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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
G01N27/409 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019145359
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025936
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】劉 孫超
(72)【発明者】
【氏名】大場 健弘
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013476(JP,A)
【文献】特開2017-194355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子に電気的に接続される複数の端子金具と、
前記端子金具を保持すると共に、前記センサ素子の後端側を囲む筒状のセパレータと、を備えたセンサであって、
前記セパレータは、前記軸線方向のそれぞれ先端側と後端側に配置された先端側セパレータと後端側セパレータとからなり、
前記端子金具は、それぞれ前記先端側セパレータと前記後端側セパレータとに保持される先端側端子金具と後端側端子金具とからなり、
前記先端側端子金具の後端側には、オス端子又はメス端子からなる第1接続部が設けられ、
前記後端側端子金具の先端側には、前記第1接続部と嵌合される相手端子としてのオス端子又はメス端子からなる第2接続部が設けられ、
前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心は、相手の軸心に対して前記センサ素子の径方向外側に偏芯し、前記第1接続部と前記第2接続部とが、前記軸線方向から見て前記センサ素子の径方向外側の接触部のみで接触していることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記第1接続部と前記第2接続部の一方は前記オス端子であり、前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記オス端子の軸心が相手の軸心に対して前記径方向外側に偏芯していることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1接続部と前記第2接続部とは接触部にて溶接されていることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記軸線方向から見て、前記センサ素子の重心を通り、かつ前記第1接続部と前記第2接続部を通らない所定の線分を引いたとき、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心のすべては、相手の軸心に対して前記線分から遠ざかるように偏芯していることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
軸線方向に延びるセンサ素子と、
前記センサ素子に電気的に接続される複数の端子金具と、
前記端子金具を保持すると共に、前記センサ素子の後端側を囲む筒状のセパレータと、を備えたセンサの製造方法であって、
前記セパレータは、前記軸線方向のそれぞれ先端側と後端側に配置された先端側セパレータと後端側セパレータとからなり、
前記端子金具は、それぞれ前記先端側セパレータと前記後端側セパレータとに保持される先端側端子金具と後端側端子金具とからなり、
前記先端側端子金具の後端側には、オス端子又はメス端子からなる第1接続部が設けられ、
前記後端側端子金具の先端側には、前記第1接続部と嵌合される相手端子としてのオス端子又はメス端子からなる第2接続部が設けられ、
前記先端側端子金具を前記先端側セパレータに挿入し、前記後端側端子金具を前記後端側セパレータに挿入する、端子挿入工程と、
前記端子挿入工程の後において、前記先端側セパレータの後端側に前記後端側セパレータを組み付け、この際、前記第1接続部及び前記第2接続部の一方を他方に挿入することで、前記先端側端子金具と前記後端側端子金具とを組み付ける端子嵌合工程と、を少なくとも有し、
前記端子嵌合工程の後において、前記先端側セパレータと前記後端側セパレータの軸心を合わせて見た場合に、前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心は、相手の軸心に対して前記センサ素子の径方向外側に偏芯し、前記第1接続部と前記第2接続部とが、前記軸線方向から見て前記センサ素子の径方向外側の接触部のみで接触していることを特徴とするセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガスの濃度を検出するセンサ等のセンサ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の排気ガス中の酸素やNOxの濃度を検出するセンサとして、固体電解質を用いたセンサ素子を有するものが知られている。
この種のセンサとして、センサ素子の後端側外表面に複数の電極パッドを設け、この電極パッドのそれぞれに端子金具を電気的に接触させてセンサ素子からのセンサ出力信号を外部に取り出したり、センサ素子に積層されたヒータに給電するものが広く用いられている。そして、この端子金具として、オス型の端子部材をメス型の端子部材に嵌合し、その嵌合部を溶接したものも知られている(特許文献1)。各端子部材は、セラミック製の2つのセパレータにそれぞれ保持され、各セパレータは先後方向に連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-13476号公報(図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オス型の端子部材とメス型の端子部材とを嵌合した際、両者に隙間ができると溶接ができなくなる一方、オス部材をメス部材に嵌合するためには、オス部材をメス部材より小径として両者に隙間が必要となる。
そこで、特許文献1の技術では、メス型の端子部材の内面側に、オス型の端子部材が挿入されたときにメス型の端子部材の内壁に押し付けるような片状の端子接触部を設けている。
しかしながら、端子部材に片状の端子接触部を設けると、端子の製造に余分な工程が必要になって生産性が低下するおそれがある。又、端子接触部のバネ力が不十分な場合や端子接触部が塑性変形した場合には、オス型の端子部材を押し付ける押圧力が十分でなくなり、両端子間に隙間が生じるおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、2つのセパレータにそれぞれ保持される2つの端子金具の嵌合部に隙間が生じることを簡易かつ確実に抑制することができるセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のセンサは、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子に電気的に接続される複数の端子金具と、前記端子金具を保持すると共に、前記センサ素子の後端側を囲む筒状のセパレータと、を備えたセンサであって、前記セパレータは、前記軸線方向のそれぞれ先端側と後端側に配置された先端側セパレータと後端側セパレータとからなり、前記端子金具は、それぞれ前記先端側セパレータと前記後端側セパレータとに保持される先端側端子金具と後端側端子金具とからなり、前記先端側端子金具の後端側には、オス端子又はメス端子からなる第1接続部が設けられ、前記後端側端子金具の先端側には、前記第1接続部と嵌合される相手端子としてのオス端子又はメス端子からなる第2接続部が設けられ、前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心は、相手の軸心に対して前記センサ素子の径方向外側に偏芯し、前記第1接続部と前記第2接続部とが、前記軸線方向から見て前記センサ素子の径方向外側の接触部のみで接触していることを特徴とする。
【0007】
このセンサによれば、複数の端子金具のすべてにおいて、両接続部の一方の軸心が相手の軸心に対してセンサ素子の径方向外側に偏芯し、両者が接触しているので、両端子金具の嵌合部に隙間が生じることを簡易かつ確実に抑制することができる。その結果、両端子金具の接続信頼性が向上すると共に、端子金具同士を溶接する場合には溶接を確実にすることができる。
【0008】
本発明のセンサにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部の一方は前記オス端子であり、前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記オス端子の軸心が相手の軸心に対して前記径方向外側に偏芯していてもよい。
このセンサによれば、第1接続部と第2接続部のうち、メス端子の内側のオス端子が径方向外側に寄るので、両接続部の接触部が必ず径方向外側に向く。従って、複数の端子金具が並んでも、それぞれ外側に接触部が向くので、接触部を溶接する際に他の端子金具に干渉することがなく、溶接が容易に行える。
【0009】
本発明のセンサにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部とは接触部にて溶接されていてもよい。
このセンサによれば、第1接続部と第2接続部との電気的接続が確実になり、両端子金具の接続信頼性が向上する。
【0010】
本発明のセンサにおいて、前記軸線方向から見て、前記センサ素子の重心を通り、かつ前記第1接続部と前記第2接続部を通らない所定の線分を引いたとき、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心のすべては、相手の軸心に対して前記線分から遠ざかるように偏芯していてもよい。
このセンサによれば、線分を引いたとき、両接続部の一方の軸心のすべてが相手の軸心に対して線分から遠ざかるように偏芯している。このため、線分を挟んでアーム等で接続部の一方を外側から把持して線分に向かって狭めれば、接続部の一方の軸心を他の軸心にほぼ一致させた状態で接続部の一方を他に容易に嵌挿できるので、生産性が向上する。
【0011】
本発明のセンサの製造方法は、軸線方向に延びるセンサ素子と、前記センサ素子に電気的に接続される複数の端子金具と、前記端子金具を保持すると共に、前記センサ素子の後端側を囲む筒状のセパレータと、を備えたセンサの製造方法であって、前記セパレータは、前記軸線方向のそれぞれ先端側と後端側に配置された先端側セパレータと後端側セパレータとからなり、前記端子金具は、それぞれ前記先端側セパレータと前記後端側セパレータとに保持される先端側端子金具と後端側端子金具とからなり、前記先端側端子金具の後端側には、オス端子又はメス端子からなる第1接続部が設けられ、前記後端側端子金具の先端側には、前記第1接続部と嵌合される相手端子としてのオス端子又はメス端子からなる第2接続部が設けられ、前記先端側端子金具を前記先端側セパレータに挿入し、前記後端側端子金具を前記後端側セパレータに挿入する、端子挿入工程と、前記端子挿入工程の後において、前記先端側セパレータの後端側に前記後端側セパレータを組み付け、この際、前記第1接続部及び前記第2接続部の一方を他方に挿入することで、前記先端側端子金具と前記後端側端子金具とを組み付ける端子嵌合工程と、を少なくとも有し、前記端子嵌合工程の後において、前記先端側セパレータと前記後端側セパレータの軸心を合わせて見た場合に、前記複数の端子金具のすべてにおいて、前記第1接続部と前記第2接続部の一方の軸心は、相手の軸心に対して前記センサ素子の径方向外側に偏芯し、前記第1接続部と前記第2接続部とが、前記軸線方向から見て前記センサ素子の径方向外側の接触部のみで接触していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、2つのセパレータにそれぞれ保持される2つの端子金具の嵌合部に隙間が生じることを簡易かつ確実に抑制することができるセンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るセンサの軸線方向に沿う断面図である。
図2】センサ素子の後端側の斜視図である。
図3】先端側端子金具を先端側セパレータに保持する工程図である。
図4図3のA-A線に沿う断面で、先端側セパレータと後端側セパレータの組み付けを示す工程図である。
図5】先端側セパレータと後端側セパレータの組み付けを示す斜視図である。
図6】先端側セパレータと後端側セパレータを組み付けた後、先端部及び接続部の位置関係を示す平面図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】メス端子である接続部の軸心が先端部の軸心に対して径方向外側に偏芯している場合の位置関係を示す平面図である。
図9】後端側セパレータに挿入された先端部を、先端側セパレータに挿入された接続部に嵌合する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係るセンサ(酸素センサ)1の軸線O方向に沿う全体断面図、図2はセンサ素子10の斜視図、図3は先端側端子金具30を先端側セパレータ90に保持する工程図、図4図3のA-A線に沿う断面で、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95の組み付けを示す工程図、図5は先端側セパレータ90と後端側セパレータ95の組み付けを示す斜視図を示す。
このセンサ1は、自動車や各種内燃機関の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
【0017】
図1において、センサ1は、排気管に固定されるためのねじ部139が外表面に形成された筒状の主体金具138と、軸線O方向(センサ1の長手方向:図中上下方向)に延びる板状形状をなすセンサ素子10と、センサ素子10の径方向周囲を取り囲むように配置される筒状のセラミックスリーブ106と、自身の先端側の内部空間に、センサ素子10の後端部の周囲を取り囲む状態で配置されるセラミック製筒状の先端側セパレータ90と、先端側セパレータ90に保持される4個の先端側端子金具30(図1では、2個のみを図示)と、セラミック製筒状の後端側セパレータ95と、後端側セパレータ95に保持される4個の後端側端子金具40(図1では、2個のみを図示)と、を備えている。
又、後述するように、後端側セパレータ95は、先端側セパレータ90の後端側に接して配置され、互いに接続されている。
先端側端子金具30と、後端側端子金具40とはそれぞれ先端側と後端側に配置されて互いに接続されている。
【0018】
図2に示すように、センサ素子10の後端側の両面に電極パッド11aがそれぞれ幅方向に2つ並んでいる。
各電極パッド11aは、例えばPtを主体とする焼結体として形成することができる。一方、センサ素子10の先端のガス検出部11は、アルミナ等の多孔質保護層14で覆われている。
【0019】
主体金具138は、ステンレスから構成され、軸線方向に貫通する貫通孔154を有し、貫通孔154の径方向内側に突出する棚部152を有する略筒状形状に構成されている。この貫通孔154には、センサ素子10の先端部を自身の先端よりも突出させるように当該センサ素子10が配置されている。さらに、棚部152は、軸線方向に垂直な平面に対して傾きを有する内向きのテーパ面として形成されている。
【0020】
なお、主体金具138の貫通孔154の内部には、センサ素子10の径方向周囲を取り囲む状態で略環状形状のアルミナ製のセラミックホルダ151、粉末充填層153(以下、滑石リング153ともいう)、および上述のセラミックスリーブ106がこの順に先端側から後端側にかけて積層されている。
また、セラミックスリーブ106と主体金具138の後端部140との間には、加締めパッキン157が配置されている。なお、主体金具138の後端部140は、加締めパッキン157を介してセラミックスリーブ106を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0021】
一方、図1に示すように、主体金具138の先端側(図1における下方)外周には、センサ素子10の突出部分を覆うと共に、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレスなど)二重のプロテクタである、外部プロテクタ142および内部プロテクタ143が溶接等によって取り付けられている。
【0022】
主体金具138の後端側外周には、外筒144が固定されている。また、後端側端子金具40の後端側にはそれぞれリード線146が接続され、リード線146は後端側セパレータ95の後端側へ引き出されている。
そして、外筒144の後端側(図1における上方)の開口部には、後端側セパレータ95から引き出された6本のリード線146(図1では2本のみを表示)が挿通されるリード線挿通孔170hが形成された、ゴム製のグロメット170が配置されている。
【0023】
また、主体金具138の後端部140より突出されたセンサ素子10の後端側(図1における上方)には、先端側セパレータ90が配置され、外表面から径方向外側に突出する鍔部90pが備えられている。先端側セパレータ90は、鍔部90pが保持部材169を介して外筒144に当接することで、外筒144の内部に保持される。
又、グロメット170と先端側セパレータ90の間に後端側セパレータ95が配置され、グロメット170の弾性力により後端側セパレータ95が先端側セパレータ90を先端側へ押圧する。これにより、鍔部90pが保持部材169側へ押し付けられ、先端側セパレータ90及び後端側セパレータ95は、外筒144の内部に互いに接続された状態で(つまり、軸線O方向に分離せずに)保持されている。
【0024】
図3に示すように、先端側セパレータ90の中心には軸線方向に貫通する矩形の素子孔90hが形成され、素子孔90hを径方向外側の4隅から囲むように4つの溝部90cが形成されている。そして、溝部90cに後端側から先端側端子金具30が挿通されると(図3(a))、先端側端子金具30が先端側セパレータ90内に保持される(図3(b))。
このようにして、素子孔90hがセンサ素子10の後端側を囲み、各溝部90cに保持された各先端側端子金具30が素子孔90hに臨んでセンサ素子10の後端側の外表面に対向し、センサ素子10の外表面に形成された電極パッド11a(図1参照)に接して電気的に接続する。
【0025】
図3に示すように、先端側端子金具30は全体として軸線O方向に延び、後端側端子金具40に接続される接続部33と、接続部33の先端側に繋がる断面L字状の本体部35と、本体部35の先端側でセンサ素子10に向かって折り返される弾性部32と、を一体に備えている。本体部35は溝部90cに挿通されて保持される。弾性部32は、電極パッド11aに弾性的に接続する。なお、4本の先端側端子金具30はいずれも先端側セパレータ90内で隣接する先端側端子金具30同士が線対称の形状である。
そして、先端側端子金具30が先端側セパレータ90内に保持された状態で、接続部33が先端側セパレータ90の後端側へ突出している(図3(b))。
【0026】
一方、図4(a)に示すように、後端側端子金具40は全体として軸線O方向に延び、後端側にリード線146に接続される圧着端子部47と、圧着端子部47の先端側の断面C字状の円筒状の径大部45と、径大部45の先端側に繋がる断面C字状の円筒状の先端部43と、を一体に備えている。
先端側端子金具30及び後端側端子金具40は、例えば1枚の金属板(SUS304等)を打ち抜いた後、所定形状に折り曲げて製造することができるが、これに限定されない。
そして、後端側セパレータ95は周方向に並ぶ4個の挿通孔95hを有する円筒状をなし、この挿通孔に後端側端子金具40が挿通されて保持される(図4(a))。
このとき、後端側端子金具40の先端部43の先端側が後端側セパレータ95の先端向き面よりも突出している。
接続部33、先端部43がそれぞれ特許請求の範囲の「第1接続部」、「第2接続部」に相当する。又、本例では、接続部33、先端部43がそれぞれメス端子、オス端子である。
【0027】
そして、図3に示すように、先端側セパレータ90の後端向き面には、2つの凹部90r1が形成されている。
又、図4に示すように、後端側セパレータ95の先端向き面の外周側には、センサ素子10の幅方向に沿って突出する2つの凸部95pが形成されている。
【0028】
そして、図5(a)に示すように、この状態で、軸線O方向に先端側セパレータ90の後端側に後端側セパレータ95を配置し、先端側セパレータ90の凹部90r1に後端側セパレータ95の凸部95pを係合させ、図1の保持部材169とグロメット170との間に、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95を挟んで保持することで、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95とが互いに接続される(図4(b)、図5(b))。
又、このとき、先端側セパレータ90の後端側に突出した先端側端子金具30の断面C字の円筒状の接続部33に、後端側セパレータ95の先端側に突出した後端側端子金具40の先端部43が嵌挿され、両端子金具が電気的に接続されるようになっている。この場合、先端側端子金具30は後端側端子金具40を介してリード線146に間接的に接続されることとなる。
なお、図4(b)に示すように、両端子金具30,40の接続部分が溶接部Wにて溶接されている。溶接は例えばスポット溶接、レーザ溶接を行うことができる。
【0029】
次に、図6図7を参照し、本発明の特徴部分について説明する。
図6に示すように、軸線O方向の後端側から見たとき、複数の端子金具30,40の4つ(すべて)の先端部43及び相手の接続部33につき、右下の組み合わせに符号「a」を付し、反時計回りに左下、左上、右上の組み合わせにそれぞれ符号「b」、「c」、「d」を付す。
このとき、図7に示すように、先端部43aの軸心P2は、相手の接続部33aの軸心P1に対してセンサ素子10の径方向外側(図7の下方)に偏芯し、先端部43aの外面が接続部33aの内面に接触部Cにて接触している。
同様に、図6に示すように、先端部43bの軸心も相手の接続部33bの軸心に対してセンサ素子10の径方向外側(図7の下方)に偏芯し、両者が接触している。又、先端部43cの軸心も相手の接続部33cの軸心に対してセンサ素子10の径方向外側(図7の上方)に偏芯し、両者が接触し、先端部43dの軸心も相手の接続部33dの軸心に対してセンサ素子10の径方向外側(図7の上方)に偏芯し、両者が接触している。
【0030】
このように、複数の端子金具30,40のすべてにおいて、先端部43の軸心が相手の接続部33の軸心に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯し、両者が接触しているので、両端子金具30,40の嵌合部に隙間が生じることを簡易かつ確実に抑制することができる。その結果、両端子金具30,40の接続信頼性が向上すると共に、端子金具30,40同士を溶接する場合には溶接を確実にすることができる。
【0031】
又、本実施形態では、オス端子である先端部43の軸心が相手の接続部33の軸心に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯している。このようにすると、メス端子である接続部33の内側のオス端子である先端部43が径方向外側に寄るので、図4(b)に示すように接触部Cが必ず径方向外側に向く。従って、複数の端子金具30,40が並んでも、それぞれ外側に接触部Cが向くので、接触部Cを溶接する際に他の端子金具30,40に干渉することがなく、溶接が容易に行える。
これに対し、図8に示すように、メス端子である接続部33として、図6と同じ位置関係にある接続部33aの軸心P1が相手の先端部43の軸心P2に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯している場合、接触部Cがセンサ素子10の径方向内側を向いてしまう。これは他の接続部33についても同様であり、各端子金具30,40の接触部Cを溶接する際に、それぞれ内側部分を溶接する必要が生じ、他の端子金具30,40に干渉して溶接が困難になる場合がある。
【0032】
又、本実施形態では、図6に示すように、軸線O方向から見て、センサ素子10の重心Gを通り、かつすべての先端部43及び接続部33を通らない水平方向の線分LSを引いたとき、先端部43の軸心のすべては、相手の接続部33の軸心に対して線分LSから遠ざかるように偏芯している。
具体的には、先端部43a、43bの軸心は、相手の接続部33a、33bの軸心に対して、それぞれ線分LSより下方にある。一方、先端部43c、43dの軸心は、相手の接続部33c、33dの軸心に対して、それぞれ線分LSより上方にある。これにより、線分LSを挟んで各先端部43a~43dの軸心は相手の接続部33a~33dの軸心に対して、上下に遠ざかるようになる。
【0033】
このようにすると、図9(a)に示すように、線分LSの上下から所定のアーム200等で各先端部43a~43dを外側から把持し、線分LSに向かって狭めるように押圧することで、各先端部43a~43dが線分LSに近付くように移動する。具体的には、各先端部43a~43dは、押圧前の破線の位置から実線の位置へ弾性的に撓む。
そして、この状態で、図9(b)に示すように、各先端部43a~43dを含む後端側セパレータ95を先端側セパレータ90の後端側に配置し、各先端部43a~43dをそれぞれ相手の接続部33a~33dに嵌挿すると、両者の軸心P1,P2が合うので、各先端部43a~43dをそれぞれ相手の接続部33a~33dに容易に嵌挿できる。
そして、図9(c)に示すように、アーム200を取り外すと、各先端部43a~43dが、それぞれ相手の接続部33a~33dの中で線分LSから遠ざかるように弾性的に戻る。このとき、各先端部43a~43dの軸心P2が相手の接続部33a~33dの軸心P1に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯し、両者が接触部Cで接触するようになる。
【0034】
つまり、線分LSを引いたとき、先端部43の軸心のすべてが相手の接続部33の軸心に対して線分LSから遠ざかるように偏芯している。このため、線分LSを挟んでアーム200等で各先端部43を外側から把持して線分LSに向かって狭めれば、先端部43の軸心を接続部33の軸心にほぼ一致させた状態で先端部43を接続部33に容易に嵌挿できるので、生産性が向上する。
【0035】
本発明の実施形態に係るセンサの製造方法は、先端側端子金具30を先端側セパレータに90挿入し、後端側端子金具40を後端側セパレータ95に挿入する、端子挿入工程と、端子挿入工程の後において、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95の軸心を合わせた状態で、先端側セパレータ90の後端側に後端側セパレータ95を組み付け、この際、先端部43を接続部33に挿入することで、先端側端子金具30と後端側端子金具40とを組み付ける端子嵌合工程と、を少なくとも有する。
【0036】
そして、本発明の実施形態に係るセンサの製造方法においては、端子嵌合工程の後において、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95の軸心を合わせて見た場合に、複数の端子金具30,40のすべてにおいて、先端部43の軸心は、相手の接続部33の軸心に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯している。
これにより、軸心が相手の接続部33に対して偏芯した先端部43を接続部33に挿入(嵌挿)すると、上述のように偏芯した先端部43が接続部33に接触部Cで接触し、端子金具30,40の嵌合部に隙間が生じることを簡易かつ確実に抑制することができる。
【0037】
又、本発明の実施形態に係るセンサの製造方法においては、端子挿入工程の後で、端子嵌合工程の前において、先端側セパレータ90と後端側セパレータ95の軸心を合わせて見た場合であっても、複数の端子金具30,40のすべてにおいて、先端部43の軸心は、相手の接続部33の軸心に対してセンサ素子10の径方向外側に偏芯している。
これにより、図9に示すように、予め先端部43の軸心が特定方向(本例では径方向外側)に偏心しているので、端子嵌合工程を行う際に、先端部43をアーム200等で一定方向に押圧(本例では径方向内側に向かって)するだけで、先端部43を接続部33に容易に挿入でき、又、先端部43が一定方向に向くので、アーム200の押圧量を例えばすべて+方向にすればよく、押圧量の調整や、生産設備の設計も容易になる。
これに対し、端子嵌合工程の前の状態で、先端部43の軸心が接続部33に対してバラバラの方向(例えば、一部の先端部43の軸心が径方向外側、他の先端部43の軸心が径方向内側)であると、アーム200で一部の先端部43を押圧し、他の先端部43を逆方向に引く作業が必要になる。そして、アーム200も押圧させたり後退させたりで押圧(後退)量が一定にならない。また、位置合わせに必要な端子の移動量に対するアーム200の移動量のばらつきの影響が大きくなるため、アーム200の移動量精度の調整が困難になる。
【0038】
又、本発明の実施形態に係るセンサの製造方法においては、図9に示すように、端子嵌合工程において、先端部43と接続部33の軸心P1,P2がそれぞれ一致するよう、先端部43を移動(図9(a)の押圧前の破線の位置から実線の位置へ移動)させた後に、先端部43を接続部33に挿入してもよい。
これにより、上述のように、先端部43の軸心を接続部33の軸心にほぼ一致させた状態で先端部43を接続部33に容易に嵌挿できるので、生産性が向上する。
【0039】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0040】
各端子金具やセパレータの形状等は上記実施形態に限定されない。
後端側端子金具と、先端側端子金具との接続(連結)構造は上記に限られず、例えば先端側端子金具の後端側を雄ピン形状として、この雄ピンを後端側端子金具の先端側の筒状部に嵌挿するようにしてもよい。
先端側端子金具の後端側や後端側端子金具の先端側を筒状にする場合、円筒に限らず、四角筒等の角筒でもよい。又、筒は完全に閉じられずに、筒の少なくとも一部(例えばC字)であってもよい。又、先端側端子金具又は後端側端子金具の一方の筒を、円柱又はその一部をなす形態としてもよい。
後端側端子金具と、先端側端子金具とは嵌合されていればよく、溶接は必須ではない。
【0041】
又、センサとしては特に限定されず、ガスセンサの他、温度センサ、水質センサでもよい。ガスセンサとしては酸素センサの他、例えばNOxセンサ、全領域センサが挙げられる。
【符号の説明】
【0042】
1 センサ(ガスセンサ)
10 センサ素子
30 先端側端子金具
33 第1接続部(接続部)
40 後端側端子金具
43 第2接続部(先端部)
90 セパレータ(先端側セパレータ)
95 セパレータ(後端側セパレータ)
O 軸線
P1 第1接続部(接続部)の軸心
P2 第2接続部(先端部)の軸心
C 接触部
G センサ素子の重心
LS 線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9