特許 7265956 配策材の結束構造

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-04-19

(45)【発行日】2023-04-27

(54)【発明の名称】配策材の結束構造

(51)【国際特許分類】

   H02G 3/32 20060101AFI20230420BHJP

   F16B 19/00 20060101ALI20230420BHJP

   F16B 5/06 20060101ALI20230420BHJP

   F16B 2/08 20060101ALI20230420BHJP

   F16B 2/22 20060101ALI20230420BHJP

   F16B 2/10 20060101ALI20230420BHJP

【ＦＩ】

H02G3/32

F16B19/00 E

F16B19/00 Q

F16B5/06 D

F16B5/06 A

F16B2/08 B

F16B2/22 B

F16B2/10 Z

F16B2/08 S

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2019139734

(22)【出願日】2019-07-30

(65)【公開番号】P2021023071

(43)【公開日】2021-02-18

【審査請求日】2022-05-09

(73)【特許権者】

【識別番号】308011351

【氏名又は名称】大和化成工業株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】000003207

【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100131048

【弁理士】

【氏名又は名称】張川 隆司

(74)【代理人】

【識別番号】100174377

【弁理士】

【氏名又は名称】山内 健吾

(74)【代理人】

【識別番号】100215038

【弁理士】

【氏名又は名称】木村 友子

(72)【発明者】

【氏名】神谷 晴久

(72)【発明者】

【氏名】加藤 誠

(72)【発明者】

【氏名】鵜飼 準弥

(72)【発明者】

【氏名】平川 勝也

(72)【発明者】

【氏名】大下 慎史

(72)【発明者】

【氏名】若林 五男

(72)【発明者】

【氏名】高田 和昇

【審査官】北嶋 賢二

(56)【参考文献】

【文献】特開２００３－０７９０３５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１１－０２４３５７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００３－０７９０３４（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｈ０２Ｇ ３／３２

Ｆ１６Ｂ １９／００

Ｆ１６Ｂ ５／０６

Ｆ１６Ｂ ２／０８

Ｆ１６Ｂ ２／２２

Ｆ１６Ｂ ２／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

可撓性配策材と、
前記可撓性配策材よりも高剛性で平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材及び前記平型配策材を結束する結束部と、前記結束部に結束された前記可撓性配策材及び前記平型配策材を取り付けるための取付部と、を有した係合部材と、
を備え、
前記取付部は、前記結束部による前記可撓性配策材及び前記平型配策材の結束状態においてそれらの間で挟圧保持される挟圧部を有し、
前記可撓性配策材は、その長手方向において前記結束部に結束された結束区間では、前記平型配策材と密着し、前記平型配策材との間に前記挟圧部が介在する介在区間では、前記平型配策材から引き離され、前記結束区間から前記介在区間にかけての中間区間では、前記介在区間側ほど前記平型配策材から離れるように曲がった曲げ状態となっていることを特徴とする配策材の結束構造。

【請求項2】

前記結束部は、前記取付部の一部であり、前記係合部材と一体に設けられおり、前記可撓性配策材と前記平型配策材との間に前記挟圧部を挟圧する形でそれら可撓性配策材と平型配策材との双方を結束保持することにより、それらを前記係合部材に取り付ける請求項１に記載の配策材の結束構造。

【請求項3】

前記結束部は、前記係合部材とは別体の結束部材として、前記可撓性配策材及び前記平型配策材を結束し、
前記取付部は、前記結束部に結束された前記可撓性配策材と前記平型配策材とのうち前記平型配策材を前記係合部材に取り付ける請求項１に記載の配策材の結束構造。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は配策材の結束構造に関する。

【背景技術】

【0002】

車両には、信号線や電源線を有した配線群からなるワイヤーハーネスを結束状態で車体に保持するために、特許文献１等のようなクランプ（係合部材）が使用されている。

【0003】

こうした係合部材は、ベルトやテープ等によってワイヤーハーネスと共に結束保持されることにより、ワイヤーハーネスに対し一体となる形で取り付けられる。そして、ワイヤーハーネスと一体となった係合部材は、係合部が車体側の固定孔に挿入されて車体側に組み付けられる。このような係合部材は、ワイヤーハーネスに対しその長手方向の各所定位置にそれぞれ取り付けられ、それぞれが車体側に設けられた対応する位置の固定孔に挿入されて組み付く。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【文献】特開２００７－２８２３５２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、近年では、ワイヤーハーネスのような可撓性配策材と、剛性の高い平板状の平型配策材とを用意し、それらを結束して車体に配策されることがある。しかしながら、平型配策材が用いられる場合、従来の係合部材には次のような問題がある。

【0006】

即ち、従来の係合部材は、ワイヤーハーネスという１種の配策材のみを取り付けられるため安定した取り付が容易に可能となるが、ワイヤーハーネスと平型配策材といった形状も剛性も異なる異種の配策材を取り付ける場合は、異種の配策材が分離してしまったり、一方が脱落してしまったりする等、安定した取り付けが難しくなる。

【0007】

本発明の課題は、可撓性配策材と平型配策材といった異種の配策材を係合部材に安定して取り付けることが可能な配策材の結束構造を実現することにある。

【課題を解決するための手段及び発明の効果】

【0008】

上記課題を解決するための配策材の結束構造は、
可撓性配策材と、
前記可撓性配策材よりも高剛性で平板状の平型配策材と、
車体側に組み付けるための係合部と、前記可撓性配策材及び前記平型配策材を結束する結束部と、前記結束部に結束された前記可撓性配策材及び前記平型配策材を取り付けるための取付部と、を有した係合部材と、
を備え、
前記取付部は、前記結束部による前記可撓性配策材及び前記平型配策材の結束状態においてそれらの間で挟圧保持される挟圧部を有することを前提とする。

【0009】

上記本発明の前提構成によれば、異種の２つの配策材の間にそれらに挟圧される挟圧部を配置し、その上で結束部がそれら２つの配策材を互いに密着するように結束する構造となる。互いに密着するよう結束された２つの配策材の間に挟圧部が介在することで、その介在部分における挟圧力が増し、これにより２つの配策材の摺動抵抗が増すから、位置ずれが生じにくく、安定して係合部材に取り付けられた状態にできる。

【0010】

そして、上記本発明における前記可撓性配策材は、その長手方向において前記結束部に結束された結束区間では、前記平型配策材と密着し、前記平型配策材との間に前記挟圧部が介在する介在区間では、前記平型配策材から引き離され、前記結束区間から前記介在区間にかけての中間区間では、前記介在区間側ほど前記平型配策材から離れるように曲がった曲げ状態とすることを特徴とする。この構成によれば、介在区間で可撓性配策材が撓むことにより、係合部材の位置が可撓性配策材及び平型配策材の長手方向に摺動し難くなるから、それらを安定して係合部材に取り付けられた状態にできる。

【0011】

上記本発明における前記結束部は、前記取付部の一部であり、前記係合部材と一体に設けられおり、前記可撓性配策材と前記平型配策材との間に前記挟圧部を挟圧する形でそれら可撓性配策材と平型配策材との双方を結束保持することにより、それらを前記係合部材に取り付けるようにできる。この構成によれば、係合部材１部品によって、可撓性配策材と平型配策材の結束と、それらの係合部材への取り付けと、それらの間に挟圧部を挟圧状態で介在させることとの３点を同時に実現することができる。

【0012】

上記本発明における前記結束部は、前記係合部材とは別体の結束部材として、前記可撓性配策材及び前記平型配策材を結束し、前記取付部は、前記結束部に結束された前記可撓性配策材と前記平型配策材とのうち前記平型配策材を前記係合部材に取り付けるようにできる。この構成によれば、撓みやすい可撓性配策材ではなく、剛性の高い平型配策材を係合部材に取り付けることになるから、安定した取り付け状態とすることができる。一方、可撓性配策材は、結束部によって平型配策材に密着して結束されているので、平型配策材が係合部材に取り付けられることで、この可撓性配策材も平型配策材が係合部材に取り付けられた状態になる。なお、結束部は、可撓性配策材と平型配策材との間に介在する挟圧部を挟圧状態に保持する必要があるため、可撓性配策材と平型配策材の長手方向における挟圧部を挟む位置にて、それらを密着するように結束し、それぞれが可撓性配策材と平型配策材結束を密着状態に結束保持するようにできる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】本発明の第一実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。

【図2】図１の係合部材に配策材を取り付けて結束保持状態とするための方法を示した斜視図。

【図3】図１の係合部材に配策材が結束保持された状態を示した断面図。

【図4】係合部材に、図３とは異なる幅の配策材が結束保持された状態を示した断面図。

【図5】係合部材が挿入固定される車体側の固定孔を示した平面図。

【図6】係合部材の係合部が車体側の固定孔に挿入される前後の状態を示した側面図。

【図7】図６の正面図。

【図8】本発明の第二実施例をなす配策材の結束構造に用いる係合部材を示した斜視図。

【図9】図８の係合部材を用いた配策材の結束構造を示した正面図。

【図10】図９のＡ－Ａ断面図。

【図11】本発明の第三実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。

【図12】図１１の配策材の結束構造に用いた係合部材を示した斜視図。

【図13】図１１の配策材の結束構造を示した断面図。

【図14】図１１の係合部材に配策材を取り付けて結束保持状態とするための方法を示した斜視図。

【図15】本発明の第三実施例の変形例を示した正面図。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、本発明の第一実施例を、図面を参照して説明する。

【0015】

本実施例では、図１に示すように、第一の配策材をなす可撓性配策材２と、第二の配策材をなし、可撓性配策材２よりも高剛性で平板状の平型配策材３と、車体１００側に組み付けるための係合部４０と配策材２、３を結束ないし拘束する結束部をなす結束部材５Ｒ、５Ｌと結束部材５Ｒ、５Ｌに結束された可撓性配策材２及び平型配策材３を取り付けるための取付部４１とを有した係合部材４と、を備えた配策材の結束構造１が形成される。本実施例において結束部をなす結束部材５Ｒ、５Ｌは、係合部材４の本体とは別体の結束部材である。

【0016】

可撓性配策材２は、長手状に延出する複数の配線が束をなした可撓性を有する部材である。ここでの可撓性配策材２は、信号線を形成するワイヤーハーネスである。なお、本発明の可撓性配策材２は、ワイヤーハーネスに限るものではない。

【0017】

平型配策材３は、平板状をなして長手状に延出し、可撓性配策材２よりも高剛性かつ低撓性を有する部材である。ここでの平型配策材３は、電源線を形成する金属製のバスバーである。平型配策材３は、外周面を形成する四面がそれぞれ平型配策材３自身の長手方向に延びる平面として形成されている。なお、本発明の平型配策材３は、フラット電線をなすＦＦＣ（Flexible Flat Cable）やＦＰＣ（Flexible Printed Circuit）でもよく、バスバーに限るものではない。

【0018】

係合部材４は、図１～図４に示すように、車体１００側に組み付けるための係合部４０を有する。

【0019】

係合部４０は、車体１００側に設けられた固定部１０１の所定の固定孔１０１Ｈ（図５参照）に挿入されることにより、その固定孔１０１Ｈに対し、抜け止め状態となるよう係合して組み付くアンカー部である。ここでの係合部４０は、図６及び図７に示すように、固定孔１０１Ｈに挿入される柱部４０Ｂと、柱部４０Ｂと共に固定孔１０１Ｈに挿入され、挿入した先で固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒに対し抜け止め状態となるよう係合する弾性係止片４０Ａと、その抜け止め状態において固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒを弾性係止片４０Ａとの間で挟み込む当接部４０Ｃと、を有する。

【0020】

弾性係止片４０Ａは、柱部４０Ｂの先端側（図６及び図７の柱部４０Ｂの上側）からその基端側（図６及び図７の柱部４０Ｂの下側）に向かうほど柱部４０Ｂから離れる側に拡がる形状をなし、その基端側が柱部４０Ｂに接近する弾性変形が可能とされている。弾性係止片４０Ａは、固定孔１０１Ｈに対し所定の挿入方向Ｚに向けて挿入されると、固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒによって孔内向き（図６の矢印Ｒ側）に押し込まれ、柱部４０Ｂに接近する弾性変形が生じるが、所定位置まで挿入されると、固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒに対し挿入方向Ｚの奥側（図６及び図７上側）から係止し、挿入方向Ｚの逆向きへの抜けが阻止された抜け止め状態となる。

【0021】

当接部４０Ｃは、柱部４０Ｂの基端側から挿入方向Ｚに向けて皿状に広がる形状をなしており、固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒに対し環状をなして当接する。当接部４０Ｃは、上記の抜け止め状態において、固定孔１０１Ｈの周辺部１０１Ｒに対し挿入方向Ｚの手前側（図６及び図７下側）から当接し、弾性係止片４０Ａとの間で当該周辺部１０１Ｒを挟み込む。これにより、係合部４０は、固定孔１０１Ｈに対し抜け止め状態となって組み付く。また、当接部４０Ｃは、固定孔１０１Ｈの挿入方向Ｚの奥側（図６及び図７上側）から手前側（図６及び図７下側）へと固定孔１０１Ｈを通って進入する異物（埃等）を防ぐ役割も果たしている。

【0022】

また、係合部材４は、図１に示すように、可撓性配策材２及び平型配策材３を結束する結束部としての結束部材５Ｒ、５Ｌを有する。

【0023】

結束部材５Ｒ（第一側結束部材）は、係合部材４の係合部４０や取付部４１に対し上記長手方向Ｘの第一側（ＸＲ側）で、平型配策材３と可撓性配策材２とを密着させる形で結束する。他方、結束部材５Ｌ（第二側結束部材）は、第一側とは逆の長手方向Ｘの第二側（ＸＬ側）で、同じく平型配策材３と可撓性配策材２とを密着させる形で結束する。

【0024】

ここでの結束部材５Ｒ、５Ｌは、可撓性を有した長手状の部材であり、図３に示すように、結束対象と対面する側の面（結束対象を取り巻いたときの内周面）が接着面５ｂをなすテープ部材である。結束部材５Ｒ、５Ｌは、取り巻いた結束対象との接触部分に対し接着するとともに、自身の両端部が重なる形で互いに接着することにより結束状態となる（図示なし）。

【0025】

また、係合部材４は、図１に示すように、結束部材５Ｒ、５Ｌによって結束された可撓性配策材２及び平型配策材３を取り付けるための取付部４１を有する。

【0026】

取付部４１は、配策材２、３のうち平型配策材３のみを把持する把持部である。取付部４１は、平型配策材３をその長手方向Ｘに摺動可能に把持する。

【0027】

取付部４１は、図３に示すように、平型配策材３のみを所定の収容口４２Ｈから内部に収容する収容部４２と、収容した平型配策材３の収容口４２Ｈからの抜けを阻止する抜け止め部４３Ｋと、を有する。係合部材４は、収容部４２に収容された平型配策材３が抜け止め部４３Ｋによって収容口４２Ｈからの抜けを阻止された把持状態となっても、収容した平型配策材３とその上に重なる可撓性配策材２との双方に対し長手方向Ｘへ摺動を伴った移動が可能とされている。

【0028】

収容部４２は、平型配策材３が載置される載置壁部４２Ａと、載置壁部４２Ａに対し載置された平型配策材３を挟んで対向する弾性壁部４２Ｊと、載置壁部４２Ａと弾性壁部４２Ｊとをそれらの対向方向Ｚと平型配策材３の長手方向Ｘとの双方に対し直交する直交方向Ｙの一方の側で連結する連結壁部４２Ｉと、を有する。直交方向Ｙの他方の側には、収容口４２Ｈが形成される。収容部４２は、平型配策材３をコの字状（Ｕ字状）に取り囲み、かつ弾性壁部４２Ｊ及び連結壁部４２Ｉのいずれか又は双方の弾性変形により弾性壁部４２Ｊの収容口４２Ｈ側を載置壁部４２Ａに対する接近ないし離間が可能とされている。

【0029】

弾性壁部４２Ｊは、結束部材５Ｒ、５Ｌによる配策材２、３の結束状態においてそれら配策材２、３の間に挟まれて挟圧される挟圧部である。弾性壁部４２Ｊは、上記結束状態において平型配策材３と密着し、かつその逆側で可撓性配策材２とも密着する。

【0030】

抜け止め部４３Ｋは、収容部４２に収容された平型配策材３を収容口４２Ｈ側で係止して収容口４２Ｈからの抜けを阻止する抜け止め係止部である。抜け止め部４３Ｋは、弾性壁部４２Ｊの収容口４２Ｈ側に設けられ、収容口４２Ｈに近い側ほど載置壁部４２Ａに接近するよう、載置壁部４２Ａ側に階段状をなして突出する。階段状をなす抜け止め部４３Ｋの各段は、収容部４２に収容された平型配策材３を係止する係止面４２ｊを有する。これにより、図４に示すような、図３とは直交方向Ｙの幅の異なる平型配策材３にも対応できる。

【0031】

平型配策材３は、図２に示すように、収容口４２Ｈから収容部４２内に収容される際、係合部材４の抜け止め部４３Ｋを載置壁部４２Ａから離間させる方向（図２の上方）に押し出す形で弾性壁部４２Ｊを撓ませて、収容部４２内へと進入する（進入方向３Ｙ）。一方、このとき係合部材４は、抜け止め部４３Ｋが平型配策材３とその上に重なる可撓性配策材２との間に進入し（進入方向４Ｙ）、弾性壁部４２Ｊが平型配策材３と可撓性配策材２とに挟まれた挟圧状態となる。平型配策材３の進入が進み、抜け止め部４３Ｋを乗り越えると、弾性壁部４２Ｊが弾性復帰して、図３に示すように、階段状の抜け止め部４３Ｋが、進入した平型配策材３の収容口４２Ｈ側に回り込む。これにより、平型配策材３は、抜け止め部４３Ｋによって収容口４２Ｈからの抜けが阻止された形で収容部４２内に収容される。

【0032】

このように平型配策材３が収容部４２内に収容された収容状態となることにより、可撓性配策材２と平型配策材３とが係合部材４に取り付けられた状態となる。可撓性配策材２と平型配策材３とは、結束部材５Ｒ、５Ｌによって結束されているので、平型配策材３が係合部材４に取り付けられることにより、可撓性配策材２も係合部材４に取り付けられた状態となる。この取付状態において、弾性壁部４２Ｊは、平型配策材３と可撓性配策材２とに挟まれた挟圧状態となっている。

【0033】

この取付状態において、可撓性配策材２は、図１に示すように、その長手方向Ｘにおいて結束部をなす結束部材５Ｒ、５Ｌに結束された結束区間Ｘｂでは平型配策材３と密着する。他方、平型配策材３との間に挟圧部をなす弾性壁部４２Ｊが介在する介在区間Ｘａでは、平型配策材３から引き離されている。このため、可撓性配策材２は、結束区間Ｘｂから介在区間Ｘａにかけての中間区間Ｘｃでは、介在区間Ｘａ側ほど平型配策材３から離れるように曲がった曲げ状態となる。

【0034】

また、この取付状態が形成された結束構造１は、係合部材４の配策材２、３に対する長手方向Ｘ（図１の矢印方向ＸＲ、ＸＬ）の摺動を、所定位置で規制する移動規制部を有する。ここでの移動規制部は、結束部材５Ｒを第一の移動規制部、結束部材５Ｌを第二の移動規制部として有しており、係合部材４の摺動可能範囲Ｘ１は、図１に示すように、係合部４０が長手方向Ｘの第一側（ＸＲ側）で結束部材５Ｒに対し長手方向Ｘに接触して移動規制される第一側規制位置ｘ１から、係合部４０が長手方向Ｘの第二側（ＸＬ側）で結束部材５Ｌに対し長手方向Ｘに接触して移動規制される第二側規制位置ｘ２までの間のみに制限されている。この係合部材４の摺動により、係合部４０は、摺動可能範囲Ｘ１の中で任意に位置を変えることができる。

【0035】

ただし、第一側規制位置ｘ１と第二側規制位置ｘ２とを接近させて摺動可能範囲Ｘ１を狭めることで、この係合部材４の摺動が生じにくくする、あるいは生じないようにすることができる。逆に、第一側規制位置ｘ１と第二側規制位置ｘ２とを離間させて摺動可能範囲Ｘ１を拡げることで、この係合部材４の摺動が生じやすくすることもできる。

【0036】

また、係合部４０は、可撓性配策材２と平型配策材３とが結束部材５Ｒ、５Ｌによって係合部材４に結束保持された結束保持状態において、係合部材４の可撓性配策材２側ではなく平型配策材３側（図３の破線Ｑよりも下側の領域）から突出して形成されている。具体的にいえば、係合部４０は、上記結束保持状態にある係合部材４において、載置壁部４２Ａの裏面４２ｂ側に形成されており、係合部４０の柱部４０Ｂが当該裏面４２ｂから突出形成されている。

【0037】

ところで、本実施例では、図６及び図７に示すように、長手状の配策材２、３を保持する係合部材４を車体１００側の固定孔１０１Ｈに挿入して組み付ける係合部材４の組み付け構造１０が形成されている。この組み付け構造１０において、固定孔１０１Ｈは、図５に示すように、予め定められた長幅方向Ｈ（長軸方向）に長く開口する長孔形状をなしており、係合部材４の係合部４０は、図７に示すように、その固定孔１０１Ｈの長幅方向Ｈの任意の位置において挿入方向Ｚに挿入可能であり、挿入されることでその固定孔１０１Ｈ対し係合して組み付けられている。

【0038】

なお、ここでの長幅方向Ｈは、上述の長手方向Ｘに一致しているため、長孔形状の固定孔１０１Ｈの長幅方向Ｈ（長手方向Ｘ）の孔幅範囲Ｘ５（挿入可能範囲）内であれば、係合部材４の係合部４０はどの位置にも挿入できる。係合部材４の係合部４０が挿入可能となる長幅方向Ｈ（長手方向Ｘ）における挿入可能範囲Ｘ５は、係合部４０が長手方向Ｘの第一側で固定孔１０１Ｈの内縁に対し長手方向Ｘに接触して移動規制される第一側規制位置ｘ９から、係合部４０が長手方向Ｘの第一側とは逆の第二側で固定孔１０１Ｈの内縁に対し長手方向Ｘに接触して移動規制される第二側規制位置ｘ１０までの間とされている（図７の下図参照）。これにより、係合部４０は、範囲Ｘ５の中で任意の位置に挿入できる。

【0039】

このように本実施例の係合部材４は、長手方向Ｘにおいて配策材２、３に対し摺動可能範囲Ｘ１（図１参照）を有し、なおかつ長手方向Ｘにおいて車体１００側の固定孔１０１Ｈに対し範囲Ｘ５（図７参照）を有している。このため、長手方向Ｘにおける係合部４０と固定孔１０１Ｈとの位置ずれに対しより柔軟に対応することができる。

【0040】

また、図６及び図７に示すように、係合部４０は、固定孔１０１Ｈに挿入されるときの先頭面４０Ｂａ（挿入方向Ｚの前方側の先端面）が、外周側ほどその挿入方向Ｚの後方側に位置するように傾斜した傾斜面をなす。これにより、図７の場合は、係合部４０を車体１００側の固定孔１０１Ｈに挿入する際に、係合部４０の挿入方向Ｚの先端が固定孔１０１Ｈの内側にさえ位置していれば、係合部材４を挿入方向Ｚに押し込んでいくだけで、固定孔１０１Ｈの内縁が傾斜面をなす先頭面４０Ｂａ上を滑って、矢印Ｚ０のような方向に沿って挿入が進む。このとき、係合部４０は、固定孔１０１Ｈの内縁によって押し付けられるが、上述したように係合部４０は配策材２、３に対し方向Ｘへの位置移動が可能となっているので、押し付けに伴い自らの位置を変えながら係合部４０を挿入可能な位置まで到達させることができる。そして、最終的に係合部４０は、固定孔１０１Ｈ内に挿入係止される形で車体１００側に組み付けられる。図６の場合も、係合部材４において係合部４０を配策材２、３に対し方向Ｙに移動可能な構造があったならば、図７と同様、先頭面４０Ｂａを固定孔１０１Ｈの内縁に滑らすようにして、係合部４０を固定孔１０１Ｈに挿入できる。

【0041】

以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。

【0042】

以下、上記した実施例とは別の実施例やそれら実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。

【0043】

本発明の第二実施例について、図８～図１０を用いて説明する。

【0044】

第二実施例の結束構造１では、図８に示すように、係合部材４に一体に設けられる結束部４５として、配策材２、３の双方を内包するように取り巻く取巻き部としてのベルト部４５Ｂと、ベルト部４５Ｂによる取巻き状態をロックして結束状態を形成するロック部としてのバックル部４５Ａと、を有する。この第二実施例の結束部４５は、配策材２、３を係合部材４に取り付けるための取付部４１の一部として構成され、図９及び図１０に示すように配策材２、３を結束した結束状態となることにより、配策材２、３が係合部材４に取り付けられる。そして、その結束状態においては、図９に示すように、配策材２、３の間に挟圧部としての弾性壁部４２Ｊが介在しており、配策材２、３に挟圧された状態に保持される。

【0045】

第二実施例の取付部４１は、結束部４５と共に、平型配策材３のみを所定の収容口４２Ｈから内部に収容する収容部４２を有する。

【0046】

収容部４２は、図１０に示すように、載置壁部４２Ａと、弾性壁部４２Ｊと、連結壁部４２Ｉと、を有する。載置壁部４２Ａは、平型配策材３が載置される部位である。弾性壁部４２Ｊは、その載置壁部４２Ａに対し平型配策材３を挟んで対向する部位である。連結壁部４２Ｉは、載置壁部４２Ａと弾性壁部４２Ｊとをそれらの対向方向Ｚと平型配策材３の長手方向Ｘとの双方に対し直交する直交方向Ｙの一方の側で連結する部位である。収容部４２は、当該直交方向Ｙの他方の側に収容口４２Ｈが形成され、平型配策材３をコの字状（Ｕ字状）に取り囲んでいる。

【0047】

図９及び図１０に示すように、弾性壁部４２Ｊの、平型配策材３が収容される載置壁部４２Ａ側とは逆側には、可撓性配策材２が載置される。結束部４５によって上述の結束状態となった場合、配策材２、３を取り巻くベルト部４５Ｂは、できる限りその内径が小さくなるようきつく結束保持されるから、弾性壁部４２Ｊは、配策材２、３に挟圧される挟圧部として機能する。

【0048】

また、弾性壁部４２Ｊは、自身及び連結壁部４２Ｉのいずれか又は双方の弾性変形により載置壁部４２Ａに対し接近ないし離間する弾性変形が可能である。ここでの弾性壁部４２Ｊは、収容部４２に平型配策材３が収容された場合に、平型配策材３を載置壁部４２Ａ側に押し付ける一方で、自身が載置壁部４２Ａから離間する方向へと押し広げられる。具体的にいえば、ここでの弾性壁部４２Ｊは、載置壁部４２Ａ側に、当該載置壁部４２Ａに対する接近ないし離間する弾性変形が可能とされた弾性押付片４２ｄを有しており、この弾性押付片４２ｄが、収容部４２に収容された平型配策材３を載置壁部４２Ａ側に押し付け、載置壁部４２Ａから離間する方向へと押し広げられる。

【0049】

なお、弾性壁部４２Ｊは、弾性押付片４２ｄが無い構成であってもよい。この場合、弾性壁部４２Ｊそのものが載置壁部４２Ａから離間する方向へ押し広げられることで、平型配策材３を載置壁部４２Ａ側に押し付けることができる。本発明における弾性壁部４２Ｊは、上述の結束状態となった場合に、配策材２、３に挟圧される構成であればよい。

【0050】

ここで、上述の結束状態について具体的に説明する。ベルト部４５Ｂは、図１０に示すように、収容部４２に収容された平型配策材３の収容口４２Ｈからの抜けを阻止するよう、収容部４２の収容口４２Ｈ側（図９の左側）を覆う形で、可撓性配策材２と平型配策材３との双方を取り巻き、バックル部４５Ａの挿入孔４５Ｈに挿入される。そして、その挿入孔４５Ｈ内でベルト部４５Ｂの取巻き状態がロックされることにより、配策材２、３の双方が結束され、かつ配策材２、３が係合部材４に取り付けられた状態となる。具体的にいえば、ベルト部４５Ｂは、図１０に示すようにバックル部４５Ａにロックされた結束状態において、収容部４２の収容口４２Ｈ側（図１０左側）とは逆側（図１０右側）を基端として延び出すよう形成されている。他方、バックル部４５Ａは、収容部４２の収容口４２Ｈ側と同じ側（図１０左側）にベルト部４５Ｂが挿入される挿入口４５Ｈを有する係止孔部として形成されている。ベルト部４５Ｂがバックル部４５Ａの挿入口４５Ｈに挿入されると、その内部で図１０のようにロック（係止）されて上述の結束状態となる。

【0051】

また、ここでの係合部材４は、図８に示すように、係合部４０の直下にバックル部４５Ａが一体に設けられ、該バックル部４５Ａの直下に収容部４２が一体に設けられている。

【0052】

また、ここでの弾性壁部４２Ｊは、図８に示すように、平型配策材３の長手方向Ｘにおいて空隙４２Ｓを挟んで対向する対向壁部４２Ｊ、４２Ｊとして形成される。ベルト部４５Ｂは、収容部４２（バックル部４５Ａでもよい）から延び出しており、上述の結束状態においては、図９に示すように、可撓性配策材２をその空隙４２Ｓ内へと押し付ける。この押し付けにより、可撓性配策材２は、結束区間Ｘｂから介在区間Ｘａにかけてが介在区間Ｘａ側ほど平型配策材３に対し離れる側に曲がった曲げ状態となる。さらにいえば、その曲げ部分は、中間区間Ｘｃ、Ｘｃが短いことにより、より急激な曲がりが生じているため、第二実施例では、配策材２、３に対する係合部材４の摺動が事実上不可となっており、配策材２、３が係合部材に安定して取り付けられている。

【0053】

本発明の第三実施例について、図１１～図１４を用いて説明する。

【0054】

第三実施例の結束構造１は、図１１に示す係合部材４を用いて形成される。係合部材４には、結束部４５１、４５２が一体に設けられている。結束部４５１、４５２は、図１２に示すように、平型配策材３を結束保持する第一結束部４５１（第一結束部）と、その第一結束部４５１上に載置される可撓性配策材２を結束保持する第二結束部４５２（第二結束部）と、を有する。結束部４５１、４５２は、配策材２、３を係合部材４に取り付けるための取付部４１の一部として構成され、図１２及び図１３に示すように配策材２、３を結束した結束状態とすることにより、配策材２、３を係合部材４に取り付けた状態となる。そして、その結束状態においては、配策材２、３の間に挟圧部としての第一結束部４５１が介在しており、配策材２、３に挟圧された状態に保持される。

【0055】

取付部４１は、配策材２、３のうちの一方（ここでは配策材３）を載置する載置壁部４１Ａと、その一方を載置壁部４１Ａに押し付ける形で結束する第一結束部４５１と、その結束状態にある第一結束部４５１上に配策材２、３のうちの他方（ここでは配策材２）が載置され、その他方を第一結束部４５１に押し付ける形で結束する第二結束部４５２と、を有する。この構成により、第一及び第二結束部４５１、４５２がそれぞれ配策材２、３を結束した結束状態において、第一結束部４５１は、配策材２、配策材３に挟圧保持される挟圧部として機能する。

【0056】

具体的にいえば、取付部４１は、可撓性配策材２と平型配策材３とのうちの一方（ここでは配策材３）を収容する収容部４２を有する。ここでの収容部４２は、載置壁部４１Ａと、載置壁部４１Ａの一方の端部から立ち上がる側方壁部４１Ｂと、載置壁部４１Ａの他方の端部から立ち上がる側方壁部４１Ｃと、を有したコの字状（Ｕ字状）をなしており、取付部４１の一部として構成されている。

【0057】

第一結束部４５１は、第一クランプ部４５１Ｃと、第一ロック部４５１Ａと、を有する。図１３に示すように、第一クランプ部４５１Ｃは、収容部４２に対し第一ヒンジ部４５１Ｂを介して連結しており、第一ヒンジ部４５１Ｂを支点に回動可能である。ここでの第一ヒンジ部４５１Ｂは、側方壁部４１Ｂの先端部に接続している。また、他方、第一ロック部４５１Ａは、第一クランプ部４５１Ｃの先端を受け入れて抜け止めする。ここでの第一ロック部４５１Ａは、側方壁部４１Ｃに設けられる。第一クランプ部４５１Ｃは、第一クランプ部４５１Ｃが第一ロック部４５１Ａに抜け止めされた結束状態において、第一ヒンジ部４５１Ｂから直線状に立ち上がる基端部４５１Ｃ１と、その先端から屈曲して配策材３を上方から覆うように直線状に延び出して配策材３を下方に押し付ける押付部４５１Ｃ２と、その先端から屈曲して立ち下がり、第一ロック部４５１Ａに挿入される係合先端部４５１Ｃ３と、を有したコの字状（Ｕ字状）をなす。

【0058】

第二結束部４５２は、第二クランプ部４５２Ｃと、第二ロック部４５２Ａと、を有する。図１３に示すように、第二クランプ部４５２Ｃは、第一結束部４５１に対し第二ヒンジ部４５２Ｂを介して連結しており、第二ヒンジ部４５２Ｂを支点に回動可能である。ここでの第二ヒンジ部４５２Ｂは、第一クランプ部４５１Ｃの基端部４５１Ｃ１と押付部４５１Ｃ２とが連結する屈曲部に接続している。他方、第二ロック部４５２Ａは、第二クランプ部４５２Ｃの先端を受け入れて抜け止めする。ここでの第二クランプ部４５２Ｃは、第一クランプ部４５１Ｃが第一ロック部４５１Ａに抜け止めされ、かつ自身が第二ロック部４５２Ａに抜け止めされた結束状態において、第二ヒンジ部４５２Ｂから直線状に立ち上がる基端部４５２Ｃ１と、その先端から屈曲して配策材２を上方から覆うように直線状に延び出して配策材２を下方に押し付ける押付部４５２Ｃ２と、その先端から屈曲して立ち下がり、第二ロック部４５２Ａに挿入される係合先端部４５２Ｃ３と、を有したコの字状（Ｕ字状）をなす。

【0059】

ロック部４５１Ａ、４５２Ａは、側方壁部４１Ｃに設けられる。図１３に示すように、ロック部４５１Ａ、４５２Ａは、対応するクランプ部４５１Ｃ、４５２Ｃの係合先端部４５１Ｃ３、４５２Ｃ３が挿入される係合孔部として形成され、その内部には、対応する係合先端部４５１Ｃ３、４５２Ｃ３に設けられた係止爪４５１ｃ、４５２ｃと係止して抜け止めする抜け止め部４５１ａ、４５２ａが設けられる。第一ロック部４５１Ａは、側方壁部４１Ｃにおける直交方向Ｙの側方壁部４１Ｂ側に設けられ、第二ロック部４５２Ａは、側方壁部４１Ｃにおける直交方向Ｙの側方壁部４１Ｂとは逆側に設けられており、第一ロック部４５１Ａと第二ロック部４５２Ａとが横並びしている。

【0060】

第一結束部４５１は、結束対象（ここでは平型配策材３）を載置壁部４１Ａ側に押し付ける第一弾性押付片４５１Ｄを有する。第二結束部４５２は、結束対象（ここでは可撓性配策材２）を第一結束部４５１側（第一クランプ部４５１Ｃ）に押し付ける第二弾性押付片４５２Ｄを有する。結束部４５１、４５２は、クランプ部４５１Ｃ、４５２Ｃがそれぞれの結束対象を結束して対応するロック部４５１Ａ、４５２Ａに抜け止めされた結束状態において、それぞれの弾性押付片４５１Ｄ、４５２Ｄが弾性変形しており、それら弾性押付片４５１Ｄ、４５２Ｄの弾性復帰力によって、それぞれの結束対象（配策材２、３）を押し付けている。

【0061】

第三実施例の結束構造１は、図１４に示すようにして形成される。まずは、配策材２、３のうちの一方（ここでは平型配策材３）を載置壁部４１Ａ上に載置する形で収容部４２に収容する（図１４上図参照）。その上で、第一クランプ部４５１Ｃを屈曲させ、係止孔部をなす第一ロック部４５１Ａに挿入して抜け止め状態とする（図１４中央図参照）。次に、配策材２、３のうちの一方（ここでは可撓性配策材２）を第一クランプ部４５１Ｃの第二壁部４５１Ｃ２上に載置する。その上で、第二クランプ部４５２Ｃを屈曲させ、係止孔部をなす第二ロック部４５２Ａに挿入して抜け止め状態とする（図１４下図参照）。これにより、第一クランプ部４５１Ｃの第二壁部４５１Ｃ２が配策材２、３に挟圧された形で保持された結束状態となる。

【0062】

なお、クランプ部４５１Ｃ、４５２Ｃを、第二実施例のようなベルト部４５Ｂとし、ロック部４５１Ａ、４５２Ａを第二実施例のようなバックル部４５Ａとしてもよい。

【0063】

また、係合部材４に一体化された結束部４５１、４５２とは別に、図１５に示すように、結束部をなす別体の結束部材５００Ｒ、５００Ｌ（例えばテープ部材）を設け、結束部材５００Ｒ、５００Ｌによる結束区間において、配策材２、３を密着させるようにしてもよい。これにより、可撓性配策材２は、結束区間Ｘｂから介在区間Ｘａにかけての区間Ｘｃが介在区間Ｘａ側ほど平型配策材３に対し離れる側（図１５の上側）に曲がった曲げ状態となる。

【符号の説明】

【0064】

１ 配策材の結束構造
１０ 係合部材の組み付け構造
２ 可撓性配策材
３ 平型配策材
４ 係合部材
４０ 係合部
４２Ｊ 弾性壁部（挟圧部）
４１ 取付部
４５ 結束部
４５Ａ バックル部
４５Ｂ ベルト部
４５１ 第一結束部（結束部、挟圧部）
４５２ 第二結束部（結束部）
５Ｒ、５Ｌ 結束部材（結束部）
Ｘ 長手方向
Ｘａ 介在区間
Ｘｂ 結束区間

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】