(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】導電性塗料及び該導電性塗料を用いたシールドパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20230420BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20230420BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230420BHJP
C09D 7/60 20180101ALI20230420BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230420BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20230420BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230420BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20230420BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/24
C09D7/61
C09D7/60
C09D7/63
H01B1/22 A
H01L23/30 D
H01L21/56 R
(21)【出願番号】P 2020513096
(86)(22)【出願日】2019-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2019005743
(87)【国際公開番号】W WO2019198336
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018075422
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中園 元
(72)【発明者】
【氏名】松田 和大
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/023747(WO,A1)
【文献】特開2016-100134(JP,A)
【文献】特開2004-355933(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052664(WO,A1)
【文献】特開2008-042152(JP,A)
【文献】特開2012-193320(JP,A)
【文献】特開2005-187753(JP,A)
【文献】特開昭60-004562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0039968(US,A1)
【文献】特開2016-183335(JP,A)
【文献】特開2009-062523(JP,A)
【文献】特開2005-294254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
H01B 1/22
H01L 21/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100重量部に対し、
金属粒子(B)を500~2500重量部、
硬化剤(C)を1~150重量部、
溶剤(D)を20~800重量部、
硬化触媒(E)を0.5~5重量部含み、
前記硬化触媒(E)は、有機金属化合物であり、
前記有機金属化合物は、鉄-2-エチルヘキソエート、アセチルアセトン第2鉄、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛及びアセチルアセトン第2亜鉛からなる群から選択される少なくとも一つであ
り、
前記硬化剤(C)は、イソシアネート硬化剤であることを特徴とする導電性塗料。
【請求項2】
前記金属粒子(B)は、銀粉、銀被覆銅粉及び銀被覆銅合金粉からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の導電性塗料。
【請求項3】
シールドパッケージに用いられる請求項1
又は2に記載の導電性塗料。
【請求項4】
基板上に電子部品が搭載され、前記電子部品が封止材によって封止されたパッケージがシールド層によって被覆されたシールドパッケージの製造方法であって、
基板上に複数の電子部品を搭載し、前記基板上に封止材を充填して硬化させることにより前記電子部品を封止してパッケージを作製するパッケージ形成工程と、
前記パッケージが形成された前記基板上に、請求項1~
3のいずれかに記載の導電性塗料を塗布する導電性塗料塗布工程と、
前記導電性塗料が塗布された前記基板を加熱して、前記導電性塗料を硬化させることによりシールド層を形成するシールド層形成工程と、
前記パッケージが個片化するように前記基板を切断する切断工程とを有することを特徴とするシールドパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記パッケージ形成工程の後、前記複数の電子部品間の封止材を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって前記基板上の前記パッケージを区分するパッケージ区分工程を含み、
前記切断工程では、前記溝部に沿って前記基板を切断する請求項
4に記載のシールドパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記シールド層形成工程における加熱の温度は、120~150℃である請求項
4又は
5に記載のシールドパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性塗料及び該導電性塗料を用いたシールドパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やタブレット端末等の電子機器においては、近年、大容量のデータを伝送するための無線通信用の電子部品を多数実装している。このような無線通信用の電子部品は、ノイズを発生しやすいだけでなくノイズに対する感受性が高く、外部からのノイズに曝されると誤動作を起こしやすいという問題がある。
【0003】
また、電子機器の小型軽量化と高機能化を両立させるため、電子部品の実装密度を高めることが求められている。しかしながら、実装密度を高めるとノイズの発生源となる電子部品が増えるだけでなく、ノイズの影響を受ける電子部品も増えてしまうという問題がある。
従来から、ノイズの発生源である電子部品をパッケージごとシールド層で覆うことで、電子部品からのノイズの発生を防止するとともにノイズの侵入を防止した、いわゆるシールドパッケージが知られている。
【0004】
このようなシールド層を形成するための導電性塗料として、特許文献1には、(A)常温で固体である固体エポキシ樹脂5~30質量部と常温で液体である液体エポキシ樹脂20~90質量部とを合計量100質量部を超えない範囲で含むバインダー成分100質量部、(B)金属粒子500~1800質量部、及び(C)硬化剤0.3~40質量部を少なくとも有する導電性塗料であって、前記金属粒子が(a)球状金属粒子と(b)フレーク状金属粒子とを有し、(a)球状金属粒子と(b)フレーク状金属粒子との重量比が(a):(b)=25:75~75:25であり、前記導電性塗料の液温25℃における粘度が、円錐平板型回転粘度計で回転数0.5rpmで測定した粘度で100~600mPa・sである導電性塗料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような導電性塗料を用いることにより、電子部品にシールド層を形成することができる。
電子部品にシールド層を形成する方法としては、例えば、電子部品を基板に配置し、電子部品を封止材で封止した後、導電性塗料を塗布し、加熱することにより、導電性塗料を硬化させてシールド層を形成するという方法も従来から行われている。
【0007】
このような方法において、シールド層を形成するために特許文献1に記載の導電性塗料を用いることができる。
しかし、特許文献1に記載の導電性塗料の硬化温度は高いため、特許文献1に記載の導電性塗料を硬化させようとすると、高い温度が必要であった。
そのため、導電性塗料を硬化させる際の熱により電子部品がダメージを受けてしまうことがあった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、低い温度で硬化する導電性塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の導電性塗料は、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100重量部に対し、金属粒子(B)を500~2500重量部、硬化剤(C)を1~150重量部、溶剤(D)を20~800重量部、硬化触媒(E)を0.5~5重量部含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の導電性塗料は、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)、金属粒子(B)、硬化剤(C)及び溶剤(D)を上記割合で含むので、当該導電性塗料が硬化した場合、良好なシールド性能を有するシールド層を形成することができる。さらに、当該導電性塗料は電子部品への塗布安定性が優れる。
【0011】
本発明の導電性塗料は、硬化触媒(E)を含むので硬化温度が低下している。
【0012】
本発明の導電性塗料では、上記金属粒子(B)は、銀粉、銀被覆銅粉及び銀被覆銅合金粉からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
これらの金属粒子は、導電性が高い。そのため、本発明の導電性塗料が硬化しシールド層となった際に、シールド層が充分な導電性を有することになる。
【0013】
本発明の導電性塗料では、上記硬化剤(C)は、イソシアネート硬化剤であることが望ましい。
イソシアネート硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)を充分に硬化させることができる。
また、シールドパッケージを工業的に生産する場合、導電性塗料は、塗布用の機器に充填され、機械的に塗布対象に塗布されることになる。
導電性塗料を塗布する工程において、充填された導電性塗料の物性(例えば、粘度)が経時的に変化すると、時間の経過と共に、塗布用の機器に目詰まり等が生じやすくなる。
そのため、導電性塗料は保存安定性が高いことが望ましい。
本発明の導電性塗料において、硬化剤(C)がイソシアネート硬化剤であると、導電性塗料の保存安定性が向上する。
【0014】
本発明の導電性塗料では、上記硬化触媒(E)は、有機金属化合物であることが望ましく、上記有機金属化合物は、鉄-2-エチルヘキソエート、アセチルアセトン第2鉄、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛及びアセチルアセトン第2亜鉛からなる群から選択される少なくとも一つであることが望ましい。
これらの化合物を用いることにより、導電性塗料の硬化温度を好適に下げることができる。
【0015】
本発明の導電性塗料は、シールドパッケージに用いられることが望ましい。
本発明の導電性塗料を用いることで、シールドパッケージに含まれる電子部品への、製造時の熱によるダメージを抑えることができる。
【0016】
本発明のシールドパッケージの製造方法は、基板上に電子部品が搭載され、上記電子部品が封止材によって封止されたパッケージがシールド層によって被覆されたシールドパッケージの製造方法であって、基板上に複数の電子部品を搭載し、上記基板上に封止材を充填して硬化させることにより上記電子部品を封止してパッケージを作製するパッケージ形成工程と、上記パッケージが形成された上記基板上に、上記本発明の導電性塗料を塗布する導電性塗料塗布工程と、上記導電性塗料が塗布された上記基板を加熱して、上記導電性塗料を硬化させることによりシールド層を形成するシールド層形成工程と、上記パッケージが個片化するように上記基板を切断する切断工程とを有することを特徴とする。
【0017】
上記の通り、本発明の導電性塗料は、硬化温度が低い。そのため、シールド層形成工程において、熱による電子部品へのダメージを抑えることができる。
また、加熱温度を高くしなくてよいので、加熱にかかるコストも下げることができる。
【0018】
本発明のシールドパッケージの製造方法は、上記パッケージ形成工程の後、上記複数の電子部品間で封止材を切削して溝部を形成し、これらの溝部によって上記基板上の上記パッケージを区分するパッケージ区分工程を含み、上記切断工程では、上記溝部に沿って上記基板を切断することが望ましい。
このように溝部を形成することにより、パッケージを容易に個片化することができる。
【0019】
本発明のシールドパッケージの製造方法では、シールド層形成工程における加熱の温度は、120~150℃であることが望ましい。
このような低い加熱の温度であっても、上記本発明の導電性塗料は充分に硬化する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の導電性塗料は、硬化触媒(E)を含むので硬化温度が低下している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1(a)及び(b)は、本発明のシールドパッケージの製造方法のパッケージ形成工程の一例を模式的に示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明のシールドパッケージの製造方法のパッケージ区分工程の一例を模式的に示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明のシールドパッケージの製造方法の導電性塗料塗布工程の一例を模式的に示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明のシールドパッケージの製造方法のシールド層形成工程の一例を模式的に示す模式図である。
【
図5】
図5は、本発明のシールドパッケージの製造方法の切断工程の一例を模式的に示す模式図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、塗布安定性の評価の方法を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の導電性塗料について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0023】
本発明の導電性塗料は、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)100重量部に対し、金属粒子(B)を500~2500重量部、硬化剤(C)を1~150重量部、溶剤(D)を20~800重量部、硬化触媒(E)を0.5~5重量部含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の導電性塗料は、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)、金属粒子(B)、硬化剤(C)及び溶剤(D)を上記割合で含むので、当該導電性塗料が硬化した場合、良好なシールド性能を有するシールド層を形成することができる。さらに、当該導電性塗料は電子部品への塗布安定性が優れる。
【0025】
また、本発明の導電性塗料は、硬化触媒(E)を含むので硬化温度が低下している。
【0026】
以下、本発明の導電性塗料の各構成要件について詳述する。
【0027】
(エポキシ樹脂を含むバインダー成分)
本発明の導電性塗料に含まれるバインダー成分(A)は、エポキシ樹脂を必須の成分とするものである。
バインダー成分(A)におけるエポキシ樹脂の重量割合は、5~95重量%であることが望ましく、30~90重量%であることがより望ましい。
【0028】
また、エポキシ樹脂は、常温で固体のエポキシ樹脂及び常温で液体のエポキシ樹脂を両方含むことが望ましい。
この場合のバインダー成分(A)における常温で固体のエポキシ樹脂の重量割合は、5~30重量%であることが望ましく、5~20重量%であることがより望ましい。
また、バインダー成分(A)における常温で液体のエポキシ樹脂の重量割合は、20~90重量%であることが望ましく、25~80重量%であることが望ましい。
なお、本明細書において、「常温で固体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を有さない状態であることを意味する。
また、本明細書において、「常温で液体」とは、25℃において無溶媒状態で流動性を有する状態であることを意味する。
【0029】
常温で固体のエポキシ樹脂を使用することにより、均一にパッケージ表面に塗布され、ムラの無いシールド層を形成することができる導電性塗料が得られる。常温で固体のエポキシ樹脂は、分子内に2以上のグリシジル基を有し、かつ、エポキシ当量が150~280g/eqを有するものが望ましい。エポキシ当量が150g/eq以上であるとクラックや反り等の不具合が起こりにくく、280g/eq以下であると耐熱性がより優れた硬化物が得られ易い。
【0030】
また、常温で固体のエポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等を用いることができる。
これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、常温で固体のエポキシ樹脂は、後述する溶剤(D)に溶解して使用してもよい。
【0031】
エポキシ樹脂が、常温で液体のエポキシ樹脂である場合、常温で液体のエポキシ樹脂は、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の両方を含むことが望ましい。
この場合、バインダー成分(A)における液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂の重量割合は、5~35重量%であることが望ましく、バインダー成分(A)における液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の重量割合は、20~55重量%であることが望ましい。
バインダー成分(A)において、液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂を上記割合で含む場合、導電性塗料の導電性と密着性がバランスよく優れたものとなり、さらに硬化後の硬化物の反りがより少なくなり、耐熱性がより優れたシールドパッケージが得られる。
【0032】
液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂は、エポキシ当量が80~120g/eqであることが望ましい。また、液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂の粘度は、1.5Pa・s以下であることが望ましく、0.5~1.5Pa・sであることがより望ましい。
液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂は、エポキシ当量が180~220g/eqであることが望ましい。また、液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の粘度は、6Pa・s以下であることが望ましく、1~6Pa・sであることがより望ましい。
バインダー成分(A)が、上記エポキシ当量及び上記粘度を有する液体グリシジルアミン系エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂を含むと、硬化後の硬化物の反りがより少なくなり、耐熱性がより優れ、硬化物の厚さがより均一なシールドパッケージが得られる。
【0033】
本明細書において、液体グリシジルアミン系液体エポキシ樹脂及び液体グリシジルエーテル系エポキシ樹脂の粘度は、液温25℃において、BH型粘度計(ローターNo.5、回転数10rpm)で測定した値を意味する。
【0034】
本発明の導電性塗料において、バインダー成分(A)は、さらに(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。
(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物又はメタクリレート化合物であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物であれば特に限定されない。(メタ)アクリレート化合物の例としては、イソアミルアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
バインダー成分(A)が、(メタ)アクリレート化合物を含む場合、エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート化合物との合計重量に対する(メタ)アクリレート化合物の重量割合は、5~95重量%であることが望ましく、20~80重量%であることがより望ましい。
エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート化合物との合計重量に対する(メタ)アクリレート化合物の重量割合が、5重量%以上であると、導電性塗料の保存安定性が優れ、導電性塗料を速やかに硬化させることができ、さらに硬化時の塗料ダレを防止することができる。
エポキシ樹脂と(メタ)アクリレート化合物との合計重量に対する(メタ)アクリレート化合物の重量割合が、95重量%以下である場合、パッケージとシールド層との密着性が良好となり易い。
【0036】
バインダー成分(A)は、さらに、導電性塗料の物性を向上させることを目的として、アルキド樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂等の改質剤を含んでいてもよい。
バインダー成分(A)が、改質剤を含む場合、バインダー成分(A)における改質剤の重量割合は、40重量%以下であることが望ましく、10重量%以下であることがより望ましい。
【0037】
(金属粒子)
本発明の導電性塗料に含まれる金属粒子(B)は、導電性を有する粒子であれば特に限定されず、例えば、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀被覆銅粉、金コート銅粉、銀コートニッケル粉、金コートニッケル粉、銀被覆銅合金粉等であってもよい。これらの中では、銀粉、銀被覆銅粉、銀被覆銅合金粉からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
これらの金属粒子は、導電性が高い。そのため、本発明の導電性塗料が硬化しシールド層となった際に、シールド層が充分な導電性を有することになる。
【0038】
金属粒子の形状としては、特に限定されず、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状であってもよい。
なお、「球状」の金属粒子は、略真球のもの(アトマイズ粉)だけでなく、略多面体状の球体(還元粉)や、不定形状(電解粉)等の略球状のものを含む。
【0039】
金属粒子の平均粒子径は、1~30μmであることが望ましい。
金属粒子の平均粒子径が1μm以上であると、金属粒子の分散性が良好となるので、凝集を防止することができる。また、金属粒子が酸化されにくくなる。
金属粒子の平均粒子径が30μm以下であると、本発明の導電性塗料が硬化し、シールド層となった際に、パッケージのグランド回路との接続性が良好になる。
【0040】
本明細書において、「金属粒子の平均粒子径」とは、レーザー回折・散乱法で測定した、個数基準の平均粒子径D50(メジアン径)のことを意味する。
【0041】
本発明の導電性塗料は、バインダー成分(A)100重量部に対し、金属粒子(B)を500~2500重量部を含む。
また、本発明の導電性塗料は、バインダー成分(A)100重量部に対して、金属粒子(B)を600~2400重量部含むことが望ましく、1000~2000重量部含むことがより望ましい。
バインダー成分(A)100重量部に対し、金属粒子(B)が500重量部以上であると、導電性塗料を硬化させシールド層とした際に、シールド層の導電性が良好となる。
バインダー成分(A)100重量部に対し、金属粒子(B)が2500重量部以下であると、導電性塗料を硬化させシールド層とした際にパッケージとの密着性が良好になる。また、シールド層が欠けにくくなる。そのため、シールド層をダイシングソー等により切断した際に、欠けが生じにくくなる。
また、塗布安定性が良好になる。
【0042】
なお、金属粒子の形状がフレーク状である場合、そのタップ密度は、4.0~6.0g/cm3であることが望ましい。タップ密度が上記範囲内であると、導電性塗料を硬化させて形成したシールド層の導電性が良好となる。
【0043】
また、金属粒子の形状がフレーク状である場合、そのアスペクト比は、5~20であることが望ましく、5~10であることがより望ましい。
アスペクト比が上記範囲内であると、導電性塗料を硬化させて形成したシールド層の導電性がより良好となる。
【0044】
(硬化剤)
本発明の導電性塗料に含まれる硬化剤(C)は、バインダー成分(A)を硬化させることができれば、どのような硬化剤であってもよい。このような硬化剤としては、例えば、イソシアネート硬化剤、フェノール硬化剤、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、カチオン硬化剤、ラジカル硬化剤等が挙げられる。
これらの硬化剤を用いることにより、エポキシ樹脂を含むバインダー成分(A)を充分に硬化させることができる。
【0045】
また、これらの中では、イソシアネート硬化剤が望ましい。
シールドパッケージを工業的に生産する場合、導電性塗料は、塗布用の機器に充填され、機械的に塗布対象に塗布されることになる。
導電性塗料を塗布する工程において、充填された導電性塗料の物性(例えば、粘度)が経時的に変化すると、時間の経過と共に、塗布用の機器に目詰まり等が生じやすくなる。
そのため、導電性塗料は保存安定性が高いことが望ましい。
本発明の導電性塗料において、硬化剤(C)がイソシアネート硬化剤であると、導電性塗料の保存安定性が向上する。
【0046】
イソシアネート硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0047】
フェノール硬化剤としては、例えばノボラックフェノール、ナフトール系化合物等が挙げられる。
【0048】
イミダゾール硬化剤としては、例えばイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールが挙げられる。
【0049】
カチオン硬化剤としては、例えば、三フッ化ホウ素のアミン塩、p-メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルイオドニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ-n-ブチルホスホニウム-o,o-ジエチルホスホロジチオエート等に代表されるオニウム系化合物が挙げられる。
【0050】
ラジカル硬化剤としては、例えば、としては、ジ-クミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
本発明の導電性塗料は、バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化剤(C)を1~150重量部含む。
また、本発明の導電性塗料は、バインダー成分(A)100重量部に対して、硬化剤(C)を2~145重量部含むことが望ましく、5~140重量部含むことがより望ましい。
バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化剤(C)が1重量部以上であると、本発明の導電性塗料を使用してシールド層を形成した際に、シールド層とパッケージ表面との密着性が良好になり、さらにシールド層の導電性が良好となる。その結果、シールド効果に優れたシールド層が得られやすい。
バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化剤(C)が150重量部以下であると、導電性塗料の保存安定性が向上する。また、導電性塗料の硬化物の比抵抗値を低くすることができる。
【0052】
(溶剤)
本発明の導電性塗料は、溶剤(D)を、バインダー成分(A)100重量部に対し、20~800重量部含む。
溶剤(D)としては、特に限定されず、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、アセトフェノン、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート等を使用してもよい。
これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(硬化触媒)
本発明の導電性塗料に含まれる硬化触媒(E)は、バインダー成分(A)の硬化温度を下げることができれば、そのような硬化触媒であってもよい。
このような硬化触媒(E)としては、有機金属化合物が挙げられ、有機金属化合物としては、Fe系硬化触媒及び/又はZn系硬化触媒が望ましい。
これらの中では、鉄-2-エチルヘキソエート(iron 2-ethylhexoate)、アセチルアセトン第2鉄(Iron(III) Acetylacetonate)、2-エチルヘキサン酸亜鉛(Zinc 2-Ethylhexanoate)、ナフテン酸亜鉛(Zinc Naphthenate)及びアセチルアセトン第2亜鉛(Zinc(II) Acetylacetonate)からなる群から選択される少なくとも一つであることがより望ましい。
これらの化合物を用いることにより、導電性塗料の硬化温度を好適に下げることができる。
【0054】
本発明の導電性塗料は、バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化触媒(E)を0.5~5重量部含む。
また、本発明の導電性塗料では、バインダー成分(A)100重量部に対して、硬化触媒(E)を0.6~4.8重量部含むことが望ましく、1.0~4.5重量部含むことがより望ましい。
バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化触媒(E)が0.5重量部以上であると、バインダー成分(A)の硬化温度を好適に下げることができる。さらにシールド層の導電性が良好となる。その結果、シールド効果に優れたシールド層が得られやすい。
バインダー成分(A)100重量部に対し、硬化触媒(E)が5重量部以下であると、本発明の導電性塗料を使用してシールド層を形成した際に、シールド層とパッケージ表面との密着性が良好になる。さらに、導電性塗料の保存安定性が向上する。
【0055】
(その他の添加剤)
本発明の導電性塗料は、発明の目的を損なわない範囲内において、消泡剤、増粘剤、粘着剤、充填剤、難燃剤、着色剤等、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0056】
本発明の導電性塗料では、液温25℃における粘度が、50~600mPa・sであることが望ましく、60~550mPa・sであることがより望ましく、100~500mPa・sであることがさらに望ましい。
導電性塗料の粘度が50mPa・s以上であると、導電性塗料を硬化させてシールド層を形成する際に、パッケージの壁面における液ダレを防止してシールド層をムラなく形成させることができるとともに金属粒子の沈降を防止することができる。
導電性塗料の粘度が、600mPa・s以下であると、導電性塗料をスプレー噴霧する際に、スプレーノズルの目詰まりを防ぎ、パッケージ表面及び側壁面にムラなくシールド層を形成し易い。
なお、本明細書において「導電性塗料の粘度」とは、円錐平板型回転粘度計を用いて回転数10rpmで測定した粘度のことを意味する。
【0057】
次に、本発明の導電性塗料を用いたシールドパッケージの製造方法について説明する。なお、このようなシールドパッケージの製造方法は、本発明のシールドパッケージの製造方法でもある。
【0058】
以下に示す本発明のシールドパッケージの製造方法の一例は、(1)パッケージ形成工程と、(2)パッケージ区分工程と、(3)導電性塗料塗布工程と、(4)シールド層形成工程と、(5)切断工程とを含む。
なお、本発明のシールドパッケージの製造方法では、(2)パッケージ区分工程は必須工程ではなく省略してもよい。
【0059】
各工程について、以下に図面を用いて説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明のシールドパッケージの製造方法のパッケージ形成工程の一例を模式的に示す模式図である。
図2は、本発明のシールドパッケージの製造方法のパッケージ区分工程の一例を模式的に示す模式図である。
図3は、本発明のシールドパッケージの製造方法の導電性塗料塗布工程の一例を模式的に示す模式図である。
図4は、本発明のシールドパッケージの製造方法のシールド層形成工程の一例を模式的に示す模式図である。
図5は、本発明のシールドパッケージの製造方法の切断工程の一例を模式的に示す模式図である。
【0060】
(1)パッケージ形成工程
まず、
図1(a)に示すように、複数の電子部品2が搭載され、これら複数の電子部品2間にグランド回路パターン3が設けられた基板1を準備する。
【0061】
次に、
図1(b)に示すように、電子部品2及びグランド回路パターン3上に封止材4を充填して硬化させ、電子部品2を封止することによりパッケージ5を作製する。
【0062】
封止材は、特に限定されないが、鉄やアルミニウム等の金属、エポキシ樹脂等の樹脂、セラミックス等を使用することができる。
【0063】
(2)パッケージ区分工程
次に、
図2に示すように、複数の電子部品2間の封止材4を切削して溝部6を形成する。
この溝部6によって電子部品2毎にパッケージ5を区分する。
この際、溝部6を構成する壁面からグランド回路パターン3の少なくとも一部を露出させる。
このような溝部6を形成することにより、後述するようにパッケージ5を容易に個片化することができる。
また、後述する導電性塗料塗布工程において、パッケージ5の側面にも導電性塗料を塗布することができる。
【0064】
(3)導電性塗料塗布工程
次に、
図3に示すように、パッケージ5が形成された基板1上に、導電性塗料7を塗布する。
導電性塗料を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、はけ塗をしてもよく、スプレーガン等によって噴霧してもよい。
噴霧により導電性塗料7を塗布する場合の噴射圧力、噴射流量、スプレーガンの噴射口からパッケージ5の表面まで距離等の噴霧条件は、適宜設定することが望ましい。
【0065】
(4)シールド層形成工程
次に、導電性塗料7を乾燥させた後、
図4に示すように、導電性塗料7が塗布された基板1を加熱して、導電性塗料7を硬化させることによりシールド層7aを形成する。
本工程において、導電性塗料7の乾燥と硬化は同時に行ってもよく、別々に行ってもよい。
加熱の温度は特に限定されないが、120~150℃であることが望ましい。
導電性塗料7は上記本発明の導電性塗料であるので、このような低い加熱の温度であっても、導電性塗料7は充分に硬化する。
【0066】
(5)切断工程
図5に示すように、パッケージ5が個片化するように、溝部6に沿って基板1を切断する。
基板1の切断方法は特に限定されないが、ダイシングソー等により切断することができる。
【0067】
以上の工程を経て、パッケージ5にシールド層7aが形成されたシールドパッケージ8を製造することができる。
【0068】
上記の通り、本発明の導電性塗料は、硬化温度が低い。そのため、熱による電子部品へのダメージを抑えることができる。
また、加熱温度を高くしなくてよいので、加熱にかかるコストも下げることができる。
【実施例】
【0069】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1~10)及び(比較例1~9)
表1及び2に示す組成で各材料を混合して実施例1~10及び比較例1~9に係る導電性塗料を作製した。表1及び2中の数値は、重量部を意味する。
【0071】
【0072】
【0073】
なお、表1及び2に示す各組成は以下の材料を用いた。
[バインダー成分(A)]
固形エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「JER157S70」)40重量部、グリシジルアミン系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-3905S」)30重量部、及び、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂((株)ADEKA製、商品名「EP-4400」)30重量部の混合物
[金属粒子(B)]
平均粒径2μmの球状還元銀粉750重量部、及び、平均粒径5μmのフレーク状銀粉(平均粒径5μm、アスペクト比=5)750重量部の混合物
[硬化剤(C)]
イソシアネート硬化剤:ポリイソシアネート化合物(DIC(株)製、商品名「DN-992」)
イミダゾール硬化剤:2-エチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)
ラジカル硬化剤:クメンハイドロパーオキサイド(東京化成工業(株)製)
[溶剤(D)]
1-メトキシ-2-プロパノール(キシダ化学(株)製)
[硬化触媒(E)]
Fe系硬化触媒:アセチルアセトン鉄(キシダ化学(株)製)
Zn系硬化触媒:2-エチルヘキサン酸亜鉛(ナカライテスク(株)製)
【0074】
(硬化性の評価)
各実施例及び各比較例に係る導電性塗料を、厚さ20μmになるようにガラスプレートに塗布し、120℃で60分間加熱し、導電性塗料の硬化性を評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表1及び2に示す。
〇:導電性塗料が、完全に硬化していた。
×:導電性塗料が、硬化していなかった、又は、半硬化状態であった。
【0075】
(比抵抗の評価)
ガラスエポキシ基板上に幅5mmのスリットを設けた厚さ55μmのポリイミドフィルムを貼り付けて印刷版とした。
各実施例及び各比較例に係る導電性塗料を、ポリイミドフィルム上にライン印刷(長さ60mm、幅5mm、厚さ約100μm)し、120℃で60分間加熱することにより導電性塗料を本硬化させた。その後、ポリイミドフィルムを剥離することにより、硬化物サンプルを得た。テスターを用いて、得られた硬化物サンプルの抵抗R(Ω)を測定し、硬化物サンプルの断面積S(cm2)と長さL(cm)から下記式(1)により比抵抗(Ω・cm)を計算した。
比抵抗=断面積S/長さL×抵抗R・・・(1)
結果を表1及び2に示す。
【0076】
(アセトンラビング性の評価)
上記「比抵抗の評価」と同じ方法で、各実施例及び各比較例に係る導電性塗料を用いた硬化物サンプルを得た。
アセトンをしみ込ませたペーパータオルを、硬化物サンプル上で10往復させた。そして、硬化物サンプルにおいて、下記式(2)により、導電性塗料の硬化物が剥がれた率(%)を測定した。
導電性塗料が剥がれた率={1-([ペーパータオルで処理した後に残留している硬化物サンプルの面積]/[ペーパータオルで処理する前の硬化物サンプルの面積])}×100・・・(2)
本評価では、導電性塗料の硬化物の剥がれた率が低い程、導電性塗料はよく硬化していることを示している。
結果を表1及び2に示す。
【0077】
(塗布安定性の評価)
図6(a)~(c)は、塗布安定性の評価の方法を模式的に示す模式図である。
各実施例及び各比較例に係る導電性塗料を、
図6(a)に模式的に示す塗布装置(スプレーイングシステムスジャパン(株)製、スプレーカートIII、スプレーノズル:YB1/8MVAU-SS+SUMV91-SS)を用いて、
図6(b)に示す正方形のガラスエポキシ基板(縦10cm×横10cm×厚さ1mm)に以下の要領で噴霧塗布して、導電性塗料の塗布安定性を評価した。
【0078】
図6(a)において、符号25はタンク(塗料容器)を示し、符号26はチューブを示し、符号27はノズルを示し、符号28は回転台を示し、符号29は撹拌装置を示し、符号30は気体導入管を示し、符号31はガラスエポキシ基板を示す。タンク25はほぼ円筒形で容量3Lの容器であり、撹拌羽根を有する撹拌装置29が備えられ、気体導入管30から窒素等の気体を導入して内部を加圧するようになされている。チューブ26は長さ3m、内径4mmであり、タンク25とノズル27とを相互に接続している。チューブ26は一部にたるみ(26a)を有し、たるみ部分の高低差(
図6(a)におけるt)は3cmである。ノズル27の長さは78mm、噴射口径は0.5mmである。回転台28の上面からノズル27の先端部までの距離は8cmである。
【0079】
ガラスエポキシ基板31には、
図6(b)に示すように、4片のポリイミドテープ32~35をガラスエポキシ基板31の各角部近傍にそれぞれ貼り付け、ポリイミドテープ36をガラスエポキシ基板31の中央部に貼り付けた。各ポリイミドテープ32~36の面積は1cm×1cm(
図6(b)における寸法a及びbが共に1cm)であり、各ポリイミドテープ32~35は、ガラスエポキシ基板31の各辺から1cm内側(
図6(b)における寸法c及びdが共に1cm)に、テープの辺が基板の辺に平行になるように貼り付けられている。
【0080】
このガラスエポキシ基板31を、回転台28の上面中央部に配置した。ノズル27の先端部からガラスエポキシ基板31までの水平距離(
図6(a)におけるs)は25cmとした。次に、タンク25へ導電性塗料2kgを投入し、直後に回転台28を160rpmで回転させながら、下記スプレー条件でスプレー塗布を行い、120℃で60分間加熱して、厚さ20μmの導電性塗料の硬化物を形成した。
さらに、上記導電性塗料をタンク25に投入後20分間経過してから上記と同じ条件でスプレー塗布を行い、同じ条件で加熱して厚さ約20μmとなるように導電性塗料の硬化物を形成した。
以下、導電性塗料をタンク25に投入した直後に形成した導電性塗料の硬化物を「硬化物A」と記載し、導電性塗料をタンク25に投入後20分間経過してから形成した導電性塗料の硬化物を「硬化物B」と記載する。
【0081】
<スプレー条件>
液圧:0.1MPa、パターンエア:0.07MPa
室温:25℃、湿度:60%
塗布時間及び塗布回数:塗布時間8秒、塗布回数4往復
【0082】
加熱が終了してから30分間室温で放置した後にポリイミドテープ32~36をそれぞれ剥がして、
図6(c)に示すように、剥がした部分(矢印X)のガラスエポキシ基板31の厚さと、その剥がした部分に隣接する、ガラスエポキシ基板31上に導電性塗料の硬化物41が形成された部分(矢印Y)の厚さをそれぞれマイクロメータで測定し、後者から前者を引き算することによって5箇所の導電性塗料の硬化物の厚さを求めた。
【0083】
硬化物Aの厚さ及び硬化物Bの厚さから、塗布安定性の評価を行った。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表1及び2に示す。
〇:5箇所全ての硬化物Aの厚さ、及び、5箇所全ての硬化物Bの厚さが、20μm±5μmの範囲に入っていた。
×:1箇所以上で、厚さが20μm±5μmの範囲に入らない硬化物A、及び/又は、硬化物Bが形成されていた。
【0084】
(クロスカット試験)
シールド層とパッケージ表面又はグランド回路との密着性を、JIS K 5600-5-6:1999(クロスカット法)に基づき評価した。
具体的には、グランド回路との密着性評価用に銅張積層板を用意し、パッケージ表面との密着性評価用のモールド樹脂を用意した。それぞれに、幅5cm、長さ10cmの開口部が形成されるようにポリイミドテープでマスキングし、各実施例及び各比較例に係る導電性塗料を、
図6(a)に模式的に示す塗布装置(スプレーイングシステムスジャパン(株)製、スプレーカートIII、スプレーノズル:YB1/8MVAU-SS+SUMV91-SS)を用いて導電性樹脂組成物をスプレー塗布した。その後、120℃で60分間加熱することにより導電性樹脂組成物を硬化させ、ポリイミドテープを剥離し、厚み約20μmの塗膜を形成した。塗膜が形成された銅箔、及び、モールド樹脂上でクロスカット試験を行った。
密着性の評価は、次の基準で行った。
○:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがなかった。
×:カットの交差点において塗膜の小さなはがれが生じていた。もしくは、カットの縁部分、交差点、全面的にはがれが生じていた。
【0085】
(保存安定性の評価)
まず、製造直後の各実施例及び各比較例に係る導電性塗料の粘度をBH型粘度計ローターNo.7(10rpm)を用いて測定した。測定した粘度を初期粘度(V0)とした。
次に、製造してから常温で3日放置後の各実施例及び各比較例に係る導電性塗料の粘度をBH型粘度計ローターNo.7(10rpm)を用いて測定した。測定した粘度を3日放置後粘度(V3)とした。
下記式(3)により粘度の変化率(%)を算出し、導電性塗料の保存安定性を評価した。
評価基準は以下の通りである。結果を表1及び2に示す。
変化率={(V3-V0)/V0}×100・・・(3)
〇:変化率(%)が-20%~20%であった。
×:変化率(%)が-20%よりも低い、又は、20%よりも高かった。
【0086】
表1に示すように、実施例1~10に係る導電性塗料は、硬化性の評価、比抵抗の評価、アセトンラビング性の評価、塗布安定性の評価、及び、クロスカット試験において良好な結果であった。
また、硬化剤(C)としてイソシアネート硬化剤を使用した実施例1~8に係る導電性塗料は、保存安定性の評価においても良好な結果であった、
【0087】
表2に示すように、硬化触媒(E)を含まない比較例1に係る導電性塗料は、硬化温度が120℃では、充分に硬化しなかった。
また、比較例1に係る導電性塗料は、比抵抗の評価において比抵抗値が高く、硬化物の導電性が不充分であった。
また、比較例1に係る導電性塗料は、アセトンラビング性の評価において、導電性塗料の硬化物が剥がれた率が高く、充分に硬化しなかった。
【0088】
比較例2及び3に係る導電性塗料は硬化触媒(E)を含むものの、その量が、バインダー成分(A)100重量部に対し0.5重量部未満である。
このような、比較例2及び3に係る導電性塗料は、アセトンラビング性の評価において、導電性塗料の硬化物が剥がれた率が高く、充分に硬化しなかった。
【0089】
表2に示すように、比較例4及び5に係る導電性塗料は硬化触媒(E)を含むものの、その量が、バインダー成分(A)100重量部に対し5重量部を超える。
このような、比較例4及び5に係る導電性塗料は、塗布安定性及びクロスカット試験の評価が悪かった。
【0090】
表2に示すように、比較例6に係る導電性塗料は、金属粒子(B)の含有量が、バインダー成分(A)100重量部に対し500重量部未満である。
このような比較例6に係る導電性塗料は、比抵抗の評価において比抵抗値が高く、硬化物の導電性が不充分であった。
【0091】
表2に示すように、比較例7に係る導電性塗料は、金属粒子(B)の含有量が、バインダー成分(A)100重量部に対し2500重量部を超える。
このような比較例7に係る導電性塗料は、アセトンラビング性の評価において、導電性塗料の硬化物が剥がれた率が高く、充分に硬化しなかったといえる。
さらに、塗布安定性及びクロスカット試験の評価が悪かった。
【0092】
表2に示すように、比較例8に係る導電性塗料は、硬化剤(C)を含むものの、その量が、バインダー成分(A)100重量部に対し1重量部未満である。
このような比較例8に係る導電性塗料は、硬化温度が120℃では、充分に硬化しなかった。
また、比較例8に係る導電性塗料は、比抵抗の評価において比抵抗値が高く、硬化物の導電性が不充分であった。
また、比較例8に係る導電性塗料は、アセトンラビング性の評価において、導電性塗料の硬化物が剥がれた率が高く、充分に硬化しなかった。
さらに、塗布安定性の評価が悪かった。
【0093】
表2に示すように、比較例9に係る導電性塗料は、硬化剤(C)を含むものの、その量が、バインダー成分(A)100重量部に対し150重量部を超える。
このような比較例9に係る導電性塗料は、比抵抗の評価において比抵抗値が高く、硬化物の導電性が不充分であった。
さらに、保存安定性の評価が悪かった。
【符号の説明】
【0094】
1 基板
2 電子部品
3 グランド回線パターン
4 封止材
5 パッケージ
6 溝部
7 導電性塗料
7a シールド層
8 シールドパッケージ
25 タンク
26 チューブ
27 ノズル
28 回転台
29 撹拌装置
30 気体導入管
31 ガラスエポキシ基板
32~36 ポリイミドテープ
41 導電性塗料の硬化物