(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 9/16 20060101AFI20230420BHJP
【FI】
H01H9/16 A
H01H9/16 C
(21)【出願番号】P 2021016672
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2021-05-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渕崎 翔伍
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-209505(JP,A)
【文献】特開2017-112096(JP,A)
【文献】特開2020-035545(JP,A)
【文献】特開2012-134064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/00 - 9/28
13/00 - 13/88
89/00 - 89/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光部から光を取り入れる第1の領域と、前記第1の発光部とは独立して発光する第2の発光部から光を取り入れる第2の領域とを区画する区画壁を有するスイッチカバーと、
前記スイッチカバーの外側から視認可能に前記第1の領域に配設され、前記第1の発光部から入射する光を拡散する第1の導光板と、
前記スイッチカバーの外側から視認可能に前記第2の領域に配設され、前記第2の発光部から入射する光を拡散する第2の導光板と、
前記スイッチカバーに対し前記スイッチカバーの外側とは反対側であって、前記第1の発光部及び前記第2の発光部が設置された側から前記スイッチカバーの前記区画壁と接続され、前記第1の導光板と前記第2の導光板との間を区画し且つ前記第1の導光板及び前記第2の導光板を前記スイッチカバーとの間に挟んで保持する、光不透過性の材料で形成された導光板ホルダと、
を備え
、
前記区画壁は、前記導光板ホルダを接続するための貫通孔を有する筒状の壁面であり、前記導光板ホルダは、前記貫通孔に挿入される爪部を有すると共に、前記貫通孔に、前記爪部が挿入されることで、前記スイッチカバーと接続される
スイッチ。
【請求項2】
前記導光板ホルダは、前記スイッチカバーと接続された状態において前記貫通孔の全体を覆う
請求項
1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記爪部は、前記導光板ホルダを前記スイッチカバーに対して付勢するように、前記貫通孔の縁に対して斜めに当接する
請求項
1又は2に記載のスイッチ。
【請求項4】
基板上に配置され、前記第1の発光部が配置される前記第1の領域と、前記第2の発光部が配置される前記第2の領域とを区画する前記筒状の壁部を有する筐体をさらに備え、
前記導光板ホルダは前記区画壁を前記基板側に向かって延伸する筒状の部分を含み、
前記導光板ホルダの前記筒状の部分の前記基板側の端部は、前記筐体の前記筒状の壁部の前記基板とは反対側の端部よりも、前記基板側に位置する
請求項
1から3のいずれか一項に記載のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板を備えるスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、指針部により回動ノブの回動位置を判別可能なダイヤル式スイッチが提案されていた(例えば、特許文献1)。当該技術においては、回動ノブは、当該回動ノブの中心軸方向に沿って前後に長尺な指針部としてのレンズ部材と、レンズ部材の前部を前方と側方とへ露出させつつ当該レンズ部材を保持する切欠き部を周上に有するとともに、レンズ部材の内周面を覆う第1円筒部材と、前記第1円筒部材の後端部に係止されて前記レンズ部材の後面を覆うとともに、前記レンズ部材の後方へ延出する第2円筒部材とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばスイッチの開閉状態を表示するインジケータと、常時点灯する他の表示部のように、1つのスイッチに設けられる複数の導光板の一方を点灯させ、他方を消灯させる場合、消灯させたい導光板にも光源からの光が入射してしまうことがあった。そこで、本技術は、スイッチに複数の導光板を含む場合において漏光を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示のスイッチは、第1の発光部から光を取り入れる第1の領域と、第1の発光部とは独立して発光する第2の発光部から光を取り入れる第2の領域とを区画する区画壁を有するスイッチカバーと、スイッチカバーの外側から視認可能に第1の領域に配設され、第1の発光部から入射する光を拡散する第1の導光板と、スイッチカバーの外側から視認可能に第2の領域に配設され、第2の発光部から入射する光を拡散する第2の導光板と、スイッチカバーと接続され、第1の導光板及び第2の導光板をスイッチカバーとの間に保持する、光不透過性の材料で形成された導光板ホルダとを備える。
【0006】
上述の導光板ホルダはスイッチカバーとの間に導光板を保持できるため、導光板をスイッチカバーに接続するために例えば導光板自体に係合部を設ける必要がなくなる。よって、例えば係合部からの漏光を抑制することができる。
【0007】
また、区画壁は、導光板ホルダを接続するための貫通孔を有する筒状の壁面であり、導光板ホルダは、貫通孔に挿入される爪部を有すると共に、スイッチカバーと接続された状態において貫通孔の全体を覆うものであってもよい。このようにすれば、スイッチカバーに貫通孔を設ける場合であっても、貫通孔からの漏光を抑制することができる。
【0008】
また、爪部は、導光板ホルダをスイッチカバーに対して付勢するように、貫通孔の縁に対して斜めに当接するものであってもよい。このようにすれば、導光板ホルダとスイッチカバーとの接続を確実に行い、スイッチが操作された場合に部材がこすれることを抑制し、異音の発生を抑えることができる。
【0009】
また、基板上に配置され、第1の発光部が配置される第1の領域と、第2の発光部が配
置される第2の領域とを区画する筒状の壁部を有する筐体をさらに備え、導光板ホルダは区画壁を基板側に向かって延伸する筒状の部分を含み、導光板ホルダの筒状の部分の基板側の端部は、筐体の筒状の壁部の基板とは反対側の端部よりも、基板側に位置するようにしてもよい。このようにすれば、スイッチ内で発光部からの光が回折する場合であっても、第1の領域と第2の領域との間で漏光を抑えることができる。
【0010】
なお、課題を解決するための手段に記載の内容は、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチに複数の導光板を含む場合において漏光を抑制するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、スイッチの一例を示す正面図である。
【
図2】
図2は、スイッチの構成を正面方向の斜め上から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は、スイッチの構成を背面方向の斜め上から見た分解斜視図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るスイッチの一例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、スイッチの一例を示す正面図である。本実施形態では、スイッチ1の
図1に示す面の方向を各部品の正面(前)とし、
図1のスイッチ1に向かって上下左右を、それぞれ各部品の上下左右として説明する。スイッチ1は、例えば、乗用車のダッシュボードに設けられ、空気調和機を操作する部品である。スイッチ1は、少なくとも機器を入り切りするための押しボタンを含み、例えば設定温度を変更するためのダイヤル式スイッチをさらに備えていてもよい。また、スイッチ1は、例えば設定温度を変更するための操作の方向を示す表示部101、102と、開閉状態(オン/オフ)を表すインジケータ103と、「AUTO」の文字を表す表示部104とを、それぞれ正面側から視認可能に点灯させる。表示部101、102は、導光板によって形成され、常時点灯する。インジケータ103は、スイッチが入れられ機器が動作している状態では点灯し、スイッチが切られ機器が動作していない状態では消灯するものとする。また、表示部104は、例えば常時点灯する。以上のように、インジケータ103は、表示部101、102及び104とは独立して点灯する。
【0015】
図2は、スイッチの構成を正面方向の斜め上から見た分解斜視図である。
図3は、スイッチの構成を背面方向の斜め上から見た分解斜視図である。
図4は、
図1の模式的なA-A端面図である。
図5は、
図1の模式的なB-B端面図である。スイッチ1は、基板2と、筐体3と、スイッチカバー4と、第1の導光板5と、第2の導光板6と、導光板ホルダ7とを含む。
【0016】
基板2は、電子部品が実装されるプリント基板であり、使用者がスイッチ1を押した場合にスイッチカバー4を介して押下されるタクトスイッチ21と、例えばLED(Light Emitting Diode)によって形成される発光部22が実装される。発光部22は、
図1に示した表示部101、102を点灯させるためのLED221(「第1の発光部」とも呼ぶ)と、
図1に示したインジケータ103を点灯させるためのLED222(「第2の発光部」とも呼ぶ)と、
図1に示した表示部104を点灯させるためのLED223とを含む
。
【0017】
筐体3は、基板2上に配設され、スイッチ1の前後方向に延伸した筒状の筐体である。筐体3は、その延伸方向にスイッチカバーを摺動可能に保持する。また、筐体3の内部には、LED221から光を取り入れる第1の領域と、LED222から光を取り入れる第2の領域とを区画するための、スイッチ1の前後方向に筒状に延伸した区画壁31を有する。筐体3の外側には、円筒状の側面に沿って周方向に回動するダイヤルスイッチ(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0018】
スイッチカバー4は、スイッチ1の正面等を覆う部材である。スイッチカバー4の正面側には、第1の導光板5、第2の導光板6等が外側から視認可能にスリット又は光透過部材41~43が設けられている。また、スイッチカバー4は、LED221から光を取り入れる第1の領域と、LED222から光を取り入れる第2の領域とを区画するための、スイッチ1の前後方向に筒状に延伸した区画壁44を有する。また、区画壁44には、導光板ホルダ7を接続するための貫通孔441が設けられている。
【0019】
第1の導光板5は、その正面側の端部が
図1に示した表示部101、102を形成する部材である。第1の導光板5は、LED221から入射した光を拡散する。また、第2の導光板6は、その正面側の端部が
図1に示したインジケータ103を形成する部材である。第2の導光板6は、LED222から主として第2の導光板6の背面側の端部へ入射した光を拡散する。
【0020】
導光板ホルダ7は、スイッチカバー4と接続され、区画壁44を基板2側に向かってさらに延伸する筒状の部材である。また、導光板ホルダ7は、光不透過性の材料で形成されるものとする。導光板ホルダ7の背面側の端部は、筐体3の区画壁31の正面側の端部よりも後方に位置する。したがって、区画壁31、導光板ホルダ7及び区画壁44は、LEDからの光がスイッチ1内で回折する場合であっても、LED221から光を取り入れる第1の領域と、LED222から光を取り入れる第2の領域との間での漏光を抑えることができる。なお、導光板ホルダ7の背面側の端部は、筐体3の区画壁31の正面側の端部の外側に位置してもよいし、内側に位置してもよい。
【0021】
また、導光板ホルダ7は、第1の導光板5及び第2の導光板6をスイッチカバー4との間に保持する。具体的には、導光板ホルダ7は、第1の導光板5を挟持するための保持部71を有する。保持部71は、断面がコ字状に正面側に開いた部分であり、当該部分の間に第1の導光板5の端部とスイッチカバー4の区画壁44の端部とを重ねて挟持する。
【0022】
また、導光板ホルダ7は、左右の外側に向けて突出した爪部72と、正面側に向けて突出したガイド部73とを有する。導光板ホルダ7は、ガイド部73の根本の部分が区画壁44の端部に当接するまで、ガイド部73がスイッチカバー4の区画壁44内に挿入される。そして、導光板ホルダ7は、ガイド部73の根本の部分が区画壁44の端部に当接すると共に、爪部72は、例えばスナップフィット構造によりスイッチカバー4の区画壁44に設けられた貫通孔441に挿入され、導光板ホルダ7とスイッチカバー4とが結合される。このとき、貫通孔441の全体が、導光板ホルダ7によって覆われる。
【0023】
また、
図5に示すように、爪部72は、中間部分の厚さが最も大きく、前方に向かって厚さが小さくなる前部721と、後方に向かって厚さが小さくなる後部722とを含む。そして、爪部72が貫通孔441に挿入された状態においては、爪部72の後部722と貫通孔441とによって、導光板ホルダ7全体はスイッチ1の前方に向かって付勢される。このようにバイアスをかけることにより、例えば車両の振動がスイッチ1に加わった場合にも、異音の発生を抑制できる。
【0024】
<比較例>
図6は、比較例に係るスイッチの一例を示す端面図である。本比較例においては、上述した実施形態と対応する構成要素には対応する符号を付し、説明を省略する。
図6のスイッチ1は、第2の導光板6が、スイッチカバー4の区画壁44に設けられた貫通孔441に挿入される爪部61を備える。すなわち、本比較例では、スイッチ1は導光板ホルダ7を含まず、第2の導光板6はスイッチカバー4と接続される。この場合、区画壁44に貫通孔441が設けられているため、LED221から光を取り入れる第1の領域と、LED222から光を取り入れる第2の領域とを区画することが難しい。すなわち、貫通孔441に挿入された爪部61にLED222が発する光が入射し、LED221が消灯している場合であっても導光板6に多少の光が拡散してしまうおそれがある。
【0025】
ここで、スイッチカバー4の貫通孔441は、樹脂成型におけるアンダーカット形状にあたる。したがって、一般的に、区画壁44の外側から貫通孔441を形成するためのスライドコアを当てた上で金型に樹脂を充てんして形成することができる。特に、導光板6の横幅が例えば10mm未満程度の大きさである場合、区画壁44の内側に非貫通の凹部を形成する加工は難しい。
【0026】
一方、上述した実施形態に係る導光板ホルダ7によれば、第1の導光板5及び第2の導光板6を、スイッチカバー4との間に保持することができる。また、導光板ホルダ7は、スイッチカバー4と接続されると共に、区画壁44に設けられた貫通孔441の全体を覆うため、漏光を抑えることができる。
【0027】
なお、実施形態に示したスイッチ1の構成は一例であり、本発明の課題や技術的思想を逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1:スイッチ
101、102、104:表示部
103:インジケータ
2:基板
21:タクトスイッチ
22:発光部
221~223:LED
3:筐体
31:区画壁
4:スイッチカバー
41~43:スリット又は光透過部材
44:区画壁
441:貫通孔
5:第1の導光板
6:第2の導光板
7:導光板ホルダ
71:保持部
72:爪部
73:ガイド部