(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】加速核磁気共鳴撮像の方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 376
A61B5/055 ZDM
(21)【出願番号】P 2020513810
(86)(22)【出願日】2018-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2018074047
(87)【国際公開番号】W WO2019048565
(87)【国際公開日】2019-03-14
【審査請求日】2021-08-23
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(73)【特許権者】
【識別番号】520018392
【氏名又は名称】ユニベルシテ パリ-サクレー
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショフェール,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】シウシウ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カーン,ジョナ
(72)【発明者】
【氏名】ラザラス,カロル
(72)【発明者】
【氏名】ビグノー,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】バイス,ピエール
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/202707(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0212012(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106569158(CN,A)
【文献】特表2012-530549(JP,A)
【文献】LAZARUS, Carole et al.,SPARKLING: Novel Non-cartesian Sampling Schemes for Accelerated 2D Anatomical Imaging at 7T Using Compressed Sensing,25th annual meeting of the International Society for Mgnetic Resonance Imaging,米国,ISMRM,2017年04月
【文献】BOYER, Claire et al.,On the generation of sampling schemes for Magnetic Resonance Imaging,SIAM journal on Imaging Sciences,米国,SIAM,2016年09月28日,Vol.9, Iss.4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の核磁気共鳴撮像を行う方法であって、
a.
縦方向と呼ばれる方向(z)
に沿って配向された静的であり且つほぼ一様な磁場(B0)
内に前記人体(BD)を浸漬する工程
であって、磁場(B0)は、縦方向磁場と呼ばれる、浸漬する工程と;
b.前記人体内の核スピンを励起するようにされた複数の無線周波パルス(RFP)を前記人体へ送信する工程と;
c.各前記無線周波パルス後に、k空間内のそれぞれの非パラメトリック軌跡(ST)を規定する時変傾斜磁場(G
x,G
y)を前記人体へ印加し、前記励起された核スピンにより発射される磁気共鳴信号のサンプルを同時に取得する工程であって、各サンプルは前記軌跡に属する前記k空間の点(K
i,KS)に対応し、前記サンプルに対応する前記k空間の前記点は前記k空間の疑似ランダムサンプリング
であって、所定サンプリング密度に従う
疑似ランダムサンプリングを規定する、工程と;
d.前記人体の磁気共鳴画像を再構築するために、スパース促進非線形再構築アルゴリズムを、前記取得されたサンプルへ適用する工程であって;前記画像は2次元、3次元又は4次元アレイの画素により形成される、工程と、を含む方法において、
-前記k空間内の非パラメトリック軌跡
の数は前記アレイの一方向に沿った画素又はボクセルの数より少なく
、それぞれの非パラメトリック軌跡は、前記サンプルがそれにそって取得されるそれぞれの無線周波パルスに従い、;
-前記軌跡のそれぞれに沿ったサンプルの数は前記アレイの少なくとも1つの次元に沿った画素の数を超えることと;
-少なくとも前記k空間の中央領域において、同じ軌跡に属する任意の2つの隣接点間の距離(Δk)は1/FOV未満であり、FOVは被写体の再構築された画像の視界のサイズであることと、を特徴とする方法。
【請求項2】
前記
軌跡又は各軌跡に属する前記k空間の点を、所定サンプリング密度分布を一組の離散的押し出し測度へ投影することにより判断する工程c
0をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一組の離散的押し出し測度は、その最大振幅及び最大スルーレートがそれぞれの限度を超えない時変傾斜磁場に対応する前記k空間内のすべての連続的軌跡上で定義された押し出し測度により構成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程dは、前記取得されたサンプルに応じて非線形スパース促進判断基準を最適化することにより前記人体の磁気共鳴画像を再構築する工程であって、前記最適化は近位方法を使用して行われる工程を含む、請求項1乃至3に記載の方法。
【請求項5】
磁気共鳴映像装置を使用して行われる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法であって、工程c)中に、k空間内の非パラメトリック軌跡(ST)を定義する時変傾斜磁場(G
x,G
y)を前記人体へ印加する前記工程は前記磁気共鳴映像装置の最小傾斜ラスタ時間を使用して行われる、方法。
【請求項6】
-興味のある容積内でほぼ一様であり且つ
縦方向と呼ばれる方向に沿って配向された静磁場(B0)を生成するのに好適な第1のコイル(LC)
であって、静磁場(B0)が縦方向磁場と呼ばれる、第1のコイル(LC)と;
-前記興味のある容積内で時変傾斜磁場を生成するのに好適な一組の傾斜磁場コイル(CG
x,CG
y,CG
z)と;
- 前記興味のある容積内で無線周波パルスを生成するのに好適な少なくとも1つの無線周波数コイル(TC)と;
-請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法を行うために、前記傾斜磁場コイル及び前記1つ又は複数の無線周波数コイルを駆動するように、並びに1つ又は複数の前記無線周波数コイルにより受信された信号を取得及び処理するように構成又はプログラムされた制御ユニット(CU)と、を含む磁気共鳴映像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴撮像を比較的短時間で行うための方法及び装置に関する。本発明は一意的ではないが主として医療撮像の技術分野へ適用される。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴撮像(MRI:Magnetic Resonance Imaging)は、今日臨床的ルーチンにおいて使用される最も強力な撮像技術の1つであるが、特に数百万の画素を含む大きな画像及び/又は高分解能画像の取得が求められる場合は長い手順のままである。例えば、7.6の受容可能信号対雑音比(SNR)でT2*シーケンスを使用して205×205×52mm3の視界及び200μm分解能により人間の脳の3次元画像を取得することは、短い繰返し時間(TR≒20ms)で約3時間の取得時間を必要とし得、これは臨床的目的のためには明らかに受容不可能である。
【0003】
これは、多次元フーリエ変換により物理的空間へ関係付けられる所謂「k空間」領域(画像の空間周波数スペクトル)をサンプリングすることによりMRI画像が取得されるという事実による。サンプリング理論は、サンプリング周波数が、サンプリング(これは、MRIの場合、撮像対象人体の多次元フーリエ変換である)される信号に含まれる最高周波数の少なくとも2倍であるべきであるということを教示し、そうでなければエイリアシング・アーティファクトが出現することになる。これはナイキスト又はナイキスト・シャノン判断基準として知られている。結果として、従来の取得方式を使用すると、k空間サンプルの数は、再構築される画像の画素の数に少なくとも等しくなければならない。さらに、SNR要件が各サンプルの最小取得時間を課する。
【0004】
アーティファクトを回避しながら取得時間を低減するために、いくつかの技術が開発されてきた。
【0005】
これらの技術のうちのいくつか(同時マルチスライス撮像(SMS:Simultaneous Multislice imaging)及び並列MRIなど)は、磁気共鳴信号を取得するための複数の受信コイルを含む特化ハードウェアの使用に関わる。したがって、これらの実装は高価である。さらに、これらの実施形態は、画質が加速係数と共に急速に低下するので、制限された加速度を与える。両方の技術を同時に使用したとしても、合成加速係数は実際には8を超えない。
【0006】
他の技術は単一受信コイルの使用に準ずる(たとえ、複数のコイルの使用も可能であっても):これは、k空間情報の冗長性(放射状又は螺旋状及び圧縮感知(CS:Compressed Sensing)などの非デカルトk空間充填(non-Cartesian k-space filling))を活用する部分的フーリエ撮像の場合である。部分的フーリエ技術は極めて限られた加速係数(典型的には2未満)だけを提示するが、圧縮感知は特に高いマトリクスサイズ(高分解能及び小視界又は低分解能及び大視界のいずれか)による撮像中の桁違いの加速度を可能にする。[Haldar,2014]参照。
【0007】
CS MRIの概説は[Lustig et al,2008]に見出される。
【0008】
圧縮感知技術は以下の三原則に依存する:
-再構築される画像はスパース(又は圧縮可能)表現を受け入れなければならない。言い換えれば、分解係数の極一部分だけが厳密スパース性に関して非零となる又は圧縮性に関して零より著しく大きくなるように画像を所定ベース(例えばウェーブレットベース)で分解することが可能でなければならない。通常、雑音含有信号の場合、係数はその絶対値が雑音基準偏差に少なくとも等しくなければ零より著しく大きいと考えられる。代替的に、係数の所定部分(最大絶対値を有するもの)だけが維持され得る。例えば係数の上位1%だけが維持され得、100の圧縮係数をもたらす。
-再構築は、画像表現のスパース性を促進する非線形方法だけでなく取得されるサンプルとの整合性も使用して行われなければならない。
-k空間は、疑似ランダムパターンに従って、取得を加速するためにアンダーサンプルされなければならない。アンダーサンプリングは、信号取得の回数を低減し、したがって、必要とされる加速度を与え、一方、疑似ランダム性は、スパース表現においてサブサンプリング・アーティファクトが非干渉性である(すなわち、無相関化される又は雑音状である)ということを保証する。この非干渉性は、極めて重要であり、スパース(例えばウェーブレット)及び感知(例えばCS-MRIにおけるフーリエ)ベースで採取される要素の任意の対間の相関度を評価する。
【0009】
圧縮感知は、この戦略がより良い非干渉性(サンプル間のより低い相関)を提供するので、k空間の非デカルト系疑似ランダムサンプリングをしばしば使用する。しかし、デカルトサンプリング方式もまた、位相符号化方向に沿って実施するのが元々簡単であるので使用されてきた([Haldar,2011]参照)。さらに、疑似ランダムサンプリングは好ましくは非一様性であるべきであり、その密度はk空間内で取得される画像のエネルギー分布に整合する。臨床用途では、これは通常、k空間の中心近く(低い空間周波数)で最も高い可変サンプリング密度であって、高い空間周波数では低下する可変サンプリング密度を使用することを意味する。
【0010】
純粋に理論的観点から、疑似ランダムサンプリングは、必要とされるサンプリング密度に対応する所定確率分布に従うサンプリング点を描くことにより得られる可能性がある。しかし、実際上、これは、位相及び分割符号化方向により規定された面に対して直角である直線(読み取り方向)に沿ってデータ値を収集する前にサンプル位置が当該面内にポアソン・ディスク・サンプリングに従って独立に描かれた、[Lustig et al,2007]に開示された場合以外は実現可能ではない。しかし、これは3D手法であり、2D(マルチスライス)撮像へ容易には適用され得ない。一般に、2D MRIでは、サンプルは、高周波(RF)パルスによるその核スピンの励起後に撮像対象人体へ印加される時変傾斜磁場により規定される、滑らかな軌跡に沿って取得される。
【0011】
撮像対象人体へ印加される傾斜磁場を表現する。この傾斜磁場は、次のものにより表現されるk空間内の軌跡を規定する:
【数1】
【0012】
サンプリングは、前記軌跡に沿った点に対応する所定時間に励起される核スピンにより生成される核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)信号を取得することにより行われる。
【0013】
傾斜磁場振幅
【数2】
とそのスルーレートとの両方は、ハードウェア制約と、臨床応用の場合は生理学的制約との両方に起因して、それぞれの限界Gmax及びSmaxを超えることができない。したがって、十分に規則的な軌跡だけが許される。
【0014】
これらの軌跡は、人体の薄いスライス内の核スピンだけが励起される2D MRIでは2次元であり得るか、又は、励起が人体全体又はその厚いスラブに関する3D MRI技術における3次元であり得る。以下では、単純化のために、2D軌跡の場合だけが考察されることになるが、本発明はまた、3D及びさらには4D(すなわち、動的)MRIへ適用される。
【0015】
MRIの重要な特徴は、NMR信号が励起RFパルスの印加後に指数関数的に減衰し、通常は消えるということである。これは、信号取得の期間と、したがって個々のk空間軌跡の長さとを制限する。結果として、完全なk空間サンプリングを行うために、それぞれの軌跡に沿ったNMR信号取得がそれぞれ続くいくつかの励起RFパルスが必要とされる。これらの励起RFパルスの繰返し時間TR(信号取得の期間に上限を課す)はまた、使用される撮像技術と、特に求められるコントラストのタイプ(T1、T2、T2*...)とに依存する。
【0016】
一般的に使用されるk空間軌跡は、平行線(デカルトサンプリングに至る)、スポーク(k空間の中心から放射状に発散する直線)、ロゼット、一様密度螺旋及び可変密度螺旋である。これらのすべては、例えばデカルト格子上の限定数の信号取得だけを行うことにより、又はスポーク、螺旋又はロゼットをランダムにサンプリングすることにより、圧縮感知へ適用されてきた。
【0017】
しかし、より良い結果は、より大きな非干渉性を提供する「非パラメトリック」軌跡を使用することにより達成される:
-何人かの著者はランダム摂動を「標準」(スポーク、螺旋...)軌跡内に導入することを提案してきた。例えば[Bilgin et al,2008];[Wang et al,2012]を参照。
-文献[Chauffert et al,2014]は、サンプリング点を所望確率分布に従ってランダムに描くことと、連続的軌跡を取得するために巡回セールスマン問題を解決することによりこれらのサンプリング点を接続することとを提案している。この手法の欠点は、各角度点が傾斜を停止すること、したがって取得期間を延長することを必要とするので、連続性が2D軌跡の十分条件(上記参照)ではないということである。
-文献[Boyer et al,2016]は、標的サンプリング分布の一組の「許容」2D(又は3D)曲線(すなわち傾斜磁場及び対応スルーレートの値に関する制限を超えることなく取得可能な軌跡を表すすべての曲線)上への投影に基づくさらにより有望な手法を開示する。この方法は「SPARKLING」(Segmented Projections Algorithm for K-space sampLING)と呼ばれる。
【0018】
「SPARKLING」の代替であるサンプリング戦略も、この文献に開示されるが、後で詳述されるように、これらのどれも、物理的に実現可能性のあるサンプリング方式を設計するためにサンプリング密度とハードウェア軌跡とを同時に制御することを許容しない。
【0019】
[Mir et al,2004]及び[Spiniak et al,2005]は、ミサイル誘導のために使用される技術に依存することによりk空間全体をできるだけ早くカバーするためのアルゴリズムを開示する。この考えは、その目的がシャノンの標本化定理を満足することだった(サンプルが空間を一様にカバーするべきであるということを意味する)ので、「SPARKLING」軌跡から逸脱する。
【0020】
[Curtis and Anand,2008]は、最適化技術を使用することによりランダム実現可能軌跡を合成することを教示する。この考えは、球の表面全体にわたって一様に分散されるランダム制御点を生成することである。次に、この方法は、二次円錐プログラミングを使用することにより、制御点近くを通過する実現可能な軌跡を探索することを含む。複数のランダム軌跡がこのようにして生成され、一般的アルゴリズムが、一様なk空間カバレッジを保証するように最重要軌跡を選択する。この考えは、明確なサンプリング理論から発生せず、「SPARKLING」軌跡とは対照的にランダム性に基づく。さらに、この手法は3D撮像に固有である。
【0021】
[Seeger et al,2010]、[Ravishankar and Bresler,2011]及び[Liu et al,2012]は、効率的サンプリング軌跡を生成するための統計的設計からアイデアを借りている。[Seeger et al,2010]は、一組の実現可能軌跡(例えば、いくつかの螺旋)を固定することと、各工程において最大情報量をもたらす軌跡を取り上げることにより軌跡を反復的に選択することとを教示する。したがって、最も有意な軌跡を見出すことは計算集約的となり、リアルタイム取得とは相容れない。[Ravishankar and Bresler,2011]及び[Liu et al,2012]はトレーニング画像に作用することにより計算負荷を低減するための代替手法を提案している。これらの適応手法はいくつかの欠点に悩まされる。第1に、MRIスキャナの多様性全体は、固定された軌跡が課されるので活用されない。SPARKLING形式はこのような制約を課さない。第2に、サンプリングされた画像への適応性が一見魅力的に見え得るとしても、この学習工程が本当に有用かどうかは依然として不明に思える[Arias-Castro et al,2013]。最後に、これらの手法は既存サンプリング理論から大いに逸脱するが、一方でSPARKLING軌跡は、確固たる且つ最近の定説により依然として動機付けられる。
【0022】
「非パラメトリック」軌跡は、それに沿って取得されるk空間サンプルの数より少ない数のパラメータに応じて表現されることができない軌跡として規定され得る。パラメトリック軌跡はそれに沿ってサンプルが採取される固定された形状を有するが、非パラメトリック軌跡の形状は、必要とされるサンプリング密度分布、Gmax及びSmaxなどの上述の制約、及びサンプルの数に応じて計算される。エコー時間(軌跡がk空間の中心を横断する時点)を規定するために、追加制約が使用され得る。より一般的には、「アフィン制約」が、どの時点で軌跡が特定k空間位置を通過するかを規定するために使用され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【文献】Haldar,2014
【文献】Lustig et al,2008
【文献】Haldar,2011
【文献】Lustig et al,2007
【文献】Bilgin et al,2008
【文献】Wang et al,2012
【文献】Chauffert et al,2014
【文献】Boyer et al,2016
【文献】Mir et al,2004
【文献】Spiniak et al,2005
【文献】Curtis and Anand,2008
【文献】Seeger et al,2010
【文献】Ravishankar and Bresler,2011
【文献】Liu et al,2012
【文献】Arias-Castro et al,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、このような非パラメトリック軌跡を使用することにより圧縮感知MRIの性能をさらに改善することを目指す。「性能を改善する」ことは、非圧縮方法により取得される基準画像に対する類似性の好適なメトリックにより規定される画質が、取得時間を延長することなく改善されること、又は等価的に、取得時間が画質を劣化することなく低減され得るということを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、サンプリング効率を増加するために読み取り時間Tobs(すなわちMR信号が各ショット中に取得される時間であって、シーケンスと所定重み付けとの動力学によりしばしば判断される時間)を増加することなく、k空間の中央(低い空間周波数)部分における少なくともナイキスト判断基準を満たすためにk空間をサンプリングすることにより、この目的を達成する。理想的には、傾斜ラスタ時間Δtは、MRIスキャナのハードウェア制約と生理的限界(例えば10μs)とに準ずるその最小値を採るべきである。
【0026】
本発明の根底をなす1つの重要な考えは、エイリアシング・アーティファクトを最小化するために、サンプル同士間の制御された距離を有するランダム化された軌跡に近づくこと(ハードウェア及び生理学的制約により許される限り)である。より正確には、出力サンプリング軌跡は、そのアンチエイリアシング特性及び改善された画像描画が周知のブルーノイズ・サンプリング(ポアソン・ディスク・サンプリング(Poisson-disk sampling)を使用することによりしばしば実施される)に似るべきである[Nayak et al,1998;Dippe and Wold,1985]。加えて、サンプル間の大きなギャップを回避することはまた、問題の条件付けを改善し、並列撮像に関連する雑音を低減する[Vasanawala et al,2011]。
【0027】
この手法は、非圧縮取得からナイキストサンプリング率未満のシナリオまでの様々な用途に使用され得る。
【0028】
したがって、本提案方法は、ナイキスト判断基準が満足される場合の一様サンプリング分布に準拠し、それらのデカルト軌跡より効率的な非デカルト軌跡を生成することを可能にする。他方で、本手法はまた、任意の密度の可変密度軌跡を生成することを可能にするので、CSフレームワーク(以前に述べた)へ適応化される。
【0029】
次に、本発明の目的は人体の核磁気共鳴撮像を行う方法である。本方法は、以下の工程を含む:
a.方向(縦方向と呼ばれる)に沿って配向された静的であり且つほぼ一様な磁場(縦方向磁場と呼ばれる)内に人体を浸漬する工程と;
b.前記人体内の核スピンを励起するようにされた少なくとも1つの無線周波パルスを前記人体へ送信する工程と;
c.前記無線周波パルス又は各前記無線周波パルス後に、k空間内の非パラメトリック軌跡を規定する時変傾斜磁場を前記人体へ印加し、励起された核スピンにより発射される磁気共鳴信号のサンプルを同時に取得する工程であって、各サンプルは前記軌跡に属するk空間の点に対応し、サンプルに対応するk空間の点はk空間の疑似ランダムサンプリング(所定サンプリング密度に従う)を規定する、工程と;
d.前記人体の磁気共鳴画像を再構築するために、取得されたサンプルへスパース促進非線形再構築アルゴリズム(sparsity-promoting nonlinear reconstruction algorithm)を適用する工程であって、
少なくともk空間の中央領域では、同じ軌跡に属する任意の2つの隣接点間の距離は1/FOV未満である、ここでFOVは被写体の再構築された画像の視界のサイズである、工程。
【0030】
本発明の別の目的は、
-興味のある容積内でほぼ一様であり且つ方向(縦方向と呼ばれる)に沿って配向された静磁場(縦方向磁場と呼ばれる)を生成するのに好適な第1のコイルと;
-前記興味のある容積内で時変傾斜磁場を生成するのに好適な一組の傾斜磁場コイルと;
-前記興味のある容積内で無線周波パルスを生成するのに好適な少なくとも1つの無線周波数コイルと;
-このような方法を行うために、前記傾斜磁場コイル及び1つ又は複数の前記無線周波数コイルを駆動するように、並びに1つ又は複数の前記無線周波数コイルにより受信された信号を取得及び処理するように構成又はプログラムされた制御ユニットと、を含む磁気共鳴映像装置(又は「スキャナ」)である。
【0031】
本発明の追加の特徴及び利点は、添付図面と併せて以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】「SPARKLING」軌跡を実施するための修正GRE(Gradient Recalled Echo)パルスシーケンスのクロノグラムである。
【
図3】十分にサンプリングされたデカルト系読み取りにより生体外で取得され、本発明の方法の性能を評価するために使用され、FFTを使用して再構築されたヒヒの脳の基準MRI画像である。
【
図4A】従来技術及び本発明の実施形態それぞれによる軌跡内の連続サンプル間の距離Δkのプロットである。
【
図4B】従来技術及び本発明の実施形態それぞれによる軌跡内の連続サンプル間の距離Δkのプロットである。
【
図5A】所与の数のショットのショット当たりのサンプル数の増加(したがって傾斜ラスタ時間の低減)に伴う「SPARKLING」軌跡である。
【
図5B】所与の数のショットのショット当たりのサンプル数の増加(したがって傾斜ラスタ時間の低減)に伴う「SPARKLING」軌跡である。
【
図5C】所与の数のショットのショット当たりのサンプル数の増加(したがって傾斜ラスタ時間の低減)に伴う「SPARKLING」軌跡である。
【
図6A】本発明の技術的結果を示すMRI画像である。
【
図6B】本発明の技術的結果を示すMRI画像である。
【
図7A】MRIスキャナの最小実現可能傾斜ラスタ時間に対応する率までサンプリング率を増加する際の利得を定量的に示すプロットである。
【
図7B】MRIスキャナの最小実現可能傾斜ラスタ時間に対応する率までサンプリング率を増加する際の利得を定量的に示すプロットである。
【
図8A】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図8B】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図9A】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図9B】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図9C】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図10A】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図10B】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図10C】本発明の技術的結果をさらに示すMRI画像である。
【
図11】本発明による方法を行うのに好適なMRI装置である。
【
図12A】それぞれ、放射状及び第1の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図12B】それぞれ、放射状及び第1の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図13A】それぞれ、螺旋状及び第2の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図13B】それぞれ、螺旋状及び第2の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図14A】それぞれ、デカルト系及び第3の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図14B】それぞれ、デカルト系及び第3の「SPARKLING」サンプリング軌跡である。
【
図15】「PROPELLER」サンプリング方式である。
【
図16】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【
図17】3つの異なるソートの3D「SPARKLING」軌跡である。
【
図18】3つの異なるソートの3D「SPARKLING」軌跡である。
【
図19】3つの異なるソートの3D「SPARKLING」軌跡である。
【
図20】3D「SPARKLING」軌跡を設計するための様々な候補標的密度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の様々な実施形態は、非一様サンプリング密度又は一様サンプリング密度のいずれかによりk空間の疑似ランダムサンプリングを行うために様々な種類の軌跡を使用する。以降、「SPARKLING」軌跡の特に有利であるが非限定的なケースについて詳細に考察する。「SPARKLING」は、[Boyer et al,2016]により開示されたアルゴリズムにより生成され、好適なパラメトリック軌跡(例えば放射状、螺旋状又はデカルト軌跡)により初期化され、「非圧縮」軌跡と比較して低減された数のショットを含む非パラメトリック軌跡である。実際、「SPARKLING」パターンにより誘起されるサンプリング効率の利得は、取得されたショットの数をパラメトリック軌跡と比較して劇的に低減することを可能にする。
【0034】
その結果の「SPARKLING」軌跡の形状は、初期化のために使用されるパラメトリック軌跡に依存する。以下では、放射状軌跡により初期化された「SPARKLING」軌跡のケースについて詳細に考察する。
【0035】
例えば、
図12Aは34個のスポーク放射状軌跡を示し、
図12Bは初期化のために
図12Aの放射状軌跡を使用して取得された「SPARKLING」軌跡を示す。「SPARKLING」軌跡は一組のN
c=34個の基本軌跡ST(初期化軌跡のスポーク毎に1つ)で構成される。そのうちのいくつかが基準KSにより示される個々のk空間サンプリング点は2つの図の差込み内に見ることができる。上に論述したように、及び同図上で明らかに見ることができるように、「SPARKLING」軌跡は初期化軌跡より密にサンプリングされる。その「曲がりくねった」形状はk空間のより効率的な探査を保証する。
【0036】
同様に、
図13Aは螺旋サンプリング軌跡を示し、
図13Bは対応「SPARKLING」軌跡を示す。
【0037】
また、
図14Aはデカルトサンプリング軌跡を示し、
図14Bは対応する「SPARKLING」軌跡を示す。
図14Aの差込みは、ナイキスト判断基準を満足する完全なサンプリングを行うために必要とされるだろう基本(水平方向)軌跡の数の1/8だけを採用することによりデカルト軌跡がk空間の一方向にアンダーサンプルされるということを明らかに示すが、各基本軌跡STはナイキスト率でサンプリングされる。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態による「SPARKLING」k空間軌跡を実現するパルスシーケンス(より具体的には、T2
*重み付け解剖学的撮像のためのGradient Recalled Echo(GRE)シーケンス)のクロノグラムを示す。「長手方向」方向zに沿って配向された静的且つ均一な磁場B0内に撮像対象人体(例えば患者の頭)が浸漬されるということが想定される。この磁場は人体の原子核のスピンの部分的整列を誘起する。整列された核スピンは、磁場B0の値と核の磁気運動量の値とに依存して、好適な周波数(Larmor周波数)において無線周波パルスRFPにより励起(すなわち反転)され得る。2Dシーケンスでは、図上に示されたもののように、傾斜磁場G
z(すなわちその振幅がz方向に沿って線型に変化する、z方向に沿って配向された磁場)も印加される。これは、Larmor周波数をzに沿って可変にする効果があり、その結果、人体の薄いスライス内の核スピンだけが、RFパルスと共振し、励起され得る。MRIの当該技術分野で知られるように、この「スライス選択」傾斜パルスには、z方向に対し垂直なxy面内の核スピン配向の分散を補償するG
z傾斜(「再集束傾斜(refocusing gradient)」)磁場の短い負のブリップが後に続く。
【0039】
スライス選択傾斜G
zの使用に起因して、k空間の2D k
xk
y面のサンプリングを必要とする人体の選択されたスライスの2D画像だけが取得される。以下では、表現「k空間」はその中の3次元k
xk
yk
z空間と2次元面との両方を示すために使用される。k空間内(より正確には2D k
xk
y面内)の軌跡は、RF励起パルスの終了後にG
x及びG
y傾斜を再生することにより定義される。印加磁場は常にz方向に沿って配向されるが、その振幅はx及びy方向に沿った線形変動を示すということを強調することが重要である。まず第1に、G
x及びG
yパルスが、サンプリングされるk
xk
y面の領域の境界上の好適な点に到達するために印加される。次に、全体的放射配向を有する曲がりくねった軌跡を規定し、k
xk
y面の中心に向けられた「任意の」G
x及びG
y波形が再生される。同時に、励起された核により発射されたNMR信号のサンプルが、アナログ・ディジタル(ADC)変換器を含む好適な取得回路へ接続される1つ又は複数の無線周波数コイルにより取得される。その期間T
obsがNMR信号の減衰により制限される取得期間が
図1上の基準OPにより示される。取得期間の終了後、残留横断磁化をキャンセルするために最終G
x傾斜パルス(「スポイル傾斜」)が印加される。繰返し時間TRは、無線周波パルスRFPの直前に始まりスポイル傾斜パルスの終わりに終了する間隔に対応する。
【0040】
このシーケンスは、必要とされるk空間サンプリングを一緒に提供するそれぞれのk空間軌跡を定義する様々なG
x及びG
y波形により何回か繰り返される。励起RFパルスとその関連傾斜波形とにより構成されるアンサンブルは「ショット」と呼ばれ、各ショットは基本軌跡(
図12B上の要素ST参照)に対応し、被写体の画像の選択されたスライスの取得は通常いくつかのショットを必要とする。
図2は、k
xk
y面を不均一にサンプリングすることによる一組のN
c=60個の「SPARKLING」軌跡又はスポークを示す。この図上で、基準STは「ショット」に対応する個々の軌跡を示し、MTはN
c個の個々の軌跡を含むマルチショット軌跡全体に対応する。
【0041】
実際、傾斜磁場Gx及びGyは、時間間隔Δt(「傾斜ラスタ時間」)だけ分離された離散的時間点において階段状変化を受ける。サンプリングはまた、規則的時間間隔dt(「ADCドウェル時間」)で行われる。本発明の一実施形態によると、ADCドウェル時間dtは2つの連続傾斜ステップ間にいくつかのサンプルを収集することを可能にするように傾斜ラスタタイル以下(dt≦Δt)であることが好ましい。同時に、ADCドウェル時間を一定限界を超えるまで低減することは、SNRを受容不能レベルまで低減する。したがって、本発明の各特定実施形態に関し、見出され得るdtの最適値がある。
【0042】
k
i(1)を、i番目ショットに関連する軌跡の出発点のk空間内の位置とする。NMR信号の第1のサンプルはこの点に対応して取得される。他のサンプルは次式により与えられるk空間位置に対応する:
【数3】
ここで、m∈[2:M]は整数指標であり、Mは軌跡に沿って取得されたサンプルの全体数であり、q及びはそれぞれ次式による取得時間のユークリッド除法のモジュラス及び残余である:
t
ADC,m=(m-1)*dt=q*Δt+r (3)
dt=Δtであれば、r=0、そしてADCサンプルの数は傾斜時間ステップの数に整合する。dt<Δtであれば、ADCサンプルの数は傾斜時間ステップの数より大きい。
【0043】
図3は、従来の「デカルト系」読み取り(すなわち直線k空間軌跡、及び長方形格子に続くk
xk
y面の規則的サンプリング)を使用して取得されたヒヒの脳のスライスの512×512画素のMRI画像を示す。より正確には、画像は、ショット当たり512個のサンプルを有する512個のショットを使用して取得された。k空間内のサンプルの数は再構築された画像内の画素の数に等しく、ナイキスト判断基準を満足する。各ショットの取得時間窓は期間T
obs=30.72msを有し、全走査時間はT
f=4分42秒だった。以下では、
図3の画像はこのような方法の性能を評価するための基準として役立つ。
【0044】
「従来の」MRI方法(すなわち完全デカルト系読み取りを使用する非加速化方法)では、ショットの数N
fは通常、例えばy方向に沿って再構築される画像の画素の数に等しい数が採用される:N
f=n
y。より一般的には、非デカルト系(例えば、放射状)読み取りの場合は、
【数4】
ここで、N=n
x・n
yであり、n
xはx方向に沿った画素の数である。取得時間T
fはT
f=N
fTRにより与えられ、ここで、TRはショット繰返し時間(すなわち2つの連続RFパルス間の間隔)であり、上述のように、求められるコントラストに依存し、したがって使用される特定パルスシーケンスに依存する。
【0045】
マルチショット圧縮感知MRIでは、低減された数のショットだけが使用される:Nc=αNf、ここでα<1である。通常、サンプルの数nsは完全取得のケースと同じである(ns=nx)。繰返し時間TRは核スピンの緩和時間により制約され、したがって、読み取り方法により影響されない。したがって、取得時間はTc=NcTRである。
【0046】
Rが低減係数(すなわち取得されたサンプルの数が低減される係数)を指し、Aが加速係数(すなわち取得時間が低減される係数)を指すとき、以下のことが分かる:
R=Nf/Nc=α-1、A=Tf/Tc=Nf/Nc=α-1 (4)
したがってA=R。
【0047】
上述のように、本発明の考えは、取得時間の観点の追加費用無しに(すなわち固定されたAにより)k空間サンプリング効率を改善すること(取得されるサンプルの数を増加することと、したがって低減係数R(1よりはるかに小さい可能性がある)を低減することとを必要とする)からなる。上に説明したように、取得時間はショット数Ncと繰返し時間TRとの積である。繰返し時間は使用される特定MRIシーケンスにより判断されるので、加速取得(A>1)は、ショットの数Ncが、1次元に沿った標的画像の画素の数より少ない(例えばNc<ny)場合だけ(好適には著しく(すなわち少なくとも5の係数だけ、又はより良好には10の係数だけ)低い場合だけ)取得され得る。Rを低減することは、各基本軌跡に沿って多くのk空間サンプル(他次元に沿った標的画像の画素の数より多い)を取得することを必要とする:ns>nx。別途明記しない限り、本発明によると、低減された数のショットが使用されるが、各ショットに対応するk空間軌跡が「オーバーサンプル」される。本発明の方法では、個々の単一ショット軌跡がオーバーサンプルされるがk空間全体としては必ずしもそうではないということを強調することが重要である。実際、本発明の様々な実施形態によると、低減係数Rは1を超えるか、1に等しいか、又は1未満であり得る。
【0048】
重要なことには、オーバーサンプリングは、k空間の少なくとも中央領域(すなわち「低い」空間周波数の)において、連続サンプル間の最大k空間距離がΔk<Δkcartとなるようなやり方で行われなければならない。ここで、Δkcart=1/FOVであり、FOVは再構築される画像の視界(1次元に沿ったそのサイズ(好適には、画像が正方形でなければ最小サイズ)として定義される)である。
【0049】
繰返し時間は固定され、考慮点を重み付けるNMRにより判断され、したがってショット毎に利用可能な取得時間である。結果として、軌跡をオーバーサンプルすることは、各k空間サンプルの取得時間と、したがってそのSNRとを低減することを意味する。これは、このようなオーバーサンプリング戦略が本発明者らの知る限りこれまで考慮されていない主な理由である。
【0050】
実際、さらに論述されるように、特に
図6A/6Bと
図7A/7Bを参照すると、オーバーサンプリングは従来の「パラメトリック」k空間軌跡の場合は有益ではなく有害ですらあり得る。本発明のサンプリング手法は「SPARKLING」軌跡などの「非パラメトリック」軌跡の場合だけに有利である。
【0051】
実際、いかなるパラメータ化軌跡(例えば放射状、螺旋状、ロゼット...)を支持したとしても、この曲線に沿ったオーバーサンプリングは基本的に、固定された軌跡全体にわたるより多くのフーリエサンプル(dt≦Δtを有する)を収集する(すなわちnsを増加する)ことから構成される。しかし、支持軌跡は固定されパラメータ化されるので、これはk空間のより大きな又は異なる部分を探索する機会を提示しない。結果として、画質という意味で、所与の軌跡全体にわたってより多くの情報を収集することに利益はない。
【0052】
状況は、ショット当たりサンプル数が増加されると(すなわちΔtが低減されると)その支持が変化する非パラメトリック軌跡が使用される場合は異なり、したがってk空間のより広い部分にわたって情報を収集する可能性を提示する。これは、「SPARKLING」の場合と同様にそのゴールが最小量の時間で収集されたフーリエサンプルのカバレッジを最大化することである最適化アルゴリズムに軌跡が基づく場合に特に当てはまる。
【0053】
「SPARKLING」は、標的サンプリング分布を、滑らかな軌跡により特に支持される一組の離散的押し出し測度(discrete pushforward measure)にわたって投影することから構成される最適化ベース方法に依存する[Lazarus et al,2017;Boyer et al,2016]。数学的に、この問題は、恐らく非凸制約(non-convex constraint)下の非凸状変動最適化問題(non-convex variational optimization problem)として投げかけられ得る[Boyer et al,2016]。この制約は通常、傾斜振幅及びスルーレートの最大許容値により表現されるが追加アフィン制約も使用され得、例えば、軌跡は定義時点(例えばエコー時間定義の)にk空間の特定点を通過するということを課する。
【0054】
図解目的だけのために与えられた
図2の「SPARKLING」軌跡は、2の累乗で減衰する放射状2D密度の、MRIサンプリングに関与する制約(すなわち傾斜振幅及びスルーレート:Gmax=40mT/m及びSmax=200T/m/s)を満たす軌跡により運ばれる測度への投影である。
図2のN
c=60個の軌跡はn
s=4096個のサンプリング点を含み、サンプルは、ヒヒの脳の512×512個の画像を再構築し、
図3の基準画像と比較されるために使用される。これは、各軌跡が8の係数だけオーバーサンプルされるということを意味する。低減係数Rは1に極近い(R≒1.067)、すなわち、特記しない限り、サンプルの全体数は、ナイキスト条件を満足する従来のデカルト系読み取りにおいて取得されるだろう数とほぼ同一である。
【0055】
しかし、加速係数Aは非常に高い:A=512/60=R≒8.53。このことは、取得時間がほぼ1桁の大きさだけ低減されるということを意味する。これは、各軌跡の取得時間すなわち「観測時間」Tobsがサンプルの数nsにより影響されないという事実により可能にされ、サンプル数の増加はサンプリング時間dtの対応低下を介し得られる。ここで、Tobs=30.72ms(Δt=10μs、Tobs=6×512×Δt、ここで6はオーバーサンプリング係数である)であり、且つdt=7.5μsである。
【0056】
本発明の例示的実施形態では、再構築は、以下のLASSO判断基準の最小化に基づき、反復且つ非線形(スパース促進)方法を使用して行われた:
【数5】
ここで、A=ΩF Ψであり、Ωはサンプリングマスク、Fは非一様フーリエ変換、Ψはスパース変換(例えばウェーブレット又はカーブレット変換、ここでは、4つの分解能レベル上のDaubechiesウェーブレットを使用するウェーブレット変換)である。データはyによりベクトル化されたやり方で表され、再構築される画像は以下のように読める:x=Ψ z、ここで、zはΨ基準でのxのスパース表現である。パラメータλは、データ完全性項(L
2ノルム)とsparsity promoting prior(L
1ノルム)との間のバランスを行う正則化パラメータであり、所与の画質判断基準を最大化するために手動で設定された(例えば1/NRMSE又はSSIM、
図7A及び7B参照)。最小化目的のために、近位最適化方法すなわちFISTA(高速反復ソフト閾値化アルゴリズム(Fast Iterative Soft Thresholding Algorithm))[Beck and Teboulle,2009]が使用された。
【0057】
高速フーリエ変換を適用する前にフーリエ領域内の補間を行う「Regridding」アルゴリズムもまた画像再構築のために試験された。以下に論述されるように、
図7A及び7Bを参照すると、「Regridding」アルゴリズムはFISTAなどの近位方法より著しく性能が低いということが分かった。
【0058】
図4Aは、512×512画素画像を取得するために使用された従来技術「SPARKLING」圧縮感知軌跡における連続サンプル間の距離Δkのプロットである。全軌跡は、それぞれが512個のk空間サンプルを含むN
c=60個の基本(単一ショット)軌跡を含む。
図4Bは同様なプロットであるが、本発明による「SPARKLING」軌跡のものである。ここで、N
c及び観測時間は不変であるが、各基本軌跡に沿ったサンプリング率は4の係数だけ増加される(n
s=2048)。
【0059】
「SPARKLING」軌跡のオリジナル版([Boyer et al,2016])では、ナイキスト制約は
図4Aに示すように管理されなかったが、最新版では、
図4Bに示すようにデルタk値はデカルト値より低く維持された(スケール差に留意)。これらの図上で、様々な色合いの灰色の線はサンプリング軌跡の様々なセグメントに対応する。これらの図は、オーバーサンプリングがΔk
cart線に近い又はΔk
cart線未満のローカルΔkを低減する(必ずしもあらゆる場所でではないが、少なくとも4のオーバーサンプリング係数の場所で)ということを明確に実証する。k空間の中心及び境界に最も関心があり、且つオーバーサンプリング係数を増加することが、この制約を満たすことを依然として可能にし得る。
【0060】
したがって、k空間の少なくとも中心部分における制約Δk≦Δkcartが、一組の滑らかな測度への所与の放射状密度の投影アルゴリズムにおける既存制約(ハードウェア傾斜制約(Gmax=40mT/m及びSmax=200T/m/s)とTE選択(k空間の中心が横断される時点k(TE)=0)とに既に関与した)へ追加された。
【0061】
図5A、5B及び5Cは、k空間の同じ領域全体にわたってサンプル数を増加するための「SPARKLING」軌跡MT
1、MT
2、MT
3を示す:それぞれn
s=1024、1536及び2048。ショット増加当たりのサンプル数が増加すると、投影問題の解である一組のセグメント(「SPARKLING」軌跡)がより組織化されるようになり、ショットはより対照的な構成を得るということが分かる。これは、Δtを30μs(
図5A)から15μs(
図5C)まで低減した直接結果である。Δt=15μs(n
s=2048)に関し、各ショットは広がるために利用可能な全長を使用するが、Δt=30μs(n
s=1024)の場合、全く異なる広がりの隣接セグメントが存在する。このことが、オーバーサンプリングの好ましい効果を正当化する。本発明の方法を試験するために使用されるMRIスキャナの可能な最小傾斜ラスタ時間は、Δt=10μsに対応し、n
s=3072を生じる。この値(したがって、
図5A~Cのパネルの)まで、dtはΔtに等しくなるように選択された。この値を超えることは、ns=4096の場合と同様にdt<Δtを選択することを必要とする。
【0062】
当然、ショット数Ncを増加することは好ましい効果も有するが、走査時間の増加を犠牲にする。
【0063】
重要な疑問は、オーバーサンプリング係数を上に考慮された4の値を超えさせることが有益か否かである。この態様は、予想シナリオにおいて分析される前に遡及的CS実験において最初に調査された。
【0064】
表1では、SSIM(古典的な画質評価スコア[Wang et al 2004]が、ショット数(Nc)と、本発明者らにより使用されるハードウェアの実現可能な最低値であるADCドウェル時間dt=1μsに対応するサンプル数(ns)(最大ns=3072)とに応じて計算される。
【0065】
【0066】
表1は、SSIMがns=3072まで連続的に(及び恐らくこれを超えて)増加するということと、nsを増加することが、所与のnsに関してショット数Ncを増加するより速い高SSIM値を(すなわち一定の走査時間で)得ることを許容するということとを示す。
【0067】
予想比較に関し、「SPARKLING」軌跡は、ショット全体にわたってオーバーサンプルすることは前者の状況において好ましい効果があるが、第2の状況では効果がないということを実証するために、サンプリングされたk空間領域の角へ到達する放射状スポークと比較された。いずれの場合も、ショット数は、N=512×512に関するA=8.5に対応するNc=60と、ns=4096(又はdt=7.5μs<Δt=10μs)とに設定されたので、R=1.06である。
【0068】
予想比較の結果はN
c及びn
sの上述の設定に関して
図6A(「SPARKLING」軌跡)及び6B(放射状軌跡)上に示される。
図6A及び6Bの目視検査は以下のことを結論付けることを可能にする:加速された「SPARKLING」軌跡から再構築されたMR画像は、同じ加速係数を有する放射状ベース・サンプリングから発生するものより良い品質(詳細部及び輪郭がより良く保持されている)である(例えば、後者の場合、皮質溝が過度に滑らかである)。
【0069】
この具体例以外に、パラメータn
sは、デカルト基準と比較してMR画像品質を劣化させることなく、どの限界が到達され得るかを見るために「SPARKLING」軌跡と放射状軌跡との両方に関して掃引された。この結果は、
図7A上にSSIMの観点で、及び
図7B上に正規化残留平均二乗誤差(NRMSE:normalized residual mean squared error)の観点で報告される。これらの図上で:
-線SFは「SPARKLING」軌跡及びFISTA再構築を使用して取得された画像のSSIMを表す;
-線SF’は「SPARKLING」軌跡及びFISTA再構築を使用して取得された画像のNRMSEを表す;
-線SRは「SPARKLING」軌跡及び「regridding」再構築を使用して取得された画像のSSIMを表す;
-線SR’は「SPARKLING」軌跡及び「regridding」再構築を使用して取得された画像のNRMSEを表す;
-線RFは放射状軌跡及びFISTA再構築を使用して取得された画像のSSIMを表す;
-線RF’は放射状軌跡及びFISTA再構築を使用して取得された画像のNRMSEを表す;
-線RRは放射状軌跡及び「regridding」再構築を使用して取得された画像のSSIMを表す;
-線RR’は放射状軌跡及び「regridding」再構築を使用して取得された画像のNRMEを表す。
【0070】
SSIMは「SPARKLING」軌跡に関してns=4096まで増加し(SSIMのns=3072において平坦域に達する)、一方オーバーサンプリングは放射状軌跡にいかなる好ましい影響も与えなかったということが分かる。同様に、NRMSEは「SPARKLING」軌跡のns=4096において達せられる最小値まで低下した。
【0071】
同様な結論は、放射状スポークと他の最適化ベース軌跡(サンプリング経路がnsに応じて進化する)とを比較すると、又は「SPARKLING」と螺旋などの代替パラメータ化非デカルト曲線とを比較すると引き出される可能性がある。
【0072】
同様な結果は、より少ないショットが使用される場合に(すなわちより加速された取得と、したがってよりアンダーサンプルされるサンプリング方式とに関して)当てはまる。例えば、
図8A及び8BはA=15(N
c=34)/R=1.88(n
s=4096)に対応する。これらの画像は、CS(すなわち可変密度を有する)のために設計された「SPARKLING」軌跡であって、最小傾斜ラスタ時間により提示される最大自由度を使用する「SPARKLING」軌跡が、いかなるサンプリング率の放射状軌跡よりも性能を上回るということを確認する。サンプリング軌跡は、異なるショット数以外は
図12A、12Bのものに似ている。
【0073】
この生体外検証以外に、単一及び複数のチャンネルコイルによる生体内取得が「SPARKLING」を使用して行われた。放射状軌跡は生体外調査結果と整合する。以下に続くものでは、複数(32)チャンネルコイル取得からの再構築MR画像だけが報告されたNEX>1。複数チャネルコイル取得に関して、再構築判断基準(5)は次のとおりである:
【数6】
ここで、y
lはl番目のコイル上で収集されたデータであり、S
lはk空間の中心から推定された対応感度マトリクスである。
【0074】
図9B及び9Cではそれぞれ、本発明による「SPARKLING」サンプリング方式及び「従来の」放射状サンプリング方式をそれぞれ使用して取得された生体内予想結果が、人間の脳におけるA=8に関して示され、デカルト基準画像9Aと比較された。取得時間は、「SPARKLING」サンプリング方式と放射状サンプリング方式との両方に関し35秒であり、
図9Cの基準画像(デカルト方式を使用して取得された)に関して4分42秒である。サンプリング軌跡は、異なるショット数以外は
図12A、12Bのものに似ている。
【0075】
同様に、同じ参加者に関して、
図10A~Cでは、デカルト基準画像(
図15A)との比較だけでなく「SPARKLING」(
図10B)サンプリング方式と放射状ベース(
図10C)サンプリング方式との間の同じ予想比較がA=15に関して行われた。両方の場合(A=8及びA=15)、放射状ベース・サンプリングから再構築されるMRは、脳の前部に位置する像構造を破壊する厳しいアーティファクト(縞模様)に悩まされる。この効果は、A=15ではより目立つ。
【0076】
サンプリング軌跡は、異なるショット数以外は
図12A、12Bのものに似ている。
【0077】
図11は、本発明による方法を行うための装置を極めて概略的に示す。この装置は基本的に、長手方向磁場B0を生成するための長手方向コイルLCと、RFパルスを生成しNMR信号を受信するための単一又は好適には複数の無線周波数コイルTCと、x、y及びz軸に沿った傾斜磁場G
x、G
y、G
zをそれぞれ生成するための3つの傾斜磁場コイルGCx、GCy及びGCz(図示せず)と、を含むMRIスキャナである。傾斜磁場コイルは、撮像対象人体BDが導入され得る容積の周囲に配置される。用語「人体」は広義に解釈されるべきであり、そのうちの少なくともいくつかが非零スピンを有すると思われる原子核を含む、任意の生きた又は生きていない対象物を示す。例えば、人体BDは人間の体又は動物の体又はその一部分(例えば頭)であってもよいし、「人体模型」などの製造品であってもよい。本装置はまた、所定の励起及び読み取りシーケンス(例えば
図1参照)に従って前記傾斜磁場コイル及び1つ又は複数の前記無線周波数コイルを駆動するとともに、1つ又は複数の無線周波数コイルからNMR信号を取得し画像再構築を行う制御ユニットCUを含む。制御ユニットは、適切にプログラムされた汎用コンピュータ若しくはディジタルシグナルプロセッサ、適切に構成され特化されたディジタル回路又はその両方を含み得る。制御ユニットはまた、NMR信号を取得するための受信回路であって、信号増幅器、サンプリング回路及びアナログ・ディジタル(ADC)変換器を含む受信回路を含む。
【0078】
本発明は、高分解能(N=512×512)に基づく具体例(GREシーケンスによる2次元T2*撮像)を参照して説明された。より具体的には、実験データ(予想生体外及び生体内取得)は、以下の取得パラメータを有する単一チャネル受信コイル及び複数チャネル受信コイルを使用して7テスラスキャナ上で取得された:繰返し時間:TR=550ms、エコー時間TE=30ms、スピンフリップ角α=25°、観測時間Tobs=30.72ms、ショット(dt=10μs)当たり3072個のサンプル。しかし、本発明の範囲はこの特定ケースに限定されない。
【0079】
実際、本発明はいかなるMRIサンプリング方式も交換及び改善するために使用され得る。
図16のフローチャート上に示すように、本発明の一実施形態による方法は、その入力として、傾斜ラスタ時間Δt、標的サンプリング密度並びに最大傾斜値(Gmax)及び/又は最大傾斜スルーレート値(Smax)などのハードウェア制約により特徴付けられる初期化k空間軌跡を取る。次に、入力軌跡は、傾斜ラスタ時間Δtを理想的には最小可能値Δt
minまで低減することにより、及びADCドウェル時間dt≦Δtを取ることによりオーバーサンプルされる。次に、例えば[Boyer et al,2016](projected gradient descent)に記載された種類の最適化アルゴリズムが行われ、ハードウェア制約に適合する一方で標的密度を近似するために、オーバーサンプルされた初期化軌跡を修正することになる。
【0080】
本発明は、説明したように2Dマルチスライスk空間サンプリングへ適用されるが、また、加速度が大いに増加され得る3D撮像及び4D撮像へすら適用される。軌跡最適化は、任意の古典的k空間充填サポート(デカルト系線、螺旋、放射...を含む)から始まって初期化され得る。
【0081】
本発明の方法は、GRE(上に詳述された例を参照)、Turbo FLASH(脳アプリケーション用のMPRAGEとも呼ばれる)から、Spin Echo(SE)又はTurbo Spin Echo(TSE)、TrueFisp(bSSFPとも呼ばれる)、EPIまでのセグメント化又は単発の任意のタイプのMR読み取り方式に適応化され得る。
【0082】
本発明の方法はまた、任意のタイプのMRシーケンス重み付けT1、T2、T2*、ρ(スピン密度)、fMRI(機能的MRI)又はBOLD MRIと、ASL(Arterial Spin Labelling)、そのすべての変数(DTI、DSI、IVIM、尖度、NODDI)を有するDWI(拡散重み付け撮像)、CESTを含む任意のタイプのMTR(磁化伝達比(Magnetization Transfer Ratio))、MRF(MR指絞採取)、静的又は動的の両方のMR血管造影などの同時マルチパラメータ技術を含む定量的MRIを非網羅的に含む準備とへ、適応化され得る。これは、MR体温測定法又は電磁特性トモグラフィ(EPT:Electromagnetic Property Tomography)などのより珍しいMRIアプリケーションを含む。
【0083】
本発明の方法はコイルフェイズドアレイを使用する並列撮像に準拠するということが実証された。本発明の方法はまた、同時マルチスライス技術に準拠する。
【0084】
本発明の一実施形態によると、渦電流又は傾斜遅延に起因する共振外れ効果が補正され得る。このような不完全性は、所定k空間軌跡(すなわち我々のアルゴリズムの出力)と実際のk空間軌跡(傾斜システムにより再生されたもの)との間の相違を誘起する。このような補正は例えば、再構築反復アルゴリズムに関する追加制約(データ完全性用語におけるNFFT計画の定義を更新することによる遡及的補正、又はSKOPEベース予想補正:GIRS[Vannejoe et al,2013,Vannejoe et al 2016]、又は傾斜波形のインパルス応答の合同評価によるブラインド再構築)として実施される。
【0085】
加えて、提案された手法の自立型ナビゲーション拡張機能(self-navigation extensions)(例えば、呼吸器系の)は、実装がかなり単純明快である[Feng et al,2016]。
【0086】
本発明の興味ある実施形態は「PROPELLER」技術[Pipe et al,1999]から示唆される。本発明の興味ある実施形態は、
図15に示すようにキャンディ歪(candy warp)の形状を有する軌跡に沿ったk空間をサンプリングすることから構成される。これは、スポークからスポークへの標的人体の運動を追跡及び補正することを可能にする。このような軌跡は、低空間周波数領域内の十分な情報をサンプリングすることを可能にし、面内運動補正のためのさらなる使用のために各スポークから低分解能像を再構築することを許容する。
【0087】
さらに興味あることには、本発明の手法は、圧縮感知文脈を超える任意の入力標的密度(可変密度だけでなくアンダーサンプリング(例えば低いマトリクスサイズのための)がない状況における一様密度も)を採用することができる。
【0088】
今まで、2D「SPARKLING」軌跡だけが考慮された。しかし、上に述べたように、及び以下にさらに詳細に論述されるように、「SPARKLING」技術はまた3D撮像へ適応化され得る。本発明のサンプリング手法は、3D「SPARKLING」軌跡へ、そしてより一般的には任意の他の種類の3D非パラメトリック軌跡へ単純明快に適用され得る。
【0089】
3D「SPARKLING」軌跡を構築する最も単純なやり方は、(FOV
z)
-1距離だけ離間されたN
z>1個の同一2D「SPARKLING」軌跡を積層化することである(FOV
zは積層化方向k
zに沿った視界の次元である)。
図17は、円柱を充填するN
z=10個の同一2D「SPARKLING」軌跡の積層化を表す(灰色の色合いは単に可視化目的のためのものである)。
【0090】
より興味あることには、完全3D可変密度を取得するために、その標的密度が積層化方向k
zに沿ったそれらの位置に従って変更される様々な2D「SPARKLING」軌跡を積層化することが可能である。3D密度
【数7】
を所与として、位置k
zにおける2D軌跡は密度
【数8】
で生成されることになる。ここで、n(k
z)は位置k
zにおける面のショットの数である。
図18は、3Dボールを充填するN
z=11個の様々な2D「SPARKLING」軌跡を含むこのような可変密度の積層化を表す。さらなる加速度は、面の数をサブサンプリングし、及びk
z方向に沿った並列撮像を使用することにより到達され得る。
【0091】
[Boyer et al,2016]の「SPARKLING」軌跡生成アルゴリズムがまた3Dケースへ直接的に一般化され得るが、計算時間の極めて著しい増加を犠牲にする(単純明快な実装では、アルゴリズムの計算複雑性はO(m
2)であり、mはサンプル数である)。この処理は、標的密度をk空間を充填するn
s(ショット数)個の容積セクタに切り捨て、及び各セクタの「SPARKLING」軌跡を他のものから独立に生成することにより加速され得る。処理をさらに加速するために、処理されるショットの数を球の半規則的分割を利用することにより低減することが可能である。
図19aはk空間球の表面を等しい面積のn
s=100個の領域(「タイル」)に分割する等積モザイク細工を示し、各領域は3D角度セクタを定義する(例えば球の中心とタイルの頂上とを接続することにより;2つの対称セクタを示す
図19bを参照)。等積の特性は、すべての3Dセクタが放射状密度の場合に等しい質量を有するということを保証する限り重要である。一定仰角に関し、すべてのタイル(したがってセクタ)は正確に同一であり、単純回転を使用することにより互いに得られる。「SPARKLING」軌跡は1つのセクタに関し計算され得(
図19c)、同じ仰角の他のセクタに対応する軌跡は回転により得られる(
図19d)。エコー時間がセグメントの中央に在る対称的ショットが望まれれば、計算される軌跡の数はさらに2により除算され得る(これは
図19b~19dのケースである)。2つの半部分間の不連続性を回避するために、セクタは原点近くで若干厚くされる。
図19a~19dの例では、n
s=100個のショットを生成するために7つの軌跡だけを計算すればよい。
【0092】
例示的実施形態では、3D画像に必要な長い計算時間に鑑み、標的密度は、減衰速度dにより減衰し閾値パラメータτに基づき切り捨てられ、密度πを与える形式
【数9】
の一組6つの放射状に減衰する密度の中から遡及的に選択された。密度の次の2つのパラメータがここでは変更された:減衰速度d∈{2,3}と平坦域閾値τ∈{0.5,0.75,1}。
図20は、N=320に関する6つの試験された密度を示す。様々な密度をランク付けするために、均一に離間されたサンプルが、ブルーノイズ特性を有する点の分布を迅速に生成すること(すなわち局所的一様カバレッジを生成すること)を可能にするVoronoi反復としても知られるLloydアルゴリズム(Lloyd,1982)を使用することにより各密度に沿って描かれた。m個のサンプルの初期位置は、考慮される密度に沿ったi.i.d.図により判断された。次に、LLoydアルゴリズムが次のように適用された:
-m個のサンプルのVoronoi図式が計算された。
-Voronoi図式の各セルの重心が計算された。
-次に、各サンプルはそのVoronoiセルの重心へ移動された。
【0093】
この処理は繰り返された(例えば10回)。Lloydアルゴリズムはサンプルを拡散することを許容した。初期iidサンプリング内に存在したクラスタは分裂され、ボイド領域が充填された。現実には、この処理は完全ではなく、いくつかの束のクラスタは10回を超える反復後ですら存続する。
【0094】
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