(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-19
(45)【発行日】2023-04-27
(54)【発明の名称】地盤改良体の寸法形状の計測方法及び装置
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20230420BHJP
G01B 17/06 20060101ALI20230420BHJP
G01S 15/10 20060101ALI20230420BHJP
G01S 7/524 20060101ALI20230420BHJP
G01S 7/527 20060101ALI20230420BHJP
【FI】
E02D3/12 102
G01B17/06
G01S15/10
G01S7/524 R
G01S7/527
(21)【出願番号】P 2021099833
(22)【出願日】2021-06-16
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2020118809
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西尾 竜文
(72)【発明者】
【氏名】足立 有史
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-019652(JP,A)
【文献】特開2000-017626(JP,A)
【文献】特開2004-163322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
G01B 17/06
G01S 15/10
G01S 7/524
G01S 7/527
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良工法により形成された地盤改良体の寸法形状の計測方法において、
前記地盤改良体へ測定ガイド管を設置し、
指向性を有する音波を送波する指向性送波器および音波の到来角度に依存せずに音波を受波する
複数の無指向性受波器を前記地盤改良体内部へ挿入して、
前記指向性送波器から音波を送波し、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波を、前記無指向性受波器を用いて受波して検出信号を得る
際に、
前記指向性送波器及び複数の無指向性受波器を、前記測定ガイド管内で該測定ガイド管の軸回りに回転させると共に上下に昇降させて、前記地盤改良体の3次元形状を検出することを特徴とする地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項2】
前記送波する音波は、2値符号列による位相変調波である擬似ランダム波とし、その周波数を複数変化させることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項3】
前記受波した音波と前記擬似ランダム波との相互相関演算から前記検出信号を得ることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項4】
前記送波する音波の複数の周波数は、前記地盤改良体の設計形状
及び/又は前記地盤改良体の造成完了からの時間に応じて変更することを特徴とする請求項2又は3に記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項5】
前記送波する音波の複数の周波数を、前記地盤改良体の設計寸法が大きい時は設計寸法が小さい時より低い周波数を用い、前記地盤改良体の造成完了からの時間が経過している時は造成直後より高い周波数を用いることを特徴とする請求項4に記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項6】
前記検出信号とWavelet関数との連続Wavelet変換によって、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項7】
前記Wavelet関数はGabor wavelet又はSymlet waveletであることを特徴とする請求項
6に記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項8】
前記指向性送波器と
複数の前記無指向性受波器とを固定部材で連結して送受波器として構
成することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項9】
前記
複数の無指向性受波器
のそれぞれが受波した信号を用いて位相合成するか、または位相に関係なく数値的に演算することによって前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させることを特徴とする請求項
1乃至8のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項10】
前記送受波器は前記地盤改良体の深さ方向に1列に連結され、前記指向性送波器の上側又は下側の少なくとも一方に
複数の前記無指向性受波器を配置し、前記指向性送波器と前記無指向性受波器との間には吸音材を設けることを特徴とする請求項
1乃至9のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項11】
前記無指向性受波器の背面に吸音材を設けることを特徴とする請求項
1乃至
10のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項12】
前記地盤改良体の別の位置に設置した透過ガイド管に音波を受波する
複数の受波器を入れ、
前記測定ガイド管に入れた音波の送波器から音波を送波し、
前記透過ガイド管の
複数の受波器により透過波を受波し、
前記測定ガイド管と前記透過ガイド管との距離及び透過波の透過時間から、前記地盤改良体における音速を求め、該音速と、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求めることを特徴とする請求項1乃至
11のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項13】
前記地盤改良体中の音速と前記地盤改良体造成後の経過時間との関係から校正曲線を予め求めておき、
前記地盤改良体造成からの経過時間により前記校正曲線から求まる音速値と前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求めることを特徴とする請求項1乃至
11のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項14】
前記地盤改良体の寸法形状計測は、前記地盤改良体における音速が2000m/s以下の時期に行うことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれかに記載の地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【請求項15】
地盤改良工法により形成された造成直後の地盤改良体へ測定ガイド管を設置して行う寸法形状の計測装置において、
前記測定ガイド管内部へ挿入して指向性を有する音波を送波する指向性送波器と、
前記測定ガイド管内部へ挿入して前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波を受波する、音波の到来角度に依存せずに音波を受波する
複数の無指向性受波器と、
受波信号から検出信号を得る
手段と、
前記指向性送波器及び複数の無指向性受波器を、前記測定ガイド管内で該測定ガイド管の軸回りに回転させると共に上下に昇降させて、前記地盤改良体の3次元形状を検出する手段と、
を備えたことを特徴とする地盤改良体の寸法形状の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系硬化剤の超高圧噴射によって地盤を切削し、円柱状の改良体を造成する地盤改良方法に用いるのに好適な、地盤改良体の寸法形状の計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人々の暮らしや社会の営みの基盤を確かなものにするために、いま強く求められている技術として、軟弱地盤等を高強度に改良するための地盤改良技術がある。地盤改良工法として、高圧噴射攪拌工法が実用化されている。高圧噴射攪拌工法は、地盤に挿入したロッドのノズルから、セメント系硬化剤の超高圧噴射によって地盤を切削し、円柱状の改良体を造成する工法である。
【0003】
高圧噴射攪拌工法では、地盤改良の対象となる土層のせん断強さや、標準貫入試験値であるN値等のいわゆる硬さが、形成する改良体の寸法に影響する。このため、地盤改良工事を行う場合は、地盤改良の対象となる土壌の土質などを考慮してセメント系硬化剤の噴射圧力、噴射流量等を適切に設定することにより、地盤改良体に必要とされる寸法を確保する必要がある。
【0004】
また、高圧噴射攪拌工法によって造成される地盤改良体の寸法は種々の要因、例えば対象土のせん断強さや対象土層の不均一性等によってばらつく。このため、地盤改良体の寸法を保証するには、実際に造成された地盤改良体の寸法を把握する必要がある。
【0005】
しかし、地盤改良体は地中に造成されるため、掘削によって改良体を露出させない限り、地盤改良体を目視で確認したり、地盤改良体の寸法を直接測定したりすることはできない。
【0006】
そこで、改良体の造成中に、改良体の寸法を把握する技術が幾つか提案されている。例えば、特許文献1には、注入管の周囲の地盤に建込み管を挿入し、注入管のノズルから高圧噴射される固化材が建込み管に当たる音または振動を、水中マイクなどを用いて検知することで、改良体の寸法を把握する技術が記載されており、実際に用いられている。また、特許文献2には、地盤(原地盤とも言うが、以下ではわかりやすく区別するため、土壌という)と地盤改良体との境界面における音波の反射を利用して地盤改良体の形状を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-62626号公報
【文献】特開2012-172329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では、建込み管を挿入した場所まで地盤改良体が形成されたことはわかるものの、他の場所の地盤改良体の寸法はわからない欠点があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術は、改良体内部から音波を発振し改良体壁面からの反射波を計測する方法である。造成中の改良体は自然地盤とは異なり音波が伝搬しにくいため反射波を受信することは難しいが、特許文献2には、伝搬しにくい音波を用いて反射波を受信するために必要な要件は何ら開示されておらず、単なる思い付きというべきものであった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、造成した地盤改良体の寸法を造成直後に3次元的に正確に把握することができる地盤改良体の寸法形状の測定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、地盤改良体と土壌との境界を検出するには、指向性音波送波器から境界ヘ向けて音波を送波し、無指向性受波器を用いて境界からの反射波を受波することが有効であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
【0013】
(1)地盤改良工法により形成された地盤改良体の寸法形状の計測方法において、前記地盤改良体へ測定ガイド管を設置し、指向性を有する音波を送波する指向性送波器および音波の到来角度に依存せずに音波を受波する複数の無指向性受波器を前記地盤改良体内部へ挿入して、前記指向性送波器から音波を送波し、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波を、前記無指向性受波器を用いて受波して検出信号を得る際に、前記指向性送波器及び複数の無指向性受波器を、前記測定ガイド管内で該測定ガイド管の軸回りに回転させると共に上下に昇降させて、前記地盤改良体の3次元形状を検出することを特徴とする地盤改良体の寸法形状の計測方法。
【0014】
(2)前記送波する音波は、2値符号列による位相変調波である擬似ランダム波とし、その周波数を複数変化させるのがよい。
【0015】
(3)前記受波した音波と前記擬似ランダム波との相互相関演算から前記検出信号を得るのがよい。
【0016】
(4)前記送波する音波の複数の周波数は、前記地盤改良体の設計形状及び/又は前記地盤改良体の造成完了からの時間に応じて変更することができる。一般的に造成完了後からの時間が短く音波が比較的伝搬しにくい間、例えば2日後までは1kHz~8kHzの比較的低周波数の波を用い、音波が比較的伝搬しやすくなる、例えば3日後以降は2kHz~12kHz以上の比較的高周波数の波を用いることがよい。
(5)又、前記送波する音波の複数の周波数は、前記地盤改良体の設計寸法が大きい時は設計寸法が小さい時より低い周波数を用い、前記地盤改良体の造成完了からの時間が経過している時は造成直後より高い周波数を用いることがよい。
【0017】
(6)前記検出信号とWavelet関数との連続Wavelet変換によって、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させることができる。連続Wavelet変換によって高周波成分を抽出するか、低周波成分を抽出するかは、地盤改良体の硬化状態および信号処理の目的に応じて変更するのがよい。
【0018】
(7)前記Wavelet関数をGabor wavelet又はSymlet waveletとすることができる。
【0019】
(8)前記指向性送波器と複数の前記無指向性受波器とを固定部材で連結して送受波器として構成することができる。
【0020】
(9)前記複数の無指向性受波器のそれぞれが受波した信号を用いて位相合成するか、または位相に関係なく数値的に演算することによって前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させるのもよい。
【0021】
(10)前記送受波器を前記地盤改良体の深さ方向に1列に連結し、前記指向性送波器の上側又は下側の少なくとも一方に複数の前記無指向性受波器を配置し、前記指向性送波器と前記無指向性受波器との間には吸音材を設けるのがよい。
【0022】
(11)前記無指向性受波器の背面に吸音材を設けるのもよい。
【0023】
(12)前記地盤改良体の別の位置に設置した透過ガイド管に音波を受波する複数の受波器を入れ、前記測定ガイド管に入れた音波の送波器から音波を送波し、前記透過ガイド管の複数の受波器により透過波を受波し、前記測定ガイド管と前記透過ガイド管との距離及び透過波の透過時間から、前記地盤改良体における音速を求め、該音速と、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求めることができる。
【0024】
(13)前記地盤改良体中の音速と前記地盤改良体造成後の経過時間との関係から校正曲線を予め求めておき、前記地盤改良体造成からの経過時間により前記校正曲線から求まる音速値と前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求めるのもよい。
【0025】
(14)前記地盤改良体の寸法形状計測は、前記地盤改良体における音速が2000m/s以下の時期に行うのがよい。
【0026】
(15)地盤改良工法により形成された造成直後の地盤改良体へ測定ガイド管を設置して行う寸法形状の計測装置において、前記測定ガイド管内部へ挿入して指向性を有する音波を送波する指向性送波器と、前記測定ガイド管内部へ挿入して前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波を受波する、音波の到来角度に依存せずに音波を受波する複数の無指向性受波器と、受波信号から検出信号を得る手段と、前記指向性送波器及び複数の無指向性受波器を、前記測定ガイド管内で該測定ガイド管の軸回りに回転させると共に上下に昇降させて、前記地盤改良体の3次元形状を検出する手段と、を備えたことを特徴とする地盤改良体の寸法形状の計測装置。
【0027】
(16)前記送波する音波は、2値符号列による位相変調波である擬似ランダム波であり、その周波数を複数変化させる手段を有するのがよい。
【0028】
(17)前記受波信号から検出信号を得る手段は、受波した音波と前記擬似ランダム波との相互相関演算手段であるのがよい。
【0029】
(18)前記送波する音波の複数の周波数を、前記地盤改良体の設計形状および前記地盤改良体の造成完了からの時間に応じて変更する手段を有するのがよい。
【0030】
(19)前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させるため、前記検出信号とWavelet関数との連続Wavelet変換を行う手段を有するのがよい。
【0031】
(20)前記連続Wavelet変換を行う手段が用いるWavelet関数は、Gabor wavelet又はSymlet waveletであるのがよい。
【0032】
(21)前記地盤改良体の方位による形状変化及び/又は3次元形状を計測するため、前記指向性送波器と複数の前記無指向性受波器とを固定部材で連結した送受波器と、該送受波器を回転及び昇降する手段とを備えるのがよい。
【0033】
(22)前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の識別性を向上させるため、複数の前記無指向性受波器と、それぞれが受波した信号を用いて位相合成する手段、又は、位相に関係なく数値的に演算する手段とを備えるのがよい。
【0034】
(23)前記地盤改良体の深さ方向に1列に連結される、1個の前記指向性送波器、該指
向性受波器の上側又は下側の少なくとも一方に配置される複数の前記無指向性受波器、及び、前記指向性送波器と前記無指向性受波器との間に設けられた吸音材を備えるのがよい。
【0035】
(24)前記無指向性受波器の背面に設けられた吸音材を有するのもよい。
【0036】
(25)前記地盤改良体の別の位置に設置した、音波を受波する複数の受波器を入れる透過ガイド管と、前記測定ガイド管に入れた送波器から送波した音波を、前記透過ガイド管の受波器が受波した透過波から透過時間を求める手段と、前記測定ガイド管と前記透過ガイド管との距離及び透過波の透過時間から、前記地盤改良体における音速を求める手段と、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間を計測する手段と、前記音速と前記反射波の伝搬時間の計測値とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求める手段とを更に備えることがよい。
【0037】
(26)前記地盤改良体中の音速と前記地盤改良体造成後の経過時間との関係から予め求めた校正曲線を記憶する手段と、記憶された前記校正曲線から前記地盤改良体造成からの経過時間に応じた音速値を求める手段と、前記地盤改良体と土壌との境界からの反射波の伝搬時間を計測する手段と、前記音速と前記伝搬時間の計測値とから前記指向性送波器と前記境界との距離を求める手段とを更に備えるのもよい。
【0038】
(27)前記地盤改良体における音速が2000m/s以下であるか判定する手段を備え、前記音速が2000m/s以下である時期に前記地盤改良体の寸法形状測定を行うのがよい。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、セメント系硬化剤の超高圧噴射によって地盤を切削し、円柱状の改良体を造成する地盤改良において、造成直後の地盤改良体へ測定ガイド管を設置し、指向性を有する音波を送波する指向性送波器および音波の到来角度に依存せずに音波を受波する複数の無指向性受波器を地盤改良体内部へ挿入して、指向性送波器から音波を送波し、地盤改良体と土壌との境界からの反射波を、複数の無指向性受波器を用いて受波して検出信号を得るようにしたので、造成した地盤改良体の寸法や深度方向の形状を造成直後に3次元的に正確に把握することができる。もって、地盤改良体の造成技術の安定した運用及び改良に大きく資することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の基本構成を示す断面図
【
図2】本発明に係る地盤改良体寸法の寸法変化測定及び地盤改良体寸法の3次元形状測定を示す透視図
【
図3】本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の変形例を示す断面図
【
図4】本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の他の変形例を示す断面図
【
図5】本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の実施形態における計算部の一例を示すブロック図
【
図6】本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の実施形態における計算部の他の例を示すブロック図
【
図8】本発明に係る実施形態の送波器から送波する擬似ランダム波の波形の一部を示す波形図
【
図11】(A)パルス圧縮後の信号と、(B)この信号にGabor wavelet関数による連続Wavelet変換を施した結果を比較して示す波形図
【
図12】パルス圧縮後の信号にSymlet wavelet関数による連続Wavelet変換を施した結果を示す波形図
【
図13】地盤改良体の音速と地盤改良体造成からの時間との関係を表した校正曲線の例を示す図
【
図14】地盤改良体の寸法形状の測定結果例を示す散布図
【
図15】深さ4mの位置における地盤改良体の方位による径変化
の例を示すレーダーチャート
【
図16】深さ6mの位置における地盤改良体の方位による径変化
の例を示すレーダーチャート
【
図17】深さ8mの位置における地盤改良体の方位による径変化
の例を示すレーダーチャート
【
図18】深さ10mの位置における地盤改良体の方位による径変化
の例を示すレーダーチャート
【
図19】
図15~
図18をまとめて3次元的に表した、地盤改良体と地盤との境界を示す境界線図
【
図20】地盤改良体の形状
をデータの内挿によって構成した3次元外観図
【
図21】地盤改良体3次元形状の任意位置の2次元形状
をデータの内挿によって構成した断面図
【
図22】2つの組成がよく似た地盤(土壌)に
同様の施工仕様で形成された地盤改良体について、音速と地盤改良体造成からの経過時間との関係の例を示す説明図
【
図23】
図3に示した指向性送波器と無指向性受波器との別の連結方式において得られた検出信号の位相合成
を行った場合の例を示す波形図
【
図24】SN比が良い信号が得られる周波数の上限及び下限と地盤改良体造成からの経過時間との関係の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0042】
図1に、本発明に係る地盤改良体寸法形状測定の基本構成を示す。土壌50中に造成後の地盤改良体52のほぼ中央に測定ガイド管54を設置し、その中に指向性送波器12及び複数(
図1では4個)の無指向性受波器14-1~14-4を固定部材16で結合した送受波器10を挿入し、指向性送波器12から音波22を送波し、地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24-1~24-4を、無指向性受波器14-1~14-4を用いて受波して検出信号46-1~46-4を得るようにしている。
【0043】
図において、48は、検出信号46-1~46-4の識別性を向上するためのWavelet変換器、49は、同じく位相合成器である。
【0044】
図1では無指向性受波器14は14-1~14-4の4個とし、指向性送波器12の上方に配置している。指向性送波器12と無指向性受波器14-1との間には吸音材18が介装されている。吸音材18は指向性送波器12が音波22を送波したときに測定ガイド管54の中に発生する孔内波が無指向性受波器14-1~14-4に直接到達する(直達波と称する)のを防止する。
【0045】
指向性送波器12に接続されているのは、離れる順にディジタル擬似ランダム波(2値符号列による位相変調波)生成装置30、ディジタル-アナログ(D/A)変換器32、パワーアンプ34である。ディジタル擬似ランダム波生成装置30はパーソナルコンピュータなどを用いて構成することができ、擬似ランダム波(2値符号列による位相変調波)のディジタル信号を生成して、ディジタル-アナログ変換器32へ出力し、該ディジタル-アナログ変換器32によりアナログ信号となった擬似ランダム波をパワーアンプ34で高電圧信号に増幅して、指向性送波器12へ印加して音波22を送波させる。
【0046】
パワーアンプ34からの擬似ランダム波高電圧信号を受けて、指向性送波器12は、地盤改良体52の中へ擬似ランダム波の波形を有する指向性音波22を送波する。地盤改良体52と土壌50との境界に達し、その界面で反射した反射波24-1~24-4は、もと来た方向へ伝搬して無指向性受波器14-1~14-4により受波され、受信増幅器40-1~40-4で適当な大きさに増幅された後、アナログ-ディジタル(A/D)変換器42-1~42-4によりディジタル受波信号にされる。
【0047】
相互相関演算器44-1~44-4では、ディジタル受波信号と送波に用いられた擬似ランダム波との相互相関を演算して、その結果を検出信号46-1~46-4とする。
【0048】
擬似ランダム波は、正弦波状搬送波の位相が2値符号列によって変調された形式の波であるので、例えば
図1中に示したような周波数変更部70を設けて、正弦波状搬送波の周波数を変更することによって音波としての周波数を変更することが可能である。
【0049】
地盤改良体52の造成直後は、地盤を形成していた土とセメント系硬化剤とが結合していないため、音波22の散乱減衰が大きいが、時間の経過とともに土とセメント系硬化剤とが結合し、音波22が伝搬しやすくなる。よって、地盤改良体52の造成からの経過時間に応じて音波22の周波数を変更してもよい。具体的には造成直後には数kHz程度の低い周波数の音波を用いて計測を行い、地盤改良体52が十分に固化するタイミングでは10kHz程度の高い周波数を用いるとよい。また、地盤改良体52の設計寸法に応じて音波22の周波数を変更してもよい。地盤改良体52の設計寸法が大きいと音波伝搬距離が長くなり、音波22の減衰が大きくなるので、減衰係数が小さい低い周波数を用いることが有利である。なお、指向性送波器12の送波する音波22の指向性(指向角)は音波の波長に比例する。したがって波長が短い高周波数ほど音波22の指向性が良くなり、地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波が大きくなる側面もあるので、測定に用いる音波の周波数の高低を画一的に規定するのではなく、いくつかの周波数の音波を用いて測定を行い、結果を比較するのもよい。
【0050】
検出信号46-1~46-4(以下で検出信号を総称して検出信号46ということがある)における反射波24-1~24-4の識別性を向上させるため、検出信号46-1~46-4にWavelet変換器48で連続Wavelet変換を行うことができる。地盤改良体52の造成直後及び寸法が大きな地盤改良体52の計測を行うときは、送波する音波22の周波数よりも低い周波数成分を抽出できる連続Wavelet変換が有効である。また、反射波信号の短いパルス形状を強調するには、送波する音波22の周波数よりも高い周波数成分を抽出できる連続Wavelet変換が有効である。抽出する周波数成分の高低を制御するためには連続Wavelet変換に用いるWavelet関数を使い分けることが有効である。低周波数成分の抽出には、例えばGabor wavelet、高周波数成分の抽出には、例えばGabor wavelet 及びSymlet waveletが有効である。
【0051】
図1における無指向性受波器14-1~14-4が受けた波から得られた検出信号46-1~46-4を、位相合成器49で反射波24-1~24-4の伝搬距離に応じて位相合わせ(距離の違いを時間的に補償)して合成し(位相合成)、反射波の識別性を向上することができ、また、雑音などを除くために、検出信号46-1~46-4を相互に減算する等の数値演算を行うことも可能である。
【0052】
なお、Wavelet変換器48と位相合成器49は併用することも、一方のみを用いることも、両方省略することもできる。
【0053】
さらに、
図2に示すように、指向性送波器12及び無指向性受波器14(ここから複数の無指向性受波器の集合を無指向性受波器14という)を固定部材16で結合した送受波器10を、回転/昇降機構20により、測定ガイド管54の中で回転させることにより、方位による地盤改良体52の寸法変化を測定することができ、これに同じく回転/昇降機構20による測定ガイド管54の中での送受波器10の昇降を組み合わせることにより、地盤改良体52の立体形状を測定することもできる。なお、回転及び昇降の一方を省略することもできる。
【0054】
指向性送波器12と無指向性受波器14との配置は、
図1に示した送波器12と受波器14を地盤改良体52の深さ方向に1列に連結し、無指向性受波器14を複数個として指向性送波器12の上方に配置し、指向性送波器12と無指向性受波器14との間には吸音材18を設ける構成のほか、
図3に示すように、送波器12と受波器14を地盤改良体52の深さ方向に1列に連結し、指向性送波器12の上方に1個以上(
図3では2個)の前記無指向性受波器14-1、14-2を配置し、かつ、前記指向性送波器12の下方に1個以上(
図3では2個)の前記無指向性受波器14-3、14-4を配置し、前記指向性送波器12と前記無指向性受波器14-1、14-2及び14-3、14-4との間には、それぞれ吸音材18、18’を設ける構成も可能である。又、
図2とは逆に、送波器12の下方にのみ、受波器14を設けてもよい。
【0055】
更に、
図3中に示したように、無指向性受波器14の背面(地盤改良体52と土壌50との境界に達し、その界面で反射した反射波24…ここから複数の無指向性受波器14の集合が受波する反射波を反射波24という…が到来する方向とは逆の方向)に吸音材19-1~19-4を設け、指向性送波器12と無指向性受波器14とを結合している固定部材16での音波22及び反射波24の反射による雑音を除くことが可能である。
【0056】
指向性送波器12から送波され、地盤改良体52と土壌50との境界に達し、その界面で反射し、無指向性受波器14により受波され検出された反射波24の伝搬時間から、指向性送波器12又は無指向性受波器14と、地盤改良体52と土壌50の境界との距離を求めるには地盤改良体52における音速を知る必要がある。
【0057】
音速測定は、
図4に示すように、地盤改良体52の別の位置に設置した透過ガイド管60に音波を受波する受波器62を入れ、前記測定ガイド管54に入れた音波の送波器12から音波を送波し、透過ガイド管60の受波器62により透過波を受波することにより実施できる。
【0058】
具体的には、
図5に例示するように、送波器12での送波時刻と受波器62での受波時刻との差から、透過時間測定部80で透過波の透過時間t1を測定する。次いで、音速計算部82で、測定ガイド管54と透過ガイド管60との距離L1及び透過波の透過時間t1から、次式により地盤改良体52における音速Vを求める。この計算では、測定ガイド管54及び透過ガイド管60に通常満たされる水の中を音波が伝搬する時間を考慮した補正を行う。
【0059】
V = L1 /t1 ・・・(1)
【0060】
このようにして求めた音速Vと、送波器12の送波時刻と受波器14の受波時刻との差として伝搬時間測定部84で求めた、地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24の伝搬時間t2とから、距離計算部86で、次式により指向性送波器12又は無指向性受波器14と地盤改良体52-土壌50境界との距離(即ち、地盤改良体寸法)L2を求めることができる。この計算でも、測定ガイド管54に通常満たされる水の中を音波が伝搬する時間を考慮した補正を行い、さらに、無指向性受波器14と境界との間を伝搬する反射波24の伝搬距離が指向性送波器12と境界との間を伝搬する音波22の伝搬距離と少し異なることを考慮した補正も行う。
【0061】
L2 = V ×t2/2 ・・・(2)
【0062】
あるいは、前記のように地盤改良体52における音速Vを直接求める方法に代えて、後出
図13に例示するような地盤改良体52中の音速Vと地盤改良体52造成後の経過時間Tとの関係(以下、校正曲線)を予め求めて、
図6に例示するような校正曲線記憶部88に記憶しておき、地盤改良体52造成からの経過時間Tにより校正曲線から求まる音速値と、伝搬時間測定部84で測定した地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24の伝搬時間t2とから、距離計算部86で、前出(2)式により、指向性送波器12又は無指向性受波器14と地盤改良体52-土壌50境界との距離L2を求めることも実施可能である。
【0063】
地盤改良体52の中へ指向性送波器12が送波する音波22の指向角は、音波22の波長λに比例し、波長λは音波22の速度に比例する。地盤改良体52における音速Vは造成直後が一番小さく、時間の経過とともに大きくなる。したがって、地盤改良体52の寸法形状計測は、指向性送波器12が送波する音波22の指向角が小さい、音速が小さい段階に行うのがよく、地盤改良体52造成直後から地盤改良体52における音速が2000m/s以下の時期に行うと反射波24のSN比が良いので、寸法形状計測の精度がよい。このために、例えば
図1中に示したような音速判定部72を設けることができる。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明に係る地盤改良体52の寸法計測装置を用いて、
図7に示した山形食パンのような水平断面を有する地盤改良体52の測定を行った事例を説明する。測定ガイド管54は外径250mmとし、地盤改良体52の端に挿入し、透過ガイド管60は測定ガイド管54から1m離れた位置に挿入した。測定ガイド管54中心と曲面状の境界(地盤改良体52と土壌50との境界)との距離は1800mm、測定ガイド管54中心と側面の直線部との距離は900mmであった。
【0065】
測定では、
図1に示した指向性送波器12から周波数1kHz~12kHzの音波を送波し、無指向性受波器14-1~14-4によって反射波24-1~24-4を受波した。
【0066】
指向性送波器12から送波する音波22(擬似ランダム波)の波形例を
図8に示す。
図8は周波数が2kHzの擬似ランダム波の一部を示しており、実際には1000サイクル以上のパルス幅を有する信号である。
図8のような信号を振幅420V
P-Pに増幅し、指向性送波器12に内蔵された音波22の振動子に印加して、同等の波形の音波を送波する。位相を搬送する正弦波の周波数を変更することにより、周波数1kHz~12kHzの音波を送波した。
【0067】
無指向性受波器14-1が受波した信号をアナログ-ディジタル変換器42によりディジタル受波信号とし、該信号と送波に用いた擬似ランダム波との相互相関を演算して得た検出信号の例を
図9に示す。該検出信号は擬似ランダム波の周波数を2kHzとしたときに検出された連続Wavelet変換等を施さない生の信号(パルス圧縮直後の信号)である。地盤改良体52と土壌50との境界(
図9~
図12及び
図23では、指向性送波器12と境界との距離は1710mm)からの反射波(エコー)24がとらえられている。
【0068】
さらに無指向性受波器14-1~14-4が受波した信号を同様に処理して検出信号46-1~46-4を得たのち、これらの信号を位相合成した結果を
図10に示す。地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24がより明瞭にとらえられている。
【0069】
図11は無指向性受波器14-1が受波した信号から検出信号46-1を得たのち、該信号に連続Wavelet変換を施した結果の一例を示している。用いたWavelet関数をGabor waveletとし、Gabor waveletの波長を指向性送波器12が送波した音波の波長の2倍とした。
図11(A)は擬似ランダム波の周波数を4kHzとして音波22を送波し受波信号を検出したパルス圧縮直後の信号、
図11(B)はほぼ半分の周波数(波長が2倍であるため、周波数は1/2倍)の2kHzの信号を、連続Wavelet変換を用いて抽出した結果であり、
図11(B)では地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24-1がSN比良くとらえられている。
【0070】
図12は、同様の連続Wavelet変換を、Symlet waveletをWavelet関数として実施した結果である。送波した音波(周波数2kHz)よりも高周波数の信号を抽出した。Gabor waveletの場合と同様に地盤改良体52と土壌50との境界からの反射波24-1がとらえられている。
【0071】
図13は、
図4に示したように、透過ガイド管60に音波を受波する受波器62を入れ、測定ガイド管54に入れた音波の送波器から音波を送波し、透過ガイド管60の受波器62により透過波を受波して、測定ガイド管54と透過ガイド管60との距離L1及び透過波の透過時間t1から、地盤改良体52における音速Vを求めた結果を示している。横軸は地盤改良体52造成からの経過時間である。地盤改良体52中の音速Vは、造成直後は急激に大きくなり、一定時間を経過するとほとんど変化しなくなる。ここで求めた音速は、次に結果を示す地盤改良体52の形状測定に使用した。
【0072】
図14は、
図2に示したように、回転/昇降機構20を用いて、指向性送波器12及び無指向性受波器14を固定部材16で結合した送受波器10を測定ガイド管54のある深さに配置し、さらに測定ガイド管54の中で回転して、
図7に示した山形食パンのような水平断面形状をした地盤改良体52の寸法形状を測定した例を示している。この測定では超音波を反射する面が限られていたため、立体形状ではなく、測定した寸法と実際の寸法との対比を示している。両者は約2%の誤差でよく一致しており、本発明によれば、地盤改良体52の寸法を良好に測定できることがわかる。したがって、通常は円柱型の形状をした地盤改良体の中心に測定ガイド管54を設け、この間の中に配置した送受波器10から全方位に向けて音波を送受波すること、及び/又は、送受波器10を配置する深さも変更して音波を送受波することにより、地盤改良体52の立体形状も測定できることがわかる。
【0073】
図15~
図18は、
図2に示したように、指向性送波器12及び無指向性受波器14を固定部材16で結合した送受波器10を測定ガイド管54の中で回転し、さらに測定用ガイド管54の中で昇降して、方位による地盤改良体52(
図7及び
図14とは異なる円柱形状の地盤改良体)の径変化及び地盤改良体52の立体形状を測定した
場合に得られる例を示している。
図15は深さ4mの位
置、図16は深さ6mの位
置、図17は深さ8mの位
置、及び
図18は深さ10mの位置の
例をそれぞれ示している。方位22.5°おきに測定を
行う場合では、1つの深さ位置について16個の測定値が
存在することとなる。地盤改良体52の径は方位によって、少し異なり、深さによっても異な
る。
【0074】
図19は、
図15~
図18をまとめて3次元的に表した、地盤改良体52と土壌50との境界を示す境界線図、
図20は地盤改良体52の形状
をデータの内挿によって構成した3次元外観図、
図21は地盤改良体52の3次元形状の任意位置の2次元形状
をデータの内挿によって構成した断面図である。
図20では地盤改良体52の形状を濃度の異なるドット構成を用いて立体的に表示している。
図21では、中心にある地盤改良体52を黒っぽく見えるドット構成、地盤改良体52と土壌50との境界を明るく見えるドット構成及び土壌50を中間的な濃度のドット構成で示している。地盤改良体52と土壌50との境界を、厚みを持たせて表現しているのは、境界を見やすくするためである。実用的にはそれぞれをカラー表示すると、地盤改良体52と土壌50との境界の構造がより分かりやすくなる。いずれの表示図も地盤改良体52の3次元形状を把握するのに適しており、地盤改良体の造成について有意義な情報を得ることができる。
【0075】
図22は、2つの組成がよく似た地盤(土壌)に
同様の施工仕様で形成された地盤改良体P及びQについて、音速Vと経過時間との関係を
示したものである。音速値はほぼ同等であるので、地盤改良体Pについて音速Vと経過時間との関係を求めておけば、地盤改良体Qについては音速を測定する必要がないとわかる。したがって、同じ現場でいくつもの地盤改良体を作る場合には、1つの地盤改良体について音速と経過時間との関係を求め、他の地盤改良体ではその関係を用いて音速を求め、該音速と地盤改良体-土壌境界からの反射波の伝搬時間とから地盤改良体の寸法を求めることができる。
【0076】
図23は、送受波器10を地盤改良体52の深さ方向に1列に連結し、指向性送波器12の上部に2個の無指向性受波器14-1、14-2を配置し、指向性送波器12の下部に2個の無指向性受波器14-3、14-4を配置して、4個の無指向性受波器14が受波した信号から得られた4個の検出信号46-1~46-4を用いて位相合成を行った
場合の例を示している。指向性送波器12と無指向性受波器14-1、14-2との間及び指向性送波器12と無指向性受波器14-3、14-4との間には材質コルクの吸音材18、18’を設けている。送波する音波の周波数を2kHzとして境界エコーを検出し、
図10の結果を得た地盤改良体52をほぼ同じタイミングで計測した
場合の例である。
【0077】
図24は、
図9~
図12及び
図14の結果を得た地盤改良体52の寸法計測実験において、SN比が良い信号が得られる周波数の上限及び下限と地盤改良体52造成からの経過時間との関係を示している。前記経過時間に応じて送波する音波22の周波数を変更するとよいことがわかる。また、上限及び下限の間には数多くの周波数が含まれることから、いくつかの周波数で計測を行って、結果を比較すると信頼性が向上する。
【符号の説明】
【0078】
10…送受波器
12…指向性送波器
14、14-1、14-2、14-3、14-4…無指向性受波器
16…固定部材
18、18’、19-1、19-2、19-3、19-4…吸音材
20…回転/昇降機構
22…(指向性)音波
24、24-1、24-2、24-3、24-4…反射波(エコー)
30…(ディジタル)擬似ランダム波(2値符号列による位相変調波)生成装置
32…ディジタル-アナログ(D/A)変換器
34…パワーアンプ
40-1、40-2、40-3、40-4…受信増幅器
42、42-1、42-2、42-3、42-4…アナログ-ディジタル(A/D)変換器
44-1、44-2、44-3、44-4…相互相関演算器
46、46-1、46-2、46-3、46-4…検出信号
48…Wavelet変換器
49…位相合成器
50…土壌
52、P、Q…地盤改良体
54…測定ガイド管
60…透過ガイド管
62…受波器
70…周波数変更部
72…音速判定部
80…透過時間測定部
82…音速計算部
84…伝搬時間測定部
86…距離計算部
88…校正曲線記憶部