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特許7265939航空機のための圧搾空気システム及び関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】航空機のための圧搾空気システム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B64D 33/00 20060101AFI20230420BHJP
   B64D 13/02 20060101ALN20230420BHJP
   B64D 15/04 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
B64D33/00 Z
B64D13/02
B64D15/04
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019112415
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020023305
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】16/012,327
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マッキン, スティーヴ ジー.
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0080383(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0275769(US,A1)
【文献】特開昭57-058598(JP,A)
【文献】特開平09-156598(JP,A)
【文献】特開2011-117437(JP,A)
【文献】米国特許第09605591(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 13/00-15/22
B64D 33/00-33/12
B64D 41/00
F02C 6/08
F02C 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機(100)のための圧搾空気システム(200)であって、
前記圧搾空気システム(200)が、
第1の空気源(243)から空気を受け取るための圧縮機入口(240)と、前記航空機(100)の環境制御システム(ECS:environmental control system)(202)に圧搾空気を供給するための圧縮機出口(242)とを有する圧縮機(204)と、
第2の空気源(267)から空気を受け取るためのタービン入口(268)を有するタービン(208)と、
アクセサリギアボックス(252)の出力軸(260)と前記圧縮機(204)との間で動作可能に連結される第1のオーバーラニングクラッチ(261)であって、前記アクセサリギアボックス(252)が、前記航空機(100)のエンジン(108)から延びる駆動軸(206)に動作可能に連結される、第1のオーバーラニングクラッチ(261)と、
前記圧縮機(204)と前記タービン(108)との間で動作可能に連結される第2のオーバーラニングクラッチ(265)と、
を備え、
前記第1のオーバーラニングクラッチ及び前記第2のオーバーラニングクラッチ(261、265)は、前記アクセサリギアボックス(252)が第1の動作モードの間に前記圧縮機(204)を駆動することを可能とし、前記タービン(208)が第2の動作モードの間に前記圧縮機(204)を駆動することを可能と
前記アクセサリギアボックス(252)の始動入力軸(275)と前記タービン(208)との間で動作可能に連結される第3のオーバーラニングクラッチ(276)を更に備え、第3の動作モードの間には、高圧空気が、前記始動入力軸を駆動して前記エンジン(108)を始動させるために、前記タービン(208)に供給される、圧搾空気システム(200)。
【請求項2】
前記タービン(208)が、前記タービン(208)から前記アクセサリギアボックス(252)の前記始動入力軸へとギア減速を提供する遊星ギアボックス(280)を介して、前記第3のオーバーラニングクラッチに動作可能に連結される、請求項1に記載の圧搾空気システム(200)。
【請求項3】
前記圧縮機出口(242)と前記ECS(202)とを流体連結させる第1の通路(247)と、
前記第1の通路を前記エンジン(108)のファンダクト(216)へと流体連結させる第2の通路(290)と、
前記第2の通路に動作可能に連結されるファンダクト入口弁(292)であって、前記第3の動作モードの間には、前記圧縮機出口(242)により供給された前記圧搾空気を前記エンジン(108)の前記ファンダクトへと方向付けるため開いているファンダクト入口弁(292)と、
をさらに備える、請求項1又は2に記載の圧搾空気システム(200)。
【請求項4】
前記第2の空気源が、前記エンジンの高圧圧縮機からの抽気であり、
前記圧搾空気システム(200)が、
前記高圧圧縮機の抽気ポート(271)と前記タービン入口(268)とを流体連結させる通路(270)と、
前記通路に動作可能に連結されるタービン入口弁(272又は273)であって、前記第1の動作モードの間には、前記タービン入口弁は、抽気が前記タービン(208)に供給されないように閉じており、前記第2の動作モードの間には、前記タービン入口弁は、前記圧縮機(204)を駆動するため前記タービン(208)に動力を供給するために、前記高圧圧縮機から前記タービン入口(268)へと抽気を供給するために開いている、タービン入口弁(272又は273)と、
をさらに備える、請求項1からのいずれか一項に記載の圧搾空気システム(200)。
【請求項5】
前記第1の空気源(243)が、前記エンジン(108)のファンダクト(216)からのファン空気であり、前記第2の空気源(267)が、前記エンジン(108)の高圧圧縮機(226)からの抽気である、請求項1からのいずれか一項に記載の圧搾空気システム(200)。
【請求項6】
前記アクセサリギアボックス(252)の始動入力軸(275)と動作可能に連結される始動タービン(602)を更に備え、
第3の動作モードの間には、高圧空気が、前記アクセサリギアボックス(252)を駆動して前記エンジン(108)を始動させるために、前記始動タービンに供給される、請求項1からのいずれか一項に記載の圧搾空気システム(200)。
【請求項7】
第1の動作モードにおいて、以下のような圧搾空気システム(200)、即ち、
第1のオーバーラニングクラッチ(261)を介してアクセサリギアボックス(252)に動作可能に連結される圧縮機(204)であって、前記圧縮機(204)の圧縮機出口(242)は圧搾空気を受け取る航空機(100)の1つ以上のシステム(202)に流体連結される、圧縮機(204)と、
第2のオーバーラニングクラッチ(265)を介して前記圧縮機(204)に動作可能に連結されるタービン(208)であって、前記第1の動作モードの間には、前記アクセサリギアボックス(252)が、前記圧搾空気を発生させるために前記圧縮機(204)を駆動する、タービン(208)と、
を備える圧搾空気システム(200)を、コントローラ(293)を介して動かすことと、
前記コントローラを介して、前記航空機(100)のエンジン(108)の動作速度を定めることと、
前記動作速度が閾値速度を下回るときには、前記圧搾空気システム(200)を第2の動作モードで動かすことであって、前記タービン(208)に動力を供給して前記圧縮機(204)を駆動して前記圧搾空気を発生させるために抽気が前記タービン(208)に供給されるように、前記タービン(208)と前記エンジン(108)の抽気ポート(271)との間に配置されたタービン入口弁(272及び/又は273)を開くための命令信号を前記コントローラを介して送信することによって、第2の動作モードで動かすことと
前記動作速度が前記閾値速度を上回るときには、前記タービン入口弁を閉じるための命令信号を前記コントローラを介して送信することによって、前記圧搾空気システム(200)を前記第1の動作モードで動かすこと
を含む、方法。
【請求項8】
前記タービン(208)が、第3のオーバーラニングクラッチ(276)を介して前記アクセサリギアボックス(252)に動作可能に連結され、前記方法が、
前記第1の動作モードで前記圧搾空気システム(200)を動かす前に、前記圧搾空気システム(200)を第3の動作モードで動かすことであって、前記タービン(208)を駆動して前記アクセサリギアボックス(252)に動力を供給して前記エンジン(108)を始動させるために高圧空気が前記タービン(208)に供給されるように、高圧空気源と前記タービン(208)との間に配置されたタービン始動弁(285)を開けるための命令信号を、前記コントローラを介して送信することによって、第3の動作モードで動かすことをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して航空機に関し、特に、航空機のための圧搾空気システム及び関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
民間航空機は、典型的に、圧搾空気を用いて稼働する1つ以上のシステムを備える。例えば、民間航空機は、航空機の客室に圧力を加えるための環境制御システム(ECS:environmental control system)、及び/又は、防氷の用途のために熱風を提供するための熱的な防氷システムを利用していることが多く、双方のシステムは圧搾空気で動く。空気の供給は典型的に、航空機エンジンの圧縮機から抽出される抽気又はそうでなれば当該圧縮機により提供される抽気より、上記システムにもたらされる。様々な航空機システムの圧力及び/又は温度への要求を満たすために、抽気は、圧縮機のより高次の段であって、様々なシステムにより要求される圧力及び/又は温度を上回る圧力及び/又は温度を有する抽気を提供する上記より高次の段から抽出されることが多い。その後、圧搾された抽気は、当該抽気が上記システムに提供される前に、予冷器を介して冷却され、圧力調整弁を介して減圧されることが多い。従って、抽気を発生させるためにエンジンが費やすエネルギーの大部分が、抽気の冷却時及び/又は抽気の減圧時に浪費され、従って、このようなやり方で高圧の抽気を抽出することで、エネルギー効率が下がる可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、航空機のための例示の圧搾空気システムが開示される。圧搾空気システムは、圧縮機入口及び圧縮機出口を有する圧縮機を備える。圧縮機入口は、第1の空気源から空気を受け取るためのものであり、圧縮機出口は、航空機の環境制御システム(ECS:environmental control system)に圧搾空気を供給するためのものである。圧搾空気システムは、第2の空気源から空気を受け取るためのタービン入口と、アクセサリギアボックスの出力軸と圧縮機との間で動作可能に連結される第1のオーバーラニングクラッチと、航空機のエンジンから延びる駆動軸に動作可能に連結されるアクセサリギアボックスと、圧縮機とタービンとの間で動作可能に連結される第2のオーバーラニングクラッチとを備える。第1のオーバーラニングクラッチ及び第2のオーバーラニングクラッチは、アクセサリギアボックスが第1の動作モードの間に圧縮機を駆動することを可能とし、及びタービンが第2の動作モードの間に圧縮機を駆動することを可能とする。
【0004】
本明細書に開示される例示の方法は、コントローラを介して、圧搾空気システムを第1の動作モードで動かすことを含む。圧搾空気システムは、第1のオーバーラニングクラッチを介してアクセサリギアボックスに動作可能に連結される圧縮機を備える。圧縮機の圧縮機出口は、圧搾空気を受け取る航空機の1つ以上のシステムに流体連結される。圧搾空気システムは、第2のオーバーラニングクラッチを介して圧縮機に動作可能に連結されるタービンも備え、第1の動作モードの間には、アクセサリギアボックスが、圧搾空気を発生させるために圧縮機を駆動する。本方法は、コントローラを介して航空機のエンジンの動作速度を定めることと、動作速度が閾値速度を下回るときには、圧搾空気システムを第2の動作モードで動かすことであって、タービンに動力を供給して圧縮機を駆動して圧搾空気を発生させるために抽気がタービンに供給されるように、タービンとエンジンの抽気ポートとの間に配置されたタービン入口弁を開くための命令信号をコントローラを介して送信することによって、第2の動作モードで動かすことをさらに含む。
【0005】
本明細書に開示される例示の航空機は、圧搾空気を介して稼働するシステムと、エンジンから延びる駆動軸に動作可能に連結されかつ上記駆動軸により動力が供給されるアクセサリギアボックスと、圧搾空気システムとを備える。圧搾空気システムは、圧搾空気を介して稼働するシステムに流体連結される圧縮機出口を有する圧縮機を備える。圧縮機は、アクセサリギアボックスに動作可能に連結される。圧搾空気システムは、タービン、及び、圧縮機とタービンとの間に動作可能に連結されるオーバーラニングクラッチも備える。アクセサリギアボックスは、圧搾空気を発生させるために第1の動作モードにおいて圧縮機を駆動するためのものであり、タービンは、圧搾空気を発生させるために第2の動作モードにおいて圧縮機を駆動するためのものである。オーバーラニングクラッチは、アクセサリギアボックスが第1の動作モードにおいて圧縮機を駆動する間に、圧縮機をタービンから切断するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に開示する実施例が実現可能な例示の航空機を示す。
図2図1の例示の航空機との関連で実現可能な例示の圧搾空気システムの概略図である。図2では、圧搾空気システムが第1の動作モードで稼働しており、ここでは、圧縮機に動力を供給して圧搾空気を発生させるために、エンジンから延びるラジアル駆動軸が利用される。
図3A図2の例示の圧搾空気システムに実装しうる例示のスプラグクラッチの断面図である。
図3B図2の例示の圧搾空気システムに実装しうる例示のスプラグクラッチの断面図である。
図4】圧縮機に動力を供給して圧搾空気を発生させるためにタービンが利用される第2の動作モードで稼働する図2の例示の圧搾空気システムの概略図を示す。
図5】エンジンを始動させるためにタービンが利用される第3の動作モードで稼働する図2の例示の圧搾空気システムの概略図を示す。
図6】航空機エンジンを始動させるための別の始動タービンを備えた例示の圧搾空気システムの概略図である。
図7】圧縮機に動力を供給し及び/又は航空機のエンジンを始動させるための電動機を備える例示の圧搾空気システムの概略図である。
図8図2図6、及び図7のいずれの圧搾空気システムとの関連でも実装されうる第1のオーバーラニングクラッチの代替的な構成を示す。
図9図2図6、及び図7のいずれの圧搾空気システムとの関連でも実装されうる第2のオーバーラニングクラッチの代替的な構成を示す。
図10図2図6、及び図7のいずれの圧搾空気システムによっても実現されうる、航空機の1つ以上のシステムのための圧搾空気を発生させる方法の一例を表すフローチャートである。
図11図2図6、及び図7のいずれの圧搾空気システムによっても実現されうる、航空機エンジンを始動させる方法の一例を表すフローチャートである。
図12図2図6、及び/又は図7のいずれの例示の圧搾空気システムの例示の制御システムを実現するための、図10及び図11の方法を実行するよう構造化された例示の処理プラットフォームのブロック図である。
【0007】
図面は原寸に比例しない。その代わり、層又は領域の厚さは、図面では拡大されうる。一般に、図面及び添付の記載の全体を通して、同一の部分又は類似の部分は、同じ参照番号が使用される。本特許文献では、任意の部分(例えば層、膜、エリア、領域、又は板)が、任意のやり方で、他の部分に存在する(置かれる、位置付けられる、配置される、形成される等)という記述は、言及される部分がもう一方の部分と接触していること、又は、言及される部分が、もう一方との間に1つ以上の中間部分を伴って、もう一方の部分の上方に存在することを示す。任意の部分が別の部分と接触しているという記述は、当該2つの部分の間に中間部分が存在しないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
例示の圧搾空気システム及び関連する方法が、本明細書で開示される。本明細書に開示される例示の圧搾空気システムは、高圧空気で稼働し及び/又は高圧空気を利用する航空機の1つ以上のシステムに供給可能な圧搾空気を生成するために圧縮機を利用する。このようなシステムには、例えば、環境制御システム(ECS)、熱的な防氷システム(例えば、翼及び/又はエンジン、防氷システム)、(空気圧装置に供給するための)空気圧供給システム、及び/又は、高圧空気/圧縮空気の使用を要する航空機の他のいずれのシステムも含まれる。
【0009】
本明細書で開示される例示の圧搾空気システムは、航空機エンジンによる機械的接続を介して圧縮機に動力を供給する第1の動作モードと、タービンといった他の動力源を圧縮機に動力を供給するために利用する第2の動作モードと、で稼働する。具体的には、圧縮機は、第1のオーバーラニングクラッチを介してアクセサリギアボックスに動作可能に連結される。アクセサリギアボックスは、航空機エンジンの駆動軸(スプール)に接続されたラジアル駆動軸によって駆動される。第1の動作モードでは、航空機エンジンがラジアル駆動軸及びアクセサリギアボックスを介して圧縮機に動力を供給するように、第1のオーバーラニングクラッチが繋がっている。幾つかの実施例において、上記システムは離陸中、上昇中、及び/又は巡航中といった、エンジンが中速又は高速で稼働する或る飛行状況の間には、第1の動作モードで稼働する。圧縮機に動力を供給するためにラジアル駆動軸を利用することは、エンジンから抽気を抽出して利用するよりも、飛行の大部分を通じて圧搾空気を生成するための効率の良いやり方である。
【0010】
アイドル中又は下降中など、圧縮機に十分な動力を供給しえない低速でエンジンが稼働する場合には、上記システムを、圧搾空気を発生させるため圧縮機に動力を供給するためにタービンを利用する第2の動作モードに切り替えることが可能である。タービンには、航空機エンジンの圧縮機から抽出された抽気を介して動力が供給される。抽出された抽気によってタービンが相対的に高速で駆動され、従って、圧縮機に充分な動力を供給するために十分なほどの速さでエンジンの駆動軸が回転していないときには、タービンが圧縮機に動力を供給することが可能となる。例示のシステムにおいて、第2のオーバーラニングクラッチは、圧縮機とタービンとの間で動作可能に連結される。第1の動作モードでは、第2のオーバーラニングクラッチは繋がっておらず、これにより、タービンを駆動することなく、圧縮機が稼働することが可能となる。しかしながら、第2の動作モードでは、第2のオーバーラニングクラッチは繋がっており、これにより、タービンは圧縮機を駆動することが可能となる。さらに、第2の動作モードでは、(圧縮機とアクセサリギアボックスとの間で動作可能に連結される)第1のオーバーラニングクラッチが繋がっておらず、これにより、タービンは、アクセサリギアボックスを駆動することなく、圧縮機を駆動することが可能となる。こうした中で、2つのオーバーラニングクラッチの利用によって、アクセサリギアボックス又はタービンは、もう一方に依存することなく圧縮機に動力を供給することが可能となる。
【0011】
幾つかの実施例において、上記システムは、航空機エンジンを始動させる機能も備える。例えば、上記システムは、航空機エンジンを始動させるためにタービンを利用する第3の動作モードで稼働することが可能である。公知の航空機システムは、より大きな重量及びより多くの部品を上記システムに付加する別体の始動タービンを備えている。本明細書で開示する例示のシステムは、航空機エンジンを始動させるために圧搾空気システムからのタービンを利用することが可能であり、これにより、航空機の全重量が低減される。例示のシステムは、タービンと、アクセサリギアボックスの始動入力部と、の間で動作可能に連結される第3のオーバーラニングクラッチを備えうる。例示の動作において、高圧空気がタービンに提供され、タービンはその後、第3のオーバーラニングクラッチを介して始動入力部を駆動する。エンジンがいちど始動すると、第3のオーバーラニングクラッチは切られる。なぜならば、始動入力軸は、タービンからの入力よりも速く回転するからである。こうした中で、第3のオーバーラニングクラッチによって、タービンは、始動動作の間アクセサリギアボックスを駆動(し、従って航空機エンジンを駆動)することが可能となるが、エンジンがいちど稼働すると、アクセサリギアボックス(及び、従って航空機エンジン)からタービンを切断することも可能となる。本明細書で開示する他の実施例では、別体の始動タービンが、第3の動作モードの間に航空機エンジンを始動させるために利用されうる。いちど始動されると、上記システムは、第1の動作モード又は第2の動作モードで圧搾空気を発生させるために利用される。
【0012】
本明細書には、第2の動作モードの間に圧縮機に動力を供給するために、タービンよりも電動機を利用する例示のシステムも開示される。このような実施例において、第2のオーバーラニングクラッチが、圧縮機と電動機との間で動作可能に連結される。第2のオーバーラニングクラッチによって、圧縮機が、第1の動作モードの間に電動機に依存せずに稼働することが可能となるが、電動機が、第2の動作モードの間に圧縮機を駆動することも可能となる。電動機は、第3の動作モードにおいて、航空機エンジンを始動させるためにも利用することが可能である。
【0013】
図1は、本明細書に開示する実施例が実現可能な例示の航空機100を示している。航空機100は、客室を画定する胴体102と、胴体102に結合された第1の翼104と、胴体102に結合された第2の翼106とを備える。示される例では、航空機100は、第1の翼104が搭載する第1のエンジン108と、第2の翼106が搭載する第2のエンジン110とを備える。他の実施例において、航空機100は、エンジンを1つだけ備えてよく、又は、2つ以上のエンジンを備えてよい。エンジンは、第1の翼104及び/又は第2の翼106、及び/又は、航空機100の他の構造物(例えば、胴体102の尾翼部)に結合することが可能である。
【0014】
各航空機エンジン108、110は、本明細書に開示する専用の圧搾空気システムを利用することが可能である。本明細書に開示する例示の圧搾空気システムは、環境制御システム(ECS:environmental control system)、熱的な防氷システム(例えば、翼及び/又はエンジン、防氷システム)、(空気圧装置に供給するための)空気圧供給システム、及び/又は、圧搾空気の使用を要する航空機の任意の他のシステムといった1つ以上の航空機システムに供給可能な圧縮空気又は圧搾空気を発生させる。圧搾空気システムは、各エンジン108、110を始動させるためにも利用することが可能である。
【0015】
図2は、本開示の教示に従って構造化された例示の圧搾空気システム200(ここではシステム200と称する)の概略図である。例示のシステム200は、例示の航空機100(図1)の(部分切り取り図で示す)第1のエンジン108との関連で実装される。しかしながら、例示のシステム200は、第2のエンジン110(図1)との関連でも同様に実装することが可能である。システム200は、航空機100の1つ以上のシステムが利用可能な圧縮空気又は圧搾空気を発生させる働きをする。例えば、図2に示すように、システム200は、ECS202に流体連結される。ECS202は、例えば、客室の圧力及び/又は客室の温度に対して圧搾空気を調整する。ECS202は、例えば、システム200から圧搾空気を受け取って客室の圧力及び/又は客室の温度に対して調整又は制御する1つ以上のECSパック(例えば、空気循環冷却システム)を含みうる。追加的又は代替的に、圧搾空気は、熱的な防氷システム(例えば、翼及び/又はエンジン、防氷システム)、(空気圧装置に供給するための)空気圧供給システム等といった、航空機100の1つ以上の他のシステムによって使用されうる。圧搾空気システム200は、本明細書でさらに詳細に開示するように、第1のエンジン108を始動させる機能も備えうる。
【0016】
示される例では、システム200は、ECS202及び/又は1つ以上の他のシステムに提供される圧搾空気を生成するために使用される圧縮機204を備える。システム200は、ここではラジアル駆動軸206と称する、第1のエンジン108に動作可能に連結される駆動軸206が、圧縮機204に動力を供給して圧搾空気を発生させるために利用される第1の動作モード(図2との関連で開示される)と、タービン208が、圧縮機204に動力を供給して圧搾空気を発生させるために利用される第2の動作モード(図4との関連で開示される)と、で稼働することが可能である。幾つかの実施例において、システム200は、第1のエンジン108を始動させるためにタービン208が利用される第3の動作モードでも稼働することが可能であり、このことは、以下で図5との関連でさらに詳細に開示する。システム200の態様を詳細に開示する前に、以下、第1のエンジン108ついて説明する。
【0017】
図2の示される実施例では、第1のエンジン108は、(エンジンコアと称することもある)ガスタービンエンジン210と、ファン212とを有するターボファンエンジン(turbofan engine)として実現されている。ガスタービンエンジン210は、ファン212を駆動して推進力を発生させるために利用される。ファン212は、第1のエンジン108のエンジン室214内で回転する。ファンダクト216(例えば、バイパス路、通路、ノズルダクト等)は、ガスタービンエンジン210の(コアカウルと称することもある)外壁218とエンジン室214との間で画定される。ファン212が回転する間、ファン212は気流を発生させる。気流の一部は、ファンダクト216を通って流れてガスタービンエンジン210を迂回し、前方へ推進力を発生させ、また、気流の他の部分は、燃焼のためにガスタービンエンジン210にも供給される。
【0018】
ガスタービンエンジン210は、(ガスタービンエンジン210の前端の)コア空気取入口220を通じて圧縮機222へと空気を引き入れることによって稼働する。具体的には、ガスタービンエンジン210が稼働しているときには、ファンダクト216からの気流の一部の流れが、コア空気取入部220を通ってガスタービンエンジン210の圧縮機222へと変えられる。圧縮機222は、複数の圧縮部を備えうる。例えば、図2の圧縮機222は、2つの圧縮機、即ち、第1の圧縮機224及び第2の圧縮機226を備える2軸式圧縮機である。第1の圧縮機224と第2の圧縮機226とのそれぞれは、様々な圧縮段を含んでおり、この様々な圧縮段によって、空気がコア空気取入口220から燃焼室228へと流れる間に、空気の圧力が徐々に上げられる。第1の圧縮機224は、比較的低圧の空気を提供する低圧圧縮機(LPC:low-pressure compressor)であり、第2の圧縮機226は、比較的高圧の空気を提供する高圧圧縮機(HPC:high-pressure compressor)である。第1の圧縮機224は、(低速スプール又はN1と称することもある)第1の駆動軸230に連結されており、第2の圧縮機226は、(高速スプール又はN2と称することもある)第2の駆動軸232に連結されている。第1の駆動軸230は、第1のタービン234(例えば低圧タービン(LPT:low-pressure turbine)234に連結されかつ低圧タービン234によって駆動され、第2の駆動軸232は、第2のタービン236(例えば高圧タービン(HPT:high-pressure turbine)236に連結されかつ高圧タービン236によって駆動される。本実施例では、圧縮機222は、2つの圧縮機224,226を備える2軸式圧縮機である。しかしながら、他の実施例において、圧縮機222は、各々が各軸を介してタービンに連結されるより多く又はより少ない圧縮部を備えうる。
【0019】
第2の圧縮機(HPC)226を出た後で、高度に圧搾された空気が燃焼室228に提供され、燃焼室228では、燃料が噴射されて高度に圧搾された空気と混合されて燃焼させられる。燃焼室228を出た高エネルギーの気流によって、第1の駆動軸230及び第2の駆動軸232のそれぞれに連結する第1のタービン234及び第2のタービン236の翼が回転させられる。第1の駆動軸230は一貫して延びており、第2の駆動軸232に依存せずに回転する。こうした中で、第1の駆動軸230及び第2の駆動軸232の回転によって、第1の圧縮機224、第2の圧縮機226それぞれの翼が回転させられる。その後、熱風がノズル238を介して排出され、そこで、ファンダクト216内のファン212により提供される加速された気流と混合されて、前方方向に航空機100を進ませる前方への推進力が発生する。本実施例では、第1のエンジン108は、ターボファンエンジンとして実現されているが、例示のシステム200は、ターボプロップエンジン(turbo-prop engine)といった他の種類のエンジンとの関連でも同様に実現が可能である。
【0020】
示される実施例では、圧縮機204は、圧縮機入口240と、圧縮機出口242とを含む。圧縮機204は、駆動されるときには、圧縮機入り口240から圧縮機出口242への空気の圧力を上げる。圧縮機入口240は、第1の空気源243からの空気を受け取る。本実施例では、第1の空気源243は、第1のエンジン108のファン空気ダクト216からのファン空気である。図2に示すように、第1の通路244が、ファンダクト216からの空気を圧縮機入口240に提供する。具体的には、第1の通路244は、エンジン室214に設けられたポート246に連結している。従って、第1の通路244は、矢印で示すように、圧縮機204にファン空気を提供する。しかしながら、他の実施例において、第1の空気源243は、1つ以上の他のソース(例えば、周囲の空気、第1の圧縮機224からの抽気等)からの空気でありうる。従って、第1の通路244は、他の場所(例えば、ガスタービンエンジン210の抽気ポート)に流体連結されうる。図2に示すように、第1の通路244を通過する圧縮機入口240への空気の流れを制御するために、第1の弁245が、第1の通路224に連結されている。第1の動作モードでは、第1の弁245は開いており、これにより、ファン空気がファンダクト216から圧縮機入口240へと流れることが可能となる。圧縮機204は、稼働時に、圧縮機入り口240から圧縮機出口242へのファン空気の圧力を上げる。
【0021】
示される実施例では、第2の通路247が、圧縮機出口242をECS202及び/又は1つ以上の他のシステムと流体連結させる。こうした中で、圧縮機204によって圧搾空気が発生させられ、この圧搾空気は、矢印で示すように、ECS202及び/又は圧搾空気を受け取る1つ以上の他のシステムに供給されうる。第2の弁248が、第2の通路247を通過する、ECS202及び/又は圧搾空気を受け取る1つ以上の他のシステムへの空気の流れを制御するために、第1の通路247に連結されている。第1の動作モードでは、第2の弁248は開いており、これにより、高圧空気が、第2の通路247を通過して、ECS202及び/又は圧搾空気を受け取る1つ以上の他のシステムへと流れることが可能となる。
【0022】
示される実施例では、システム200は、第1の通路244と第2の通路247とを流体連結させる第3の通路249を含む。第3の通路249は、圧縮機204により生成された圧搾空気の温度を上げるための加熱経路又は循環経路として利用することが可能である。(加熱弁又は循環弁と称しうる)第3のバルブ250が、第3の通路249に連結されている。第3の弁250は、圧搾空気を加熱するべきかに従って開閉が可能である。第3の弁250が閉じている場合には、第3の通路249を空気が流過しない。第3の弁250が開いている場合には、圧縮出口242を出た(相対的に暖かい)圧搾空気の一部が、第3の通路249を通って第1の通路244へと方向付けられ、及び、圧縮機入口240へと戻して方向付けられる。この循環プロセスによって、圧縮機出口242で生成された圧搾空気の温度が上昇する。航空機100の外の空気の温度が冷たいときには、例えば、圧縮機入口240に供給されているファン空気の温度を上げるために第3の弁250を開けることが可能であり、これにより、圧縮機出口242で生成される圧縮空気の温度が上昇する。
【0023】
示される例では、圧縮機204は、(幾つかの実施例では、ハウジング内のインペラに結合されている)圧縮機軸251を含む。圧縮機軸251が駆動されると、圧縮機204は、圧縮機入口240から圧縮機出口242へと動く空気の圧力を上げる働きをする。幾つかの例において、圧縮機軸251は軸受(例えば空気ベアリング)によって支持され、圧縮機軸251の滑らかな回転が可能となる。
【0024】
本明細書に開示するように、システム200は様々なモードで稼働しうる。図2に示す第1の動作モードでは、圧縮機軸251が、圧縮機204と第1のエンジン108との間の機械的接続によって駆動され、第2の動作モードでは、圧縮機軸251が、(例えば、第1のエンジン108からの抽気を介して動力が供給されうる)タービン208によって駆動される。第2の動作モードは、図4のとの関連でさらに詳細に開示する。
【0025】
第1の動作モードでは、図2に示すように、圧縮機204が、第1のエンジン108に動作可能に連結されかつ第1のエンジン108により駆動されるラジアル駆動軸206によって、駆動される。或る動作条件の間、図示される例のラジアル駆動軸206は、タービン208よりも効率良く圧縮機204に動力を供給する。従って、或る飛行状況の間圧縮機204に動力を供給するラジアル駆動軸206を用いることによって、(例えば、より少ない燃料を使用するよりも)航空機100の効率が著しく向上する。
【0026】
示される実施例では、システム200は、ラジアル駆動軸206に動作可能に連結されかつ当該駆動軸206により駆動される補助的又はアクセサリギアボックス252(例えば、トランスファーケース)を備える。ラジアル駆動軸206の第1の末端254は、第1のエンジン108に動作可能に連結されている。本例では、ラジアル駆動軸の第1の末端254は、第1の歯車256に連結されている。第1の歯車256は、ガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232(高速スプール)に連結された第2の歯車258と係合している。示される例では、第1の歯車256及び第2の歯車258は、互いにほぼ直交して方向付けられた、かさ歯車である。ラジアル駆動軸206の第2の末端259は、アクセサリ252に動作可能に連結されている。第1のエンジン108が稼働しているときには、第2の駆動軸232がその長手方向軸の周りを回転する。第1の歯車256と係合する第2の歯車258が、第1の歯車256を回転させ、従って、ラジアル駆動軸206にその長手方向軸の周りを回転させる。結果として、ラジアル駆動軸206は、アクセサリギアボックス252に動力を供給する。他の実施例において、ラジアル駆動軸206は、ガスタービンエンジン210の第1の駆動軸230(低速スプール)に動作可能に連結されてよい。
【0027】
アクセサリギアボックス252は、航空機の1つ以上の付属品(例えば、ポンプ、発電機等)に動力を供給するために利用可能な1つ以上の出力軸(動力取出装置)を含む。アクセサリギアボックス252は、ラジアル駆動軸206と様々な出力軸との間の様々なギヤ比を提供するよう構成されうる。示された実施例では、圧縮機204は、アクセサリギアボックス252の第1の出力軸260に連結されている。幾つかの実施例において、アクセサリギアボックス252は、ラジアル駆動軸206と第1の出力軸260との2:1のギア比を提供する。こうした中で、ガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232(高速スプール)が、20,000RPMで回転しているときには、第1の出力軸260は、40,000RPMで回転している。システム200は、(フリーホイール、ノーバッククラッチ、ワンウェイローラクラッチと称されることもある)第1のオーバーラニングクラッチ261を備え、この第1のオーバーラニングクラッチ261は、圧縮機204と第1の出力軸260との間に動作可能に連結されている。具体的には、第1のオーバーラニングクラッチ261は、圧力機軸251と第1の出力軸260とを連結する。第1のオーバーラニングクラッチ261は、係合した状態又はロックされた状態と、解除された状態又は無効化状態と、で動作する。係合した状態では、第1の出力軸260が圧縮機軸251を回転させ、これにより、アクセサリギアボックス252から圧縮機204へと動力が伝達される。解除された状態では、圧縮機軸251は、第1の出力軸260よりも速く回転することが可能であり、これにより、圧縮機204は、本明細書でさらに詳細に開示するように、アクセサリギアボックス252に依存せずに稼働することが可能となる。図では、クロスハッチングが、オーバーラニングクラッチが係合していることを示すために利用され、点(斑点)が、オーバーラニングクラッチが解除されていることを示すために利用される。
【0028】
図3A及び図3Bは、第1のオーバーラニングクラッチ261として実装可能な例示のスプラグクラッチ300(及び、本明細書でさらに詳細に開示する第2のオーバーラニングクラッチ265、第3のオーバーラニングクラッチ276)を示している。スプラグクラッチ300は、外輪302と、内輪304と、外輪302と内輪304との間に配置された複数の可動的なスプラグ306(そのうちの1つが図3A及び図3Bで参照される)とを含む。本例では、(アクセサリギアボックス252により動力が供給される)第1の出力軸260が、外輪302に連結されており、圧縮機軸251が、内輪304に連結されている。スプラグ306は、(本ページの中へと通る)自身の中心の周りを旋回しうる。図3Aは、係合した状態又はロックされた状態のスプラグクラッチ300を示している。図3Aでは、外輪302が時計回りの方向に回転する。このことは、例えば、アクセサリギアボックス252が圧縮機204を駆動している第1の動作モードの間に起きる。外輪302とスプラグ306との間の相互作用によって、スプラグ306が旋回させられて内輪304と噛み合う。結果的に、外輪302と、スプラグ306と、内輪304とが全て一緒に(図3Aでは時計回りの方向に)回転する。従って、第1の出力軸260が外輪302を回転させると、外輪302が内輪304を回転させ、従って圧縮機軸251を同じ方向に回転させる。
【0029】
図3Bは、解除された状態又は無効化状態のスプラグクラッチ300を示している。図3Bでは、内輪304が、外輪302に依存せずに(外輪302よりも速く)時計周りの方向に回転している。このことは、例えば、(本明細書でさらに詳細に開示するように)タービン208が代替的に圧縮機軸251を駆動している第2の動作モードの間に起きる。図3Bに示すように、内輪304は、スプラグ306の内表面に沿って摺動する。しかしながら、この相互作用によっては、スプラグ306は、外輪302と摩擦により噛み合わされない。こうした中で、内輪304は、外輪302の回転を引き起こすことなく、時計回りの方向に回転する。外輪302が回転して、内輪304の回転速度と一致する速度に達した場合には、スプラグ306が旋回して内輪304に噛み合い、外輪302は、結局、内輪304にドライブをかける。こうした中で、内輪304は、少なくとも外輪302と同じ速さで回転する。反対に、外輪302が回転している間、内輪304は、独立的に外輪302よりも速い回転速度で回転することが可能であり、このことは外輪302に影響を与えない。図2に戻って参照すると、第1のオーバーラニングクラッ261によって、有利に、第1の動作モードにおいて、アクセサリギアボックス252が圧縮機204を駆動することが可能となる一方、第2の動作モードでは、タービン208が、アクセサリギアボックス252を駆動することなく、圧縮機204を駆動することが可能となる。この種のオーバーラニングクラッチはまた、有利に、いずれの動力も必要とせず又は仕組みを作動させることなく稼働する。
【0030】
図2では、システム200は、第1のエンジン108が圧縮機204に機械的に動力を供給する第1の動作モードで稼働している。具体的には、第1のエンジン108が稼働しており、これにより、(ラジアル駆動軸206を介して)アクセサリギアボックス252に動力が供給される。第1のエンジン108は、離陸中、上昇中、及び/又は巡航中といった、相対的に速い速度(高いRPM(revolutions-per-minute))で稼働することが可能である。結果として、第1の出力軸260は、相対的に速い速度で回転している。こうした中で、第1のオーバーラニングクラッチ261が繋がっており、これにより、第1の出力軸260から圧縮機軸251へと回転力が伝達される。圧縮機204によって、圧縮機入口204で供給された空気の圧力が、圧縮機出口242での高圧にまで上げられる。圧搾空気が、第2の通路247を介して、ECS202及び/又は圧搾空気を受け取る1つ以上の他のシステムへと提供される。
【0031】
ECS202及び/又は他のシステムは、圧縮機204により生成された圧搾空気を受け取るために、第2の通路247に流体連結されている。幾つかの実施例において、第2の通路247からECS202への圧搾空気の流れを制御するために、第4の弁263がECS202の上流に配置されている。同じように、1つ以上の他の弁を他のシステムより上流に、各上記他のシステムへの圧搾空気の流れを制御するために配置することが可能である。
【0032】
幾つかの実施例において、(システム200に類似した)第2の圧搾空気システムが、高圧空気を発生させるために、第2のエンジン110との関連で実装される。第2のシステムからの圧搾空気は、システム200からの圧搾空気と混合されて、ECS202及び/又は1つ以上の他のシステムに提供される。示される実施例では、第5の弁264が、第2のエンジン110の第2のシステムから第2の通路247への圧搾空気の流れを制御し、これにより、圧搾空気がECS202及び/又は1つ以上の他のシステムへと供給される。
【0033】
示される実施例において、システム200は、圧縮機204とタービン208との間で動作可能に連結される第2のオーバーラニングクラッチ265を備える。具体的には、タービン208はタービン軸266を備え、このタービン軸266は、第2のオーバーラニングクラッチ265を介して圧縮機軸251に動作可能に連結される。第2のオーバーラニングクラッチ265は、図3A及び図3Bに示したスプラグクラッチ300といったスプラグクラッチとして実現されうる。例えば、タービン軸266を、外輪に連結することが可能であり、圧縮機軸251を、内輪に連結することが可能である。こうした中で、第2のオーバーラニングクラッチ265によって、圧縮機軸251が、タービン軸266よりも速く回転することが可能となる。従って、第1の動作モードでは、第2のオーバーラニングクラッチ265が(斑点で示すように)切られており、ここでは、圧縮軸251は、タービン208を駆動することなく回転する。従って、タービンが使用されていないときにタービン208を駆動することによって、動力が浪費されない。第1の動作モードでは、タービン208は停止状態でありうる(例えば、タービン軸266は回転しない)。
【0034】
示される実施例において、タービン208は、タービン入口268と、タービン出口269とを含む。タービン入口268は、第2の空気源267から空気を受け取るためのものである。第2の空気源267は、ガスタービンエンジン210の抽気といった高圧空気源でありうる。本例では、第2の空気源267は、ガスタービンエンジン210の第2の圧縮機226(HPC)からの抽気である。示される実施例では、第4の通路270が、タービン入口268を、第2の圧縮機226(HPC)の抽気ポート271へと流体連結させる。こうした中で、第4の通路270は、第2の圧縮機226からタービン入口268へと高圧の抽気を送ることが可能である。示される例では、第4の通路270は、第2の圧縮機226の最終放出段から抽気を受け取る。しかしながら、他の実施例において、第2の空気源267は、他の空気源(例えば、より低い段の圧縮機)からの空気でありうる。例えば、第4の通路270は、第2の圧縮機226のより低い段(例えば、中間段)及び/又は第1の圧縮機224の或る段から抽気を受け取るために、ガスタービンエンジン210の他のポートに流体連結されうる。
【0035】
示される実施例において、第6の弁272及び第7の弁273が、第4の通路270を通過するタービン入口268への空気の流れを制御するために、第4の通路270に連結されている。第6の弁272及び第7の弁273は、本明細書ではそれぞれ、第1のタービン入口弁272、第2のタービン入口弁273と称される。図2に示すように、システム200が第1の動作モードで稼働するときには、第1のタービン入口弁272及び第2のタービン入口弁273は閉じている。示される実施例では、第5の通路274が、タービン出口269を、それより下流の場所と流体連結する。従って、タービン208が(図4との関連でさらに詳細に開示するように)稼働しているときには、第5の通路274は、タービン出口269から出た空気を他の場所へと方向付けることが可能である。幾つかの実施例において、第5の通路274は、タービン出口269を出た空気を、推進力回復のためにファンダクト216へと方向付ける。例えば、第5の通路274は、ファンダクト216内へと空気を方向付けるために、胴体214に設けられたポートに連結されうる。
【0036】
示される実施例において、タービン208はまた、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275に動作可能に連結されており、この第2の出力軸275は、アクセサリギアボックス252のための始動入力部と称されうる。第1の出力軸260と同様に、第2の出力軸275は、アクセサリギアボックス252内の歯車列を介してラジアル駆動軸206に機械的に連結されている。本明細書でさらに詳細に開示する第3の動作モードでは、タービン208を、以下のことによって第1のエンジン108を始動させるために利用することが可能であり、即ち、第2の出力軸275を駆動し、これによりアクセサリギアボックス252に動力を供給し、これによりラジアル駆動軸206を駆動し、従って、第1のエンジン108の第2の駆動軸232を回転させることにより、第1のエンジン108を始動させるために利用することが可能である。
【0037】
示される実施例において、システム200は、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275とタービン208との間で動作可能に連結される第3のオーバーラニングクラッチ276を備える。本実施例では、第1の歯車278はタービン軸266に連結されている。第1の歯車278は、第2の歯車279に係合している(例えば、噛み合っている)。第2の歯車279は、入力軸281を介して遊星ギアボックス280に連結している。遊星ギアボックス280は、入力軸281と出力駆動軸282との間の回転の方向を反転させる。出力駆動軸282は、第3のオーバーラニングクラッチ276を介してアクセサリギアボックス252の第2の出力軸275に連結されている。第3のオーバーラニングクラッチ276は、図3A及び図3Bに示したスプラグクラッチ300といった、スプラグクラッチとして実現可能である。このような実施例において、出力駆動軸282は外輪に連結しており、第2の出力軸275は内輪に連結している。こうした中で、第3のオーバーラニングクラッチ276は、第2の出力軸275が出力駆動軸282よりも速く回転出来るように構成されている。従って、第1の動作モードでは、第3のオーバーラニングクラッチ276が、(斑点で示すように)切れており、従って、第2の出力軸275は、出力駆動軸282(及び、従ってタービン208)を回転させることなく、自在に回転することが可能である。従って、第1のエンジン108が稼働していて第2の出力軸275が回転しているときには、第2の出力軸275は、タービン208から動作可能に切断されている。第1のオーバーラニングクラッチ261、第2のオーバーラニングクラッチ265、第3のオーバーラニングクラッチ276を、スプラグクラッチとして実現されたものとして開示してきたが、他の実施例において、第1のオーバーラニングクラッチ261、第2のオーバーラニングクラッチ265、第3のオーバーラニングクラッチ276は、ローラランプクラッチ(roller ramp clutch)、ラップスプリングクラッチ(wrap spring clutch)、又はウェッジスタイルクラッチ(wedge style clutch)といった、他の種類のオーバーラニングクラッチによって実現可能である。
【0038】
示される実施例において、システム200は、第2の通路247と第4の通路270との間に第6の通路284を備える。第6の通路284は、第3の動作モード(エンジン始動モード)の間にタービン208に高圧空気を提供するために利用することが可能であり、このことは、図5との関連でさらに詳細に開示される。ここではタービン始動弁285とも称される第8の弁285が、第6の通路284を通過する空気の流れを制御するために、第6の通路284に連結されている。図2に示す第1の動作モードでは、タービン始動弁285は閉じている。幾つかの実施例において、図5との関連でさらに詳細に開示するように、第1のエンジン108の始動のための高圧空気を供給するために、APU286が第2の通路247を介して第6の通路284に流体連結している。第9の弁287が、APU286から第2の通路247への空気の流れを制御する。
【0039】
示される実施例において、第7の通路290が、第2の通路247を、より下流の場所に流体連結する。第7の通路290は、第3の通路249の一部を介して第2の通路247に流体連結されている。第7の通路290はまた、図5との関連でさらに詳細に開示するように、始動モードの間に、タービン208に対する圧縮機204の負荷を低減するために利用することが可能である。本明細書ではファンダクト入口弁292とも呼ばれる第10の弁292が、第7の通路290に連結している。第1の動作モードでは、ファンダクト入口弁292は閉じている。例示の弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292はいずれも、開いた状態と閉じた状態とで稼働する弁(例えば遮断弁)及び/又は減圧機能を実行する弁(例えば、減圧遮断弁、圧力逃がし弁等)として実現可能である。
【0040】
例示のシステム200は、様々な装置(例えば弁)を動かして様々なモードでシステム200の動作を制御するために、制御システム293を備える。制御システム293は、例えばコントローラ又はプロセッサとして実現可能である。制御システム293は、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292、及び、システム200の様々なパラメータを監視する1つ以上のセンサと通信可能に結合されている。
【0041】
示される実施例において、制御システム293は、入力/出力モジュール294と、比較器295と、装置コントローラ296とを備える。入力/出力モジュール294は、システム200の1つ以上のパラメータを測定する1つ以上のセンサから信号を受信する。比較器295は、上記パラメータの測定された値を、1つ以上の閾値又は閾値の範囲と比較する。上記パラメータが閾値又は閾値の範囲を満たすかどうかに基づいて、装置コントローラ296は、第1の動作モードと第2の動作モードとの間でシステム200を切り替えるために、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292の1つ以上を操作することが可能である。
【0042】
例えば、第1のセンサ298aは、ガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232(高速スプール、N2)の速度(RPM)を測定する。第1のセンサ298aは、入力/出力モジュール294を介して制御システム293に(第2の駆動軸232の速度に対応する)信号を提供する。第1のエンジン108が、例えば離陸中、上昇中、又は巡航中で中速又は高速で稼働している場合には、第2の駆動軸232は、圧縮機204に十分な動力を提供する速度で回転している。しかしながら、第1のエンジン108が、例えば下降中又はアイドル中でより遅い速度で稼働している場合には、第2の駆動軸232は、ECS202及び/又は他のシステムの要求を満たすため充分な圧搾空気を発生させるために圧縮機204に十分な動力を提供するほど十分に速い速度で回転していない可能性がある。比較器295は、第1のセンサ298aにより測定された速度を、例えばルックアップテーブルによって提供される速度の閾値又は速度の範囲と比較する。速度が、上記範囲外にある(例えば、閾値速度を下回る)場合には、制御システム293の装置コントローラ296が、以下で詳細に開示するように(ここでは、タービン208が代替的に圧縮機204に動力を供給するために利用される)、第2の動作モードに切り替えるために、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292の1つ以上を開かせ又は閉じさせることが可能である。
【0043】
追加的又は代替的に、制御システム293は、1つ以上の他のパラメータを監視することが可能である。例えば、第2のセンサ298bは、圧力機出口242の下流の第2の通路247に結合されている。第2のセンサ298bは、圧縮機204により生成された圧搾空気の圧力及び/又は流量を測定することが可能である。第2のセンサ298bは、入力/出力モジュール294を介して制御システム293に(圧搾空気の測定された圧力及び/又は流量に対応する)信号を提供する。制御システム293は、第2のセンサ298bにより測定された下流の圧力及び/又は流量が、所与の高度、航空機速度、乗客数、凍結条件、又は航空機システム200の動作に影響を与える他の任意の条件についての、所定の圧力範囲(例えば、閾値圧力、圧力要求値)内にあるかどうかを判定することが可能である。比較器295は、第2のセンサ298bにより提供された信号を、例えばルックアップテーブルにより提供される圧力及び/又は流量の閾値又は範囲と比較する。上記圧力及び/又は流量が上記範囲外にある(例えば、閾値圧力又は閾値流量を下回る)場合には、制御システム293の装置コントローラ296は、第2の動作モードに切り替えるために、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292の1つ以上を開かせ又は閉じさせる。他の実施例において、制御システム293は、第3のセンサ298cを介して、圧縮機軸251の速度を監視することが可能である。上記のパラメータと同様に、制御システム293は、第3のセンサ298cにより測定された速度を閾値又は範囲と比較して、第1の動作モードと第2の動作モードとの間で切り替えるかどうかを判定することが可能である。
【0044】
例示の稼働では、システム200は、第1の動作モードで駆動しており、この第1の動作モードでは、例えば巡航中といった第1の飛行区間又は飛行状況の間に圧縮機204に動力を供給するために、ラジアル駆動軸206が利用される。幾つかの実施例において、ラジアル駆動軸206を介して圧縮機204を駆動することは、タービン208を介して圧縮機204に動力を供給するよりも効率が良い。飛行任務の大部分を占めることが多い巡航中に、圧縮機204に十分な動力を提供するために、第1歯車256及び第2の歯車258と、アクセサリギアボックス252内の歯車と、の比を選択することが可能であり、このようにして燃料消費が低減される。しかしながら、ラジアル駆動軸206は、第2の駆動軸232と固定のギア比率にあるため、第1のエンジン108が、例えばアイドル中又は下降中といった第2の飛行区間又は飛行条件で稼働しているときには、ラジアル駆動軸206は、圧縮機204に十分な動力を提供することができない可能性がある。アイドル時又は下降時には、第1のエンジン108は、巡航中よりも遅い速度で稼働している。このような条件では、ラジアル駆動軸206は、圧搾空気を利用するシステムの要求を満たすために十分な動力を圧縮機204に提供しえない可能性がある。例えば、第2の駆動軸232(高速スプール)は、13,000RPMで回転しうるが、第1の出力軸260及び圧縮機駆動軸251は、26,000RPMでのみ回転する。従って、システム200を、第1の動作モードから第2の動作モードに切り替えることが可能であり、この第2の動作モードでは、圧縮機軸251を駆動し従って圧縮機204を駆動して、航空機100の上記システムに圧搾空気を提供するために、タービン208が利用される。制御システム293が、1つ以上のパラメータが自身の対応する閾値を満たしておらず(例えば、第1のエンジン108の速度が閾値よりも遅い)及び/又はそうでなければ圧縮機204が上記システムに充分な圧搾空気を提供していないと判定した場合には、制御システム293は、第1の動作モードから第2の動作モードへとシステム200を切り替えるために、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292の1つ以上を操作する。
【0045】
図4は、システム200が第2の動作モードで稼働しておりタービン208が圧縮機204に動力を供給するために使用される一例を示している。第1の動作モードから第2の動作モードに切り替えるために、制御システム293の装置コントローラ296は、第1のタービン入口弁272及び第2のタービン入口弁273を開けるための命令信号を送信する。例される実施例では、2つのタービン入口弁が使用されているが、他の実施例では、タービン入口弁が1つだけ(例えば、第1のタービン入口弁272のみ)使用されてよい。第1のタービン入口弁272及び第2のタービン入口弁273が開いているときには、第2の圧縮機226(HPC)からの高圧抽気が、矢印で示すようにタービン入口268に供給される。タービン208は、例えば、可変容量型のラジアル流入タービン(variable geometry radial inflow turbine)でありうる。高圧抽気によって、タービン208が駆動され、タービン208によって、今度は圧縮機204が駆動される。具体的には、タービン208は、抽気により提供された熱エネルギーを、この高温の高圧抽気をより低温かつより低圧へと膨張させることによって、機械的エネルギーへと変換する。この状況において、タービン軸266は、アクセサリギアボックス252の第1の出力軸260よりも速く回転している。例えば、第1の出力軸260が26,000RPMで回転している一方で、タービン駆動軸266は、40,000RPMで回転しうる。こうした中で、タービン軸266の速度が、圧縮機軸251の速度に達したときには、第2のオーバーラニングクラッチ265が、(クロスハッチングが示すように)係合した又はロックされた状態に切り替わり、このことにより、タービン軸266が圧縮機軸251を駆動することが可能となる。その後、タービン208は、圧縮機204に動力を供給し始め、従って、タービン208と圧縮機204とがターボ圧縮機を形成する。さらにまた、圧縮機軸251は、第1の出力軸260よりも速く回転し始める。例えば、タービン軸266は、40,000RPMで圧縮機軸251を駆動することが可能であるが、第1の出力軸260は、26,000RPMで回転している。こうした中で、第1のオーバーラニングクラッチ261が(斑点が示すように)切れており、このことにより、圧縮機軸251は、第1の出力軸260に依存せずに(第1の出力軸260よりも速く)回転することが可能となる。従って、圧縮機軸251は、第1の出力軸260を駆動しない。
【0046】
先に開示したように、第2の動作モードでは、タービン208が圧縮機204に動力を供給する。圧縮機204は、圧縮機出口242で圧搾空気を生成し、この圧搾空気は、第2の通路247を介してECS202及び/又は1つ以上の他のシステムに供給される。第2の動作モードでは、第1の弁245は開いたままであり、ファン空気が圧縮機入り口240と流れることが可能となる。第3の弁250は、圧搾空気の所望の温度に従って開閉されうる。タービン始動弁285、第9の弁287、及びファンダクト入口弁292は閉じたままである。
【0047】
幾つかの実施例において、第1のタービン入口弁272は、開弁状態と閉弁状態とで稼働する遮断弁であり、第2のタービン入口弁273は、タービン入口268へと流れる抽気の圧力を調整することが可能な減圧遮断弁(PRSOV:pressure-reducing shutoff valve)である。圧縮機204に提供される所望の動力に従って、制御システム293は、タービン軸266での目標速度を生じさせる所望の圧力に対して圧力を調整するために、第2のターボ入口弁273を制御することが可能である。このようにして、制御システム293は、圧縮機204に提供される動力を制御し、従って圧縮機出口242で発生する空気の圧力及び流量を制御することが可能である。上記2つの弁の構成によって、第1のタービン入口弁272又は第2のタービン入口弁273の一方が動作不能になった(例えば開弁しない)場合には、上記システムにおける冗長性も提供される。
【0048】
示される実施例において、タービン出口269を出た空気は、第5の通路274を介して、推進力回復のためにファンダクト216へと方向付けられる。追加的又は代替的に、タービン出口269を出た空気は、熱的な防氷システム(例えば、エンジン防氷システム、翼防氷システム)、及び/又は、第1のエンジン108の冷却の支援のため、タービン234,236及び/又はガスタービンエンジン210のケーシングといった、1つ以上の他の場所に伝達されうる。ケーシング及び/又はタービン翼を冷却することによって、例えば、タービンの翼とケーシングとの間の適切な空隙又は空間が維持される(例えば、温度上昇に因る収縮及び/又は膨張が防止される)。幾つかの実施例において、圧力を調整するため及び/又は流体の遮断をもたらすために、1つ以上の弁が第5の通路274に配置されてよい。
【0049】
システム200が第2の動作モードで動作しているときには、タービン軸266が、(第1の歯車278及び第2の歯車279、並びに遊星ギアボックス280を介して)出力軸282を回転させている。しかしながら、遊星ギアボックス280で起こるギア減速により、出力軸282は、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275よりも遅い速度で回転している。例えば、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275は、13,000RPMで回転できるが、出力軸282は、3,300RPMで回転している。こうした中で、第3のオーバーラニングクラッチ276が、(斑点で示すように)切れており、このことにより、第2の出力軸275が出力軸282に依存せずに(出力軸282よりも速く)回転することが可能となる。従って、システム200が第2の動作モードで稼働している間は、タービン208は第2の出力軸275を駆動しない。
【0050】
制御システム293は、第1のエンジン108及び/又はシステム200の1つ以上のパラメータを監視し続ける。制御システム293が、システム200を第1の動作モードへと戻して切り替えられると判定した場合には、制御システム293は、第1のタービン入口弁272及び第2のタービン入口弁273を閉じ、これにより、タービン208が切断される。その後、図2の第1の動作モードにおいて示したように、第1のオーバーラニングクラッチ261が再び繋がり、アクセサリギアボックス252が、圧縮機204を駆動し始める。こうした中で、制御システム293は、1つ以上のパラメータを監視して、第1の動作モード(図2)と第2の動作モード(図4)との間で前後に切り替えることが可能であり、従って、ECS202及び/又は1つ以上の他のシステムの要求を満たすために利用可能な圧搾空気の不変の供給が保証される。
【0051】
図5に示すように、システム200は、第3の動作モード(エンジン始動モード)でも稼働することが可能であり、この第3の動作モードでは、第1のエンジン108を始動させるためにタービン208が利用される。第3の動作モードでは、第1の弁272が閉じている。第1のエンジン108を始動させるために、高圧空気が、タービン208を駆動するためにタービン入口268に供給され、このことによりアクセサリギアボックス252に動力が供給され、これによりラジアル駆動軸206が駆動され、従って、第1のエンジン108の第2の駆動軸232が駆動される。幾つかの実施例において、タービン208を駆動するための高圧空気が、APU286によって供給される。このような例では、第9の弁287が開いており、このことにより、高圧空気が、第2の通路247を通過して第6の通路284へと流れ、さらに、第6の通路284から第4の通路270を通過してタービン入口268へと流れることが可能である。第2の弁248は閉じており、第1のタービン入口弁272は閉じており、及び、第2のタービン入口弁273は開いている。追加的又は代替的に、高圧空気は、第2のエンジン110によって供給されてよい。例えば、第2のエンジン110が最初に始動されている場合には、第2のエンジン110により生成された高圧空気が、(クロスフロー抽気システム(cross-flow bleed system)と呼ばれることもある)第1のエンジン108に供給されうる。他の実施例において、高圧空気は、地上のカート(ground cart)といった1つ以上の他のソースによって供給され、又は搭載された又は航空機100(図1)から離れた高圧空気室に貯蔵されうる。
【0052】
タービン入口268に提供された高圧空気によって、タービン駆動軸266が駆動される。タービン軸266によって、(第1の歯車278及び第2の歯車279と、入力駆動軸281と、遊星ギアボックス280とを介して)出力駆動軸282駆動される。遊星ギアボックス280は、タービン軸266から出力軸282へと、従って、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275へとRPMを下げるよう構成されうる。例えば、遊星ギアボックス280は、12:1のギア比を提供することが可能である。こうした中で、タービン軸266が40,000RPMで回転しているときには、例えば、出力駆動軸282(及び従って、第2の出力軸275)は、およそ3,300RPMで回転している。第3のオーバーラニングクラッチ276は、(ハッチングで示すように)繋がっている。こうした中で、出力駆動軸282によって、アクセサリギアボックス252の第2の出力軸275が回転させられる。アクセサリギアボックス252は、今度はラジアル駆動軸206を回転させ、従って、第1のエンジン108の第2の駆動軸232(高速スプール、N2)を回転させる。第2の駆動軸232(高速スプール)がいちど回転すると、燃料が燃焼室228で混合され、混合気を燃焼させてガスタービンエンジン210を始動させるためにスパークが提供される。ガスタービンエンジン210がいちど稼働すると、タービン始動弁285及び第9の弁287を閉じて第2の弁248を開けることが可能である。
【0053】
第3の動作モードの間には、タービン出口269から出た膨張した空気が、推進力回復のために、第5の通路274を介してファンダクト216へと供給されうる。追加的又は代替的に、先に開示したように、タービン出口269を出た空気は、熱的な防氷システム(例えば、エンジン防氷システム、翼防氷システム)、及び/又は、タービン234,236及び/又はガスタービンエンジン210のケーシングといった、1つ以上の他の場所に提供されうる。
【0054】
第3の動作モードでは、第2のオーバーラニングクラッチ265が(クロスハッチングで示すように)繋がっている。こうした中で、タービン軸266は、圧縮機軸251を駆動しており、従って、タービン208は、圧縮機204を駆動している。圧縮機204により引き起こされるタービン208への負荷を低減するために、制御システム293は、圧縮機入口240への空気の流量を低減(抑制)するよう第1の弁245に命令することが可能である。例えば、第1の弁245は、上記空気の流量又は圧力を、より少ない流量又はより低い圧力へと低減することが可能なPRSOVである。こうした中で、より少ない流量が圧縮機入口240に提供される。追加的又は代替的に、圧縮機204は、圧縮機出口242でより少ない流量又はより低い圧力を実現するために、調整可能な入口案内翼及び/又はディフューザ案内翼といった可変容量型の特徴を備えうる。本例では、第3の弁250を閉じることが可能である。
【0055】
タービン208に対する負荷のさらなる低減を支援するために、ファンダクト入口弁292を開けることが可能である。幾つかの実施例において、ファンダクト入口弁292はサージ弁である。先に開示したように、第7の通路290は、ファンダクト216といった下流の場所に流体連結されている。こうした中で、圧縮機出口242を出た空気は、第2の通路247を通過し、第7の通路290を通過して、推進力回復のためのファンダクト216へと流れる。従って、第7の通路290は、第2の通路247をファンダクト216へと流体連結させる。他の実施例において、第7の通路290は、航空機100の機外といった他の場所へと気流を方向付けることが可能である。出口からの空気を低圧領域へと方向付けて圧縮機から出る空気を抑制することによって、タービン208に対する最小負荷が、圧縮機204によって引き起こされる。第1のエンジン108がいちど稼働すると、制御システム293は、ファンダクト入口弁292を閉じる。
【0056】
第3の動作モードの間、圧縮機軸251は、アクセサリギアボックス252の第1の出力軸260よりも速く回転している。こうした中で、第1のオーバーラニングクラッチ261が(斑点で示すように)切られている。
【0057】
図6は、本開示の教示に従って構成された例示の他の圧搾空気システム600(ここでは、システム600と称する)を示している。例示のシステム600はまた、第1のエンジン108との関連で示されている。図2図5との関連で先に開示した例示のシステム200の構成要素とほぼ同様に又は同一であり、上記構成要素とほぼ同様に又は同一の機能を有する例示のシステム600の構成要素については、以下では再び詳細には記載しない。その代わり、関心がある読者は先の対応する記載を参照されたい。この措置を円滑にするために、同じ参照番号が同様の構成のために利用される。
【0058】
図6では、システム600は、第1のエンジン108を始動させるために、タービン208を使用するのではなく、別体の始動タービン602を利用する。示される実施例において、始動タービン602はアクセサリギアボックス252の第2の出力軸275に連結されている。第6の通路284が、始動タービン602のタービン入口604に連結されている。第3の動作モード(エンジン始動モード)では、APU286及び/又は第2のエンジン110からの高圧空気が、始動タービン602を駆動するためにタービン入口604に供給される。始動タービン602によって第2の出力軸275が駆動され、これによりアクセサリギアボックス252に動力が供給され、これによりラジアル駆動軸206が駆動され、従って第2の駆動軸232が回転させられて、ガスタービンエンジン210が始動する。始動タービン606のタービン出口606を出た空気は、推進力回復のためにファンダクト216内へと方向付けられ、及び/又は他の場所へと方向付けられうる。示される実施例において、オーバーラニングクラッチ608が、始動タービン602と第2の出力軸275との間に配置されており、従って、第1のエンジン108がいちど始動すると、始動タービン602を第2の出力軸275から切断することが可能である。
【0059】
第3の動作モードの間、タービン208は停止しており又は稼働しておらず、第2のオーバーラニングクラッチ265は切れている。第1の出力軸260は、第1のオーバーラニングクラッチ261を介して圧縮機204を駆動する。しかしながら、第1の弁245により圧縮機204への気流を抑制することで、負荷を低減することが可能であり、圧縮機204を出た空気は機外へと又はファンダクト入口弁292を介してファンダクト216へと放出されうる。
【0060】
図7は、本開示の教示に従って構成された例示の他の圧搾空気システム700(ここでは、システム700と称する)を示している。例示のシステム700はまた、第1のエンジン108との関連で示されている。図2図5との関連で先に開示した例示のシステム200の構成要素とほぼ同様に又は同一であり、上記構成要素とほぼ同様に又は同一の機能を有する例示のシステム700の構成要素については、以下では再び詳細には記載しない。その代わり、関心がある読者は先の対応する記載を参照されたい。この措置を円滑にするために、同じ参照番号が同様の構成のために利用される。
【0061】
図7の例示のシステム700では、タービン208(図2)が電動機702と置換されており、タービン軸266(図2)が電動機702の電動機駆動軸704と置換されている。システム700は、先に開示したシステム200とほぼ同じに稼働することが可能である。具体的には、システム700は、圧縮機204に動力を供給して圧搾空気を発生させるために、第1の動作モードと第2の動作モードとで稼働することが可能である。システム700は、図7では、第2の動作モードで動作するものとして示されている。
【0062】
第1の動作モードでは、図2との関連で先に開示した動作と同様に、アクセサリギアボックス252によって圧縮機204が駆動される。第1の動作モードでは、第1のオーバーラニングクラッチ261が繋がっており、第2のオーバーラニングクラッチ265及び第3のオーバーラニングクラッチ276が切れている。制御システム293は、システム700の1つ以上のパラメータを監視することが可能である。より大きな動力が望まれる場合には、制御システム293は、第2の動作モードへと切り替えるために、システム700の1つ以上の装置を操作することが可能である。制御システム293は、電動機702を制御する電動機コントローラ706を備える。圧縮機204へのより大きな動力が望まれる場合には、電動機コントローラ706は、電動機702を作動させ、これにより電動機駆動軸704が駆動される。電動機駆動軸704が圧縮機軸251の速度に達すると、第2のクラッチ265が繋がり、これにより、電動機702が圧縮機204に動力を供給することが可能となる。さらに、圧縮機軸251がいちど第1の出力軸260よりも速く回転すると、第1のオーバーラニングクラッチ261が切られる。こうした中で、電動機702を、アクセサリギアボックス252に依存せずに圧縮機204に動力を供給するために利用することが可能である。第1の動作モードへと戻して切り替えるために、電動機コントローラ706は、電動機702を停止することが可能である。従って、先に開示したシステム200と同様に、第1のエンジン108の稼働条件、及び、ECS202及び/又は1つ以上の他のシステムが要求する圧搾空気の圧力及び流量に従って、システム700を第1の動作モードと第2の動作モードとで切り替えることが可能である。
【0063】
さらに、電動機702を、第1のエンジン108を始動させるための第3の動作モードで使用することが可能である。具体的には、第1のエンジン108を始動させるために、電動機コントローラ706が電動機702を作動させて、電動機駆動軸704を駆動する。電動機軸704によって、(第1の歯車278及び第2の歯車279と、入力駆動軸281と、遊星ギアボックス280とを介して)出力軸282が駆動される。第3のオーバーラニングクラッチ276が繋がり、これにより、出力軸282が第2の出力軸275を駆動することが可能となり、これにより、アクセサリギアボックス252と、ラジアル駆動軸206と、ガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232とが駆動される。図5との関連で開示された技術と同様に、第1の弁245により圧縮機204への気流を抑制することで、圧縮機204により引き起こされる負荷を低減することが可能であり、圧縮機204を出た空気を、ファンダクト216内へと方向付け又はファンダクト入口弁292を介して他の場所へと方向付けることが可能である。
【0064】
図2の例示のシステム200、図6の例示のシステム600、及び図7の例示のシステム700では、第1のオーバーラニングクラッチ261が、圧縮機204とアクセサリギアボックス252との間に配置されているが、他の実施例では、第1のオーバーラニングクラッチ261を、アクセサリギアボックス252に組み込むことが可能である。例えば、図8は、第1のオーバーラニングクラッチ261がアクセサリギアボックス252内の2つ以上の歯車の間に配置された例示の構成を示している。この例では、圧縮機204が、第1の出力軸260に直接的に連結されうる(又は、圧縮機軸251(図2)がアクセサリギアボックス252内の歯車に連結されると見做しうる)。歯車列の中に第1のオーバーラニングクラッチ261を配置することが、第1のオーバーラニングクラッチ261が経験するトルク又はRPMを変更するために(例えば、第1のオーバーラニングクラッチ261のための任意のトルク限界値及び/又はRPM限界値を超過することを回避するために)利用されうる。第1のオーバーラニングクラッチ261の位置は変えられているが、第1のオーバーラニングクラッチ261によって、これまでどおり、圧縮機204が、ラジアル駆動軸206により提供される速度に依存せずに(上記速度よりも速く)稼働することが可能となる。従って、第1のオーバーラニングクラッチ261がラジアル駆動軸206と圧縮機204との間で動作可能に結合される限りは、第1のオーバーラニングクラッチ261の位置を変更することが可能である。図8に示す例示の構成は、本明細書に開示した例示のシステム200、600、700との関連で実現可能である。
【0065】
同様に、図2の例示のシステム200、図6の例示のシステム600、及び図7の例示のシステム700では、第2のオーバーラニングクラッチ265は、圧縮機軸251とタービン軸266(又は図7の電動機駆動軸704)との間に配置されているが、他の実施例では、第2のオーバーラニングクラッチ265を、圧縮機軸251とタービン軸266との間の歯車列に組み込むことが可能である。例えば、図9は、第2のオーバーラニングクラッチ265が圧縮機軸251とタービン軸266との間の歯車列900の中に配置された例示の構成を示している。歯車列900は、圧縮機軸251とタービン軸266との間のギア比を変更するために利用されうる。さらに、歯車列900の中に第2のオーバーラニングクラッチ265を配置することが、第2のオーバーラニングクラッチ265が経験するトルク又はRPMを変更するために(例えば、当該クラッチのための任意のトルク限界値及び/又はRPM限界値を超過することを回避するために)利用されうる。第2のオーバーラニングクラッチ265の位置は変えられているが、第2のオーバーラニングクラッチ265は、これまでどおり、圧縮機軸251とタービン軸266との間で動作可能に連結されており、従って、圧縮機204が、第1の動作モードにおいてタービン208に依存せずに(タービン208よりも速く)稼働することを可能となる。図9に示す例示の構成は、本明細書に開示した例示のシステム200、600、700との関連で実現可能である。
【0066】
任意の部品(例えば、弁、通路等)又はモードとの関連における「第1の」「第2の」「第3の」という用語は、単に、1の部品又はモードを、他の部品又はモードと区別するために使用される。これらの用語は非限定的であり、部品又はモードの特定の順序又は特定の番号を示すことを意図していない。
【0067】
図2図6及び図7では、例示のシステム200、600、及び700の制御システム293を実現する例示的なやり方が示されているが、図2図6、及び図7に示す1つ以上の構成要素、処理、及び/又は装置は、組み合わされ、分けられ、再配置され、省略され、除削除され、及び/又は任意の他のやり方で実現されてよい。さらに、図2図6、及び図7の例示の入力/出力モジュール294、比較器295、例示の装置コントローラ296、例示の電動機コントローラ706、及び/又は、より大まかには、例示の制御システム293は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、及び/又は、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアの任意の組み合わせによって実現されうる。したがって、例えば、例示の入力/出力モジュール294、例示の比較器295、例示の装置コントローラ296、例示の電動機コントローラ706、及び/又は、より大まかには、例示の制御システム293のいずれも、1つ以上のアナログ又はデジタル回路、論理回路、プログラム可能なプロセッサ、 プログラム可能なコントローラ、GPU(graphics processing unit)、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、PLD(programmable logic device)、及び/又は、FPLD(field programmable logic device)により実現可能であろう。本特許の装置又はシステムの請求項のいずれも、純粋にソフトウェア及び/又はファームウェア実装を包含するものとして解釈する場合に、例示の入力/出力モジュール294、例示の比較器295、例示の装置コントローラ296、及び/又は、例示の電動機コントローラ706の少なくとも1つは、本明細書において、当該ソフトウェア及び/又はファームウェアを保存するための、メモリ、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)、CD(compact disk)、ブルーレイディスク等の、非一過性のコンピュータ読取可能な記憶装置又は記憶ディスクを含むと明示的に定義される。さらに、図2図6、及び図7の例示の制御システム293は、図2図6及び図7に示したものに加えて、又はこれらの代わりに、1つ以上の構成要素、処理、及び/又は装置を含んでよく、及び/又は、図示される構成要素、処理、及び装置のいずれか又は全ての1つより多くを含んでよい。本明細書では、「通信している(in communication)」という句は、そのバリエーションも含めて、1つ以上の中間の構成要素を通じた直接的な通信及び/又は間接的な通信を包含しており、直接的な物理的(例えば有線による)通信及び/又は一定の通信を要しないが、むしろ追加的に、周期的な間隔での、予定された間隔での、非周期的な間隔での、及び/又は一度限りのイベントでの選択的な通信を含む。
【0068】
図2図6、及び図7の例示の制御システム293を実現するための、例示のハードウェアロジック部、機械読取可能な命令、ハードウェアで実装されたステートマシン、及び/又は、これらの任意の組み合わせを表わすフローチャートが、図10及び図11に示される。機械読取可能な命令は、以下で図12との関連で検討する例示のプロセッサプラットフォーム1200に示すプロセッサ1212といった、コンピュータプロセッサによる実行のための実行可能なプログラム又は当該プログラムの一部であってよい。プログラムは、CD‐ROM、フロッピーディスク、ハードドライブ、DVD、ブルーレイディスク、又は、プロセッサ1212と関連付けられたメモリといった、非一過性のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されたソフトウェアに埋め込まれてよいが、代替的に、全プログラム及び/又はその一部がプロセッサ1212以外の装置によって実行され及び/又はファームウェア又は専用のハードウェアに埋め込まれうるであろう。さらに、例示のプログラムは、図10及び図11に示すフローチャートを参照して説明されるが、図2図6、及び図7の例示の制御システム293を実現する他の多くの方法が、代替的に利用されてよい。例えば、ブロックの実行順序を変更してよく、及び/又は、記載したブロックの幾つかを変更し、削除し、又は組み合わせてよい。代替的又は追加的に、上記ブロックのいずれか又は全てを、ソフトウェア又はファームウェアを実行することなく対応する動作を実施するよう構造化された1つ以上のハードウェア回路(例えば、ディスクリート及び/又は集積アナログ及び/又はデジタル回路、FPGA、ASIC、比較器、演算増幅器(op‐amp:operational‐amplifier)、論理回路等)により実現してもよい。
【0069】
上述したように、図10及び図11の例示の処理は、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、読取専用メモリ、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、キャッシュ、ランダムアクセスメモリ及び/又は、任意の期間にわたって(例えば、長期的に、永続的に、短期的に、一時バッファ用として、及び/又は情報のキャッシング用として)情報が格納される任意の他の記憶装置又は記憶ディスクといった、非一過性のコンピュータ読取可能な媒体及び/又は機械読取可能な媒体に格納された実行可能な命令(例えば、コンピュータ読取可能な及び/又は機械読取可能な命令)を用いて実現することが可能である。本明細書では、非一過性のコンピュータ読取可能な媒体という用語は、任意の種類のコンピュータ読取可能な記憶装置及び/又は記憶ディスクを含み、伝播信号を除外し、伝送媒体を除外するものと明示的に定義される。
【0070】
「含む」(「including」及び「comprising」)(並びに、その全ての形態及び時制)は、本明細書では、オープンエンド形式の(open-ended)用語として使用される。従って、請求項で、「含む(include)」又は「含む(comprise)」(例えば、comprises,includes,comprising,including,having等)の如何なる形態が、プリアンブルとして利用されても、又は、如何なる請求項の記載の範囲で使用されていても、対応する請求項又記載の範囲から外れることなく、追加的な構成要素、用語等が存在しうると解されたい。本明細書では、「少なくとも(at least)」という語句は、例えば、請求項のプリアンブルで移行部の用語として使用されるが、「含む」(「including」及び「comprising」)という用語がオープンエンド形式であるのと同様に、オープンエンド形式である。「及び/又は」(「and/or」)という用語は、例えば、A、B、及び/又はCといった形で使用される場合には、(1)Aのみ、(2)Bのみ、(3)Cのみ、(4)A及びB、(5)A及びC、(6)B及びC、並びに、(7)A及びB及びCといった、A、B、Cの部分集合のいずれの組み合わせも指している。
【0071】
図10は、航空機100等の航空機の1つ以上のシステムのための圧搾空気を発生させるための例示の方法1000であって、本明細書で開示する例示のシステム200、600、700のいずれによっても実現可能な例示の方法1000を表すフローチャートである。方法1000は、制御システム293により実行される機械読取可能な命令によって少なくとも部分的に実現可能である。例示の方法1000を、図2及び図4の例示のシステム200との関連で説明する。しかしながら、例示の方法1000は、システム600又は700との関連で同様に実現可能であると解されたい。
【0072】
ブロック1002では、制御システム293が、第1のエンジン108が稼働しているか又は動いているかを判定する。制御システム293は、第1のエンジン108と関連付けられた1つ以上のセンサ(例えば、第1のセンサ298a)から信号を受信し、センサからの測定値に基づいて、第1のエンジン108が稼働しているかどうかを判定する。第1のエンジン108が稼働していない場合には、航空機100が稼働しておらず、従って、圧搾空気は、概して、1つ以上のシステムのために望まれない。こうした中で、例示の方法1000は終了する。
【0073】
第1のエンジン108が稼働している場合には、ブロック1004において、制御システム293は、第1のセンサ298aから入力/出力モジュール294により受信された信号を介して、第1のエンジン108の動作速度(例えば、RPM)を定める。本例では、第1のセンサ298aは、第1のエンジン108の第2の駆動軸232(高速スプール)の速度(RPM)を測定する。
【0074】
ブロック1006において、比較器295が、動作速度と閾値とを比較し、当該速度が閾値を満たすかどうかを判定する。エンジン速度が閾値を満たす(例えば、第2の駆動軸232のRPMが閾値を上回る)場合には、ブロック1008において、制御システム293の装置コントローラ296が、抽気がタービン208に提供されずタービン208が利用されないように、第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273を閉じるための命令信号を送信する。第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273が予め閉弁状態にあった場合には、制御システム293は、第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273が閉じたままであることを許容する。こうした中で、システム200は、ラジアル駆動軸206及びアクセサリギアボックス252が圧縮機204に動力を供給する第1の動作モードで稼働している。例示の方法1000が繰り返される。
【0075】
第1のエンジン108の動作速度が閾値を満たさない(例えば、第2の駆動軸232のRPMが閾値を下回る)場合には、ブロック1010において、制御システム293の装置コントローラ296が、第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273を開けるための命令信号を送信する。結果として、抽気がタービン208に供給され、これによりタービン208が駆動されて圧縮機204に動力が供給される。第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273が予め開いていた場合には、制御システム293は、第1タービン入口弁272及び/又は第2のタービン入口弁273が開いたままであることを許容する。こうした中で、システム200は、タービン208が圧縮機204に動力を供給する第2の動作モードで稼働している。例示の方法1000が繰り返される。例示の方法1000はループで進行可能であり、或る一定の時間間隔で(例えば10秒ごとに)繰り返されうる。幾つかの実施例において、制御システム293は、タービン208に提供される抽気の圧力を調整してタービン208の速度を制御するため、従って圧縮機204に提供される動力を制御するために、第2のタービン入口弁273を操作する。幾つかの実施例において、制御システム293は、離陸中、上昇中、巡航中といった或る飛行条件の間には、システム200を第1の動作モードで動かし、下降中又はアイドル中といった他の飛行条件の間には、システム200を第2の動作モードで動かす。
【0076】
図10では、例示の方法1000を、第1のエンジン108の第2の駆動軸232の速度の監視との関連で記載してきたが、他の実施例において、方法1000は、圧縮機出口242を出た空気の圧力又は流量といった1つ以上の他のパラメータを(例えば、第2の圧力センサ298bを介して)監視すること、及び/又は、圧縮機軸251の速度といった1つ以上の他のパラメータを(例えば、第3のセンサ298cを介して)監視することによって同様に実施されうる。
【0077】
例示の方法1000は、タービン208の代わりに電動機702が利用されるシステム700との関連でも実施することが可能である。このような例では、例示の方法1000は、弁を開閉すること(ブロック1008及び1010)よりもむしろ、電動機コントローラ706を介して電動機702を作動又は停止させることを含む。システム700が第2の動作モードで稼働している間、電動機コントローラ706は、圧縮機204が発生させた圧搾空気の量を制御するために、電動機702の速度を上げ又は下げることが可能である。
【0078】
図11は、本明細書に開示する例示のシステム200、600、700のいずれによっても実現されうる、第1のエンジン108といった航空機エンジンを始動させるための例示の方法1100を表すフローチャートである。方法1000は、制御システム293により実行される機械読取可能な命令によって少なくとも部分的に実現可能である。例示の方法1100を、第3のモードで動作する図5に示した例示のシステム200との関連で説明する。しかしながら、例示の方法1100は、システム600又は700との関連で同様に実現可能であると解されたい。
【0079】
ブロック1102では、制御システム293の装置コントローラ296が、タービン208に高圧空気を提供する流路を作るよう、1つ以上の弁を制御する。例えば、装置コントローラ296は、第2の弁248を閉じタービン始動弁285を開け及び第2のタービン入口弁273を開けるために制御信号を送信し、これにより、タービン入口268に提供される高圧空気のための流路が作られる。高圧空気は、他のエンジン(例えば、第2のエンジン110)及び/又はAPU286によって提供されうる。他の実施例において、高圧空気は、他のソースによって提供されうる。高圧空気によってタービン軸266が駆動され、これにより(第3のオーバーラニングクラッチ276を介して)第2の出力軸275へと動力が伝達され、これによりアクセサリギアボックス252に動力が供給され、これによりラジアル駆動軸206が駆動され、これによりガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232(高圧スプール)が回転させられる。
【0080】
幾つかの実施例において、ブロック1104において、制御システム293の装置コントローラ296は、圧力機入口240に供給される空気を抑制するために、1つ以上の弁を制御することが可能である。例えば、装置コントローラ296は、圧縮機入口240への通路244を通過する空気の圧力又は流量を低減するために、第1の弁245に命令信号を送信する。さらに、装置コントローラ296は、ファンダクト入口弁292を開けるための命令信号を送信し、これにより、圧縮機出口242を出た空気が、ファンダクト216へと方向付けられ又は他の場所へと方向付けられうる(例えば機外に廃棄されうる)。この処理によって、タービン208が稼働している間204により消費される動力が著しく低減される。
【0081】
ガスタービンエンジン210の第2の駆動軸232が回転している間、燃料が燃焼室228内で混合されて燃焼して、第1のエンジン108を始動する。ブロック1106において、制御システム293は、第1のエンジン108が始動しているかどうかを判定する。制御システム293は、1つ以上のセンサからの測定値(例えば、第1のセンサ298aからの信号)に基づいて、第1のエンジン108が始動しているかどうかを判定することが可能である。第1のエンジン108が未だ始動していない場合には、制御はブロック1102に戻り、制御システム293は、高圧流路が開いたままであることを可能とする。
【0082】
第1のエンジン108が始動している場合には、ブロック1108において、制御システム293の装置コントローラ296が、タービン208への高圧空気の流れを遮断するために、1つ以上の弁を制御する。例えば、装置コントローラ296は、タービン始動弁285を閉じるために命令信号を送信することが可能である。装置コントローラ296はまた、ファンダクト入口弁292を閉じ第1の弁245を開け第2の弁248を開けるために命令信号を送信することが可能である。ブロック1108で、例示の方法1110は終了する。幾つかの例において、圧搾空気を受け取る航空機の1つ以上のシステムにシステム200が圧搾空気を提供し始められるように、処理が図10の方法1000に進む。
【0083】
例示の方法1100は、タービン208の代わりに電動機702が利用されるシステム700との関連でも実施することが可能である。このような例において、例示の方法1100は、タービン208に動力を供給するよう弁を制御すること(ブロック1102)よりむしろ、電動機コントローラ706を介して電動機702を作動させることを含む。電動機702は、同様に第1のエンジン108を始動させるために利用することが可能である。第1のエンジン108がいちど始動すると、電動機コントローラ706は電動機702を停止させる。
【0084】
図12は、図2図6、及び図7の制御システム293を実現するために図10及び図11の命令を実行するよう構造化された例示のプロセッサプラットフォーム1200のブロック図である。プロセッサプラットフォーム1200は、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、自己学習機械(例えば、ニューラルネットワーク)、インターネット家電、又は他の任意の計算装置でありうる。
【0085】
示される実施例のプロセッサプラットフォーム1200は、プロセッサ1212を含む。示される例のプロセッサ1212はハードウェアである。例えば、プロセッサ1212は、任意の望ましい系列会社もしくは製造者からの1つ以上の集積回路、論理回路、マイクロプロセッサ、GPU、DSP、又はコントローラによって実装されうる。ハードウェアプロセッサは、半導体ベース(例えば、シリコンベース)の装置であってよい。本例では、プロセッサ1212は、例示の出力/入力モジュール294、例示の比較器295、例示の装置コントローラ296、例示の電動機コントローラ706、及び/又は、より大まかには、例示の制御システム293を実装している。
【0086】
示される実施例のプロセッサ1212は、ローカルメモリ1213(例えば、キャッシュ)を含む。示される実施例のプロセッサ1212は、バス1218を介して、揮発性メモリ1214及び不揮発性メモリ1216を含むメインメモリと通信する。揮発性メモリ1214は、同期型ダイナミックランダムアクセスメモリ(SDRAM:Synchronous Dynamic Random Access Memory)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM:Dynamic Random Access Memory)、RAMBUS(登録商標)ダイナミックランダムアクセスメモリ(RDRAM(登録商標):RAMBUS(R) Dynamic Random Access Memory)、及び/又は任意の他の種類のランダムアクセス記憶装置によって実装されうる。不揮発性メモリ1216は、フラッシュメモリ及び/又は任意の望ましい他の種類の記憶装置によって実装されうる。メインメモリ1214、1216へのアクセスは、メモリコントローラによって制御される。
【0087】
示される実施例のプロセッサプラットフォーム1200は、インタフェース回路1220も含む。インタフェース回路1220は、イーサネットインタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial bus)、Bluetooth(登録商標)インタフェース、近距離無線通信(NFC:near field communication)インタフェース、及び/又は、PCIエクスプレスインタフェースといった任意の種類のインタフェース規格により実装されうる。
【0088】
示される実施例では、1つ以上の入力装置1222が、インタフェース回路1220に接続されている。本例では、入力装置1222は、センサ298a~298cを含みうる。追加的又は代替的に、入力装置1222によって、ユーザは、データ及び/又は命令をプロセッサ1212に入力することが可能となる。入力装置は、例えば、音声センサ、マイクロフォン、カメラ(静止画又は映像)、キーボード、ボタン、マウス、タッチスクリーン、トラックパッド、トラックボール、アイソポイント(isopoint)、及び/又は音声認識システムによって実装されうる。
【0089】
1つ以上の出力装置1224も、示される実施例のインタフェース回路1220に接続されている。出力装置1224は、例えば、弁245、248、250、263、264、272、273、285、287、292を含みうる。追加的又は代替的に、出力装置1224は、例えば、ディスプレイ装置(例えば、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)、CRT(cathode ray tube display)ディスプレイ、IPS(in-place switching)ディスプレイ、タッチスクリーン等)、触覚出力装置、プリンタ、及び/又は、スピーカによって実装されうる。従って、示される例のインタフェース回路1220は、グラフィックドライバカード、グラフィックドライバチップ、及び/又は、グラフィックドライバプロセッサを含みうる。
【0090】
図示される実施例のインタフェース回路1220は、送信機、受信機、送受信機、モデム、住居用ゲートウェイ、無線アクセスポイント、及び/又は、ネットワーク1226を介して外部のマシン(例えば、任意の種類の計算装置)とのデータ交換を促進するためのネットワークインタフェースといった、通信装置も含む。通信は、例えば、イーサネット接続、デジタル加入者回線(DSL:digital subscriber line)接続、電話線接続、同軸ケーブルシステム、衛星システム、見通し内無線システム、携帯電話システム等を介するものでありうる。
【0091】
示される実施例のプロセッサプラットフォーム1200は、ソフトウェア及び/又はデータを格納するための1つ以上の大容量記憶装置1228も含む。そのような大容量記憶装置1228の例には、フロッピーディスクドライブ、ハードドライブディスク、コンパクトディスクドライブ、ブルーレイディスクドライブ、RAID(redundant array of independent disk)システム、及び、デジタル多用途ディスク(DVD:digital versatile disk)ドライブを含む。
【0092】
図10及び図11の機械が実行可能な命令1232は、大容量記憶装置1228、揮発性メモリ1214、不揮発性メモリ1216、及び/又は、CD若しくはDVDといった取り外し可能な非一過性のコンピュータ読取可能な記憶媒体に格納されうる。
【0093】
上述の内容から、航空機の1つ以上のシステムのために利用することが可能な圧搾空気を生成するために、アクセサリギアボックスによって又はタービン若しくは電動機といった他の動力源によって、圧縮機を様々な動作モードで独立的に動かすことを可能とする例示のシステム及び例示の方法を開示してきたことが分かるであろう。圧搾空気を生成するために軸により駆動される圧縮機を利用することは、抽気を抽出して当該抽気の温度/圧力を下げる既知の抽気システムよりも効率が良い。さらに、或る条件において圧縮機を駆動するためにタービン又は電動機を利用することによって、複雑で重量の重い変速装置を無くすことが可能である。例示のシステムは、負荷を低減するため或る構成要素を切断するためにオーバーラニングクラッチを利用しており、そうでなければ、負荷がシステム上で引き起こされるであろう、例示のシステム及び例示の方法によって、タービンが二重の目的を果たすこと、従って、航空機に付加される重量及び部品の量を低減することも可能となる。従って、例示のシステム及び方法は、航空機の燃料効率を向上させる。
【0094】
さらに、本発明は、以下の条項による実施形態を含む。
【0095】
条項1.航空機(100)のための圧搾空気システム(200)であって、
第1の空気源(243)から空気を受け取るための圧縮機入口(240)と、
航空機の環境制御システム(ECS:environmental control system)(202)に圧搾空気を供給するための圧縮機出口(242)とを有する圧縮機(204)と、
第2の空気源(267)から空気を受け取るためのタービン入口(268)を有するタービン(208)と、
アクセサリギアボックス(252)の出力軸(260)と圧縮機との間で動作可能に連結される第1のオーバーラニングクラッチ(261)であって、アクセサリギアボックスが、航空機のエンジン(108)から延びる駆動軸(206)に動作可能に連結される、第1のオーバーラニングクラッチ(261)と、
圧縮機とタービンとの間で動作可能に連結される第2のオーバーラニングクラッチ(265)と、を備え、
第1のオーバーラニングクラッチ及び第2のオーバーラニングクラッチは、アクセサリギアボックスが第1の動作モードの間に圧縮機を駆動することを可能とし、タービンが第2の動作モードの間に圧縮機を駆動することを可能とする、圧搾空気システム(200)。
【0096】
条項2.アクセサリギアボックスの始動入力軸(275)とタービンとの間で動作可能に連結される第3のオーバーラニングクラッチ(276)を更に備え、第3の動作モードの間には、高圧空気が、始動入力軸を駆動してエンジンを始動させるためにタービンに供給される、条項1に記載の圧搾空気システム。
【0097】
条項3.タービンは、タービンからアクセサリギアボックスの始動入力軸へとギア減速を提供する遊星ギアボックス(280)を介して、第3のオーバーラニングクラッチに動作可能に連結される、条項2に記載の圧搾空気システム。
【0098】
条項4.圧縮機出口とECSとを流体連結させる第1の通路(247)と、
第1の通路をエンジンのファンダクト(216)へと流体連結させる第2の通路(290)と、
第2の通路に動作可能に連結されるファンダクト入口弁(292)であって、第3の動作モードの間には、圧縮機出口により供給された圧搾空気を、エンジンのファンダクトへと方向付けるため開いているファンダクト入口弁(292)と、をさらに備える、条項2に記載の圧搾空気システム。
【0099】
条項5.第2の空気源が、エンジンの高圧圧縮機(226)からの抽気である、条項1に記載の圧搾空気システム。
【0100】
条項6.高圧圧縮機の抽気ポート(271)とタービン入口とを流体連結させる通路(270)と、
上記通路に動作可能に連結されるタービン入口弁(272又は273)であって、第1の動作モードの間には、タービン入口弁は、抽気がタービンに供給されないように閉じており、第2の動作モードの間には、タービン入口弁は、タービンに動力を供給して圧縮機を駆動するために、高圧圧縮機からタービン入口へと抽気を供給するために開いている、タービン入口弁(272又は273)と、をさらに備える、条項5に記載の圧搾空気システム。
【0101】
条項7.第1の空気源が、エンジンのファンダクト(216)からの抽気である、条項1に記載の圧搾空気システム。
【0102】
条項8.第1及び第2のオーバーラニングクラッチがスプラグクラッチである、条項1に記載の圧搾空気システム。
【0103】
条項9.アクセサリギアボックスの始動入力軸(275)に動作可能に連結される始動タービン(602、図6)を更に備え、
第3の動作モードの間には、高圧空気が、アクセサリギアボックスを駆動してエンジンを始動させるために、始動タービンに供給される、条項1に記載の圧搾空気システム。
【0104】
条項10.第1の動作モードにおいて、以下のような圧搾空気システム(200)、即ち、第1のオーバーラニングク前記圧搾空気システム(200)を第3の動作モードで動かすことラッチ(261)を介してアクセサリギアボックス(252)に動作可能に連結される圧縮機(204)であって、圧縮機の圧縮機出口(242)が、圧搾空気を受け取る航空機(100)の1つ以上のシステム(202)に流体連結される、圧縮機(204)と、第2のオーバーラニングクラッチ(265)を介して圧縮機に動作可能に連結されるタービン(208)であって、第1の動作モードの間にはアクセサリギアボックスが、圧搾空気を発生させるために圧縮機を駆動する、タービン(208)と、を備える圧搾空気システム(200)を、コントローラ(293)を介して動かすことと、
コントローラを介して、航空機のエンジン(108)の動作速度を定めることと、
動作速度が閾値速度を下回るときには、圧搾空気システムを第2の動作モードで動かすことであって、タービンに動力を供給して圧縮機を駆動して圧搾空気を発生させるために抽気がタービンに供給されるように、タービンとエンジンの抽気ポート(271)との間に配置されたタービン入口弁(272及び/又は273)を開くための命令信号をコントローラを介して送信することによって、第2の動作モードで動かすことと
を含む、方法。
【0105】
条項11.動作速度が閾値速度を上回るときには、タービン入口弁を閉じるための命令信号をコントローラを介して送信することによって、圧搾空気システムを第1の動作モードで動かすことをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0106】
条項12.タービンは、第3のオーバーラニングクラッチ(276)を介してアクセサリギアボックスに動作可能に連結され、方法は、
第1の動作モードで圧搾空気システムを動かす前に、圧搾空気システムを第3の動作モードで動かすことであって、アクセサリギアボックスに動力を供給してエンジン始動させるためタービンを駆動するために高圧空気がタービンに供給されるように、高圧空気源とタービンとの間に配置されたタービン始動弁(285)を開けるための命令信号を、コントローラを介して送信することによって、第3の動作モードで動かすことをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0107】
条項13.高圧空気源が、補助動力装置(APU:auxiliary power unit)(286)又は航空機の他のエンジン(100)である、条項12に記載の方法。
【0108】
条項14.圧搾空気システムは、圧縮機出口をエンジンのファンダクト(216)と流体連結させる通路(247、290)に連結されたファンダクト入口弁(292)を備え、方法が、
第3の動作モードの間に、圧縮機出口を出た空気をエンジンのファンダクトへと方向付けるためにファンダクト入口弁を開けるための命令信号を、コントローラを介して送信すること
をさらに含む、条項12に記載の方法。
【0109】
条項15.圧搾空気システムが、アクセサリギアボックスに動作可能に連結される始動タービン(602、図6)をさらに備え、方法が、
第1の動作モードで圧搾空気システムを動かす前に、圧搾空気システムを第3の動作モードで動かすことであって、アクセサリギアボックスに動力を供給してエンジンを始動させるため始動タービンを駆動するために高圧空気が始動タービンに供給されるように、高圧空気源と始動タービンとの間に配置されたタービン始動弁(285)を開けるための命令信号を、コントローラを介して送信することによって、第3の動作モードで動かすことをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0110】
条項16.圧搾空気を介して稼働するシステム(202)と、
エンジン(108)から延びる駆動軸(206)に動作可能に連結され、前記駆動軸(206)により動力が供給されるアクセサリギアボックス(252)と、を備える航空機システム(100)であって、
圧搾空気システム(200)が、
圧搾空気を介して稼働するシステムに流体連結される圧縮機出口(242)を有しており、アクセサリギアボックスに動作可能に連結される圧縮機(204)と、
タービン(208)と、
圧縮機とタービンとの間に動作可能に連結されるオーバーラニングクラッチ(265)と、を備え、
アクセサリギアボックスが、第1の動作モードにおいて、圧搾空気を発生させるために圧縮機を駆動するためのものであり、タービンが、第2の動作モードにおいて、圧搾空気を発生させるために圧縮機を駆動するためのものであり、オーバーラニングクラッチが、アクセサリギアボックスが第1の動作モードにおいて圧縮機を駆動する間に、圧縮機をタービンから切断するためのものである、航空機(100)。
【0111】
条項17.オーバーラニングクラッチ(265)が第1のオーバーラニングクラッチであり、
アクセサリギアボックスと圧縮機との間に動作可能に連結される第2のオーバーラニングクラッチ(261)であって、タービンが第2の動作モードにおいて圧縮機を駆動する間に、圧縮機をアクセサリギアボックスから切断するための第2のオーバーラニングクラッチ(261)をさらに備える、条項16に記載の航空機。
【0112】
条項18.アクセサリギアボックスの入力軸とタービンとの間に動作可能に連結される第3のオーバーラニングクラッチ(276)をさらに備え、第3の動作モードの間には、始動入力軸を駆動してエンジンを始動させるために、高圧空気がタービンに供給される、条項17に記載の航空機。
【0113】
条項19.タービンは、第2の動作モードの間にタービンを出た空気が推進力回復のためにファンダクトに供給されるように、エンジンのファンダクト(216)に流体連結されるタービン出口(269)を備える、条項16に記載の航空機。
【0114】
条項20.圧搾空気を介して稼働するシステムが、環境制御システム(ECS:environmental control system)又は防氷システムの少なくとも1つを備える、条項16に記載の航空機。
【0115】
特定の例示の方法、装置、システム、及び製品を本明細書で開示してきたが、本特許出願の範囲はこれに限定されない。反対に、本特許出願は、本特許出願の特許請求の範囲内に公正に当てはまる全ての方法、装置、システム、及び製品を包含する。
図1
図2
図3A
図3B
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12