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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスのクランプ構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20230420BHJP
   F16B 2/20 20060101ALI20230420BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20230420BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20230420BHJP
   F16L 3/00 20060101ALI20230420BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/20 B
F16B2/20 A
F16B5/10 M
F16L3/12 Z
F16L3/00 D
B60R16/02 623D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020013531
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021121137
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小泉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山口 淳史
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-112092(JP,A)
【文献】特開2009-225616(JP,A)
【文献】特開2014-180152(JP,A)
【文献】特開2007-110806(JP,A)
【文献】特開2007-166807(JP,A)
【文献】特開2007-166808(JP,A)
【文献】特開2007-166809(JP,A)
【文献】特開2007-215353(JP,A)
【文献】特開2007-181363(JP,A)
【文献】特開2007-143273(JP,A)
【文献】特開2011-224816(JP,A)
【文献】特開2007-189803(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0154623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
H02G 3/30
H02G 3/04
F16B 2/20
F16B 5/10
F16L 3/12
F16L 3/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線を有するワイヤハーネスと、
前記ワイヤハーネスの複数の前記電線を束ねた状態に保持する保持部、及び前記保持部に一体であり、前記電線の周方向に対向する一対の挟持片を有するクランプと、
車体が備える合成樹脂製のパネルに設けられるとともに、前記保持部に前記電線を保持した前記クランプの前記挟持片によって挟持されるリブと、を含むワイヤハーネスのクランプ構造であって、
前記パネルは、パネル本体と、
前記パネル本体から立設され、前記パネル本体に部品を取り付けるための取付台と、を有し、
前記取付台は、前記パネル本体から立設される第1取付台形成板、及び前記第1取付台形成板に向き合う第2取付台形成板を有するとともに、一方向に開口し、
前記リブは、前記第1取付台形成板及び第2取付台形成板の向かい合う内面同士に架設されていることを特徴とするワイヤハーネスのクランプ構造。
【請求項2】
前記リブの架設方向は、前記ワイヤハーネスの前記電線の延びる方向に一致することを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスのクランプ構造。
【請求項3】
前記リブにおいて前記パネル本体に対向する面に沿い、かつ前記架設方向に交差する方向を前記リブの突出方向とすると、前記リブの前記突出方向の先端は前記ワイヤハーネス寄りの端部であり、
前記リブの先端は、前記第1取付台形成板の前記ワイヤハーネス寄りの端部及び前記第2取付台形成板の前記ワイヤハーネス寄りの端部よりも前記電線に向けて突出していることを特徴とする請求項2に記載のワイヤハーネスのクランプ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスのクランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に配策されるワイヤハーネスをクランプ等で車体に取り付けることが知られている。例えば、車体において、ワイヤハーネスは予め決められた位置に配策されるとともに、配策された位置に移動規制された状態に車体に位置決めされている。特許文献1に開示されたワイヤハーネスのクランプ構造においては、ワイヤハーネスの複数本の電線を保持したクランプを、車体が備える樹脂部品であるインストルメントパネルに立設されたリブに取り付けて、ワイヤハーネスの移動を規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-180152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車においては、車種の変更や仕様の変更に伴いインストルメントパネルの仕様が変更される一方で、ワイヤハーネスの配策経路は変更されない場合がある。また、インストルメントパネルには、当該インストルメントパネルの裏側に配置される部品を取り付けるための取付台が設けられ、取付台が配策経路の近くに設けられている場合がある。なお、取付台は、部品が取り付けられる板状の取付板と、取付板を支持し、かつ取付台を形成するための取付台形成板とから構成され、取付台形成板はインストルメントパネルのパネル本体から立設されている。このような取付台は、軽量化を目的として空洞に形成されている場合が多い。
【0005】
ところが、インストルメントパネルの仕様が変更された場合、予め決められた配策経路に沿ってワイヤハーネスが配策されつつ、当該配策経路にワイヤハーネスを移動規制した状態に取り付けるために、配策経路に沿ってインストルメントパネルにリブを立設することになる。しかし、リブを立設した位置の表面が、インストルメントパネルの意匠面である場合には、リブの形成に伴い意匠面にヒケが形成されてしまい、外観不良となり好ましくない。
【0006】
また、インストルメントパネルを金型で成形する際、取付台を空洞とするための金型部品が用いられる。金型部品を取付台から取り出すためのスライド先にリブが位置していると、金型部品のスライドの妨げになるため、リブを立設する位置には制約が生じるという成形上の問題もある。
【0007】
本発明の目的は、成形時の制約なく意匠面にヒケが発生することを防止できるワイヤハーネスのクランプ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するワイヤハーネスのクランプ構造は、複数本の電線を有するワイヤハーネスと、前記ワイヤハーネスの複数の前記電線を束ねた状態に保持する保持部、及び前記保持部に一体であり、前記電線の周方向に対向する一対の挟持片を有するクランプと、車体が備える合成樹脂製のパネルに設けられるとともに、前記保持部に前記電線を保持した前記クランプの前記挟持片によって挟持されるリブと、を含むワイヤハーネスのクランプ構造であって、前記パネルは、パネル本体と、前記パネル本体から立設され、前記パネル本体に部品を取り付けるための取付台と、を有し、前記取付台は、前記パネル本体から立設される第1取付台形成板、及び前記第1取付台形成板に向き合う第2取付台形成板を有するとともに、一方向に開口し、前記リブは、前記第1取付台形成板及び第2取付台形成板の向かい合う内面同士に架設されている。
【0009】
これによれば、リブは、車体のパネル本体に部品を取り付けるための取付台を構成する第1取付台形成板及び第2取付台形成板に架設される。取付台は、パネル本体の意匠面を考慮して設けられるため、取付台の形成によって意匠面にヒケが生じることはなく、その取付台にリブが架設されるため、リブがパネル本体から立設されることはない。このため、リブを設けることによってパネル本体の意匠面にヒケが生じることはない。そして、取付台の内側にリブが設けられる。パネル成形時、取付台を空洞にするために金型部品が使用されるが、その金型部品のスライド先に、ワイヤハーネスを位置決めするためのリブが設けられることはない。したがって、インストルメントパネルの成形時の制約なく、意匠面にヒケが発生することを防止できる。
【0010】
上記ワイヤハーネスのクランプ構造において、前記リブの架設方向は、前記ワイヤハーネスの前記電線の延びる方向に一致するとよい。
これによれば、クランプに保持された電線がパネル本体に干渉しにくく、リブにクランプを組付け易い。
【0011】
上記ワイヤハーネスのクランプ構造において、前記リブにおいて前記パネル本体に対向する面に沿い、かつ前記架設方向に交差する方向を前記リブの突出方向とすると、前記リブの前記突出方向の先端は前記ワイヤハーネス寄りの端部であり、前記リブの先端は、前記第1取付台形成板の前記ワイヤハーネス寄りの端部及び前記第2取付台形成板の前記ワイヤハーネス寄りの端部よりも前記電線に向けて突出しているとよい。
【0012】
これによれば、作業者がリブを目視し易いため、クランプをリブに組付け易い。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、成形時の制約なく意匠面にヒケが発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態におけるクランプ構造を示す斜視図。
図2】ワイヤハーネスのクランプ構造を示す分解斜視図。
図3図1における3-3線断面図。
図4図1における4-4線断面図。
図5】インストルメントパネルの成形を模式的に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ワイヤハーネスのクランプ構造を具体化した実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、ワイヤハーネス11のクランプ構造10は、自動車の車体に設けられる。ワイヤハーネス11のクランプ構造10は、ワイヤハーネス11と、クランプ12と、合成樹脂製のパネルとしてのインストルメントパネル20に設けられるリブ13と、を有する。
【0016】
インストルメントパネル20は、板状のパネル本体21を備える。パネル本体21は、インストルメントパネル20の外郭を構成する。パネル本体21において、車体の車室に臨む面を表面21aとし、パネル本体21の板厚方向における表面21aと反対側の面を裏面21bとする。パネル本体21の表面21aは、車室内に臨む意匠面である。
【0017】
ワイヤハーネス11のクランプ構造10は、パネル本体21の裏面21b側において、ワイヤハーネス11の配策経路にワイヤハーネス11を移動規制した状態に配策するために設けられる。ワイヤハーネス11の配策経路は、車種やインストルメントパネル20の仕様によって予め決められている。
【0018】
また、インストルメントパネル20は、当該インストルメントパネル20の裏側に配置される部品30を取り付けるための取付台22を備える。部品30としては、例えば、エアコンのダクトや、オーディオなどが挙げられる。
【0019】
図2又は図3に示すように、取付台22は、パネル本体21の裏面21bから突出するように立設されている。取付台22は、部品30を取り付けるための板状の第1取付台形成板としての取付板23と、取付板23の一つの側縁を支持するためにパネル本体21から立設される第2取付台形成板としての第1支持板24と、取付板23の他の側縁を支持するためにパネル本体21から立設される第2支持板25と、を有する。取付板23は、第1支持板24及び第2支持板25によって支持されている。
【0020】
取付板23は、パネル本体21の裏面21bに対し傾斜し、第1支持板24はパネル本体21の裏面21bに対し傾斜している。つまり、取付板23は第1支持板24に向けて傾斜し、第1支持板24は取付板23に向けて傾斜している。このため、取付板23の内面231と第1支持板24の内面241は向かい合っている。
【0021】
取付板23は、長四角板状である。取付板23は、互いに平行な第1短側縁23aと第2短側縁23bを備えるとともに、互いに平行な第1長側縁23cと第2長側縁23dを備える。第1短側縁23aはパネル本体21の裏面21bに沿って延び、第2短側縁23bには第1支持板24が繋がっている。また、第1長側縁23cは露出し、第2長側縁23dに第2支持板25が繋がっている。
【0022】
第1支持板24は、長四角板状である。第1支持板24は、互いに平行な第1短側縁24aと第2短側縁24bを備えるとともに、互いに平行な第1長側縁24cと第2長側縁24dを備える。第1短側縁24aはパネル本体21の裏面21bに沿って延び、第2短側縁24bに取付板23の第2短側縁23bが繋がっている。また、第1長側縁24cは露出し、第2長側縁24dに第2支持板25が繋がっている。
【0023】
第2支持板25は、三角板状である。第2支持板25の第1側縁25aはパネル本体21の裏面21bに沿って延び、残りの第2側縁25b及び第3側縁25cのうち、第2側縁25bが取付板23の第2長側縁23dに繋がり、第3側縁25cが第1支持板24の第2長側縁24dに繋がる。したがって、取付台22は、取付板23及び第1支持板24の一方の長側縁が露出する側に向けて開口する形状であり、取付板23及び第1支持板24の他方の長側縁側が第2支持板25によって閉鎖された形状である。
【0024】
取付台22は、パネル本体21の裏面21bと、取付板23の内面231と、第1支持板24の内面241と、第2支持板25の内面251とで囲まれた空洞部Sを有する。空洞部Sは、取付板23及び第1支持板24の第1長側縁23c,24c側で外部に向けて開口している。つまり、取付台22は、一方向に向けて開口している。
【0025】
取付板23の板厚方向において、内面231とは反対側の外面232には、部品30を取り付けるための取付ボス23eが設けられている。部品30を貫通させた図示しない取付部材を取付ボス23eに螺合することで、部品30が取付台22に取り付けられている。
【0026】
また、図1に示すように、インストルメントパネル20は、パネル本体21における取付台22の近傍に構造面26を有する。構造面26は、パネル本体21の裏面21bから突出する形状である。構造面26は、取付台22を第1支持板24の第1長側縁24c及び第2長側縁24dの延びる方向へ延長した位置に設けられている。また、構造面26は、取付台22が開口する先に位置するのではなく、取付台22が開口する方向とは異なる方向先に位置している。
【0027】
図3又は図4に示すように、取付台22は、ワイヤハーネス11を保持したクランプ12を取り付けるためのリブ13を有する。リブ13は、取付板23の内面231と、第1支持板24の内面241と、第2支持板25の内面251の3面に架け渡されている。リブ13は取付板23の長さ方向の中央部分、及び第1支持板24の長さ方向の中央部分に架け渡されている。リブ13の基端13aは、第2支持板25の内面251に連結され、リブ13の先端13bは、取付板23の第1長側縁23c及び第1支持板24の第1長側縁24cよりも取付台22の外側に位置している。
【0028】
リブ13は、パネル本体21の裏面21bに対向する面に下面13cを有し、リブ13における下面13cとは反対側の面に上面13dを有する。本実施形態では、リブ13の下面13cは、パネル本体21の裏面21bに対し、略平行である。リブ13の基端13aから先端13bに向かう方向をリブ13の突出方向Xとし、下面13c又は上面13dに沿い、かつ突出方向Xに直交する方向をリブ13の架設方向Yとする。リブ13は、架設方向Yの一端に位置する第1側端131が取付板23の内面231に連結されている。リブ13は、架設方向Yの他端に位置する第2側端132が第1支持板24の内面241に連結されている。したがって、リブ13は、取付板23と第1支持板24の向かい合う内面231,241に架設されている。そして、リブ13の架設方向Yは、取付板23と第1支持板24とが対向する方向と一致する。その結果、リブ13は、パネル本体21の裏面21bからは立設されておらず、パネル本体21の裏面21bには着地していない。
【0029】
リブ13の板厚は、ワイヤハーネス11を保持したクランプ12が、所望する挟持力でリブ13を挟持できる寸法に設定されている。リブ13は、基端13aから先端13bに向けて板厚が薄くなるが、クランプ12は、リブ13の最も板厚の薄い場所で、上記の所望する挟持力でリブ13を挟持できるようになっている。また、リブ13の最も薄い部分の板厚は、取付板23、第1支持板24、及び第2支持板25のパネル本体21に着地している部分の板厚よりも厚い。
【0030】
ワイヤハーネス11は、複数本の電線14と、複数の電線14の両端に接続された図示しないコネクタと、を有する。
クランプ12は、ワイヤハーネス11の複数の電線14を束ねた状態に保持する保持部16、及び保持部16に一体の一対の挟持片17を有する。クランプ12の保持部16は、ワイヤハーネス11の軸線方向に延びるスリット16aを有する円筒状である。保持部16は、当該保持部16の内側に複数の電線14を束ねた状態に包み込むように保持する。一対の挟持片17のうちの一方の挟持片17は、保持部16のスリット16aに沿う一方縁から突出し、他方の挟持片17は、保持部16のスリット16aに沿う他方縁から突出する。一対の挟持片17は、リブ13を板厚方向の両側から挟持することにより、クランプ12をリブ13に取り付ける。
【0031】
クランプ12のリブ13への取付方向は、リブ13の突出方向Xと反対方向であり、突出方向Xに沿う。クランプ12に保持されたワイヤハーネス11の電線14は、突出方向Xに直交する。このため、リブ13の突出方向Xと反対方向にクランプ12を移動させてクランプ12をリブ13に取り付けた状態では、ワイヤハーネス11の電線14の軸線は、リブ13の架設方向Yに沿って延びる。リブ13は、パネル本体21の裏面21bに対し略平行であるため、ワイヤハーネス11の電線14のうち、クランプ12に保持された部分は、パネル本体21の裏面21bに対し平行な状態に配策される。
【0032】
図1に示すように、ワイヤハーネス11のクランプ構造10において、取付台22は、ワイヤハーネス11の配策経路に沿う位置に設けられている。そして、ワイヤハーネス11のクランプ構造10では、リブ13は、取付台22の内側に設けられ、かつパネル本体21の裏面21bに着地しておらず、このようなリブ13に対し、ワイヤハーネス11を保持したクランプ12が取り付けられている。つまり、クランプ12の取付位置は、パネル本体21における取付台22の設置場所とは異なる場所ではなく、取付台22であると言える。
【0033】
上記取付台22、リブ13及び構造面26を有するインストルメントパネル20は以下のように成形される。
図5に示すように、本実施形態の取付台22は、図示しない金型を用いて成形されるが、取付台22の取付ボス23eを成形可能とするため、金型の抜き方向Nは、矢印Nに示す方向となる。一方、取付台22の内側に空洞部Sを形成しつつ、リブ13を成形可能とするため、金型には、図示しない金型部品が用いられるが、金型部品のスライド方向Mは、矢印Mに示す方向となる。スライド方向Mは、抜き方向Nとは異なる方向であり、リブ13の突出方向Xと一致する。このようなインストルメントパネル20において、スライド方向Mに沿ってインストルメントパネル20から離れた位置には構造面26は存在せず、構造面26は、スライド方向Mとは異なる方向に位置している。つまり、取付台22は、空洞部Sが構造面26に向かないように形成されている。よって、スライド方向Mヘスライドさせた金型部品が構造面26に干渉することがない。
【0034】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)リブ13は、取付台22における取付板23の内面231と第1支持板24の内面241に架設されるため、リブ13はパネル本体21の裏面21bから離間し、パネル本体21に着地することはない。このため、パネル本体21に、ワイヤハーネス11を取り付けるためのリブ13を設けても、パネル本体21の意匠面となる表面21aにヒケが発生することを防止できる。
【0035】
(2)インストルメントパネル20は、部品30を取り付けるための取付台22を備えるとともに、インストルメントパネル20には、ワイヤハーネス11の配策経路が予め決められている。取付台22の空洞部Sが構造面26に向かないように取付台22を形成しつつ、その取付台22の内側にリブ13を形成することで、ワイヤハーネス11を配策経路に配策しつつ、その配策経路にワイヤハーネス11を位置決めしても、パネル本体21の意匠面にヒケが発生することを防止できる。さらに、リブ13は、取付台22を形成するための金型部品のスライド方向Mに沿って基端13aから先端13bに向けて突出し、そのスライド方向Mの先にはリブ13も構造面26もない。したがって、インストルメントパネル20の成形の制約無く、かつ意匠面に影響なくリブ13を形成できる。
【0036】
(3)リブ13の架設方向Yは、ワイヤハーネス11の電線14の軸線の延びる方向に沿う。その結果、クランプ12に保持された電線14がパネル本体21に干渉しにくくなるため、作業者がリブ13にワイヤハーネス11を保持したクランプ12を組付け易い。
【0037】
(4)リブ13の先端13bは、取付板23のワイヤハーネス11寄りの端部である第1長側縁23c及び第1支持板24のワイヤハーネス11寄りの端部である第1長側縁24cよりも電線14に向けて突出している。その結果、作業者がリブ13を目視し易くなるため、リブ13にクランプ12を組付け易い。
【0038】
(5)取付台22は、部品30を取り付けるためにインストルメントパネル20に設けられた既存の構成である。この取付台22の内側にリブ13を設けることで、既存の構成を有効利用しながらインストルメントパネル20の意匠面にヒケが発生することを防止できる。また、取付台22の外面となる取付板23の外面232や第1支持板24の外面にリブ13を設けることで、インストルメントパネル20の意匠面にヒケが発生することを防止できるが、この場合は、インストルメントパネル20を成形するための金型の構造を変更する必要があり、好ましくない。しかし、取付台22の空洞部Sを形成するための金型部品を利用してリブ13を形成するため、金型の構造を変更することなく、インストルメントパネル20の意匠面にヒケが発生することを防止できる。
【0039】
(6)リブ13の板厚は、金型部品のスライド移動に依存して基端13aの方が先端13bより厚くなるが、リブ13の基端13aは第2支持板25に連結され、パネル本体21には着地していないため、リブ13の板厚及び強度を確保しつつも、インストルメントパネル20の意匠面にヒケが発生することを防止できる。
【0040】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 実施形態において、リブ13の先端13bが、取付板23の第1長側縁23c及び第1長側縁24cよりもワイヤハーネス11に向けて突出している場合に限らない。すなわち、第1長側縁23c及び第1長側縁24cがリブ13の先端13bよりもワイヤハーネス11に向けて突出していてもよいし、第1長側縁23c及び第1長側縁24cがリブ13の先端13bと同じ位置に位置していてもよい。
【0041】
○ 実施形態において、リブ13は取付板23、第1支持板24、及び第2支持板25の中央部分に架け渡されているが、このような構成に限らない。リブ13が車体のパネル本体21に着地せず、パネル本体21寄りの挟持片17がパネル本体21とリブ13との間に入り込める程度の空間があるような構成であればよい。
【0042】
○ リブ13の下面13cがパネル本体21の裏面21bに対し平行でなく、リブ13の架設方向Yが、ワイヤハーネス11の電線14の延びる方向と一致していなくてもよい。
【0043】
○取付台22の形状は適宜変更してもよい。例えば、取付台22は、部品30が取り付けられる取付板23の3つの側縁がパネル本体21から立設された支持板によって支持されており、取付板23がパネル本体21から離間していてもよい。この場合、取付板23を支持する3つの支持板のうち、内面が向き合う2つの支持板のうちの一方によって第1取付台形成板が構成され、他方によって第2取付台形成板が構成される。
【0044】
○ ワイヤハーネス11のクランプ構造が設けられるパネルは、インストルメントパネル20以外の樹脂製のパネルであってもよく、車両ドアの内装面を構成するパネルであってもよい。
【0045】
○ 取付台22は、第1取付台形成板としての取付板23と、第2取付台形成板としての第1支持板24の2枚から構成され、第2支持板25を備えなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…クランプ構造、11…ワイヤハーネス、12…クランプ、13…リブ、13b…先端、14…電線、16…保持部、17…挟持片、20…パネルとしてのインストルメントパネル、21…パネル本体、22…取付台、23…第1取付台形成板としての取付板、24…第2取付台形成板としての第1支持板、231,241…内面、X…突出方向、Y…架設方向。
図1
図2
図3
図4
図5