(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】清掃具
(51)【国際特許分類】
A47L 13/24 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A47L13/24 A
(21)【出願番号】P 2019083044
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】生井 珠里
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-262200(JP,A)
【文献】登録実用新案第3021712(JP,U)
【文献】登録実用新案第3017545(JP,U)
【文献】特開平08-280597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 13/00 - 13/258
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部と、該柄部の先端に連結部を介して取り付けた清掃体部とから構成され、前記清掃体部の端部に清掃シートを取り付けるためのシート挟持部が配置された清掃具であって、
前記シート挟持部は、凹状の下体部と、該下体部を覆うと共に、軸部を介して該下体部に対し傾動自在に取り付けた上体部とから成り、
前記上体部は、平板状の上面板と、該上面板の前端を下方に折曲し、下辺に上側挟持辺部を設けた上側前面部とを備え、
前記下体部は
水平状の凹面部と、前記上側挟持辺部と噛合する下側挟持辺部とを備え、
前記軸部の軸方向と、前記上側挟持辺部及び下側挟持辺部とは平行しており、
前
記上面板の下面には、複数枚の作用片が下方に向けて突出しており、
前記作用片は、山型形状であり、前記軸方向と直交する方向に沿って平行に配列され、
前記下側挟持辺部及び前記上側挟持辺部が嵌合する閉止状態を側方から見た際に、前記作用片の下端である下頂部は、前記軸部の直下よりも前記清掃体部の中央側に位置すると共に、前記下頂部が前記凹面部に対して弾性的に接することで、前記閉止状態が維持されることを特徴とする清掃具。
【請求項2】
前記作用片は、
前記下頂部までの方向が前記上側前面部の折曲方向に対して、前記柄部側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の清掃具。
【請求項3】
前記凹面部及び前記上面板の少なくとも一方に、前記
軸方向と直交する方向に沿う複数のスリット部を設けたことを特徴とする請求項
1又は2の何れか1項に記載の清掃具。
【請求項4】
前記スリット部の間隔は、前記
複数枚の作用片の軸方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項
3に記載の清掃具。
【請求項5】
前記上側挟持辺部及び前記下側挟持辺部は鋸歯状としたことを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃シートを装着し、床面等の塵埃の拭き取りを行う清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モップ基台の四隅にピンチ片を配置し、これらのピンチ片に不織布から成る清掃シートを固定するモップが開示されている。このピンチ片には、ピンチ片の挟持先端部を清掃シートに対し、閉止するように付勢するコイルばねが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のモップのピンチ片により、不織布の取り付け、取り外しを繰り返すと、コイルばねが破損したり、コイルばねに対するピンチ片の押圧部が破損したりすることがある。
【0005】
ピンチ片が1個でも破損すると、モップ基台は清掃シートを安定して保持することができなくなり、使用が困難となる。また、破損したピンチ片を交換、修理することは困難である。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、ばねを使用していないので、繰り返して使用しても破損し難いシート挟持部を備えた清掃具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る清掃具は、柄部と、該柄部の先端に連結部を介して取り付けた清掃体部とから構成され、前記清掃体部の端部に清掃シートを取り付けるためのシート挟持部が配置された清掃具であって、前記シート挟持部は、凹状の下体部と、該下体部を覆うと共に、軸部を介して該下体部に対し傾動自在に取り付けた上体部とから成り、前記上体部は、平板状の上面板と、該上面板の前端を下方に折曲し、下辺に上側挟持辺部を設けた上側前面部とを備え、前記下体部は水平状の凹面部と、前記上側挟持辺部と噛合する下側挟持辺部とを備え、前記軸部の軸方向と、前記上側挟持辺部及び下側挟持辺部とは平行しており、前記上面板の下面には、複数枚の作用片が下方に向けて突出しており、前記作用片は、山型形状であり、前記軸方向と直交する方向に沿って平行に配列され、前記下側挟持辺部及び前記上側挟持辺部が嵌合する閉止状態を側方から見た際に、前記作用片の下端である下頂部は、前記軸部の直下よりも前記清掃体部の中央側に位置すると共に、前記下頂部が前記凹面部に対して弾性的に接することで、前記閉止状態が維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る清掃具によれば、清掃シートを挟持するシート挟持部には、ばねを使用しない姿勢維持手段を備えていることから、繰り返して使用してもシート挟持部が破損することはない。また、ばねを配置する手間も不要であるから、製造も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一部のシート挟持部が開口している状態の実施例の清掃具の斜視図である。
【
図6】清掃シートを取り付けた状態の清掃体部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は一部のシート挟持部が開口している状態の実施例の清掃具の斜視図、
図2はシート挟持部の分解斜視図、
図3は一部のシート挟持部が開口している状態の清掃体部の横断面図である。
【0011】
清掃具1は棒状の柄部2と、この柄部2の先端に取り付けられた清掃体部3とから構成されており、清掃体部3は柄部2に対して連結部4により自在な方向に回動可能に連結されている。
【0012】
図1においては、柄部2の一部を省略しているが、柄部2の長さは例えば1.5m程度であり、清掃体部3の大きさは例えば横幅25cm、縦幅8cm、高さ3cm程度である。柄部2の長さ及び清掃体部3の大きさは清掃個所や清掃シートの大きさ等に応じて、適宜のサイズのものを採用することができる。
【0013】
清掃体部3は、硬質の合成樹脂材から成る矩形状の基体部31と、この基体部31の底面と側面部を覆うように被着した発泡EVA、ウレタン樹脂等の柔軟性、弾発性を有する合成樹脂材から成る摺掃部32とから構成されている。そして、基体部31上の端部である四隅には、例えば不織布から成る清掃シートや雑巾を挟持するためのシート挟持部33がそれぞれ配置されている。
【0014】
清掃具1の使用に際して、清掃体部3の摺掃部32に、例えば市販の横30cm、縦20cm、厚み0.5mm程度の清掃シートを取り付けることが可能である。この取り付けは、清掃シートを摺掃部32の下面を覆うようにして、清掃シートの四隅を基体部31上の4個のシート挟持部33により挟持することで完了する。
【0015】
シート挟持部33は、凹状の下体部50と、上体部60とから構成されている。下体部50は基体部31と一体とされており、底部として凹面部51を有している。凹面部51には清掃体部3の短手方向に沿う複数のスリット部52が設けられている。これらのスリット部52の間隔は、後述する作用片の軸方向の長さよりも長くしている。
【0016】
凹面部51の外側である前部には、凹面部51の前端から立ち上げた下側前面部53が設けられ、この下側前面部53の上辺には、清掃シートを挟持するための例えば鋸歯状の下側挟持辺部54が形成されている。
【0017】
なお、凹面部51にスリット部52を設けることで、後述する上体部60の作用片の下頂部が凹面部51に接触した際に凹面部51が変形し易くすると共に、この変形に伴って弾性力が生じ易くしている。
【0018】
上体部60は、下体部50の凹面部51を覆う板体状の合成樹脂材であり、
図3に示す上体部60の+印位置を軸部とし、この軸部を介して下体部50に対して傾動自在とされている。なお、軸部は軸ピンと軸孔とから成り、実施例では下体部50の凹面部51の両側面の基体部31に軸孔55が設けられ、上体部60には水平方向に両側から軸ピン61が突出されている。これらの軸孔55及び軸ピン61の構成は、逆にして上体部60及び下体部50に配置してもよい。
【0019】
上体部60は、平面状の上面板62と、この上面板62の外側の前端から下方に折曲された上側前面部63と、上面板62の側端から下方に折曲され、軸ピン61を設けた上側側面部64とを有している。上側側面部64の軸ピン61は、前後方向のほぼ中間部の両側において、下体部50の両側面である基体部31に軸着されており、上側前面部63の下辺には、下側挟持辺部54と共働して清掃シートを挟持する例えば鋸歯状の上側挟持辺部65が形成されている。
【0020】
なお、基体部31上の四隅に配置したシート挟持部33は、互いの鋸歯が噛合する下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65が、基体部31の短手方向の外側に向けて開口するように配置されている。
【0021】
上体部60の上面板62の前部上面は、上体部60を閉止する場合の押圧部の役割を果たし、上面板62の後部上面は上体部60を開く場合に使用する押圧部66とされている。
【0022】
上体部60の下体部50に対する姿勢維持手段として、上面板62の下面には、上側側面部64と平行に、つまり軸部の軸芯と直交する方向に、複数枚の板体状の作用片67が並列して下方に向けて突出されている。これらの作用片67の側面形状は、下方を凸とする丸みを帯びた稜線を有する三角状の山型形状とされ、図示する+印位置の軸部から下頂部68までの方向は、上側前面部63の折曲方向に対して、柄部2側に傾斜している。
【0023】
作用片67は上面板62の弾性力により付勢されて、作用片67の下頂部68は下体部50の凹面部51上に押し付けられながら接触しており、上体部60の開閉つまり傾動に伴って、下端である下頂部68はその稜線が凹面部51上を移動可能とされている。
【0024】
なお、作用片67を板状にすることで、作用片67の下頂部68が凹面部51に接触した際に作用片67が変形し易くすると共に、この変形に伴って弾性力が生じ易くしている。
【0025】
図4は上体部60の変形例である上体部60’を後方から見た後方斜視図である。上体部60’の上面板62には、裏面側の作用片67を取り囲むようにコの字状のスリット部69が設けられている。このスリット部69は下体部50のスリット部52と同様に、清掃体部3の短手方向に沿う複数のスリット部であってもよい。上面板62にスリット部を設けることで、作用片67の下頂部68が凹面部51に接触した際に作用片67がより一層変形し易くなり、この変形に伴いより強い弾性力が生ずることになる。
【0026】
清掃シートを取り付けていない
図3に示す状態においては、作用片67の下頂部68が凹面部51上に接触していて、作用片67は上面板62により凹面部51に対して弾性的に押し付けられているので、非傾動状態においても、上面板62は不時に動かないようにされている。
【0027】
ここで、シート挟持部33を開口するために、
図5に示すように上面板62の押圧部66を下方に押すと、軸部を介して上体部60は傾動する。このとき、作用片67の丸みを帯びた下頂部68の稜線は、凹面部51上を移動し、下頂部68の後部側が凹面部51上に当接する。そして、上面板62と凹面部51との間隙が稍々短くなり、作用片67には更に弾性力が加わる。
【0028】
上体部60が閉じた状態から、作用片67の軸部から下頂部68までの方向が上側前面部63の折曲方向とが平行になるまでの間では、上側挟持辺部65及び下側挟持辺部54が閉じる方向に弾性力が作用することになる。そして、上体部60が開いた状態となる、作用片67の軸部から下頂部68までの方向が上側前面部63の折曲方向とが平行になった以降は、上側挟持辺部65及び下側挟持辺部54が開く方向に弾性力が作用することになる。この開く方向の弾性力は、軸部を介して上側挟持辺部65を持ち上げることを助長すると共に、上体部60の傾動を維持するための付勢力となる。
【0029】
このように、押圧部66を下方に押圧することにより上体部60は傾動して、上側前面部63に設けられた上側挟持辺部65が持ち上がり、下体部50の下側挟持辺部54から離間して、下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間が開口し、その状態が維持される。この開口操作を4個のシート挟持部33について同様に行い、開口している下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間に清掃シートSの四隅をそれぞれ挿入する。
【0030】
続いて、作用片67の下頂部68が凹面部51に対して非接触状態である開口状態の上面板62の前部を、下方に押して上側挟持辺部65を押し下げる。
図5の示す状態から
図3に示す状態に至り、下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間を噛み合わせることにより、清掃シートSをこの噛合により挟持し、
図6に示すように清掃体部3に清掃シートSを取り付けることができる。
【0031】
このとき、作用片67の下頂部68による凹面部51上の非接触、接触に応じて、作用片67の変形に基づく弾性力によりクリック作用が生ずる。そして、作用片67の下頂部68が凹面部51上に弾性的に接することで、下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65が嵌合する閉止状態が維持され、上体部60が不時に動くことはない。
【0032】
更に、清掃シートSを下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間で噛合により挟持すれば、清掃シートSには下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65が噛み込まれているので、清掃シートSが引き抜かれる方向に力が作用しても、清掃シートSが抜け出すことはない。
【0033】
このように、作用片67の下頂部68の向きによって、上体部60の傾動、非傾動状態である開閉状態は何れか一方に維持されるので、ばねを使用しなくとも、清掃シートSが不時にシート挟持部33から外れることはない。
【0034】
清掃シートSを取り付けた清掃具1により、床面等を拭き取ることにより、塵芥を清掃シートSに付着させることができる。清掃シートSに十分な塵芥が付着すると、シート挟持部33の上体部60の押圧部66を下方に押して下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間を開き、清掃シートSを取り外し、破棄する。そして、新たな清掃シートSを開口している下側挟持辺部54及び上側挟持辺部65間に挿入して、上面板62の前部を押し下げて使用することになる。
【0035】
なお実施例では、シート挟持部33の下体部50を基体部31と一体化しているが、下体部50は別体として、必要に応じてシート挟持部33を基体部31に対して、交換可能とすることもできる。
【0036】
このように本発明に係る清掃具1によれば、清掃シートSを挟持するシート挟持部には、ばねを使用しない姿勢維持手段を備えていることから、繰り返して使用してもシート挟持部33が破損することはない。また、ばねを配置する手間も不要であるから、製造も容易である。
【符号の説明】
【0037】
1 清掃具
3 清掃体部
31 基体部
32 摺掃部
33 シート挟持部
50 下体部
51 凹面部
52、69 スリット部
53 下側前面部
54 下側挟持辺部
60 上体部
62 上面板
63 上側前面部
65 上側挟持辺部
67 作用片
68 下頂部
S 清掃シート