(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】熱処理炉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/24 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
F27B9/24 R
(21)【出願番号】P 2019564629
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047895
(87)【国際公開番号】W WO2019138888
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-05-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018002942
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 豊
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】山本 佳
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-346652号公報(JP,A)
【文献】実開平02-022356号(JP,U)
【文献】特開2001-174165号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B9/00-9/40
B65G13/00-13/12
B65G39/00-39/20
H01M4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を熱処理する熱処理炉であって、
前記被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、
前記熱処理部に配置され、前記被処理物を搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラを駆動する1又は複数の駆動装置と、を備えており、
前記熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、当該搬送ローラを軸方向に沿って見たときの当該搬送ローラの反りが最も大きくなる部位の反り方向が周期的に変化すると共に、隣接する搬送ローラの反り方向に対して90度又は180度の特定の角度だけずれており、
前記搬送ローラは、水平かつ搬送方向である第1方向と垂直な第2方向に複数の被処理物を並べて載置可能であ
ると共に、前記搬送方向に複数の被処理物を並べて載置可能であり、
前記搬送ローラは、前記被処理物の1つを前記搬送ローラに載置したときに前記被処理物の下方に位置する前記搬送ローラの数が4本以上となるように配置されており、
前記搬送ローラの反りが最も大きくなる部位は、当該搬送ローラの一端側に配置される被処理物の前記一端側の端部付近の部位と、当該搬送ローラの他端側に配置される被処理物の前記他端側の端部付近の部位と、隣接する被処理物の境界付近の部位と、当該搬送ローラの軸方向の中央付近の部位と、からなる複数の部位でそれぞれ反りの大きさを測定し、前記複数の部位のうち測定された前記反りの大きさが最も大きい部位であり、
前記所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、前記1又は複数の駆動装置のうち特定の駆動装置に接続される複数の搬送ローラの全てである、熱処理炉。
【請求項2】
前記熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、所定数の搬送ローラによって1周期が構成されており、
前記1周期を構成する各搬送ローラの反り方向は、当該搬送ローラと隣接する搬送ローラの反り方向に対して前記特定の角度ずれている、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記特定の駆動装置は、前記搬送ローラの前記反り方向が隣接する搬送ローラの前記反り方向と前記特定の角度ずれた状態を維持して、前記所定範囲に設置される複数の搬送ローラを駆動する、請求項2に記載の熱処理炉。
【請求項4】
被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、
前記熱処理部に配置され、前記被処理物を搬送する複数の搬送ローラと、
前記複数の搬送ローラを駆動する1又は複数の駆動装置と、を備える熱処理炉の製造方法であって、
前記熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラのそれぞれについて、当該搬送ローラを軸方向に沿って見たときに当該搬送ローラの反りが最も大きくなる部位の反り方向を測定する測定工程と、
前記熱処理部の所定範囲については、測定した反り方向が周期的に変化すると共に、隣接する搬送ローラの反り方向に対して90度又は180度の特定の角度だけずれるように前記搬送ローラを設置する設置工程と、を備え、
前記搬送ローラは、水平かつ搬送方向である第1方向と垂直な第2方向に複数の被処理物を並べて載置可能であ
ると共に、前記搬送方向に複数の被処理物を並べて載置可能であり、
前前記搬送ローラは、前記被処理物の1つを前記搬送ローラに載置したときに前記被処理物の下方に位置する前記搬送ローラの数が4本以上となるように配置されており、
前記測定工程は、
当該搬送ローラの一端側に配置される被処理物の前記一端側の端部付近の部位と、当該搬送ローラの他端側に配置される被処理物の前記他端側の端部付近の部位と、隣接する被処理物の境界付近の部位と、当該搬送ローラの軸方向の中央付近の部位と、からなる複数の部位でそれぞれ反りの大きさを測定する反り測定工程と、
前記複数の部位のうち測定された前記反りの大きさが最も大きい部位を、当該搬送ローラの反りが最も大きくなる部位と特定する特定工程と、を備え、
前記所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、前記1又は複数の駆動装置のうち特定の駆動装置に接続される複数の搬送ローラの全てである、熱処理炉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物を熱処理する熱処理炉及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。この種の熱処理炉は、複数の搬送ローラを備えており、搬送ローラに被処理物を載置した状態で搬送ローラを回転させることによって被処理物を搬送する。例えば、特開2015-64189号公報には、熱処理炉の一例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の熱処理炉では、生産性を高くするため、搬送ローラ上に搬送方向(以下、第1方向ともいう)と垂直かつ水平な方向(以下、第2方向ともいう)に複数の被処理物を並べて載置し、これら複数の被処理物を同時に搬送することがある。このような場合には、複数の被処理物は第2方向に並んだ状態で同時に熱処理炉内に搬入される。そして、複数の被処理物は、搬送ローラによって熱処理炉内を搬送され、熱処理炉から搬出される。第2方向に並べて配置された複数の被処理物は、同一の搬送ローラを用いて搬送されるため、理想的には熱処理炉から同時に搬出されるはずである。しかしながら、被処理物の重量によって生じる撓み等によって、搬送ローラ内のどの位置に被処理物を載置したかによって搬送速度に差が生じる。これにより、第2方向に並べて載置された複数の被処理物が熱処理炉から同時に搬出されないという問題が生じ得る。この問題は、特に被処理物の搬送距離が長い熱処理炉において顕著となる。
【0004】
本明細書は、水平かつ搬送方向と垂直な方向(第2方向)に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度の差を小さくする技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する熱処理炉は、被処理物を熱処理する。熱処理炉は、被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、熱処理部に配置され、被処理物を搬送する複数の搬送ローラと、を備えている。熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、当該搬送ローラを軸方向に沿って見たときの当該搬送ローラの反りが最も大きくなる部位の反り方向が周期的に変化している。
【0006】
上記の熱処理炉は、熱処理部の所定範囲において搬送ローラの反り方向を周期的に変化させることによって、水平かつ搬送方向と垂直な方向(第2方向)に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度を調整することができる。このため、被処理物を搬送ローラのどの位置(第2方向の位置)に載置したかによって生じる搬送速度の差を小さくすることができる。
【0007】
また、本明細書に開示する熱処理炉の製造方法では、被処理物を熱処理する空間を備える熱処理部と、熱処理部に配置され、被処理物を搬送する複数の搬送ローラと、を備える熱処理炉を製造する。当該熱処理炉の製造方法は、熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラのそれぞれについて、当該搬送ローラを軸方向に沿って見たときに当該搬送ローラの反りが最も大きくなる部位の反り方向を測定する測定工程と、熱処理部の所定範囲については、測定した反り方向が周期的に変化するように搬送ローラを設置する設置工程と、を備える。
【0008】
上記の熱処理炉の製造方法では、熱処理部の所定範囲において、測定した反り方向が周期的に変化するように搬送ローラを設置する。このため、第2方向に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度を調整することができ、被処理物を搬送ローラのどの位置に載置したかによって生じる搬送速度の差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る熱処理炉の概略構成を示す図であり、被処理物の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
【
図3】搬送ローラの反りの大きさ及び反り方向を測定する部位を示す図。
【
図4】搬送ローラの反り方向を調整した状態を模式的に示す図であって、(a)は隣接する搬送ローラの反り方向を90°ずつずらした状態を示し、(b)は隣接する搬送ローラの反り方向を180°ずつずらした状態を示す。
【
図5】搬送ローラの撓みが大きい場合の被処理物の搬送を説明するための図であって、(a)は搬送ローラの中央に載置される被処理物の載置状態を示しており、(b)は搬送ローラの端部に載置される被処理物の載置状態を示している。
【
図6】搬送ローラの撓みが大きい場合に、隣接する搬送ローラの反り方向を90°ずつずらした状態の搬送ローラと搬送ローラの端部に載置される被処理物を模式的に示す図であって、(a)~(d)は搬送ローラを90°ずつ回転させた状態を示す。
【
図7】搬送ローラの撓みが大きい場合に、隣接する搬送ローラの反り方向を180°ずつずらした状態の搬送ローラと搬送ローラの端部に載置される被処理物を模式的に示す図であって、(a)~(d)は搬送ローラを90°ずつ回転させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1)本明細書が開示する熱処理炉では、熱処理部の所定範囲に設置される複数の搬送ローラは、所定数の搬送ローラによって1周期が構成されていてもよい。1周期を構成する各搬送ローラの反り方向は、当該搬送ローラと隣接する搬送ローラの反り方向に対して所定角度ずれていてもよい。このような構成によると、水平かつ搬送方向と垂直な方向(第2方向)に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度を好適に調整することができる。特に、搬送ローラの端部側に載置される被処理物の搬送速度が中央付近に載置される被処理物より速い場合に、第2方向に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度の差を小さくすることができる。
【0012】
(特徴2)本明細書が開示する熱処理炉は、所定範囲に設置される複数の搬送ローラを同時に駆動可能な駆動装置をさらに備えていてもよい。駆動装置は、搬送ローラの反り方向が隣接する搬送ローラの反り方向と所定角度ずれた状態を維持して、所定範囲に設置される複数の搬送ローラを駆動してもよい。このような構成によると、駆動装置によって所定範囲に設置される複数の搬送ローラを同時に駆動することによって、所定範囲に設置される複数の搬送ローラの反り角度が隣接する搬送ローラの反り角度と所定角度ずれた状態を維持することができる。このため、第2方向に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度を調整した状態を維持することができる。
【0013】
(特徴3)本明細書が開示する熱処理炉では、所定角度は90度であってもよい。このような構成によると、搬送ローラの撓み量に合わせて、第2方向に並べて搬送される複数の被処理物の搬送速度を好適に調整することができる。特に、搬送ローラに被処理物を載置したときの搬送ローラの撓み量が小さい場合に、第2方向に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度の差を小さくすることができる。
【0014】
(特徴4)本明細書が開示する熱処理炉では、所定角度は180度であってもよい。このような構成によると、搬送ローラの撓み量に合わせて、第2方向に並べて搬送される複数の被処理物の搬送速度を好適に調整することができる。特に、搬送ローラに被処理物を載置したときの搬送ローラの撓み量が大きい場合に、第2方向に並べて載置される複数の被処理物の搬送速度の差を小さくすることができる。
【実施例】
【0015】
以下、実施例に係る熱処理炉10について説明する。
図1に示すように、熱処理炉10は、熱処理部20と、搬入部34と、搬出部40と、搬送装置50を備えている。熱処理炉10は、搬送装置50によって被処理物12が熱処理部20内を搬送される間に、被処理物12を熱処理する。
【0016】
被処理物12としては、例えば、セラミックス製の誘電体(基材)と電極とを積層した積層体や、リチウムイオン電池の正極材や負極材等が挙げられる。熱処理炉10を用いてセラミック製の積層体を熱処理する場合には、これらを平板状のセッタに載置して炉内を搬送することができる。また、熱処理炉10を用いてリチウムイオン電池の正極材や負極材を熱処理する場合には、これらを箱状の匣鉢に収容して炉内を搬送することができる。本実施例の熱処理炉10では、搬送ローラ52(後述)上に複数のセッタや匣鉢を搬送方向に並んだ状態で載置して搬送することができる。以下、本実施例においては、熱処理する物質と、その熱処理する物質を載置したセッタや収容した匣鉢を合わせた全体を「被処理物12」という。また、以下の説明では、被処理物12を搬送する方向(
図1のYZ平面に垂直な方向)を「搬送方向」又は「第1方向」と称することがあり、水平かつ第1方向に垂直な方向(
図1のXZ平面に垂直な方向)を「第2方向」と称することがある。
【0017】
熱処理部20は、略直方形の箱型の炉体を備えており、炉体の内部には周囲を外壁22で囲まれた空間24が設けられている。外壁22の前端面(
図1の-X側の端面)には、開口26が形成されており、外壁22の後端面(
図1の+X側の端面)には、開口28が形成されている。被処理物12は、搬送装置50によって開口26から熱処理部20内に搬送され、開口28から熱処理部20外へ搬送される。すなわち、開口26は熱処理部20の搬入口として用いられ、開口28は熱処理部20の搬出口として用いられる。
【0018】
空間24には、複数の搬送ローラ52と、複数のヒータ30、32が配置されている。ヒータ30は、搬送ローラ52の上方の位置に搬送方向に等間隔で配置され、ヒータ32は搬送ローラ52の下方の位置に搬送方向に等間隔で配置されている。ヒータ30,32が発熱することで、空間24内が加熱される。なお、本実施例では、ヒータ30、32はそれぞれ搬送方向に等間隔で配置されているが、このような構成に限定されない。ヒータは、例えば、被処理物12の種類や熱処理部20の熱処理の条件等に合わせて、所望の位置に適宜変更して配置してもよい。また、本実施例では、空間24内にヒータ30、32を配置しているが、このような構成に限定されない。空間24内を加熱できればよく、例えば、空間24内にガスバーナー等を設置してもよい。
【0019】
図2に示すように、熱処理部20では、被処理物12は第2方向に複数並べて搬送される。本実施例では、熱処理部20(すなわち、熱処理炉10全体)において、3つの被処理物12を第2方向に並べて搬送する。このため、本実施例では、熱処理部20の第2方向の寸法は、被処理物12を第2方向に3つ並べた寸法より大きくされているが、熱処理部20の第2方向の寸法は、特に限定されない。熱処理部20の第2方向の寸法は、被処理物12を第2方向に3つより多く並べて搬送可能な大きさであってもよい。また、熱処理部20の搬送方向の寸法は、約100mと比較的大きくなっているが、熱処理部20の搬送方向の寸法は、特に限定されない。例えば、熱処理部20の搬送方向の寸法は、100mより小さくてもよく、30m~100mであってもよいし、100mより大きくてもよい。なお、以下の説明では、被処理物12が第2方向に複数並んでいる場合の第2方向の中央側を「内側」と称し、第2方向の中央に対して端部側(+Y方向及び-Y方向)を「外側」と称することがある。なお、被処理物12は、所定の間隔を空けて熱処理部20に連続して搬入される。このため、被処理物12は、第2方向だけでなく搬送方向にも並んで配置されていることになる。
【0020】
なお、
図2に示すように、本実施例では、第2方向に並べて載置する3つの被処理物12のうち、第2方向の+Y方向側に載置されるものを被処理物12aとし、第2方向の中央(内側)に載置されるものを被処理物12bとし、第2方向の-Y方向側に載置されるものを被処理物12cとして区別している。以下、他の構成要素についても、その構成要素を区別する必要があるときは沿字のアルファベットを用いて記載し、その構成要素を区別する必要がないときは沿字のアルファベットを省略して単に数字で記載することがある。
【0021】
搬入部34は、熱処理部20の上流側(すなわち、搬送方向の上流側であり、
図1では熱処理部20の-X方向)に位置している。搬入部34は、熱処理炉10の外部から運ばれる被処理物12を受け取り、受け取った被処理物12を熱処理部20の空間24内に搬入する。搬入部34には、搬送ローラ52が設置されており、熱処理炉10の外部から運ばれた被処理物12を搬送ローラ52によって搬送する。
【0022】
搬出部40は、熱処理部20の下流側(すなわち、搬送方向の下流側であり、
図1では熱処理部20の+X方向)に位置している。搬出部40は、熱処理部20の空間24から被処理物12を搬出し、搬出された被処理物12を熱処理炉10の外部に受け渡す。搬出部40には、搬送ローラ52が設置されており、被処理物12を搬送ローラ52によって空間24外に搬送する。
【0023】
搬送装置50は、複数の搬送ローラ52と、駆動装置60と、制御装置62を備えている。搬送装置50は、搬入部34に運ばれた被処理物12を、搬入部34から開口26を通って熱処理部20の空間24内に搬送する。さらに、搬送装置50は、空間24内において、開口26から開口28まで被処理物12を搬送する。そして、搬送装置50は、空間24から開口28を通って搬出部40まで被処理物12を搬送する。被処理物12は、搬送ローラ52によって搬入部34から搬出部40まで搬送される。
【0024】
搬送ローラ52は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に伸びている。複数の搬送ローラ52は、全て同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。なお、熱処理部20に設置される搬送ローラの直径は、搬入部34及び搬出部40に設置される搬送ローラと異なる直径であってもよい。また、熱処理部20に設置される搬送ローラ52は、搬入部34及び搬出部40に設置される搬送ローラ52と異なるピッチで配置されてもよい。搬送ローラ52は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置60の駆動力が伝達されることによって回転する。搬送ローラ52は、熱処理部20、搬入部34及び搬出部40に複数配置されている。搬送ローラ52の軸線方向の寸法は、熱処理部20の第2方向の寸法より大きい(
図2参照)。
【0025】
熱処理部20に配置される複数の搬送ローラ52は、各搬送ローラ52を軸方向(すなわち、第2方向又はY方向)に沿って見たときに、搬送ローラ52の軸方向の複数の部位のうち反りが最も大きくなる部位の反り方向(以下、搬送ローラ52の反り方向ともいう)を調整して設置されている。搬送ローラ52の軸方向の複数の部位としては、例えば、搬送ローラ52の中心付近の部位と、搬送ローラ52に複数の被処理物12を第2方向に並べて載置するときに、各被処理物12の第2方向の端部と搬送ローラ52が接触する部位の近傍の部位を採用することができる。本実施例では、
図3に示すように、搬送ローラ52に3つの被処理物12a~12cを第2方向に並べて載置するため、被処理物12aの端部側(+Y方向側)の端部付近を部位Aとし、被処理物12aと被処理物12bの境界付近を部位Bとし、搬送ローラ52の軸方向の中央付近を部位Cとし、被処理物12bと被処理物12cの境界付近を部位Dとし、被処理物12cの端部側(-Y方向側)の端部付近を部位Eとしている。このため、本実施例では、搬送ローラ52の軸方向の5つの部位A~Eのうち、反りが最も大きい部位の反り方向を、搬送ローラ52の反り方向としている。なお、本実施例では、搬送ローラ52の軸方向の5つの部位A~Eの反り方向から搬送ローラ52の反り方向を設定しているが、このような構成に限定されない。搬送ローラ52の反り方向は、搬送ローラ52の軸方向の5つより多くの部位の反り方向に基づいて設定してもよいし、5つより少ない部位の反り方向に基づいて設定してもよい。また、搬送ローラ52に載置される被処理物12の位置とは無関係に軸方向の複数の部位を設定してもよい。
【0026】
本実施例では、熱処理部20に配置される搬送ローラ52の反り方向は、搬送ローラ52に被処理物12を載置した際に生じる搬送ローラ52の撓み量に基づいて異なる態様で調整される。詳細には、搬送ローラ52の反り方向が周期的に変化するように設置される。すなわち、搬送ローラ52は、隣接する搬送ローラ52の反り方向に対して所定角度ずれた状態で配置される。具体的には、搬送ローラ52の撓み量が大きい場合には、隣接する搬送ローラ52の反り方向を180°ずらして配置される。また、搬送ローラ52の撓み量が比較的小さい場合には、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずらして配置される。このように配置することによって、第2方向に並べて載置した複数の被処理物12a~12cの熱処理部20での搬送速度の差を小さくすることができる。
【0027】
駆動装置60(
図1参照)は、搬送ローラ52を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置60は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ52に接続されている。駆動装置60の駆動力が動力伝達機構を介して搬送ローラ52に伝達されると、搬送ローラ52は回転するようになっている。動力伝達機構としては、公知のものを用いることができ、例えば、スプロケットとチェーンによる機構が用いられている。駆動装置60は、搬送ローラ52が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ52のそれぞれを駆動する。駆動装置60は、制御装置62によって制御されている。
【0028】
複数の搬送ローラ52は、駆動装置60の駆動力が伝達されることによって回転する。本実施例では、同一の駆動装置60に接続される複数の搬送ローラ52は、同時かつ同一の速度で回転する。したがって、上述したように搬送ローラ52の反り方向が調整された複数の搬送ローラ52は、調整された反り方向を維持した状態で回転する。なお、熱処理部20に設置された搬送ローラ52は、同時かつ同一の速度で回転することが好ましいため、1つの駆動装置60に接続されていると好ましい。しかしながら、本実施例の熱処理炉10のように、熱処理部20の搬送方向の距離が比較的長いと、1つの駆動装置60によって熱処理部20に設置される全ての搬送ローラ52を回転させることが難しい。このような場合は、接続される各搬送ローラ52に同一の駆動力を発生させる複数の駆動装置60を設置し、熱処理部20に設置される全ての搬送ローラ52が同一の駆動力で駆動されるように、熱処理部20に設置される搬送ローラ52を分割して複数の駆動装置60に接続する。これにより、熱処理部20に設置される全ての搬送ローラ52は、同一の駆動力及び同一の速度で回転させることができる。このとき、異なる駆動装置60に接続される搬送ローラ52は、回転のタイミングがずれることがあり、異なる駆動装置60に接続される搬送ローラ52間(すなわち、境界における搬送ローラ52間)においては、調整された反り方向を維持できない場合がある。このような場合であっても、同一の駆動装置60に接続される搬送ローラ52は調整された反り方向を維持することができるため、第2方向に並べて載置した複数の被処理物12a~12cの熱処理部20での搬送速度の差を小さくすることができる。なお、搬入部34及び搬出部40に設置される搬送ローラ52は、熱処理部20に設置される搬送ローラ52を駆動する駆動装置60と異なる駆動力を発生させる駆動装置に接続されていてもよく、熱処理部20に設置される搬送ローラ52と異なる速度で回転するように構成されていてもよい。
【0029】
次に、
図3及び
図4を参照して、熱処理炉10の製造方法について説明する。なお、本実施例では、搬送ローラ52の反り方向を測定する工程と、熱処理部20に搬送ローラ52を配置する工程に特徴があり、その他の工程については従来公知の工程を用いることができる。このため、以下では、本実施例の特徴部分のみを説明し、その他の工程については説明を省略する。
【0030】
本実施例の熱処理炉10の製造方法は、搬送ローラ52を軸方向に沿って見たときに搬送ローラ52の反りが最も大きくなる部位の反り方向を測定する測定工程と、測定した反り方向が周期的に変化するように搬送ローラ52を設置する設置工程を備えている。
【0031】
まず、測定工程によって、複数の搬送ローラ52のそれぞれについて、搬送ローラ52の反りが最も大きくなる部位の反り方向が測定される。測定工程は、以下の手順で実施される。まず、搬送ローラ52の両端を回転可能に支持する。例えば、搬送ローラ52の両端を2つのV字ブロックを用いて支持する。
【0032】
次いで、搬送ローラ52の軸方向の各部位A~Eの反りの大きさを、測定器、例えば、ダイヤルゲージを用いて測定する。具体的には、部位Aにダイヤルゲージを設置し、搬送ローラ52を軸線周り一回転させ、搬送ローラ52が最も上方に位置するときと搬送ローラ52に反りがない状態との差(以下、反りの大きさともいう)を測定する。部位B~Eについても、これと同様の測定を行う。各部位A~Eの反りの大きさを測定したら、5つの部位A~Eの測定結果を比較し、反りの大きさが最も大きい部位を判定する。そして、反りの大きさが最も大きい部位の反り方向を示すマーク54(
図4参照)を、搬送ローラ52の軸方向の端面に付す。同様にして、熱処理部20に設置される全ての搬送ローラ52の反り方向を測定し、各搬送ローラ52の軸方向の端面に搬送ローラ52の反り方向を示すマーク54を付す。
【0033】
マーク54が付された搬送ローラ52は、設置工程によって熱処理部20に設置される。搬送ローラ52を熱処理炉10に設置する際には、上記の測定工程において各搬送ローラ52に付されたマーク54に基づいて、各搬送ローラ52の反り方向を調整しながら設置する。なお、本実施例では、各搬送ローラ52の反り方向を調整しながら設置する点に特徴があり、設置工程のその他の手順については、従来公知の方法を用いることができるため、設置工程のその他の手順についての詳細な説明は省略する。
【0034】
上述したように、熱処理部20に設置される搬送ローラ52は反り方向に基づいて設置されるが、その設置態様は搬送ローラ52に被処理物12を載置した際に生じる搬送ローラ52の撓み量によって異なる。このため、熱処理される被処理物12の重量によって、各搬送ローラ52を設置する際に調整される搬送ローラ52の反り方向が異なる。具体的には、撓み量が大きい場合には、搬送ローラ52の反り方向を、隣接する搬送ローラ52の反り方向と180°ずらして各搬送ローラ52を設置する(
図4(b))。また、撓み量が小さい場合には、搬送ローラ52の反り方向を、隣接する搬送ローラ52の反り方向と90°ずらして各搬送ローラ52を設置する(
図4(a))。
【0035】
次に、被処理物12を熱処理する際の熱処理炉10の動作について説明する。被処理物12を熱処理するためには、まず、ヒータ30、32を作動させて、空間24の雰囲気温度を設定した温度とする。次いで、3つの被処理物12を、熱処理炉10の外部から搬入部34に設置される搬送ローラ52上にそれぞれ移動させる。このとき、被処理物12は第2方向に3つ並べて載置される。次いで、駆動装置60を作動させて、搬入部34から開口26を通って、第2方向に並べた3つの被処理物12を熱処理部20の空間24内に搬送する。空間24内に搬送された被処理物12は、空間24内を開口26から開口28まで搬送される。これによって、被処理物12は熱処理される。そして、熱処理された被処理物12は、開口28を通って搬出部40に搬送され、搬出部40から運び出される。
【0036】
被処理物12は、搬入部34から熱処理部20を通って搬出部40まで、第2方向に複数(本実施例では3つ)並べた状態で搬送される。しかしながら、熱処理部20の入口において複数の被処理物12を搬送方向に揃えた状態で搬入しても、熱処理部20を搬送される間に複数の被処理物12のそれぞれの搬送速度にずれが生じ、熱処理部20から搬出される際には、複数の被処理物12が搬送方向にずれた状態となる。このずれは、搬送ローラ52の製造時に生じる反り等の歪みや、被処理物12の重量によって搬送ローラ52に被処理物12を載置した際に搬送ローラ52に生じる撓みによって生じる。経験的に、特に、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きい場合、搬送ローラ52の外側(端部側)に載置される被処理物12の搬送速度が、搬送ローラ52の内側(中央)に載置される被処理物12の搬送速度より速くなり易いことがわかっている。これは、以下のような理由によって生じると考えられる。
【0037】
搬送ローラ52は、製造時に反りや歪みが生じるため、熱処理炉10に設置される全ての搬送ローラ52を完全に同一の形状にすることができない。搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きい場合、搬送ローラ52の「撓み」によって「反り」の影響はキャンセルされるが、搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響により、搬送ローラ52の外側(端部側)に載置される被処理物12の搬送速度が、搬送ローラ52の内側(中央)に載置される被処理物12の搬送速度より速くなり易い。
【0038】
図5を用いて説明する。
図5は、6本の搬送ローラ52に載置される被処理物12を模式的に示している。6本の搬送ローラ52は、搬送方向の上流から下流に(+X方向に)搬送ローラ52a~52fの順に並んでいる。また、6本の搬送ローラ52a~52fは、搬送ローラ52a、52c、52eの径寸法が大きく、搬送ローラ52b、52d、52fの径寸法が小さくなっている。なお、
図5では径寸法の相違を明確にするため、搬送ローラ52a、52c、52eと搬送ローラ52b、52d、52fの径寸法の相違を強調して表示している。
【0039】
ここで、搬送ローラ52は両端支持されているため、その「撓み」は中央で大きく、端部で小さくなる。搬送ローラ52の「撓み」が小さければ、被処理物12は径寸法の大きな搬送ローラ52のみに接触することになる。一方、搬送ローラ52の「撓み」が大きければ、被処理物12は径寸法の大きな搬送ローラ52を大きく撓ませ、その結果、径寸法の小さな搬送ローラ52にも接触することになる。
【0040】
図5(a)に示すように、搬送ローラ52の中央付近では搬送ローラ52a、52c、52eの撓みが大きいため、被処理物12bが他の搬送ローラ52b、52d、52fにも接触した状態となる。すなわち、被処理物12bは全ての搬送ローラ52a~52fと接触することになる。一方、
図5(b)に示すように、搬送ローラ52の端部では搬送ローラ52a、52c、52eの撓みが小さいため、被処理物12a、12cが搬送ローラ52b、52d、52fとは接触しない状態が生じる。したがって、搬送ローラ52の端部では、回転半径の大きな搬送ローラ52a、52c、52eのみによって被処理物12a,12cが搬送される状態となり、その結果、被処理物12a,12cの搬送速度が速くなる。一方、
図5(a)に示す状態では、搬送ローラ52a、52c、52eの撓みが大きいため、被処理物12bが全ての搬送ローラ52a~52fに接触し、搬送ローラ52a~52fの径寸法の影響を低減する。その結果、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12の搬送速度は、外側(端部側)に載置される被処理物12の搬送速度より遅くなる。
【0041】
このように、被処理物12は、搬送ローラ52の反り、撓み、径寸法のバラツキによって搬送速度が変わる。このため、第2方向に並べた複数の被処理物12は、被処理物12が熱処理部20を搬送される間に搬送方向にずれることがある。特に、上述したように、本実施例の熱処理炉10は熱処理部20の搬送方向の寸法が比較的長いため、第2方向に並べて搬送される複数の被処理物12は搬送方向にずれ易い。搬出部40で複数の被処理物12が第2方向に揃っていないと、熱処理炉10の外部へ複数の被処理物12を運び出し難くなる。そこで、第2方向に並べて載置した複数の被処理物12a~12cの熱処理部20での搬送速度の差が小さくなるように、搬送ローラ52の反り方向を調整する。以下に、熱処理部20に設置される搬送ローラ52の反り方向の調整について、さらに詳細に説明する。
【0042】
上述したように、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きい場合、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度が、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度より速くなり易い。これは、
図5を参照して既に説明したように、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bは、搬送ローラ52の反りの影響も搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響も受け難い一方で、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cは、搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響を受け易いためと考えられる。
【0043】
被処理物12の重量が重い場合には、搬送ローラ52の中央付近において搬送ローラ52の撓みが大きくなるため、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bは6本の搬送ローラ52の全てと接触する。このため、被処理物12bは、搬送ローラ52の反り方向に関わらず、常に
図5(a)に示すような状態となる。したがって、被処理物12bは、搬送ローラ52の反りの影響も搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響も受け難くなり、被処理物12bの搬送速度を調整することは難しい。このため、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度と、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度の差を小さくするためには、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度を調整する必要がある。すなわち、被処理物12a、12cの搬送速度が速くなることを抑制する必要がある。
【0044】
搬送ローラ52の端部では搬送ローラ52の撓みが小さくなるため、被処理物12a、12cは、6本の搬送ローラ52の全てとは接触しない状態になり易い。例えば、
図6に示すように、反りによって最も上方に位置する搬送ローラ52(
図6では仮想線で示す搬送ローラ52)は撓みによって下方に押し付けられるが、反りによって最も下方に位置する搬送ローラ52の位置まで搬送ローラ52が撓むことはほとんどない。このため、反りによって最も下方に位置する搬送ローラ52には被処理物12が接触し難い。しかしながら、
図6(a)~
図6(d)に示すように、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置した場合には、搬送ローラ52を90°ずつ回転させた4つのいずれの場合においても、被処理物12a、12cは、6本の搬送ローラ52のうち比較的多くの搬送ローラ52(
図6の例では、4本又は5本の搬送ローラ52)と接触する。このため、被処理物12が比較的に多くの搬送ローラ52と接触すると、搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響が強くなる。その結果、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置した場合は、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度は速くなり易くなる。
【0045】
一方、
図7(a)~
図7(d)に示すように、隣接する搬送ローラ52の反り方向を180°ずつずらして配置した場合には、搬送ローラ52を90°ずつ回転させた4つの場合のうちの半分(
図7(a)と
図7(c)のとき)では、被処理物12a、12cは、6本の搬送ローラ52のうち比較的に少ない数の搬送ローラ52(
図7では3本の搬送ローラ52)と接触する。このため、
図7(a)と
図7(c)のときには、被処理物12a、12cが接触する搬送ローラ52の数が比較的少なくなり、搬送態様が変化する。本発明者の実験によると、
図6に示す場合と比較して
図7に示す場合のほうが、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cが速く搬送されることが抑制され、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12の搬送速度と、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12の搬送速度の差を小さくできることが確認されている。
【0046】
また、隣接する搬送ローラ52の反り方向を一致させると、6本全ての搬送ローラ52に接触し易くなる。このため、
図6に示す場合と同様に、搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響を受け易くなり、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度は速くなり易くなる。
【0047】
上記のような理由により、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きく、かつ、搬送ローラ52の撓み量が大きい場合、隣接する搬送ローラ52の反り方向を180°ずつずらして配置することによって、第2方向に並べて載置した複数の被処理物12a~12cの搬送速度の差を小さくすることができると考えられる。
【0048】
さらに、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きいものの、被処理物12の重量が比較的軽い場合の搬送ローラ52の反り方向の調整について説明する。被処理物12の重量が比較的軽い場合には、搬送ローラ52の撓み量が小さくなるため、搬送ローラ52の中央に配置された被処理物12bは比較的に多くの本数の搬送ローラ52と接触するが、搬送ローラ52の端部に配置された被処理物12a、12cは比較的に少ない本数の搬送ローラ52と接触することとなる。このため、搬送ローラ52の中央に配置された被処理物12bは、搬送ローラ52の「反り」及び「径寸法のバラツキ」の影響が共に低減され、その搬送速度を調整することは難しくなる。一方、搬送ローラ52の端部側に配置された被処理物12a、12cは、径寸法のバラツキの影響が強く出ることとなる。このため、搬送ローラ52の反り方向を調整しない場合、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度は、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度よりも速くなる傾向を有することとなる。したがって、被処理物12a~12cの搬送速度の差を小さくするためには、被処理物12bの搬送速度を速くする必要がある。
【0049】
例えば、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置した場合、反りによって搬送ローラ52が最も下方に位置するときには、その搬送ローラ52は中央の被処理物12bに接触し難くなる。すなわち、
図6に示す状態と同様の状態となり、全ての搬送ローラ52が被処理物12と接触する場合と比較して、搬送ローラ52の回転半径が大きくなる頻度が高くなる。したがって、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置すると、被処理物12bの搬送速度は速くなり易くなる。同様に、隣接する搬送ローラ52の反り方向を180°ずつずらして配置すると、
図7に示す状態と同様の状態となる。このため、
図6に示す状態と比較して、被処理物12bが速く搬送されることが抑制される。
【0050】
なお、隣接する搬送ローラ52の反り方向を一致させた場合、隣接する搬送ローラ52の反り方向を180°ずつずらして配置した場合と比較して、搬送ローラ52の径寸法のバラツキの影響を受け易くなるため、被処理物12bの搬送速度は速くなり易くなる。しかしながら、搬送ローラ52の撓みがあるため、搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置した場合と比較して、被処理物12bはより多くの本数の搬送ローラ52と接触し易くなる。したがって、隣接する搬送ローラ52の反り方向を一致させた場合より隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置した場合のほうが、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度は速くなり易くなる。
【0051】
上記のような理由により、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きく、かつ、搬送ローラ52の撓み量が小さい場合には、隣接する搬送ローラ52の反り方向を90°ずつずらして配置することによって、第2方向に並べて載置した複数の被処理物12a~12cの搬送速度の差を小さくすることができると考えられる。
【0052】
本実施例では、搬送ローラ52に被処理物12を載置した際に生じる搬送ローラ52の撓み量に基づいて、搬送ローラ52の反り方向が調整される。これによって、搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度と、搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度の差を小さくすることができる。このため、熱処理炉10内に第2方向に並べて運び込んだ複数の被処理物12が搬出部40に搬出される際の搬送方向のずれを小さくすることができ、熱処理炉10から運び出し易くすることができる。
【0053】
なお、本実施例では、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きい場合に、隣接する搬送ローラ52の反り方向をずらして配置しているが、このような構成に限定されない。搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度が搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度に対して速くなることを抑制できればよく、複数の搬送ローラ52の反り方向が周期的に変化していればよい。例えば、隣接する2本の搬送ローラ52を一単位として、その反り方向を周期的に変化させてもよい。すなわち、隣接する2本の搬送ローラ52の反り方向が一致しており、かつ、その反り方向が一致する2本の搬送ローラ52と隣接する2本の搬送ローラ52の反り方向が90°又は180°ずれていてもよい。また、1つの被処理物12を載置するための搬送ローラ52の数が多い場合には、隣接する3本以上の搬送ローラ52の反り方向が一致しており、かつ、反り方向が一致する3本以上の搬送ローラ52と隣接する3本以上の搬送ローラ52の反り方向が90°又は180°ずれていてもよい。
【0054】
また、本実施例では、搬送ローラ52の「撓み」が搬送ローラ52の「反り」より大きい場合に、隣接する搬送ローラ52を90°又は180°ずらして配置しているが、このような構成に限定されない。搬送ローラ52の外側に載置される被処理物12a、12cの搬送速度が搬送ローラ52の内側に載置される被処理物12bの搬送速度に対して速くなることを抑制できればよく、隣接する搬送ローラ52の反り方向をずらす角度は上記の実施例に限定されない。例えば、隣接する搬送ローラ52の反り方向を45°、72°又は120°ずつずらしてもよい。
【0055】
また、本実施例では、熱処理部20に設置される全ての搬送ローラ52の反り方向を調整しているが、このような構成に限定されない。第2方向に並べて載置した複数の被処理物12の熱処理部20での搬送速度の差が小さくなるように、搬送ローラ52の反り方向が調整されていればよく、例えば、熱処理部20に設置される搬送ローラ52のうちの一部において、搬送ローラ52の反り方向が調整されていてもよい。
【0056】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。