回転楕円反射面21a,21b,21cの第2焦点F2a,F2b,F2cと回転放物系反射面7aの焦点F3とが重なるように、前後方向・左右方向・上下方向の全ての方向において互いの焦点F2a,F2b,F2c及び焦点F3を一致させた構成となっているが、これら4つの焦点F2a,F2b,F2c及び焦点F3は、左右方向(Y軸軸方向)において配光が離反しない程度に、左右方向にずらして配置された構成であってもよい。例えば、焦点F2a,F2bが左右方向において焦点F3を挟み、焦点F2cが焦点F3と一致するような位置に配置された構成であってよい。この場合も、良好なカットオフラインを形成するため、第2焦点F2a,F2bと焦点F3とは、前後方向(X軸方向)及び上下方向(Z軸方向)において互いに一致した配置とすればよい。
【0106】
以上のように、本実施形態の車両用前照灯1Bでは、光源ユニット5から出射される光Lの利用効率が高く、なお且つ、部品点数の削減及び構造の簡素化を図ることによって、灯体4の更なる小型化を図ることが可能である。
【0107】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0108】
例えば、上記車両用前照灯1A,1Bでは、上述した光源ユニット5が灯体4とは別体に取り付けられたカプラー付ソケットにより構成されているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、光源ユニット5については、灯体4の内側に一体に取り付けられた構成であってもよい。
【0109】
また、上記光源ユニット5は、上述したロービーム用光源8とハイビーム用光源9とを搭載した構成となっているが、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、光源ユニット5については、少なくともロービーム用光源8を搭載した構成であればよく、ハイビーム用光源9を省略し、このハイビーム用光源9をロービーム用光源8とは別に取り付ける構成とすることも可能である。
【0110】
また、上記回転放物系反射面7a,22aについては、回転放物面を基本形状として、焦点F3が形成される程度、且つ、上下方向のコリメート機能が保持される程度に、回転放物面の一部又は全体を変形させた反射面としてもよい。
【0111】
なお、上記実施形態では、上述した自動二輪車や自動三輪車などの鞍乗型車両の車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用した場合を例示したが、四輪自動車などの車両の前端側の両コーナー部に搭載される車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1A,1B…車両用前照灯 4…灯体 5…光源ユニット 6…第1のリフレクタ 6a…一方の回転楕円反射面 6b…他方の回転楕円反射面 7…第2のリフレクタ 7a…回転放物系反射面 8…ロービーム用光源 9…ハイビーム用光源 21…第1のリフレクタ 21a…一方の回転楕円反射面 21b…他方の回転楕円反射面 21c…中央の回転楕円反射面 22…第2のリフレクタ 22a…回転放物系反射面 23a,23b…貫通孔 61a…第1の反射領域 62a…第2の反射領域 61b…第3の反射領域 62b…第4の反射領域 211a…第1の反射領域 212a…第2の反射領域 211b…第3の反射領域 212b…第4の反射領域 211c…第5の反射領域 212c…第6の反射領域
図1
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