(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】皮膚および毛髪の治療のためのミトコンドリア組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20230420BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230420BHJP
A61K 36/81 20060101ALI20230420BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230420BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230420BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230420BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230420BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20230420BHJP
A61K 47/26 20060101ALN20230420BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/64
A61K36/81
A61K36/185
A61Q7/00
A61P17/14
A61P43/00 107
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/49
A61Q5/02
A61Q5/12
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2019552584
(86)(22)【出願日】2018-03-22
(86)【国際出願番号】 IL2018050332
(87)【国際公開番号】W WO2018178970
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-15
(32)【優先日】2017-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517287615
【氏名又は名称】ミノヴィア セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イヴギ‐オハナ,ナタリエ
(72)【発明者】
【氏名】ハラヴィー,ウリエル
(72)【発明者】
【氏名】ブクスファン,シュムエル
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0079193(US,A1)
【文献】国際公開第2016/135723(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/049867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61K 35/14,35/28,35/50,36/81
A61Q 1/00-90/00
A61P 17/14,43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における脱毛を予防、改善または治療するのに使用するための局所用組成物であって、前記組成物が、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織から得られる無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、および/またはミトコンドリア成分と、化粧品に許容される担体とを含み、前記ミトコンドリア成分が、ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択される、前記組成物。
【請求項2】
前記治療が、毛包の矮小化を阻止すること、毛包の矮小化を遅延すること、毛包の矮小化を改善すること、毛包の伸長を誘導すること、毛包の伸長を促進すること、毛包内の細胞増殖を誘導すること、毛包内の細胞増殖を促進すること、毛髪繊維の伸長を誘導すること、毛髪繊維の伸長を促進すること、毛髪繊維の太さを改善すること、毛包の成長周期相の持続期間を変更することおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記組成物が5μg/ml~50μg/mlのミトコンドリア成分を含み、
前記ミトコンドリア成分の少なくとも一部が無傷ミトコンドリアに含まれ、かつ
前記組成物が凍結融解される、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記組成物がコロイド、液体、ローション、クリーム、軟膏、フォームまたはゲルとして製剤化され、かつ
前記組成物がヒト頭皮に投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記対象が、毛髪の活力に有害な影響を与える疾患、障害または状態に罹患している、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記対象が脱毛症に罹患しているか、
前記対象がミトコンドリア疾患に罹患しているか、
前記対象が癌に罹患しており、放射線または化学療法で治療されるか、または
前記対象が自己免疫障害に罹患しており、前記自己免疫疾患が円形脱毛症である、請求項5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記ミトコンドリア疾患がミトコンドリアDNAの欠失であり、前記ミトコンドリアDNAの欠失が4977bpの欠失であるか、または
前記ミトコンドリア疾患がピアソン症候群である、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記対象が30歳超、40歳超、50歳超または60歳超であるか、または
前記対象が男性である、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
脱毛を予防、改善または治療するための化粧品組成物であって、前記組成物が、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織から得られる無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、および/またはミトコンドリア成分と、化粧品に許容される担体とを含み、前記ミトコンドリア成分が、ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択され、前記無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、および/またはミトコンドリア成分の1つ以上が凍結および融解され、前記組成物が、ヒト皮膚への局所投与用に製剤化される、前記化粧品組成物。
【請求項10】
前記組成物が、5μg/ml~50μg/mlのミトコンドリア成分を含み、
前記組成物が凍結融解され、かつ
前記ミトコンドリア成分の少なくとも一部が無傷ミトコンドリアに含まれる、請求項9に記載の化粧品組成物。
【請求項11】
前記組成物が200mM~250mMスクロース、1mM EGTA/Trisおよび10mM Tris/MOPSを含む、請求項9または10に記載の化粧品組成物。
【請求項12】
植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織から得られる無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分と、化粧品に許容される担体とを含む、化粧品組成物を製造する方法であって、前記ミトコンドリア成分が、ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択され、
前記方法が:
(a
)植物の組織または器官の試料を得る工程、
(b)組織または器官をホモジナイズする工程、
(c)液相を分離する工程、ならびに
(d)前記無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を液相から単離する工程
を含み、
前記方法がさらに、(e)前記無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を凍結する工程を含む、前記方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載の化粧品組成物を含む、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、石鹸、シャンプーまたはコンディショナー。
【請求項14】
脱毛の治療に使用するための、健康なミトコンドリアでエクスビボで富化された、脱毛を有する対象からの自己CD34+細胞を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛包などの発毛器官および細胞の治療のための組成物および方法に関する。具体的には、本出願は、無傷および/または破壊されたミトコンドリアを含む組成物および製剤、ならびに脱毛の予防および治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚内にある毛包は発毛器官である。毛包は、毛乳頭、毛乳頭の周りの毛母基、毛根鞘およびバルジを含むいくつかの部分からなる。毛乳頭細胞は毛包下部に存在し、毛包マトリックスは、毛乳頭、毛根鞘および毛髪繊維を取り囲む。
【0003】
毛髪は、成長期(成長相)、退行期(退行または退縮相)および休止期(静止または休止相)と呼ばれるいくつかの相周期で成長する。通常最大85~90%の毛包が成長期相にあり、10~14%が休止期相、1~2%が退行期相にある。
【0004】
成長期は毛包の活発な成長相である。この相中、毛髪は、28日ごとに約1cmの速度で成長する。頭髪は、2~7年間この活発な成長相にとどまる。毛包が成長期相にとどまる時間は、遺伝的に決定される。成長期相の最後で、未知のシグナルにより、毛包が退行期相に移行する。退行期相は約2~3週間続き、毛髪は、その血液供給から隔離される。退行期相の最後で、毛包は静止状態の休止期相に入る。休止期相の最後で、毛包は成長期相に再び入る。毛乳頭と毛包の基部が再結合し、新しい毛髪が形成される。古い毛髪がまだ脱落していない場合、新しい毛髪が、古い毛髪を押し上げ、成長周期が再開する。
【0005】
30歳超の男性の40%超を含む、何百万もの人が脱毛の影響を受けている。Zhengおよび協同者らは、毛髪試料におけるmtDNA 4977bpの欠失を同定し、欠失量が、年齢と共に指数関数的に増加して、全mtDNAの0%から1.436%まで増加することを同定した(Bosn.J.Basic Med.Sci.、2012、第12巻(3)、187~192頁)。遺伝的素因、自己免疫反応、瘢痕、疾患および感染症を含む、数多くの他の因子が、脱毛の原因となり得る。脱毛は最終的に完全な禿頭に至る場合がある。脱毛症は、毛髪が身体のある部位から喪失される医学的状態である。脱毛症としては、男性型禿頭症としても公知のアンドロゲン性脱毛症、および自己免疫障害であると考えられる円形脱毛症が挙げられる。
【0006】
脱毛症の1つの症状としては、毛包の矮小化がある。矮小化過程において、毛包は、休止期段階後、長い停滞期相に入る。次に続く成長期の周期で、毛包はますます小さくなり、毛髪は短く細いものになる。矮小化した毛包からは、最終的に肉眼では分からない細い毛幹が形成される。最後に、毛包は、毛幹の形成を停止し、脱毛部分は、毛髪が全くない状態になり得る。
【0007】
局所ミノキシジルおよび経口送達フィナステリドなどの薬物を含む、脱毛を治療するためのいくつかの方法が利用できる。しかし、これらの治療は、自然な毛髪成長の回復においては限られた成功しか収めておらず、様々な不要な副作用を引き起こす可能性がある。脱毛の外科的治療としては毛包の移植があり、この手法では、毛包が、頭皮の非禿頭領域から脱毛領域に移植される。
【0008】
ミノキシジルおよびフィナステリドが脱毛を制御する正確な機構(複数可)は、完全に解明されていないが、ミノキシジルは主に休止期を短縮し、フィナステリドは主に成長期を延長すると考えられている(Messenger A.G.ら、Minoxidil:Mechanisms of action on hair growth、British Journal of Dermatology、2004、(150):186~194;Van Neste D.ら、Finasteride increases anagen hair in men with androgenetic alopecia、British Journal of Dermatology、2000、(143):804~810)。
【0009】
米国特許第7,279,326号は、野生型ミトコンドリアDNAゲノムを哺乳動物細胞に送達するための組成物に関する。米国特許第9,603,872号は、ミトコンドリア機能障害から生じる障害の治療におけるミトコンドリア置換の方法、キットおよび組成物に関する。米国特許出願公開第2004/0122109号は、毛髪を成長させ、脱毛を予防するための調製物に関する。ドイツ特許第10 2013 225 588号は、チコリエキスを含む毛髪治療組成物の化粧的、非治療的使用に関する。
【0010】
該分野における進展にもかかわらず、脱毛を予防、治療および改善する安全で効率的な治療法に対する未だ満たされていない必要性が依然存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、脱毛の予防または治療のための組成物、製剤および方法を提供する。本発明は、一部、毛包の伸長に対するおよび毛乳頭細胞の機能に対するミトコンドリア成分の予想外の明らかな効果に基づくものである。
【0012】
任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、本発明の方法による毛包の治療は、それだけに限らないが、脱毛症を患う対象など、それを必要とする対象の毛髪成長を促進し得る。本発明の方法による脱毛症に罹患している対象を治療するための無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分の使用は、ミトコンドリアまたはミトコンドリア成分が、生理学的起源のものであるため、他の公知の方法を使用するよりも安全であり得る。
【0013】
一態様において、本発明は、脱毛を予防、改善または治療するための化粧品組成物であって、前記組成物が、有効量の約1μg/ml~約100μg/mlの無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、ならびに/またはミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択されるミトコンドリア成分を含み、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分の1つ以上が凍結または融解され、前記組成物がさらに化粧品に許容される担体を含み、ヒト皮膚への局所投与用に製剤化される、前記化粧品組成物を提供する。
【0014】
特定の実施形態において、組成物は、約5μg/ml~約90μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約80μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約70μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約60μg/mlのミトコンドリア成分、または約5μg/ml~約50μg/mlのミトコンドリア成分を含む。特定の実施形態において、組成物は約12.5μg/mlのミトコンドリア成分を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0015】
特定の実施形態において、組成物は、少なくとも約1μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約3μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約5μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約10μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約20μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約30μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約40μg/mlのミトコンドリア成分、または少なくとも約50μg/mlのミトコンドリア成分を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0016】
特定の実施形態において、組成物は凍結される。特定の実施形態において、組成物は0℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は-20℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は-70℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は液体窒素で凍結される。
【0017】
特定の実施形態において、組成物は、凍結された後融解される。特定の実施形態において、組成物は融解され、室温である。特定の実施形態において、組成物は融解され、15℃~30℃の温度である。特定の実施形態において、組成物は融解され、4℃である。
【0018】
特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも一部は、無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも5%は、無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも10%は、無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも20%は、無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも40%は、無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも60%は、無傷ミトコンドリアに含まれる。
【0019】
特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも一部は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも5%は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも10%は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも20%は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも40%は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも60%は、破壊されたミトコンドリアに含まれる。
【0020】
特定の実施形態において、組成物は糖を含む。特定の実施形態において、組成物はスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約10mM~約1000mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約100mM~約400mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約200mM~約250mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約10mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約100mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約200mMスクロースを含む。
【0021】
特定の実施形態において、組成物はスクロース、EGTA/TrisおよびTris/MOPSを含む。特定の実施形態において、組成物は約200mM~約250mMスクロース、約1mM EGTA/Trisおよび約10mM Tris/MOPSを含む。
【0022】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、エクスビボで行われる方法により得ることができるか、または得られる。特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、工程(a)~(d):(a)ヒトまたは植物の組織または器官の試料を得る工程、(b)組織または器官をホモジナイズする工程、(c)液相を分離する工程、ならびに(d)無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を液相から単離する工程を含む方法により得ることができるか、または得られる。特定の実施形態において、方法はさらに、工程(e)無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を凍結することを含む。特定の実施形態において、方法の工程(c)の液相は、600g、4℃で10分間遠心分離することにより、および/または5μmカットオフフィルターを通して濾過することにより分離される。特定の実施形態において、方法の工程(d)の無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、7000g、4℃で15分間遠心分離することにより液相から単離される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0023】
特定の実施形態において、組成物は水中で製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は水溶液として製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は懸濁液として製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は、コロイド、ローション、クリーム、軟膏、フォームまたはゲルとして製剤化される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0024】
別の態様において、本発明はさらに、本明細書に記載の組成物または製剤のいずれか一つを含む、パーソナル衛生用、皮膚用または毛髪用製品を提供する。
【0025】
特定の実施形態において、製品は凍結される。特定の実施形態において、製品は融解される。特定の実施形態において、製品はローション、クリーム、軟膏、フォーム、ゲル、石鹸、シャンプーまたはコンディショナーである。
【0026】
さらに別の態様において、本発明はさらに、有効量の約1μg/ml~約100μg/mlの無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、ならびに/またはミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択されるミトコンドリア成分を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、脱毛を予防、改善または治療する方法を提供する。
【0027】
特定の実施形態において、治療は、毛包の矮小化を阻止すること、毛包の矮小化を遅延すること、毛包の矮小化を改善すること、毛包の伸長を誘導すること、毛包の伸長を促進すること、毛包内の細胞増殖を誘導すること、毛包内の細胞増殖を促進すること、毛髪繊維の伸長を誘導すること、毛髪繊維の伸長を促進すること、毛髪繊維の太さを改善すること、毛包の成長周期相の持続期間を変更することおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0028】
特定の実施形態において、治療は毛包の伸長を誘導または促進することである。特定の実施形態において、治療は毛包内の細胞増殖を誘導または促進することである。
【0029】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は融解される。
【0030】
特定の実施形態において、組成物は、コロイド、液体、ローション、クリーム、軟膏、フォームまたはゲルとして製剤化される。
【0031】
特定の実施形態において、ミトコンドリアは、胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞、血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、植物組織は、ジャガイモ組織または新芽組織である。特定の実施形態において、植物細胞はジャガイモ細胞または新芽細胞である。
【0032】
特定の実施形態において、組成物は、局所投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、経皮投与または全身投与により投与される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、組成物は局所投与により投与される。特定の実施形態において、組成物は全身投与により投与される。特定の実施形態において、組成物はヒト頭皮に投与される。
【0033】
特定の実施形態において、対象は、毛髪の活力に有害な影響を与える疾患、障害または状態に罹患している。特定の実施形態において、対象は脱毛症に罹患している。特定の実施形態において、対象はミトコンドリア疾患に罹患している。特定の実施形態において、ミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアDNAの欠失である。特定の実施形態において、ミトコンドリアDNAの欠失は、4977bpの欠失である。特定の実施形態において、ミトコンドリア疾患はピアソン症候群である。特定の実施形態において、対象は癌に罹患している。特定の実施形態において、対象は放射線で治療されるか、または放射線で治療されるべきである。特定の実施形態において、対象は化学療法で治療されるか、または化学療法で治療されるべきである。特定の実施形態において、対象は自己免疫障害に罹患している。特定の実施形態において、自己免疫障害は円形脱毛症である。
【0034】
特定の実施形態において、対象は、30歳超、40歳超、50歳超または60歳超である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、対象は男性である。
【0035】
別の態様によれば、本発明は、有効量の無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアを含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、毛包の治療方法を提供する。
【0036】
別の態様によれば、本発明は、有効量の無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアを含む組成物を、脱毛症に罹患している対象に投与することを含む、脱毛症の治療方法を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質、ミトコンドリア糖、ミトコンドリア構造、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別個の実施形態表す。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、無傷ミトコンドリアを含む組成物はさらに高張液を含む。いくつかの実施形態によれば、高張液は糖を含む。別の実施形態によれば、高張液はスクロースを含む。
【0039】
別の実施形態によれば、組成物の濃度は最大約50μg/mlである。別の実施形態によれば、組成物の濃度は約10~20μg/mlである。別の実施形態によれば、組成物の濃度は約10~15μg/mlである。別の実施形態によれば、組成物の濃度は約12.5μg/mlである。別の実施形態によれば、組成物の濃度は約5~50μg/mlである。
【0040】
別の実施形態によれば、本発明の方法はさらに、少なくとも1つの毛髪成長誘導剤の投与を含む。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの毛髪成長誘導剤は、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル、コペキシル、酸化型補酵素Q、還元型補酵素Q、L-カルニチン酒石酸塩、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0041】
別の実施形態によれば、細胞または組織は、同種および異種から選択される供給源に由来する。
【0042】
別の実施形態によれば、対象は、毛包の治療から利益を得る疾患または障害に罹患している。別の実施形態によれば、毛包の治療から利益を得る疾患または障害は脱毛症である。
【0043】
本発明のさらなる実施形態、特徴、利点および適用性の全範囲は、以下に示す詳細な説明および図面から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明は、本発明の実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、例としてのみ示されていることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】未処理(ビヒクル)ヒト毛包(hHF)の伸長と、シクロスポリンAでまたは様々な濃度の本発明による凍結融解したヒト胎盤ミトコンドリア組成物で処理したhHFの伸長とを比較した棒グラフを示す図である。
【
図2A】ヒト毛乳頭細胞数(
図2A)、VEGF分泌(
図2B)およびクエン酸シンターゼの活性(
図2C)に対する本発明による新鮮なヒト胎盤ミトコンドリア組成物の効果を比較した棒グラフを示す図である。
【
図2B】ヒト毛乳頭細胞数(
図2A)、VEGF分泌(
図2B)およびクエン酸シンターゼの活性(
図2C)に対する本発明による新鮮なヒト胎盤ミトコンドリア組成物の効果を比較した棒グラフを示す図である。
【
図2C】ヒト毛乳頭細胞数(
図2A)、VEGF分泌(
図2B)およびクエン酸シンターゼの活性(
図2C)に対する本発明による新鮮なヒト胎盤ミトコンドリア組成物の効果を比較した棒グラフを示す図である。
【
図3】新鮮なおよび凍結融解したマウス胎盤ミトコンドリアにおける経時的なO
2消費(蛍光による)を示すドットプロットグラフを示す図である。
【
図4A】マンニトール(
図4A)またはスクロース(
図4B)を含有する緩衝液中にインキュベートした新鮮なジャガイモミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)と、凍結融解サイクル(各々
図4Cおよび
図4D)後の対応するミトコンドリアの酸素消費とを比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図4B】マンニトール(
図4A)またはスクロース(
図4B)を含有する緩衝液中にインキュベートした新鮮なジャガイモミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)と、凍結融解サイクル(各々
図4Cおよび
図4D)後の対応するミトコンドリアの酸素消費とを比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図4C】マンニトール(
図4A)またはスクロース(
図4B)を含有する緩衝液中にインキュベートした新鮮なジャガイモミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)と、凍結融解サイクル(各々
図4Cおよび
図4D)後の対応するミトコンドリアの酸素消費とを比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図4D】マンニトール(
図4A)またはスクロース(
図4B)を含有する緩衝液中にインキュベートした新鮮なジャガイモミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)と、凍結融解サイクル(各々
図4Cおよび
図4D)後の対応するミトコンドリアの酸素消費とを比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図5】マンニトールまたはスクロースを含む緩衝液中でインキュベートした新鮮なおよび融解したジャガイモミトコンドリアからのクエン酸シンターゼの放出を比較した棒グラフを示す図である。
【
図6A】単離緩衝液(
図6A)またはPBS(
図6B)中でインキュベートしたマウス胎盤ミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)を比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図6B】単離緩衝液(
図6A)またはPBS(
図6B)中でインキュベートしたマウス胎盤ミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)を比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図6C】単離緩衝液またはPBS中でインキュベートしたミトコンドリアからのクエン酸シンターゼの放出を比較した棒グラフを示す図である。
【
図7A】単離緩衝液またはOptiMEM細胞培地(Gibco)中でインキュベートしたマウス胎盤ミトコンドリアの酸素消費(蛍光による)を比較したドットプロットグラフを示す図である。
【
図7B】単離緩衝液またはOptiMEM(Gibco)中でインキュベートしたミトコンドリアからのクエン酸シンターゼの放出を比較した棒グラフを示す図である。
【
図8】開始時(T0)および24時間インキュベーション後(T24時)のヒト満期胎盤ミトコンドリアの培地へのプロゲステロンの分泌を比較した棒グラフを示す図である。
【
図9】新芽ミトコンドリアでの処理前および処理後のヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)中のATPレベルを比較した棒グラフを示す図である。
【
図10A】クエン酸シンターゼ(CS)酵素活性(
図10A)、細胞増殖(
図10B)およびVEGF分泌(
図10C)に対するヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)におけるヒト胎盤ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図10B】クエン酸シンターゼ(CS)酵素活性(
図10A)、細胞増殖(
図10B)およびVEGF分泌(
図10C)に対するヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)におけるヒト胎盤ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図10C】クエン酸シンターゼ(CS)酵素活性(
図10A)、細胞増殖(
図10B)およびVEGF分泌(
図10C)に対するヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)におけるヒト胎盤ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図11A】ROS(
図11Aおよび
図11B)およびIL-1α(
図11Cおよび
図11D)のUV-Bにより誘導される産生に対するヒト皮膚(hFDPC)における新芽ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図11B】ROS(
図11Aおよび
図11B)およびIL-1α(
図11Cおよび
図11D)のUV-Bにより誘導される産生に対するヒト皮膚(hFDPC)における新芽ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図11C】ROS(
図11Aおよび
図11B)およびIL-1α(
図11Cおよび
図11D)のUV-Bにより誘導される産生に対するヒト皮膚(hFDPC)における新芽ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【
図11D】ROS(
図11Aおよび
図11B)およびIL-1α(
図11Cおよび
図11D)のUV-Bにより誘導される産生に対するヒト皮膚(hFDPC)における新芽ミトコンドリアの効果を示す棒グラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、毛包を治療し、それにより毛髪の活力を改善するための組成物、製剤、製品および方法を初めて開示する。本発明は、一部、本明細書において以下に例証されるように、ヒト毛包の伸長に対するおよびヒト毛包毛乳頭細胞の増殖に対するミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分の予想外の有益な効果に基づくものである。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、本発明の製品および方法の使用により、治療した部分において長く太い毛髪が増加し、脱落する毛髪が減少する。
【0046】
一態様において、本発明は、有効量の約1μg/ml~約100μg/mlの無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、ならびに/またはミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択されるミトコンドリア成分を含む組成物であって、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分の1つ以上が凍結または融解され、組成物がさらに担体を含み、ヒト皮膚への局所投与用に製剤化される、前記組成物を提供する。
【0047】
本発明の原理によれば、本明細書で提供される組成物は、化粧目的を主に意図するものである。特定の実施形態において、本発明の組成物および/または製剤および/または製品は、化粧品であり、化粧品に許容される担体を含む。しかし、これらの組成物は、治療法でも採用され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物および/または製剤および/または製品は、医薬および/または治療用であり、薬学的に許容される担体を含む。
【0048】
本明細書で使用する用語「化粧品組成物」は、人体への適用に好適な組成物に関する。用語「化粧品に許容される担体」は、化粧品組成物中で従来用いられるすべての担体、および/または賦形剤、および/または希釈剤を指す。本明細書で使用する用語「医薬組成物」は、人体への適用に好適な組成物に関する。用語「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物中で従来用いられるすべての担体および/または賦形剤および/または希釈剤を指す。本明細書で使用する用語「局所投与」は、体表への投与を指す。
【0049】
本明細書で使用する用語「化粧品」または「化粧品組成物」は、対象に何らかの方法で直接適用されるあらゆる種類の製品を含むことがさらに意図され、本明細書で開示される化粧剤の発明品に加えて、従来の成分、例えば、ラノリン、蜜蝋、オレイン酸、鯨蝋、アーモンド油、ヒマシ油、トラガカントガム、粘土、マグネシア、タルク、ステアリン酸金属塩、チョーク、炭酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、カオリンなどを含むことが意図される。これらの組成物は、脂肪を含むもしくは脂肪を含まないクリーム、乳状懸濁液または油中水もしくは水中油型のエマルジョン、ローション、ゲルもしくはゼリー、コロイドもしくは非コロイド水溶液もしくは油性溶液、ペースト、石鹸、エアロゾル、可溶性錠剤(水などの流体に溶解される)またはスティックの形態を取り得る。本発明による化粧品組成物は、従来のビヒクルまたは担体、例えば、溶媒、脂肪、油および鉱物ワックス、脂肪酸およびその誘導体、アルコールおよびその誘導体、グリコールおよびその誘導体、グリセロールおよびその誘導体、ソルビトールおよびその誘導体、アニオン、カチオンまたは非イオン性界面活性剤、乳化剤、保存剤、香料なども含有し得る。
【0050】
本明細書で使用する用語「組成物」および「本発明の組成物」は互換的に用いられる。いくつかの実施形態によれば、本明細書で使用する用語「本発明の組成物」は、無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を含む組成物を指す。いくつかの実施形態によれば、本明細書で使用する用語「本発明の組成物」は、無傷ミトコンドリアおよび破壊されたミトコンドリアからなる群から選択されるミトコンドリアを指す。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、破壊されたミトコンドリアを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は無傷ミトコンドリアを含む。他の実施形態によれば、本発明の組成物は、無傷ミトコンドリアおよび破壊されたミトコンドリアを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、破壊されたミトコンドリアおよび少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、破壊されたミトコンドリア、ならびに破壊されたミトコンドリアから放出および/または分泌される少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、部分的に精製されたミトコンドリアを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、単離されたミトコンドリアを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、ミトコンドリアにより馴化された培地を含む。他の実施形態によれば、本発明の組成物は、破壊されたミトコンドリア、少なくとも1つのミトコンドリア成分、単離されたミトコンドリア、部分的に精製されたミトコンドリア、無傷ミトコンドリア、ミトコンドリアにより馴化された培地およびこれらの組み合わせからなる群の少なくとも1つを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「ミトコンドリアにより馴化された培地」は、ミトコンドリアがインキュベートされた培地であり、ミトコンドリア成分および/またはミトコンドリアから分泌される成分を含有する培地を指す。
【0051】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は凍結される。特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は融解される。本明細書で使用する用語「融解される」は、少なくとも1回凍結されたが現在は凍結していないなど、少なくとも1回の凍結融解サイクルを経たことを意味する。
【0052】
特定の実施形態において、組成物は、約5μg/ml~約90μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約80μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約70μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約60μg/mlのミトコンドリア成分、約5μg/ml~約50μg/mlのミトコンドリア成分または約5μg/ml~約30μg/mlのミトコンドリア成分を含む。特定の実施形態において、組成物は約12.5μg/mlのミトコンドリア成分を含む。本明細書で使用する用語「約」は、示された値の+/-10%を指す。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物中の全ミトコンドリア成分の総濃度は約10~20μg/mlである。他の実施形態によれば、濃度は約10~15μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は約12.5μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は少なくとも約10μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は少なくとも約12.5μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は約50μg/ml以下である。いくつかの実施形態によれば、濃度は約1~50μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は約5~50μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は約0.1~50μg/mlである。いくつかの実施形態によれば、濃度は約100μg/ml以下である。
【0054】
特定の実施形態において、組成物は少なくとも約1μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約3μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約5μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約10μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約20μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約30μg/mlのミトコンドリア成分、少なくとも約40μg/mlのミトコンドリア成分、または少なくとも約50μg/mlのミトコンドリア成分を含む。
【0055】
特定の実施形態において、組成物は凍結される。特定の実施形態において、組成物は0℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は-20℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は-70℃またはより低温で凍結される。特定の実施形態において、組成物は液体窒素で凍結される。
【0056】
特定の実施形態において、組成物は凍結された後融解される。特定の実施形態において、組成物は融解され、室温である。特定の実施形態において、組成物は融解され、15℃~30℃の温度である。特定の実施形態において、組成物は融解され、4℃である。
【0057】
特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも一部は無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも5%は無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも10%は無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも20%は無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも40%は無傷ミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも50%は無傷ミトコンドリアに含まれる。
【0058】
特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも一部は破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも5%は破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも10%は破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも20%は破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも40%は破壊されたミトコンドリアに含まれる。特定の実施形態において、ミトコンドリア成分の少なくとも50%は破壊されたミトコンドリアに含まれる。
【0059】
特定の実施形態において、組成物は糖を含む。特定の実施形態において、組成物はスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約10mM~約1000mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約100mM~約400mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は約200mM~約250mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約10mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約100mMスクロースを含む。特定の実施形態において、組成物は少なくとも約200mMスクロースを含む。
【0060】
特定の実施形態において、組成物はスクロース、EGTA/TrisおよびTris/MOPSを含む。特定の実施形態において、組成物は約200mM~約250mMスクロース、約1mM EGTA/Trisおよび約10mM Tris/MOPSを含む。
【0061】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、エクスビボで行われる方法により得ることができるか、または得られる。特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、工程(a)~(d):(a)ヒトまたは植物の組織または器官の試料を得る工程、(b)組織または器官をホモジナイズする工程、(c)液相を分離する工程、ならびに(d)無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を液相から単離する工程を含む方法により得ることができるか、または得られる。特定の実施形態において、方法はさらに、工程(e)無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分を凍結することを含む。特定の実施形態において、方法の工程(c)の液相は、600g、4℃で10分間遠心分離することにより、および/または5μmカットオフフィルターを通して濾過することにより分離される。特定の実施形態において、方法の工程(d)の無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、7000g、4℃で15分間遠心分離することにより液相から単離される。
【0062】
特定の実施形態において、組成物は水を欠く。特定の実施形態において、組成物は水中で製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は水溶液として製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は懸濁液として製剤化されない。特定の実施形態において、組成物は、コロイド、ローション、クリーム、軟膏、フォームまたはゲルとして製剤化される。
【0063】
別の態様において、本発明はさらに、本明細書に記載の組成物または製剤のいずれか一つを含む、パーソナル衛生用製品、皮膚用製品または毛髪用製品を提供する。
【0064】
特定の実施形態において、製品は凍結される。特定の実施形態において、製品は融解される。特定の実施形態において、製品はローション、クリーム、軟膏、フォーム、ゲル、石鹸、シャンプーまたはコンディショナーである。
【0065】
本明細書で使用する用語「ローション」は、皮膚への適用が意図される低粘度の局所調製物を指す。本明細書で使用する用語「クリーム」は、例えば、ハンドクリーム、クレンジングクリーム、乳液、コールドクリーム、ヘアクリーム、クリームファンデーション、美容洗浄剤、フェイシャルパックなどを含むすべての化粧品材料を指す。用語「軟膏」は、油性、水溶性およびエマルジョンタイプの基剤、例えば、ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、ならびにこれらの混合物を有する製剤(クリームを含む)を包含する。本明細書で使用する用語「フォーム」は、液体または固体中に気体のポケットを捕捉することにより形成される物質を指す。用語「ゲル」は、粘度が高く流動性がない分散液を一般に意味する。用語「石鹸」は、その一般的な意味で本明細書で用いられ、すなわち、脂肪族、アルカンまたはアルケンモノカルボン酸のアルカリ金属またはアルカノールアンモニウム塩である。用語「シャンプー」は、毛髪に適用され、次いで洗い流されることになる、毛髪洗浄用調製物を指す。本明細書で使用する用語「ヘアコンディショナー」は、毛髪の質感および外観を変化させるヘアケア製品を指す。ヘアコンディショナーは、毛髪に適用され、もみこまれる粘性の液体である場合が多い。ヘアコンディショナーは、通常、毛髪をシャンプーで洗浄した後に用いられる。
【0066】
さらに別の態様において、本発明はさらに、有効量の約1μg/ml~約100μg/mlの無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリア、ならびに/またはミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質およびミトコンドリア糖からなる群から選択されるミトコンドリア成分を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の脱毛を予防、改善または治療する方法を提供する。
【0067】
特定の実施形態において、治療は、毛包の矮小化を阻止すること、毛包の矮小化を遅延すること、毛包の矮小化を改善すること、毛包の伸長を誘導すること、毛包の伸長を促進すること、毛包内の細胞増殖を誘導すること、毛包内の細胞増殖を促進すること、毛髪繊維の伸長を誘導すること、毛髪繊維の伸長を促進すること、毛髪繊維の太さを改善すること、毛包の成長周期相の持続期間を変更することおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0068】
特定の実施形態において、治療は毛包の伸長を誘導または促進することである。特定の実施形態において、治療は毛包内の細胞増殖を誘導または促進することである。
【0069】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は融解される。
【0070】
特定の実施形態において、組成物は懸濁液、コロイド、液体、ローション、クリーム、軟膏、フォームまたはゲルとして製剤化される。
【0071】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞、血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。特定の実施形態において、植物組織は、ジャガイモ組織または新芽組織である。特定の実施形態において、植物細胞はジャガイモ細胞または新芽細胞である。
【0072】
本発明による無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、本明細書に開示される方法により、または当技術分野で公知の任意の他の方法により得られ得る。市販のミトコンドリア単離キットとしては、例えば、とりわけミトコンドリア単離キットMITOISO1(Sigma-Alrdich)が挙げられる。
【0073】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、以下の工程を含む方法により得ることができるか、または得られる:(1)胎盤を、氷冷IB緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗い流し、血液を除去した。(2)胎盤を5ml IB+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。(3)懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。(4)ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。(5)上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをIB緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。(6)工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。(7)上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。(8)ミトコンドリアペレットを10ml氷冷IB緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。(9)上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのIB緩衝液に再懸濁した。
【0074】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は以下の工程を含む方法により得ることができるか、または得られる:(1)胎盤を、氷冷IB緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗浄し、血液を除去した。(2)胎盤を5ml IB+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。(3)懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。(4)ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。(5)上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをIB緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。(6)工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。(7)上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。(8)ミトコンドリアペレットを10ml氷冷IB緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。(9)上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのIB緩衝液に再懸濁した。
【0075】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は以下の工程を含む方法により得ることができるか、または得られる:(1)ジャガイモを4℃で一晩冷却し、小片に切断し、マンニトールまたはスクロース含有緩衝液中(組織:体積1:4の比)でブレンダーを用いて30分間粉砕した。(2)混合物をチーズクロスを通して濾過し、600g、4℃で10分間遠心分離した。(3)上清を新しい管に移し、8000gで10分間遠心分離した。(4)マンニトールまたはスクロースで処理した組織のペレットを、1ml洗浄緩衝液(0.7Mマンニトール、10mM KPI pH6.5)または単離緩衝液各々で洗浄し、8000g、4℃で10分間遠心分離し、100μlの洗浄緩衝液/単離緩衝液に再懸濁した。
【0076】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は以下の工程を含む方法により得ることができるか、または得られる:(1)胎盤を、氷冷M1緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗浄し、血液を除去した。(2)胎盤を5ml M1+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。(3)懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。(4)ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。(5)上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをM1緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。(6)工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。(7)上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。(8)ミトコンドリアペレットを10ml氷冷M1緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。(9)上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのM1緩衝液に再懸濁した。
【0077】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は以下の工程を含む方法により得ることができるか、または得られる:(1)400gのリョクトウ芽を洗浄し、切り刻んだ。(2)2Lのスクロース緩衝液(250mMスクロース、10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH7.4)中でホモジナイズした。(3)600g、4℃で遠心分離した。(4)5μmカットオフにより濾過した。(5)8000g、4℃で遠心分離した。(6)ペレットを洗浄し、8000g、4℃で遠心分離した。
【0078】
特定の実施形態において、組成物は局所投与、経口投与、皮下投与、皮内投与、経皮投与または全身投与により投与される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、組成物は局所投与により投与される。特定の実施形態において、組成物は全身投与により投与される。特定の実施形態において、組成物はヒト頭皮に投与される。
【0079】
特定の実施形態において、対象は、毛髪の活力に有害な影響を与える疾患、障害または状態に罹患している。特定の実施形態において、対象は脱毛症に罹患している。特定の実施形態において、対象はミトコンドリア疾患に罹患している。特定の実施形態において、ミトコンドリア疾患は、ミトコンドリアDNAの欠失である。特定の実施形態において、ミトコンドリアDNAの欠失は、4977bpの欠失である。特定の実施形態において、ミトコンドリア疾患はピアソン症候群である。特定の実施形態において、対象は癌に罹患している。特定の実施形態において、対象は放射線で治療されるか、または放射線で治療されるべきである。特定の実施形態において、対象は化学療法で治療されるか、または化学療法で治療されるべきである。特定の実施形態において、対象は自己免疫障害に罹患している。特定の実施形態において、自己免疫障害は円形脱毛症である。
【0080】
特定の実施形態において、対象は、30歳超、40歳超、50歳超または60歳超である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態において、対象は男性である。
【0081】
特定の実施形態において、無傷ミトコンドリア、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は機能性ミトコンドリアである。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアは機能性ミトコンドリアである。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは単離されたミトコンドリアである。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは無傷ミトコンドリアである。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは部分的に機能性である。本明細書で使用する用語「部分的に機能性のミトコンドリア」は、ミトコンドリアの少なくとも1つの機能的特性、例えば、それだけに限らないが、酸素消費を欠くミトコンドリアを指す。いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは非機能性ミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは部分的に機能性のミトコンドリアである。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、用語「機能性ミトコンドリア」は、酸素を消費するミトコンドリアを指す。別の実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは、無傷の外膜を有する。いくつかの実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは無傷ミトコンドリアである。別の実施形態において、機能性ミトコンドリアは、経時的に増加量で酸素を消費する。別の実施形態において、ミトコンドリアの機能性は、酸素消費により測定される。別の実施形態において、ミトコンドリアの酸素消費は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、それだけに限らないが、MitoXpress蛍光プローブ(Luxcel)により測定され得る。いくつかの実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは、ADPおよび基質、例えば、それだけに限らないが、グルタミン酸塩、リンゴ酸塩またはコハク酸塩の存在下で酸素消費量の増加を示すミトコンドリアである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、機能性ミトコンドリアは、ATPを産生するミトコンドリアである。別の実施形態において、機能性ミトコンドリアは、それら自身のRNAおよびタンパク質を製造することが可能なミトコンドリアであり、自己複製構造である。別の実施形態において、機能性ミトコンドリアは、ミトコンドリアリボソームおよびミトコンドリアtRNA分子を産生する。
【0083】
当技術分野で公知であるように、機能性胎盤ミトコンドリアは、プロゲステロンの産生に関与する(例えば、Tuckey RC、Placenta、2005、26(4):273~81参照)。いくつかの実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは、プロゲステロンまたはプレグネノロンを産生するミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは、プロゲステロンを分泌するミトコンドリアである。非限定的例において、胎盤、または培養物中で増殖させた胎盤細胞に由来するミトコンドリアはプロゲステロンまたはプレグネノロンを産生する。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは胎盤、または培養物中で増殖させた胎盤細胞に由来し、ミトコンドリアはプロゲステロンまたはプレグネノロンを産生する。いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアにおけるプロゲステロンまたはプレグネノロンの産生は、凍結融解サイクル後損なわれない。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアの機能性は、ミトコンドリアのプロゲステロンの産生、またはミトコンドリアのプロゲステロン前駆体、例えば、それだけに限らないがプレグネノロンの産生を測定することにより測定される。プロゲステロンの産生は、当技術分野で公知の任意のアッセイ、例えば、それだけに限らないがラジオイムノアッセイ(RIA)により測定され得る。
【0084】
本明細書で使用する用語「部分的に精製されたミトコンドリア」は、他の細胞成分から単離されたミトコンドリアを指し、ミトコンドリア成分の重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の20~80%、30~80%または40~70%を構成する(Hartwigら、Proteomics、2009、(9):3209~3214に例証されている)。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアは無傷細胞を含有していない。
【0085】
別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の少なくとも20%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の20%~40%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の40%~80%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の30%~70%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の50%~70%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の60%~70%を構成する。別の実施形態によれば、部分的に精製されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の80%未満を構成する。
【0086】
本明細書で使用する用語「ミトコンドリアタンパク質」は、ゲノムDNAまたはmtDNAによりコードされるミトコンドリアタンパク質を含む、ミトコンドリアにおいてその機能を果たすタンパク質を指す。本明細書で使用する用語「細胞タンパク質」は、ミトコンドリアが産生される細胞または組織に由来するすべてのタンパク質を指す。
【0087】
本明細書で使用する用語「単離されたミトコンドリア」は、他の細胞成分から単離されたミトコンドリアを指し、ミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の80%超を構成する。単離されたミトコンドリアの調製には、緩衝液の組成の変更、または追加の洗浄工程、クリーニングサイクル、遠心分離サイクルおよび超音波処理サイクルが必要とされ得、これらは、部分的に精製されたミトコンドリアの調製には不要である。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、このような追加の工程およびサイクルは、単離されたミトコンドリアの機能性を害する可能性がある。
【0088】
別の実施形態によれば、単離されたミトコンドリアにおけるミトコンドリアの重量は、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の90%超を構成する。単離されたミトコンドリアを得る方法の非限定的例としては、MACS(登録商標)技術(Miltenyi Biotec)がある。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、ミトコンドリアの重量が、ミトコンドリアと他の細胞内画分との合計重量の95%超を構成する単離されたミトコンドリアは、機能性ミトコンドリアではない。別の実施形態によれば、単離されたミトコンドリアは無傷細胞を含有していない。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは単離されたミトコンドリアである。
【0089】
本明細書で使用する用語「無傷ミトコンドリア」は、外膜、内膜、クリステ(内膜により形成される)およびマトリックスを含むミトコンドリアを指す。別の実施形態において、無傷ミトコンドリアはミトコンドリアDNAを含む。本明細書で使用する用語「ミトプラスト」は外膜を欠くミトコンドリアを指す。別の実施形態によれば、ミトコンドリア膜の無傷性は、当技術分野で公知の任意の方法により決定され得る。非限定的例において、ミトコンドリア膜の無傷性は、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)またはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)蛍光プローブを用いて測定される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。顕微鏡下で観察された、TMRMまたはTMRE染色を示すミトコンドリアは無傷のミトコンドリア外膜を有する。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア膜の無傷性は、ミトコンドリア外のクエン酸シンターゼの存在をアッセイすることにより測定される。いくつかの実施形態によれば、クエン酸シンターゼを放出するミトコンドリアはミトコンドリアの無傷性を損なう。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア膜の無傷性は、ADPの存在と連結したミトコンドリアの酸素消費量を測定することにより決定される。いくつかの実施形態によれば、ADPの存在下でのミトコンドリアの酸素消費の増加は、無傷のミトコンドリア膜を示している。いくつかの実施形態によれば、本発明による無傷ミトコンドリアは部分的に精製されたミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、本発明による無傷ミトコンドリアは単離されたミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、機能性ミトコンドリアは無傷ミトコンドリアである。
【0090】
本明細書で使用する用語「ミトコンドリア膜」は、ミトコンドリア内膜、ミトコンドリア外膜またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるミトコンドリア膜を指す。
【0091】
本明細書で使用する用語「破壊されたミトコンドリア」は、内側および外側のミトコンドリア膜が、例えば、せん断(断裂)、穿孔、貫通されているミトコンドリアを指す。いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは、1超の片/部分にせん断されたミトコンドリアである。破壊されたミトコンドリアは、本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の任意の他の方法により破壊された無傷ミトコンドリアであることが理解されるべきである。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは、ミトコンドリアから少なくとも1つのミトコンドリア成分が放出されたミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは、内側および外側のミトコンドリア膜が、例えば、せん断(断裂)、穿孔、貫通されており、少なくとも1つのミトコンドリア成分が放出されたミトコンドリアを対象とする。いくつかの実施形態によれば、無傷ミトコンドリアの破壊により、少なくとも1つのミトコンドリア成分が放出される。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのミトコンドリア成分が放出された破壊されたミトコンドリアは、放出された成分と共に投与されることが理解されるべきである。
【0093】
本明細書で使用する用語「ミトコンドリア成分」は、ミトコンドリアに含まれる任意の成分を指す。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質、ミトコンドリア糖、ミトコンドリア構造、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部およびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの成分である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0094】
本明細書で使用する用語「ミトコンドリア構造」は、ミトコンドリアに存在する構造および/またはオルガネラ、例えば、それだけに限らないが、マトリックス顆粒、ATPシンターゼ粒子、ミトコンドリアリボソームおよびクリステを指す。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、無傷機能性ミトコンドリアの少なくとも1つの機能を維持する。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、単一型のミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質、ミトコンドリア構造またはミトコンドリア糖を含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、少なくとも1つの機能タンパク質を含む。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアマトリックス全体を含む。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部、およびそこに含まれる成分、例えば、それだけに限らないが、タンパク質、アデノシン三リン酸(ATP)またはイオンの少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部、およびそこに含まれる以下の成分:ミトコンドリアタンパク質、ミトコンドリア核酸、ミトコンドリア脂質、ミトコンドリア糖およびミトコンドリア構造の少なくとも1つを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「ミトコンドリアマトリックス」は、ミトコンドリア内膜内の粘着性物質を指す。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリアから分泌または放出される成分、例えば、それだけに限らないが、ミトコンドリアタンパク質であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアから分泌または放出されるミトコンドリア成分は、当技術分野で公知の任意の方法、例えば、それだけに限らないが、ミトコンドリアがインキュベートされた馴化培地からミトコンドリア成分を取り出すことにより取り出され得る。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、ミトコンドリア画分を細胞から単離する当技術分野で公知の任意の方法、例えば、Thermo Fisher Scientific(Rockford、IL、USA)製の培養細胞用のミトコンドリア単離キットを用いて行われる方法により得られ得る。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア画分または成分は、ミトコンドリアの単離または部分的精製の副産物として産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0097】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分はプロゲステロンを含む。いくつかの実施形態によれば、プロゲステロンは、破壊されたミトコンドリアから放出される。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、破壊されたミトコンドリアおよびミトコンドリアから放出されたプロゲステロンを含む。非限定的例において、胎盤または培養物中で増殖させた胎盤細胞由来のミトコンドリアの破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分はプロゲステロンを含み得る。いくつかの実施形態によれば、プロゲステロンを含む破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、5α-レダクターゼファミリーの酵素を阻害する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「5α-レダクターゼファミリー」は、ステロイド代謝、主にテストステロンの5α-ジヒドロテストステロン(DHT)への変換に関与する酵素のファミリーである。当技術分野で公知であるように、DHTは、毛包の矮小化および脱毛症に影響を与える。したがって、5α-レダクターゼファミリーの酵素の阻害、ひいてはDHTレベルの低下は、脱毛の阻止に役立ち得、さらに毛髪再成長を誘導し得る。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、プロゲステロンを含むミトコンドリア成分は、5α-レダクターゼの阻害、ひいてはテストステロンの5α-ジヒドロテストステロン(DHT)への変換の防止により脱毛/脱毛症を治療するのに有効であり得る。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアおよび/またはミトコンドリア成分は、無傷および/または単離されたおよび/または部分的に精製されたミトコンドリアから得られることが理解されるべきである。本発明の実施形態によれば、ミトコンドリア成分は、当技術分野で公知の任意の方法により無傷ミトコンドリアから得られることがさらに理解されるべきである。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリア成分は、無傷ミトコンドリアを高張液から低張液に移すことにより得られる。いくつかの実施形態によれば、無傷ミトコンドリアを高張液から低張液に移すことにより、少なくとも1つのミトコンドリア成分が放出される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、有効量の少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、毛包の治療方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む有効量の組成物を脱毛症に罹患している対象に投与することを含む、脱毛症の治療方法を提供する。
【0100】
本明細書で使用する用語「低張」、「等張」および「高張」は、無傷ミトコンドリア内の溶質濃度に対する濃度に関する。
【0101】
他の実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは、無傷ミトコンドリアを低張液、例えば、それだけに限らないが、低張リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にさらすことにより得られる。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、無傷ミトコンドリアを低張液にさらすことで、ミトコンドリアが破裂または穿孔され、したがって破壊されたミトコンドリアが得られ、ミトコンドリア成分、例えば、それだけに限らないが、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部が放出され得る。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは、ミトコンドリアを高張液から低張液に移すことにより得られる。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、無傷ミトコンドリアを高張液から低張液に移すことで、ミトコンドリアが破裂、破壊または穿孔され、したがって破壊されたミトコンドリアが得られ、ミトコンドリア成分、例えば、それだけに限らないが、ミトコンドリアマトリックスの少なくとも一部が放出され得る。非限定的例において、無傷ミトコンドリアの破裂、破壊または穿孔により、ミトコンドリアタンパク質、例えば、クエン酸シンターゼが放出され得る。いくつかの実施形態によれば、クエン酸シンターゼの放出は、破壊されたミトコンドリアを示すものとして用いられる。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は、無傷ミトコンドリア内の浸透圧を上昇させることにより無傷ミトコンドリアから放出される。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、ミトコンドリア膜が穿孔および/または断裂されるように無傷ミトコンドリア内で浸透圧を上昇させることで、ミトコンドリアが破壊され、本発明によるミトコンドリア成分が放出され得る。
【0103】
いくつかの実施形態によれば、本発明による無傷ミトコンドリアを含む組成物は、高張液として製剤化される。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、高張液を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明による高張液は糖を含む。本明細書で使用する用語「糖」は糖、オリゴ糖または多糖を指し得る。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、糖はスクロースである。いくつかの実施形態によれば、本発明による高張液中の糖の濃度は、単離緩衝液中の糖の濃度と同様である。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア機能を保持するように作用するのに十分な糖の濃度は、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分である。いくつかの実施形態によれば、単離緩衝液は高張である。他の実施形態によれば、本発明による高張液中の糖の濃度は、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度である。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物はさらに、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度を含む。
【0104】
別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は、100mM~400mM、好ましくは100mM~250mM、最も好ましくは200mM~250mMの濃度である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は100mM~150mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は150mM~200mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は100mM~200mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は100mM~400mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は150mM~400mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は200mM~400mMである。別の実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度は少なくとも100mMである。任意の理論または作用機構に拘束されることは望まないが、100mM未満の糖の濃度はミトコンドリアを無傷で保持するのに十分でない可能性がある。いくつかの実施形態によれば、100mM超の糖の濃度は高張である。
【0105】
いくつかの実施形態によれば、本発明による破壊されたミトコンドリアを含む組成物は低張液として製剤化される。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は低張液を含む。低張液の非限定的例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)がある。いくつかの実施形態によれば、PBS中のミトコンドリアは破壊されたミトコンドリアである。他の実施形態によれば、単離緩衝液中のミトコンドリアは無傷ミトコンドリアである。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアを無傷で保持するのに十分な糖の濃度を含む単離緩衝液中のミトコンドリアは無傷ミトコンドリアである。
【0106】
いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアはイオン交換阻害剤にさらされる。いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアは、イオン交換阻害剤にさらすことにより縮小される。別の実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアは、イオン交換阻害剤にさらすことにより縮小された。いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアは、部分的精製または単離後にイオン交換阻害剤にさらされる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアは、部分的精製または単離中にイオン交換阻害剤にさらされる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアに由来する細胞または組織は、ミトコンドリアの部分的精製または単離前にイオン交換阻害剤にさらされる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、イオン交換阻害剤はCGP37157である。本明細書で使用する用語「CGP」および「CGP37157」は、互換的に用いられる。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、ミトコンドリアNa+/Ca2+交換体、例えば、CGP37157をブロックする剤は、ミトコンドリア核分裂を誘起し得、ミトコンドリアATP産生を増加し得、ミトコンドリアを縮小し得る。ミトコンドリア核分裂は、自然核分裂、または適当な剤、例えば、CGP37157により誘起される核分裂を指す。別の実施形態によれば、本発明の最終組成物は、遊離イオン交換阻害剤を欠く。本明細書で使用する場合、イオン交換阻害剤を欠く組成物は、本発明のミトコンドリアに結合しないイオン交換阻害剤を欠く組成物を指す。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、本発明のミトコンドリアに結合したイオン交換阻害剤を含む。いくつかの実施形態によれば、イオン交換阻害剤を欠く組成物は、1μM未満、好ましくは0.5μM未満、最も好ましくは0.1μM未満の濃度でイオン交換阻害剤を含む。
【0107】
別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、それが投与される対象とは異なる対象に由来する。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、同種および異種から選択される供給源からのものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、同種および異種から選択される供給源からの細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0108】
本明細書で使用する同種供給源のミトコンドリアは、同じ種から治療される対象とは異なる対象由来のミトコンドリアを指す。本明細書で使用する場合、異種供給源のミトコンドリアは、異なる種から治療される対象とは異なる対象由来のミトコンドリアを指す。いくつかの実施形態によれば、異種供給源は植物供給源である。
【0109】
別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、哺乳動物対象に由来する。別の実施形態によれば、哺乳動物対象は、ヒト対象である。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、哺乳動物細胞に由来する。別の実施形態によれば、哺乳動物細胞は、ヒト細胞である。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、培養物中の細胞に由来する。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、組織に由来する。
【0110】
いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、植物組織、植物細胞または培養物中で増殖させた植物細胞に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明による、植物組織、植物細胞または培養物中で増殖させた植物細胞にミトコンドリアが由来することは、ミトコンドリアが植物プロトプラストに由来することを指す。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本発明による植物ミトコンドリアは、ミトコンドリアを含むことが当技術分野で公知の任意の植物種、植物器官、植物細胞または培養物中で増殖させた植物細胞に由来し得る。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。非限定的例において、本発明による植物ミトコンドリアは、貯蔵器官(例えば、ジャガイモ、糖またはビート)、緑葉(例えば、タバコ、豆またはペチュニア)またはもやし(例えば、小麦、トウモロコシまたは緑豆)に由来し得る。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、ジャガイモに由来する。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、藻類、例えば、それだけに限らないが、ドナリエラに由来する。実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは動物対象、好ましくは哺乳動物対象、最も好ましくはヒト対象または培養物中で増殖させたヒト細胞から得られる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは細胞壁を欠く細胞、好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞から得られる。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0111】
別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、ヒト胎盤、培養物中で増殖させたヒト胎盤細胞およびヒト血液細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞および血液細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、ヒト胎盤、培養物中で増殖させたヒト胎盤細胞、ヒト血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞、血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞および血液細胞からなる群から選択される細胞または組織由来のミトコンドリアから産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は、ヒト胎盤、培養物中で増殖させたヒト胎盤細胞およびヒト血液細胞からなる群から選択される細胞または組織由来のミトコンドリアから産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は、胎盤、培養物中で増殖させた胎盤細胞、血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織由来のミトコンドリアから産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は、ヒト胎盤、培養物中で増殖させたヒト胎盤細胞およびヒト血液細胞からなる群から選択される細胞または組織由来のミトコンドリアから産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は、ヒト胎盤、培養物中で増殖させたヒト胎盤細胞、ヒト血液細胞、植物組織、植物細胞および培養物中で増殖させた植物細胞からなる群から選択される細胞または組織由来のミトコンドリアから産生される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0113】
本明細書で使用する語句「培養物中で増殖させた細胞」または「培養物中で増殖させた組織」は、細胞または組織が由来する生体外の液体、半固体または固体培地中で各々増殖させた多数の細胞または組織を指す。いくつかの実施形態によれば、培養物中で増殖させた細胞はバイオリアクター中で増殖させた細胞である。非限定的例によれば、細胞は、バイオリアクター(例えば、それだけに限らないが、国際公開第2008/152640号に開示されているバイオリアクター)中で増殖され得、次いでミトコンドリアが細胞から単離されるか、または部分的に精製される。
【0114】
別の実施形態によれば、本発明のミトコンドリアは、凍結融解サイクルを経た。いくつかの実施形態によれば、本発明の無傷ミトコンドリアは凍結融解サイクルを経た。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、凍結融解サイクルを経た無傷ミトコンドリアは、凍結融解サイクルを経ていない対照無傷ミトコンドリアと比較して、融解後、少なくとも同程度の酸素消費量を示す。したがって、凍結融解サイクルを経た無傷ミトコンドリアは、凍結融解サイクルを経ていない対照ミトコンドリアと少なくとも同様の機能性がある。
【0115】
本明細書で使用する用語「凍結融解サイクル」は、本発明のミトコンドリアを0℃未満の温度に凍結し、ミトコンドリアを0℃未満の温度で規定された時間維持し、ミトコンドリアを室温もしくは体温または本発明の方法による投与を可能にする0℃超の任意の温度に融解することを指す。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用する用語「室温」は18℃~25℃の温度を指す。本明細書で使用する用語「体温」は35.5℃~37.5℃、好ましくは37℃の温度を指す。
【0116】
別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、少なくとも-196℃の温度で凍結された。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、少なくとも-70℃の温度で凍結された。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、少なくとも-20℃の温度で凍結された。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、少なくとも-4℃の温度で凍結された。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、少なくとも0℃の温度で凍結された。別の実施形態によれば、ミトコンドリアは徐々に凍結される。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアの凍結はフラッシュ凍結によるものである。本明細書で使用する用語「フラッシュ凍結」は、ミトコンドリアを極低温にさらすことによりミトコンドリアを急速に凍結することを指す。非限定的例において、フラッシュ凍結は、液体窒素を用いて凍結することを含み得る。
【0117】
別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、融解前に少なくとも30分間凍結された。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルは、融解前にミトコンドリアを少なくとも30、60、90、120、180、210分間凍結することを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、融解前に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、24、48、72、96、120時間凍結された。各凍結時間は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、融解前に少なくとも4、5、6、7、30、60、120、365日間凍結された。各凍結時間は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルは、融解前にミトコンドリアを少なくとも1、2、3週間凍結することを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルは、融解前にミトコンドリアを少なくとも1、2、3、4、5、6ヶ月間凍結することを含む。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0118】
別の実施形態において、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、融解前に-70℃で少なくとも30分間凍結された。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、ミトコンドリアを凍結し、それを長期間後融解する可能性は、ミトコンドリアの簡単な貯蔵および使用を可能にし、長期貯蔵後でも再生可能な結果をもたらす。いくつかの実施形態によれば、本発明による破壊されたミトコンドリアは、凍結融解サイクルを経た無傷ミトコンドリアから調製/産生される。
【0119】
別の実施形態によれば、融解は室温である。別の実施形態において、融解は体温である。別の実施形態によれば、融解は、本発明の方法による投与を可能にする温度で行われる。別の実施形態によれば、融解は徐々に行われる。
【0120】
本明細書で使用する用語「単離緩衝液」は、本発明のミトコンドリアがそこで部分的に精製または単離された緩衝液を指す。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。本発明による無傷ミトコンドリアは単離緩衝液中で単離または部分的に精製され、破壊されたミトコンドリアは、本明細書に記載の方法または当技術分野で公知の任意の他の方法により単離された/部分的に精製された無傷ミトコンドリアから産生されることが理解されるべきである。非限定的例において、単離緩衝液は200mMスクロース、10mM Tris-MOPSおよび1mM EGTAを含む。いくつかの実施形態によれば、BSA(ウシ血清アルブミン)は、部分的精製または単離中に単離緩衝液に添加される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、0.2%BSAは、部分的精製または単離中に単離緩衝液に添加される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、HSA(ヒト血清アルブミン)は、部分的精製または単離中に単離緩衝液に添加される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、0.2%HSAは、部分的精製または単離中に単離緩衝液に添加される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態によれば、HSAまたはBSAは、部分的精製または単離後に、本発明のミトコンドリアから洗い流される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。任意の機構または理論に拘束されることは望まないが、単離緩衝液中でのミトコンドリアの凍結により、凍結前に単離緩衝液を凍結緩衝液と交換するか、または融解時に凍結緩衝液を交換する必要がないため、時間と単離工程が節約される。
【0121】
別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを経たミトコンドリアは、凍結緩衝液中で凍結された。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た無傷ミトコンドリアは、単離緩衝液中で凍結された。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た無傷ミトコンドリアは、単離緩衝液と同じ成分を含む緩衝液中で凍結された。
【0122】
別の実施形態によれば、凍結緩衝液は抗凍結剤を含む。いくつかの実施形態によれば、抗凍結剤は糖、オリゴ糖または多糖である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結緩衝液中の糖の濃度は、ミトコンドリア機能を保持するように作用するのに十分な糖の濃度である。別の実施形態によれば、単離緩衝液は糖を含む。別の実施形態によれば、単離緩衝液中の糖の濃度は、ミトコンドリア機能を保持するように作用するのに十分な糖の濃度である。別の実施形態によれば、単離緩衝液中の糖の濃度は、ミトコンドリアを無傷で保持するように作用するのに十分な糖の濃度である。別の実施形態によれば、凍結緩衝液中の糖の濃度は、ミトコンドリアを無傷で保持するように作用するのに十分な糖の濃度である。別の実施形態によれば、糖はスクロースである。任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、スクロースを含む凍結緩衝液または単離緩衝液中で凍結された無傷ミトコンドリアは、凍結融解サイクルを経ていないか、またはスクロースを含まない凍結緩衝液もしくは単離緩衝液中で凍結された対照ミトコンドリアと比較して、融解後少なくとも同程度の酸素消費量を示す。
【0123】
いくつかの実施形態によれば、破壊されたミトコンドリアは凍結融解サイクルを経た。いくつかの実施形態によれば、本発明によるミトコンドリア成分は凍結融解サイクルを経た。いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た破壊されたミトコンドリアは、凍結緩衝液中で凍結された。いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経たミトコンドリア成分は、凍結緩衝液中で凍結された。いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た破壊されたミトコンドリアは、低張液、例えば、それだけに限らないが、PBS中で凍結された。いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経たミトコンドリア成分は、低張液、例えば、それだけに限らないが、PBS中で凍結された。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た破壊されたミトコンドリアは、単離緩衝液中で凍結された。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを経た破壊されたミトコンドリアは、単離緩衝液と同じ成分を含む緩衝液中で凍結された。いくつかの実施形態によれば、凍結融解サイクルを経たミトコンドリア成分は、単離緩衝液中で凍結された。別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを経たミトコンドリア成分は、単離緩衝液と同じ成分を含む緩衝液中で凍結された。
【0125】
それだけに限らないが局所経路を含む、対象への投与に好適な任意の経路は、本発明の方法に従って用いられ得る。いくつかの実施形態によれば、投与は局所投与である。いくつかの実施形態によれば、組成物は局所投与用に製剤化される。
【0126】
別の実施形態によれば、投与は非経口経路によるものである。いくつかの実施形態によれば、非経口投与のための本発明の組成物の調製物は、滅菌水溶液もしくは非水溶液、懸濁液またはエマルジョンを含み、各々、本発明の別個の実施形態を表す。非水溶媒またはビヒクルの非限定的例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油およびトウモロコシ油、ゼラチンおよび注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルがある。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、非経口投与は、皮内または皮下投与である。上記投与経路は各々、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、非経口投与は、ボーラス注射により行われる。好ましい投与様式は、治療される特定の適応症に依存し、当業者に明らかである。
【0128】
別の実施形態によれば、組成物の局所投与は、注射によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による注射は、頭皮への注射である。注射による投与のために、組成物は、水溶液中で、例えば、それだけに限らないが、ハンクス溶液、リンガー溶液または生理食塩緩衝液を含む生理学的に相溶性の緩衝液中で製剤化され得る。注射用製剤は、任意で添加される保存剤と共に、単位剤形で、例えば、アンプル中、または複数回投与容器中で提供され得る。
【0129】
水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有し得る。任意で、懸濁液は、好適な安定剤、または活性成分の溶解度を増加させて高度に濃縮された溶液の調製を可能にする剤も含有し得る。
【0130】
別の実施形態によれば、注射用に製剤化された組成物は、油性または水性ビヒクル中の溶液、懸濁液、分散液またはエマルジョンの形態であり得、製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含有し得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルの非限定的例としては、脂肪油、例えば、ゴマ油または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドが挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、投与は局所投与である。いくつかの実施形態によれば、組成物は局所投与用に製剤化される。本明細書で使用する用語「局所投与」は、体表への投与を指す。局所使用のための製剤の非限定的例としては、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、フォーム、懸濁液、水溶液または共溶媒溶液、膏薬および噴霧可能な液体形態が挙げられる。本発明の方法での使用に好適な他の好適な局所用製品の形態は、例えば、エマルジョン、ムース、ローション、溶液および血清が挙げられる。
【0132】
局所投与用に製剤化される組成物は、水で洗い流せない(油中水型)クリームまたは水で洗い流せる(水中油型)クリーム、軟膏、ローション、ゲル、懸濁液、水溶液または共溶媒溶液、膏薬、エマルジョン、創傷被覆材、被覆包帯または他のポリマー被覆材、スプレー、エアロゾル、リポソームおよび薬物の局所投与に好適な任意の他の許容される担体を含み得る。
【0133】
当技術分野で周知であるように、組成物の物理化学的特性は、それだけに限らないが、増粘剤、ゲル化剤、湿潤化剤、凝集化剤、懸濁化剤などを含む、様々な賦形剤の添加により操作され得る。これらの任意選択の賦形剤により、投与がより快適または便宜的であり得るように、得られた製剤の物性が決定される。選択された賦形剤は、好ましくは製剤の貯蔵安定性を高めるべきであり、いずれの場合もそれを妨害してはならないことを当業者であれば認識されるであろう。
【0134】
軟膏およびクリームは、例えば、好適な増粘化および/またはゲル化剤の添加された水性または油性基材と共に製剤化され得る。ローションは、水性または油性基材と共に製剤化され得、一般に1つ以上の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘化剤または着色剤も含有する。
【0135】
例えば、クリーム製剤は、活性化合物に加えて(a)疎水性成分、(b)親水性水性成分、および(c)少なくとも1つの乳化剤を含み得る。クリームの疎水性成分は、鉱油、黄色ソフトパラフィン(ワセリン)、白色ソフトパラフィン(ワセリン)、パラフィン(固形パラフィン)、重いパラフィン油、含水羊毛脂(含水ラノリン)、羊毛脂(ラノリン)、羊毛アルコール(ラノリンアルコール)、ペトロラタムおよびラノリンアルコール、蜜蝋、セチルアルコール、アーモンド油、落花生油、ヒマシ油、水素化ヒマシ油ワックス、綿実油、オレイン酸エチル、オリーブ油、ゴマ油およびこれらの混合物からなる群により例証される。クリームの親水性水性成分は、水単独、プロピレングリコールまたはあるいは任意の薬学的に許容される緩衝液または溶液により例証される。乳化剤は、クリームを安定化させ、液滴の合体を防止するためにクリームに添加される。乳化剤は表面張力を低下させ、安定したコヒーレントな界面膜を形成する。好適な乳化剤は、それだけに限らないが、コレステロール、セトステアリルアルコール、羊毛脂(ラノリン)、羊毛アルコール(ラノリンアルコール)、含水羊毛脂(含水ラノリン)およびこれらの混合物からなる群により例証され得る。
【0136】
局所懸濁液は、例えば、活性化合物に加えて(a)水性媒体、および(b)懸濁化剤または増粘剤を含み得る。任意で追加の賦形剤が添加される。好適な懸濁化剤または増粘剤は、それだけに限らないがメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸およびその誘導体、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、トラガカント、ゼラチン、アカシア、ベントナイト、デンプン、微結晶セルロース、ポビドンおよびこれらの混合物からなる群により例証され得る。水性懸濁液は、任意で、追加の賦形剤、例えば、湿潤化剤、凝集化剤、増粘剤などを含有し得る。好適な湿潤化剤は、それだけに限らないがグリセロールポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物、ならびに界面活性剤からなる群により例証される。懸濁液中の湿潤化剤の濃度は、湿潤化剤の実現可能な最低濃度で、懸濁液中での医薬粉末の最適な分散が得られるように選択されるべきである。好適な凝集化剤は、それだけに限らないが電解質、界面活性剤およびポリマーからなる群により例証される。懸濁化剤、湿潤化剤および凝集化剤は、医薬有効剤の安定な懸濁液を形成するのに有効な量で提供される。本明細書で使用する用語「活性化合物」はミトコンドリア、ミトコンドリア成分またはこれらの組み合わせを指す。
【0137】
局所ゲル製剤は、例えば、活性化合物に加えて、少なくとも1つのゲル化剤および酸性化合物を含み得る。好適なゲル化剤は、それだけに限らないが親水性ポリマー、天然および合成ガム、架橋タンパク質およびこれらの混合物からなる群により例証され得る。ポリマーは、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースならびにアミロース、デキストラン、キトサン、プルランおよび他の多糖の同様の誘導体;架橋タンパク質、例えば、アルブミン、ゼラチンおよびコラーゲン;アクリルベースのポリマーゲル、例えば、Carbopol、Eudragitおよびヒドロキシエチルメタクリレートベースのゲルポリマー、ポリウレタンベースのゲル、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0138】
本発明の局所組成物はさらに、溶液として製剤化され得る。このような溶液は、活性化合物に加えて、それだけに限らないが水、緩衝化溶液、有機溶媒、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、グリコフロール、Cremophor、乳酸エチル、乳酸メチル、N-メチルピロリドン、エトキシル化トコフェロールおよびこれらの混合物からなる群に例証される少なくとも1つの共溶媒を含む。
【0139】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は局所投与される。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、それを必要とする対象の頭皮に局所投与される。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による局所投与は、毛包への投与である。別の実施形態によれば、本発明の方法による局所投与は、本発明の組成物が、シャンプー、軟膏、スプレー、ゲルまたは液体として製剤化される場合の投与である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、化粧品製剤として製剤化される。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、局所投与のための化粧品製剤として製剤化される。化粧品製剤の非限定的例としては、それだけに限らないがトニック、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、シャンプー、スプレー(エアロゾルまたはミスト)、コンディショナー、毛染め剤、リンスなどが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、血行促進剤、例えば、それだけに限らないが、セファランチン、塩化カルプロニウム、センブリエキスおよびニンニクエキスを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、局所刺激剤、例えば、それだけに限らないが、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウガチンキ、ノニル酸バニルアミドなどを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の組成物は、化粧品材料、例えば、それだけに限らないが、香料、保湿成分、染料、毛髪軟化成分、毛髪調整成分などを含む。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、それを必要とする対象への投与は、局所、皮下、皮内および組織または器官への直接注射からなる群から選択される経路によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による直接注射による投与は、それを必要とする対象の頭皮への注射である。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、破壊されたミトコンドリアを含む組成物の投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、破壊されたミトコンドリアを含む組成物の投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、破壊されたミトコンドリア、および破壊されたミトコンドリアから放出される少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む組成物の投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、破壊されたミトコンドリア、および破壊されたミトコンドリアから放出される少なくとも1つのミトコンドリア成分を含む組成物の投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、少なくとも1つのミトコンドリア成分の投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、少なくとも1つのミトコンドリア成分の投与によるものである。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、無傷ミトコンドリアの投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、無傷ミトコンドリアの投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、部分的に精製されたミトコンドリアの投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、部分的に精製されたミトコンドリアの投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、単離されたミトコンドリアの投与によるものである。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、単離されたミトコンドリアの投与によるものである。
【0144】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による毛包の治療は、無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアおよび/または少なくとも1つのミトコンドリア成分の投与によるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、本発明の方法による脱毛症に罹患している対象の治療は、無傷ミトコンドリアおよび/または破壊されたミトコンドリアおよび/または少なくとも1つのミトコンドリア成分の投与によるものである。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0145】
本明細書で使用する用語「毛包」は、皮膚内にある発毛器官を指し、毛乳頭細胞、毛包マトリックス、毛根鞘および毛髪繊維を含む。本明細書で使用する毛包の伸長は、毛包の任意の部分、例えば、それだけに限らないが、毛根鞘の伸長に関する。本明細書で使用する用語「毛包成長周期」は、上記の背景技術に開示されているように、本質的に成長期、退行期および休止期相を含む成長周期に関する。
【0146】
本明細書で使用する用語「治療する」、「本発明に従って治療する」、「治療」、「本発明による治療」および「毛包(hair follicles、hair follicle、およびa hair follicle)を治療する」は、互換的であり、毛包の伸長を誘導すること、毛包の伸長を促進すること、毛髪繊維の伸長を誘導すること、毛髪繊維の伸長を促進すること、毛髪繊維の太さを改善すること、毛包内の細胞増殖を誘導すること、毛包内の細胞増殖を促進すること、毛包の矮小化を阻止すること、毛包の矮小化を遅延すること、毛包の矮小化を改善すること、毛包の成長周期相の持続期間を変更することおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの治療に関する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、毛包の成長周期相の持続期間は、成長期相の伸長に関する。
【0147】
いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛包の伸長を誘導することに関する。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛包の伸長を促進することに関する。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛包の伸長を誘導または促進することに関する。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛髪繊維の伸長を誘導することに関する。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛髪繊維の伸長を促進することに関する。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛髪繊維の伸長を含む。本明細書で使用する用語「毛包(hair folliclesおよびhair follicle)内の細胞」は、互換的であり、毛包、例えば、それだけに限らないが、毛乳頭細胞に含まれる細胞に関する。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛乳頭細胞の増殖を誘導することを含む。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療は、毛乳頭細胞の増殖を促進することを含む。いくつかの実施形態によれば、本発明による治療は、毛包内の細胞、例えば、それだけに限らないが、毛乳頭細胞の機能に影響を与えることを含む。
【0148】
任意の理論または機構に拘束されることは望まないが、本発明による毛包の治療は、毛髪成長、毛髪の脱落の予防、毛髪の脱落の減速、毛髪成長速度の増加、毛量の増加、毛髪の太さの改善、毛髪強度の改善またはこれらの組み合わせの少なくとも1つをもたらし得る。
【0149】
本明細書で使用するそれを必要とする対象は、毛包の治療が有益となる疾患または障害に罹患している対象である。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療が有益となる疾患または障害は脱毛症である。いくつかの実施形態によれば、毛包の治療が有益となる疾患または障害は、脱毛、毛髪成長障害、毛髪菲薄化、毛髪成長速度の遅延およびこれらの組み合わせの原因となり得る当技術分野で公知の任意の疾患または障害である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態よれば、毛包の治療が有益となる疾患または障害は、脱毛、毛髪成長障害、毛髪菲薄化、毛髪成長速度の遅延およびこれらの組み合わせからなる群から選択される副作用を引き起こすことが当技術分野で公知の任意の疾患または障害である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態よれば、毛包の治療が有益となる疾患または障害は、脱毛、毛髪成長障害、毛髪菲薄化、毛髪成長速度の遅延およびこれらの組み合わせを誘導する治療方法を有することが当技術分野で公知の任意の疾患または障害である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。毛髪障害を誘発し得る治療方法の非限定的例としては、様々な癌型の治療のための化学療法がある。
【0150】
本明細書で使用する用語「脱毛症」は、それだけに限らないが男性型禿頭症と一般に称されるアンドロゲン性脱毛症を含む、頭部または身体からの脱毛を指す。
【0151】
本明細書で使用する用語「有効量」は、本発明による毛包において所望の効果を得るのに十分な本発明の組成物の量を指す。いくつかの実施形態によれば、有効量は、脱毛症の改善をもたらす本発明の組成物の量である。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、本発明の方法はさらに、少なくとも1つの毛髪成長誘導剤の投与を含む。いくつかの実施形態によれば、本明細書で使用する毛髪成長誘導剤は、毛髪成長に対する効果、例えば、それだけに限らないが、毛髪成長の誘導、毛髪の脱落の予防、毛髪の脱落の減速、毛髪成長速度の増加、毛量の増加、毛髪の太さの改善、毛髪強度の改善またはこれらの組み合わせを有する当技術分野で公知の任意の物質または組成物である。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、毛髪成長誘導剤は、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル、コペキシル、酸化型補酵素Q、還元型補酵素Q、L-カルニチン酒石酸塩、カフェインおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアおよび/または少なくとも1つのミトコンドリア成分は少なくとも1つの毛髪成長誘導剤と共に投与されることに留意されるべきである。しかし、本発明は、公知の毛髪成長誘導剤、例えば、それだけに限らないが、フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジル、コペキシル、酸化型補酵素Q、還元型補酵素Q、L-カルニチン酒石酸塩、カフェインおよびこれらの組み合わせ単独での投与を排除する。
【0154】
以下の実施例は、本発明をより完全に理解するために提供される。本発明の原理を例示するために示された特定の技術、条件、材料、比率および報告されたデータは、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0155】
実施例
実施例1:顕微解剖されたヒト毛包(hHF)は、凍結融解したヒトミトコンドリア組成物の存在下で毛包の伸長を示す。
ミトコンドリアを、以下のプロトコルに従ってヒト満期胎盤から単離した:
1.胎盤を、氷冷IB緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗い流し、血液を除去した。
2.胎盤を5ml IB+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。
3.懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。
4.ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。
5.上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをIB緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。
6.工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。
7.上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。
8.ミトコンドリアペレットを10ml氷冷IB緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。
9.上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのIB緩衝液に再懸濁した。
10.タンパク質含有量をブラッドフォードアッセイで決定した。
【0156】
ミトコンドリアを、2μg/μlの濃度で1.5mlエッペンドルフ管中のIB(200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)中でフラッシュ凍結した。
【0157】
成長期のサブフェイズVI(新しい毛幹が皮膚表面から突出する)の主にヒト毛包(hHF)を含有する頭皮試料を、選択的美容整形術を受けた男性から得た(インフォームドコンセントを得た)。毛包を顕微解剖し、最初に刺激なしでhHF培養培地で1日(0~1日目)培養して、その成長可能性を確認し、このようにして実験に最適な毛包の選択を可能にした。
【0158】
次に、hHFを、5、12.5または50μg/mlの融解したミトコンドリアまたは陽性対照としてシクロスポリンA(公知のhHF成長誘導剤)を補足したhHF培養培地で1日(1~2日目)培養した。12個の毛包を各処理で使用した。5日後に1日(5~6日目)2回目の処理を受けた、5μg/mlのミトコンドリア組成物で処理したhHFを除いて、すべての処理は1回行われた。すべての処理でhHF培養培地を一日おきに交換した。
【0159】
5日目および9日目に、hHFを含有するウェルを撮影し、各毛包の伸長を(ミリメートルで)測定した。ImageJソフトウェア(NIH、USA)で画像分析を行った。
【0160】
図1に示すように、各処理群のhHFの成長率を、(
図1において「ビヒクル」の印を付けた)hHF培地中でインキュベートした未処理のhHFの成長と比較して測定した。融解したミトコンドリアで処理したhHFはすべて、hHF培地中でインキュベートしたhHFと比較して高い成長を示した。12.5μg/mlの融解したミトコンドリアで処理したhHFは高い伸長(19%)を示した。
【0161】
例2:ヒト毛包毛乳頭細胞と新鮮なミトコンドリアとのインキュベーションは高い細胞増殖をもたらす
ヒト毛包毛乳頭細胞(PromoCell)を24ウェルプレート(60,000細胞/ウェル)に播種した。細胞を12.5μg/mlの濃度で5μgのヒト胎盤ミトコンドリアで処理した。ミトコンドリアを凍結融解サイクルなしで実施例1と同様に産生した。24時間のインキュベーション後、培地を交換し、細胞をさらに5日間増殖させた。
【0162】
図2Aから分かるように、細胞数は、ミトコンドリアで処理した細胞中で高かった。当技術分野で公知であるように、ヒト毛包毛乳頭細胞は、VEGF-Aを産生する(Lachgar S.ら、Vascular Endothelial Growth Factor is an autocrine growth factor for hair dermal papilla cells、Journal of Investigative Dermatology、1996、(106):17~23)。
図2Bから分かるように、ミトコンドリアで処理した細胞は、より高い細胞数との相関においてより多くのVEGF-Aを培地に分泌する(VEGF-Aレベルを、R&R Systems製のELISAキットを用いて評価した)。
図2Cから分かるように、クエン酸シンターゼの活性レベルは、ミトコンドリアで3時間処理した細胞において高かった。
【0163】
実施例3:凍結および融解したミトコンドリアは、凍結していないミトコンドリアの酸素消費と同程度の酸素消費を示す。
ミトコンドリアを以下のプロトコルに従ってマウス満期胎盤から単離した:
1.胎盤を、氷冷IB緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗い流し、血液を除去した。
2.胎盤を5ml IB+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。
3.懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。
4.ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。
5.上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをIB緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。
6.工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。
7.上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。
8.ミトコンドリアペレットを10ml氷冷IB緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。
9.上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのIB緩衝液に再懸濁した。
10.タンパク質含有量をブラッドフォードアッセイで決定した。
【0164】
凍結したミトコンドリア対凍結していないミトコンドリアの活性を比較するために、ミトコンドリアを、1.5mlエッペンドルフ管中のIB(200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)中で液体窒素を用いてフラッシュ凍結し、-70℃で30分間保持した。ミトコンドリアを手で急速に融解し、100μgのミトコンドリアによるO
2消費を、MitoXpress蛍光プローブ(Luxcel)およびテカンプレートリーダーを用いて測定した。酸素消費を、25mMコハク酸塩(S)の存在下でまたは25mMコハク酸塩および1.65mM ADP(S+ADP)の存在下で測定した。蛍光の変化を、0時での蛍光レベルと比較して求めた。
図3からは、O
2消費、およびO
2消費量が、(「新鮮」の印を付けた)凍結していないミトコンドリアと比較して、(「凍結」の印を付けた)凍結および融解したミトコンドリアと同程度であったことが分かる。
【0165】
凍結したミトコンドリアとは対照的に、冷却(4℃で4日間保持)したマウス胎盤ミトコンドリアは、新鮮なミトコンドリアよりもATPが少なかった(表1)。
【0166】
【0167】
実施例4:スクロースまたはマンニトール含有緩衝液中でインキュベートした新鮮なジャガイモ由来ミトコンドリア対融解したジャガイモ由来ミトコンドリアにおける酸素消費の比較
ミトコンドリアを、マンニトールを含む緩衝液(0.7mMマンニトール、10mM KPI(pH6.5)、1μM EDTA、2μMシステイン、0.1%脂肪酸不含BSAを補足)またはスクロースを含む単離緩衝液(IB)(200mMスクロース、1mM EGTA/Tris pH7.4、10mM Tris/Mops pH7.4、0.2%脂肪酸不含BSAを補足)中で30gのジャガイモから単離した。簡単に言えば、ジャガイモを4℃で一晩冷却し、小片に切断し、マンニトールまたはスクロース含有緩衝液中(組織:体積1:4の比)でブレンダーを用いて30秒間粉砕した。混合物をチーズクロスを通して濾過し、600g、4℃で10分間遠心分離した。懸濁液を新しい管に移し、8000gで10分間遠心分離した。マンニトール/スクロースで処理した組織のペレットを1ml洗浄緩衝液(0.7Mマンニトール、10mM KPI pH6.5)または単離緩衝液各々で洗浄し、8000g、4℃で10分間遠心分離し、100μl洗浄緩衝液/単離緩衝液に再懸濁した。
【0168】
50μgの新鮮なミトコンドリア、または液体窒素でスナップ凍結させ、液体窒素中で24時間保持し、室温で融解したミトコンドリアの酸素消費を、MitoXpress蛍光プローブ(Luxcel)およびテカンプレートリーダーを用いて、コハク酸塩(S)、コハク酸塩+ADP(S+A)、グルタミン酸塩およびマレイン酸塩(G/M)またはグルタミン酸塩、マレイン酸塩およびADP(G/M+ADP)の存在下で測定した。
【0169】
図4から分かるように、マンニトールを含む緩衝液中でインキュベートした新鮮なミトコンドリア(
図4A)は、スクロースを含む緩衝液中でインキュベートした新鮮なミトコンドリア(
図4B)よりも酸素消費が低く、遅かった。マンニトールを含む緩衝液中で凍結および融解したミトコンドリア(
図4C)は酸素消費を示さなかった。スクロースを含む緩衝液中で凍結および融解したミトコンドリア(
図4D)は、対応する新鮮なミトコンドリア(
図4B)と同程度の酸素消費を示した。
【0170】
実施例5:スクロースまたはマンニトール含有緩衝液中でインキュベートした新鮮なジャガイモ由来ミトコンドリア対融解したジャガイモ由来ミトコンドリアの膜完全性の比較
ミトコンドリアをジャガイモから単離し、実施例4に記載するように処理した。次に、50μgのミトコンドリアホモジネートを7000gで10分間遠心分離し、上清を新しい管に回収し、ペレットを溶解緩衝液に再懸濁した。ミトコンドリア内膜の完全性を評価するために、16μgのミトコンドリア上清および4μgのミトコンドリアペレットを、キットCS0720(Sigma)を用いてクエン酸シンターゼの放出について調査した。
図5は、スクロースまたはマンニトールでインキュベートした、新鮮なミトコンドリアまたは凍結融解サイクル後のミトコンドリアいずれかのクエン酸シンターゼの放出を示している。
図5からは、マンニトール含有緩衝液中で単離および凍結したミトコンドリアは、クエン酸シンターゼの放出により証明されるように膜完全性を低下させたことが分かる。
【0171】
実施例6:単離緩衝液中でインキュベートしたミトコンドリア対PBS中でインキュベートしたミトコンドリアの酸素消費および膜完全性の比較
ミトコンドリアを、単離緩衝液(IB)(200mMスクロース、1mM EGTA/Tris pH7.4、10mM Tris/Mops pH7.4、0.2%脂肪酸不含BSAを補足)を用いてマウス満期胎盤から単離した。ミトコンドリアペレットを、IBに懸濁し、氷上でインキュベートするか、またはPBSに懸濁し、37℃で10分間インキュベートした。インキュベートした50μgのミトコンドリアの酸素消費を、MitoXpress蛍光プローブ(Luxcel)を用いて、コハク酸塩(S)またはコハク酸塩+ADP(S+A)の存在下で測定した。
図6から分かるように、PBSでインキュベートしたミトコンドリア(
図6B)は、非連結ミトコンドリアに相当する酸素消費を示し、IB中でインキュベートしたミトコンドリア(
図6A)は、連結ミトコンドリアに相当する酸素消費を示す。
【0172】
CS0720キット(Sigma)を用いてクエン酸シンターゼの放出を測定することにより、IB中でインキュベートしたミトコンドリアのミトコンドリア内膜完全性を、PBS中でインキュベートしたミトコンドリアの内膜完全性と比較した。
図6Cからは、PBS中でインキュベートしたミトコンドリアは、クエン酸シンターゼの放出により証明されるように膜完全性が低下したことが分かる。
【0173】
実施例7:単離緩衝液中でインキュベートしたミトコンドリア対細胞培養培地中でインキュベートしたミトコンドリアの酸素消費および膜完全性の比較
ミトコンドリアを、単離緩衝液(IB)(200mMスクロース、1mM EGTA/Tris pH7.4、10mM Tris/Mops pH7.4、0.2%脂肪酸不含BSAを補足)を用いてマウス満期胎盤から単離した。ミトコンドリアペレットを、氷上のIB中、またはOptiMEM細胞培地(Gibco;2.5gr/Lグルコース=約13.8mM)のいずれかに37℃で1時間懸濁した。
【0174】
インキュベートした50μgのミトコンドリアの酸素消費を、MitoXpress蛍光プローブ(Luxcel)を用いて、コハク酸塩+ADP(S+A)の存在下で測定した。
図7Aから、培地中でインキュベートしたミトコンドリアは、非連結ミトコンドリアに相当する酸素消費を示し、IB中でインキュベートしたミトコンドリアは、連結ミトコンドリアに相当する酸素消費を示すことが分かる。
【0175】
CS0720キット(Sigma)を用いてクエン酸シンターゼの放出を測定することにより、IB中でインキュベートしたミトコンドリアのミトコンドリア内膜完全性を、培地中でインキュベートしたミトコンドリアのミトコンドリア内膜完全性と比較した。
図7Bからは、培地中でインキュベートしたミトコンドリアは、クエン酸シンターゼの放出により証明されるように膜完全性が低下したことが分かる。
【0176】
実施例8:胎盤ミトコンドリアはプロゲステロンを産生できる。
ミトコンドリアを以下のプロトコルに従ってヒト満期胎盤から単離した。
1.胎盤を、氷冷M1緩衝液(単離緩衝液:200mMスクロース、1mM EGTAおよび10mM Tris-MOPS)+0.2%BSAを用いて洗い流し、血液を除去した。
2.胎盤を5ml M1+0.2%BSA中でハサミを用いて小片に切り刻んだ。
3.懸濁液を10mlガラスポッターに移し、Dounceガラスホモジナイザーを用いて5回の完全な上下サイクルでホモジナイズした。
4.ホモジネートを15ml管に移し、600g、4℃で10分間遠心分離した。
5.上清を清潔な遠心分離管に移し、ペレットをM1緩衝液に再懸濁し、第2の遠心分離工程を行った。
6.工程4および5からの上清を5μmのフィルターを通して濾過し、任意の細胞または大きな細胞残屑を除去した。
7.上清を回収し、7000×gで15分間遠心分離した。
8.ミトコンドリアペレットを10ml氷冷M1緩衝液中で洗浄し、ミトコンドリアを7000×g、4℃で15分間遠心分離することにより回収した。
9.上清を廃棄し、ミトコンドリアを含有するペレットを200μlのM1緩衝液に再懸濁した。
10.タンパク質含有量をブラッドフォードアッセイで決定した。
【0177】
単離されたミトコンドリアの機能性を確認するために、プロゲステロンを産生するその能力を調査した(機能性満期胎盤ミトコンドリアの独特の特徴)。ミトコンドリア(50μg)を200μlのウシ胎児血清中で37℃、5%CO
2で24時間(T24時)インキュベートした。培地へのプロゲステロン分泌レベルをA.M.L.(Herzelia、Israel)でのラジオイムノアッセイ(RIA)により決定した。
図8から分かるように、培地中のプロゲステロンレベルは、T0よりも24時間後に高く、24時間インキュベートしたミトコンドリアはプロゲステロン産生がより高いことを示している。
【0178】
実施例9:ヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)は、新鮮な新芽ミトコンドリア組成物の存在下でATP含有量の増加を示す。
ミトコンドリアを以下のプロトコルに従って新芽から単離した:
1.400gのリョクトウ芽を洗浄し、切り刻んだ。
2.2Lのスクロース緩衝液(250mMスクロース、10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH7.4)中でホモジナイズした。
3.600g、4℃で遠心分離した。
4.5μmカットオフにより濾過した。
5.8000g、4℃で遠心分離した。
6.ペレットを洗浄し、8000g、4℃で遠心分離した。
【0179】
図9から分かるように、ナイーブhFDPC(対照)中のATPレベルは、新芽ミトコンドリア(MNV-PLT)により顕著(p<0.05)に増加する。
【0180】
実施例10:ヒト毛包毛乳頭細胞(hFDPC)は、ヒト胎盤ミトコンドリア組成物の存在下でクエン酸シンターゼ(CS)酵素活性、増殖およびVEGF分泌の増加を示す。
ミトコンドリアを実施例8と同様に産生したが、スクロース緩衝液(250mMスクロース、10mM Tris/HCl、1mM EDTA、pH7.4)を使用した。
図10A~10Cから分かるように、クエン酸シンターゼ(CS)酵素活性、hFDPC増殖およびhFDPC VEGF分泌はすべて、ヒト胎盤ミトコンドリア組成物の存在下ですべて顕著(p<0.05)に増加する。
【0181】
実施例11:ヒト皮膚は、新鮮な新芽ミトコンドリア組成物の存在下でUV-BおよびROSから保護される。
ミトコンドリアを実施例9と同様に産生した。
図11A~11Dから分かるように、UV-B放射は、皮膚細胞内でROS(
図11Aおよび
図11B)およびIL-1α(
図11Cおよび
図11D)の産生を増加させるが、新芽ミトコンドリアは、細胞の培地に添加された場合(
図11Aおよび
図11C)および細胞に局所適用された場合(
図11Bおよび
図11D)の両方でこれらの作用を顕著(p<0.05)に低減することができた。
【0182】
実施例12:ピアソン症候群に罹患している7歳の少年における毛髪の活力の改善
mtDNA中のヌクレオチド5835~9753の欠失を有する7歳の男性患者は、ピアソン症候群と診断された。患者は、患者の母親由来の健康なミトコンドリアでエクスビボで富化された自己CD34+細胞による単一ラウンドの治療を受けた。ナイーブCD34+細胞を健康なミトコンドリアとインキュベートすることにより、CD34+細胞を調製すると、細胞のミトコンドリア含有量が1.6倍増となった(CS活性により実証されるようにミトコンドリア含有量で60%増)。意外にも、単一ラウンドの治療しか受けなかったにも関わらず、患者において毛髪の脱落が阻止され、驚くべきことに、頭部で十分な毛髪が再生された。
【0183】
特定の実施形態の前記の説明は、本発明の一般的性質を完全に明らかにするので、当業者は既存の知識を適用することにより、過度の実験をせずに、一般的概念から逸脱することなく、このような特定の実施形態を様々な用途に対して容易に修正および/または適合することができるので、このような適合および修正は開示された実施形態の均等物の意味および範囲内にあると理解されるべきであり、理解されることが意図される。本明細書で採用する表現または用語は、説明を目的としており、限定のためのものではないことが理解されるべきである。様々な開示された機能を実行するための手段、材料および工程は、本発明から逸脱することなく様々な代替形態を取り得る。