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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法および作業車両
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
F01N3/08 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019133069
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021017831
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 晃
(72)【発明者】
【氏名】山川 達也
(72)【発明者】
【氏名】西川 陽平
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-147982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0308315(US,A1)
【文献】国際公開第2014/199778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両に搭載される容器に収容された還元剤の凍結に至るまでの時間を予測する装置であって、
前記容器に収容されている前記還元剤の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記容器の壁面温度の検出結果である壁面温度検出値を取得する壁面温度取得部と、
前記還元剤の温度の検出結果である還元剤温度検出値を取得する還元剤温度取得部と、
前記壁面温度検出値と、前記還元剤温度検出値と、前記残量情報とに基づいて、前記還元剤が凍結に至るまでの時間を算出する時間演算部と、
を備える予測装置。
【請求項2】
前記時間演算部が算出した前記還元剤が凍結に至るまでの時間と前記還元剤の温度の時間変化を出力する出力部を
さらに備える請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記作業車両から離れた場所に設けられている
請求項1または2に記載の予測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の容器と、請求項1または2に記載の予測装置を備える
作業車両。
【請求項5】
作業車両に搭載される容器に収容された還元剤の凍結に至るまでの時間を予測する方法であって、
前記容器に収容されている前記還元剤の残量を示す残量情報を取得するステップと、
前記容器の壁面温度の検出結果である壁面温度検出値を取得するステップと、
前記還元剤の温度の検出結果である還元剤温度検出値を取得するステップと、
前記壁面温度検出値と、前記還元剤温度検出値と、前記残量情報とに基づいて、前記還元剤が凍結に至るまでの時間を算出するステップと、
を含む予測方法。
【請求項6】
作業車両に搭載される容器に収容された還元剤が前記容器に設置された加熱部によって加熱されて解凍されるまでの時間を予測する装置であって、
前記容器に収容されている前記還元剤の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記容器の壁面温度の検出結果である壁面温度検出値を取得する壁面温度取得部と、
前記還元剤の温度の検出結果である還元剤温度検出値を取得する還元剤温度取得部と、
前記壁面温度検出値と、前記還元剤温度検出値と、前記残量情報とに基づいて、前記還元剤が解凍されるまでの時間を算出する時間演算部と、
を備える予測装置。
【請求項7】
前記時間演算部が算出した前記還元剤が解凍されるまでの時間と前記還元剤の温度の時間変化を出力する出力部を
さらに備える請求項6に記載の予測装置。
【請求項8】
前記作業車両から離れた場所に設けられている
請求項6または7に記載の予測装置。
【請求項9】
請求項6に記載の容器と、請求項6または7に記載の予測装置を備える
作業車両。
【請求項10】
作業車両に搭載される容器に収容された還元剤が前記容器に設置された加熱部によって加熱されて解凍されるまでの時間を予測する方法であって、
前記容器に収容されている前記還元剤の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記容器の壁面温度の検出結果である壁面温度検出値を取得する壁面温度取得部と、
前記還元剤の温度の検出結果である還元剤温度検出値を取得する還元剤温度取得部と、
前記壁面温度検出値と、前記還元剤温度検出値と、前記残量情報とに基づいて、前記還元剤が解凍されるまでの時間を算出する時間演算部と、
を含む予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予測装置、予測方法および作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス規制Tier4Final世代の建設機械ではSCR(Selective Catalytic Reduction;選択還元触媒)の還元剤としてDEF(Diesel Exhaust Fluid)(AUS32 JIS K2247)が使用されている。DEFは車載タンクに保存されるが、寒冷地域では、例えば建設機械のエンジンが停止している間にDEFが凍結する問題が発生する。建設機械のエンジンを始動させれば、タンク内に搭載された解凍用ヒータなどで例示される解凍装置が起動し、凍結したDEFを解凍することができるが解凍には時間を要する。そのため、エンジン始動時などに例えば出力制限がかかり、建設機械による作業に制限がかかり待ち時間が生ずる。
【0003】
特許文献1は、エンジンの冷却水温度と還元剤タンクの周囲温度に基づき、冷却水温度の変化率を決定し、その変化率に基づいて還元剤タンクの充填バルブの解凍時間を予測し、解凍予測時間の完了時に還元剤の充填の準備ができた旨をオペレータに通知するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0282167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシステムによれば、還元剤タンクへの充填バルブの解凍時間が予測され、予測した解凍時間が完了したことが通知される。しかしながら、特許文献1に記載のシステムは、還元剤タンクに貯蔵されている還元剤に凍結するおそれがある場合や凍結してしまった場合に、凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間を予測するものではない。例えば、凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間が事前に予測できれば、その時間を見込んで作業計画を立案することができたり、車体を凍結しにくい場所に移動させるといった対策を講じたりすることができる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、還元剤の凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間を予測することができる予測装置、予測方法および作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、作業車両に搭載される容器に収容された還元剤の凍結に至るまでの時間を予測する装置であって、前記容器に収容されている前記還元剤の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、前記容器の壁面温度の検出結果である壁面温度検出値を取得する壁面温度取得部と、前記還元剤の温度の検出結果である還元剤温度検出値を取得する還元剤温度取得部と、前記壁面温度検出値と、前記還元剤温度検出値と、前記残量情報とに基づいて、前記還元剤が凍結に至るまでの時間を算出する時間演算部と、を備える予測装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、還元剤の凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
図2図1に示すコントローラ6に係るシステム構成図である。
図3図1および図2に示すコントローラ6の構成例を示すブロック図である。
図4図3に示す形状特性ケーブル68の構成例を示す模式図である。
図5図3に示すコントローラ6の動作例を示すフローチャートである。
図6図3に示すコントローラ6の他の動作例を示すフローチャートである。
図7図3に示すコントローラ6の動作例を説明するための模式図である。
図8図1および図2に示すサーバ11とコントローラ6(図8ではコンローラ6a)の他の構成例を示すブロック図である。
図9図8に示すサーバ11の動作例を示すフローチャートである。
図10図8に示すサーバ11の他の動作例を示すフローチャートである。
図11図3に示すコントローラ6の他の動作例を示すフローチャートである。
図12図11に示すコントローラ6の動作例、を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業車両を示す側面図である。図1に示す例では、第1実施形態に係る作業車両は、ダンプトラック100である。本実施形態において、ダンプトラック100は、キャブ(運転室)108に搭乗した運転者(オペレータ)に操作される有人ダンプトラックであるが、これに限定されず無人ダンプトラックでもよい。さらに、本実施形態において、ダンプトラック100は、例えばリジッド式のダンプトラック100であるが、これに限定されずアーティキュレート式のダンプトラックなどの運搬車両であってもよい。
【0012】
ダンプトラック100は、車両本体102と、車両本体102に設けられるベッセル103とを備える。車両本体102は、走行装置104と、走行装置104に支持された車体105とを有する。走行装置104は、車輪106と、車輪106を回転可能に支持する車軸107とを有する。
【0013】
また、車体105は、動力発生装置110を有する。動力発生装置110は、動力を発生させて走行装置104を駆動する。動力発生装置110は、エンジン12を有する。本実施形態において、エンジン12は、ディーゼルエンジンである。エンジン12は、排気管12Cを有する。排気管12Cは、排気ガス後処理装置130のDPF(Diesel Particulate Filter)装置131に接続される。
【0014】
排気ガス後処理装置130は、DPF装置131と、ミキシング装置132と、SCR(Selective Catalytic Reduction)装置133とを有する。DPF装置131は、排気ガス中のスス等の微粒子を除去する。ミキシング装置132は、DPF装置131から排出された排気ガスに対して、還元剤としての尿素水を混合させてSCR装置133に送る。ミキシング装置132では、混合された尿素水が加水分解され、アンモニアが発生する。SCR装置133には、排気ガスと、発生したアンモニアとが送られる。ミキシング装置132は、還元剤タンク3に接続されている図示していない供給管とインジェクタを有する。還元剤タンク3は、ミキシング装置132に供給される尿素水を貯留する。作業車両に搭載される還元剤タンク3は、還元剤としての尿素水を収容する容器である。なお、本実施形態において、作業車両としてのダンプトラック100の排気ガス後処理装置130は、DPF装置131とSCR装置133との両者を搭載するが、排気ガス後処理装置130がDPF装置131を搭載せずSCR装置133を搭載するものであってもよい。
【0015】
SCR装置133は、還元触媒を有し、還元触媒によって、排気ガスに含まれるNOx(窒素酸化物)と、ミキシング装置132で発生したアンモニアとの間に触媒反応を発生させる。還元触媒は、例えば、バナジウム系触媒、ゼオライト系触媒等が用いられる。排気ガスに含まれるNOxは、還元剤であるアンモニアとの触媒反応により、窒素と水とに変換される。なお、本実施形態では、尿素水とアンモニアの両者を還元剤と呼ぶ。
【0016】
キャブ108は、コントローラ6と、モニタ8を備える。コントローラ6は、ダンプトラック100の還元剤タンク3に収容された尿素水(還元剤)の凍結に至るまでの時間を予測したり、還元剤タンク3に収容された尿素水が凍結した場合に還元剤タンク3に設置されたヒーターチューブ(加熱部)によって加熱されて解凍されるまでの時間を予測したりする予測装置である。モニタ8は、コントローラ6が予測した結果を表示する。モニタ8は、例えば、尿素水が凍結に至るまでの時間や尿素水の温度の時間変化を表示したり、尿素水が解凍されるまでの時間や尿素水の温度の時間変化を表示したりする。
【0017】
次に、図2を参照して、コントローラ6の入出力に係る構成について説明する。図2は、図1に示すコントローラ6に係るシステム構成図である。なお、図2に示す例では、尿素水2(以下、還元剤2という)を収容する還元剤タンク3の内部には、ヒーターチューブ1と、センサモジュール4が設置されている。ヒーターチューブ1には、エンジン12の冷却水(温水)が環流し、還元剤2を加熱する。センサモジュール4は、濃度センサ41、残量センサ42および還元剤温度センサ43を有する。濃度センサ41は、還元剤2の濃度を検知して、検知結果をコントローラ6へ出力する。残量センサ42は、還元剤2の残量(例えば満タンに対する割合(%))を検知して、検知結果をコントローラ6へ出力する。還元剤温度センサ43は、還元剤2の温度を検知して、検知結果をコントローラ6へ出力する。また、還元剤タンク3は、タンクカバー7で覆われている。また、タンクカバー7内には、壁面温度センサ5が設けられている。壁面温度センサ5は、還元剤タンク3の壁面温度を検知して、検知結果をコントローラ6へ出力する。壁面温度センサ5は、熱電対によるセンサを用いることができるが、熱流センサを用いてもよい。熱流センサは、熱流の量と方向に応じた電気信号を出力するセンサであり、例えばサーモパイルを用いて構成されたものなどがある。
【0018】
コントローラ6には、濃度センサ41、残量センサ42および還元剤温度センサ43と、壁面温度センサ5と、モニタ8と、アンテナ10と、外気温センサ13と、図示していないエンジン12のコントロールユニット等が接続されている。外気温センサ13は、エンジン12等の発熱源の影響を受けにくい車両本体102の所定の位置に設置され、外気温を検知して、検知結果をコントローラ6へ出力する。モニタ8は、表示装置である。あるいは、モニタ8は、表示面と操作面を備えるタッチパネル等の入力表示装置であってもよい。アンテナ10は、ダンプトラック100と離れた位置に設置されているサーバ11と無線通信する際に用いられる。サーバ11は、管理者等が、ダンプトラック100の各部の動作状態を監視(管理)したり、遠隔操作したりする制御装置である。
【0019】
次に、図3を参照して、図1および図2に示すコントローラ6の構成例について説明する。図1および図2に示すコントローラ6は、コンピュータとその周辺装置等(入力装置、音声出力装置等)から構成される。図3は、図1および図2に示すコントローラ6の構成例を示すブロック図であり、コントローラ6を構成するコンピュータとその周辺装置等のハードウェアと、コンピュータで実行されるプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成要素をブロックに分けて示す。
【0020】
図3に示す例においてコントローラ6は、外気温度取得部61と、残量情報取得部62と、壁面温度取得部63と、還元剤温度取得部64と、時間演算部65と、出力部66と、記憶部67を備える。外気温度取得部61は、外気温センサ13の出力信号を入力して、外気温を取得する。また、外気温度取得部61は、取得した外気温と還元剤2の凝固点とを比較する処理を実行する。残量情報取得部62は、残量センサ42の出力信号を入力して、還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を取得する。なお、残量情報取得部62は、残量センサ42の出力信号を入力して、記憶部67に記憶されている残量センサ42の出力信号と還元剤の残量(体積)とを対応付けるテーブルなど参照して、還元剤タンク3内の還元剤の残量情報を取得するものであってもよい。壁面温度取得部63は、壁面温度センサ5の出力信号を入力して、還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を取得する。還元剤温度取得部64は、還元剤温度センサ43の出力信号を入力して、還元剤温度(還元剤温度検出値)を取得する。時間演算部65は、壁面温度検出値と、還元剤温度検出値と、残量情報とに基づいて、還元剤が凍結に至るまでの時間を算出したり、還元剤が解凍されるまでの時間を算出したりする。出力部66は、時間演算部65が算出した還元剤が凍結に至るまでの時間や還元剤が解凍されるまでの時間と還元剤の温度の時間変化をモニタ8等へ出力する。記憶部67は、形状特性ケーブル68と、図示していない還元剤2の特性情報(還元剤2の凝固点温度、比熱、潜熱、密度等)、還元剤タンク3の特性情報(還元剤タンク3の質量、比熱、表面積等)等を記憶する。なお、例えば、還元剤2の比熱は還元剤2の濃度と温度に依存するので、還元剤2の比熱は濃度と温度を要素とする配列(テーブル)で表すことができる。また、還元剤2の凝固点温度は還元剤2の濃度に依存するので、還元剤2の濃度を要素とする配列(テーブル)で表すことができる。
【0021】
ここで、図4を参照して、図3に示す形状特性ケーブル68の構成例について説明する。図4は、図3に示す形状特性ケーブル68の構成例を示す模式図である。図4に示す形状特性ケーブル68は、還元剤残量(%)と、還元剤質量(kg)、タンク触れ表面積(m)、およびヒーターチューブ触れ表面積(m)との対応関係を示す配列で構成されている。タンク触れ表面積(m)は、還元剤2が接触する還元剤タンク3の表面の面積である。ヒーターチューブ触れ表面積(m)は、還元剤2が接触するヒーターチューブ1の表面の面積である。還元剤残量(%)と、還元剤質量(kg)、タンク触れ表面積(m)、およびヒーターチューブ触れ表面積(m)との対応関係は、還元剤タンク3の形状と、ヒーターチューブ1の形状および還元剤タンク3への取り付け方とによって決定される。図4に示す形状特性ケーブル68を参照することで、還元剤残量(%)に対応する各値(還元剤質量(kg)、タンク触れ表面積(m)、およびヒーターチューブ触れ表面積(m))を取得することができる。
【0022】
次に、図5を参照して、コントローラ6の動作例について説明する。図5は、図3に示すコントローラ6が凍結時間を予測する際の動作例を示すフローチャートである。図5に示す処理は、例えばヒーターチューブ1に冷却水(温水)が環流していない状態で、コントローラ6に対してオペレータが所定の入力操作を行った場合に開始される。なお、ダンプトラック100が無人ダンプトラックの場合は、例えば、サーバ11から無線通信によってアンテナ10を介し、凍結時間の予測を指示する信号をコントローラ6が受信することによってコントローラ6が動作してもよい。
【0023】
コントローラ6は、図5に示す処理が開始されると、まず、外気温度取得部61が外気温センサ13の出力信号を入力して外気温を取得し、外気温と還元剤2の凝固点温度を比較する(ステップS11)。一方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下でない場合(ステップS11で「NO」の場合)、外気温度取得部61は、例えばモニタ8にその旨を表示し、図5に示す処理を終了する。
【0024】
他方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下の場合(ステップS11で「YES」の場合)、還元剤温度取得部64が還元剤温度センサ43の出力信号を入力して還元剤温度(還元剤温度検出値)を取得するとともに、残量情報取得部62が、残量センサ42の出力信号を入力して還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を取得する(ステップS12)。
【0025】
次に、壁面温度取得部63が、所定の時間間隔で、複数回(少なくとも2回)、壁面温度センサ5の出力信号を入力して還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を取得する(ステップS13)。
【0026】
次に、時間演算部65が、以下のようにして還元剤2の凍結予測時間を算出する(ステップS14)。
【0027】
まず、時間演算部65は、下式(A1)によって、単位時間に還元剤タンク3の単位面積を横切る熱量である、タンク熱流束を算出する。なお、壁面温度センサ5として熱流センサを用いる場合、熱流センサが検知した値そのものが、下式(A1)の左辺に示すタンク熱流束として用いることができる。
【0028】
【数1】
【0029】
式(A1)において、壁面温度変化量は、単位時間当たりの温度変化であり、ステップS13で取得した還元剤タンク3の壁面温度の複数回の計測結果に基づいて算出される。式(A1)に示される、タンク質量、タンク比熱、およびタンク表面積は、還元剤タンク3の質量、比熱および表面積である。
【0030】
次に、時間演算部65は、下式(A2)によって、単位時間当たりの還元剤2の温度変化である、時間当たりの温度変化を算出する。
【0031】
【数2】
【0032】
式(A2)において、タンク触れ表面積と還元剤質量は、残量情報に基づき形状特性テーブル68から得た値である。還元剤比熱は、記憶部67に特性情報として保存されている還元剤2の比熱を読み出して用いる。タンク熱流束は、式(A1)によって求められたものを用いる。
【0033】
次に、時間演算部65は、下式(A3-1)によって、液体の還元剤2の温度が凝固点温度まで降下する時間である、凍結予測時間(液体領域)を算出する。
【0034】
【数3】
【0035】
式(A3-1)において、還元剤温度は、ステップS12で取得された値である。なお、時間演算部65は、式{任意の時間の還元剤温度=還元剤温度の初期値-(時間当たりの温度変化×任意の時間)}にて、液体領域での還元剤2の温度降下カーブを算出することができる。図7に、還元剤2の温度降下カーブの予測値と実測値の例を示す。図7は、図3に示すコントローラ6の動作例を説明するための模式図であり、横軸に時間、縦軸に還元剤2の温度をとり、還元剤2の温度変化を示したものである。図7に示す例において還元剤2の凝固点温度は-11℃である。
【0036】
次に、時間演算部65は、下式(A3-2)によって、凝固点温度まで低下した還元剤2が固液共存領域で維持される時間である、凍結予測時間(固液共存領域)を算出する。ただし、固液共存領域では、還元剤温度が、凝固点温度一定であるとしている。還元剤潜熱は、特性情報として記憶部67に保存されている還元剤2の潜熱を読み出して用いる。タンク熱流束は、式(A1)によって求められたものを用いる。
【0037】
【数4】
【0038】
次に、時間演算部65は、下式(A3-3)によって、固体となった還元剤2が、任意の還元剤温度まで低下するのに要する時間である、凍結予測時間(固体領域)を算出する。
【0039】
【数5】
【0040】
例えば、式(A3-3)の還元剤温度を外気温とすれば、式(A3-3)によって外気温まで低下する時間(外気との間で熱平衡となるまでの時間)を求めることができる。なお、時間演算部65は、式{任意の時間の還元剤温度=還元剤温度の凝固点温度-(時間当たりの温度変化×任意の時間)}にて、固体領域での還元剤2の温度降下カーブを算出することができる。
【0041】
図7に示すように、本実施形態で算出された凍結予測時間は、液体領域、固液共存領域および固体領域において、おおむね実測値に近い値となった。
【0042】
次に、出力部66が、ステップS14で算出された凍結予測時間をモニタ8に出力して、図5に示す処理を終了する(ステップS15)。出力する凍結予測時間としては、例えば、凍結予測時間(液体領域)のみでもよいし、凍結予測時間(液体領域)と凍結予測時間(固液共存領域)と凍結予測時間(固体領域)の全部または一部としてもよい。
【0043】
次に、図6を参照して、コントローラ6の他の動作例について説明する。図6は、図3に示すコントローラ6が解凍時間を予測する際の動作例を示すフローチャートである。図6に示す処理は、例えばヒーターチューブ1に冷却水(温水)の環流が開始した状態で、コントローラ6に対してオペレータが所定の入力操作を行った場合に開始される。
【0044】
コントローラ6は、図6に示す処理が開始されると、まず、例えば還元剤温度取得部64が、エンジン12のコントロールユニット等から得た情報に基づき、還元剤タンク3の凍結が検知されていて、かつ、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始しているか否かを判断する(ステップS21)。一方、還元剤タンク3の凍結が検知されていないか、または、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始していない場合(ステップS21で「NO」の場合)、例えば還元剤温度取得部64は、例えばモニタ8にその旨を表示し、図6に示す処理を終了する。
【0045】
他方、還元剤タンク3の凍結が検知されていて、かつ、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始している場合(ステップS21で「YES」の場合)、還元剤温度取得部64が還元剤温度センサ43の出力信号を入力して還元剤温度(還元剤温度検出値)を取得するとともに、残量情報取得部62が、残量センサ42の出力信号を入力して還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を取得する(ステップS22)。
【0046】
次に、壁面温度取得部63が、所定の時間間隔で、複数回(少なくとも2回)、壁面温度センサ5の出力信号を入力して還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を取得する(ステップS23)。
【0047】
次に、時間演算部65が、以下のようにして還元剤2の解凍予測時間を算出する(ステップS24)。
【0048】
まず、時間演算部65は、下式(B1)によって、単位時間に還元剤タンク3の単位面積を横切る熱量である、タンク熱流束を算出する。なお、壁面温度センサ5として熱流センサを用いる場合、熱流センサが検知した値そのものが、下式(B1)の左辺に示すタンク熱流束として用いることができる。
【0049】
【数6】
【0050】
式(B1)において、壁面温度変化量は、単位時間当たりの温度変化であり、ステップS23で取得した還元剤タンク3の壁面温度の複数回の計測結果に基づいて算出される。式(B1)に示される、タンク質量、タンク比熱、およびタンク表面積は、還元剤タンク3の質量、比熱および表面積である。
【0051】
次に、時間演算部65は、下式(B2)によって、単位時間当たりの還元剤2の温度変化である、時間当たりの温度変化を算出する。
【0052】
【数7】
【0053】
式(B2)において、タンク触れ表面積と還元剤質量とヒーターチューブ(HT)触れ表面積は、残量情報に基づき形状特性テーブル68から得た値である。ヒーターチューブ(HT)熱流束は、例えば、還元剤温度、冷却水温度、冷却水流量等をパラメータとして、実験的にあるいはシミュレーション計算によって設定した経験式やテーブルを用いて決定することができる。なお、還元剤比熱は、特性情報として記憶部67に保存されている還元剤2の比熱を読み出して用いる。タンク熱流束は、式(B1)によって求められたものを用いる。
【0054】
次に、時間演算部65は、下式(B3-1)によって、固体領域の還元剤2が、任意の還元剤温度分、上昇するのに要する時間である、解凍予測時間(固体領域)を算出する。
【0055】
【数8】
【0056】
例えば、式(B3-1)の還元剤温度を、現在の還元剤温度と凝固点温度の差分に対応する温度とすれば、式(B3-1)によって凝固点温度まで上昇するのに要する時間を求めることができる。なお、時間演算部65は、式{任意の時間の還元剤温度=還元剤温度(初期値)+(時間当たりの温度変化×任意の時間)}にて、固体領域での還元剤2の温度上昇カーブを算出することができる。
【0057】
次に、時間演算部65は、下式(B3-2)によって、凝固点温度まで上昇した還元剤2が固液共存領域で維持される時間である、解凍予測時間(固液共存領域)を算出する。タンク熱流束は、式(B1)によって求められたものを用いる。還元剤潜熱は、記憶部67に特性情報として保存されている還元剤2の潜熱を読み出して用いる。ただし、固液共存領域では、還元剤温度が、凝固点温度一定であるとしている。
【0058】
【数9】
【0059】
次に、時間演算部65は、下式(B3-3)によって、液体の還元剤2の温度が任意の還元剤温度まで上昇する時間である、解凍予測時間(液体領域)を算出する。
【0060】
【数10】
【0061】
式(B3-3)において、還元剤温度は、任意の温度である。式(B3-3)を用いて、例えば、液体の還元剤2の温度が一定に維持されるまでの時間(冷却水から得る熱量と外気に奪われる熱量とが釣り合うまでの時間)を求めることができる。なお、時間演算部65は、式{任意の時間の還元剤温度=凝固点温度+(時間当たりの温度変化×任意の時間)}にて、液体領域での還元剤2の温度上昇カーブを算出することができる。
【0062】
次に、出力部66が、ステップS24で算出された解凍予測時間をモニタ8に出力して、図6に示す処理を終了する(ステップS25)。出力する解凍予測時間としては、例えば、解凍予測時間(固体領域)のみでもよいし、解凍予測時間(固体領域)と解凍予測時間(固液共存領域)と解凍予測時間(液体領域)の全部または一部としてもよい。
【0063】
以上のように本実施形態によれば、還元剤タンク3に貯蔵されている還元剤2に凍結するおそれがある場合や凍結してしまった場合に、凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間を予測することができる。したがって、本実施形態によれば、例えば、凍結に至るまでの時間や解凍に要する時間を事前に予測して、その時間を見込んで作業車両の稼働計画を立案することができたり、作業車両を休車させる前に作業車両を凍結しにくい場所に移動させるといった対策を講じたりすることができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、図8図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、図1および図2に示すサーバ11とコントローラ6の他の構成例(第2実施形態の構成例)を示す(図8ではコントローラ6aとして示す)ブロック図である。図9は、図8に示すサーバ11の動作例を示すフローチャートである。図10は、図8に示すサーバ11の他の動作例を示すフローチャートである。
【0065】
第1実施形態ではダンプトラック100に搭載されているコントローラ6で凍結予測時間と解凍予測時間を算出したのに対して、第2実施形態では、サーバ11において凍結予測時間と解凍予測時間を算出する。以下、第2実施形態ついて、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0066】
まず、図8を参照して、図1および図2に示すサーバ11とコントローラ6の第2実施形態(コントローラ6a)における構成例について説明する。図1および図2に示すサーバ11は、コントローラ6(コントローラ6a)と同様に、コンピュータとその周辺装置等(入力装置、音声出力装置等)から構成される。図8は、図1および図2に示すサーバ11とコントローラ6aの構成例を示すブロック図であり、サーバ11およびコントローラ6aを構成するコンピュータとその周辺装置等のハードウェアと、コンピュータで実行されるプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成要素をブロックに分けて示す。
【0067】
図8に示すコントローラ6aは、図3に示すコントローラ6に対して、時間演算部65と記憶部67が除かれ、あらたに通信部69が設けられている。通信部69は、外気温度取得部61、残量情報取得部62、壁面温度取得部63、および還元剤温度取得部64が取得した情報をサーバ11へ送信したり、エンジン12のコントロールユニットから取得した情報(例えば温水解凍が開始されているか否かを示す情報等)をサーバ11へ送信したり、サーバ11から受信した情報を、出力部66を介してモニタ8に表示したりする。
【0068】
図8に示すサーバ11は、解凍状態受信部111と、外気温度受信部112と、残量情報受信部113と、壁面温度受信部114と、還元剤温度受信部115と、時間演算部116と、送信部117と、記憶部118を備える。
【0069】
解凍状態受信部111は、エンジン12のコントロールユニットから温水解凍が開始されているか否かを示す情報を、通信部69を介して(あるいはエンジン12のコントロールユニットから所定の通信部を介して通信部69を介さずに)受信する。外気温度受信部112は、外気温度取得部61が取得した外気温の情報を通信部69から受信する。残量情報受信部113は、残量情報取得部62が取得した還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を通信部69から受信する。壁面温度受信部114は、壁面温度取得部63が取得した還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を通信部69から受信する。還元剤温度受信部115は、還元剤温度取得部64が取得した還元剤温度(還元剤温度検出値)を通信部69から受信する。時間演算部116は、図3に示す第1実施形態の時間演算部65と同様にして、壁面温度検出値と、還元剤温度検出値と、残量情報とに基づいて、還元剤が凍結に至るまでの時間を算出したり、還元剤が解凍されるまでの時間を算出したりする。送信部117は、時間演算部116が算出した還元剤が凍結に至るまでの時間や還元剤が解凍されるまでの時間と還元剤の温度の時間変化を、コントローラ6aの通信部69へ送信する。記憶部118は、図3に示す記憶部67と同様に、形状特性ケーブル68と、図示していない還元剤2の特性情報(還元剤2の凝固点温度、比熱、潜熱、密度等)、還元剤タンク3の特性情報(還元剤タンク3の質量、比熱、表面積等)等を記憶する。なお、例えば、還元剤2の比熱は還元剤2の濃度と温度に依存するので、還元剤2の比熱は濃度と温度を要素とする配列(テーブル)で表すことができる。また、還元剤2の凝固点温度は還元剤2の濃度に依存するので、還元剤2の濃度を要素とする配列(テーブル)で表すことができる。
【0070】
次に、図9を参照して、図8に示すサーバ11の動作例について説明する。図9は、図8に示すサーバ11が凍結時間を予測する際の動作例を示すフローチャートである。図9に示す処理は、例えばヒーターチューブ1に冷却水(温水)が環流していない状態で、サーバ11に対して管理者等のサーバ11のオペレータが所定の入力操作を行った場合に開始される。
【0071】
サーバ11は、図9に示す処理が開始されると、まず、外気温受信部112が、外気温度取得部61が取得した外気温を受信する(ステップS31)。次に、例えば外気温受信部112が、外気温と還元剤2の凝固点温度を比較する(ステップS32)。一方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下でない場合(ステップS32で「NO」の場合)、外気温受信部112は、例えばサーバ11の所定のモニタにその旨を表示し、図9に示す処理を終了する。
【0072】
他方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下の場合(ステップS32で「YES」の場合)、還元剤温度受信部115が、還元剤温度取得部64が取得した還元剤温度(還元剤温度検出値)を受信するとともに、残量情報受信部113が、残量情報取得部62が取得した還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を受信する(ステップS33)。
【0073】
次に、壁面温度受信部114が、壁面温度取得部63が所定の時間間隔で複数回(少なくとも2回)取得した還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を受信する(ステップS34)。
【0074】
次に、時間演算部116が、第1実施形態の時間演算部65と同様にして還元剤2の凍結予測時間を算出する(ステップS35)。
【0075】
次に、送信部117が、ステップS35で算出された凍結予測時間を通信部69へ送信して、図9に示す処理を終了する(ステップS36)。これに対し、コントローラ6aの通信部69は、受信した凍結予測時間を表す情報をモニタ8に出力させる。
【0076】
次に、図10を参照して、サーバ11の他の動作例について説明する。図10は、図8に示すサーバ11が解凍時間を予測する際の動作例を示すフローチャートである。図10に示す処理は、例えばヒーターチューブ1に冷却水(温水)の環流が開始した状態で、サーバ11に対して管理者等のサーバ11のオペレータが所定の入力操作を行った場合に開始される。
【0077】
サーバ11は、図10に示す処理が開始されると、まず、還元剤温度受信部115が、還元剤温度取得部64が取得した還元剤温度(還元剤温度検出値)を受信する(ステップS41)。次に、解凍状態受信部111がエンジン12のコントロールユニット等からヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始しているか否かを示す情報を受信する(ステップS42)。
【0078】
次に、例えば解凍状態受信部111が、ステップS41とステップS42で取得された情報に基づき、還元剤タンク3の凍結が検知されていて、かつ、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始しているか否かを判断する(ステップS43)。一方、還元剤タンク3の凍結が検知されていないか、または、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始していない場合(ステップS43で「NO」の場合)、例えば解凍状態受信部111は、例えばサーバ11の所定のモニタにその旨を表示し、図10に示す処理を終了する。
【0079】
他方、還元剤タンク3の凍結が検知されていて、かつ、ヒーターチューブ1への冷却水(温水)の環流が開始している場合(ステップS43で「YES」の場合)、還元剤温度受信部115が、還元剤温度取得部64が取得した還元剤温度(還元剤温度検出値)を受信するとともに、残量情報受信部113が、残量情報取得部62が取得した還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を受信する(ステップS44)。
【0080】
次に、壁面温度受信部114が、壁面温度取得部63が所定の時間間隔で複数回(少なくとも2回)取得した還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を受信する(ステップS45)。
【0081】
次に、時間演算部116が、第1実施形態の時間演算部65と同様にして還元剤2の解凍予測時間を算出する(ステップS46)。
【0082】
次に、送信部117が、ステップS46で算出された解凍予測時間を通信部69へ送信して、図10に示す処理を終了する(ステップS47)。これに対し、コントローラ6aの通信部69は、受信した解凍予測時間を表す情報をモニタ8に出力させる。
【0083】
以上のように、第2実施形態によれば、サーバ11側で、還元剤2の凍結予測時間や解凍予測時間を予測することができる。
【0084】
(第3実施形態)
次に、図11および図12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図11は、図1および図2に示すコントローラ6の他の動作例(第3実施形態の動作例)を示すフローチャートである。図12は、図1および図2に示すコントローラ6の他の動作例を説明するための模式図である。なお、第3実施形態は、第1実施形態と比較して、コントローラ6の動作の一部が異なる。
【0085】
図11を参照して、第3実施形態におけるコントローラ6の動作例について説明する。図11は、図3に示すコントローラ6が凍結時間を予測する際の動作例を示すフローチャートである。図11に示す処理は、例えばヒーターチューブ1に冷却水(温水)が環流していない状態で、コントローラ6に対してオペレータが所定の入力操作を行った場合に開始される。
【0086】
コントローラ6は、図11に示す処理が開始されると、まず、外気温度取得部61が外気温センサ13の出力信号を入力して外気温を取得し、外気温と還元剤2の凝固点温度を比較する(ステップS51)。一方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下でない場合(ステップS51で「NO」の場合)、外気温度取得部61は、例えばモニタ8にその旨を表示し、図11に示す処理を終了する。
【0087】
他方、外気温が還元剤2の凝固点温度以下の場合(ステップS51で「YES」の場合)、還元剤温度取得部64が還元剤温度センサ43の出力信号を入力して還元剤温度(還元剤温度検出値)を取得するとともに、残量情報取得部62が、残量センサ42の出力信号を入力して還元剤タンク3内の還元剤の残量(残量情報)を取得する(ステップS52)。
【0088】
次に、壁面温度取得部63が、所定の時間間隔で、複数回(少なくとも2回)、壁面温度センサ5の出力信号を入力して還元剤タンク3の壁面温度(壁面温度検出値)を取得する(ステップS53)。
【0089】
次に、時間演算部65が、図5のステップS14と同様にして還元剤2の凍結予測時間を算出するとともに、上述したようにして還元剤2の温度変化(温度降下予測に係る情報)を算出する(ステップS54)。
【0090】
次に、出力部66が、ステップS54で算出された凍結予測時間と温度降下カーブ(温度の時間変化)を例えば図12に示すようにしてモニタ8に出力して、図11に示す処理を終了する(ステップS55)。
【0091】
本実施形態によれば、凍結予測時間に関するより詳細な情報を作業車両のオペレータや作業車両の管理者、あるいは作業車両が稼働する作業現場の管理者に対して提供することができる。
【0092】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0093】
例えば、各取得部64は、各センサを含んだ機能的構成要素として把握してもよい。また、式(A1)、式(B1)で示した熱流束は、熱流センサで計測して求めてもよい。また、壁面温度変化量については、予め実験あるいはシミュレーションによって、外気温、壁面温度、還元剤残量、還元剤温度等に基づいて壁面温度変化量を決定するテーブルを用いて求めてもよい。また、出力部66や送信部117が予測結果や温度変化を表す情報を出力したり送信したりする出力先もしくは送信先は、モニタ8等に限らず、音声出力装置、携帯端末装置などであってもよい。また、ヒーターチューブ1(加熱部)が、作業車両に搭載したバッテリの電力を用いて電熱線を加熱させ、還元剤タンク3に収容されている還元剤2を加熱できるような構成とする場合、サーバ11からの指示でバッテリの電力を電熱線に通電させるようにして還元剤2の解凍を開始してもよい。作業車両は、ダンプトラック100に限定されず、例えばSCR装置を有する車両一般とすることができる。また、作業車両は、SCR装置を有するものであって、例えば、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダといった車両であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
100 ダンプトラック、1 ヒーターチューブ、2 還元剤、3 還元剤タンク、4 センサモジュール、5 壁面温度センサ、6 コントローラ、8 モニタ、11 サーバ、12 エンジン、13 外気温センサ、41 濃度センサ、42 残量センサ、43 還元剤温度センサ、62 残量情報取得部、63 壁面温度取得部、64 還元剤温度取得部、65 時間演算部、66 出力部、133 SCR装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12