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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】接合体
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20230420BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230420BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L21/31 B
H01L21/302 101G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019116896
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2020033247
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2018155143
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】若園 誠
(72)【発明者】
【氏名】土佐 晃文
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-022908(JP,A)
【文献】特開2003-212669(JP,A)
【文献】特開2018-016536(JP,A)
【文献】特開平04-321570(JP,A)
【文献】特開昭63-190770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 - 37/04
H01L 21/31
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス部材と、
前記セラミックス部材の表面側に配置され、タングステンを主成分とする外部導電体と、
金属部材と、
Niを主成分とするロウ材を含み、前記外部導電体と前記金属部材とを接合する接合部と、を備える接合体において、
前記接合体の少なくとも1つの特定断面において、
前記外部導電体は、前記外部導電体と前記金属部材との対向方向における前記外部導電体の厚さの3%以上の長さ分だけ、前記外部導電体と前記接合部との境界線から前記セラミックス部材側に移動した位置において、Niの濃度(atm%)が10%以上である特定部分の存在割合が20%以上である部位を含む、という第1の要件を満たし、前記外部導電体のうち、前記第1の要件を満たさない表面部分は、外部に露出しておらず、
前記セラミックス部材と前記外部導電体との境界における前記Niの存在割合が70%以下である、という第2の要件を満たしている、
ことを特徴とする接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、セラミックス部材と外部導電体と金属部材と接合部と、を備える接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物(例えば、半導体ウェハ)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400~650℃程度)に加熱する加熱装置(「サセプタ」とも呼ばれる)が知られている。加熱装置は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
【0003】
一般に、加熱装置は、所定の方向(以下、「第1の方向」という)に略直交する保持面および裏面を有し、セラミックスにより形成された板状の保持体と、第1の方向に延びる柱状であり、保持体の裏面に接合された柱状支持体とを備える。保持体の内部には、抵抗発熱体が配置されており、保持体の裏面側には、抵抗発熱体に電気的に接続された複数の受電電極(電極パッド)が配置されている。また、柱状支持体内には、各受電電極に接合された電極端子が収容されている。電極端子および受電電極を介して抵抗発熱体に電圧が印加されると、抵抗発熱体が発熱し、保持体の保持面上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハ)が例えば400~650℃程度に加熱される。保持体の受電電極と電極端子(金属部材)とは、金およびニッケルを含むロウ材により形成された接合部により接合される。従来、接合部の気孔率を0.1~15%とすることにより、セラミックス部材と電極端子との接合強度の向上を図る技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-91676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接合部の気孔率を0.1~15%とする従来の技術では、特に外部導電体(受電電極)と接合部との密着性が十分に確保されず、その結果、セラミックス部材と金属部材(電極端子)との接合強度の向上を十分に図ることができないことがあり、改善の余地があった。
【0006】
なお、このような課題は、加熱装置に限らず、例えば、静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品など、セラミックス部材と外部導電体と金属部材と接合部とを備える接合体であれば共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題の少なくとも一部を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される接合体は、セラミックス部材と、前記セラミックス部材の表面側に配置され、第1の金属成分を主成分とする外部導電体と、金属部材と、第2の金属成分を主成分とするロウ材を含み、前記外部導電体と前記金属部材とを接合する接合部と、を備える接合体において、前記接合体の少なくとも1つの特定断面において、前記外部導電体は、前記第2の金属成分の濃度(atm%)が10%以上である特定部分の存在割合が20%以上である部位を含む、という第1の要件を満たしている。本接合体では、接合体の少なくとも1つの特定断面において、外部導電体は、第1の要件を満たしている。第1の要件は、外部導電体が、第2の金属成分の濃度(atm%)が10%以上である特定部分の存在割合が20%以上である部位を含む、ことである。これにより、本接合体によれば、外部導電体が第1の要件を満たさない構成に比べて、外部導電体内に第2の金属成分が深く食い込んでいるため、外部導電体と接合部との密着性が高く、その結果、外部導電体と金属部材との接合強度を向上させることができる。
【0010】
(2)上記接合体において、前記接合体の少なくとも1つの特定断面において、前記セラミックス部材と前記外部導電体との境界における前記第2の金属成分の存在割合が70%以下である、という第2の要件を満たしている構成としてもよい。本接合体によれば、接合体が第2の要件を満たさない構成に比べて、セラミックス部材と外部導電体との間に存在する第2の金属成分の量が少ないため、セラミックス部材と外部導電体との接合強度を向上させることができる。
【0011】
(3)上記接合体において、前記外部導電体は、前記外部導電体と前記金属部材との対向方向における前記外部導電体の厚さの3%以上の長さ分だけ、前記外部導電体と前記接合部との境界線から前記セラミックス部材側に移動した位置において、前記第1の要件を満たしている構成としてもよい。本接合体によれば、外部導電体の厚さの3%以上の長さ分だけ、外部導電体と接合部との境界線からセラミックス部材側に移動した位置において、外部導電体が第1の要件を満たさない構成に比べて、外部導電体と接合部との密着性がより高くなり、その結果、外部導電体と金属部材との接合強度をさらに向上させることができる。
【0012】
(4)上記接合体において、前記外部導電体のうち、前記第1の要件を満たさない表面部分は、外部に露出していない構成としてもよい。本接合体によれば、外部導電体のうち、第1の要件を満たさない表面部分の少なくとも一部が外部に露出している構成に比べて、外部導電体が外気に触れて酸化することに起因して外部導電体と金属部材との接合強度が低下することを抑制することができる。
【0013】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、保持装置、静電チャック、CVDヒータ等のヒータ装置、真空チャック、シャワーヘッドなど、セラミックス部材と外部導電体と金属部材と接合部とを備える接合体、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】加熱装置100における受電電極54付近のXZ断面構成を模式的に示す説明図である。
図4】変形例1における受電電極54付近の一部分の構成を拡大して示す説明図である。
図5】変形例2における受電電極54付近の一部分の構成を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.本実施形態:
A-1.加熱装置100の構成:
図1は、本実施形態における加熱装置100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態における加熱装置100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。なお、図2には、後述する受電電極54付近の一部分が拡大して示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、加熱装置100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
【0016】
加熱装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を保持しつつ所定の処理温度(例えば、400~650℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。加熱装置100は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置等)やエッチング装置(プラズマエッチング装置等)といった半導体製造装置の一部として使用される。
【0017】
図1および図2に示すように、加熱装置100は、保持体10と柱状支持体20とを備える。
【0018】
(保持体10)
保持体10は、所定の方向(本実施形態では上下方向)に略直交する保持面S1および裏面S2を有する略円板状の部材である。保持体10は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)やAl(アルミナ)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持体10の直径は、例えば100mm以上、500mm以下程度であり、保持体10の厚さ(上下方向における長さ)は、例えば3mm以上、20mm以下程度である。
【0019】
図2に示すように、保持体10の内部には、保持体10を加熱するヒータとしての抵抗発熱体50が配置されている。抵抗発熱体50は、例えば、タングステンやモリブデン等の導電性材料により形成されている。本実施形態では、抵抗発熱体50は、Z軸方向視で略同心円状に延びる線状のパターンを構成している。抵抗発熱体50の線状パターンの両端部は、保持体10の中心部近傍に配置されており、各端部にはビア導体52の上端部が接続されている。また、保持体10の裏面S2側には、一対の凹部12が形成されており、各凹部12内には受電電極(電極パッド)54が設けられている。ビア導体52の下端部は、受電電極54に接続されている。その結果、抵抗発熱体50と受電電極54とがビア導体52を介して電気的に接続された状態となっている。
【0020】
(柱状支持体20)
柱状支持体20は、上記所定の方向(上下方向)に延びる略円柱状部材である。柱状支持体20は、保持体10と同様に、例えばAlNやAlを主成分とするセラミックスにより形成されている。柱状支持体20の外径は、例えば30mm以上、90mm以下程度であり、柱状支持体20の高さ(上下方向における長さ)は、例えば100mm以上、300mm以下程度である。
【0021】
保持体10と柱状支持体20とは、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とが上下方向に対向するように配置されている。柱状支持体20は、保持体10の裏面S2の中心部付近に、公知の接合材料により形成された接合層30を介して接合されている。
【0022】
図2に示すように、柱状支持体20には、保持体10の裏面S2側に開口する貫通孔22が形成されている。貫通孔22は、上下方向と略同一方向に延び、延伸方向にわたって略一定の内径を有する断面略円形の孔である。貫通孔22には、複数(本実施形態では2つ)の電極端子70が収容されている。各電極端子70の上端部は、ロウ材を含む接合部56を介して受電電極54に接合されている。なお、接合部56は、ロウ材以外の物質を含んでいてもよい。図示しない電源から各電極端子70、各受電電極54、ビア導体52を介して抵抗発熱体50に電圧が印加されると、抵抗発熱体50が発熱し、保持体10の保持面S1上に保持された対象物(例えば、半導体ウェハW)が所定の温度(例えば、400~650℃程度)に加熱される。
【0023】
A-2.接合部56の詳細構成:
上述したように、接合部56は、ロウ材を含んでおり、ロウ材の主成分は、第2の金属成分である。このため、接合部56は、受電電極54と電極端子70とを接合し、かつ、受電電極54と電極端子70とを電気的に接続することができる。第2の金属成分は、次述する受電電極54の主成分である第1の金属成分とは異なる種類の金属成分である。第2の金属成分は、例えば、Ni系、Au系の金属(活性金属以外)であることが好ましい。
【0024】
A-3.受電電極54の詳細構成:
受電電極54の主成分は、第1の金属成分である。第1の金属成分は、例えば、タングステンやモリブデンであることが好ましい。なお、受電電極54は、主成分としての第1の金属成分以外に、他の種類の金属成分を含んでいてもよい。例えば、受電電極54は、タングステンおよびモリブデンを含み、かつ、タングステンおよびモリブデンの一方を主成分とする構成であってもよい。また、受電電極54は、金属成分以外の成分を含んでいてもよい。例えば、保持体10と受電電極54との熱膨張差の低減のため、受電電極54は、保持体10の主成分であるセラミックスと同じセラミックスを含んでいることが好ましい。
【0025】
また、受電電極54は、第1の金属成分に加えて、第2の金属成分を含んでおり、少なくとも次の第1の要件を満たす。
<第1の要件>
加熱装置100の少なくとも1つの特定断面において、受電電極54は、第2の金属成分の濃度(atm%)が10%以上である特定部分の存在割合が20%以上である部位を含む。
【0026】
図3は、加熱装置100における受電電極54付近のXZ断面構成を模式的に示す説明図である。図3では、保持体10の主成分は、AlNであり、受電電極54の主成分は、W(タングステン)であり、接合部56の主成分は、Niである。また、図3のうち、薄い灰色部分は、Niの濃度(atm%)が10%以上である特定部分を意味し、濃い灰色は、AlNを主成分とする部分を意味し、白色部分は、Wを主成分とする部分を意味する。各成分元素の濃度(atm%)は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)の定量分析により特定することができる。以下、第1の要件を満たすか否かの判定方法について、図3を例に挙げて説明する。
【0027】
加熱装置100の少なくとも1つの特定断面(例えばXZ断面、50μm角)において、受電電極54に、少なくとも1本の特定線TLを引くことができることを条件に、加熱装置100は、第1の要件を満たしていると判定する。ここで、特定線TLは、受電電極54と接合部56との第1の境界線L1に略平行な線であり、かつ、該特定線TLの所定の長さ(例えば特定断面における全長)に対して、特定部分の割合が20%以上である線(直線または曲線)である。第1の境界線L1は、上記特定断面において、受電電極54と接合部56との厳密な境界線である必要はなく、受電電極54と接合部56との境界の近似線(直線または曲線)でよい。図3の例では、第1の境界線L1は、水平方向(X軸方向)に略平行な直線である。より具体的には、特定線TLのうち、上記特定部分と重なる線分を「第1の重複線分B1」というものとする。特定線TLは、例えば、該特定線TLの全長に対して、第1の重複線分B1の長さ(第1の重複線分B1が複数ある場合には、複数の第1の重複線分B1の合計長さ)の割合が20%以上である線である。なお、上記特定断面において、第1の境界線L1に略平行な仮想線(図示せず)について、該仮想線の所定の長さ(例えば特定断面における全長)に対して、該仮想線のうち、第1の金属成分(W)と重複する線分の合計長さの割合が20%以上である部位は、受電電極54である。なお、該仮想線に対する、第1の金属成分(W)と重複する線分の合計長さの割合は、90%以下であることが好ましい。図2に示すように、本実施形態では、受電電極54のうち、接合部56に対向する表面部分(下面部分)には、第1の要件を満たす反応層60が形成されている。なお、反応層60の上下方向の厚さは、受電電極54の上下方向の厚さの3%以上である(後述の第3の要件参照)。
【0028】
また、加熱装置100は、次の第2の要件を満たすことが好ましい。
<第2の要件>
加熱装置100の少なくとも1つの特定断面において、保持体10と受電電極54との境界におけるNi(上記特定部分)の存在割合が70%以下である。
具体的には、保持体10と受電電極54との第2の境界線L2のうち、上記特定部分と重なる線分を「第2の重複線分B2」というものとする。例えば、第2の境界線L2が、該第2の境界線L2の所定の長さ(例えば特定断面における全長)に対して、第2の重複線分B2の長さ(第2の重複線分B2が複数ある場合には、複数の第2の重複線分B2の合計長さ)の割合が70%以下であることを条件に、加熱装置100は、第2の要件を満たしていると判定する。なお、第2の境界線L2は、上記特定断面において、保持体10と受電電極54との厳密な境界線である必要はなく、保持体10と受電電極54との境界の近似線(直線または曲線)でよい。図3の例では、第2の境界線L2は、水平方向(X軸方向)に略平行な直線である。
【0029】
また、加熱装置100は、次の第3の要件を満たすことが好ましい。
<第3の要件>
受電電極54は、受電電極54と接合部56との対向方向(上下方向(Z軸方向))における受電電極54の厚さの3%以上の長さ分だけ、第1の境界線L1から保持体10側に移動した位置において、上記第1の要件を満たしている。
【0030】
なお、加熱装置100は、特許請求の範囲における接合体に相当し、保持体10は、特許請求の範囲におけるセラミックス部材に相当する。受電電極54は、特許請求の範囲における外部導電体に相当し、電極端子70は、特許請求の範囲における金属部材に相当する。タングステンやモリブデンは、特許請求の範囲における第1の金属成分に相当する。
【0031】
A-4.加熱装置100の製造方法:
加熱装置100の製造方法は、例えば以下の通りである。初めに、保持体10と柱状支持体20とを作製する。
【0032】
保持体10の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム(Y)粉末1重量部と、アクリル系バインダ20重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、トルエン等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、グリーンシート用スラリーを作製する。このグリーンシート用スラリーをキャスティング装置でシート状に成形した後に乾燥させ、グリーンシートを複数枚作製する。
【0033】
また、窒化アルミニウム粉末、アクリル系バインダ、テルピネオール等の有機溶剤の混合物に、タングステンやモリブデン等の導電性粉末を添加して混練することにより、メタライズペーストを作製する。このメタライズペーストを例えばスクリーン印刷装置を用いて印刷することにより、特定のグリーンシートに、後に抵抗発熱体50や受電電極54等となる未焼結導体層を形成する。また、グリーンシートにあらかじめビア孔を設けた状態で印刷することにより、後にビア導体52となる未焼結導体部を形成する。
【0034】
次に、これらのグリーンシートを複数枚(例えば20枚)熱圧着し、必要に応じて外周を切断して、グリーンシート積層体を作製する。このグリーンシート積層体をマシニングによって切削加工して円板状の成形体を作製し、この成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成して焼成体を作製し、この焼成体の表面を研磨加工する。以上の工程により、保持体10が作製される。
【0035】
また、柱状支持体20の作製方法は、例えば以下の通りである。まず、窒化アルミニウム粉末100重量部に、酸化イットリウム粉末1重量部と、PVAバインダ3重量部と、適量の分散剤および可塑剤とを加えた混合物に、メタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合し、スラリーを得る。このスラリーをスプレードライヤーにて顆粒化し、原料粉末を作製する。次に、貫通孔22に対応する中子が配置されたゴム型に原料粉末を充填し、冷間静水圧プレスして成形体を得る。得られた成形体を脱脂し、さらにこの脱脂体を焼成する。以上の工程により、柱状支持体20が作製される。
【0036】
次に、保持体10と柱状支持体20とを接合する。保持体10の裏面S2および柱状支持体20の上面S3に対して必要によりラッピング加工を行った後、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3との少なくとも一方に、例えば、Ni系ロウ材を均一に塗布した後、脱脂処理する。
【0037】
ここで、ロウ付け時の温度が高いほど、また、ロウ付け時の加熱時間が長いほど、受電電極54の主成分である第1の金属成分(例えばW)と、接合部56の主成分である第2の金属成分(例えばNi)との反応性が高くなり、互いに混じりやすくなり、その結果、受電電極54における特定部位の存在割合が高くなる。したがって、ロウ付け時の温度および加熱時間の少なくとも一方を変更することにより、受電電極54における特定部位の存在割合を調整することができる。但し、ロウ付け時の温度を高くし過ぎたり、ロウ付け時の加熱時間を長くし過ぎたりすると、第2の金属成分(例えばNi)が受電電極54と保持体10との間に移動し、その結果、受電電極54と保持体10との密着性を低下させるおそれがある。このため、ロウ付け時の温度や加熱時間の上限を適宜調整することが好ましい。なお、加熱温度は、950度以上、1150度以下であることが好ましい。次いで、保持体10の裏面S2と柱状支持体20の上面S3とを重ね合わせ、ホットプレス焼成を行うことにより、保持体10と柱状支持体20とを接合する。
【0038】
保持体10と柱状支持体20との接合の後、各電極端子70を各貫通孔22内に挿入し、各電極端子70の上端部を各受電電極54に、例えば950℃~1200℃程度の真空中で箔状のロウ材によりロウ付けすることにより接合部56を形成した。以上の製造方法により、上述した構成の加熱装置100が製造される。
【0039】
A-5.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の加熱装置100では、加熱装置100の少なくとも1つの特定断面において、受電電極54は、第1の要件を満たしている。第1の要件は、外部導電体が、第2の金属成分の濃度(atm%)が10%以上である特定部分の存在割合が20%以上である部位を含む、ことである。これにより、本実施形態によれば、受電電極54が第1の要件を満たさない構成に比べて、受電電極54内に、受電電極54の主成分である第2の金属成分が深く食い込んでいるため、受電電極54と接合部56との密着性が高く、その結果、受電電極54と電極端子70との接合強度を向上させることができる。
【0040】
上記実施形態では、加熱装置100の少なくとも1つの特定断面において、保持体10と受電電極54との境界における第2の金属成分の存在割合が70%以下である、という第2の要件を満たしていることが好ましい。上記実施形態において、第2の要件を満たす場合、加熱装置100が第2の要件を満たさない構成に比べて、保持体10と受電電極54との間に存在する第2の金属成分の量が少ないため、保持体10と受電電極54との接合強度を向上させることができる。
【0041】
上記実施形態では、受電電極54は、受電電極54と接合部56との対向方向(上下方向(Z軸方向))における受電電極54の厚さの3%以上の長さ分だけ、第1の境界線L1から保持体10側に移動した位置において、上記第1の要件を満たしていることが好ましい。本実施形態において、受電電極54の厚さの3%以上の長さ分だけ、第1の境界線L1との境界線から保持体10側に移動した位置において、受電電極54が第1の要件を満たさない構成に比べて、受電電極54と接合部56との密着性がより高くなり、その結果、受電電極54と電極端子70との接合強度をさらに向上させることができる。
【0042】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0043】
上記実施形態における加熱装置100の構成は、あくまで例示であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、保持体10および柱状支持体20のZ軸方向視の外形が略円形であるとしているが、他の形状であってもよい。また、柱状支持体20に形成された貫通孔22に収容される電極端子は、抵抗発熱体50に電気的に接続された端子に限らず、例えば、プラズマを発生させる高周波(RF)電極に電気的に接続された端子や、静電吸着のための吸着電極に電気的に接続された端子でもよい。また、上記実施形態では、受電電極54は、保持体10の裏面S2に形成された凹部12内に配置されているが、保持体10の裏面S2上に配置されているとしてもよい。要するに、受電電極は、保持体の第2の表面側に配置されていればよい。また、外部導電体は、受電電極54に限られず、要するに、セラミックス部材の表面側に配置された導電体であればよい。また、金属部材は、電極端子70に限られず、要するに、第1の方向において外部導電体に対向して配置された金属製の部材であればよい。
【0044】
また、上記実施形態では、図2に示すように、受電電極54のうち、第1の要件を満たさない表面部分の少なくとも一部は、外部に露出していた。具体的には、受電電極54のうち、反応層60が形成された下面部分は、接合部56に覆われており、受電電極54の上面部分は、保持体10に覆われている。しかし、受電電極54の側面部分は、保持体10に形成された凹部12内おいて外部に露出しており、外気に晒される。このため、例えば、加熱装置100が高温大気中に配置された場合、外気に晒される受電電極54の側面部分から酸化して受電電極54が劣化し、受電電極54と電極端子70との接合強度が低下し、例えば、電極端子70が受電電極54から外れるおそれがある。そこで、外部導電体(受電電極54)のうち、第1の要件を満たさない表面部分は、外部に露出していない構成が好ましい。図4は、変形例1における受電電極54付近の一部分の構成を拡大して示す説明図であり、図5は、変形例2における受電電極54付近の一部分の構成を拡大して示す説明図である。
【0045】
図4に示すように、変形例1では、外部導電体(受電電極54)のうち、第1の要件を満たさない表面部分(反応層60aが形成されていない表面部分)がセラミックス部材(保持体10a)に埋設され、第1の要件を満たす表面部分が接合部56に覆われることによって、外部導電体の全体が外部に露出していないようになっている。具体的には、変形例1では、保持体10a内に受電電極54が埋設されている。このため、受電電極54の上面部分および側面部分が保持体10aに覆われている。また、受電電極54の下面部分のうち、第1の要件を満たし反応層60aが形成された中央部分は、接合部56に覆われており、該反応層60aの外側部分は、保持体10aに覆われている。
【0046】
図5に示すように、変形例2では、外部導電体(受電電極54)のうち、内部導電体(ビア導体52)に電気的に接続される表面部分がセラミックス部材(保持体10b)に覆われ、該表面部分以外の部分(側面部分および下面部分)が接合部56bに覆われることによって、外部導電体の全体が外部に露出していないようになっている。具体的には、変形例2では、受電電極54のうち、接合部56bに接触する側面部分および下面部分は、反応層60bが形成されると共に接合部56bに覆われている。受電電極54のうち、接合部56bに覆われない上面部分は、保持体10bに覆われている。なお、上記変形例1,2以外に、外部導電体の一の部分がセラミックス部材に埋設され、かつ、外部導電体の他の部分が接合部に埋設された構成であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態における加熱装置100を構成する各部材の形成材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態における加熱装置100では、保持体10および柱状支持体20は、窒化アルミニウムまたはアルミナを主成分とするセラミックス製であるとしているが、保持体10と柱状支持体20との少なくとも一方が、他のセラミックス製であるとしてもよい。柱状支持体20は、セラミックス以外の材料製(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属製)であるとしてもよい。同様に、電極端子70等の形成材料も、他の材料であってよい。また、受電電極54は、タングステンやモリブデン以外の金属成分を主成分としていてもよい。また、受電電極54は、金属成分に加えて、例えば硝子など、金属成分以外の成分を含んでもいてもよい。上記実施形態では、外部導電体として、受電電極54を例示したが、これに限らず、保持体10に埋設されつつ一部が外部に露出した導電体であってもよい。また、上記実施形態において、接合部56に含まれるロウ材の第2の金属成分は、Ni系やAu系の金属以外の金属成分でもよい。
【0048】
上記実施形態において、加熱装置100は、第2の要件および第3の要件の少なくとも一方を満たさない構成であってもよい。また、上記特定断面は、加熱装置100のXZ断面に限らず、例えば、加熱装置100のXY断面など、他の断面でもよい。
【0049】
本発明は、加熱装置に限らず、静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品にも適用可能である。要するに、本発明は、セラミックスにより形成されたセラミックス部材と外部導電体と金属部材と接合部とを備える接合体に適用可能である。
【0050】
また、上記実施形態における加熱装置100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、保持体10は、プレス成形法により形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10,10a,10b:保持体 12:凹部 20:柱状支持体 22:貫通孔 30:接合層 50:抵抗発熱体 52:ビア導体 54:受電電極 56,56b:接合部 60,60a,60b:反応層 70:電極端子 100:加熱装置 B1:第1の重複線分 B2:第2の重複線分 L1:第1の境界線 L2:第2の境界線 S1:保持面 S2:裏面 S3:上面 TL:特定線 W:半導体ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5